説明

甘味料組成物

【課題】
本発明は、甘味料の味質を改善し、砂糖の風味に近づけた甘味料組成物を提供する。
【解決手段】
アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、カンゾウ抽出物およびサッカリンからなる群から選択される1〜2種の高甘味度甘味料とネオテームを含有する甘味料組成物を提供する。該組成物において、例えば、高甘味度甘味料が、スクラロースである場合には、スクラロース1重量部に対して、0.001重量部〜0.1重量部含有する。ネオテームは、組成物において0.01ppm〜4ppm含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘味料の味質を改善し、砂糖の風味に近づけた甘味料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖は、その良質な甘味バランス、ボディ感(コク)、保湿性、物性の付与等の特性から、従来より飲食物に甘味料として広く使用されている。しかしながら、近年の健康志向や、低カロリー(ゼロカロリー)、低糖(糖質ゼロ)ブームにより、肥満や虫歯の原因となる砂糖は敬遠されるようになってきた。よって、飲料やデザートの嗜好品を中心に、幅広い食品で低カロリー化(低糖化)が進み、更にはゼロカロリー(糖質ゼロ)食品が登場するようになってきた。
【0003】
これらの、低カロリー(低糖)、ゼロカロリー(糖質ゼロ)食品には、砂糖の代わりに高甘味度甘味料が甘味を付与する目的で使用されている。高甘味度甘味料は、砂糖よりも強い甘味を有しているため、少ない添加量で甘味を付与することができることから、最終食品中ではカロリー摂取に寄与しない点で有用である。
しかしながら、これらの高甘味度甘味料には、苦味、渋み、金属味といった不快な雑味があり、甘味の後引きが強く、ボディ感(コク)が不足しているため、砂糖と比較して甘味のバランスが悪く、消費者に受け入れられないという問題があった。
【0004】
低カロリー(低糖)製品においては、これらの高甘味度甘味料の甘味の後引きを改善する方法として、砂糖や果糖ブドウ糖液糖と併用することが可能である。しかしながら、本方法ではゼロカロリー(糖質ゼロ)製品の製造は困難であった。
【0005】
一方、高甘味度甘味料の甘味の後引きを改善する方法として、甘味の発現がシャープなアセスルファムカリウムと併用する方法(特許文献1)、ビートオリゴ糖(特許文献2)やL−アラビノースのような糖類と併用する方法(特許文献3)、有機酸を用いる方法(特許文献4)、コーヒー豆加水分解物(特許文献5)や植物抽出物成分(特許文献6)やメントール類のような香料を使用する方法(特許文献7)が検討されてきた。しかしながら、上記検討により、味質バランスが改善されるものの、消費者の嗜好を十分に満足するには至っていない。
【0006】
ネオテームは、アスパルテームの還元アルキル化により合成されるジペプチドメチルエステル誘導体である。その甘味度は使用する食品の種類や配合組成によって異なるが、アスパルテームの30〜60倍、砂糖の7000〜13000倍とされており、苦味や金属味のないクリーンな味質を有している。飲料、卓上甘味料、ヨーグルト、ケーキ、チューインガムといった様々な食品に8〜250ppm使用することで、適度な甘味が付与される。また、甘味の付与だけではなく、フレーバー及び酸味を増強することが知られている。また、アスパルテームと比較して甘味の立ち上がりが遅く、甘味が長く続くことが知られている(非特許文献1)。
また、ネオテームと高甘味度甘味料を併用する方法が提案されているが、ネオテームによる高甘味度甘味料の味質の改善に関する詳細な報告はなされていない(特許文献8)。
【0007】
また、ネオテームの甘味特性を砂糖及びスクラロースと比較すると、高濃度では砂糖やスクラロースと比較して甘味の立ち上がりが遅く、甘味が後まで持続するという特徴を有している。よって、高濃度のネオテームにおいては、ネオテームの甘味の後味により、不快な風味の後味がマスキングされ、風味が改善されることが容易に説明される。一方、低濃度では甘味の持続性はスクラロースより短く、砂糖と同程度であることから、高濃度ネオテームと同様の味質改善効果は期待されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特許文献1:特開昭53−3571号公報
特許文献2:特開2000−197462号公報
特許文献3:特開2008−245660号公報
特許文献4:特開2003−210147号公報
特許文献5:特許第4068788号公報
特許文献6:特許第2615345号公報
特許文献7:特許第3869071号公報
特許文献8:特表平8−503206号公報
【非特許文献】
【0009】
非特許文献1:Food Chemistry 69 (2000) 245-257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高甘味度甘味料の欠点である、雑味、甘味の後引き感、ボディ感の不足を改善し、食品、医薬品又は医薬部外品等の経口的に用いられる製品に対して、良好な甘味を付与できる甘味組成物を提供することを目的とする。加えて、ネオテームが低濃度におけるネオテームの味質改善効果を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を鑑み、本願の発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行った。その結果、高甘味度甘味料にネオテームを組み合わせることにより、より砂糖に近い風味を有する組成物を見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の通りである。
【0012】
項1:アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、カンゾウ抽出物およびサッカリンからなる群から選択される1〜2種の高甘味度甘味料とネオテームを含有する甘味料組成物。
【0013】
項2:ネオテームを、高甘味度甘味料1重量部に対して、0.001重量部〜0.2重量部含有する、項1に記載の甘味料組成物。
【0014】
項3:高甘味度甘味料が、アスパルテームである、項1または項2に記載の甘味料組成物。
【0015】
項4:ネオテームを、アスパルテーム1重量部に対して、0.001重量部〜0.02重量部含有する、項1〜項3のいずれか一項に記載の甘味料組成物。
【0016】
項5:ネオテームを、アスパルテーム1重量部に対して、0.002重量部〜0.006重量部含有する、項4に記載の甘味料組成物。
【0017】
項6:高甘味度甘味料が、スクラロースである、項1または項2に記載の甘味料組成物。
【0018】
項7:ネオテームを、スクラロース1重量部に対して、0.001重量部〜0.1重量部含有する、項6に記載の甘味料組成物。
【0019】
項8:ネオテームを、スクラロース1重量部に対して、0.003重量部〜0.03重量部含有する、項6または項7に記載の甘味料組成物。
【0020】
項9:高甘味度甘味料が、アセスルファムカリウムである、項1または項2に記載の甘味料組成物。
【0021】
項10:ネオテームを、アセスルファムカリウム1重量部に対して、0.003重量部〜0.06重量部含有する、項9に記載の甘味料組成物。
【0022】
項11:ネオテームを、アセスルファムカリウム1重量部に対して、0.003重量部〜0.03重量部含有する、項9または項10に記載の甘味料組成物。
【0023】
項12:高甘味度甘味料が、ステビアである、項1または項2に記載の甘味料組成物。
【0024】
項13:ネオテームを、ステビア1重量部に対して、0.001重量部〜0.1重量部含有する、項12に記載の甘味料組成物。
【0025】
項14:ネオテームを、ステビア1重量部に対して、0.002重量部〜0.02重量部含有する、項12または項13に記載の甘味料組成物。
【0026】
項15:高甘味度甘味料が、サッカリンである、項1または項2に記載の甘味料組成物。
【0027】
項16:ネオテームを、サッカリン1重量部に対して、0.01重量部〜0.2重量部含有する、項15に記載の甘味料組成物。
【0028】
項17:ネオテームを、サッカリン1重量部に対して、0.02重量部〜0.1重量部含有する、項15または項16に記載の甘味料組成物。
【0029】
項18:高甘味度甘味料が、スクラロースおよびアセスルファムカリウムである、項1または項2に記載の甘味料組成物。
【0030】
項19:ネオテームを、スクラロースおよびアセスルファムカリウムの全重量 1部に対して、0.003重量部〜0.06重量部含有する、項18に記載の甘味料組成物。
【0031】
項20:ネオテームを、スクラロースおよびアセスルファムカリウムの全重量 1部に対して、0.003重量部〜0.04重量部含有する、項19または項20に記載の甘味料組成物。
【0032】
項21:ネオテームを0.01ppm〜4ppm含有することを特徴とする、項1〜項20のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0033】
本発明の組成物は、高甘味度甘味料が有する呈味性における欠点(雑味、甘味の後引き、しつこさ)が軽減され、改善された、砂糖に近い風味を有するノンカロリー甘味料である。本組成物を使用することにより、砂糖や果糖ブドウ糖液糖を使用した製品の風味に近い、嗜好性の高いノンカロリー製品を提供することができる。また、砂糖や果糖ブドウ糖液糖と併用することで、さらに自然な甘味質を有し、カロリーを抑えた製品を提供することができる。よって、本発明の甘味料組成物は、高甘味度甘味料の欠点ゆえに適用対象が制限されていた食品等にも広く用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明について更に詳細に説明する。
「ネオテーム」とは、N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン− 1−メチルエステルを意味する。ネオテームは、無水物であっても、水和物であってもいずれでもよい。例えば、特許第3643921号公報に記載されているように1水和物(A型結晶)または水分含量3%未満のC型結晶のいずれでもよい。尚、ネオテームのC型結晶とは、CuKα線を用いる粉末X線回折法で測定した場合における回折角度において、7.1°、19.8°、17.3°及び17.7°の回折角度(2θ)に回折X線の特有ピークを示す結晶を意味する。
【0035】
「アスパルテーム」とは、L−α−アスパルチル−L−フェニルアラニン メチルエステルを意味する。
【0036】
「スクラロース」とは、ショ糖分子内のフルクトース残基の1,6位およびグルコース残基の4位の三つの水酸基を塩素分子で置換した構造を有する4,1´,6´−トリクロロガラクトスクロースを意味する。
【0037】
「アセスルファムカリウム」とは、6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン−2,2−ジオキシドカリウムを意味する。
【0038】
「ステビア」とは、南米原産のキク科多年性植物(Stevia Revaudiana Bertoni)の葉から抽出、精製されたステビア甘味料を意味する。ステビア甘味料の具体例としては、ステビオサイドを主成分とするまたレバウディサイドAを主成分とするステビア抽出物、糖付加ステビア(α−グルコシルステビオサイド)などが挙げられる。
【0039】
「カンゾウ抽出物」とは、マメ科植物(Glycyrrhiza uralenisi
s FISCHER、Glycyrrhiza inflata BATALIN、Glycyrrhiza glabra LINNE)の根もしくは根茎から抽出、精製されたもので、グリチルリチン酸を主成分とする。
【0040】
「サッカリンナトリウム」とは、2,3−ジヒドロ−3−オキソベンズイソスルフォンアゾール(サッカリン)のナトリウム塩を意味する。
【0041】
本発明の甘味料組成物における「ネオテーム」の他の高甘味度甘味料に対する配合割合は、併用する高甘味度甘味料1重量部に対して、0.001重量部〜0.2重量部である。かかる含有量は、高甘味度甘味料の甘味度や味質に応じて変化し得る。例えば、併用する高甘味度甘味料がアスパルテームの場合は、アスパルテーム1重量部に対して、0.001重量部〜0.02重量部が好ましく、更に0.002重量部〜0.006重量部が好ましい。併用する高甘味度甘味料がスクラロースの場合は、0.001重量部〜0.1重量部が好ましく、更に0.003重量部〜0.03重量部が好ましい。併用する高甘味度甘味料がアセスルファムカリウムの場合は、0.003重量部〜0.06重量部が好ましく、更に0.003重量部〜0.03重量部が好ましい。併用する高甘味度甘味料がステビアの場合は、ステビア1重量部に対して、0.001重量部〜0.1重量部が好ましく、更に0.002重量部〜0.02重量部が好ましい。併用する高甘味度甘味料がカンゾウ抽出物の場合は、カンゾウ抽出物1重量部に対して、0.001重量部〜0.01重量部が好ましい。併用する高甘味度甘味料がサッカリンの場合は、サッカリン1重量部に対して、0.01重量部〜0.2重量部が好ましく、更に0.02重量部〜0.1重量部が好ましい。また、併用する高甘味度甘味料が、スクラロースおよびアセスルファムカリウムの2成分の場合には、これら2成分の全重量部に対して、0.003重量部〜0.06重量部が好ましく、更に0.003重量部〜0.04重量部が好ましい。
【0042】
本発明における「ネオテーム」の含有量は、例えば、甘味料組成物に対して、0.01ppm〜4ppmが挙げられる。
【0043】
本発明の甘味料組成物は、本発明の効果を損なわない限度において、食品添加物として使用可能な各種酸味料(天然成分から抽出した果汁、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸)、無機酸塩もしくは無機塩類(リン酸、リン酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなど)、有機酸もしくは有機酸塩類(クエン酸、コハク酸など)などを含有してもよい。
【0044】
その他にも、通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤や食品素材を含んでもよい。例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、還元パラチノース、結晶セルロースなど)、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウムなど)、結合剤(例えば、アラビアゴムなど)、香料(例えば、オレンジエッセンスなど)などが挙げられる。
【0045】
本発明の組成物は、ネオテームと高甘味度甘味料を同時に、または別々に混合して製造することができる。該組成物の混合時において、ネオテームおよび高甘味度甘味料は粉末状態、またはそれを蒸留水などの水溶液に溶解した状態で混合してもよい。
【0046】
本発明の組成物は、そのまま卓上甘味料として使用できるだけでなく、甘味料組成物として各種食品に使用することができる。各種食品としては、特に制限はされないが、好適には、柑橘果汁や野菜果汁等を含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャエール又はサイダー等の炭酸飲料、スポーツドリンク等の清涼飲料水、コーヒー、紅茶や抹茶等の茶系飲料、ココアや乳酸菌飲料等の乳飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムース等のデザート類;ケーキ、クラッカー、ビスケット、パイや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類;米菓、スナック類;アイスクリームやシャーベット等の冷菓並びに氷菓;チューインガム、ハードキャンディ、ヌガーキャンデー、ゼリービーンズ、等を含む糖菓一般;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類;イチゴジャムやマーマレード等のジャム;菓子パン等を含むパン;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ等の調味料一般;蒲鉾等の練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品を広く例示することができる。
【0047】
各種食品のみならず、医薬部外品に用いることもできる。医薬部外品としては、例えば、口内清涼剤、うがい剤、歯磨き等のオーラルケア製品などが挙げられる。
【0048】
本発明の効果を奏するためには、結果的に食品などにネオテームと、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビアおよびサッカリンからなる群から選択される1〜2種の高甘味度甘味料が含有されていればよい。すなわち、必ずしも同一の食品中に2種の高甘味度甘味料(例えば、ネオテームとスクラロースなど)が添加されている必要はなく、異なる食品にそれぞれ別々に含まれる場合であっても、食する時点においてそれぞれの高甘味度甘味料が共存していればよい。
【実施例】
【0049】
本発明の異味を呈する製品の呈味の改善方法を以下の実施例によって説明する。しかしながら、この発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
参考例1:ネオテームの甘味の持続性
10%砂糖水溶液、260ppmスクラロース水溶液、16.2ppmネオテーム水溶液を調製し、甘味発現と甘味の持続性を確認した。下記表1(甘味発現と甘味の持続性
)のようにネオテームは、砂糖やスクラロースと比較して甘味の立ち上がりが遅く、甘味が後まで持続していた。
【0051】
【表1】

【0052】
参考例2:低濃度におけるネオテームの甘味の持続性
3%砂糖水溶液、51ppmスクラロース水溶液、3.3ppmネオテーム水溶液を調整し、甘味発現と甘味の持続性を確認した。下記表2(低濃度における甘味発現と甘味の持続性)のように、ネオテームは、砂糖やスクラロースと比較して甘味の立ち上がりが遅いが、甘味の持続性は砂糖やスクラロースとほぼ同様であり、甘味のきれはスクラロースより短くなった。このように、ネオテームの甘味の持続性は低濃度では弱まる傾向が見られた。
【0053】
【表2】

【0054】
参考例3:砂糖及び果糖ブドウ糖液糖との併用
砂糖及び果糖ブドウ糖液糖とネオテームを水溶液中で併用する場合の味質を評価したところ、砂糖及び果糖ブドウ糖液糖:ネオテームを甘味度比で約7:3以下、ネオテームの濃度3.3ppm以下で使用したとき、ネオテームの甘味の後味、後引きは殆どなくなり、自然な甘味となった。尚、いずれの組み合わせにおいても相乗効果はほとんど見られなかった。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
実施例1:アスパルテームの味質改善
0.08%無水クエン酸−0.04%クエン酸溶液(pH3.5)を用いて砂糖等価甘味度が5%(SE=5)となるように調整した甘味料水溶液(アスパルテーム255ppm、ネオテーム5.6ppm)(pH3.5)を用いて、下記比率で混合した。一夜冷蔵保存後、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
甘味度比でアスパルテーム:ネオテームを9:1〜3:2(ネオテームの重量比0.24〜1.4%、ネオテーム濃度0.56〜2.24ppm)の配合割合で混合したとき、アスパルテームの渋味が減少し、味質が改善された。4:1(同0.55%、1.12ppm)の配合割合で混合したときが、最も味質がよく、砂糖の味質に近づいた。併用により、わずかに甘味の上昇が見られた。ネオテームを併用したすべての水溶液でアスパルテームの渋みが改善された、ネオテームの添加量が4ppm以下の低濃度でも、十分な改善効果が見られた。
【0060】
実施例2:スクラロースの味質改善
SE=5の甘味料水溶液(スクラロース91ppm、ネオテーム5.6ppm)(pH3.5)を用いて、下記比率で混合した。一夜冷蔵保存後、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を下記表6に示す。
【0061】
【表6】

【0062】
甘味度比でスクラロース:ネオテームを19:1〜2:3(ネオテームの重量比0.32〜8.5%、ネオテーム濃度0.28〜3.36ppm)の配合割合で混合したとき、スクラロースの渋みが低減し、甘味の後味が軽くなり、スクラロースの味質が改善された。また、ネオテームのすっきりした甘味質に甘味の幅を付与することができ、砂糖に近い味質になった。9:1〜1:1(同0.68〜5.8%、0.56〜2.8ppm)の配合割合で混合したとき最も味質が良くなった。尚、併用によりわずかに甘味の上昇が見られた。
【0063】
実施例3:アセスルファムカリウム(アセスルファムK)の味質改善
SE=5の甘味料水溶液(アセスルファムカリウム390ppm、ネオテーム5.6ppm)(pH3.5)を用いて、下記比率で混合した。一夜冷蔵保存後、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を下記表7に示す。
【0064】
【表7】

【0065】
甘味度比でアセスルファムカリウム:ネオテームを4:1〜1:4(ネオテームの重量比0.36〜5.4%、ネオテーム濃度1.12〜4.48ppm)の配合割合で混合したとき、アセスルファムカリウムの苦味、渋みが軽減され、またネオテームの甘味の先味が付与され、後味が軽減され、砂糖に近い味質になった。3:2〜3:7(同0.95〜2.6%、2.24〜3.64ppm)の配合割合で混合したときが好ましい味質であった。この時、甘味の上昇はほとんど見られなかった。ネオテームを併用したすべての水溶液でアセスルファムカリウムの苦味や渋みの改善効果が見られたが、ネオテームの添加量が4ppm以下の低濃度でも、十分な改善効果が見られた。
【0066】
実施例4:酵素処理ステビアの味質改善(1)
SE=5の甘味料水溶液(酵素処理ステビアGRA:SKスイートGRA 日本製紙ケミカル(株)製)280ppm、ネオテーム5.6ppm)(pH3.5)を用いて、下記比率で混合した。一夜冷蔵保存後、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を下記表8に示す。
【0067】
【表8】

【0068】
甘味度比で酵素処理ステビアGRA:ネオテームを9:1〜3:2(ネオテームの重量比0.22〜1.3%、ネオテーム濃度0.56〜2.24ppm)の配合割合で混合したとき、酵素処理ステビアの苦味と渋みが減り、ネオテームの後引きが改善され、砂糖に近い味質となった。9:1〜7:3(同0.22〜0.85%、0.56〜1.68ppm)の配合割合で混合したときが好ましい味質であった。尚、同時に甘味が大きく上昇した。ネオテームを併用したすべての水溶液でステビアの苦味や渋みの改善効果が見られたが、ネオテームの添加量が4ppm以下の低濃度でも、十分な改善効果が見られた。
【0069】
実施例5:酵素処理ステビアの味質改善(2)
SE=5の甘味料水溶液(酵素処理ステビアFZ(SKスイートFZ 日本製紙ケミカル(株)製)290ppm、ネオテーム5.6ppm)(pH3.5)を用いて、下記比率で混合した。一夜冷蔵保存後、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を下記表9に示す。
【0070】
【表9】

【0071】
甘味度比で酵素処理ステビアFZ:ネオテームを17:3〜2:3(ネオテームの重量比0.34〜2.82%、ネオテーム濃度0.84〜3.36ppm)の配合割合で混合したとき、酵素処理ステビアの苦味と渋みが減少し、ネオテームの後味が改善され、甘味の幅が付与されるなど、砂糖に近い味質となった。4:1〜1:1(同0.48〜1.9%、1.12〜2.8ppm)の配合割合で混合したときが最も味質が良かった。尚、同時に甘味が大きく上昇した。ネオテームを併用したすべての水溶液でステビアの苦味や渋みの改善効果が見られたが、ネオテームの添加量が4ppm以下の低濃度でも、十分な改善効果が見られた。
【0072】
実施例6:ステビア(レバウディオサイドA)の味質改善
SE=5の甘味料水溶液(レバウディオサイドA(高レバウディオ含有ステビア レバウディオA9−90CT 守田化学(株)製)355ppm、ネオテーム5.6ppm)(pH3.5)を用いて、下記比率で混合した。一夜冷蔵保存後、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を下記表10に示す。
【0073】
【表10】

【0074】
甘味度比でレバウディオサイドA:ネオテームを4:1〜3:2(ネオテームの重量比0.39〜1.0%、ネオテーム濃度1.12〜2.24ppm)の配合割合で混合したとき、ステビアの苦味や渋味が減少し味質が改善された。尚、甘味の後味、後引きが強くなることにより、甘味の幅が付与され、甘味が上昇した。ネオテームを併用したすべての水溶液でレバウディオサイドの苦味や渋みの改善効果が見られたが、ネオテームの添加量が4ppm以下の低濃度でも、十分な改善効果が見られた。
【0075】
実施例7:カンゾウ抽出物の味質改善
【0076】
SE=5の甘味料水溶液(カンゾウ抽出物(純グリチミンY 丸善製薬株式会社製)200ppm、ネオテーム5.6ppm)(pH3.5)を用いて、下記比率で混合した。一夜冷蔵保存後、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を下記表11に示す。
【0077】
【表11】

【0078】
ネオテームを併用したすべての水溶液でカンゾウ抽出物特有の風味が改善され、自然な味質に近づいた。すなわち、甘味度比でカンゾウ抽出物:ネオテームを4:1〜1:4(ネオテームの重量比0.9〜7.7%、ネオテーム濃度1.4〜4.2ppm)の配合割合で混合したとき、酸味とカンゾウ抽出物由来の雑味が減少し、先味が付与され、味質が改善された。併用により、わずかに甘味の上昇が見られた。ネオテームの添加量が4ppm以下の低濃度でも、十分な改善効果が見られた。
【0079】
実施例8:サッカリンの味質改善
SE=5の甘味料水溶液(サッカリンナトリウム160ppm、ネオテーム5.6ppm)(pH3.5)を用いて、下記比率で混合した。一夜冷蔵保存後、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を下記表12に示す。
【0080】
【表12】

【0081】
甘味度比でサッカリンナトリウム:ネオテームを3:2〜1:4(ネオテームの重量比2.3〜12.8%、ネオテーム濃度2.24〜4.48ppm)の配合割合で混合したとき、サッカリンの収斂味、苦味、えぐみが減り、ネオテームの甘味の後味が軽減され、砂糖に近い味質となった。2:3(同5.0%、3.36ppm)の配合割合で配合したときが最も味質が良かった。わずかに甘味の上昇がみられた。ネオテームを併用したすべての水溶液でサッカリンナトリウムの収斂味、苦味、えぐみの改善効果が見られたが、ネオテームの添加量が4ppm以下の低濃度でも、十分な改善効果が見られた。
【0082】
実施例9:スクラロース、アセスルファムカリウムの併用系の味質改善
下記濃度の水溶液(pH3.5)を調整し、5%砂糖水溶液(pH3.5)を対照として甘味質を比較した。結果を下記表13スクラロース1重量部に対して、アセスルファムカリウムを7重量部以上併用(配合)するような、アセスルファムカリウムの配合比の高い系では、スクラロース1重量部に対して、ネオテームを0.1重量部以上添加することで味質改善効果が見られた。
【0083】
【表13】

【0084】
実施例10:中性条件下での併用効果
下記濃度の水溶液を脱イオン水で調整し、5%砂糖水溶液を対照として甘味質を比較した。結果を下記表14に示す。
【0085】
【表14】

【0086】
脱イオン水中でもクエン酸酸性条件と同様の効果が得られた。
【0087】
実施例11:スクラロース、アセスルファムカリウム、エリスリトール併用系の味質改善
下記濃度の水溶液を脱イオン水で調整し、5%砂糖水溶液を対照として甘味質を比較した。結果を下記表15に示す。
【0088】
【表15】

【0089】
エリスリトールの添加によりボディ感が付与され、砂糖の味質に近づいた。同様に、トレハロース、マルチトールでも同様の効果が見られた。
【0090】
実施例12:ミルクコーヒー中での効果
インスタントコーヒー2g、熱湯130g、牛乳13g、下記甘味料を添加し、ミルクコーヒーを調製し、味質を評価した。結果を下記表16に示す。
【0091】
【表16】

【0092】
ネオテームの添加により自然な味質のゼロシュガーコーヒー飲料を調製することができた。
【0093】
実施例13:コーヒー飲料中での効果
コーヒー抽出液(Brix 2.3)78gに下記甘味料を添加し、水を加えて100gのコーヒー飲料を調製した。一晩冷却後、砂糖5%を甘味料として加えたものを対照とし、味質を評価した。結果を下記表17に示す。
【0094】
【表17】

【0095】
ネオテームの添加により自然な味質のゼロシュガーコーヒー飲料を調製することができた。
【0096】
実施例14:オレンジ飲料中での効果
表18に記載した甘味料、無水クエン酸0.08g、オレンジ濃縮果汁(6倍濃縮)5g、オレンジ香料0.08gにイオン交換水を加え100gとし、オレンジ飲料を調製した。味質の評価結果を表18に示す。
【0097】
【表18】

【0098】
ネオテームの添加により自然な味質のゼロシュガーオレンジ飲料を調製することができた。
【0099】
実施例15:炭酸飲料中での効果
表19に記載した甘味料、安息香酸ナトリウム0.02g、無水クエン酸0.08g、クエン酸三ナトリウム0.01g、香料0.1gにイオン交換水を加えて20mlとしてシロップを調製し、さらに、炭酸水を加えて100mlとし、炭酸飲料を調製した。味質の評価結果を表19に示す。
【0100】
【表19】

【0101】
ネオテームの添加により自然な味質のゼロシュガー炭酸飲料を調製することができた。
【0102】
実施例16:レモネード中での効果
ネオテーム製剤であるミラスィー200(大日本住友製薬株式会社製、ネオテーム2%、食品素材98%)を用いレモネードを調製した。すなわち、下記処方の原料を混合後、70℃で10分間殺菌しゼロカロリーレモネードを調製した。自然な味質のレモネードを調整することができた。
【0103】
<レモネード処方>
ミラスィー200 0.0070 部
スクラロース 0.0155
1/6.8 レモン透明果汁 0.44
クエン酸(無水) 0.13
クエン酸三ナトリウム 0.03
ビタミンC 0.02
レモンフレーバー 0.10
クラウディベース 0.05
水 残部

計) 100.00 部
【0104】
ネオテーム製剤であるミラスィー200(大日本住友製薬株式会社製、ネオテーム2%、食品素材98%)を用いドリンクヨーグルトを調製した。すなわち、ペクチンをあらかじめ溶解したのち、原料をすべて混合後、ホモゲナイズ(150kg/cm)し、75℃で10分間殺菌してゼロシュガードリンクヨーグルトを調製した。すっきりした自然な風味のドリンクヨーグルトを調整することができた。
【0105】
<ドリンクヨーグルト処方>
ミラスィー200 0.025 部
スクラロース 0.009
ヨーグルト 32.00
ペクチン 0.22
クエン酸 0.11
クエン酸三ナトリウム 0.046
フレーバー 0.05
水 残部

計) 100.00 部
【0106】
以上の実施例から、ネオテームにより最も強い改善効果が見られたのは、スクラロースとアセスルファムカリウムであった。スクラロースの場合、単独ではしつこさがあり、僅かに渋味などの雑味が感じられるが、ネオテームを添加することにより甘味のキレが良くなり、すっきりとした甘味質となり、雑味がマスキングされていた。アセスルファムKの場合、単独の場合は苦味が強いが、ネオテームを併用すると、苦味がマスキングされ、味質が改善された。スクラロースとアセスルファムカリウムに加え、ネオテームを混合することにより、さらにバランスの良い甘味質を有する甘味料組成物を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の組成物は、高甘味度甘味料が有する呈味性における欠点(雑味、甘味の後引き、しつこさ)が軽減され、改善された、砂糖に近い風味を有するノンカロリー甘味料である。本組成物を使用することにより、砂糖や果糖ブドウ糖液糖を使用した製品の風味に近い、嗜好性の高いノンカロリー製品を提供することができる。また、砂糖や果糖ブドウ糖液糖と併用することで、さらに自然な甘味質を有し、カロリーを抑えた製品を提供することができる。よって、本発明の甘味料組成物は、高甘味度甘味料の欠点ゆえに適用対象が制限されていた食品等の経口組成物にも広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、カンゾウ抽出物およびサッカリンからなる群から選択される1〜2種の高甘味度甘味料とネオテームを含有する甘味料組成物。
【請求項2】
ネオテームを、高甘味度甘味料1重量部に対して、0.001重量部〜0.2重量部含有する、請求項1に記載の甘味料組成物。
【請求項3】
ネオテームを0.01ppm〜4ppm含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の組成物。

【公開番号】特開2010−246511(P2010−246511A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102362(P2009−102362)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 株式会社 食品と科学社、食品と科学、第51巻、第2号、平成21年1月10日
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】