説明

生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材及びその製造方法

【課題】一般家庭ごみを焼却する際に生じる焼却灰を、溶融炉で高温で加熱溶融し生成されるガラス状の固化物を冷却してできる生ゴミ溶融スラグは、各種セメントに加えた耐酸性モルタル混合物をアスファルトと混合して、道路舗装材に利用されている。しかし製造方法と施工方法が複雑でかつ施工後の美観を保つことが困難なため、大部分は産業廃棄物として処分場で処理されるため処理費用がかかり、また環境にも負荷がかかっている。
【解決手段】本発明は上記従来の問題点を解決するため、生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材と、その製造方法を提供することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資源のリサイクル化、ヒートアイランド現象の軽減及び施工後の美観の向上を目的とした、生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材及びその製造方法に関する。
【0002】
生ゴミ溶融スラグとは一般家庭ごみを焼却する際に生じる焼却灰を、溶融炉にて約1200℃以上の高温で加熱溶融し生成されるガラス状の固化物を冷却した固化物である。焼却灰を溶融スラグにすることにより、減量化が図れ、有害金属の溶出も防止することができる。また、溶融スラグの品質を確保することにより、土木建設資材に利用することが可能である。
【背景技術】
【0003】
そこで、これらの生ゴミ溶融スラグを再利用する試みがなされるようになり、例えば、特許文献1には、浄水場の上水汚泥スラッジ脱水ケーキとクリーンセンター等の施設の一般家庭生ゴミ等から成る溶融スラグだけを使うことを特徴とした100%リサイクル土を製造する提案がなされている。
【特許文献1】特開2009−061438
【0004】
また、特許文献2には、ごみ焼却灰から生じる溶融スラグといった一般廃棄物、あるいは鉄鋼製造過程において生じるスラグといった産業廃棄物の処理に関し、これら溶融スラグ又はスラグを原料とする着色骨材の製造方法に関する提案がなされている。
【特許文献2】特許4411488(平21.11.27)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、浄水発生土の利用に主眼を置いた発明考案であり、特許文献2は溶融スラグ又はスラグを原料とする着色骨材に主眼を置いた発明考案で、着色剤及び接着剤を含むので新たな環境問題を引き起こす可能性がある。そのため、資源のリサイクル化、ヒートアイランド現象の軽減及び施工後の美観の向上の3つの要求を満たす骨材ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記従来の問題点を解決するため、生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材と、その製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明に係わる骨材は、生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を静電塗装したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材及びその製造方法の第一の効果は、、
処理施設から排出され続ける生ゴミ溶融スラグの再利用が図れるので環境対策効果及び工業的価値が極めて大であることである。
【0009】
本発明の生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材及びその製造方法の第二の効果は、生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布したことにより、ヒートアイランド現象を軽減できることである。
【0010】
本発明の生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材及びその製造方法の第三の効果は、遮熱塗料の色を選択的に使用することにより、施工後の施工面のカラーデザインが自由に行えるので、使用場所周辺との調和が図られることである。
【0011】
本発明の生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材及びその製造方法の第四の効果は、遮熱塗料を生ゴミ溶融スラグに塗布する際、静電気力を応用することにより、新たな環境問題を惹起しないことである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材及びその製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図中同一番号は同一内容を表す。
【0014】
本発明で処理する生ゴミ溶融スラグとしては、製造場所または製造方法に特に制限はなく、どのゴミ焼却場から発生するものでもよい。
【実施例】
【0015】
本発明の一実施例の生ゴミ溶融スラグの組成は質量比で、カルシウム分37%、シリカ分27%、アルミニウム分16%、鉄分7%、マグネシウム分4%、チタン分2%、その他7%でなる。
【0016】
またその粒径は、JIS Z 8801−1に規定する金属網ふるいの公称目開きで、ふるいを通るものの質量100分率は、4.75mmにおいては100%、2.36mmにおいては80〜100%、70μmにおいては0〜10%の分布でなる。
【0017】
本発明の一実施例の遮熱塗料は、赤外線に対する反射率の高い硅砂を原料とした約40μmの中空セラミックビーズを混入した水溶性アクリル樹脂塗料でなり、塗布後、比重の小さい中空セラミックビーズが表面に浮上し、反射・遮熱層を形成する。ビルや道路等の構造物に塗布すると、侵入しようとする光放射熱エネルギーは、この遮熱層により反射され、かつ、中空セラミックビーズ層により遮熱・断熱機能を有する。
【0018】
本発明ではこの遮熱塗料を、生ゴミ溶融スラグの粒子表面に静電気力により塗布し、この
スラグにより構造物を形成する際、遮熱効果を持たせることを特徴とする。製造方法の一実施例を図1により説明する。
【0019】
図1で、1は電気的なアース、2は直流高電圧発生器、3は直流高電圧発生器2のプラス側をアース1に接地する電線、4は遮熱塗料貯蔵漕、5は圧縮空気供給機、6はスプレイガン、7は直流高電圧発生器2のマイナス側とスプレイガン6を接続する電線、8は圧縮空気供給機5とスプレイガン6を結合するパイプ、9は遮熱塗料貯蔵漕4とスプレイガン6を結合するパイプ、10は塗装ブース、11は生ゴミ溶融スラグ供給機、12は生ゴミ溶融スラグ加熱回収機、13は遮熱塗料粒子、14、15は生ゴミ溶融スラグ粒子、16は静電気力により遮熱塗料粒子13が付着した遮熱塗料粒子付着生ゴミ溶融スラグ粒子、17は塗装ブース10をアース1に接地する電線である。
【0020】
直流高電圧発生器2のプラス側を電線3によりアース1に接地された、直流高電圧発生器2で発生された約60kVのマイナス電圧が電線7を介して、塗装ブース内10内のスプレイガン6に供給される。遮熱塗料貯蔵漕4からパイプ9を介して、遮熱塗料がスプレイガン6に供給され、マイナス電圧60kVに荷電される。圧縮空気供給機5からの圧縮空気はパイプ8を介して、スプレイガン6に供給される。
【0021】
塗装ブース10は、接地電線17によりアースに接続され、ゼロ(0)ボルトに保たれている。
【0022】
塗装ブース10内の生ゴミ溶融スラグ供給機11も(図示はしないが)塗装ブース10に電気的に接続されており、結果として生ゴミ溶融スラグ供給機11内の生ゴミ溶融スラグも、ゼロ電位に保たれる。
【0023】
生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布する場合は、生ゴミ溶融スラグ供給機11から生ゴミ溶融スラグを塗装ブース10内に、生ゴミ溶融スラグ粒子14として放射する。放射の方法は圧縮空気または廻旋落下による。
【0024】
スプレイガン6を操作して、供給された圧縮空気により、マイナス荷電された遮熱塗料粒子13を塗装ブース10内に放射する。
【0025】
移動中の生ゴミ溶融スラグ粒子15に遭遇する遮熱塗料粒子13は、60kVの静電気力により互いに引き合い、マイナス荷電された遮熱塗料粒子13が、ゼロボルトの生ゴミ溶融スラグ粒子15の周りに付着し、遮熱塗料粒子付着生ゴミ溶融スラグ粒子16となる。
【0026】
付着する粒子の数は、遮熱塗料粒子13の直径が70μm、遮熱塗料の粒子直径13の直径が40μmの場合、遮熱塗料粒子13の表面に一様に一層付着するとした最小ケースでも約12個となる。
【0027】
実際には複数層にわたり付着すること及び、生ゴミ溶融スラグ粒子15の直径の分布ははるかに70μmより大きいので、塗布はより完全に行われる。
【0028】
遮熱塗料粒子付着生ゴミ溶融スラグ粒子16は生ゴミ溶融スラグ加熱回収機12により、約50℃で2時間加熱定着し回収する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の生ゴミ溶融スラグに遮熱塗料を塗布した骨材は、建築物、一般歩道、公園、街路樹周囲、浄水場等清浄エリアを確保するためのスペース、イベント会場の広場の舗装、防草等に広く利用することができる。その際、遮熱塗料の色を選択することにより美観を向上させることが出来、周囲の環境と調和する施工が可能である。またその遮熱効果によりヒートアイランド現象を軽減することが可能である。また、建物物の骨材として使用する場合は、遮熱効果を発揮することが出来る。
【符号の説明】
【0030】
1 電気的なアース
2 直流高電圧発生器
3 直流高電圧発生器2のプラス側をアース1に接地する電線
4 遮熱塗料貯蔵漕
5 圧縮空気供給機
6 スプレイガン
7 直流高電圧発生器2のマイナス側とスプレイガン6を接続する電線
8 圧縮空気供給機5とスプレイガン6を結合するパイプ
9 遮熱塗料貯蔵漕4とスプレイガン6を結合するパイプ
10 塗装ブース
11 生ゴミ溶融スラグ供給機
12 生ゴミ溶融スラグ加熱回収機
13 遮熱塗料粒子
14、15 生ゴミ溶融スラグ粒子
16 遮熱塗料粒子付着生ゴミ溶融スラグ粒子
17 塗装ブース10をアース1に接地する電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴミ溶融スラグの粒子をゼロボルトまたはプラスに帯電させ、遮熱塗料の粒子をマイナスに帯電させ、これら2種の粒子を同時に空間に存在させ、静電気力により生ゴミ溶融スラグの粒子表面に、遮熱塗料を付着させるようにしたことを特徴とする遮熱塗料塗布骨材及びその製造方法。
【請求項2】
ゼロボルトまたはプラスの電位にした生ゴミ溶融スラグの粒子を圧縮空気およびまたは廻旋落下により塗装ブース内に放射し、マイナスに帯電させた遮熱塗料の粒子を、前記塗装ブースに放射し、相互の静電気力により生ゴミ溶融スラグの粒子表面に、遮熱塗料を付着させるようにしたことを特徴とする遮熱塗料塗布骨材及びその製造方法。
【請求項3】
遮熱塗料を付着後、40℃〜60℃の温度に一定時間保ち、遮熱塗料を定着するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の遮熱塗料塗布骨材及びその製造方法。

【図1】
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