説明

生体シミュレーションシステム及びコンピュータプログラム

【課題】 個々の患者に対応した生体モデルのパラメータを求めるための技術的手段を提供する。
【解決手段】 生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部とを有し、前記内部パラメータセット生成部は、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と当該出力に対応する実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する選択手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体シミュレーション、特に、糖尿病の病態をシミュレートするシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体を数理モデルによって記述することが従来から試みられている。このようなモデルとしては、例えば、バーグマンのミニマルモデルを挙げることができる(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
このミニマルモデルは、血糖値、血漿インスリン濃度及び末梢組織のインスリン作用点におけるインスリン作用量すなわちリモートインスリンを変数としている。ここで、時刻tにおける血糖値をG(t)、血漿インスリン濃度をI(t)、リモートインスリンをX(t)とすると、G(t)、I(t)、X(t)はそれぞれ時間微分を左辺とする下記の微分方程式で記述される。
【0003】
dG(t)/dt=−p(G(t)−G)−X(t)G(t)
dX(t)/dt=−pX(t)+p(I(t)−I
dI(t)/dt=−n(I(t)−I)+γ(G(t)−h)(ただしG(t) >h)
=−n(I(t)−I)+γ(G(t)−h)(ただしG(t) <=h)
ここで、式中の各パラメータは、
:インスリン非依存性ブドウ糖代謝速度
:血糖値基底値
:インスリンの作用点におけるインスリン取込能
:インスリン依存性ブドウ糖代謝に対するインスリン消費率
:インスリン濃度基底値
n :単位時間当たりのインスリン消費量
γ :ブドウ糖刺激に対するインスリン分泌感度
h :インスリン分泌が開始される血糖値しきい値
であって、これらは各個人によって異なる値をもつものである。
【非特許文献1】バーグマン(Bergman)等、アメリカン ジャーナル オブ フィジィオロジー(American Journal of Physiology)、1979年、第236巻、第6号、p.E−667−77
【非特許文献2】バーグマン(Bergman)等、ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲイション(Journal of Clinical Investigation )、1981年、第68巻、第6号、 p.1456−67
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような生体モデルを個々の患者に適用して、患者の生体をシミュレートし、それを患者の診断等に用いようとすれば、生体モデルを構成する上記パラメータを個々の患者に応じて適切に設定する必要がある。
つまり、生体モデルによって患者の実際の生体を再現しようとすれば、上記パラメータの正確性が重要となり、個々の患者によって異なるべきパラメータをできるだけ正確に求める必要がある。
そこで本発明は、個々の患者に対応した生体モデルのパラメータを求めるための技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と当該出力に対応する実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する選択手段と、を有する生体シミュレーションシステムである。
【0006】
第1の発明によれば、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力(例えば、生体モデルによる血糖値の時間的変化の演算結果、又は血中インスリン濃度の時間的変化の演算結果)と、当該出力に対応する実際の生体応答(例えば、OGTTによって得られた診断データ)との近似性を判定して内部パラメータセットを選択するため、複数の内部パラメータセットの中から、再現したい生体応答に近い出力が得られる内部パラメータセットを選択することができる。
したがって、生体モデルの出力に対応する実際の生体応答の情報があれば、個々の患者によって異なるべきパラメータセットを適切に生成することができ、適切なシミュレーションが可能となる。
なお、第1の発明における「複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段」は、実施形態においては、内部パラメータセットを生成するための遺伝的アルゴリズムを複数回適用することで実現されている。また、第1の発明における選択手段は、実施形態においては、遺伝的アルゴリズム中の適応度評価処理や終了判定処理として実現されているが、これらに限定されるものではない。
【0007】
第2の発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官のシミュレーションを行う生体モデル演算部と、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、生成された内部パラメータセットに含まれるパラメータ値が示す生体器官の状態と、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する手段と、を有する生体シミュレーションシステムである。
【0008】
第2の発明によれば、自動生成して得られた内部パラメータセットに含まれるパラメータ値が示す生体器官の状態(例えば、膵臓が異常)と、実際の生体の検査(例えば、OGTT)から得られる生理的指標(例えば、HOMA−IR、HOMA−β、Insulinogenic index)が示す生体器官の状態(例えば、糖尿病、インスリン分泌能の低下)との近似性を判定して、内部パラメータセットを選択するため、複数の内部パラメータセットの中から、再現したい生体応答に近い出力が得られる内部パラメータセットを選択することができる。
したがって、パラメータ値が示す生体器官の状態に対応した生体器官の状態を示す生理的指標が実際の検査によって得られれば、個々の患者によって異なるべきパラメータセットを適切に生成することができ、適切なシミュレーションが可能となる。
なお、第2の発明における「複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段」は、実施形態においては、「内部パラメータセット推定処理」全体が対応するが、第1の発明のように、内部パラメータセットを生成するための遺伝的アルゴリズムを複数回適用することで実現されていてもよい。また、第2の発明における選択手段は、実施形態においては、生体機能プロファイルの選択処理として実現されている。いずれにおいても、本発明は実施形態の具体的処理に限定されるものではない。
【0009】
第3の発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官のシミュレーションを行う生体モデル演算部と、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、生成された内部パラメータセットに基づいて、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態に近似した生体器官の状態を示す内部パラメータセットを取得する取得手段と、を有する生体シミュレーションシステムである。
【0010】
第3の発明においても、実際の生体の検査(例えば、OGTT)から得られる生理的指標(例えば、HOMA−IR、HOMA−β、Insulinogenic index)が示す生体器官の状態(例えば、糖尿病、インスリン分泌能の低下)と近似した生体器官の状態を示すパラメータセットを取得できる。
したがって、パラメータ値が示す生体器官の状態に対応した生体器官の状態を示す生理的指標が実際の検査によって得られれば、個々の患者によって異なるべきパラメータセットを適切に生成することができ、適切なシミュレーションが可能となる。
なお、第3の発明における「複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段」は、実施形態においては、内部パラメータセットを生成するための遺伝的アルゴリズムを複数回適用することに対応する。
また、第3の発明における取得手段は、実施形態においては、遺伝的アルゴリズムで生成された複数の内部パラメータセットをクラスター分析し、生体機能プロファイルの選択によるパラメータセットの取得までの処理が対応する。なお、クラスター分析は省略してもよい。
ただし、いずれの手段も、実施形態の具体的処理に限定されるものではない。
【0011】
第4の発明は、生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と当該出力に対応する実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から複数の内部パラメータセットを選択する選択手段と、当該選択手段により選択された複数の内部パラメータセットに基づいて、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態に近似した生体器官の状態を示す適切な内部パラメータセットを取得する取得手段と、を有する生体シミュレーションシステムである。
【0012】
第4の発明は、選択手段で得られた内部パラメータセットに基づき、取得手段では、選択での選択基準とは別の観点の基準により適切な内部パラメータセットを得ようとするものである。
つまり、選択手段では、自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と、当該出力に対応する実際の生体応答との近似性を判定して内部パラメータセットを選択するため、再現したい生体応答に近い出力が得られる内部パラメータセットを選択しても、再現したい生体応答に近い出力が得られる内部パラメータセットがいくつも存在する場合がある。このような場合、出力と生体応答との近似性では内部パラメータを十分に絞り込めない。
そこで、取得手段では、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態との近似性という選択手段における基準とは異なる基準により適切な内部パラメータセットの取得を行っている。
なお、第4の発明において、「複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段」は、実施形態においては、内部パラメータセットを生成するための遺伝的アルゴリズムを複数回適用することで実現されている。また、第4の発明における選択手段は、実施形態においては、遺伝的アルゴリズム中の適応度評価処理や終了判定処理として実現されている。また、第4の発明における取得手段は、実施形態においては、遺伝的アルゴリズムで生成された複数の内部パラメータセットをクラスター分析し、生体機能プロファイルの選択によるパラメータセットの取得までの処理が対応する。なお、クラスター分析は省略してもよい。
ただし、いずれの手段も、実施形態の具体的処理に限定されるものではない。
【0013】
第5の発明は、上記第4の発明において、前記取得手段が、パラメータ値が類似するもの同士で複数の前記内部パラメータセットをグループ化したクラスターを形成し、当該クラスターを代表する内部パラメータセットを生成するクラスター分析手段と、当該クラスター分析手段によって生成された内部パラメータセットの中から、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態に近似した生体器官の状態を示す適切な内部パラメータセットを選択する手段と、を有する生体シミュレーションシステムである。
【0014】
選択手段で選択された複数の内部パラメータセットの候補は、パラメータ値が均一に分散した完全にランダムな値を持つものではなく、パラメータ値が近似したもの同士が集まった局所的な分布を持つのが一般的である。そこで、近似したパラメータセット候補同士をグループ化(クラスター化)しておき、クラスターを代表する内部パラメータセットを生成すれば、候補の数が少なくなるとともに、各候補のパラメータ値が比較的大きく異なるようにすることができ、取得手段でのパラメータセット取得を効率的に行うことができる。
【0015】
また、生理的指標を用いて選択を行う場合、当該生理的指標は、前記生体モデル演算部における演算で扱われる情報以外の情報であるのが好ましい。
また、前記生理的指標は、HOMA−IR、HOMA−β、Insulinogenic index、及びHbA1cの少なくとも一つを含むのが好ましい。
【0016】
第6の発明は、内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、生体モデルに適用された場合に、当該生体モデルの出力が実際の生体応答に近似した内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、を有し、前記内部パラメータセット生成部は、複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、自動生成した複数の内部パラメータセットを第1評価基準により評価し、評価結果に基づいて前記複数の内部パラメータセットの中から複数の内部パラメータセットを絞り込み選択する選択手段と、当該選択手段により選択された複数の内部パラメータセットに基づいて、前記第1評価基準とは異なる第2評価基準に適合した内部パラメータセットを取得する取得手段と、を有する生体シミュレーションシステムである。
第6の発明も、選択手段で得られた内部パラメータセットに基づき、取得手段では、選択での選択基準とは別の観点の基準により適切な内部パラメータセットを得ようとするものである。
なお、第6の発明において、「複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段」は、実施形態においては、内部パラメータセットを生成するための遺伝的アルゴリズムを複数回適用することで実現されている。また、第4の発明における選択手段は、実施形態においては、遺伝的アルゴリズム中の適応度評価処理や終了判定処理として実現されている。また、第4の発明における取得手段は、実施形態においては、遺伝的アルゴリズムで生成された複数の内部パラメータセットをクラスター分析し、生体機能プロファイルの選択によるパラメータセットの取得までの処理が対応する。なお、クラスター分析は省略してもよい。
ただし、いずれの手段も、実施形態の具体的処理に限定されるものではない。
【0017】
さらに、前記生体モデルは、糖尿病の病態をシミュレーションするモデルであるのが好ましい。さらにまた、前記生体モデルは、グルコース摂取量を入力として受け入れ、血糖値及び血中インスリン濃度を出力するように構成されているのが好ましい。
【0018】
コンピュータプログラムに係る本発明は、コンピュータを、上述した生体シミュレーションシステムとして機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生体モデルのための適切なパラメータセットを生成でき、適切な生体シミュレーションが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体シミュレーションシステム(以下、単に「システム」ともいう)のハードウェア構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るシステム100は、本体110と、ディスプレイ120と、入力デバイス130とから主として構成されたコンピュータ100aによって構成されている。本体110は、CPU110aと、ROM110bと、RAM110cと、ハードディスク110dと、読出装置110eと、入出力インタフェース110fと、画像出力インタフェース110hとから主として構成されており、CPU110a、ROM110b、RAM110c、ハードディスク110d、読出装置110e、入出力インタフェース110f、及び画像出力インタフェース110hは、バス110iによってデータ通信可能に接続されている。
【0021】
CPU110aは、ROM110bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM110cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム140aを当該CPU110aが実行することにより、後述するような各機能ブロックが実現され、コンピュータ100aがシステム100として機能する。
ROM110bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU110aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0022】
RAM110cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM110cは、ROM110b及びハードディスク110dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU110aの作業領域として利用される。
ハードディスク110dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU110aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム140aも、このハードディスク110dにインストールされている。
【0023】
読出装置110eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体140に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体140には、コンピュータを本発明のシステムとして機能させるためのアプリケーションプログラム140aが格納されており、コンピュータ100aが当該可搬型記録媒体140から本発明に係るアプリケーションプログラム140aを読み出し、当該アプリケーションプログラム140aをハードディスク110dにインストールすることが可能である。
【0024】
なお、前記アプリケーションプログラム140aは、可搬型記録媒体140によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ100aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム140aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ100aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク110dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク110dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム140aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0025】
入出力インタフェース110fは、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース110fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス130が接続されており、ユーザが当該入力デバイス130を使用することにより、コンピュータ100aにデータを入力することが可能である。
画像出力インタフェース110hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ120に接続されており、CPU110aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ120に出力するようになっている。ディスプレイ120は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0026】
[生体モデルの全体構成]
図2は本発明のシステムで用いる生体モデル(生体数理モデル)の一例の全体構成を示すブロック図である。図2に示すように、このシステムで用いる生体モデルの演算部は、生体器官をシミュレートするための膵臓ブロック(膵臓ブロック演算部)1、肝臓ブロック(肝臓ブロック演算部)2、インスリン動態ブロック(インスリン動態ブロック演算部)3、末梢組織ブロック(末梢組織ブロック演算部)4とから構成され、各ブロックは生体モデル外部から又は他のブロックから与えられる入力と、他のブロックへの出力とを有している。
すなわち、膵臓ブロック1は、膵臓の機能を模した演算を行うものであり、血糖値6を入力とし、インスリン分泌速度7を他のブロックへの出力とする。
肝臓ブロック2は、肝臓の機能を模した演算を行うものであり、血糖値6とインスリン分泌速度7を入力とし、正味グルコース放出8と肝臓通過後インスリン9を他のブロックへの出力とする。
インスリン動態ブロック3は、インスリン動態を模した演算を行うものであり、肝臓通過後インスリン9を入力とし、末梢組織でのインスリン濃度10を他のブロックへの出力とする。
末梢組織ブロック4は、末梢組織の機能を模した演算を行うものであり、正味グルコース放出8と、外部からのグルコース吸収5と、末梢組織でのインスリン濃度10を入力とし、血糖値6を他のブロックへの出力とする。
前記グルコース吸収は、外部から与えられるデータであり、この機能は例えば入力デバイス130を用いてユーザが検査データ等を入力することにより実現される。また、それぞれの機能ブロック1〜4は、コンピュータプログラム140aがCPU110aにより実行されることにより実現される。
なお、各ブロックの出力としては、他のブロックへ与えるための出力以外に、インスリン動態ブロック3における血中インスリン濃度I(図4参照)のように、ブロック3において算出されるが他のブロックにはそのままでは与えられない値も存在し、このような値も生体モデル全体としてみた場合には、生体モデルから得られる値であり、生体モデルの出力に含まれる。
【0027】
[膵臓ブロック]
膵臓ブロック1の入出力の関係は、以下に示す微分方程式1を用いて記述される。また、微分方程式1と等価な、図3に示すブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式1:
dY/dt = −α{Y(t)−β(BG(t)−h) (ただし、BG(t)> h)
= −αY(t) (ただし、BG(t)<= h)
dX/dt = −M・X(t)+Y(t)
SR(t) = M・X(t)
変数:
BG(t):血糖値
X(t):膵臓から分泌可能なインスリン総量
Y(t):グルコース刺激に対して新たに供給されるインスリン供給速度
SR(t):膵臓からのインスリン分泌速度
パラメータ:
h:インスリン供給を刺激できるグルコース濃度のしきい値
α:グルコース刺激に対する追従性
β:グルコース刺激に対する感受性
M:単位濃度あたりの分泌速度
ここで、図2における膵臓ブロックへの入力である、血糖値6は、BG(t)と対応する。図2における膵臓ブロックの出力である、インスリン分泌速度7は、SR(t)と対応する。
【0028】
図3のブロック線図において、11は血糖値BG、12はインスリン供給を刺激できるグルコース濃度のしきい値h、13はグルコース刺激に対する感受性β、14はグルコース刺激に対する追従性α、15は積分要素、16はグルコース刺激に対して新たに供給されるインスリン供給速度Y、17は積分要素、18は膵臓から分泌可能なインスリン総量X、19は単位濃度あたりの分泌速度M、20は膵臓からのインスリン分泌速度SRをそれぞれ示す。
【0029】
[肝臓ブロック]
肝臓ブロック2の入出力の関係は、以下に示す微分方程式2を用いて記述される。また、微分方程式2と等価な、図4に示すブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式2:
RGout(t)=Pl(Gb−BG(t)))−P2・SR(t)・BG(t)+Goff
(ただし BG(t) < Gb)
=−P2・SR(t)・BG(t)+Goff (ただしBG(t) >= Gb)
SRpost(t)=K・SR(t)
変数:
BG(t):血糖値
SR(t):膵臓からのインスリン分泌速度
RGout(t):肝臓からの正味グルコース
SRpost(t):肝臓通過後のインスリン
パラメータ
Gb :グルコース濃度基底値
Pl :Gb以下のグルコース刺激に対するグルコース産生速度
P2 :単位インスリン、単位グルコースあたりの肝臓糖取り込み速度
K :肝臓でのインスリン取り込み率
Goff:基礎代謝に対するグルコース放出速度
ここで、図2における肝臓ブロックへの入力である、血糖値6は、BG(t)、インスリン分泌速度7はSR(t)と対応する。図2における肝臓ブロックの出力である、正味グルコース放出8はRGout(t)、肝臓通過後インスリン9はSRpost(t)と対応する。
【0030】
図4のブロック線図において、21は血糖値BG、22は膵臓からのインスリン分泌速度SR、23はグルコース濃度基底値Gb、24はGb以下のグルコース刺激に対するグルコース産生速度Pl、25は単位インスリン単位グルコースあたりの肝臓糖取り込み速度P2、26は肝臓でのインスリン取り込み率K、27は基礎代謝に対するグルコース放出速度Goff、28は肝臓からの正味グルコースRGout、29は肝臓通過後のインスリンSRpostをそれぞれ示す。
【0031】
[インスリン動態ブロック]
インスリン動態ブロック3の入出力の関係は、以下に示す微分方程式3を用いて記述される。また、微分方程式3と等価な、図5に示すブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式3:
dI(t)/dt=−A(t)+A(t)+A(t)+SRpost(t)
dI(t)/dt=A(t) − A(t)
dI(t)/dt=A(t) − A(t)
変数:
SRpost(t):肝臓通過後のインスリン
(t) :血中インスリン濃度
(t) :インスリン非依存組織でのインスリン濃度
(t) :末梢組織でのインスリン濃度
パラメータ:
Al :末梢組織でのインスリン消失速度
A2 :末梢組織へのインスリン分配率
A3 :肝臓でのインスリン取り込み率
A4 :末梢組織通過後のインスリン流出速度
A5 :インスリン非依存組織でのインスリン消失速度
A6 :インスリン非依存組織へのインスリン分配率
ここで、図2におけるインスリン動態ブロックへの入力である、肝臓通過後のインスリン9は、SRpost(t)と対応する。図2におけるインスリン動態ブロックの出力である、末梢組織でのインスリン濃度10はI(t)と対応する。
【0032】
図5のブロック線図において、31は肝臓通過後のインスリンSRpost、32は積分要素、33は肝臓でのインスリン取り込み率A3、34および35は血中インスリン濃度I、36は末梢組織へのインスリン分配率A2、37は積分要素、38および39は末梢組織でのインスリン濃度I、40は末梢組織でのインスリン消失速度Al、41は末梢組織通過後のインスリン流出速度A4、42はインスリン非依存組織へのインスリン分配率A6、43は積分要素、44はインスリン非依存組織でのインスリン濃度I、45はインスリン非依存組織でのインスリン消失速度A5をそれぞれ示す。
【0033】
[末梢組織ブロック]
末梢組織ブロック4の入出力の関係は、以下に示す微分方程式4を用いて記述される。
また、微分方程式4と等価な、図6に示すブロック線図を用いて表現することもできる。
微分方程式4:
dBG(t)/dt = −Kl・BG(t)−K2・I(t)・BG(t)+RG(t)+RGout(t)
変数:
BG(t) :血糖値
RG(t) :消化管からのグルコース吸収
RGout(t):肝臓からの正味グルコース
(t) :末梢組織でのインスリン濃度
パラメータ:
Kl :末梢組織でのインスリン非依存グルコース消費速度
K2 :末梢組織でのインスリン依存グルコース消費速度
ここで、図2における末梢組織ブロックへの入力である、末梢組織でのインスリン濃度10はI(t)と、肝臓からの正味グルコース8は、RGout(t)と、消化管からのグルコース吸収5はRG(t)と対応する。図2における末梢組織ブロックの出力である、血糖値6はBG(t)と対応する。
【0034】
図6のブロック線図において、51は肝臓からの正味グルコースRGout、52は消化管からのグルコース吸収RG、53は積分要素、54は末梢組織でのインスリン非依存グルコース消費速度Kl、55は末梢組織でのインスリン濃度I、56は末梢組織でのインスリン依存グルコース消費速度K2、57は血糖値BGをそれぞれ示す。
各ブロックは、以上の微分方程式に基づいて、それぞれの出力項目の時系列変化を出力することができる。さらに、図2に示すように、本システムを構成するブロック間の入力、出力は、相互に接続されており、あるブロックの出力が他のブロックの入力が与えられるため、ブロックの出力の時間的変化に反応して他の各ブロックの出力が変化する。したがって、例えば、この生体モデルに消化管からのグルコース吸収RGを入力デバイス130から入力として与えることで、血糖値BG(t)と血中インスリン濃度I(t)といった値の時系列変化を、数式に基づいて計算し、シミュレートすることができる。
このように逐次的に算出した血糖値、インスリン濃度は、ディスプレイ120に表示することが可能である。これによって、前述のように生体器官を模擬した結果をユーザが容易に確認することができる。また、糖尿病診療支援システムのような医療システムの中の生体機能を模擬するサブシステムとして本システムを採用することもできる。この場合には、算出した血糖値、インスリン濃度の時系列変化を医療システムの他の構成要素に受け渡し、これによって例えば糖尿病診療支援情報を作成する等、本システムによって算出した血糖値、インスリン濃度に基づいて信頼性の高い医療情報を得ることも可能である。
なお、本システムの微分方程式の計算には、例えば、E−Cell(慶鷹義塾大学公開ソフトウェア)やMATLAB(マスワークス社製品)を用いることができる。また、他の計算システムを用いてもよい。
【0035】
[パラメータセット生成部]
このシミュレーションシステムは、生体モデルの内部パラメータセット(以下、単に「パラメータセット」ということがある)を求めるパラメータセット生成機能(パラメータセット生成部)を有しており、当該機能によって生成されたパラメータセットを前記生体モデルに与えることで、生体モデル演算部は生体器官の機能のシミュレートを行う。
図7は、本システムのパラメータセット生成部が、生体モデルのパラメータセットを求める処理手順を示している。同図に示すように、パラメータを求めるには、OGTT(Oral Glucose Tolerance Test;経口ブドウ糖負荷試験)時系列データ(血糖値変動データ、インスリン濃度変動データ)の入力処理(ステップS1)、生体数理モデルパラメータセット候補推定処理(ステップS2)、生体機能プロファイル生成処理(ステップS3)、実際の診察データの入力処理(ステップS4)、生理的指標の計算処理(ステップS5)、適切な生体プロファイルの選択処理(S6)などが行われる。
【0036】
[OGTT時系列データ入力:ステップS1]
OGTT時系列データは、生体モデルによってシミュレートしようとする患者に対して実際に行った検査であるOGTT(所定量のブドウ糖液を経口負荷して血糖値やインスリン濃度の時間的変化を測定)の結果であり、本システムは、実際の生体応答(実際の検査値)として入力を受け付ける。入力されたOGTT時系列データは、本システムにおいて、後述の内部パラメータセット候補を推定するための基準等として用いられる。
図8は、OGTT時系列データとしての血糖値変動データ(図8(a))及び血中インスリン濃度変動データ(図8(b))を示している。
【0037】
図8(a)の血糖値変動データは、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血糖値BG(t)の時間的変化に対応した実測データである。
また、図8(b)の血中インスリン濃度変動データは、図2〜図6に示す生体モデルにおける出力項目の一つである血中インスリン濃度I(t)の時間的変化に対応した実測データである。
なお、OGTT時系列データの本システムへの入力は、キーボード・マウスなどの入力デバイス130を用いて行ってもよいし、予めOGTT時系列データが登録されたデータベースなどの外部記憶装置から行ってもよい。
【0038】
[推定対象のパラメータについて]
図2〜図6に示す上述の生体モデルにおいては、パラメータとして、膵臓用に[h,α,β,M]、肝臓用に[Gb,P1,P2,Goff,K]、インスリン動態用に[A1,A2,A3,A4,A5,A6]、末梢組織用に[K1,K2]が必要である。また、微分方程式を計算するにあたり、変数の初期値として、膵臓用に[X(0),Y(0),BG(0)]、インスリン動態用に[I(0),I(0),I(0)]が必要である。なお、以下では、特に区別しなければ、変数の初期値も推定対象のパラメータに含めるものとする。
前記生体モデルにおいて、変数の初期値を含めたパラメータとして、23個存在する。下記のパラメータセット候補推定処理では、23個のパラメータのうち19個のパラメータからなるパラメータセットPSを推定する。
つまり、23個のパラメータ中、血糖値の初期値BG(0)、血中インスリン濃度の初期値I(0)は、図8(a)(b)の実測値の初期値(t=0のときの値)によって決定することが可能であり、推定の必要がない。また、本実施形態では、インスリン非依存組織でのインスリン濃度の初期値I(0),末梢組織でのインスリン濃度の初期値I(0)は、0で固定することとしたため、これも推定の必要がない。よって、残った19個のパラメータが推定処理の対象となる(後述の表1参照)。なお、以下では、説明の都合上、19個のパラメータを、「Px」(x:01〜19)とよぶ。Pxと各パラメータ記号との対応関係は、後述の表1に示すとおりである。
【0039】
[生体数理モデルパラメータセット候補推定:ステップS2]
パラメータセット候補の推定処理(ステップS2)は、CPU110aによる処理におって、図8(a)(b)に示す時系列データをある誤差範囲で再現できる生体モデルのパラメータセットPS候補を確率的最適化法(ステップS2−1)によって求めることによって行われる。また、確率的最適化法によって得られたパラメータセットPS候補に対し階層クラスター分析を行ってパラメータセットPS候補を絞り込むことができる(ステップS2−2)。
ここでは、確率的最適化法として、遺伝的アルゴリズム(以下、単に「GA」ということがある)を用いた。以下では、GAに基づいて、複数のパラメータセット候補を推定する処理手順を説明する。
なお、ここでは、以下に説明するGAを1回行うことで一つのパラメータセットPS候補を求め、GAを100回繰り返すことで、100セットの生体モデルパラメータセット候補(PS#01〜PS#100)を生成する。なお、1回の確率最適化法によって求められるパラメータセットPS候補の数は、1つでよいが、複数であってもよい。
【0040】
GAによるパラメータセット候補の生成は、図9に示すように、パラメータセットの初期集団を生成する処理(ステップS11)、適応度評価処理(ステップS12)、選択・交叉・突然変異処理(ステップS14)、終了判定処理(ステップS13,S15)によって行われる。なお、初期集団を生成する処理(ステップS11)及び選択・交叉・突然変異処理(ステップS14)は、本発明における、内部パラメータセット(候補)を自動生成する手段に該当する。
以下、図9のアルゴリズムを詳述する。
【0041】
[初期集団生成:ステップS11]
本システムは、下記表1に示すような、生体モデルのパラメータP01〜P19のそれぞれについての探索範囲の情報を有している。本システムは、パラメータごとに表1の最小値と最大値の範囲内で乱数を発生させることで、パラメータセットPSを所定の探索範囲内でランダムに自動生成する機能を有している。以下、このようにして得られたパラメータセットPSを「個体」と呼ぶことがある。
【表1】

【0042】
探索範囲内で19個のパラメータごとに乱数を発生させる処理を繰り返すことで、複数のパラメータセットPSからなる初期集団を生成することができる。
下記表2は、初期集団として生成された10個のパラメータセットPS#01〜PS#10の例を示している。
【表2】

【0043】
[適応度評価:ステップS12]
本システムは、生成された個体に対して適応度評価を行い、(初期)集団中の個体PSの中から一部の個体PSを選択・抽出する。
適応度評価には、ステップS1で入力された実測の時系列データ(図8(a)(b)参照)がリファレンスとして用いられる。リファレンスとなる実測のデータ(生体応答)は、本システムが、生体モデルの出力として再現したいデータであり、生成されたパラメータセットを適用した生体モデルでもリファレンスと同様の応答が得られれば、その個体は、実測値への適応性が高いといえる。
例えば、生体モデルで再現したい血糖値の時系列データref(t)が図10に示すようなものであり、生成された個体PS#01のパラメータセットを適用した生体モデルでの血糖値の演算結果y1(t)が図11に示すようになる場合、誤差関数e(t)及び誤差値errorは、下記式(1)、式(2)のようにして求められる。なお、誤差関数の演算結果を図11に示した。
【数1】

【数2】

ここで、fitness値fを式(3)で定め、fitness値fが0に近いほど適応度が高いものとする。
f=error ・・・(3)
【0044】
【表3】

表3は、本システムが、個体PS#01〜PS#10について、fitness値fを求めた結果を示している。
なお、上述の説明では実際の生体応答のうち実測血糖値だけを用いて適応度を評価しているが、実測インスリン濃度をも用いて適応度評価をしてもよい。
【0045】
[選択:ステップS14−1]
続いて、本システムは、表3のfitness値fに基づいて、選択確率Fを式(4)で定める(#iは個体番号、i:01〜10)
【数4】

【0046】
下記表4は、式(4)によって求まった(初期)集団の各個体の選択確率Fを示している。
【表4】

【0047】
本システムは、(初期)集団の中から、選択確率の高いものから一部(例えば4個体:PS#04,PS#06,PS#08,PS#05)を選択し、「親」とする。なお、選択基準としては、「選択確率の高いもの」に限らず、後の世代の「子」において適応度が高くなることを期待して、選択確率が低い「親」が一部含まれるような基準であってもよい。また、本実施形態では、取り得る値の幅の大きいfitness値fによって選択するのではなく、値の範囲が限定された選択確率F(0〜1)によって選択しており、柔軟な選択基準を選択し易くなっている。
【0048】
[交叉:ステップS14−2]
上記「選択」によって「親」として選ばれた個体群(PS#04,PS#06,PS#08,PS#05)に対し、本システムは、以下の手順で「子」となる新しい2個体を生成する(図13参照)。
まず、(1)選択された個体群から任意に2個体を選ぶ。例えば、図13に示すように、PS#04とPS#08が選ばれたとする。
次に、(2)個体同士の交叉回数(交換対象となるパラメータの数)を求める。交叉確率をXR(0〜1の範囲)とすると、交叉回数は次式で定められる。
交叉回数 = [XR × 1個体がもつパラメータ数]
ただし、[]はガウス記号である。(例)[3.14]=3
例えば、XR=0.11とすると、1個体がもつパラメータ数は19個であるから、交叉回数[0.11 × 19] = [2.09]=2となる。
なお、XRは、固定値であってもよいし、乱数であってもよい。
続いて、(3)交叉ポイントを求める。交叉ポイントは、1からパラメータ数(19)までの整数値を、“交叉回数”回ランダムに発生させることで求められる。例えば、交叉回数が2の場合、1〜19の間で2回乱数を発生させることで、5と11が得られる。
最後に、(4)新しい個体の生成が行われる。具体的には、(1)で選んだ2個体(PS#04,PS#08)に対し、(3)で定めた交叉ポイント(5,11)のパラメータP05,P11を交換し、新しい2個体(新PS#01,新PS#02)を生成する。
上記(1)〜(4)の処理を繰り返すことで、「選択」によって減った個体数分(上記例では6個体)の新個体(子)を生成し、新たな集団を生成する。新たな集団を表5に示す。
【表5】

【0049】
[突然変異:ステップS14−3]
本システムは、表5に示す新集団のすべての個体に対し、突然変異確率MR(0〜1の範囲)により以下の手順で各個体のパラメータP01〜P19を変化させる。
例えば、個体PS#04のパラメータP01に対する突然変異処理は、0〜1の範囲で乱数Rを発生させ、R ≦ MR であれば、表1に示すP01の探索範囲内で乱数を発生させ、元のP01の値と置き換える。同様の処理を、P02〜P19に行う。
【0050】
[終了条件判定処理:ステップS13,S15]
図9に示すように、ステップS12〜S14までの処理は、繰り返し行われるが、ステップS12において適応度評価処理を行った結果、現在の集団の中に適応度の高い個体がある場合には、GAの処理を終了し、集団の中で最高の適応度の個体(パラメータセット)を推定結果とする(ステップS13)。終了条件としての適応度としては、例えば、fitness値≦500とすることができる。
また、ステップS12〜S14(適応度評価〜突然変異)までの処理の繰り返し回数がある回数を超えた場合には、GAの処理を終了し、集団の中で最高の適応度の個体(パラメータセット)を推定結果とする(ステップS15)。終了条件としての繰り返し回数としては、例えば、300回とすることができる。
【0051】
[階層クラスター分析によるクラスター生成:ステップS2−2]
上述のGAを100回適用することにより、図14に示すように100セットのパラメータセットPS候補が得られる。これらのパラメータセットPS候補は、パラメータ値がほぼ均一に分散した完全にランダムな値を持つものではなく、パラメータ値が近似したもの同士が集まった局所的な分布を持つのが一般的である。近似したパラメータ値をもつパラメータセットに後述のステップS6のような処理を行うのは、無駄になるため、ここでは、近似したパラメータ値を持つパラメータセット群をグループ化した「クラスター」を生成する処理を行う。
【0052】
クラスター生成処理のため、本システムは、(1)パラメータセットの規格化処理、(2)階層クラスター分析処理を行う。
パラメータセットの規格化(正規化)処理は、階層クラスター分析処理のための前処理である。規格化処理は、各パラメータが、異なる単位・数値範囲を持つため、パラメータ間の単位・数値範囲の差異による影響を排除するために行われる。
規格化の算出は、CPU110aが、例えば、次のようにして行う。図14のパラメータP01を規格化する場合は、次の式(5)を用いることができる。
【数5】

ここで、
P01(#i):i番目のパラメータセットのパラメータP01
nP01(#1):規格化されたP01(#i)
mean(PS01):P01(#1)〜P01(#100)の平均値
SD(PS01):P01(#1)〜P01(#100)の標準偏差
【0053】
P01以外のパラメータP02〜P19についても、式5と同様の式を用いて規格化処理を行った結果の例を図15に示す。
【0054】
続いて、CPUA110aは、規格化処理がなされたパラメータセットPS候補に対して階層クラスター分析のための処理を行う。図16は、クラスター分析結果のデンドログラム(樹状図)を示している。ここでは、個体が似通っているか否かの基準としては「ユークリッド距離」を用い、距離の計算手法としてウォード法を用いた。
なお、n個(ここでは、n:1〜100)の個体(パラメータセット候補)について、p個(ここでは、p:1〜19)のパラメータがある場合、それぞれのパラメータをXi1,Xi2、・・・,Xip(i:1,2,・・・,n)と表す。また、初期状態では、n個の個体は、それぞれクラスターを構成しており、n個のクラスターが存在していると考える。
そして、クラスター(初期状態では個体)間のユークリッド平方距離dijは、式(6)によって算出される。
【数6】

【0055】
ユークリッド平方距離が求まると、次に、距離が最も近いクラスター同士を併合して、新たなクラスターを形成させる。
すなわち、クラスターaとクラスターbが併合されて新たなクラスターcが形成された場合、クラスターaとクラスターbが併合される前のクラスターab間の距離をdab、クラスターaと他のクラスターx(x≠a,x≠b)との間の距離をdxa、クラスターbと他のクラスターx(x≠a,x≠b)との間の距離をdxbとすると、併合後のクラスターcと他のクラスターx(x≠a,x≠b)との距離dxcは、次の式(7)で表される。
【数7】


ただし、nは、クラスターaに含まれる個体数(パラメータセット候補数)。n,n,nも同様。
【0056】
2個のクラスターの併合によりクラスターの総数が1個減少する。この併合処理を、クラスター総数が1となるまで繰り返すことでクラスター分析が完了する。
ここで、算出した距離dは、個体(パラメータセット候補)間の非類似度を示しており、距離が小さいほど類似していることになる。図16は、軸をパラメータセット候補間の非類似度(距離)、Y軸にパラメータセット番号を並べたときのデンドログラムの一部を示している。
図16において、例えば、パラメータセットPS#01とパラメータセットPS#84の非類似度は約4Xである。例えば、非類似度8以内のパラメータセット候補を集めてクラスターを生成する場合、図16に示すようにcutoff値=8とし、cutoff値で切られるそれぞれの枝の先(図16においてcutoffの左側)にあるパラメータセット群がそれぞれクラスターを形成する。図16は、全部で10個形成されたクラスターのうちの5つのクラスターC1〜C5を示している。
【0057】
生成されたクラスターに属するパラメータセット候補の値は近似しているため、生体モデルに適用した場合にも似た機能を持つことになる。そこで、CPU110aは、クラスターを代表する単一のパラメータセット候補を生成する処理を行う。クラスターを代表する単一のパラメータセット候補(クラスター代表パラメータセット候補)を生成するには、例えば、クラスターに属するパラメータセットの各パラメータの平均値を、クラスター代表パラメータセット候補の各パラメータ値とすればよい。なお、各パラメータの平均値を求める際には、単純平均ではなく、類似度(非類似度)に基づく重み付けを行ってもよい。
以上の処理によって、クラスターごとにパラメータセット候補が得られ、100セットのパラメータセット候補が、パラメータ値が互いに近似しない10個のパラメータセット候補に絞られたことになる。
【0058】
[クラスターごとの生体機能プロファイル生成:ステップS3]
さらに、本システムは、クラスター代表パラメータセット候補の各パラメータ値に基づき、10個のクラスターごとの生体機能プロファイルを生成する(ステップS3)。生体機能プロファイルは、例えば、図17に示すように、膵臓、肝臓、糖代謝について生成される。
膵臓の生体機能プロファイルは、膵臓ブロックのパラメータである「グルコース分泌速度(単位濃度あたりの分泌速度)M」「インスリン供給を刺激できるグルコース濃度のしきい値h」、「グルコース感受性(グルコース刺激に対する感受性)β」、「インスリン産生速度(グルコース刺激に対する追従性)α」を1〜5の間の数値で指標化することによって表されている。
肝臓の生体機能プロファイルは、肝臓ブロックのパラメータである「グルコース貯蓄能(単位インスリン、単位グルコースあたりの肝臓糖取り込み速度)P2」、「グルコース低下の感受性(グルコース濃度基底値)Gb」、「グルコース産生能(Gb以下のグルコース刺激に対するグルコース産生速度)P1」を1〜5の間の数値で指標化することによって表されている。
糖代謝の生体機能プロファイルは、末梢組織ブロックのパラメータである「インスリン非依存型糖代謝能(末梢組織でのインスリン非依存グルコース消費速度)K1」「インスリン感受性(末梢組織でのインスリン依存グルコース消費速度K2)を1〜5の間の数値で指標化することによって表されている。
【0059】
生体機能プロファイルの各軸の基準値は、3とされており、基準値を超えると正常、基準値を下回ると機能不全の度合いが高くなる。図17の2つの生体機能プロファイル1,2は、前述の10個のクラスター代表パラメータセット候補のうちの、2つの候補について生体機能プロファイルを生成したものである。
図17の2つの生体機能プロファイルの膵臓についてみると、プロファイル1は各項目(各軸)がすべて基準値である3未満であり膵臓が機能不全であることを示しているのに対し、プロファイル2では2項目(グルコース感受性及びインスリン産生速度)が基準値以上でこれらの項目については正常であることを示している。
【0060】
[生理的指標の計算:ステップS4]
上述のように、GAによって、図8(a)(b)に示す時系列データをある誤差範囲で再現できる生体モデルのパラメータセットPS候補を生成し、更にクラスター化しても複数の候補が残ることがある。これは、複数の候補の中に、図8(a)(b)に示す時系列データを再現できるパラメータセットPSであっても、実際の生体器官を模していないものが含まれているためである。つまり、クラスター化後に複数の候補が残るということは、同様の出力を生成することができる生体モデルのパラメータセットは一つではなく、複数存在し、ステップS2のパラメータセット推定処理では、最適解又は準最適解としてのパラメータセットを十分に絞り込めない場合があることを示している。
そこで、本システムは、ステップS2とは別の観点から(別の基準で)パラメータセットPS候補の絞り込み・選択・取得を行う機能を有している。すなわち、ここでの候補絞り込み乃至取得は、前述の生体機能プロファイルを用いるものである。
【0061】
生体機能プロファイルは、パラメータセットPS候補が適用される生体モデルにおける生体器官(膵臓等)の状態を示しており、ここの絞り込みでは、プロファイルが示す生体モデルにおける生体器官の状態が、血糖値などの実際の生体の検査値(診察データ)から求めた生体器官の生理的指標が示す生体器官の状態と近似しているか否かによって行う。
【0062】
生理的指標の計算(ステップS4)は、実際の生体の診察データに基づいて、CPU100aにより行われる。本実施形態では、診察データとして、ステップS1で入力されたOGTT時系列データ(血糖値、インスリン濃度;図8参照)を用いるため、ステップS1とは別の入力処理は不要であり、処理が簡素化されている。ただし、診察データの種類は、ステップS4で計算される生理的指標に応じて決定され、ステップS1とは別途の入力が必要な場合には、適宜、診察データの入力処理が行われる。
【0063】
本実施形態では、生理的指標として、HOMA−IR(インスリン抵抗性の指標)、HOMA−β(インスリン分泌能の指標)、Insulinogenic index(インスリン初期分泌能の指標;以下、「I index」という)が用いられている。これらの指標は、血糖値と血中インスリン濃度(ステップS1で入力されている)に基づいて算出可能な指標である。これらの指標は、生体モデルで扱われる情報(血糖値、血中インスリン濃度)に基づいてCPU110aが算出できるが、これら指標が示す値自体は、生体モデルで扱われない情報である。ただし、生理的指標としては、パラメータ値のように生体モデルで扱われる情報に対応したものであってもよい。
また、HOMA−IRは糖代謝に関する指標であり、HOMA−β及びI indexは膵臓の状態に関する指標である。なお、生理的指標としては、HbA1c(HbA1cの変化の割合)を用いても良い。
各指標は、次の式によって算出される。
HOMA−IR=(空腹時血糖値)×(空腹時インスリン濃度)/405
HOMA−β=360×(空腹時インスリン濃度)/(空腹時血糖値−63)
I index=(30分インスリン濃度−空腹時インスリン濃度)
/(30分血糖値―空腹時血糖値)
【0064】
HOMA−IRは、1以下であればインスリン抵抗性に関して正常、2以上であれば抵抗性傾向あり、3以上であれば明らかな抵抗性があることを示している。
HOMA−βは、正常値が40〜60であり、数値が小さいほど分泌能が低下していることを示している。
I indexは、0.8以上であれば問題なく、0.4〜0.8の間であれば糖尿病になりやすく、0.4以下であれば糖尿病であることを示している。
【0065】
【表6】


表6は、図8(a)(b)で示した各データの数値を示しており、これに基づいて各指標を計算すると、表7のようになる。
【表7】

【0066】
[生体機能プロファイルの選択:ステップS5]
続いて、本システムは、ステップS5において計算された生理的指標を用いて、ステップS3で生成された生体機能プロファイルの中から、適切な生体機能プロファイルの選択を行う(ステップS5)。
より具体的には、生体機能プロファイルが示す生体器官の状態と、生理的指標が示す生体の状態との近似性を判定し、適切な生体機能プロファイルを選択し、それをディスプレイ120に出力する(ステップS6)。
図18及び図19は、選択のため基準となるスコア(score)を算出するアルゴリズムを示している。このアルゴリズムでは、生体機能プロファイルの値と生理的指標が共に異常である場合に、両者に近似性があるとみなして、スコアアップするように構成されており、高いスコアの生体機能プロファイルが選択される。
【0067】
まず、初期値としてscore=0としておき(ステップS21)、次に、糖代謝の状態、つまりHOMA−IRについての判断を行う(ステップS22〜S24)。ステップS22では、インスリン抵抗性の指標であるHOMA−IRが異常を示しているかどうか(HOMA−IR>3)を判定し、異常(YES)である場合は、生体機能プロファイルのインスリン感受性K2が異常を示しているかどうか(K2<3)を判定する(ステップS23)。インスリン感受性も異常であれば、scoreの値を1加算する(ステップS24)。HOMA−IRとインスリン感受性のいずれかが異常でなければ、scoreの値は加算されない。
続いて、本システムは、膵臓の状態、つまりHOMA−β及びI indexについての判断を行う(ステップS25〜S28,S29〜S33)。まず、インスリン分泌能の指標であるHOMA−βが大きな異常を示しているかどうか(HOMA−β<20)を判定し(ステップS25)、HOMA−βが大きな異常を示していない場合(NO)でも、I indexが異常(糖尿病;I index<0.4)を示している場合には(ステップS26)、生体機能プロファイルのインスリン分泌速度Mが異常を示しているかどうか(M<3)を判定する(ステップS27)。プロファイルが示すインスリン分泌速度も異常であれば、プロファイルと生理的指標の適合性があるから、scoreの値を1加算する(ステップS28)。I indexが異常を示していない場合や、インスリン分泌速度Mが異常を示していない場合は、scoreの値は加算されない。
【0068】
また、HOMA−βが大きな異常を示している場合(ステップS25のYES)も、I indexが異常を示しているかどうかを判定する(ステップS29)。I indexも異常を示している場合には異常の度合いが高いといえる。この場合、膵臓プロファイルの各項目(全4項目)の平均値が基準値である3未満か否かを判定する(ステップS30)。膵臓プロファイルの平均値が基準値を下回る場合、膵臓プロファイルも異常を示しているから、プロファイルと生理的指標の適合性が大きいため、scoreの値を2加算する(ステップS31)が、膵臓プロファイルの平均値が基準を上回る場合は、scoreの値は加算されない。
また、I indexが異常を示していない場合(ステップS29のNO)は、生体機能プロファイルのインスリン分泌速度Mが異常を示しているかどうか(M<3)を判定する(ステップS32)。プロファイルが示すインスリン分泌速度が異常であれば、プロファイルと生理的指標の適合性があるから、scoreの値を1加算する(ステップS33)。インスリン分泌速度Mが異常を示していない場合は、scoreの値は加算されない。
【0069】
例えば、図16に示すプロファイル1とプロファイル2の場合、上記スコア算出アルゴリズムを適用すると、scoreはそれぞれ「2」「0」となるから、scoreの高いプロファイル1の方が適切であることがわかる。
【0070】
上記選択アルゴリズムに基づいて、それぞれのクラスターの生体機能プロファイルのスコアを算出し、スコアの最も高い1又は複数の生体機能プロファイルが適切な生体機能プロファイルとして選択され(ステップS5)、当該プロファイルがディスプレイ120に出力される(ステップS6)。そして、適切な生体機能プロファイル生成の元になったパラメータセット候補は、本システムで求めようとする最適解又は準最適解としてのパラメータセットとなる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、シミュレーションの対象は、糖尿病の病態に限られるものではなく、他の病態に関するものであってもよい。また、生体モデルの構成やそのパラメータも上記のものに限られるものではなく、適宜変更可能である。
また、生理的指標としては、肝臓に関する指標その他の指標を用いても良い。また、上記実施形態では、遺伝的アルゴリズムを用いて生成されたパラメータセット候補に対して、生体機能プロファイルを用いて候補を絞り込んだが、遺伝的アルゴリズムによるパラメータセット生成だけを行っても良い。
さらに、実施形態の遺伝的アルゴリズムの適応度評価では、生体モデルの出力と実際の生体応答の近似性を評価基準としたが、生体機能プロファイルが示す状態と生理的指標が示す状態の近似性を評価基準としてもよい。
【0072】
あるいは、上記実施形態では、自動生成されたパラメータセットを、生体モデルの出力と実際の生体応答の近似性で絞り込み、その後、生体機能プロファイルが示す状態と生理的指標が示す状態の近似性で絞り込んだが、先に、生体機能プロファイルが示す状態と生理的指標が示す状態の近似性で絞り込んでおいて、その後、生体モデルの出力と実際の生体応答の近似性で絞り込んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】生体モデルの全体構成を示すブロック図である。
【図3】生体モデルの膵臓モデルの構成を示すブロック線図である。
【図4】生体モデルの肝臓モデルの構成を示すブロック線図である。
【図5】インスリン動態モデルの構成を示すブロック線図である。
【図6】末梢組織モデルの構成を示すブロック線図である。
【図7】パラメータ生成処理を示すフローチャートである。
【図8】OGTT時系列データであり、(a)は実測血糖値、(b)は実測血中インスリン濃度である。
【図9】遺伝的アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図10】リファレンスとなる実測血糖値である。
【図11】生成されたパラメータセット(個体)PS#01を適用した生体モデルの出力である。
【図12】生成された個体PS#01のリファレンスに対する誤差を示すグラフである。
【図13】遺伝的アルゴリズムにおける交叉の説明図である。
【図14】生成された100個のパラメータセットを示す図である。
【図15】図14のパラメータセットに規格化処理を行った結果を示す図である。
【図16】パラメータセットのクラスター分析結果を示すデンドログラムである。
【図17】生体機能プロファイルを示す図である。
【図18】生体機能プロファイル選択のため基準となるスコア(score)を算出アルゴリズムのフローチャート前半部分である。
【図19】生体機能プロファイル選択のため基準となるスコア(score)を算出アルゴリズムのフローチャート後半部分である。
【符号の説明】
【0074】
1 膵臓ブロック
2 肝臓ブロック
3 インスリン動態ブロック
4 末梢組織ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と当該出力に対応する実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する選択手段と、
を有することを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項2】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官のシミュレーションを行う生体モデル演算部と、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
生成された内部パラメータセットに含まれるパラメータ値が示す生体器官の状態と、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から適切な内部パラメータセットを選択する選択手段と、
を有することを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項3】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官のシミュレーションを行う生体モデル演算部と、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
生成された内部パラメータセットに基づいて、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態に近似した生体器官の状態を示す内部パラメータセットを取得する取得手段と、
を有することを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項4】
生体モデルを構成する内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
生成された内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した内部パラメータセットを適用して算出された生体モデルの出力と当該出力に対応する実際の生体応答との近似性を判定して、生成された複数の内部パラメータセットの中から複数の内部パラメータセットを選択する選択手段と、
当該選択手段により選択された複数の内部パラメータセットに基づいて、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態に近似した生体器官の状態を示す適切な内部パラメータセットを取得する取得手段と、
を有することを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項5】
前記取得手段は、
パラメータ値が類似するもの同士で複数の前記内部パラメータセットをグループ化したクラスターを形成し、当該クラスターを代表する内部パラメータセットを生成するクラスター分析手段と、
当該クラスター分析手段によって生成された内部パラメータセットの中から、実際の生体の検査から得られる生理的指標が示す生体器官の状態に近似した生体器官の状態を示す適切な内部パラメータセットを選択する手段と、
を有することを特徴とする請求項4記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項6】
前記生理的指標は、前記生体モデル演算部における演算で扱われる情報以外の情報であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項7】
前記生理的指標は、HOMA−IR、HOMA−β、Insulinogenic index、及びHbA1cの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項8】
内部パラメータセットに基づき、生体器官の生体応答を模した生体モデルの出力を演算する生体モデル演算部と、
生体モデルに適用された場合に、当該生体モデルの出力が実際の生体応答に近似した内部パラメータセットを生成する内部パラメータセット生成部と、
を有し、
前記内部パラメータセット生成部は、
複数の異なる内部パラメータセットを自動生成する手段と、
自動生成した複数の内部パラメータセットを第1評価基準により評価し、評価結果に基づいて前記複数の内部パラメータセットの中から複数の内部パラメータセットを絞り込み選択する選択手段と、
当該選択手段により選択された複数の内部パラメータセットに基づいて、前記第1評価基準とは異なる第2評価基準に適合した内部パラメータセットを取得する取得手段と、
を有することを特徴とする生体シミュレーションシステム。
【請求項9】
前記生体モデルは、糖尿病の病態をシミュレーションするモデルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項10】
前記生体モデルは、グルコース摂取量を入力として受け入れ、血糖値及び血中インスリン濃度を出力するように構成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の生体シミュレーションシステム。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1〜10のいずれかに記載の生体シミュレーションシステムとして機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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