説明

生体センサー装置

【課題】生体センサー装置において、簡易な構成で、照射部で発生する熱を外部に逃がし、例えば血流速度等の生体情報を高精度に検出する。
【解決手段】生体センサー装置は、基板(110)と、基板上に配置され、光を生体に照射する照射部(120)と、基板上に配置され、照射された光に起因する生体からの光を検出する受光部(130)と、基板、照射部及び受光部を収容する筺体(190)と、基板を貫通する貫通穴(90)内に設けられると共に基板よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導率材料から形成された穴内部分(251)を含み、照射部及び筺体に接触する熱伝導部(250)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血流速度等の生体情報を測定するための生体センサー装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の生体センサー装置として、レーザー光等の光を生体に照射し、その反射又は散乱の際におけるドップラーシフトによる波長の変化により、生体の血流速度等を算出するものがある(例えば特許文献1及び2参照)。このような生体センサー装置は、典型的には、光を生体に照射するための半導体レーザーと、生体からの光を検出するためのフォトダイオードとが互いに近接して実装された回路基板が筺体内に収容されてなる。また、このような生体センサー装置による血流速度等の測定は、典型的には、筺体が生体(例えば指先)に接触した状態で行われる。
【0003】
ここで、生体の血流は、生体がおかれた環境の温度に大きく依存することが知られている(例えば非特許文献1参照)。このため、上述したような生体センサー装置によって血流速度を測定する際、半導体レーザーで発生する熱によって生体センサー装置の温度が高くなると、測定対象である生体の血流が変化してしまい、血流速度等を正確に測定できないおそれがある。そこで、半導体レーザーで発生する熱の影響を低減するために、例えば特許文献2では、半導体レーザー(レーザーダイオード)及びフォトダイオードが筺体内に収容されてなるセンサーチップとは別に、光ファイバーによってセンサーチップと接続された光ファイバー保持具を設け、光ファイバー保持具を生体に接触させて血流を測定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−175415号公報
【特許文献2】特開2008−278983号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】標準生理学第7版、医学書院、p869−871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献2に開示された技術では、半導体レーザーで発生する熱の影響を低減できるが、装置の構成が複雑であるために、装置の製造コストが増大したり、装置の信頼性が低下したりしてしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、簡易な構成で、例えば半導体レーザー等を含んでなる照射部の熱を外部に効率良く逃がすことができ、例えば血流速度等の生体情報を高精度に検出可能な生体センサー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体センサー装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上に配置され、光を生体に照射する照射部と、前記基板上に配置され、前記照射された光に起因する前記生体からの光を検出する受光部と、前記基板、前記照射部及び前記受光部を収容する筺体と、前記基板を貫通する貫通穴内に設けられた穴内部分を含み、前記照射部及び前記筺体に接触すると共に、前記基板よりも高い熱伝導率を有する熱伝導部とを備える。
【0009】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例に係る血流センサープローブの全体構成を示す断面図である。
【図2】第1実施例に係る血流センサープローブの使用方法の一例を示す概念図である。
【図3】第1実施例に係る血流センサープローブの照射部の放熱構成を示す断面図である。
【図4】第1実施例に係る血流センサープローブの一部を拡大して示す上面図である。
【図5】第1実施例における、回路基板を貫通する貫通穴内に設けられた熱伝導部材及び回路基板上における貫通穴の周辺に設けられた周辺メッキ部分の構成を示す上面図である。
【図6】第2実施例に係る血流センサープローブの照射部の放熱構成を示す断面図である。
【図7】第3実施例に係る血流センサープローブの照射部の放熱構成を示す断面図である。
【図8】第4実施例に係る血流センサープローブの照射部の放熱構成を示す断面図である。
【図9】第4実施例における貫通穴内の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
第1実施形態に係る生体センサー装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上に配置され、光を生体に照射する照射部と、前記基板上に配置され、前記照射された光に起因する前記生体からの光を検出する受光部と、前記基板、前記照射部及び前記受光部を収容する筺体と、前記基板を貫通する貫通穴内に設けられると共に前記基板よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導率材料から形成された穴内部分を含み、前記照射部及び前記筺体に接触する熱伝導部とを備える。
【0013】
本実施形態に係る生体センサー装置によれば、その検出時には、例えば半導体レーザー等を含んでなる照射部によって、例えばレーザー光等の光が、生体の一部(例えば指先)に対して照射される。このように生体に照射された光に起因する生体からの光は、例えば受光素子を含んでなる受光部により検出される。ここに「生体に照射された光に起因する生体からの光」とは、生体において反射、散乱、回折、屈折、透過、ドップラーシフトされた光及びそれらの光による干渉光などの、生体に照射された光に起因する光を意味する。受光部により検出された光に基づいて、生体に係る例えば血流速度等の生体情報を得ることができる。
【0014】
本実施形態では特に、照射部及び受光部が配置された基板を貫通する貫通穴内に設けられた穴内部分を含み、照射部及び筺体に接触する熱伝導部を備えている。貫通穴は、基板における照射部が配置された一方の面から該一方の面とは異なる他方の面まで貫通するように、一つ又は複数形成される。穴内部分は、例えば、基板よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導率材料(例えば金属、半田など)が貫通穴内に充填されることにより形成される。熱伝導部は、例えば、穴内部分に加えて、基板の一方の面(即ち、照射部が配置された側の面)に、穴内部分を覆うと共に照射部に接触するように形成された部分と、基板の他方の面(即ち、照射部が配置されない側の面)に、穴内部分を覆うと共に筺体に接触するように形成された部分とを含んでなる。
【0015】
よって、例えば半導体レーザー等を含んでなる照射部の熱を熱伝導部によって筺体に伝達することができる。従って、照射部の熱を、熱伝導部及び筺体を介して外部に効率良く逃がすことができる。即ち、本実施形態に係る生体センサー装置によれば、熱伝導部によって、照射部の放熱性を向上させることができる。これにより、当該生体センサー装置の温度が、照射部で発生する熱によって上昇することを抑制或いは防止できる。この結果、例えば血流速度等の生体情報の検出時に、当該生体センサー装置の温度によって、生体情報が変化してしまうことを低減或いは防止でき、生体情報を高精度に検出することが可能となる。
【0016】
更に、本実施形態によれば、熱伝導部は、照射部及び受光部が配置された基板を貫通する貫通穴内に設けられた穴内部分を含むという簡易な構成を有しているので、当該生体センサー装置の製造プロセスの複雑化を殆ど或いは全く招くことがない。
【0017】
加えて、本実施形態によれば、上述したように照射部の熱を熱伝導部及び筺体を介して外部に効率良く逃がすことができるので、例えば半導体レーザーを含んでなる照射部で消費される電力を低減でき、照射部で発生する熱を低減できる。従って、当該生体センサー装置の温度が、照射部で発生する熱によって上昇することを抑制或いは防止できる。尚、半導体レーザーは、一般的には、当該半導体レーザーの温度が高くなるほど、同一の強度のレーザー光を出力するために消費する電力が多くなってしまう。
【0018】
以上説明したように、本実施形態に係る生体センサー装置によれば、簡易な構成で、例えば半導体レーザー等を含んでなる照射部の熱を外部に効率良く逃がすことができ、例えば血流速度等の生体情報を高精度に検出することが可能となる。
【0019】
本実施形態に係る生体センサー装置の一態様では、前記熱伝導部は、前記穴内部分の融点よりも低い温度で接着機能を発揮可能な接着材料から形成され、前記照射部を前記基板に接着させる接着部分を更に含む。
【0020】
この態様によれば、熱伝導部の接着部分は、穴内部分の融点よりも低い温度で接着機能を発揮可能な接着材料(例えば半田や銀ペーストなど)から形成されているので、製造プロセスにおいて、接着部分によって照射部を基板に接着するために接着部分を加熱する際、接着部分の熱によって穴内部分が融解してしまうことを抑制或いは防止できる。従って、生体センサー装置の信頼性を高めることができる。
【0021】
本実施形態に係る生体センサー装置の他の態様では、前記熱伝導部は、前記筺体及び前記穴内部分を密着させる密着部分を更に含む。
【0022】
この態様によれば、例えばシリコングリス等からなる密着部分によって、筺体と穴内部分とを互いに密着させることができるので、照射部の熱を、穴内部分及び密着部分を介して筺体により確実に伝達することができる。よって、照射部の熱を、熱伝導部及び筺体を介して外部により効率良く逃がすことができる。
【0023】
本実施形態に係る生体センサー装置の他の態様では、前記熱伝導部は、前記貫通穴の内面を少なくとも部分的に覆う金属膜を更に含む。
【0024】
この態様によれば、貫通穴の内面を少なくとも部分的に覆うように例えば金(Au)等からなる金属膜が設けられているので、製造プロセスにおいて、例えば貫通穴内に半田(例えば錫と鉛との合金)を充填することにより、穴内部分を容易に形成することが可能となる。即ち、貫通穴の内面を少なくとも部分的に覆う金属膜によって、例えば貫通穴の内面の半田ぬれ性を高めることができ、穴内部分を例えば半田から容易に形成することが可能となる。
【0025】
上述した熱伝導部が金属膜を含む態様では、前記金属膜は、前記貫通穴の内面を覆う第1部分と、該第1部分から前記基板上における前記貫通穴の周辺を覆うように延在する第2部分とを有していてもよい。
【0026】
この場合には、金属膜の第2部分を、直接或いは上述した接着部分を介して照射部に接触させることができるので、照射部の熱を金属膜によって筺体側に伝達する効率を高めることができる。従って、照射部の熱を熱伝導部及び筺体を介して外部により効率良く逃がすことができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例について図を参照しつつ説明する。尚、以下の実施例では、本発明の生体センサー装置の一例である血流センサープローブを例にとる。
【0028】
<第1実施例>
第1実施例に係る血流センサープローブについて、図1から図5を参照して説明する。
【0029】
先ず、本実施例に係る血流センサープローブの全体構成について、図1を参照して説明する。
【0030】
図1は、本実施例に係る血流センサープローブの全体構成を示す断面図である。
【0031】
図1において、本実施例に係る血流センサープローブ100は、レーザーダイオード121からレーザー光を生体(例えば指先)に照射し、生体において反射又は散乱された光をフォトダイオード130によって検出することにより、生体の血流速度を検出することが可能に構成された血流センサープローブである。より具体的には、血流センサープローブ100は、生体において反射又は散乱された光のドップラーシフト量を算出することにより、血流速度を算出することが可能に構成されている。
【0032】
図1に示すように、血流センサープローブ100は、回路基板110と、レーザーダイオード121を含んでなる照射部120と、フォトダイオード130と、反射部140と、周辺回路部150と、外部接続部160と、ケース190とを備えている。
【0033】
回路基板110は、本発明に係る「基板」の一例であり、所定の配線パターンが形成されたプリント配線板である。回路基板110上には、照射部120、フォトダイオード130、反射部140及び周辺回路部150が配置されている。尚、後に詳細に説明するが、回路基板110には貫通穴が複数形成されており、これら貫通穴内に熱伝導部材251が設けられている。
【0034】
照射部120は、レーザーダイオード121と、サブマウント122とを含んでなる。
【0035】
レーザーダイオード121は、例えばFP(Fabry-Perot)レーザー、DFB(Distributed Feed-Back)レーザー等である端面発光型の半導体レーザーであり、レーザー光を回路基板110の基板面に沿って反射部140に向けて出射する。レーザーダイオード121は、例えばセラミック等からなるサブマウント122を介して回路基板110に実装されている。レーザーダイオード121は、後述する周辺回路部150に含まれるレーザーダイオードドライブ回路に電気的に接続されている。尚、後述する図4に示すように、レーザーダイオード121は、回路基板110上に設けられた電極310に、ワイヤー配線410によって電気的に接続されている。また、サブマウント122は、回路基板110上に設けられた電極320に、ワイヤー配線420によって電気的に接続されている。
【0036】
尚、照射部120は、サブマウント122を含んでいなくてもよい。即ち、レーザーダイオード121は、サブマウント122を介さずに、回路基板110に直接実装されてもよい。
【0037】
反射部140は、例えば、金属反射膜(例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)等の高い反射率を有する金属を含む膜)が形成された斜面を有する部材である。反射部140は、レーザーダイオード121から出射された光を、ケース190に設けられた窓部192に向かうように反射することが可能に構成されている。反射部140によって、レーザーダイオード121から回路基板110の基板面に沿って出射された光を、ケース190に設けられた窓部192を介して外部に出射させることができる。これにより、血流センサープローブ100による血流速度の測定の際に、レーザーダイオード121から回路基板110の基板面に沿って出射された光を、回路基板110の基板面に対向するように(つまり、図1において回路基板110の上方に)配置される例えば指先である生体501(図2参照)に確実に入射させることができる。また、レーザーダイオード121は面発光型のレーザーを使用することができる。その場合、反射部140を用いなくとも、回路基板110の基板面に対向するように(つまり、図1において回路基板110の上方に)配置される例えば指先である生体501(図2参照)にレーザーダイオード121からの光を確実に入射させることができる。尚、矢印P1は、レーザーダイオード121から出射された光が反射部140によって反射されて生体501(図2参照)に向かう光を概念的に示している。また、矢印P2は、生体501(図2参照)により反射又は散乱されてフォトダイオード130に入射する光を概念的に示している。
【0038】
フォトダイオード130は、本発明に係る「受光部」の一例であり、生体501(図2参照)により反射又は散乱された光を検出する光検出器として機能する。具体的には、フォトダイオード130は、光を電気信号に変換することにより光の強度に関する情報を得ることができる。フォトダイオード130で受光された光は電気信号に変換され、ワイヤー配線(図示省略)やフォトダイオード130の底面に形成された電極(図示省略)等を介して、後述する周辺回路部150に含まれるアンプ回路に入力される。
【0039】
周辺回路部150は、レーザーダイオード121の駆動を制御するレーザーダイオードドライブ回路やフォトダイオード130によって得られた電気信号を増幅するアンプ回路などを含んでなる回路部である。周辺回路部150は、例えば複数の配線を含んでなる外部接続部160を介して外部回路(例えばA/D(Analog to Digital)変換器や血流速度用DSP(Digital Signal Processor)など)に電気的に接続される。
【0040】
ケース190は、照射部120、フォトダイオード130、反射部140、周辺回路部150等が設けられた回路基板110を収容する筐体である。ケース190は、遮光性の樹脂(例えば遮光性の顔料やメタルパウダーを分散させたアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、尿素樹脂等)、または金属(例えばアルミ)、または樹脂と金属とを組み合わせた複合物からなる本体部191と、レーザーダイオード121からの光に対して透明な樹脂又はガラスからなる窓部192とを有している。窓部192は、本体部191に開口された開口部内に、レーザーダイオード121からの光に対して透明な樹脂又はガラスが充填されることにより形成される。ケース190の本体部191における回路基板110の裏面(即ち、回路基板110における照射部120が設けられている基板面とは反対側の基板面)に対向する底部分には、その一部が回路基板110側に突出するように突出部195が形成されている。突出部195は、図3を参照して後述する密着部材252を介して熱伝導部材251に密着している。
【0041】
次に、血流センサープローブ100による血流速度の測定について、図1及び図2を参照して説明する。
【0042】
図2は、血流センサープローブ100の使用方法の一例を示す概念図である。
【0043】
図2に示すように、血流センサープローブ100は、例えば指先等である生体501に対して、レーザーダイオード121からの所定波長のレーザー光を照射することにより血流速度を測定する。血流センサープローブ100による血流速度の測定は、ケース190(図1参照)が生体501に接触した状態で行われる。
【0044】
生体501に照射されたレーザー光は、その波長に応じた深度まで浸透し、生体501の毛細血管等の血管中を流れる血液や例えば表皮等を構成する皮膚細胞などの生体組織により反射又は散乱される。尚、矢印P1は、血流センサープローブ100から生体501に向かう光を概念的に示している。また、矢印P2は、生体501により反射又は散乱されて血流センサープローブ100に入射する光を概念的に示している。そして、血管中を流れる赤血球によって反射又は散乱された光にはドップラーシフトが起こり、赤血球の移動速度、つまり血液の流れる速度(即ち、血流速度)に依存して光の波長が変化する。一方、赤血球に対して不動とみなせる皮膚細胞などによって散乱又は反射された光は、波長が変化しない。これらの光が互いに干渉することにより、フォトダイオード130(図1参照)においてドップラーシフト量に対応した光ビート信号が検出される。このように検出された光ビート信号に基づいて外部の血流速度用DSPによって血流速度を算出することができる。尚、具体的には、フォトダイオード130によって検出された光ビート信号は、周辺回路部150(図1参照)に含まれるアンプ回路によって増幅され、外部のA/D変換器に出力される。A/D変換器は、アンプ回路から出力される電気信号(即ち、増幅された光ビート信号)をアナログ信号からデジタル信号に変換して、血流速度用DSPに出力する。血流速度用DSPは、A/D変換器から入力されるデジタル信号に対して所定の演算処理を行うことにより、血流速度を算出する。
【0045】
次に、血流センサープローブ100に特有な構成である、照射部120の熱を外部に逃がす放熱構成について、図3から図5を参照して説明する。
【0046】
図3は、図1に示した血流センサープローブ100の一部を拡大して示す拡大断面図であり、血流センサープローブ100の照射部120の放熱構成を示す断面図である。図4は、図1に示した血流センサープローブ100の一部を拡大して示す上面図である。尚、図3においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。また、図3は、図4のA−A’線での断面図である。図4では、ケース部190の図示を省略している。
【0047】
図3に示すように、本実施例では特に、血流センサープローブ100は、熱伝導部材251と、密着部材252と、メッキ部253と、接着部材254とを含んでなる熱伝導部250を備えている。
【0048】
図5は、回路基板110を貫通する貫通穴90内に設けられた熱伝導部材251及び回路基板110上における貫通穴90の周辺に設けられた周辺メッキ部分253bの構成を示す上面図である。
【0049】
図3から図5において、熱伝導部材251は、本発明に係る「穴内部分」の一例であり、回路基板110を貫通する貫通穴90内に、回路基板110よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導材料の一例である半田(例えば、錫(Sn)と鉛(Pb)との合金)が充填されることにより形成されている。貫通穴90は、回路基板110における照射部120が設けられている基板面から回路基板110の裏面(即ち、回路基板110における照射部120が設けられている基板面とは反対側の基板面)に向かうように回路基板110を貫通している。貫通穴90は、回路基板110における照射部120が配置される領域を含む領域に複数形成されている。
【0050】
密着部材252は、本発明に係る「密着部分」の一例であり、シリコングリスからなる。密着部材252は、回路基板110の裏面に複数の熱伝導部材251を覆うように設けられ、複数の熱伝導部材251とケース190の突出部195とを密着させる。
【0051】
メッキ部253は、本発明に係る「金属膜」の一例であり、金(Au)メッキからなる。メッキ部253は、貫通穴90の内面を覆う穴内メッキ部分253aと、この穴内メッキ部分253aから回路基板110上における貫通穴90の周辺を覆うように延在する周辺メッキ部分253bとを有している。尚、穴内メッキ部分253aは本発明に係る「第1部分」の一例であり、周辺メッキ部分253bは本発明に係る「第2部分」の一例である。
【0052】
接着部材254は、本発明に係る「接着部分」の一例であり、熱伝導部材251よりも低い融点を有する低融点材料であるSn−Bi半田(即ち、ビスマスが添加された半田、つまり、錫(Sn)とビスマス(Bi)とを含む合金)からなる。尚、Sn−Bi半田は、本発明に係る「接着材料」の一例である。接着部材254は、熱伝導部材251よりも低い融点を有する低融点材料に代えて、熱伝導部材251よりも低い温度で硬化する接着材料(例えば銀ペースト)を用いることも可能である。接着部材254は、回路基板110上における照射部120が配置される領域に設けられており、照射部120(より具体的には、サブマウント122)を回路基板110に接着させる。接着部材254は、照射部120(より具体的には、サブマウント122)と、回路基板110上における照射部120が配置される領域に形成された貫通穴90内の熱伝導部材251と、周辺メッキ部分253bの一部に接触している。
【0053】
このように構成された熱伝導部250によれば、レーザーダイオード121を含んでなる照射部120の熱をケース190に伝達することができる。即ち、回路基板110上に設けられたレーザーダイオード121で発生する熱を、熱伝導部250(即ち、接着部材254、メッキ部253、熱伝導部材251及び密着部材252)によって、回路基板110の裏面側に位置するケース190の突出部195に伝達することができる。従って、照射部120の熱(即ち、レーザーダイオード121で発生する熱)を、熱伝導部250及びケース190を介して外部に効率良く逃がすことができる。即ち、本実施例に係る血流センサープローブ100によれば、熱伝導部250によって、レーザーダイオード121の放熱性を向上させることができる。これにより、血流センサープローブ100の温度が、レーザーダイオード121で発生する熱によって上昇することを抑制或いは防止できる。この結果、血流センサープローブ100による血流速度の測定時に、血流センサープローブ100の温度によって、血流速度が変化してしまうことを低減或いは防止でき、血流速度を高精度に検出することが可能となる。
【0054】
更に、本実施例によれば、熱伝導部250は、回路基板110を貫通する貫通穴90内に設けられた熱伝導部材251と、密着部材252と、メッキ部253と、接着部材254とを含んでなるという簡易な構成を有しているので、血流センサープローブ100の製造プロセスの複雑化を殆ど招くことがない。
【0055】
加えて、本実施例によれば、上述したようにレーザーダイオード121の熱を熱伝導部250及びケース190を介して外部に効率良く逃がすことができるので、レーザーダイオード121で消費される電力を低減でき、レーザーダイオード121で発生する熱を低減できる。従って、血流センサープローブ100の温度が、レーザーダイオード121で発生する熱によって上昇することを抑制或いは防止できる。
【0056】
図3において、本実施例では特に、上述したように、熱伝導部250の接着部材254は、熱伝導部材251よりも低い融点を有する低融点材料であり、熱伝導部材254の融点よりも低い温度で接着機能を発揮可能な接着材料であるSn−Bi半田からなる。よって、製造プロセスにおいて、接着部材254によって照射部120(より具体的には、サブマウント122)を回路基板110に接着するために接着部材254を加熱することにより一旦融解させる際、貫通穴90内に設けられた熱伝導部材251が接着部材254の熱によって融解してしまうことを抑制或いは防止できる。従って、血流センサープローブ100の信頼性を高めることができる。尚、接着部材254は、熱伝導部材251の融点よりも低い温度で接着機能を発揮可能な接着材料から形成されればよく、例えば銀ペーストなどの熱硬化型の接着材料から形成されてもよい。この場合にも、製造プロセスにおいて、接着部材254によって照射部120を回路基板110に接着するために接着部材254を加熱することにより硬化させる際、貫通穴90内に設けられた熱伝導部材251が接着部材254の熱によって融解してしまうことを抑制或いは防止できる。
【0057】
更に、本実施例では特に、ケース190の突出部195と貫通穴90内に設けられた熱伝導部材251とが、シリコングリスからなる密着部材252によって互いに密着されている。よって、照射部120の熱を、熱伝導部材251及び密着部材252を介してケース190に確実に伝達することができる。従って、照射部120の熱を、熱伝導部250及びケース190を介して外部により効率良く逃がすことができる。
【0058】
加えて、本実施例では特に、貫通穴90の内面を覆うようにAuメッキからなる穴内メッキ部分253aが設けられているので、製造プロセスにおいて、貫通穴90内に半田からなる熱伝導部材251を容易に形成することが可能となる。即ち、貫通穴90の内面を覆う穴内メッキ部分253aによって、貫通穴90の内面の半田ぬれ性を高めることができ、貫通穴90内に半田を充填することにより熱伝導部材251を容易に形成することが可能となる。
【0059】
更に加えて、本実施例では特に、メッキ部253は、穴内メッキ部分253に加えて、回路基板110上における貫通穴90の周辺を覆うように周辺メッキ部分253bを有している。よって、周辺メッキ部分253bを接着部材254を介して照射部120に接触させることができるので、照射部120の熱をメッキ部253によってケース190側に伝達する効率を高めることができる。従って、照射部120の熱を熱伝導部250及びケース190を介して外部により効率良く逃がすことができる。
【0060】
以上説明したように、本実施例に係る血流センサープローブ100によれば、簡易な構成で、レーザーダイオード121を含んでなる照射部120の熱を外部に効率良く逃がすことができ、血流速度を高精度に検出することが可能となる。
【0061】
<第2実施例>
次に、第2実施例に係る血流センサープローブについて、図6を参照して説明する。
【0062】
図6は、第2実施例に係る血流センサープローブの照射部の放熱構成を示す断面図であり、上述した図3と同趣旨の断面図である。尚、図6において、図1から図5に示した第1実施例に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0063】
図6において、第2実施例に係る血流センサープローブ102は、照射部120が貫通穴90に重ならないように回路基板110上に配置されている点で、上述した第1実施例に係る血流センサープローブ100と異なり、その他の点については上述した第1実施例に係る血流センサープローブ100と概ね同様に構成されている。
【0064】
図6に示すように、本実施例では、照射部120は、複数の貫通穴90に重ならないように回路基板110上に配置されている。即ち、照射部120は、回路基板110上における複数の貫通穴90が形成された領域の周辺に位置する周辺領域に配置されている。つまり、照射部120は、回路基板110における複数の貫通穴90の直上からずれた位置に配置されている。照射部120は、回路基板110上の周辺領域に設けられたメッキ部253(より具体的には、周辺メッキ部分253b)に接着部材254によって接着されている。
【0065】
よって、照射部120を接着部材254によって回路基板110に確実に接着することができる。即ち、上述した第1実施例のように、照射部120を複数の貫通穴90に重なるように回路基板110上に配置する場合と比較して、照射部120を回路基板110の平坦な基板面上に配置することができるので、照射部120を接着部材254によって回路基板110に確実に接着することができる。言い換えれば、本実施例によれば、製造プロセスにおいて、回路基板110に複数の貫通穴90を形成し、これら貫通穴90内に熱伝導部材251を設ける際、熱伝導部材251における照射部120が配置される側の平坦性を考慮する必要がなく、実践上有利である。
【0066】
<第3実施例>
次に、第3実施例に係る血流センサープローブについて、図7を参照して説明する。
【0067】
図7は、第3実施例に係る血流センサープローブの照射部の放熱構成を示す断面図であり、上述した図3と同趣旨の断面図である。尚、図7において、図1から図5に示した第1実施例に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0068】
図7において、第3実施例に係る血流センサープローブ103は、熱伝導部250が、複数の熱伝導部材251を互いに接続する接続部251bを更に含んでなる点で、上述した第1実施例に係る血流センサープローブ100と異なり、その他の点については上述した第1実施例に係る血流センサープローブ100と概ね同様に構成されている。
【0069】
図7に示すように、本実施例では、複数の熱伝導部材251は、接続部251bによって互いに接続されている。接続部251bは、互いに隣り合う貫通穴90を繋ぐように回路基板110の裏面に形成された溝91内に、半田が充填されることにより形成されている。即ち、製造プロセスにおいて、回路基板110に貫通穴90及び溝91が形成された後に、貫通穴90及び溝91に半田が充填されることにより、熱伝導部材251及び接続部251bが形成される。
【0070】
よって、接続部251bによって複数の熱伝導部材251間で熱を伝達させることができる。従って、熱伝導部250の熱の流れやすさを高めることができる。これにより、照射部120の熱を、熱伝導部250によってケース190により効率良く伝達することができる。
【0071】
<第4実施例>
次に、第4実施例に係る血流センサープローブについて、図8及び図9を参照して説明する。
【0072】
図8は、第4実施例に係る血流センサープローブの照射部の放熱構成を示す断面図であり、上述した図3と同趣旨の断面図である。尚、図8において、図1から図5に示した第1実施例に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0073】
図8において、第4実施例に係る血流センサープローブ104は、熱伝導部材251が貫通穴90の内面に沿って形成されている点で、上述した第1実施例に係る血流センサープローブ100と異なり、その他の点については上述した第1実施例に係る血流センサープローブ100と概ね同様に構成されている。
【0074】
図9は、本実施例における貫通穴90内の構成を示す上面図である。
【0075】
図8及び図9に示すように、本実施例では、熱伝導部材251が貫通穴90の内面に沿って形成されており、貫通穴90の中央に熱伝導部材251が形成されない未形成部分80が設けられている。
【0076】
本実施例のように未形成部分80が設けられる場合であっても、貫通穴90の内面に沿って形成された熱伝導部材251によって、照射部120の熱を回路基板110の裏面側に位置するケース190の突出部195に確実に伝達することができる。
【0077】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う生体センサー装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
90…貫通穴、110…回路基板、120…照射部、121…レーザーダイオード、122…サブマウント、130…フォトダイオード、140…反射部、150…周辺回路部、190…ケース、195…突出部、251…熱伝導部材、252…密着部材、253…メッキ部、253a…穴内メッキ部分、253b…周辺メッキ部分、254…接着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に配置され、光を生体に照射する照射部と、
前記基板上に配置され、前記照射された光に起因する前記生体からの光を検出する受光部と、
前記基板、前記照射部及び前記受光部を収容する筺体と、
前記基板を貫通する貫通穴内に設けられると共に前記基板よりも高い熱伝導率を有する高熱伝導率材料から形成された穴内部分を含み、前記照射部及び前記筺体に接触する熱伝導部と
を備えることを特徴とする生体センサー装置。
【請求項2】
前記熱伝導部は、前記穴内部分の融点よりも低い温度で接着機能を発揮可能な接着材料から形成され、前記照射部を前記基板に接着させる接着部分を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の生体センサー装置。
【請求項3】
前記熱伝導部は、前記筺体及び前記穴内部分を密着させる密着部分を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生体センサー装置。
【請求項4】
前記熱伝導部は、前記貫通穴の内面を少なくとも部分的に覆う金属膜を更に含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の生体センサー装置。
【請求項5】
前記金属膜は、前記貫通穴の内面を覆う第1部分と、該第1部分から前記基板上における前記貫通穴の周辺を覆うように延在する第2部分とを有することを特徴とする請求項4に記載の生体センサー装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−239865(P2011−239865A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113045(P2010−113045)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】