説明

生体サンプルの低温保存用保管装置

特に生体サンプルの冷凍保存のための低温保存用保管装置100は、生体サンプルおよびサンプルメモリを収容するように構成されている複数のマルチサンプルモジュール20と、マルチサンプルモジュール20に含まれているサンプルメモリへのアクセスを制御するモジュール制御装置30と、モジュール制御装置30へアクセスするためのデータインターフェース41とを含んでおり、モジュール制御装置30はデータインターフェース41を介して制御されることができるデータ管理プロセッサ31を含んでいる。さらに、少なくとも1つの低温保存記憶装置100と生体サンプルの低温保存を含んでいる低温保存装置について説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低温保管、特に生体サンプルの低温保管のための保管装置に関し、特に生体サンプル及び関連されるサンプルデータを収納するための低温保存用保管装置に関する。さらに、本発明は複数の低温保存用保管装置を含む低温保存装置と、生体サンプルの低温保存方法、特に低温保存用保管装置中に生体サンプルと共に保存されるサンプルデータを処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体サンプルの低温保存の分野では、低温保存温度、例えば液体窒素または液体窒素の蒸気の温度で多数のサンプルを保管する必要性が増加する。サンプルは断熱容器(いわゆる超低温冷凍タンク)に保管される。
【0003】
典型的に、サンプルは例えばサンプルのドナーの特性のように、サンプルの識別子および随意選択的にさらに特別な情報を含めた関連されるサンプルデータまたはサンプルの先の処理に関するデータと組み合わせて保存される。ドイツ特許公報DE 100 60 889 A1では、冷凍タンクにおけるサンプルの容器及びサンプルのメモリの組合された配置が、サンプル及び割当てられたサンプルデータの対応が低温保存期間中に維持されることを確認するために提案されている。サンプルの容器及びサンプルのメモリは共通のキャリアまたはボード上に配置され、それはサンプルのメモリを制御するためのプロセッサ回路を含んでいる。全てのサンプルの容器及びメモリはプロセッサ回路と並列接続されている。
【0004】
冷凍タンク外からサンプルデータにアクセスするために、サンプルメモリを例えばホストコンピュータと接続するために通信チャンネルが必要とされる。複数のサンプルの容器とサンプルのメモリボードが冷凍タンクに配置されるならば、ボードのプロセッサ回路が多数のワイヤ接続を要する複雑な構造が生じるので、通信チャンネルに特別な要求がされる。前記DE 100 60 889 A1に開示されている技術は複数のサンプルの容器及びメモリボードに対するデータアクセスの効率的な管理を開示していないので、制限を有する。
【0005】
トランスポンダ技術を使用する無線通信チャンネルはドイツ特許公報DE 102 02 304 A1及びDE 299 12 346 U1で提案されている。トランスポンダ技術は冷凍タンクの壁を通る任意の熱の逃げ道を防止することに関して有効である。しかしながら多数のサンプルとサンプルデータが処理されるならば限定が存在する。保管密度の増加と共に、RFIDトランスポンダは相互に干渉する可能性がある。
【0006】
一般的応用における別の無線通信チャンネルはWLAN技術で開発されているが、これは全ての利用可能なクライアントがホストコンピュータからのアクセスのために付勢されることを必要とする。したがって、付勢されたクライアントは冷凍タンク中に熱源を設けるので、WLAN技術は低温保管目的で使用されるのには不適当である。
【0007】
F. R. Ihmig等の文献(“Cryogenics”、46巻、2006年、312〜320頁)はその図6に概略的に示されているようにマルチプレクサシステムに基づいたワイヤ結合された通信チャンネルを提案している。低温保管装置200’は、8個のサンプルデータメモリカード21’(フラッシュメモリ)を含むマルチサンプルモジュール20’と、マルチサンプルモジュール20’に収納されているメモリカードへのアクセスを制御するためのモジュール制御装置30'と、ホストコンピュータ70'とを具備している。コンポーネント20'と30'は低温保管温度の冷凍タンク60’中に配置されており、ホストコンピュータ70'は室温で配置されている。モジュール制御装置30’はアドレス論理装置31'とアナログスイッチ回路32'を備えている。ホストコンピュータ70'は第1及び第2のデータインターフェース41a’と41b’を介してアドレス論理装置31’とアナログスイッチ回路32’にそれぞれ接続されている。
【0008】
サンプル及びサンプルデータの数の増加と共に、通常のマルチプレクサシステムはホストコンピュータ70'から冷凍タンク60'へのワイヤ接続数を増加させることが必要となる。1例として、通常の8つのチャンネルの設計は第2のデータインターフェース41b'の50ピン接続を必要とする。実際に、さらに多く、例えば200を超えるワイヤが全てのサンプルデータメモリカード21'とホストコンピュータ70'を接続するために必要とされる。増加するワイヤ接続数は冷凍タンクの温度制御に悪影響を与える不都合な熱の逃げ道を発生する。通常のマルチプレクサシステムの別の問題は、全てのサンプルデータメモリカード21'が任意のサンプルデータへアクセスするために付勢されなければならないことである。全てのサンプルデータメモリカード21'の付勢は本質的な電力の消費及び対応する冷凍タンク内部の熱の発生を必要とする。したがって、通常の低温保管装置200'をさらに冷却する効率は制限される可能性がある。通常のマルチサンプルモジュール20'が冷凍タンクから取り除かれるならば、マルチプレクサシステムの複雑な構造及び多数のワイヤ接続による別の欠点が生じる。
【発明の開示】
【発明の解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、通常の技術の欠点を防止する生体サンプルの低温保管用の改良された保管装置を提供する目的に基づいている。さらに本発明は改良された冷凍方法を提供する目的に基づいている。
【発明の要約】
【0010】
前述の目的はそれぞれが独立請求項に記載されている特徴を有する保管装置、低温保存装置または低温保存方法により解決される。本発明の有効な実施形態及び応用は独立請求項で規定されている。
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、前述の目的は低温保存用保管装置(簡単に言えば保管装置)を提供する一般的な技術的教示により解決され、これは生体サンプルおよびサンプルメモリを収容することができる少なくとも1つのマルチサンプルモジュールと、少なくとも1つまたは複数の別々のマルチサンプルモジュールにより収容される全てのサンプルメモリへ連続的にアクセスするモジュール制御装置と、モジュール制御装置へのアクセスのためのデータインターフェースとを含んでおり、モジュール制御装置はデータインターフェースを介して制御されることができるデータ管理プロセッサを含んでいる。
【0012】
マルチサンプルモジュールは生体サンプルを配置するためのサンプル容器を含んでいる。さらに、マルチサンプルモジュールは生体サンプルと関連されるデータを記憶するためのサンプルメモリを含んでいる。このサンプルメモリはマルチサンプルモジュールに固定して配置されている。代わりに、マルチサンプルモジュールはサンプルメモリを接続または分離するフレキシブル性のためにメモリコネクタを含んでいる。好ましくは1つのサンプル容器は1つのサンプルメモリにそれぞれ割当てられている。
【0013】
モジュール制御装置はマルチサンプルモジュールにより収容される全てのアクセス可能なサンプルメモリへのアクセス(データの読取/書込み)を制御する複数の回路コンポーネントを有する回路である。モジュール制御装置の本質的な回路コンポーネントはデータ管理プロセッサであり、これはデータインターフェースを介して受信された信号にしたがってアクセス制御機能を実現する。通常、データ管理プロセッサはソフトウェアプログラムおよび関連されるプロセッサメモリを作動することができるマイクロ制御装置を含んでいる。特に、データ管理プロセッサはデータインターフェースを介して信号を読取るためと、マルチサンプルモジュールにより収納されるサンプルメモリをアドレスしそれにアクセスするためと、データインターフェースを介してサンプルデータを送信するために配置されている。さらに、データ管理プロセッサは、例えば低温保存温度のような低温保存状態を制御するために構成されている。
【0014】
好ましくは、マルチサンプルモジュールとモジュール制御装置は支持ボードに搭載されている。モジュール制御装置とマルチサンプルモジュールの組合せはモジュール構造を表しており、これは特定の低温保存タスクの要求に対して簡単に適合することを可能にする。さらに、この組合せは階層構造を表しており、モジュール制御装置は複数のマルチサンプルモジュールを制御するように構成される。通常の技術とは対照的に、ホストコンピュータの機能を引き継ぐことができるモジュール制御装置は低温保存環境に配置される。
【0015】
本発明によれば、データ管理プロセッサの動作はデータインターフェースを介して制御される。特にデータ管理プロセッサはデータインターフェースを介して保管装置により受信される制御信号により付勢される(オン/オフの切換え)ことができる。好ましくは、データインターフェースは特に電線および/または導光接続を含めた線結合された通信バスで動作される。
【0016】
データ管理プロセッサと低温保存条件におけるその動作により一連の次の利点を生じ、これは通常の技術についての前述の制限を克服することを可能にする。
【0017】
第1に、多数のサンプルメモリは単一のデータインターフェースを介してデータ管理プロセッサによって制御されることができる。保管装置上の局部的なデータ処理により、サンプルメモリ数を増加してもワイヤ接続数の増加を必要としない。したがってワイヤ接続による不都合な熱伝導は防止されることができる。
【0018】
さらに、要求されている単一のデータインターフェースを介してデータ管理プロセッサの動作を制御する能力によって、電力消費及び対応する冷凍タンク内の熱発生はある動作リクエストに対する特定の保管装置のデータ管理プロセッサだけを切換えることにより減少されることができる。複数の保管装置が冷凍タンク中に共通して配置される場合に、特定の保管装置の単一のデータ管理プロセッサだけが付勢され、残りの保管装置のデータ管理プロセッサはオフの切換え状態を維持することができる。
【0019】
さらに、データ管理プロセッサ構造は本質的に簡単にされた設計をサンプルメモリに与えることを可能にする。本発明によれば、各サンプルメモリは付加的なメモリ制御装置なしにメモリ回路チップを具備する。例えば入手可能なフラッシュメモリのような廉価の単一のメモリ回路チップが使用されることができ、したがって、サンプルデータが記憶されるサンプル数を増加しても本質的な利点が得られる。
【0020】
さらに、データ管理プロセッサはサンプルデータの監視、評価、自己文書化のような、サンプルデータ処理に関して新しい機能を実行することを可能にする。これらの機能は任意のホストコンピュータとの付加的な通信において独立してデータ管理プロセッサで動作するソフトウェアプログラムにより実現されることができる。
【0021】
データ管理プロセッサは低温保存のセキュリティに関してさらに本質的な利点を有している。ホストコンピュータからのデータはデータ管理プロセッサのプロセッサメモリ中に反映させることができる。さらに、データ管理プロセッサを含んだ保管装置は自給装置を表しており、これはデータの損失なく、冷凍タンクから別の位置、例えば別の冷凍タンクへ転送されることができる。
【0022】
本発明の第2の独立した特徴にしたがって、前述の目的は本発明の前記第1の特徴にしたがって少なくとも1つの記憶装置を具備している低温保存装置を提供する一般的な技術的教示により解決され、少なくとも1つの保管装置は生体サンプルの低温保存のための冷凍保管容器中に配置されている。一般的に、低温保管容器(冷凍タンクとも呼ばれる)は少なくとも1つの保管装置と冷却媒体を収納することができ、断熱壁を有する容器である。
【0023】
本発明の低温保存装置は、低温保管容器に共通して配置されている全ての保管装置が1つの単一のデータインターフェースを介して制御されることができるという本質的な利点を有する。このデータインターフェースは全ての保管装置により共用される。したがって、それぞれ500を超えるメモリ回路チップを具備する10回よりも多くの保管装置が低温保存装置中に配置されても、保管装置は低い数(例えば10未満)の接続線を介して低温保管容器外のホストコンピュータと接続されることができる。
【0024】
本発明の第3の独立した特徴によれば、前述の目的は生体サンプルの低温保存の方法を提供する一般的な技術的教示により解決され、生体サンプル及び関連されるサンプルデータは予め定められた低温保存温度で本発明の前述の第1の特徴により少なくとも1つの保管装置中に配置され、データインターフェースはモジュール制御装置のデータ管理プロセッサの制御およびサンプルデータへのアクセスのために使用される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、データ管理プロセッサは保管装置中に含まれている電力制御装置と接続されている。データ管理プロセッサはデータインターフェースを介して受信された電力信号(保管装置のアドレス信号)に応答して電力制御装置により付勢されることができる利点がある。
【0026】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、保管装置は完全に直列の設計を有する。全てのデータ通信は直列信号線(バス)を介して行われる。特に、データインターフェースはデータ管理プロセッサを有するホストコンピュータからの直列信号通信用の直列データインターフェースである。本発明の低温保存方法によりモジュール制御装置のデータ管理プロセッサの制御と、サンプルデータへのアクセスのための信号が直列に転送される。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、データインターフェースと保管装置の電力制御装置を含んでいるベースユニットが設けられる。このベースユニットはデータインターフェースと電力制御装置を支持する回路板を具備し、マルチサンプルユニットとモジュール制御装置は少なくとも1つの別々のボード、特に共通のラック上に配置されている。ベースユニットは実際的な低温保存状態で本発明の保管装置を処理する特別な利点を有する。1例として、ベースユニット(または複数のベースユニット)は共通のラックをマルチサンプルユニットとモジュール制御装置にフレキシブルに結合するために低温保存容器中に固定して配置されることができる。したがって、本発明の好ましい実施形態は、ベースユニットとマルチサンプルモジュールおよび/またはモジュール制御装置との間の分離可能な接続により特徴付けされる。本発明の方法により、マルチサンプルモジュールとモジュール制御装置はベースユニットから共通して分離されることができる。特に、ベース装置とモジュール制御装置との間に光学的な通信チャンネルを設けることが好ましく、それによって特別なベースユニットからのマルチサンプルユニットとモジュール制御装置の分離が容易にされる。ベースユニットはマルチサンプルモジュールおよび/またはモジュール制御装置の下または上に配置されることができる。
【0028】
本発明によれば、モジュール制御装置はマルチサンプルモジュール上のサンプルメモリにシリアルアクセスするように構成されている。好ましくは、各マルチサンプルモジュールは少なくとも50のサンプルと50のメモリ、例えば256のサンプルと256のサンプルメモリまたはそれ以上を収容するように構成されている。本発明の特に好ましい実施形態によれば、各マルチサンプルモジュールは生体サンプルとサンプルメモリを収納するためのマトリックスボードを具備している。このマトリックスボードはモジュール制御装置を付加的に搭載する共通のラック(支持ボード)に固定されることができる。代わりに、マトリックスボードは共通のラック上のプラグコンタクトを介して設定されることができる。マトリックスボードは例えば直線の行及び列により生体サンプルとサンプルデータメモリのマトリックス配置を具備している。本質的な利点として、データへのアクセス及びアドレスが容易にされ、構造的な複雑性が減少される。特に、マトリックスボードはサンプルメモリへの直列的なアクセスを容易にする。
【0029】
好ましくはマルチサンプルモジュール(マトリックスボード)は生体サンプルとサンプルメモリのマトリックス配置を具備し、行アドレスセレクタと列アドレスセレクタはサンプルメモリの1つにアクセスするように構成されている。この実施形態により、メモリアクセスは本質的に行アドレスセレクタと列アドレスセレクタを介してそれぞれ供給される行信号(クロック信号)と列信号(チップセレクタ信号)によりサンプルメモリの1つを選択することによって簡単にされる。好ましくは、データ管理プロセッサと、特にデータインターフェースは行及び列信号を供給するように構成されている。マトリックス構成は最小の接続線と回路の設置を可能にする。したがって特に低温保存状態での動作に関して利点が得られる。
【0030】
本発明のさらに特に好ましい実施形態によれば、データ管理プロセッサはマトリックスボードのうちの単一の1つを特別に付勢するように構成されている。この場合にも低温保存容器中における電力消費の本質的な減少を得ることができる。
【0031】
本発明の別の利点は、異なるタイプのデータインターフェース、特にシリアルデータインターフェースを使用する場合に高いフレキシブル性により与えられることである。本発明の好ましい実施形態によれば、データインターフェースはシリアル周辺装置インターフェース(以下、SPIインターフェースとする)である。
【0032】
SPIインターフェースはわずか3個の接続入力線で同期された直列データバスを構成している。ホストコンピュータと少なくとも1つの保管装置との間の全てのデータ通信は全ての保管装置が並列で接続しているこれらの3つの接続線を介して実行されることができる効果がある。SPIインターフェースのさらに別の利点は高いクロック周波数であることであり、これはMHz範囲まで使用されることができる。代わりに、データインターフェースはいわゆる「マイクロワイヤ」バスシステム(ナショナル・セミコンダクタ社)を具備することができる。
【0033】
本発明のさらに別の有効な実施形態によれば、低温保管装置の全てのコンポーネントは予め定められた低温保存温度、特に液体窒素または液体窒素蒸気の温度で動作されることができる。好ましくは、低温保存温度は本発明の低温保存用保管装置の冷凍保管容器によって設定される。
【0034】
本発明のさらに別の変形により、保管装置がデータインターフェースと接続されている光・電子変換器を具備しているならば、ホストコンピュータとのデータ通信が改良されることができる。好ましくは、光・電子変換器は低温保存温度でも同様に動作に適合されている。したがって、データは冷凍保管容器の壁を通して光学的に転送されることができる。
【0035】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明の低温保管装置は冷凍保管容器の外部に配置されているホストコンピュータを具備している。好ましくは、保管装置はシリアルSPIバスを介してホストコンピュータと接続されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明のさらに別の詳細及び利点を添付図面を参照して、以下に説明する。
本発明の好ましい実施形態を低温保存用保管装置と低温保存装置をそれぞれ提供するために使用される回路コンポーネントの概略図を参照して以下説明する。特許請求の範囲の技術的範囲は示されている実施形態に限定されないことが強調される。特にマルチサンプルモジュールおよび記憶装置の数と、マルチサンプルモジュールの設計、冷凍タンクの形状、低温保存装置の動作及び制御機能と、1以上のホストコンピュータとの接続は特定の低温保存タンクと応用の要求にしたがって当業者により変更されることができる。
【0037】
図1によれば、超低温保存用保管装置100は複数のマルチサンプルモジュール20、モジュール制御装置30、ベースユニット40、随意選択的に光・電子変換器45を具備している。超低温保存目的で、これらのコンポーネントは冷凍タンク60に構成されている。
【0038】
各マルチサンプルモジュール20はサンプルメモリ10(図5参照)のマトリックス構成と、図4及び5を参照して以下説明するさらに別のボード回路を含んでいるマトリックスボード21を具備している。全てのマルチサンプルモジュール20は1つの単一モジュール制御装置30と接続されている。
【0039】
モジュール制御装置30はデータ管理プロセッサ31と、マルチサンプルモジュール20にアクセスするためのモジュール制御バス32と、マルチサンプルモジュール20の単一のサンプルメモリ、マトリックスボードまたはさらに別の回路コンポーネントを付勢するための電力制御回路33と、モジュール制御装置30の制御及び動作に関するさらに特別な情報を記憶するためのRAM34及びフラッシュメモリ35のようなさらに別のメモリとを具備している。データ管理プロセッサ31はモジュール制御ソフトウェアプログラムを動作するためのマイクロ制御装置と、モジュール制御ソフトウェアプログラムにより使用されるデータを記憶するためのプロセッサメモリとを具備している。
【0040】
ベースユニット40はSPIインターフェース41と、電力制御装置42と、通信切換え回路43とを具備している。SPIインターフェース41はSPIバス44及び随意選択的に光・電子変換器45を介してホストコンピュータ70(図2参照)と接続されることができる。SPIインターフェース41のさらに詳細は図3を参照して以下説明する。
【0041】
マルチサンプルモジュール20とモジュール制御装置30は共通の支持ボード50上に構成されている。実際に、支持ボード50は垂直に指向され、それによってマルチサンプルモジュール20はモジュール制御装置30上のスタックのように構成されている。したがって、支持ボードはタワー50とも呼ばれる。
【0042】
支持ボード50はコンポーネント20と30の回路部だけではなく、支持ボード50の下端部および上端部上にそれぞれ設けられているコネクタ51、52も支持している。支持ボード50の下端部の第1のコネクタ51はベースユニット40への通信チャンネルを与える。好ましくは、少なくとも通信切換え回路43との接続は光・電子結合器53によって行われ、それによってベースユニット40に関する支持ボード50の接続または遮断が容易にされる。
【0043】
支持ボード50の上端部の第2のコネクタ52はコンポーネント20および/または30への付加的なアクセスのために随意選択的に設けられる。支持ボード50を冷却タンク60から取り除いた後、タワー全体は例えば実験台の上に設定されることができる。この状態では、支持ボード50の上端部の第2のコネクタ52は第1のコネクタ51の代わりに有効に使用されることができる。
【0044】
さらに、支持ボードは、例えばモジュール制御バス32、マルチサンプルモジュール20を付勢するための電力線36、アドレススイッチ38を使用して1以上のマルチサンプルモジュール20をアドレスするためのアドレスバス37のようなワイヤ接続を含んでいる。
【0045】
図1による低温保存用保管装置100は各マトリックスボード21上に256のサンプルを収納するように構成されており、マトリックスボード21のための64のスロットは支持ボード50上に設けられることができる。したがって16.384のサンプルメモリがSPIバス44を介して完全に制御されることができるデータ管理プロセッサ31により管理されることができる。これは対応して同等の数のサンプルを制御するために約400のワイヤ接続を必要とする通常のマルチプレクサ技術と比較して本質的な利点を有する。
【0046】
図2は冷凍タンク60中に構成され、ホストコンピュータ70と接続されている複数の低温保存用保管装置100を具備している低温保存装置200の好ましい実施形態を示している。ホストコンピュータ70はコンピュータ装置と電源、電力モニタ、信号変換器及び冷凍タンク60中の低温保存用保管装置100を制御するための信号駆動装置を含んでいる。特にコンポーネント20乃至50を備えた各低温保存用保管装置100は図1を参照して前述したように構成されている。全ての低温保存用保管装置100は共通のSPIバス44と光・電子変換器45を介してホストコンピュータ70と接続されている。光・電子変換器45からホストコンピュータ70までのワイヤおよび/または導光接続45.1は冷凍タンクの断熱体61を通して延在し、これは部分拡大して示されている。
【0047】
冷凍タンク60は普通に使用される冷凍タンクで知られているように構成されている。特に、冷凍タンク60は液体窒素および液体窒素蒸気のような冷却媒体62と、カバー蓋63を含んでいる。
【0048】
図3は通常知られている産業標準方式にしたがって設けられるSPIインターフェース41を概略的に示している。SPIインターフェース41は4つの信号線のみ、即ち直列クロックライン41.1、チップ選択ライン41.2、データ入力ライン41.3、データ出力ライン41.4を具備している。全ての低温保存用保管装置100はSPIインターフェース41と並列に接続されることができる。SPIインターフェース41を介して、列信号(チップ選択信号)と行信号(クロック信号)はマルチサンプルモジュール20の行および列アドレスセレクタ22、23に与えられる(以下参照)。
【0049】
図4と図5は行アドレスセレクタ22および列アドレスセレクタ23とさらに別のボード回路24乃至27とを有するマトリックスボード21を含むマルチサンプルモジュール20をさらに詳細を示している。全てのこれらのコンポーネントは支持ボード(タワー)50上の対応するスロットに設定されることのできる共通のボード上に配置されている。ボード回路はボードメモリチップ24、切換え回路25、電力制御装置26、温度センサ27および発光ダイオード(LED)28を備えている。ボードメモリチップ24はボードタイプ及びボード形状上の情報のようにマトリックスボード21に関する情報を記憶するように構成されている。
【0050】
温度センサ27はマトリックスボード21の異なる位置の温度を感知するように構成されている。温度センサは例えばPT100センサで構成されている。LED28は例えばサンプルメモリ10の1つとモジュール制御装置30(図1参照)および/またはホストコンピュータ70(図2参照)との相互動作のようなマトリックスボード21の動作状態を示すように構成される。
【0051】
本発明による低温保存方法は以下の手順ステップを含んでいる。第1に、生体サンプル及び関連されるサンプルデータは低温保存温度における低温保存用保管装置のマルチサンプルモジュールの少なくとも1つに保管される。この目的で、以下の処理ステップが実行されることができる。
【0052】
特に生体サンプルと低温保存タスク数にしたがって、支持ボード(タワー)50の適切な設計が選択されることができる。1例として、マルチサンプルモジュール20に含まれるサンプル容器は例えば単一の生体細胞を収容するための小さい区画と比較して例えばセルのグループまたは組織を収容するための大きい区画を具備することができる。したがって、支持ボード50の設計は大きい生体サンプルの少数(例えば10)のマルチサンプルモジュール20または小さい生体サンプルを収納するための多数のマルチサンプルモジュール(例えば100)を受けるように選択されることができる。同じ概念が生体サンプルに関連されるサンプルデータに関して適用されることができる。
【0053】
ベースユニット40との接続のフォーマットを一定に保ちながら、支持ボード50に異なるタイプまたはサイズのマルチサンプルモジュールを設ける能力は、冷凍タンク60を使用するフレキシブル性に関して本発明に対する本質的な利点を示している。
【0054】
低温保存用保管装置の準備ではさらにデータ管理プロセッサ31に特定のモジュール制御ソフトウェアプログラムを、またはフラッシュメモリ35(図1)および/またはボードメモリ24(図4)に特定の情報を記憶することを含ませることができる。1例として、フラッシュメモリ35はタワー50のタイプ及び特性についてのデータを含んでおり、一方、ボードメモリ24はマトリックスボード21のタイプ及び特性についてのデータを含んでいる。両者のデータのグループはホストコンピュータ70による特定の低温保存用保管装置100と特定のマトリックスボード21の認識を容易にする。
【0055】
本発明の低温保存方法のさらに別の手順ステップとして、マルチサンプルモジュール20はモジュール制御装置30、特に対応する低温保存用保管装置100のデータ管理プロセッサ31により制御される。この目的で、共通のSPIバス44はデータ管理プロセッサ31の制御と、サンプルデータのアクセスの両者のために使用される。
【0056】
1例として、サンプルデータが低温保存用保管装置100.1(図2)のマトリックスボード21.1上で読取られるならば、この特定の装置100.1のデータ管理プロセッサ31.1はオンに切り換えられる。この目的で、電力信号はSPIバス44を介して冷凍タンク60中に含まれる低温保存用保管装置の全てのSPIインターフェース41へ送信される。電力信号は特定の装置100.1のアドレスを含んでおり、それによってそのデータ管理プロセッサ31.1のみがオンに切り換えられ、他のプロセッサは付勢されない状態に維持される。電力信号はSPIデータインターフェース41のライン41.2を介して送信される。したがって、冷凍タンク60の電力消費は最小にされる。
【0057】
それに続いて、チップ選択メッセージがSPIインターフェース41を介してデータ管理プロセッサ31.1へ送信される。データ管理プロセッサ31.1は特定の低温保存用保管装置100.1上の関連されたマルチサンプルモジュール中に収納されているサンプルメモリの完全なディレクトリを含んでいる。したがって、データ管理プロセッサ31.1は特定のサンプルメモリ中のサンプルデータを読取り、あるいはそこへ書込むために適切なマトリックスボード21.1を付勢することができる。
【0058】
続いて、コマンド信号はSPIインターフェース41を介して送信されることができる。1例として、コマンド信号はコマンド“COMPILE AN INVENTURE”または“IDENTIFY EMPTY SPACE”を含むことができる。特定のコマンド信号にしたがって、マトリックスボード21.1からのデータはリクエストされたように処理される。
【0059】
したがって、以下の機能の少なくとも1つはSPIインターフェース41により実現されることができる。第1に、冷凍保存用保管装置100のうちの1つのタワー50はオンまたはオフに切り換えられることができる。第2に、チップ選択信号は特定のマトリックスボードにアクセスするためにタワー50へ伝送されることができる。第3に、コマンド信号は特定のタワー50のデータ管理プロセッサへ伝送されることができる。
【0060】
本発明は以下のさらに別の利点を有する。データ管理プロセッサを各タワーに設けることにより、外部のホストコンピュータへの接続の数は基本的に減少されることができる。特に8個のみの光学的な線結合および2個のワイヤ結合された電力接続が例えばセンサ信号のようなSPI信号及びさらに別のデータを伝送するために必要とされる。冷凍タンク60中に配置される各タワーは自動的にベース装置40および、対応してSPIバス44と接続される。他方で、タワーは単に支持ボード50を引き出すことにより取外される(持ち上げられる)ことができる。各データ管理プロセッサはベースユニットとホストコンピュータへの専用の直列リンクを有する。異なる低温保存用保管装置のデータ管理プロセッサのグループは有効にサンプルデータ及びメモリ情報の非局在化されたディレクトリを表しており、これはサンプルデータへの自動アクセスを容易にする。
【0061】
前述の説明、図面、および特許請求の範囲で開示した本発明の特徴は、その種々の特徴と実施形態における本発明の実行で単独で、または組合せて使用され重要である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による保管装置の好ましい実施形態を示す図。
【図2】本発明による超低温冷凍保管装置の好ましい実施形態を示す図。
【図3】本発明により使用されるSPIインターフェースの概略図。
【図4】マトリックスボードを含んでいるマルチサンプルモジュールの概略図。
【図5】図4によるマトリックスボードのさらに別の詳細図。
【図6】通常のマルチプレクサシステムの概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生体サンプルと複数のサンプルメモリを収容するようにそれぞれ構成されている複数のマルチサンプルモジュール(20)と、
前記マルチサンプルモジュール(20)により収容されるサンプルメモリへのアクセスを制御するモジュール制御装置(30)と、
前記モジュール制御装置(30)へアクセスするためのデータインターフェース(41)とを具備している特に生体サンプルの冷凍保存のための低温保存用保管装置(100)において、
前記モジュール制御装置(30)はデータインターフェース(41)を介して制御されることができるデータ管理プロセッサ(31)を含んでおり、
前記モジュール制御装置(30)は前記サンプルメモリへ直列にアクセスするように構成されていることを特徴とする低温保存用保管装置。
【請求項2】
さらに、前記データ管理プロセッサ(31)を動作するための電力制御装置(42)を具備し、これは前記データインターフェース(41)を介して受信される電力信号に応答して前記電力制御装置(42)により付勢可能に構成されている請求項1記載の低温保存用保管装置。
【請求項3】
前記データインターフェース(41)はデータ管理プロセッサ(31)へ直列にアクセスを行う請求項1または2記載の低温保存装置。
【請求項4】
さらに、ベースユニット(40)を具備し、前記データインターフェース(41)と前記電力制御装置(42)はこのベースユニット(40)に配置されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の低温保存用保管装置。
【請求項5】
前記マルチサンプルモジュール(20)と前記モジュール制御装置(30)は前記ベースユニット(40)から分離可能に構成されている請求項4記載の低温保存用保管装置。
【請求項6】
前記ベースユニット(40)と前記モジュール制御装置(30)は光学的に結合されている請求項4または5記載の低温保存用保管装置。
【請求項7】
前記各マルチサンプルモジュール(20)は生体サンプルとサンプルメモリを収納するためのマトリックスボード(21)を具備し、
前記データ管理プロセッサ(31)はマトリックスボード(21)の1つを特定して付勢するように構成されている請求項1乃至6のいずれか1項記載の低温保存用保管装置。
【請求項8】
前記マトリックスボード(21)は生体サンプルとサンプルメモリのマトリックス配置を具備し、行アドレスセレクタ(22)と列アドレスセレクタ(23)はサンプルメモリの1つにアクセスするように構成されている請求項7記載の低温保存用保管装置。
【請求項9】
前記データインターフェースはSPIインターフェース(41)である請求項1乃至8のいずれか1項記載の低温保存用保管装置。
【請求項10】
前記マルチサンプルモジュール(20)と、前記モジュール制御装置(30)と、前記データインターフェース(41)とは予め定められた低温保存温度で動作するように構成されている請求項1乃至9のいずれか1項記載の低温保存用保管装置。
【請求項11】
さらに、前記データインターフェース(41)と接続されている光・電子変換器(45)を具備している請求項1乃至10のいずれか1項記載の低温保存用保管装置。
【請求項12】
前記光・電子変換器(45)は予め定められた低温保存温度で動作するように構成されている請求項10記載の低温保存用保管装置。
【請求項13】
前記データインターフェース(41)は線結合された通信バス(44)と接続されている請求項1乃至12のいずれか1項記載の低温保存用保管装置。
【請求項14】
前記マルチサンプルモジュール(20)と前記モジュール制御装置(30)は共通の支持ボード(50)上に配置されている請求項1乃至13のいずれか1項記載の低温保存用保管装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項記載の少なくとも1つに記載された低温保存用保管装置(100)と、
複数の生体サンプルの低温保存のために構成されている保管容器(60)とを具備し、少なくとも1つの保管装置(100)はこの保管容器(60)中に配置されている低温保存装置(200)。
【請求項16】
共通の直列バス(44)を共有する複数の低温保存用保管装置(100)を具備している請求項15記載の低温保存装置(200)。
【請求項17】
さらに、ホストコンピュータ(70)を具備し、前記少なくとも1つの低温保存用保管装置(100)は直列バス(44)を介してホストコンピュータ(70)に接続されている請求項15記載の低温保存装置(200)。
【請求項18】
予め定められた低温保存温度で多数のサンプルモジュール(20)中に生体サンプル及び関連されるサンプルデータを配置し、
データ管理プロセッサ(31)を含んでいるモジュール制御装置(30)によってマルチサンプルモジュール(20)を直列的に制御するステップを含んでおり、データインターフェース(41)はデータ管理プロセッサ(31)を制御し、サンプルデータにアクセスするために設けられる生体サンプルの低温保存方法。
【請求項19】
さらに、前記データインターフェース(41)を介して受信された電力信号に応答して電力制御装置(42)により前記データ管理プロセッサ(31)を付勢するステップを含んでいる請求項18記載の方法。
【請求項20】
さらに、データインターフェース(41)と電力制御装置(42)とを含んでいる前記ベースユニット(40)から前記マルチサンプルモジュール(20)と前記モジュール制御装置(30)を分離するステップを含んでいる請求項18または19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−540807(P2009−540807A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515750(P2009−515750)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005308
【国際公開番号】WO2007/147531
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(597159765)フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー. (68)
【Fターム(参考)】