説明

甘酒の製造方法

【課題】より甘く、かつ、香りの良い甘酒を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の甘酒の製造方法は、白米を蒸煮して蒸米とし、この蒸米に汲水を混合した後、米麹を投入して所定時間糖化発酵させる第1の工程と、糖化発酵した蒸米に、さらに米麹を追加投入して所定時間糖化発酵させる第2の工程とを有し、第2の工程を、1回または2回以上繰り返して行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘酒の製造方法に係り、特に、糖化発酵した蒸米に、さらに米麹を追加投入して所定時間糖化発酵させる第2の工程を有し、この第2の工程を、1回または2回以上繰り返して行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
甘酒は、例えば、白米を蒸煮して蒸米とし、この蒸米に汲水を混合した後、この混合物に米麹を投入して所定の温度で数〜数十時間保温し、この保温中に、白米に含まれるデンプンを糖化酵素により分解してブドウ糖を生成する糖化発酵を経て製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような甘酒の製造方法にあっては、米麹を蒸米へまとめて投入するのが通例であり、糖化酵素による糖化発酵は数時間で終了してしまうため、それ以降は、ブドウ糖の生成、すなわち糖度が頭打ちとなってしまう。この糖度の値は、たとえ米麹を一度に多量に投入したとしても、その投入量応分に上昇するものではなく、より糖度の高い甘い甘酒を製造するのは困難であるという問題点があった。
【0004】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、白米を蒸煮して蒸米とし、この蒸米に汲水を混合した後、米麹を投入して所定時間糖化発酵させる第1の工程と、前記糖化発酵した蒸米に、さらに米麹を追加投入して所定時間糖化発酵させる第2の工程とを有し、前記第2の工程を、1回または2回以上繰り返して行う甘酒の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の甘酒の製造方法によれば、糖化発酵した蒸米に、さらに米麹を追加投入して所定時間糖化発酵させる第2の工程を有し、前記第2の工程を、1回または2回以上繰り返して行うため、同量の米麹を用いて糖度を効率的に高めることができ、甘く、且つ、香りの良い甘酒を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る甘酒の製造工程を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態を、図1を参照して説明する。図1において、Aは、甘酒の製造工程を示したフローチャートであり、第1の工程と第2の工程とを有するもので、まず、第1の工程について説明すると、原料となる白米を一晩(約12時間程度)水に浸積し、該白米中に十分吸水させる(ステップS1)。そして、この白米を蒸し器により数時間蒸煮して蒸米に蒸し上げ(ステップS2)、蒸し上がった蒸米を自然放冷により徐冷して30〜60℃に冷却する(ステップS3)。
【0009】
次いで、冷却した蒸米に汲水(仕込に用いる水。仕込水ともいう。)を混合した後、さらに米麹を投入して攪拌するもので(ステップS4)、具体的には、蒸米1質量部に対して汲水を1〜3質量部、米麹を1質量部程度の割合で混合し、櫂棒を用いて入念に攪拌し、蒸米と米麹とが確実かつ十分に接触できるようにする。
【0010】
そして、攪拌を行った後、蒸米と米麹との混合物に蓋をして密封し、例えば、ヒータを用いてこの混合物を50〜60℃に保温しながら所定時間糖化発酵させ甘酒を生成させる(ステップS5)。
【0011】
ここで、所定時間とは、米麹が作る糖化酵素が、米麹を蒸米に投入してから該糖化酵素による蒸米の糖化発酵を完了するまでに要する時間以上の時間であり、具体的には8〜15時間程度である。
【0012】
次に、第2の工程について説明すると、この第2の工程は、上述した第1の工程で作られた甘酒の糖度を更に引き上げるために行われるもので、具体的には、上述したステップS5において蒸米の糖化発酵を行った後、この糖化発酵した蒸米(糖度の低い甘酒)に、さらに米麹を追加投入し、蒸米と米麹とを十分攪拌(ステップS4)して所定時間糖化発酵させる(ステップS5)。なお、この第2の工程にあっても、蒸米と米麹との混合物の温度を50〜60℃に保温しながら8〜15時間程度発酵させる。
【0013】
そして、この第2の工程を、1回または2回以上繰り返して行うもので、この工程が完了した後、糖度が高い所望の甘酒が生成される。なお、生成した甘酒は、瓶などの容器に移され、例えば、熱水中で湯せんにより加熱滅菌して製品となる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の甘酒の製造方法の具体例およびその効果を実施例により説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【0015】
[実施例]
白米を12時間水に浸漬し、吸水した白米を蒸し器により3時間蒸煮して蒸米に蒸し上げた。そして、自然放冷により50℃まで徐冷し、この蒸米に、該蒸米1質量部に対して40℃の汲水を3質量部混合し、さらに、蒸米1質量部に対して米麹を1質量部投入して攪拌し、その後、50℃で12時間保温して第1の工程を行った。そして、第1の工程の米麹と同量の米麹を前述の蒸米に追加投入し、50℃で12時間保温して第2の工程を行い、この第2の工程を合計3回繰り返して甘酒を得た。なお、第2の工程各回における米麹の追加投入量は、蒸米1質量部に対し1質量部とした。
[比較例]
上述した実施例において、第1の工程での米麹の投入量を、蒸米1質量部に対して4質量部(実施例の第1および第2の工程における米麹の合計量と同じ量)とし、第2の工程以降は行わないものを比較例とした。
【0016】
(1)糖度の比較
実施例および比較例の甘酒の糖度を株式会社アタゴ製糖度計(型式:MASTER−53α 2351)を用いて測定したところ、実施例のものが51%であったのに対し、比較例のものは41%であった。なお、表1に第1の工程の完了時点および第2の工程各回の完了時点における糖度の値を示した。
【表1】

【0017】
(2)官能試験
実施例および比較例の甘酒の味(甘味、まろやかさ)および香りについて、10名のパネラーにより官能試験を行い、その結果を表2に示した。なお、評価は、比較例との相対的な5段階評価とし、その基準を以下に併せて示した。
○甘味・・・比較例に比べて、甘い「5」、やや甘い「4」、同等又はどちらとも言えない「3」、やや甘くない「2」、甘くない「1」
○まろやかさ・・・比較例に比べて、まろやか「5」、ややまろやか「4」、同等又はどちらとも言えない「3」、ややまろやかさを感じない「2」、まろやかさを感じない「1」
○香り・・・比較例に比べて、甘い香り「5」、やや甘い香り「4」、同等又はどちらとも言えない「3」、やや甘い香りを感じない「2」、甘い香りを感じない「1」
【表2】

【0018】
上記の通り、糖度の比較にあっては、実施例の方が、比較例に比べ高い値となる結果が得られた。また、官能試験にあっては、甘味、まろやかさ、および、香りの何れにおいても比較例に比べ実施例の方が相対的に良い評価が得られた。
【0019】
ところで、上述した実施例にあっては、第2の工程を合計3回繰り返して行う例について示したが、米麹の合計投入量を同じとし、該米麹の投入を第1の工程と第2の工程とに分け、この第2の工程を1回若しくは2回または4回以上繰り返して行う場合にあっても、第1の工程のみを行うものに比べ、糖度が高く、甘味、まろやかさ、および、香りの何れにおいても良いという結果が得られた。
【符号の説明】
【0020】
A 本発明に係る甘酒の製造工程のフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白米を蒸煮して蒸米とし、この蒸米に汲水を混合した後、米麹を投入して所定時間糖化発酵させる第1の工程と、
前記糖化発酵した蒸米に、さらに米麹を追加投入して所定時間糖化発酵させる第2の工程とを有し、
前記第2の工程を、1回または2回以上繰り返して行うことを特徴とする甘酒の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−55749(P2011−55749A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207636(P2009−207636)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(309031916)有限会社幡随院長兵衛 (1)
【Fターム(参考)】