説明

甘味持続性の高い呈味が改善された甘味組成物

【課題】甘味の持続性が大きく、苦味などの不快感のない甘味料組成物を提供する。
【解決手段】 高甘味度甘味料のネオテーム と 天然由来甘味料のカンゾウ抽出物とからなる甘味料組成物。
ネオテームとカンゾウ抽出物中のグリチルリチン酸塩との相対重量比の範囲は、
(ネオテーム39重量部+グリチルリチン酸塩61重量部)
から
(ネオテーム 7重量部+グリチルリチン酸塩93重量部)
の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘味料に関し、詳しくは二種の甘味成分からなる甘味組成物に関する。
それぞれの単独の甘味料の長所を拡大しまた短所を低減させようとするものである。より具体的には、甘味の持続性が優れ、かつ苦味などの不快感のない呈味の改善された甘味組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
甘味成分のひとつは高甘味度甘味料のネオテーム:N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン1−メチルエステル である。
ネオテームは、砂糖の約10,000倍の非常に高い甘味度を有し、日本で食品添加物として承認されている甘味料の中で最も甘味度が高い。また上品な甘味を示し甘味度の持続性も大きい。
【0003】
もうひとつの甘味成分は、天然原料由来のカンゾウ抽出物である。
主成分はグリチルリチン酸塩:(3−β,20−β)−20−カルボキシ

−β−D−グルコピラヌロノシルーα−D−グルコピラノシドウロン酸の塩 であり、その含量は約60%である。
砂糖の約200倍の甘味を有する。甘味度の持続性は、上記(0002)のネオテームより更に高い。
【0004】
しかし、カンゾウ抽出物は、日本では食品添加物として食品添加物公定書(厚生労働省)に収載されているが、若干の苦味やエグミなど後味が残る短所のため味噌などの塩味をマイルドにする必要のある用途以外には、一般甘味料としてはあまり使用されていない。
以下、本発明のカンゾウ抽出物とは、上記食品添加物公定書(厚生労働省)の仕様に適合するカンゾウ抽出物のことを指すこととする。
【0005】
高甘味度甘味料と天然甘味料とを組み合わせることは公知である。
例えば(特許文献1)特表2009−505635「味覚増強用組成物並びに味覚増強組成物を含有する食用菓子製品及びチューインガム製品」(キャドバリー アダムス ユーエスエーエルエルシー)、(特許文献2)特表2009−517028「高効能甘味料を用いたチューインガム」(ザ・コカコーラ・カンパニー)に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−505635「味覚増強用組成物並びに味覚増強組成物を含有する、食用菓子製品及びチューインガム製品」
【特許文献2】特表2009−517028「高効能甘味料を用いたチューインガム」
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「食品と開発」VOL.44 NO.4 P.41〜P.46(2009)「シュガーレス・低カロリー食品と素材の最新動向」
【非特許文献2】食品添加物公定書 第8版(2006年)「カンゾウ抽出物」厚生労働省
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、甘味の持続性が従来技術以上に優れ、かつ苦味などの不快感のない砂糖に近い甘味を有する甘味料を、前記二成分からなる組成物として提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外にも、前記二成分を特定の組成範囲で組み合わせるとそれぞれの独の甘味料の長所を拡大しまた同時に短所を低減できることを見出し本発明に到達した。すなわち特定範囲では、甘味が長く持続し、しかも快な苦味などが低減し砂糖に近い甘みが得られるのである。
【0010】
一方、ネオテームの替わりに別の種類の高甘味度甘味料アスパラテームの場合には、不思議なことに、どの組成範囲にでも、甘味の持続性は不十分であり、不快な苦味は低減しない。つまり、理由は未解明だが、ネオテームとカンゾウ抽出物の組み合わせ自体に意味があり、しかも特定の組成範囲でのみ甘味の持続性と呈味改善とが両立する。
【発明の効果】
【0011】
砂糖のような一般甘味料としては使われてこなかったカンゾウ抽出物がネオテームとの組み合わせとは云え、砂糖同様の甘味料となることは正に驚くべきことである。
甘味の持続性が大きいという特長があるので、例えばチュウインガム用の甘味、あるいは裂きイカなど口の中で長くかむ食材として最適である。漬物、味噌、醤油、ドレッシング、ソースにも適している。
【0012】
より大きな視点で考えると、食品あるいは医薬品産業用に新たな甘味料組成物として砂糖に替えて利用できる。本発明は、健康志向の高まりから砂糖の使用を極力小さくする趨勢に合致している。また砂糖は、甘味ではなくエタノール製造用に大量に使われはじめており自動車用燃料となりつつある資源問題の懸念があり代替素材が求められているところであり、本発明は好適な素材のひとつとなり得る。
【0013】
一方本発明は、経済的意義も非常に大きい。すなわち、砂糖と同じ甘味度で換算すると価格は、約1/2に安価にできるので食品産業用素材としての魅力ははかりしれない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
高甘味度甘味料ネオテームは、米国ニュートラストスイート・カンパニー社品が使用できる。しかし甘味度が著しく高いため使用する時の相対重量が小さいので計量性が良くないし、また第二成分カンゾウ抽出物との均一混合が実施しにくいので、実用的には希釈した甘味製剤が使いやすい:例えば、大日本住友製薬(株)「ミラスイー200」は、ネオテーム2%と還元パラチノース98%を配合した製剤であり使用しやすい。その甘味度は、砂糖の約200倍である。
【0015】
本発明のカンゾウ抽出物は、(非特許文献2)食品添加物公定書第8版(2006年)「カンゾウ抽出物」厚生労働省の規格を満足するものを使用する。
具体例としては、(株)常磐植物化学研究所のカンゾウ抽出物「グリチノンGT1」がある。グリチルリチン酸塩を60%含む粉末である。
カンゾウ抽出物の甘味度は、砂糖の約200倍である。
【0016】
二成分は、通常粉末混合する。二成分を顆粒などに混合し一体化させておくと使いやすい。あるいは、菓子、チルドデザート、飲料、漬物などの製造時に他の主原料に直接混合してもよい。
【0017】
配合比は重要であり本発明のポイントである。カンゾウ抽出物が多いと苦味やエグミが後味として残り不快であり、少ないと甘味の持続性が不満足である。
【0018】
適切な範囲は、
甘味組成物中の ネオテームが 39重量部、
グリチルリチン酸塩が 61重量部
の割合から
ネオテームが 7重量部、
グリチルリチン酸塩が 93重量部
の範囲の甘味組成である。
この組成範囲は、実用配合的には
ミラスイー200 1,950重量部(95重量%)
カンゾウ抽出物 102重量部( 5重量%)
の混合割合から
ミラスイー200 350重量部(69重量%)、
カンゾウ抽出物 155重量部(31重量%)
の範囲の組成割合である。
【0019】
より好ましくは、
ネオテームが 23重量部
グリチルリチン酸塩が 77重量部
の割合から
ネオテームが 12重量部
グリチルリチン酸塩として 88重量部
の範囲の甘味組成である。
この組成範囲は、実用的には、
ミラスイー200 1,150重量部(90重量%)
カンゾウ抽出物 128重量部(10重量%)
から
ミラスイー200 600重量部(80重量%)
カンゾウ抽出物 147重量部(20重量%)
に対応する組成範囲である。
【0020】
【実施例】
【0021】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
【0023】
ネオテーム含量2%である「ミラスイー200」とグリチルリチン酸塩含量60%のカンゾウ抽出物とを数種の割合で粉末混合し、ヒトによる味見試験を行った。混合粉末100mgを匙にとり、舌にのせ5秒間軽く口の中に保持後飲み込み、その後の甘みの保持時間及び苦味などの不快な味が残るかどうかを測定した。なお、試験LOT間では、水道水20mLで3回を口中をすすいだ。
【0024】
(実施例1−1)
「ミラスイー200」95重量部(ネオテームとして1.9重量部(39重量%))
「カンゾウ抽出物」5重量部(グリチルリチン酸塩として3重量部(61重量%))
甘み持続時間:75秒、 苦味などの不快感全くなし、
【0025】
(実施例1−2)
「ミラスイー200」90重量部(ネオテームとして1.8重量部(23重量%))
「カンゾウ抽出物」10重量部(グリチルリチン酸塩として6重量部(77重量%))
甘み持続時間:80秒、 苦味などの不快感なし、
【0026】
(実施例1−3)
「ミラスイー200」80重量部(ネオテームとして1.6重量部(12重量%))
「カンゾウ抽出物」20重量部(グリチルリチン酸塩として12重量部(88重量%))
甘み持続時間:85秒、 苦味などの不快感なし、
【0027】
(実施例1−4)
「ミラスイー200」70重量部(ネオテームとして1.4重量部(7重量%))
「カンゾウ抽出物」30重量部(グリチルリチン酸塩として18重量部93重量%))
甘み持続時間:90秒、 苦味などの不快感小さい。
【0028】
(比較例1−1)
「ミラスイー200」100重量部(ネオテームのみ)
「カンゾウ抽出物」 0重量部(グリチルリチン酸塩なし)
甘み持続時間:50秒、 苦味などの不快感まったくない。
【0029】
(比較例1−2)
「ミラスイー200」97重量部(ネオテームとして1.94重量部(52重量%))
「カンゾウ抽出物」3重量部(グリチルリチン酸塩として1.8重量部(48重量%))
甘み持続時間:60秒、 苦味などの不快感まったくない。
【0030】
(比較例1−3)
「ミラスイー200」60重量部(ネオテームとして1.2重量部(5重量%))
「カンゾウ抽出物」 40重量部(グリチルリチン酸塩として24重量部(95重量%))
甘み持続時間:95秒、 ツンとする苦味あり。
【0031】
上記実施例と比較例から、適切な範囲では甘味の持続時間が長く、また苦味などの不快感がないことがわかる。
【0032】
(実施例2)
【0033】
(実施例1)と同様にヒトによる味見官能試験を行った。検体は、
(実施例1)と異なり、粉末混合物を水道水に溶かし、0.5%水溶液で行った。
【0034】
(実施例2−1)
「ミラスイー200」95重量部と「カンゾウ抽出物」 5重量部との混合組成物を水道水に溶かし0.5%水溶液とした。組成物中のネオテームとグリチルリチン酸塩との相対重量比は、39(ネオテーム)対61(グリチルリチン酸塩)である。
甘み持続時間:50秒、 苦味などの不快感全くなし。
【0035】
(実施例2−2)
「ミラスイー200」90重量部と「カンゾウ抽出物」10重量部との混合組成物を水道水に溶かし0.5%水溶液とした。組成物中のネオテームとグリチルリチン酸塩との相対重量比は、23(ネオテーム)対77(グリチルリチン酸塩)である。
甘み持続時間:55秒、 苦味などの不快感なし。
【0036】
(実施例2−3)
「ミラスイー200」80重量部と「カンゾウ抽出物」20重量部との混合組成物を水道水に溶かし0.5%水溶液とした。組成物中のネオテームとグリチルリチン酸塩との相対重量比は、12(ネオテーム)対88(グリチルリチン酸塩)である。
甘み持続時間:60秒、 苦味などの不快感なし
【0037】
(実施例2−4)
「ミラスイー200」70重量部と「カンゾウ抽出物」30重量部との混合組成物を水道水に溶かし0.5%水溶液とした。組成物中のネオテームとグリチルリチン酸塩との相対重量比は、7(ネオテーム)対93(グリチルリチン酸塩)である。
甘み持続時間:65秒、 苦味、エグミなどの不快感小さい。
【0038】
(比較例2−1)
「ミラスイー200」97重量部と「カンゾウ抽出物」 3重量部との混合組成物を水道水に溶かし0.5%水溶液とした。組成物中のネオテームとグリチルリチン酸塩との相対重量比は、52(ネオテーム)対48(グリチルリチン酸塩)である。
甘み持続時間:43秒、 苦味などの不快感全くなし。
【産業上の利用可能性】
【0039】
食品あるいは医薬品産業用に新たな甘味料組成物として砂糖に替えて利用できる。本発明は、健康志向のたかまりから砂糖の使用を極力小さくする趨勢に合致している。また砂糖は、甘味ではなくエタノール製造用に大量に使われはじめており自動車用燃料となりつつある資源問題の懸念があり代替素材が求められているところであり、本発明は好適な素材のひとつとなり得る。
【0040】
一方本発明は、経済的意義も非常に大きい。すなわち、砂糖と同じ甘味度で換算すると価格は、約1/2にダウンできるので食品産業用素材としての魅力ははかりしれない。
【0041】
本発明の特徴は、甘味の持続性が高いことであり、チュウインガムなどの甘味の持続が大切な用途に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高甘味度甘味料ネオテーム と 天然甘味料のカンゾウ抽出物 との二成分からなる甘味組成物であって、ネオテームとカンゾウ抽出物中のグリチルリチン酸塩 との重量組成比が
(ネオテーム39重量部+グリチルリチン酸塩61重量部)
から
(ネオテーム 7重量部+グリチルリチン酸塩93重量部)
の範囲であることを特徴とする甘味組成物。
【請求項2】
ネオテームとして、ネオテーム2%と還元パラチノース98%を配合した製剤を使用することを特徴とする上記(請求項1)の甘味組成物。
【請求項3】
グリチルリチン酸塩として、食品添加物公定書 第8版(2006年)「カンゾウ抽出物」厚生労働省 の規格を満足するカンゾウ抽出物を使用することを特徴とする上記(請求項2)の甘味組成物。