説明

甘味増強剤、飲食品及び甘味増強方法

【課題】糖類等の甘味成分の使用量を減らし、余分なカロリー摂取を抑制することができ、あるいは、ショ糖等に近い自然な甘味質を付与することができる製剤、飲食品及び方法を提供すること。
【解決手段】本発明の甘味増強剤は、羅漢果から抽出された羅漢果エキスからなり、添加対象中に共存する甘味成分の甘味を増強するために用いられる。また、本発明の飲食品は、甘味成分と、この甘味成分の甘味を増強するために有効な量の、羅漢果から抽出された羅漢果エキスと、を含有する。更に、本発明の甘味増強方法は、甘味成分を含む飲食品に対して、前記甘味成分の甘味を増強させるために有効な量の、羅漢果から抽出された羅漢果エキスを添加することにより、飲食品が呈する甘味を増強させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加対象中に共存する甘味成分の甘味を増強する甘味増強技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の変化に伴う肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の増加により、飲食品に対する低カロリー志向が高まっている。そのため、飲食品への甘味付与には、ショ糖等の糖類に比べて低カロリー、あるいはノンカロリーの甘味料が、ショ糖の代替品として利用されている。このような甘味料としては、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコールや強い甘味を呈するスクラロース、アセスルファムK、ステビアエキス、羅漢果エキス等の高甘味度甘味料が挙げられる。
【0003】
しかしながら、糖アルコールはショ糖よりも甘味度が低く、また、甘味があまり残留しないため、単独での使用には適さない。これに対して、高甘味度甘味料は非常に強い甘味を呈するものの、その甘味が強く残留し、また、甘味の質がショ糖に比べて劣ることから、やはり単独での使用には適さない。そのため、カロリーを高めることなく、ショ糖と同等の甘味度と甘味質とを飲食品に付与する方法が所望され、種々の試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、天然甘味料を含む食品の中に甘草エキスと鳳仙花アルコール抽出液を入れて加工し、天然甘味料の甘味を増す甘味増強方法が開示されている。この方法は、植物が本来有する味を強く引き出すことができるという鳳仙花アルコール抽出液の作用を利用したものであり、この方法によれば、食品に使用するショ糖等の天然甘味料の量を20〜25%低減することができる。また、特許文献2には、マンノースからなる甘味増強剤が開示されている。この甘味増強剤によれば、ショ糖等の糖質の甘味を増強することで、その使用量を低減し、低カロリー化を図ることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、甘味の増強効果は高いが、有効成分である鳳仙花アルコール抽出液には、花弁に含まれるアントシアニン由来の色があり、その使用により食品が着色されるため、使用できる食品が限られる。また、甘草エキスには、薬臭い独特の香気があること、更に、近年では、多量に摂取による副作用が指摘されていることからも、その使用は好ましいとは言い難い。特許文献2に開示された甘味増強剤は、甘味増強効果及び低カロリー化の面では問題はないが、マンノースは苦い後味を呈するため、ショ糖と同程度の甘味質の付与という点においては満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−248519号公報
【特許文献2】特開2001−352936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、糖類等の甘味成分の使用量を減らし、余分なカロリー摂取を抑制することができ、あるいは、ショ糖等に近い自然な甘味質を付与することができる製剤、飲食品及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、羅漢果エキスをショ糖等の甘味成分と併用することで、該甘味成分と、羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも強い甘味が感じられることを見出し、本発明に完成するに至った。羅漢果は、中国広西省桂林を産地とするウリ科の多年生つる植物であり、甘味成分であるトリテルペン配糖体であるモグロサイドVを含有し、強い甘味を呈することから、近年、そのエキスは天然の高甘味度甘味料として用いられている。しかしながら、羅漢果エキスに、共存する甘味成分の甘味を増強する効果があることは知られていない。本発明は、より具体的には、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 羅漢果から抽出された羅漢果エキスからなり、添加対象中に共存する甘味成分の甘味を増強するために用いられる甘味増強剤。
【0010】
(2) 飲食品の添加物として用いられる(1)に記載の甘味増強剤。
【0011】
(3) 甘味成分と、この甘味成分の甘味を増強するために有効な量の、羅漢果から抽出された羅漢果エキスと、を含有する飲食品。
【0012】
(4) 上記甘味成分は、糖類及び/又は高甘味度甘味料である(3)に記載の飲食品。
【0013】
(5) 上記飲食品は、清涼飲料水である(3)又は(4)に記載の飲食品。
【0014】
(6) 上記清涼飲料水は、紅茶飲料又はコーヒー飲料である(5)に記載の飲食品。
【0015】
(7) 甘味成分を含む飲食品に対して、上記甘味成分の甘味を増強させるために有効な量の、羅漢果から抽出された羅漢果エキスを添加することにより、飲食品が呈する甘味を増強させる甘味増強方法。
【0016】
(8) 上記甘味成分は、糖類及び/又は高甘味度甘味料を含む(7)に記載の甘味増強方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の甘味増強剤によれば、甘味成分と併用することで、該甘味成分と、羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも強い甘味を感じさせることができる。また、本発明の甘味増強剤は、ショ糖等に近い自然な甘味質を有するので、その使用により飲食品の風味を損ないにくい。これにより、糖類等の甘味成分の使用量を減らし、余分なカロリー摂取を抑制することができ、また、自然な甘味質を付与することができる。
本発明の飲食品は、カロリーが大きく高まることなく甘味だけが高まるので、カロリー制限を必要とする対象やダイエット中の対象にも好適である。
本発明の甘味増強方法によれば、甘味を呈する飲食品に対して羅漢果エキスを添加するだけで、飲食品が含む甘味成分と、羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも強い甘味を感じさせることができる。これにより、簡便に、糖類等の甘味成分の使用量を減らし、余分なカロリー摂取を抑制することができ、また、自然な甘味質を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明する。
【0019】
本発明の甘味増強剤は、羅漢果エキスを有効成分として含有することを特徴とする。本発明において、「甘味増強剤」とは、添加対象中に共存する甘味成分の甘味を増強するものである。ここで、甘味の増強とは、添加対象中の甘味成分と、甘味増強剤との甘味度の総和から予想される甘味よりも強い甘味を与えることをいい、好ましくは、甘味成分の甘味質をショ糖等の自然な甘味質へと改善することも含む。従って、甘味増強剤は、単にそれ自体の甘味を添加対象に付与する、つまり、添加対象中の甘味成分と、甘味増強剤との甘味度の総和から予想される甘味強度以下の甘味しか与えない甘味料とは明確に異なる。
【0020】
本明細書において、「甘味度」とは、甘味の強さを評価したものをいい、例えばショ糖の甘味度を1とした場合の相対値で表される。なお、ショ糖の甘味度を1とした場合の糖類、低甘味度甘味料、及び高甘味度甘味料の甘味度は、「甘味料の総覧(精糖工業会)」の記載に基づく。これによれば、例えば、果糖は1.5、ブドウ糖は0.5、果糖ブドウ糖液糖(55%異性化糖)は1、乳糖は0.4、キシリトールは0.6、ソルビトールは0.7、アセスルファムKは200、スクラロースは600である。
【0021】
本発明において、「羅漢果エキス」とは、羅漢果の果実(果皮を含む)から抽出溶媒を用いる従来公知の方法により得られる抽出液、該抽出液の濃縮液、希釈液、及び乾燥物をいう。例えば、羅漢果エキスの乾燥物は、以下の方法により製造することができる。まず、羅漢果の果実を粉砕し、水抽出した後、抽出液をスクリーン濾過し、濾液を得る。次いで、濾液を遠心分離し、得られた上澄みを精密濾過した後、限外濾過し、得られた濾液を樹脂処理する。そして、樹脂をエタノール溶液で洗浄し、羅漢果エキスを含有するエタノール溶液(以下、羅漢果エキス含有エタノール溶液とする。)を回収する。その後、羅漢果エキス含有エタノール溶液を濃縮し、殺菌した後、フリーズドライし、粉砕することにより得ることができる。なお、市販品としては、長興実業株式会社製の羅漢果エキス(FD羅漢果濃縮パウダーJFL038)等を好適に使用することができる。
【0022】
本発明の甘味増強剤は、ショ糖に近い自然な甘味質を呈する羅漢果エキスからなるので、その使用により飲食品の風味を損ないにくい。また、本発明の甘味増強剤は、高甘味度甘味料である羅漢果エキスからなるので、上記の甘味増強効果と相まって、甘味成分の使用量を効率的に減らすことができ、そして、低カロリーである羅漢果エキスからなるので、高カロリーの甘味成分と併用する場合には、甘味を増強しつつ、カロリーを低減することができる。このため、本発明の甘味増強剤は、飲食品の添加物として用いられることが好ましいが、これに限られず、医薬品(例えば糖衣)やサプリメント等の任意の経口投与物において用いられてもよい。
【0023】
添加対象中に共存する甘味成分は、添加対象において使用し得る甘味成分であればよく、甘味増強剤の用途に応じて選択されてよい。従って、甘味成分の具体例は、従来周知のものでよいので、説明を省略する。
【0024】
本発明の飲食品は、甘味成分と、この甘味成分の甘味を増強するために有効な量の、羅漢果から抽出された羅漢果エキスと、を含有する。ここで使用できる甘味成分は、飲食品で使用される甘味成分であれば特に限定されず、例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、マルチトール、ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、グリチルリチン酸二ナトリウム、ステビア抽出物、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン等の高甘味度甘味料等の1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。これらの中でも、ショ糖等の糖類は、1gあたり4kcalのカロリーを有し、上記甘味増強剤との併用によりその使用量が低減された場合のカロリー低減効果が顕著であるので好ましい。また、高甘味度甘味料は、その種類によって、独特の苦味、渋味、えぐみ等の好ましくない官能を伴う甘味を呈したり、ショ糖に比べて甘味が長く持続し、甘味の後切れが悪かったりするが、上記甘味増強剤との併用によりかかる甘味が改善され、甘味の消失時間が短縮され、甘味の後切れが良くなる効果が発揮されるので好ましい。
【0025】
本発明において、甘味を増強させるために有効な量とは、飲食品に含まれる甘味成分の種類や量に応じて設定されるものである。甘味を増強させるために有効な量の上限は、羅漢果エキス由来の香り等を感じにくい程度であることが好ましい。例えば、上記甘味増強剤とショ糖とを併用する場合には、上記有効な量は、羅漢果エキスの主甘味成分であるモグロサイドVが、ショ糖100質量部に対して好ましくは0.02〜1.6質量部、より好ましくは0.08〜0.42質量部、更により好ましくは0.12〜0.18質量部となる量である。また、上記甘味増強剤とスクラロースとを併用する場合には、上記有効な量は、モグロサイドVがスクラロース100質量部に対して好ましくは25〜255質量部、より好ましくは70〜165質量部となる量である。更に、上記甘味増強剤とアセスルファムKとを併用する場合には、上記有効な量は、モグロサイドVがアセスルファムK100質量部に対して好ましくは9〜150質量部、より好ましくは20〜40質量部となる量である。
【0026】
なお、羅漢果エキス中に含まれるモグロサイドVの定量には、従来公知の方法を用いることができる。例えば、以下の方法にて定量することができる。まず、羅漢果エキスの乾燥品(T)0.2gを70vol%メタノールに懸濁し、正確に100mLとした後、メンブランフィルター(孔径:0.45μm)でろ過し、検液とする。別途、定量用モグロサイドVの乾燥品(S)5mgを70vol%メタノールに溶解させ、正確に100mLとし、標準液とする。検液及び標準液をそれぞれ20μLずつ量り、液体クロマトグラフィー(検出器:UV、測定波長:203nm、カラム充填剤:5μmの液体クロマトグラフィー用アミノ化ポリビニルアルコールゲル、カラム管:内径4〜6mmの長さ25〜30cmのステンレス管、カラム温度:40℃、移動相:アセトニトリルと水との混合溶媒(74:26)、流量:モグロサイドVの保持時間が15〜20分になるように調整)を行う。そして、検液及び標準液のモグロサイドVのピーク面積A及びAを測定し、次式により羅漢果エキス中のモグロサイドVの含量を求める。
モグロサイドVの含量=(Sの採取量(g)/Tの採取量(g))×(A/A)×10×100(%)
【0027】
本発明の飲食品は、上記甘味成分を添加することが想定される飲食品であれば、特に限定されるものではなく、例えば、紅茶飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料等の清涼飲料水、発泡酒、カクテル、梅酒等のアルコール飲料、キャンディー、チョコレート、チューインガム、ラムネ菓子、グミ、クッキー、ビスケット、ケーキ、ドーナツ、アイスクリーム、プリン、ゼリー、ヨーグルト等の菓子類、卓上甘味料等が挙げられる。これらの中でも清涼飲料水は、近年、カロリー低減化の傾向が強く、特に、紅茶飲料やコーヒー飲料は、ショ糖のような自然な甘味を呈し、且つ甘味の後切れが良いことが好まれる嗜好性の高い飲料であり、羅漢果エキスの有する効果が顕著に発揮されることから好ましい。なお、本発明の飲食品は、ショ糖等に近い自然な甘味質を有する羅漢果エキスを含有するので、飲食品の風味が損なわれにくい。
【0028】
本発明の飲食品は、その他、本発明の効果を損なわない範囲内において、目的に応じて、各種栄養成分、酸味料、香料、着色剤、希釈剤、酸化防止剤、乳化剤、保存料、pH調整剤等の食品添加物を含有してもよい。
【0029】
次に、本発明の甘味増強方法について説明する。なお、上記説明と重複するものについては、その説明を省略する。
【0030】
本発明の甘味増強方法は、甘味成分を含む飲食品に対して、その甘味成分の甘味を増強させるために有効な量の羅漢果エキスを添加する工程を有し、これにより、上記飲食品の呈する甘味を増強させる。本発明の甘味増強方法によれば、甘味を呈する飲食品に対して羅漢果エキスを添加するだけで、甘味成分と、羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも強い甘味を与えることができるので、飲食品中に含まれる甘味成分の使用量を減らすことができる。甘味成分は、糖類及び/又は高甘味度甘味料を含むことが好ましい。ショ糖等の高カロリー糖類の場合には、甘味を高めつつ、糖類の使用量を減らすことができるので、カロリー摂取の抑制が可能であり、カロリー制限を必要とする対象やダイエット中の対象にも好適である。また、高甘味度甘味料の場合には、その使用量の低減により、高甘味度甘味料特有の苦味、渋味、えぐみ等の味質を含む甘味を改善したり、甘味の後引きを低減したりすることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。なお、特に記載のない限り、「%」は「質量%」とする。
【0032】
[羅漢果エキスの甘味評価]
羅漢果エキス(FD羅漢果濃縮パウダーJFL038,モグロサイドVの含有量:18.2%,長興実業株式会社製)を水に溶解し、表1に示す濃度の羅漢果エキス水溶液を調製した。そして、5名の専門パネラーがこれらの羅漢果エキス水溶液について官能評価を行い、3%ショ糖溶液と同程度の甘味度を有するものを選択した。
【0033】
【表1】

【0034】
3%ショ糖水溶液と、0.030%羅漢果エキス水溶液とは、同程度の強さの甘味を示した(表1)。この結果から、ショ糖の甘味度を1とした場合のこの羅漢果エキスの甘味度は、100であることが確認された。以下、この羅漢果エキスを用いて、甘味増強効果の確認試験を行うこととした。
【0035】
[羅漢果エキスの甘味増強効果の確認試験(1)]
羅漢果エキス及び/又はショ糖を水に溶解し、表2に示す試験溶液を調製した。そして、これらの試験溶液について、甘味の官能評価を行った。評価は、5名の専門パネラーが、下記に示す評価基準(0〜4の5段階評価)に従って行った。パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入して評価点とした。
【0036】
<評価基準>
0点:3%ショ糖水溶液と同程度の強さの甘味である。
1点:3%ショ糖水溶液よりもわずかに甘味が強い。
2点:3%ショ糖水溶液よりもやや甘味が強い。
3点:3%ショ糖水溶液よりも甘味が強い。
4点:3%ショ糖水溶液よりも明らかに甘味が強い。
【0037】
【表2】

【0038】
試験溶液番号A−2〜A−10の甘味が、試験溶液番号A−1、A−11に比べて強く感じられたことから、ショ糖と羅漢果エキスとを併用することで、ショ糖と羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも甘味を増強できることが明らかとなった(表2)。羅漢果エキスの使用によれば、甘味を増強できるので、ショ糖の使用量を減らし、余分なカロリー摂取を抑制することが可能となる。
【0039】
[羅漢果エキスの甘味増強効果の確認試験(2)]
羅漢果エキス及び/又はスクラロースを水に溶解し、表3に示す試験溶液を調製した。そして、これらの試験溶液について、甘味の官能評価を行った。評価は、上記の確認試験(1)の評価基準(0〜4の5段階評価)に従い、5名の専門パネラーが行った。パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入して評価点とした。なお、ショ糖の甘味度を1とした場合のスクラロースの甘味度は600であり(「甘味料の総覧(精糖工業会)」参照)、ショ糖の甘味度を1とした場合の羅漢果エキスの甘味度は100である(上記の「羅漢果エキスの甘味評価」参照)。これらのことから、羅漢果エキスの甘味度を1とした場合のスクラロースの甘味度を6と算出し、この数値に基づいて、羅漢果エキスとスクラロースとの配合割合を調整した。
【0040】
【表3】

【0041】
試験溶液番号B−3〜B−8の甘味が、試験溶液番号B−1、B−2、B−9〜B−11に比べて強く感じられたことから、スクラロースと羅漢果エキスとを併用することで、スクラロースと羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも甘味を増強できることが明らかとなった(表3)。また、試験溶液番号B−1では、甘味の後引きが認められたが、試験溶液番号B−3では、甘味の後引きが少なくなったことから、羅漢果エキスとの併用によりスクラロースの甘味の消失時間が短縮され、甘味の後切れが良くなることが明らかとなった(表3)。
【0042】
[羅漢果エキスの甘味増強効果の確認試験(3)]
羅漢果エキス及び/又はアセスルファムKを水に溶解し、表4に示す試験溶液を調製した。そして、これらの試験溶液について、甘味の官能評価を行った。評価は、上記の確認試験(1)の評価基準(0〜4の5段階評価)に従い、5名の専門パネラーが行った。パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入して評価点とした。なお、ショ糖の甘味度を1とした場合のアセスルファムKの甘味度は200であり(「甘味料の総覧(精糖工業会)」参照)、ショ糖の甘味度を1とした場合の羅漢果エキスの甘味度は100である(上記の「羅漢果エキスの甘味評価」参照)。これらのことから、羅漢果エキスの甘味度を1とした場合のアセスルファムKの甘味度を2と算出し、この数値に基づいて、羅漢果エキスとアセスルファムKとの配合割合を調整した。
【0043】
【表4】

【0044】
試験溶液番号C−3〜C−9が、試験溶液番号C−1、C−2、C−10、C−11に比べて、甘味が強く感じられたことから、アセスルファムKと羅漢果エキスとを併用することで、アセスルファムKと羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも甘味を増強できることが明らかとなった(表4)。また、試験溶液番号C−1では、甘味の後引きが認められたが、羅漢果エキスとの併用により甘味の後切れが良くなった。更に、試験溶液番号C−1では、高甘味度甘味料特有の苦味、えぐみ等が感じられたが、試験溶液番号C−6では、ショ糖に近い自然な甘味が感じられたことから、羅漢果エキスによれば、甘味質を改善できることが明らかとなった(表4)。
【0045】
[羅漢果エキスの甘味増強効果の確認試験(4)]
ショ糖、アセスルファムK、及び/又は羅漢果エキスを水に溶解し、表5に示す試験溶液を調製した。そして、これらの試験溶液について、甘味の官能評価を行った。評価は、上記の確認試験(1)の評価基準(0〜4の5段階評価)に従い、5名の専門パネラーが行った。パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入して評価点とした。
【0046】
【表5】

【0047】
ショ糖と、高甘味度甘味料であるアセスルファムKとを含む溶液において、アセスルファムKの一部を羅漢果エキスに置き換えたところ、甘味が強く感じられ、また、アセスルファムK特有の苦味、えぐみ等を含む甘味から自然な甘味への甘味質の変化が感じられた(表5のD−1、D−2、D−3)。また、上記溶液において、ショ糖の一部を羅漢果エキスに置き換えたところ、甘味が強く感じられた(表5のD−1、D−4、D−5)。このことから、甘味度が異なる2種類の甘味成分の混合物と羅漢果エキスとを併用しても、2種類の甘味成分の混合物と羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも甘味を増強できることが明らかとなった(表5)。
【0048】
[羅漢果エキスの甘味増強効果の確認試験(5)]
果糖及び/又は羅漢果エキスを水に溶解し、表6に示す試験溶液を調製した。そして、6名の専門パネラーがこれらの試験溶液について官能評価を行い、最も甘味の強いものを選択した。なお、ショ糖の甘味度を1とした場合の果糖の甘味度は1.5であり(「甘味料の総覧(精糖工業会)」参照)、ショ糖の甘味度を1とした場合の羅漢果エキスの甘味度は100である(上記の「羅漢果エキスの甘味評価」参照)。これらのことから、羅漢果エキスの甘味度を1とした場合の果糖の甘味度を0.015と算出し、この数値に基づいて、果糖と羅漢果エキスとの配合割合を調整した。
【0049】
【表6】

【0050】
試験溶液番号E−2の甘味が、試験溶液番号E−1、E−3に比べて強く感じられたことから、果糖と羅漢果エキスとを併用することで、果糖と羅漢果エキスとの甘味度の総和から予想される甘味よりも甘味を増強できることが明らかとなった(表6)。
【0051】
[羅漢果エキスの甘味増強効果の確認試験(6)]
紅茶葉13.4gを75℃のお湯400gで抽出した後、濾過し、紅茶液を得た。次に、ショ糖、羅漢果エキス、アスコルビン酸ナトリウム、香料及び重曹を水に溶解させた。なお、ショ糖及び羅漢果エキスは、最終的に得られる紅茶飲料において、表7に示す濃度となるように水に溶解させ、アスコルビン酸ナトリウム、香料及び重曹は、最終的に得られる紅茶飲料において、それぞれ0.5g/L、1.53g/L及び0.07g/Lとなるように水に溶解させた。そして、この溶液に上記紅茶液を、最終的に得られる紅茶飲料において、タンニンの含有量が53mg/100mLとなるように添加し、115.1℃にて20分間殺菌して、紅茶飲料F−1及び紅茶飲料F−2を得た。4名の専門パネラーがこれらの紅茶飲料について官能評価を行い、甘味の強い方を選択した。
【0052】
【表7】

【0053】
試験溶液番号F−2が、試験溶液番号F−1に比べて、甘味が強く感じられたことから、紅茶飲料においても、ショ糖と羅漢果エキスとを併用することで、ショ糖と羅漢果エキスとの甘味度の総和よりも甘味度を増加できることが明らかとなった(表7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羅漢果から抽出された羅漢果エキスからなり、添加対象中に共存する甘味成分の甘味を増強するために用いられる甘味増強剤。
【請求項2】
飲食品の添加物として用いられる請求項1に記載の甘味増強剤。
【請求項3】
甘味成分と、この甘味成分の甘味を増強するために有効な量の、羅漢果から抽出された羅漢果エキスと、を含有する飲食品。
【請求項4】
前記甘味成分は、糖類及び/又は高甘味度甘味料である請求項3に記載の飲食品。
【請求項5】
前記飲食品は、清涼飲料水である請求項3又は4に記載の飲食品。
【請求項6】
前記清涼飲料水は、紅茶飲料又はコーヒー飲料である請求項5に記載の飲食品。
【請求項7】
甘味成分を含む飲食品に対して、前記甘味成分の甘味を増強させるために有効な量の、羅漢果から抽出された羅漢果エキスを添加することにより、飲食品が呈する甘味を増強させる甘味増強方法。
【請求項8】
前記甘味成分は、糖類及び/又は高甘味度甘味料を含む請求項6に記載の甘味増強方法。