説明

生体信号測定用電極

【課題】 電極部を被検体ではなく計測者側に取り付けることによりリラックスした雰囲気で計測する。
【解決手段】 被検体Aの皮膚A1と接触する計測者Bの少なくとも指B1を覆うように取り付けられる絶縁体1と、この絶縁体1の皮膚対向面に配置される電極部2とを備え、この電極部2を計測機と電気的に接続することにより、被検体Aにとって安心できる計測者Bが、絶縁体1を取り付けたまま、被検体Aを優しく抱き抱えたり撫でるなどして電極部2を皮膚A1に接触させれば、被検体Aの保定(固定)と計測が同時に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば犬や猫のような体毛で覆われたペットや家畜などの動物に限らず、幼児を含めた人の健康状態を診察する目的から、例えば心電計の使用により心電波形を計測するための生体信号測定用電極に関する。
詳しくは、被検体の皮膚から体内の生理的な電気的活動を計測する生体信号測定用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の生体信号測定用電極として、患者の皮膚上の電極を添着する場所に導電液をスプレーすることにより、導電液の薄膜を施し、この薄膜を介して電極を皮膚に添着するものがある(例えば、特許文献1参照)。
更に、動物の四肢に電極を取り付ける際に、皮膚に対して低刺激性の電解質、例えば塩化ナトリウムなどを添加したクリームや液状の物質を電極に取り付け部分に塗布するか、又はスプレーして、皮膚と心電計との間の通電性を高めることにより、予め四肢の獣毛を剃って皮膚を露出させたり、獣毛を掻き分けて皮膚を露出させなくても、心電図検査が行えるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
また、動物に使用する心電計電極は、動物の皮膚には体毛があって人体用の電極が全く使用できないため、心電計を動物に利用し始めた頃から、大きく分けて二つのタイプの電極が使用されてきた。それは即ち、図5に示すような動物の皮膚を挟んで取り付ける鰐口クリップ型電極と、図6に示すような動物の皮膚を貫いて取り付ける針型電極である。これら二種類の動物専用電極が現在までに若干の設計変更はあったものの、基本的には、通電性(導電性)に優れた金属で皮膚を挟む、針で貫くなど、直接、しかも、より皮膚に密着することを目的として取り付け使用され続けているのが現状である。
なお、図6において皮膚を貫いた針型電極の先端には、例えば合成樹脂製のスポンジなどの抜け難い弾性部材を刺し、針先の目的箇所以外の部分への誤刺や、針の皮膚からの脱落を防止している。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−183138号公報(第1〜3頁)
【特許文献2】特開2002−238868号公報(第2〜3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の生体信号測定用電極では、心電計などの計測機へデータを送るための電極とコードを被検体の皮膚に接触させることは必然である。
被検体が人で、特に幼児や精神的な介護の必要な障害者などである場合には、心電計の電極を体に取り付けられるだけで、たいへんな恐怖の観念に捕らわれ、大きなストレスを感じ、中には泣き叫び、暴れて計測が不可能となる場合も多々あり、そのような状況の中で計測を終えたとしても、それはとても正しい計測結果とは言えないという問題があった。
また、被検体が動物の場合には、多少暴れるだけでも容易に位置ズレしたり外れてしまうため、電極をできるだけ強く確実に取り付ける必要があるが、動物専用電極として動物の皮膚を挟んで取り付ける鰐口クリップ型電極や、動物の皮膚を貫いて取り付ける針型電極のどちらを使用しても、動物の皮膚の痛覚に刺激を加えて多少の苦痛を与えることに他ならず、特に神経質な犬・猫や小さなペットの場合には、動物専用電極の取り付け作業中に動物が苦痛のために暴れ出して悲鳴をあげ、やむなく、心電波形の計測を中止せざるを得ないこともあるという問題があった。
しかも、ペットの飼い主から見れば、病気を抱え弱っている動物の命を助けるはずの獣医師が、心電波形の計測のために愛するペットの皮膚を、痛そうな金属製の鰐口クリップ型電極で挟んだり、針型電極で貫く行為は非常に残酷に見え、決して信頼されるものではない。そのため、飼い主の中には、心電波形の計測中止を懇願する者がいるほどである。
まして、心電波形を計測しようとする動物は、ことごとく高齢であったり、体力のないものであったり、何らかの病気を抱え、更に神経質な動物がほとんどであり、僅かなストレスでも生理的に重大な負担を掛けることになりかねず、ほんの数分、場合によっては数10秒間の計測結果を得る前に、やっかいな電極の取り付け作業を行うかどうかの判断がまず必要であった。
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、電極部を被検体ではなく計測者側に取り付けることによりリラックスした雰囲気で計測することを目的としたものである。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明の目的に加えて、多数の計測ポイントで同時に計測することを目的としたものである。
請求項3記載の発明は、電極部を大型動物ではなく計測者側に取り付けることによりリラックスした雰囲気で計測することを目的としたものである。
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3に記載の発明の目的に加えて、皮膚と非接触であっても体内の生理的な電気的活動を確実に計測することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、被検体の皮膚と接触する計測者の少なくとも指を覆うように取り付けられる絶縁体と、この絶縁体の被検体の皮膚と対向する面に配置される電極部とを備え、この電極部を計測機と電気的に接続したことを特徴とするものである。
ここで言う「絶縁体」とは、それを計測者の指や手に取り付けた状態で電極部を被検体に接触させることにより、該計測者の体内電気信号が被検体を通って電極部へ伝わらないように絶縁するものであり、計測者の掌全体を覆う手袋型に限らず、指先のみを部分的に覆う指サック型も含まれる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に、前記被検体の皮膚と接触する計測者の各指と対向状に複数の電極部を取り付けて、これら電極部を適宜間隔毎に配置した構成を加えたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、被検体の皮膚と接触する計測者の少なくとも指及び手のひらを覆うように取り付けられる手袋型の絶縁体と、この手袋型絶縁体の内面のほぼ全体を覆うように配置される電極部とを備え、この電極部を計測機と電気的に接続した構成を加えたことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の発明の構成に、前記被検体の体毛で覆われる皮膚と電極部との隙間に電解質が含まれた流動通電体を充填した構成を加えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、被検体の皮膚と接触する計測者の少なくとも指を覆うように取り付けられる絶縁体と、この絶縁体の皮膚対向面に配置される電極部とを備え、この電極部を計測機と電気的に接続することにより、被検体にとって安心できる計測者が、絶縁体を取り付けたまま、被検体を優しく抱き抱えたり撫でるなどして電極部を皮膚に接触させれば、被検体の保定(固定)と計測が同時に行われる。
従って、電極部を被検体ではなく計測者側に取り付けることによりリラックスした雰囲気で計測することができる。
その結果、被検体として、例えば幼児や精神的な介護の必要な障害者に含むあらゆる年齢の人や動物から正しい計測結果を確実に得られる。
また、動物の皮膚を挟んで取り付ける鰐口クリップ型電極や、動物の皮膚を貫いて取り付ける針型電極が使用される従来の動物用電極に比べ、動物に対する傷みや苦しみなどのストレスは全く無くなり、重い病を抱えた高齢の体力が低下した動物でも容易に心電波形の計測が可能になると共に、従来の動物用電極では計測が不可能なほど神経質な動物でも、心電波形の計測ができるようになり、しかも飼い主から残酷な行為と見えないから自分のペットに対して心電波形の計測を拒む者が皆無となるから、獣医師は診療が行い易くなる。
更に、今まで計測が不可能であったウサギやモルモットやハムスターなど一連のエキソチックアニマルと呼ばれる小型ペツトの心臓疾患にも応用が可能であり、これら小動物の新たな病の解明や知識の蓄積にもつながるだけでなく、ニワトリやセキセイインコなど、いままで生体内の生理的な電圧の計測など思いもよらなかった鳥類にも活用が期待できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明の効果に加えて、被検体の皮膚と接触する計測者の各指と対向状に複数の電極部を取り付けて、これら電極部を適宜間隔毎に配置することにより、該電極部の配置数に対応した数の計測ポイントで同時に計測可能となる。
従って、多数の計測ポイントで同時に計測することができる。
その結果、頭部における脳波などの計測に十分対応できる。
【0009】
請求項3の発明は、被検体の皮膚と接触する計測者の少なくとも指及び手のひらを覆うように取り付けられる手袋型の絶縁体と、この手袋型絶縁体の内面のほぼ全体を覆うように配置される電極部とを備え、この電極部を計測機と電気的に接続することにより、被検体にとって安心できる計測者が手袋型絶縁体を取り付けたまま被検体を撫でるなどして、内面のほぼ全体の電極部を皮膚に接触させれば、電極部との接触面積が広くなった分だけ接触抵抗値(インピーダンス)が小さくなって大型動物でも正確な計測が可能となる。
従って、電極部を大型動物ではなく計測者側に取り付けることによりリラックスした雰囲気で計測することができる。
その結果、動物園などで、例えばゾウやラクダや水牛など、ほんの数10秒ならば動物の体に触ることが可能なすべての野生動物の心電波や脳波の計測にも活躍できる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1、2または3の発明の効果に加えて、被検体の体毛で覆われる皮膚と電極部との隙間に電解質が含まれた流動通電体を充填することにより、通電性が促進されて皮膚とたとえ非接触な電極部であっても両者間が通電可能となる。
従って、皮膚と非接触であっても体内の生理的な電気的活動を確実に計測することができる。
その結果、体毛を剃ったり、掻き分けて皮膚を露出させる作業も必要ないから獣医師は診療が行い易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の生体信号測定用電極は、図1〜図4に示す如く、被検体Aの皮膚A1と接触する計測者Bの少なくとも指(指先)B1を覆うように取り付けられる絶縁体1と、この絶縁体1の被検体Aの皮膚A1と対向する面に配置される電極部2とを備え、この電極部2と、体内の生理的な電気的活動を計測する計測機(図示せず)とをコード3で電気的に接続したものである。
【0012】
上記絶縁体1は、被検体Aの体内電気信号を計測するため、計測者Bが電極部2を被検体Aに接触させた時に、この計測者Bの体内電気信号が被検体Aを通って電極部2へ伝わるのを防止するもので、該絶縁体1を計測者Bの指B1や手B2と被検体Aとの間に介在させることにより、これら両者を電気的に遮断している。
【0013】
具体的には、被検体Aと接触する計測者Bの指B1や手B2を絶縁体1で覆うことが容易であり、被検体Aが計測者Bの手のひらB2よりも大きくて、それに電極部2を接触させると同時に手のひらB2が接触し易い場合には、手のひらB2の全体を覆う手袋型となり、この手袋型の絶縁体1aとしては、例えばラテックスなどゴムやシリコーンやテフロン(登録商標)のような非導電性の弾性変形可能な絶縁材質で形成された手袋を使用する。
【0014】
また被検体Aが計測者Bの手のひらB2よりも小さくて指先だけで挟める場合には、指先のみを覆う指サック型でも絶縁が可能となり、この指サック型の絶縁体1bとしては、一般的に販売されているゴム製の指サックでも十分に機能する。
【0015】
更に、上記絶縁体1の少なくとも皮膚対向面には、例えば金属や導電性の合成樹脂などの導電材料で形成された電極部2を配設する。
この電極部2の具体例としては、上記手袋型絶縁体1aの指部分のみ或いは指サック型絶縁体1bの一部又は全体を覆うように、帯状又はキャップ状に形成された電極部2を全周に亘り巻き付けて一体的に固着するか、或いは内面のみ貼り付けて一体的に固着する。
【0016】
それ以外の具体例としては、上記手袋型絶縁体1aの内面のほぼ全体を覆うように電極部2′を配置したり、或いは指輪のようにリング状又は断面C型に形成された電極部(図示せず)を、上記手袋型絶縁体1aの指部分や指サック型絶縁体1bに対して着脱自在に挿着することも可能である。
【0017】
また、上記電極部2,2′には、コード3の一端が連結され、このコード3としては表面がシールドされた雑音防止性能の高いものを使用することが好ましく、またコード3の他端には、例えば心電計などの計測機の信号入力端子(図示せず)と接続するためのアダプター3aが連結され、このアダプター3aを介して計測機の信号入力端子と着脱自在に接続される。
【0018】
そして、本発明の生体信号測定用電極は、被検体Aが安心できる計測者B、例えば犬や猫のようなペットであれば飼い主や専門的な知識を持った獣医師など、幼児であれば母親や専門知識を持った医師や看護師など、家畜であれば酪農飼育者や獣医師、動物園などの動物であれば飼育者や獣医師などが、指B1や手B2全体に絶縁体1を取り付け、この取り付け状態のまま、被検体Aを優しく抱き抱えたり撫でるなどして、電極部2を被検体Aの皮膚A1に接触させると、被検体Aの保定(固定)と計測が同時に行われると共に、絶縁体1によって計測者Bの体内電気信号が被検体Aを通って電極部2へ伝わらないから、被検体Aの体内電気信号のみがコード3を介して計測機へ送信されて確実に計測される。
【0019】
その結果、電極部2の設置場所を被検体Aの側ではなく計測者Bの側に移すことで、被検体Aに見慣れない電極やコードを一切付ける必要がなくなり、被検体Aが安心できる計測者Bの暖かい手の温もりによりリラックスした自然な雰囲気で、体温、心電波、脳波、筋電波などの生体情報が、被検体Aが知らぬ間に計測されて記録できる。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
この実施例1は、図1〜図2に示す如く、前記絶縁体1として、計測者Bの両手B2に例えば手術用手袋(ラテックスグローブ)のような手袋型絶縁体1aを挿着すると共に、その指先に、電極部2が一体的に固着された指サック型絶縁体1bを夫々挿着し、これら左右の指サック1の電極部2が被検体Aの皮膚A1と接触するように優しく抱き抱えることにより、被検体Aの保定(固定)と計測が同時に行われる場合を示すものである。
【0021】
図1(a)〜(c)に示すものは、被検体Aが犬や猫などのような皮膚A1が体毛A2で覆われる場合であり、このように体毛A2が邪魔して皮膚A1に電極部2を直接的に接触できない時には、この皮膚A1と電極部2との隙間に、少なくとも電解質が含まれた例えば液体又はクリームなどからなる流動通電体4を、例えば塗布などで付着するか又は充填して埋める。
【0022】
上記流動通電体4には、例えば市販されている心電計電極用クリームや、特開昭58−183138号公報又は特開2002−238868号公報に記載されるようなスプレーによって吹き付ける導電液や薬液だけでなく、更に臨床現場で入手可能なラクトリンゲルや生理食塩水など、殆ど全ての電解質液が含まれる。
【0023】
そして、犬や猫などのような被検体Aに対し、その飼い主や専門的な知識を持った獣医師などの計測者Bが、手袋型絶縁体1a及び指サック型絶縁体1bを挿着したまま、優しく抱き抱えるか又は撫でることで、電極部2を被検体Aの皮膚A1と流動通電体4を介して接触させると、飼い主がどの場所をさわっても、犬や猫などの動物は、まったく恐れること無くなすがままにさせ、更に流動通電体4によって例えば心電波形を計測するのに足りるだけの十分な通電性が確保されるから、望む場所での目的にあったデータの計測が簡単に実現する。
【0024】
また、図2に示すものは、被検体Aが幼児の場合には、その母親や専門知識を持った医師や看護師などの計測者Bが、手袋型絶縁体1a及び指サック型絶縁体1bを挿着したまま、優しく抱き上げることで、電極部2を被検体Aの皮膚A1に接触させると、幼児は恐怖感を感じることがなく、望む場所での目的にあったデータの計測が簡単に実現する。
【0025】
従って、図1〜図2に示す実施例1は、計測者Bの両手B2に手袋型絶縁体1aを挿着したので、計測者Bが被検体Aに対して電極部2を接触させる際に手や手のひらが触れても、計測者Bの体内電気信号が被検体Aを通って電極部2へ伝わらず、被検体Aの体内電気信号のみを正確に計測できるという利点がある。
【0026】
更に、上記手袋型絶縁体1aの上に重ねて、電極部2が備えられた指サック型絶縁体1bを挿着したので、この手袋型絶縁体1aが手術用手袋のように使い捨てたとしても、電極部2を備えた指サック型絶縁体1bが再使用でき、電極部2が備えられた手袋型絶縁体1a全体を使い捨てとするよりも経済的であるという利点がある。
【0027】
また従来、馬の計測方法は、非常に神経質なため、針型電極を刺したり、鰐口クリップ型電極で挟んだりできず、そのため、人間に使用すると同じような貼り付け型の電極が使われ、特に高価な競走馬は、全力疾走後に心房細動を起こして突然死することも多く、その予防のためには定時的な心電図の解析が必然であるとされるが、競争後の汗が噴出している馬にストレスをかけずにしかも安全に電極を貼り付ける作業は難しさがあった。
このような問題も、術者である獣医師と飼育者の協力があれば、目的の場所の皮膚A1に電極部2が備えられた指サック型絶縁体1bを10秒ほど、指を接触させるだけで計測は完了して、計測全体の作業が非常に簡単になるという利点もある。
【実施例2】
【0028】
この実施例2は、図3に示す如く、前記被検体Aの皮膚A1と接触する計測者Bの各指B1と対向状に複数の電極部2を取り付けて、これら電極部2を適宜間隔毎に配置することにより、該電極部2の配置数に対応した数の計測ポイントA3で同時に計測可能にした構成が、前記図1〜図2に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図2に示した実施例1と同じものである。
【0029】
図示例の場合には、計測者Bの片手B2の指先5本すべてに、電極部2が備えられた指サック型絶縁体1bを夫々挿着することで、5定点の計測ポイントA3を確保している。
また図示せぬが、計測者Bの両手B2の指先10本すべてに、電極部2が備えられた指サック型絶縁体1bを挿着すれば、一人の計測者Bであっても最大10定点の計測ポイントA3を確保することになり、これは、人の頭部での脳波の計測に十分対応できる数に匹敵する。
【0030】
従って、図3に示す実施例2は、多数の計測ポイントA3で同時に計測でき、更に前記流動通電体4を被検体Aの皮膚A1と電極部2との隙間に充填することで非接触な隙間を通電させれば、人の脳波を計測する際に、従来のように患者の邪魔な頭髪を剃り落とす必要がなくなると共に、指先の電極部2を生き物のように動かして、複雑な形の人や動物の頭部皮膚に間接的に接触させれば、目的とする場所の脳波の情報を抽出することができて、患者が受ける精神的、肉体的な負担も軽減され、医師の側としても更に高度で複雑な医療技術を患者に提供できるという利点がある。
【0031】
更に、図示例のように被検体Aの計測ポイントA3が犬のように小さな頭部にあれは、計測者Bが電極部2を被検体Aら接触させる際に手や手のひらが触れる恐れがないため、手袋型絶縁体1aを挿着せずに、電極部2が備えられた指サック型絶縁体1bのみを挿着するだけでも正確な計測が可能である。
【実施例3】
【0032】
この実施例3は、図4に示す如く、前記手袋型絶縁体1aの内面のほぼ全体を覆うように、柔軟性があるシート状に形成された電極部2′を一体的に固着して配置することにより、電極部2と被検体Aとの接触面積を広く確保して、その広くなった分だけ接触抵抗値(インピーダンス)が小さくなるようにした構成が、前記図1〜図2に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図2に示した実施例1と同じものである。
【0033】
図示例の場合には、被検体Aが牛などの大型動物であって、計測者Bの側には上記電極部2′に連結されるコード3の先端には、無線式の送信機5が接続され、この無線式送信機5を介して例えば心電計などの計測機へ被検体Aの体内電気信号が送信されるようにしている。
【0034】
従って、図4に示す実施例3は、被検体Aにとって安心できる飼育者や専門知識を持った獣医師などの計測者Bが、手袋型絶縁体1aを取り付けたまま被検体Aを撫でるなどして、内面のほぼ全体の電極部2′を皮膚A1に接触させれば、電極部2との接触面積が広くなった分だけ接触抵抗値(インピーダンス)が小さくなって、大型動物でも正確な計測が可能となる。
その結果、電極部2′を大型動物ではなく計測者側に取り付けることによりリラックスした雰囲気で計測できるという利点がある。
【0035】
また従来、牛の計測方法は、針型電極を皮膚に突き刺すか、毛を剃り取ってガムテープなどで貼り付け、そこからコードを延ばして心電計に接続されるが、牛がいくら枠木の中に入っているとしても、コードを足で蹴飛ばす、尾に引っ掛けて引きちぎる、果ては、突然、横向きになりコードもろとも心電計を引き倒すこともあった。
このような問題も、術者である獣医師と飼育者の協力があれば、夫々の両手指B2に電電極部2′を取り付けることにより、いとも簡単に両手を使って目的の場所から心電波を抽出して計測でき、計測全体の作業が非常に簡単になるという利点もある。
【0036】
尚、前示実施例では、被検体Aとして人の場合、幼児の体内電気信号を計測する例を説明したが、これに限定されず、成人や老人や子供などあらゆる年齢の人であっても、その皮膚に、電極部2を接触させるだけで、目的にあったデータの計測を簡単に実現できる。
更に被検体Aの体内電気信号を計測する計測機として心電計を代表例として説明したが、これも限定されず、例えば脳波形、筋電波形など、心電波形以外の計測に利用しても良い。
また絶縁体1として手袋型絶縁体1aと指サック型絶縁体1bの場合のみを示したが、これらと同様な機能があれば他の形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の生体信号測定用電極の実施例1を示す説明図であり、(a)が計測状態を示す斜視図、(b)が生体信号測定用電極の斜視図、(c)が部分拡断面図である。
【図2】被検体が幼児である場合を示す説明図である。
【図3】本発明の生体信号測定用電極の実施例2を示す説明図であり、(a)が計測状態を示す斜視図、(b)が計測ポイントを示す斜視図である。
【図4】本発明の生体信号測定用電極の実施例3を示す説明図である。
【図5】従来の動物用電極の一例を示す斜視図である。
【図6】従来の動物用電極の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
A 被検体 A1 皮膚
A2 体毛 A3 計測ポイント
B 計測者 B1 指
B2 手、手のひら 1 絶縁体
1a 手袋型絶縁体 1b 指サック型絶縁体
2,2′ 電極部 3 コード
4 流動通電体 5 無線式送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体(A)の皮膚(A1)から体内の生理的な電気的活動を計測する生体信号測定用電極において、
前記被検体(A)の皮膚(A1)と接触する計測者(B)の少なくとも指(B1)を覆うように取り付けられる絶縁体(1)と、この絶縁体(1)の被検体(A)の皮膚(A1)と対向する面に配置される電極部(2)とを備え、この電極部(2)を計測機と電気的に接続したことを特徴とする生体信号測定用電極。
【請求項2】
前記被検体(A)の皮膚(A1)と接触する計測者(B)の各指(B1)と対向状に複数の電極部(2)を取り付けて、これら電極部(2)を適宜間隔毎に配置した請求項1記載の生体信号測定用電極。
【請求項3】
被検体(A)の皮膚(A1)から体内の生理的な電気的活動を計測する生体信号測定用電極において、
前記被検体(A)の皮膚(A1)と接触する計測者(B)の少なくとも指(B1)及び手のひら(B2)を覆うように取り付けられる手袋型の絶縁体(1a)と、この手袋型絶縁体(1a)の内面のほぼ全体を覆うように配置される電極部(2′)とを備え、この電極部(2′)を計測機と電気的に接続したことを特徴とする生体信号測定用電極。
【請求項4】
前記被検体(A)の体毛(A2)で覆われる皮膚(A1)と電極部(2,2′)との隙間に電解質が含まれた流動通電体(4)を充填した請求項1、2または3記載の生体信号測定用電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−149562(P2006−149562A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342641(P2004−342641)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)