説明

生ゴミ処理システム

【課題】デパートなどの建築物から排出された生ゴミを、その発生源である当該建築物自体で完全に処理でき、また、生ゴミを利用して植物の育成に適した用土を生成し、この用土を用いて建築物の屋上を緑化する生ゴミ処理システムを提供する。
【解決手段】建築物内で発生した生ゴミNを屋上D1のミミズ飼育床1に散布する。この生ゴミNはミミズMにより食され、その排泄物によりミミズ飼育床1の土壌が植物の育成に極めて優れた用土となる。この用土を隣接する植物繁殖床2の土壌として用いる。これにより、植物繁殖床2で栽培される野菜や花卉が極めて良好に育成されるし、また、通常であればコンクリートが剥き出しの屋上D1が緑地化され、都市部の自然環境が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デパートなど飲食店が入った建築物から排出された生ゴミを処理する生ゴミ処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭から排出された生ゴミはもとより、デパート内の飲食店から排出された生ゴミを処理するシステムとして、これらの生ゴミを廃棄物として回収し更には焼却するシステムが一般的に行われている。
【0003】
しかし、この焼却方法では焼却排煙に伴う大気汚染などの問題点があり、そこで、一般家庭から排出された生ゴミを微生物で処理するシステムが実用化されている。
【特許文献1】特開2000−334421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、後者の生ゴミ処理システムは微生物により生ゴミを分解し減量するものであり、実際には生ゴミ総量の10〜30%が分解されずに残留するし、また、残留した生ゴミから悪臭が発生するため、残留生ゴミの再処理、即ち焼却処理をせざるを得ないという問題点を有していた。特に、デパートなど飲食店が入っている建築物からは生ゴミが多量に発生し、その問題点が顕著となっていた。
【0005】
本発明の目的は前記課題を解決するため、デパートなどの建築物から排出された生ゴミを、その発生源である当該建築物自体で完全に処理でき、また、生ゴミを利用して植物の育成に適した用土を生成し、この用土を用いて建築物の屋上を緑化する生ゴミ処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決するため、請求項1の発明は、建築物内で生じた生ゴミを処理する生ゴミ処理システムにおいて、建築物の屋上にミミズを含む土壌を敷設したミミズ飼育床と野菜や花卉などの植物を育成する植物繁殖床とを有する構造となっている。
【0007】
請求項1の発明によれば、建築物内で発生した生ゴミを屋上のミミズ飼育床に散布する。この生ゴミはミミズにより食され、その排泄物が土壌表面に堆積する。この排泄物には窒素や炭素が多量に含まれ、また、植物に吸収されやすい形となったカルシウム・マグネシウム・リン・リン酸が豊富に含まれている。従って、ミミズ飼育床の土壌が植物の育成に極めて優れた用土となる。
【0008】
この用土を隣接する植物繁殖床の土壌として用いる。これにより、植物繁殖床で栽培される野菜や花卉が極めて良好に育成されるし、また、通常であればコンクリート剥き出しの屋上が緑化され、都市部の自然環境を向上させる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の生ゴミ処理システムにおいて、ミミズ飼育床はミミズを育成するミミズ育成層と小石などを敷き詰めた通水性を有する通水層とを有し、通水層の上方にミミズ育成層を積層してなる。
【0010】
生ゴミをミミズ飼育床に散布した際、生ゴミに含まれる水分などによりミミズ飼育床の土壌が水分過多となるおそれがある。そこで、請求項2の発明はミミズ育成層の下に通水層を配置し、余分な水分を通水層を通じて排水するようになっている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の生ゴミ処理システムにおいて、ミミズ飼育床は底面に排水孔を有する筐体を有し、筐体内にミミズ育成層と通水層を配置し、ミミズ育成層の上面に生ゴミを散布してなる構造となっている。
【0012】
請求項3の発明によれば、ミミズ育成層と通水層を筐体内に配置し、この筐体内でミミズを飼育する。なお、過剰な水分は筐体の排水孔を通じて外に排出される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、建築物で発生した生ゴミは全て当該建築物の屋上で植物栽培に有効な用土に変わり、この用土を用いて植物が栽培され屋上が緑化される。従って、生ゴミの回収・運搬・焼却といった生ゴミ処理に要するエネルギーが不要で効率の良い生ゴミ処理システムが実現されるし、また、都市部の緑化面積が増大し、都市部の自然環境が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2は本発明に係る生ゴミ処理システムの一実施形態を示すもので、図1は建築物例えばデパートの生ゴミ処理システムを示す斜視図、図2はミミズ飼育床を示す一部省略断面図である。
【0015】
まず、生ゴミ処理システムの概略、即ち、飲食店が入ったデパートDに適用した生ゴミ処理システムの概略を図1を参照して説明する。
【0016】
即ち、デパートDの屋上D1にミミズ飼育床1と植物繁殖床2とが設置されている。ここで、植物繁殖床2を複数配置され、各植物繁殖床2に隣接して左右にミミズ飼育床1が複数設置させている。
【0017】
このミミズ飼育床1は、図2に示すように、上面を開口した扁平の筐体1aを有している。この筐体1aの下部には小石などを敷き詰めた通水性を有する通水層1bを配置するとともに、この通水層1bの上面にミミズMを育成するミミズ育成層1cを配置している。ここで、ミミズ育成層1cで使用される土壌は通気性のある良質なものが好ましいが、これに限らず、ミミズMの成育に支障のない程度の土壌であってもよい。このような土壌であってもミミズMの活動により土壌の通気性が増大し、ミミズ育成層1cの土壌が良質化する。また、ミミズ育成層1cの上面に散布される生ゴミNは、予め細かく裁断した生ゴミNを用い、微生物よる生ゴミ分解を促進させるようにしても良い。なお、筐体1aの底面には排水孔1dを形成するとともに、この底面と屋上D1との間にスペーサ1eを挟み込んで筐体1aを屋上D1の床面より離隔しており、これにより、筐体1a内の過剰な水分が排水孔1dを通じて屋上D1上に円滑に排水できるようなっている。
【0018】
植物繁殖床2はミミズ飼育床1で生成された用土が充填され、野菜や花卉が育成されるようになっている。
【0019】
本実施形態によれば、散布された生ゴミNは土壌微生物などにより腐敗し、腐敗した生ゴミNをミミズMが食べる。ここで、ミミズMは毎日自己の体重と同様の有機物を食べかつその約半分の量を排泄する。この排泄物には窒素や炭素がを多量に含まれ、また、植物に吸収されやすい形となったカルシウム・マグネシウム・リン・リン酸が豊富に含まれている。従って、ミミズ飼育床1の土壌が植物の育成に極めて優れた用土となる。
【0020】
この用土を隣接する植物繁殖床2の土壌として用いる。これにより、植物繁殖床2で栽培される野菜や花卉が極めて良好に育成される。
【0021】
このように、デパートDで発生した生ゴミNは全て当該デパートDの屋上D1で植物栽培に有効な用土に変わり、この用土を用いてコンクリートが剥き出しの屋上D1が緑地化されるため、効率の良い生ゴミ処理システムとなっているし、また、都市部の緑化面積が増大し、都市部の自然環境が飛躍的に向上する。そして、食料の自給率の向上に寄与することにもなる。
【0022】
また、ミミズ飼育床1が生ゴミNに含有する水分等によりミミズ飼育床1の土壌が水分過多となるおそれがあるが、ミミズ育成層1cの下に通水層1bを配置している。これにより、余分な水分が通水層1b及び筐体1aの排水孔1dを通じて排水されるため、水分過多によるミミズ育成層1c全体の腐食が防止され、ひいては悪臭の発生が防止される。
【0023】
なお、前記実施形態ではミミズ育成層1cの上面に生ゴミNを散布し、生ゴミNの上面は外に剥き出しとなっているが、このミミズ育成層1c内に生ゴミNを埋めるようにしてもよい。ミミズ育成層1c内に生ゴミNを埋める方法は、まず、ミミズ育成層1cの上面に複数の畝を作り、次いで、隣接する畝の間に生ゴミNを散布し、その後に畝部分を部分を生ゴミNの上に崩して埋め込めばよい。
【0024】
また、、前記実施形態では通水層1bを設けて筐体1a内の排水を良好にしているが、ミミズ育成層1cの土壌が通水性に優れたものとなっているときは、この通水層1bを設ける必要がない。また、外気温度が低くなるときは(冬期などは)ミミズ育成層1cの温度が低下し、ミミズMの活動が不活発となるため、筐体1aに加熱用のヒータ(図示しない)を設置し、ミミズ育成層1cを加熱するようにしてもよい。更に、前記実施形態では建築物としてデパートDを例として掲げて説明したが、生ゴミが発生し、かつ、屋上を備えた建築物であれば、デパートに限るものではなく、高層アパートなどにも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】デパートの生ゴミ処理システムを示す斜視図
【図2】ミミズ飼育床を示す一部省略断面図
【図3】他のミミズ飼育床を示す一部省略断面図
【符号の説明】
【0026】
1…ミミズ飼育床、1a…筐体、1b…通水層、1c…ミミズ育成層、1d…排水孔、2…植物繁殖床、N…生ゴミ、D…デパート、D1…屋上、M…ミミズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物内で生じた生ゴミを処理する生ゴミ処理システムにおいて、
前記建築物の屋上にミミズを含む土壌を敷設したミミズ飼育床と野菜や花卉などの植物を育成する植物繁殖床とを有することを特徴とする生ゴミ処理システム。
【請求項2】
前記ミミズ飼育床は、ミミズを育成する土壌を敷設してなるミミズ育成層と、小石などを敷き詰めた通水層とを有し、該通水層の上方にミミズ育成層を積層してなることを特徴とする請求項1記載の生ゴミ処理システム。
【請求項3】
前記ミミズ飼育床は底面に排水孔を有する筐体を有し、該筐体内に前記ミミズ育成層と前記通水層を配置し、該ミミズ育成層の上面に生ゴミを散布してなることを特徴とする請求項2記載の生ゴミ処理システム。
【請求項4】
前記ミミズ飼育床は底面に排水孔を有する筐体を有し、該筐体内に前記ミミズ育成層と前記通水層を配置し、該ミミズ育成層の内部に生ゴミを散布してなることを特徴とする請求項2記載の生ゴミ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−86856(P2008−86856A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267948(P2006−267948)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(595138971)
【出願人】(505219392)
【出願人】(506330379)
【Fターム(参考)】