説明

瓦廃材骨材の製造方法、セメント組成物および水硬性材料

【課題】 高強度コンクリート、高強度モルタル等の材料として用いた場合に自己収縮ひずみを抑制できる、吸水量が多い瓦廃材骨材の製造方法、およびそれらを用いたセメント組成物ならびに水硬性材料を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、瓦廃材を粉砕した粉砕物を、加熱された状態且つ水に浸漬された状態にすることを特徴する、吸水量が多い瓦廃材骨材の製造方法、およびこの製造方法で製造される瓦廃材骨材を含むことを特徴とするセメント組成物、ならびにこれらのセメント組成物を、水結合材比が40%以下となるように混練水と混合することを特徴とする水硬性材料に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、モルタル等の材料として利用できる吸水量が多い瓦廃材骨材の製造方法、その方法で製造される瓦廃材骨材を用いたセメント組成物ならびに水硬性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の大型化や高層化に伴い、近年は高強度コンクリートや高強度モルタルが多く用いられている。
これらの高強度コンクリート等は、一般に、水結合材比が小さくなるような配合設計をすることで硬化後の硬化物の緻密性を高め、高強度が得られる。
しかし、例えば水結合比率40%以下のような、非常に水分の少ない高強度コンクリート等になると、結合材の水和反応に十分な水分が材料中に存在しないため、水和によって水分が結合すると自己乾燥して自己収縮を生じひずみが生じることがある。
【0003】
このような硬化後の自己収縮を抑制する技術としては、例えば、特許文献1のように、セメント、骨材に加えて膨張材を添加して、自己収縮を抑制する結合材組成物が知られている。
しかし、このような膨張材は、過剰に添加すると未反応の膨張材が残り遅れ膨張を引き起こす危険性があるため、添加可能な量に限界があり、十分な自己収縮ひずみの抑制効果を期待できない。
【0004】
また、特許文献2には、シリカ(二酸化珪素)質などの微粉末であって均一な大きさのものを用いて自己収縮ひずみを低減させることが記載されているが、水結合材比を20%以下と小さくした場合にはやはり十分な効果は得られない。
【0005】
一方、特許文献3および4には、人工軽量骨材や瓦の廃材を利用した多孔質セラミックスからなる骨材を粗骨材・細骨材の一部と置換することが記載されている。
これらの多孔質セラミックスからなる骨材に水を含ませておくことで、自己収縮ひずみの低減についてもある程度の効果を得ることができる。
しかしながら、上記多孔質セラミックスからなる骨材を単に水に浸漬させた状態では、十分な量の水を含浸させることは困難であり、特に水結合材比の小さい高強度コンクリート等に用いた場合の自己収縮ひずみの抑制効果は十分ではなかった。
また、人工軽量骨材は強度が低いため配合できる量が限られ、やはり自己収縮ひずみの抑制効果は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−143311号公報
【特許文献2】特許第4384902号公報
【特許文献3】特許第4462854号公報
【特許文献4】特開2008−266130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、コンクリート、モルタル等の材料として用いた場合に高強度を維持しつつ、同時に自己収縮ひずみを十分に抑制できる、吸水量が多い瓦廃材骨材の製造方法、およびそれらの方法で得られた瓦廃材骨材を用いたセメント組成物ならびに水硬性材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記課題を解決するための手段としては、瓦廃材を粉砕した粉砕物を、加熱された状態且つ水に浸漬された状態にすることを特徴する。
【0009】
前記製造方法では、瓦の粉砕物を、加熱された状態且つ水に浸漬された状態にすることによって、粉砕物中に水分が多く入り込むことができ、十分に含水している瓦廃材骨材が得られる。
斯かる瓦廃材骨材は、十分に水分を有しているため、骨材としてセメント組成物に用いた場合に、水和反応に必要な水分を供給することができる。
【0010】
前記製造方法において、前記粉砕物を予め100℃〜500℃に加熱し、水に浸漬することで、加熱された状態且つ水に浸漬された状態にすることが好ましい。
【0011】
さらに、前記粉砕物を沸騰している水に浸漬することにより、粉砕物を加熱された状態且つ水に浸漬された状態にすることが好ましい。
【0012】
本発明のセメント組成物としては、前記製造方法で得られた瓦廃材骨材と、セメントとを含むことを特徴とする。
【0013】
また、粗骨材および/または細骨材を含み、且つ前記瓦廃材骨材が前記粗骨材および細骨材の絶対容積に対して10〜30%混合されていることが好ましい。
尚、本発明でいう粗骨材、細骨材および瓦廃材骨材の絶対容積とは、JIS A0203に規定する絶対容積をいい、すなわち、骨材粒の占める体積であって、骨材中の空隙を含み、骨材粒間の空隙を含まない容積をいう。
【0014】
粗骨材および/または細骨材の一部を前記瓦廃材骨材に置き換えることによって、強度も維持しつつ、自己収縮ひずみも十分に抑制できる。
【0015】
さらに、水硬性材料としての本発明は、前記各セメント組成物が、水結合材比が40%以下となるように混練水と混合されたことを特徴とする。
【0016】
前記瓦廃材骨材を含むセメント組成物を水結合材比が40%以下の高強度コンクリートや高強度モルタルなどの水硬性材料に用いた場合には、これらの水硬性材料中には水分量が少なく通常であれば自己収縮ひずみが生じやすいが、本発明の瓦廃材骨材によって、効果的に自己収縮ひずみを抑制できる。
【0017】
尚、ここでいう水結合材比とは、セメントおよび、これに必要に応じて添加されるセメント用混和材(シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末など)の合計質量に対する水の質量である。また、前記水の質量とは、使用する液状のセメント混和剤等に含まれる水をも合わせた質量である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、十分に水分を有する瓦廃材骨材を得ることができ、斯かる瓦廃材骨材を使用したセメント組成物を、コンクリートなどの水硬性材料に用いた場合には、高強度を維持しつつ、硬化後に自己収縮ひずみが生じにくいという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のモルタルの自己収縮ひずみを示すグラフ。
【図2】本実施形態のコンクリートの自己収縮ひずみを示すグラフ。
【図3】本実施形態のコンクリートの自己収縮ひずみを示すグラフ。
【図4】本実施形態のモルタルの自己収縮ひずみを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について説明する。
まず、本発明の瓦廃材骨材の製造方法について説明する。
【0021】
本発明においては、瓦廃材を粉砕した粉砕物を、加熱された状態且つ水に浸漬された状態にすることで、吸水量が多い瓦廃材骨材を製造する。
本発明の瓦廃材骨材は、瓦の廃材を粉砕した粉砕物から得る。
廃瓦は、規格外品などで使用されなかったものや、あるいは葺き替え工事などで廃棄物として廃棄される粘土瓦などの粉砕物が好適に使用される。
【0022】
粉砕物は所定の網目サイズの篩にかけることで、好ましい粒子サイズのものを得ることができる。
本発明で使用される粉砕物として、細骨材の一部として用いる場合には、JIS A 0203に定めるような10mmふるいをすべて通過し且つ5mm以下のものが85質量%以上含まれるものが好ましく、粗骨材の一部として用いるものは、同JISに定める、5mmふるいに留まるものが85質量%以上含まれるものが好ましい。
特に、本発明で使用される粗骨材としての破砕物は、JIS A 1102 「骨材のふるい分け試験の方法」に定めるような20mmふるいを通過するものが100質量%以上含まれていること(砕石1505の粒度,すなわち20mmを100%,15mmを90〜100%,10mmを40〜70%,5mmを0〜15%,2.5mmを0〜5%通過する粒度を満足するもの)が好ましい。
【0023】
また、瓦の材質としては粘土瓦などの和瓦、例えば石州瓦などが好ましい。
【0024】
本発明においては、前記粉砕物を加熱された状態且つ水に浸漬された状態にすることで、粉砕物が十分に吸水し、多くの水分を保持した瓦廃材骨材を得ることができる。
【0025】
尚、本発明でいう粉砕物を加熱された状態にする、とは、前記粉砕物を100℃以上、好ましくは300℃〜500℃の状態に,好ましくは60分以上、より好ましくは60分〜120分間維持することをいう。
尚、上記粉砕物の温度は、放射温度計によって測定される温度をいう。
【0026】
また、水に浸漬された状態にする、とは、好ましくは1日以上、さらに好ましくは 1日〜2日間前記粉砕物が完全に水中に存在しているような状態に置くことをいう。
前記時間粉砕物を水に浸漬することで、十分に吸水させることを効率的に行なうことができる。
【0027】
前記粉砕物を加熱された状態且つ水に浸漬された状態にする一つの方法としては、前記粉砕物を沸騰水中に浸漬し、好ましくはその状態で煮沸する方法が挙げられる。
具体的には、前記粉砕物を沸騰している水に入れ、そのまま45分〜90分、好ましくは60分〜90分間、煮沸した後、そのままの状態で常温まで徐冷する方法が挙げられる。
【0028】
また前記粉砕物を加熱された状態且つ水に浸漬された状態にする別の方法としては、前記粉砕物を高温の炉内で加熱した直後に、水に浸漬する方法が挙げられる。
例えば、100℃〜500℃に加熱した炉内で60分から120分程度加熱した後に、5℃〜35℃(常温という意味)の水に好ましくは1日以上、さらに好ましくは1日〜2日間浸漬する方法が挙げられる。
この時、炉内で前記粉砕物は炉の加熱温度と同じ程度の高温にまで加熱されているため、炉から出した直後、例えばおよそ1分以内程度に粉砕物を水に浸漬すれば、前記粉砕物は、高温に加熱された状態で水に浸漬される。
【0029】
このようにして形成された瓦廃材骨材は十分に水分を含んでいるため、特に、高強度コンクリートあるいは高強度モルタル用などの水結合材比の低い水硬性材料に配合される骨材として適している。
尚、水に浸漬された粉砕物は、瓦廃材骨材として水硬性材料に配合する前には、水切りを行い、表面乾燥飽水状態として使用することが好ましい。
【0030】
次に、前記方法で得られた瓦廃材骨材が、細骨材あるいは粗骨材の一部として配合されたセメント組成物について説明する。
本実施形態のセメント組成物は、結合材と、細骨材とを含むモルタル用のセメント組成物、あるいは、結合材と、細骨材および粗骨材を含むコンクリート用のセメント組成物が例示される。
【0031】
本実施形態で使用される結合材としては、高強度コンクリートに使用できるセメントであれば特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカセメントなどの公知のセメントの中から適宜選択して使用することが可能であるが、これらの中でも、特に自己収縮の少ない低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントなどを使用することが好ましい。
【0032】
本実施形態の結合材には、前記セメントの他に必要に応じてシリカフューム、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、膨張材、急硬材などのセメント用混和材が混合されていてもよい。
【0033】
また、前記結合材としては、あらかじめセメントやその他の結合材の材料が混合されているプレミックスを用いることもできる。
【0034】
前記細骨材としては、川砂、山砂、陸砂、砕砂、海砂、珪砂3〜7号等の比較的粒径の細かい細骨材、または珪石粉、石灰石粉等の微粉末等の公知の細骨材を使用できる。
【0035】
さらに、粗骨材としては、砂利や砕石等の公知の粗骨材を用いることができる
【0036】
本実施形態のセメント組成物においては、前記細骨材または/および粗骨材の一部を前記瓦廃材骨材に置き換えて配合される。
前記瓦廃材骨材を配合する割合としては、前記細骨材と粗骨材の合計の絶対容積に対して、10%〜30%、さらに好ましくは30%程度、配合することが好ましい。
前記範囲であれば、強度も維持しつつ自己収縮ひずみも抑制することができるためのである。
【0037】
また、細骨材、粗骨材の両方の一部を前記瓦廃材骨材で置換する場合には、細骨材の5〜25%、粗骨材の5〜25%、好ましくは、細骨材の5〜10%、粗骨材の20〜25%になるような量の前記瓦廃材骨材を配合することが、自己収縮ひずみの抑制と強度維持の観点から特に好ましい。
さらに、各置換する瓦廃材骨材の粒子サイズは、それぞれ、細骨材および粗骨材のサイズに合わせたものを使用することが好ましい。
【0038】
さらに前記セメント組成物を混練水と混練することで水硬性材料が得られる。
混練方法としては、前記結合材と前記瓦廃材骨材を混合した細骨材および/または粗骨材とを混合し、さらに、水および減水剤や消泡剤などの液状の各種混和剤を必要に応じて混合した液状の成分(混練水)を添加して公知のミキサーなどの練り混ぜ手段を用いて混練する。
【0039】
前記結合材と混練水との比率は、混練水の結合材に対する比率(水結合材比)が40%以下、好ましくは10%〜20%であることが好ましい。
ただし、減水剤などを添加することで練り混ぜが可能な場合には、水結合材比が10%より低くてもよい。
【0040】
このようにして得られた水硬性材料は、硬化後に自己収縮によるひずみが少なく、且つ機械的強度も高いコンクリートあるいはモルタルなどの硬化体が得られる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0042】
(吸水率の測定)
本発明の骨材の吸水率を測定した。
瓦廃材の粉砕物であって、前記細骨材のレベルのものと、粗骨材のレベルのものを2種類用意した。
【0043】
細骨材用および粗骨材用の粉砕物をそれぞれ、100℃の沸騰水中で1時間煮沸し、そのまま徐冷した.また,100℃、300℃、500℃の炉内で1時間加熱し、炉から出した直後に20℃の水に浸漬した。それらを練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にして、それぞれ実施例1から4として用意した。
一方、細骨材用、粗骨材用の各粉砕物を、加熱することなく常温の水に2日間浸漬したものを練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にして、比較例1として用意した。
各実施例および比較例の吸水率を測定した。
吸水率は、細骨材用の粉砕物は、JIS A 1109「細骨材の密度及び吸水率試験方法」に従って測定した。また、粗骨材用の粉砕物は、JIS A 1110「粗骨材の密度及び吸水率試験方法」に従って測定した。
【0044】
吸水率の測定結果を表1に示した。
表1より、各実施例は細骨材用、粗骨材用ともに比較例よりも吸水率が高いことがわかる。
【0045】
【表1】

【0046】
(モルタルの圧縮強度の測定)
本発明の瓦廃材骨材を用いたモルタルの圧縮強度を測定した。
まず、瓦廃材骨材として前記と同様に適切なサイズに調整した細骨材用の瓦廃材の粉砕物を用いて、それぞれ、100℃の熱湯中で1時間煮沸したまま徐冷したものと、100℃、300℃、500℃の炉内で1時間加熱した直後に20℃の水に浸漬したまま徐冷したものを準備した。それらを練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたもの、および前記粉砕物を加熱することなく常温の水に2日間浸漬し、練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものを実験に供した。
これらの瓦廃材骨材と表2に示す材料を使用して表3に示す配合でモルタル組成物用の水硬化物を作成した。尚、各モルタル組成物の設計空気量は3%であった。
【0047】
瓦廃材骨材として、前記100℃の沸騰水中で1時間煮沸したまま徐冷し練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものを実施例5、100℃、300℃、500℃の炉内で加熱して直後に水に浸漬したまま徐冷し、練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものを順に実施例6、7および8とした。
尚、この時の各実施例の瓦廃材骨材の細骨材の絶対容積に対する割合は30%である。
一方、瓦廃材骨材を使用しない細骨材を表面乾燥飽水状態にして使用したものを比較例2とし、前記粉砕物を加熱することなく常温の水に2日間浸漬し、練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものを比較例3とした。
尚、細骨材および瓦廃材骨材を表面乾燥飽水状態にする方法は、JIS A 1109およびJIS A 1110に示された手順に従った。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
各実施例、および比較例のモルタルから、大きさφ50×100mmの円柱供試体を作製し、70℃、144時間水中加熱養生させた各供試体をJIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に従って圧縮強度を測定した。
結果を表4に示した。
【0051】
【表4】

【0052】
(モルタルの自己収縮ひずみの測定)
上記圧縮強度を測定した各実施例および比較例と同じ供試体の自己収縮ひずみと経過時間の関係を測定した。
自己収縮ひずみは、日本コンクリート工学協会「コンクリートの自己収縮試験方法」に従って測定した。
結果を図1に示す。
【0053】
図1から各実施例は各比較例に比べて日数が経過しても自己収縮率が低くひずみが小さく、且つ、表4に示すように、いずれも瓦廃材骨材を使用していない比較例2と同等以上の圧縮強度であることがわかる。
【0054】
(コンクリートの圧縮強度の測定)
本発明の瓦廃材骨材を用いたコンクリートの圧縮強度を測定した。
まず、瓦廃材骨材として前記と同様の粗骨材用の瓦廃材の粉砕物を準備し、それぞれ、100℃の熱湯中で1時間煮沸ししたまま徐冷し、コンクリートの練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものと、100℃、300℃、500℃の炉内で1時間加熱した直後に水に浸漬したまま徐冷し、コンクリートの練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたもの、および前記粉砕物を常温の水に2日間浸漬し、コンクリートの練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものを準備した。
これらの瓦廃材骨材と他の材料を表5に示す配合で混合して、コンクリート組成物用の水硬化物を作製した。
表5に示す材料のうち、結合材および細骨材は前記モルタル組成物と同じものを使用した。
粗骨材としては密度2.65g/cm3、吸水率0.84%、実積率58.5%の桜川産硬質砂岩砕石を用いた。
化学混和剤として、高性能減水剤(商品名:シーカメント1200N、日本シーカ 株式会社製)および消泡剤(商品名:シーカアンチフォーム、日本シーカ株式会社製)を用いた。
化学混和剤の添加量は、目標スランプフロー75±10cm、目標空気量1.5±1.5%となるように定めた。
瓦廃材骨材は、100℃の熱湯中で1時間煮沸したものを実施例9、100℃、300℃、500℃の炉内で加熱したものを順に実施例10、11および12とした。
尚、この時の各実施例の瓦廃材骨材の粗骨材の絶対容積に対する置換率は30%である。
一方、瓦廃材骨材を使用しないものを比較例4とし、前記粉砕物を加熱せずに常温の水に2日間浸漬し、コンクリートの練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものを比較例5とした。
各実施例および比較例のコンクリートから、サイズφ100×200mmの円柱供試体を作製し、この各供試体を70℃、168時間水中加熱養生させた後、前記モルタルの圧縮強度と同様の測定方法で測定した圧縮強度を表6に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
(コンクリートの自己収縮ひずみの測定)
前記実施例9〜12および比較例4および5のコンクリートの自己収縮ひずみを、前記モルタルと同様の方法で測定した結果を図2に示す。
【0058】
図2から、各実施例は各比較例に比べて日数が経過しても収縮率が低くひずみが小さいことがわかる。また、表6に示すように、瓦廃材骨材を使用していない比較例4に対して95%以上の圧縮強度を維持している。
【0059】
(瓦廃材骨材の置換率と圧縮強度および自己収縮ひずみとの関係)
コンクリート中の細骨材および粗骨材に対する瓦廃材骨材の置換量を変化させた場合の圧縮強度との関係を測定した。
表7に示す配合で、実施例13〜17および比較例6のコンクリートを準備した。
表7中の結合材および各骨材(粗骨材および細骨材)は前記実施例5〜12と同様のものを使用し、圧縮強度も前記測定方法と同様に測定した。
瓦廃材骨材としては、前記と同様に調整した細骨材用のサイズのものと、粗骨材用のサイズのものをそれぞれ用意した。
結果を表7に示す。
【0060】
【表7】

【0061】
さらに、実施例13〜17および比較例6のコンクリートの自己収縮ひずみを前記実施例5〜12と同様に測定した結果を図3に示す。
【0062】
表7および図3の結果から、細骨材および粗骨材を瓦廃材骨材と置換したものはいずれも、無置換の比較例6と同等の圧縮強度を維持しつつ、自己収縮ひずみが小さいことがあきらかである。
【0063】
(瓦廃材骨材の置換率とモルタルの圧縮強度および自己収縮ひずみの関係)
瓦廃材骨材として前記と同様に適切なサイズに調整した細骨材用の瓦廃材の粉砕物を用いて、100℃の熱湯中で1時間煮沸したまま徐冷したものを準備した。
これを練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものを表8に示す配合でモルタル組成物の水硬化物を作製した。
細骨材と瓦廃材骨材の絶対容積に対して瓦廃材骨材の絶対容積が10%であるものを実施例18、20%のものを実施例19、30%のものを実施例20とした。
また、比較例7として瓦廃材骨材を使用しないで細骨材のみを使用したものと、比較例8として廃瓦の粉砕物を加熱することなく常温の水に2日間浸漬し、練混ぜ直前に表面乾燥飽水状態にしたものを使用したものをモルタル組成物の水硬化物として作製した。
尚、各モルタル組成物の設計空気量は3%であった。
【0064】
【表8】

【0065】
各実施例および比較例から、サイズφ100×200mmの円柱供試体を作製し、この各供試体を70℃、168時間水中加熱養生させた後、前記モルタルの圧縮強度と同様の測定方法で測定した圧縮強度を表9に示す。
【0066】
【表9】

【0067】
上記圧縮強度を測定した各実施例および比較例と同じ供試体の自己収縮ひずみと経過時間の関係を測定した。
自己収縮ひずみは、日本コンクリート工学協会「コンクリートの自己収縮試験方法」に従って測定した。
結果を図4に示す。
【0068】
図4から、各実施例では置換率が増加するに従い、各比較例に比べて日数が経過しても自己収縮率が低くひずみが小さいことがあきらかである。
さらに、表9に示すように、各実施例は各比較例と同等以上の圧縮強度を維持していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦廃材を粉砕した粉砕物を、加熱された状態且つ水に浸漬された状態にすることを特徴する瓦廃材骨材の製造方法。
【請求項2】
前記粉砕物を予め100℃〜500℃に加熱し、水に浸漬することで、加熱された状態且つ水に浸漬された状態にする請求項1に記載の瓦廃材骨材の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕物を沸騰している水に浸漬することにより、粉砕物を加熱された状態且つ水に浸漬された状態にする請求項1に記載の瓦廃材骨材の製造方法。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法で製造された瓦廃材骨材と、セメントとを含むことを特徴とするセメント組成物。
【請求項5】
粗骨材および/または細骨材を含み、且つ前記瓦廃材骨材が前記粗骨材および細骨材の 絶対容積に対して10〜30%混合されている請求項4に記載のセメント組成物。
【請求項6】
前記請求項4または5に記載のセメント組成物が、水結合材比が40%以下となるように混練水と混合されたことを特徴とする水硬性材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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