説明

生体分子の金属担体への固定法

核酸の溶液を、周期律表第2周期〜第7周期のI、II、III、IV、V、VI、VII族および遷移元素から選ばれる金属、又は同金属を含む合金等からなる金属担体上にスポットし、同溶液を乾燥させ、担体に波長280nmの成分を含む紫外線を好ましくは100mJ/cm以上照射することにより、前記担体に核酸を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、核酸等の生体分子を担体に固定化する方法に関する。本発明の方法は、ハイブリダイゼーションによる核酸の分析等の操作に有用である。
【背景技術】
従来、ハイブリダイゼーションによる核酸の分析や、イムノアッセイ等においては、核酸やタンパク質を膜や平板などの担体に固定化する技術が利用されている。このような生体分子の固定化法として、核酸では、以下のものが知られている。
(1)5’末端にチオール基を有する核酸とチオール基を含むビーズ状基材間のジスルフィド結合による固定(P.J.R.Day,P.S.Flora,J.E.Fox,M.R.Walker,Biochem.J.,278,735−740(1991))等のような、修飾基を導入した核酸を化学結合させる方法。
(2)核酸を、紫外線(UV)照射又は加熱処理により、ニトロセルロース、ナイロンメンブレン、又はポリ−L−リジン等のカチオンポリマーで被覆されたガラス等の担体等に、吸着固定させる方法(J.Sambrok,E.F.Fritsch and T.Maniatis,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Pres,Second Edition,pages 2.109−2.113 and pages 9.34−9.46、特表平10−503841号公報)。
(3)ポリリジン溶液で処理されたマイクロプレートのウェル中に核酸を注入し、37℃に加熱することにより、物理吸着させることにより固定する方法(G.C.N.Parry and A.D.B.Malcom,Biochem.Soc.Trans.,17,230−231(1989))。
(4)基材上に結合させたヌクレオチドを用い、基材上でDNAを合成する方法(国際公開第97/10365号パンフレット(WO97/10365))。
(5)カルボジイミド基を有する高分子化合物を担持させたガラス等の基材に核酸を固定する方法(特開平8−23975号公報)。
しかし、上記の(1)の方法は、極めて特殊な機械と試薬を必要とする。また、(2)及び(3)の方法においては、ハイブリダイゼーションを行った場合、特に操作過程で担体から核酸が剥がれ落ち、結果として検出感度が下がったり、再現性が得られない等の欠点がある。また、この方法では、長い核酸は固定できるが、オリゴマー等約50mer以下の短い核酸になると、効率よく固定化できないという欠点がある。尚、これらの方法では、UV照射量は数十mJ/cm程度である。さらに、(4)の方法は、基材上でDNAを合成するために、極めて特殊な機械と試薬を必要とし、さらに、合成できる核酸も25mer程度までに限られるという欠点がある。また、(5)の方法は、基材の材料が限られ、表面のコーティング工程が必要である。
【発明の開示】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑み、生体分子、例えば核酸、特に短鎖長の核酸を担体に、簡便、かつ、効率よく固定する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、核酸溶液を金属製の担体上にスポットした後に、紫外線を担体に照射することによって、核酸を担体に効率よく固定化することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)生体分子を担体に固定化する方法であって、生体分子の溶液を担体上にスポットする工程と、前記生体分子溶液をスポットした担体に波長280nmの成分を含む紫外線を照射する工程を含み、前記担体は金属製であることを特徴とする方法。
(2)前記紫外線が、波長220〜300nmの成分を含むことを特徴とする(1)に記載の方法。
(3)前記金属は、周期律表第2周期〜第7周期のI、II、III、IV、V、VI、VII族および遷移元素から選ばれる金属、又は同金属を含む合金である(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記紫外線の照射量は100mJ/cm以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記生体分子は核酸、タンパク質、糖、抗原、抗体、ペプチド、酵素から選ばれる(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)生体分子が担体上に固定化された生体分子固定化担体の製造法であって、生体分子の溶液を担体上にスポットする工程と、前記生体分子溶液をスポットした担体に波長280nmの成分を含む紫外線を照射し、前記生体分子を担体に固定化する工程を含む方法。
(7)前記紫外線が、波長220〜300nmの成分を含むことを特徴とする(6)に記載の方法。
(8)前記生体分子は核酸であって、核酸固定化担体はハイブリダイゼーションによる核酸の分析に用いられるものである(6)又は(7)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例で作製したオリゴヌクレオチド固定化平板を用いたハイブリダイゼーションの結果を示す図(写真)。
点線は、実施例1及び比較例1でオリゴヌクレオチドを固定化した領域、及びコントロールである1×TE緩衝液をスポットした領域を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる担体は、生体分子を固定化するためのものであり、金属製であることを特徴とする。金属としては、紫外線照射により生体分子を固定化することができるものであれば特に制限されず、好ましくは、周期律表第2周期〜第7周期のI、II、III、IV、V、VI、VII族および遷移元素から選ばれる金属、又は同金属を含む合金が挙げられる。
上記周期律表第2周期〜第7周期のI、II、III、IV、V、VI、VII族および遷移元素から選ばれる金属として特に好ましいものとしては、アルミニウム、チタン、白金、タングステン、モリブデン、金、銅、ニッケル等が挙げられる。
また、上記合金として具体的には、洋白(成分:Cu,Ni,Zn)、真鍮(成分:Cu,Zn)、ブロンズ(成分:Cu,Be)、モネル(成分:Cu,Ni,Fe,Mn)、ニッケルコバルト合金(成分:Ni,Co)、ニッケルクロム合金(成分:Ni,Cr)、コバルト合金(成分:Co,Ni,Cr)、ステンレス(成分:Ni,Cr,Fe)、銀タングステン(成分:Ag,W)、βチタン(成分:Ti,V,Al)、αβチタン(成分:Ti,V,Al)、NT合金(成分:Ti,Ni)、アルミニウム合金(成分:Al,Cu,Mg,Si,Mn,Zn)、ジュラルミン(成分:Al,Cu,Si,Fe,Mn,Mg,Zn)、マグネシウム合金(成分:Mg,Al,Zn)、K24(成分:Au)、K18(成分:Au,Ag,Cu)、ベリリウム銅(成分:Cu,Be)、鋳鉄(成分:Fe,Mn,S,C)、炭素鋼(成分:Fe,C,Si,Mn,P,S)、青銅鋳物(成分:Cu,Sn,Zn,Pb)、りん青銅鋳物(成分:Cu,Zn,P)、黄銅鋳物(成分:Cu,Zn,Pb)、マンガン黄銅(成分:Cu,Zn,Mn,Fe,Al)、シルジン青銅鋳物(成分:Cu,Si,Zn)、アルミニウム青銅鋳物(成分:Cu,Al,Fe,Ni,Mn)、エリンバー(成分:Ni,Cr,Mn)、エリンバーエクストラ(成分:Ni,Cr,Co,Mn)、インバー(成分:Ni,Fe)、スーパーインバー(成分:Fe,Ni,Co)、ステンレスインバー(成分:Fe,Co,Cr)、Malottes(成分:Sn,Bi,Pb)、リポウィッツ(Lipowitz)(成分:Sn,Bi,Pb,Cd)、ウッズ(Wood’s)(成分:Sn,Bi,Pb,Cd)、マンガニン(成分:Cu,Mn,Ni,Fe)、イザベリン(成分:Cu,Mn,Al)、コンスタンタン(成分:Cu,Ni)、アルクレス(成分:Fe,Cr,Al)、カンタル(成分:Cr,Fe,Al,Co)、アルメル(成分:Ni,Al)、磁性材料(Fe,Ni,Co等強磁性遷移元素を含む材料)、パーマロイ(成分:Fe,Ni)、アルパーム(成分:Fe,Al)、フェライト(Feを主成分とする複合酸化物)、センダスト(成分:Fe,Si,Al)、スーパーセンダスト(成分:Fe,Si,Al,Ni,)、アルニコ(成分:Fe,Al,Ni,Co)、水素吸蔵金属(ランタンニッケル合金(成分:La,Ni)等)、Co−Cr系合金、SnO系酸化物、Nb−Ti合金、制振合金(振動を低減もしくは吸収、振動の伝播を遮断する合金材料、Al−Zn超塑性合金、サイレントアロイ、ニチノール等)、電極用材料、半導体材料(シリコン、ゲルマニウム、カリウムヒ素等)等が挙げられる。
また、上記金属は、他の金属で蒸着又はメッキ処理(加工)されていても良い。更に、前記金属は、形状を保持するために異なる種類の前記金属が積層してもよく、単一金属であっても良い。
本発明における担体は、本質的に上記金属からなる。担体は、金属のみから構成されていてもよいし、非金属材料上に金属が接着、蒸着又はメッキ等により積層されていてもよい。
上記担体の形状は、特に問われないが、箔(フォイル)状、平板(プレート)状、薄片(ウェーハ)状、フィルター状、ビーズ状等が挙げられる。また、マイクロタイタープレートのような形状であっても良い。さらに、得られる結果の保存を容易にするため、平板等の裏面をシール等に使用できる材料(接着剤等)を塗布、コート等をすることによって、シールとしても使用することもできる。
上記担体の所定の位置に、生体分子の溶液をスポットする。生体分子としては、核酸、タンパク質、糖、抗原、抗体、ペプチド、酵素などが挙げられる。以下、生体分子として核酸を例として説明するが、固定の際に紫外線を照射する以外は、他の物質でも通常固定化に用いられている方法や条件を採用することができる。
核酸としては、通常の固相化核酸を用いた核酸同士のハイブリダイゼーションに用いられる固相化核酸と特に変わるところはなく、ハイブリダイゼーションが可能な核酸であれば特に制限されず、例えば、天然又は合成のDNA(オリゴヌクレオチドを含む)もしくはRNA(オリゴヌクレオチドを含む)が挙げられる。また、上記核酸は1本鎖であっても、2本鎖であっても構わない。核酸の鎖長は、ハイブリダイゼーションが可能な長さであれば特に制限されないが、通常5〜50000塩基、好ましくは20〜10000塩基である。また、核酸の5’末端あるいは3’末端にチミジン等、紫外線によって反応活性基を有するオリゴヌクレオチドの重合体を有しても良い。
核酸を溶解する溶媒も特に制限されず、蒸留水、又は通常核酸溶液の調製に用いられる緩衝液、例えばTE緩衝液(10mM Tris塩酸,pH8.0/1mM EDTA)等のTris緩衝液、食塩を含む水溶液、カルボン酸塩を含む水溶液(クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、酢酸ナトリウム等)、スルホン酸塩を含む水溶液(ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム等)、ホスホン酸塩を含む水溶液等(リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等)等を挙げることができる。また、一般に市販されている溶媒、Micro Spotting Solution(TeleCHem International,Inc.社製)等も挙げることができる。また、核酸溶液の濃度も特に制限されないが、通常1mmol/ml〜1fmol/ml、好ましくは100pmol/ml〜100fmol/mlの濃度である。
核酸溶液を担体上にスポットする方法としては、ピペットで核酸溶液を担体上に滴下する方法、又は市販のスポッタを用いる方法等が挙げられる。スポットの形状及びスポット量としては、核酸溶液をスポットした位置を把握することができる程度であれば、特に制限されないが、形状としては点状又は円状が好ましい。また、好ましいスポット量は10nl〜10mlである。核酸溶液は、担体上に1箇所又は複数箇所にスポットされる。スポットされる核酸溶液は、1種類でも2種類又はそれ以上であってもよい。尚、担体に核酸が固定されたことを示す陽性コントロールとして、標識した核酸を固定化しておいてもよい。
本発明の好ましい形態においては、核酸溶液を担体上にスポットした後に、280nmの波長を含む紫外線を照射する。前記紫外線としては、波長220〜300nmの成分を含む紫外線が挙げられる。また、前記核酸溶液をスポット後紫外線照射前に乾燥させることができる。前記核酸溶液の乾燥方法としては、自然に乾燥させてもよく、加熱して乾燥させてもよい。加熱する場合の温度は、通常30〜100℃、好ましくは35〜45℃である。
次に、担体、少なくとも担体の核酸を固定した部位に、波長280nmの成分を含む紫外線を照射する。具体的には、波長280nmの単色光でもよいし、波長280nmを含むブロードな波形を有する紫外線であっても良い。波長280nmを含むブロードな波形を有する紫外線としては、例えば波長220〜300nmの成分を含む紫外線が挙げられる。また、波長220〜300nmの成分を含む紫外線としては、280nm付近に極大値を有する紫外線が挙げられる。照射量は、累積照射量として通常100mJ/cm以上、好ましくは200mJ/cm以上である。
上記のようにして、核酸を担体上に固定化することにより、核酸固定化担体が製造される。本発明の方法により得られる核酸固定化担体は、例えば、ハイブリダイゼーションによる核酸の分析に用いることができる。本発明の方法により担体に固定化された核酸は、通常のハイブリダイゼーションの条件下で担体から脱離しにくいため、紫外線照射を行わない場合に比べて検出感度が良好で、再現性も良い。ハイブリダイゼーション及びその検出は、通常の固相化核酸を用いたハイブリダイゼーションと同様にして行うことができる。
本発明では、核酸を固定化するのに用いる担体として、安価な金属材料を用いることができるので、低コスト化が可能である。また、金属材料は形成が容易なため、様々な形態のDNAマイクロアレイの作製が容易となる。また、長期保存が可能であり、保存安定性に優れている。さらに、本発明の方法は、担体表面のコーティング工程が不要であり、電極等に使用される金属に直接核酸を固定することができる。電極に核酸を固定することにより溶液中の相補的な核酸と固定された核酸とを効率良くハイブリダイゼーションを行うことができる。核酸は負電化をもっている為、正極に引き寄せられるため、正極の付近は核酸濃度が高くなりやすく、ハイブリダイゼーションが効率よく進むと考えられる。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1 核酸の平板への固定化
常法に従い、オリゴヌクレオチド合成機(Perkin−elmer Applied biosystems)を用いて、配列番号1、2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(21mer)を合成した。また、プローブとして、配列番号3に示す塩基配列を有するDNA(262bp)を調製した。尚、配列番号1に示すオリゴヌクレオチド及びプローブは、5’末端をビオチン化した。また、配列番号2に示すオリゴヌクレオチドはビオチン化プローブと相補性を持っている。これらのオリゴヌクレオチドを1pmol/μlになるように1×TE緩衝液(10mM Tris塩酸,pH8/1mM EDTA)に溶解した。
市販品のアルミニウム箔(三菱アルミニウム株式会社製)の所定の位置に、上記オリゴヌクレオチド溶液それぞれを、3箇所づつスポットした(図1)。スポットの量は0.5μlづつであり、スポットの大きさは直径約1mmであった。このアルミニウム箔を乾燥機に入れ、37℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から250mJ/cm照射した。照射時間は100秒であった。その後、前記アルミニウム箔を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様にアルミニウム箔にスポットし、固定化の操作を行った。
比較例1
予め、アルミニウム箔に、Uvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含むnmの紫外線を16cmの距離から250mJ/cm照射した。実施例1に記載のオリゴヌクレオチド溶液それぞれを、アルミニウム箔の所定の位置に、3箇所づつスポットした。スポットの量は0.5μlづつであり、スポットの大きさは直径約1mmであった。照射時間は100秒であった。このアルミニウム箔を乾燥機に入れ37℃で20分乾燥した。その後、前記アルミニウム箔を水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様にアルミニウム箔にスポットし、固定化の操作を行った。
実施例2 ハイブリダイゼーション及びその検出
(1)ハイブリダイゼーション
実施例1及び比較例1のオリゴヌクレオチド固定化アルミニウム箔の核酸を固定化した部分に、3pmolビオチン化プローブ(262bp)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.) 60μlをのせ、アルミニウム箔を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、45℃で2時間加熱した。
(2)ポストハイブリダイゼーション
上記ハイブリダイゼーションの後、以下の条件でポストハイブリダイゼーション洗浄を行い、オリゴヌクレオチド固定化アルミニウム箔に非特異的に吸着したプローブを除去した。
〔ポストハイブリダイゼーション洗浄の条件〕
1)2×SSC,0.1%SDS;室温、5分間、2回
2)0.2×SSC,0.1%SDS;40℃、5分間、2回
3)2×SSC;室温1分間、3回
(3)アルミニウム箔に固定化されたオリゴヌクレオチド及びハイブリダイゼーションの検出
アルミニウム箔のハイブリダイゼーション溶液を載せた部分に、乳タンパクを含むブロッキング溶液(ブロックエース 雪印乳業製)1.5mlをのせ、室温で30分間ブロッキングを行った。ブロッキング溶液を除いた後、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート溶液(VECTOR社製)を1.5mlのせ、室温で30分間反応させた。つぎに、アルミニウム箔をTBST(50mM Tris−HCl(pH7.5),0.15M NaCl,0.05% Tween20)溶液に浸し、5分間振とうして反応しなかったコンジュゲートを除去した。最後に、アルミニウム箔のハイブリダイゼーション溶液を載せた部分に基質溶液(TMB)を1.5mlのせて、30分間放置し、発色反応を行った。
その結果を、表1に示す。表1中の記号の意味は、表2以下でも同様である。配列番号1のオリゴヌクレオチドを固定化した位置のシグナルは固定化されたオリゴヌクレオチドの量を、配列番号2のオリゴヌクレオチドを固定化した位置のシグナルはハイブリダイゼーションの強度を、それぞれ示す。

表1の結果から明らかなように、実施例1のオリゴヌクレオチド固定化アルミニウム箔は、比較例1のオリゴヌクレオチド固定化アルミニウム箔に比べて、オリゴヌクレオチドが確実にアルミニウム箔上に固定化されていることがわかる。また、実施例1のオリゴヌクレオチド固定化アルミニウム箔では、ハイブリダイゼーションシグナルも明瞭に現れた。なお、コントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)にはシグナルはまったく現れなかった。
実施例3 核酸の平板への固定化
常法に従い、オリゴヌクレオチド合成機(Perkin−elmer Applied biosystems)を用いて、配列番号4、5及び6に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(31mer)を合成した。尚、配列番号4に示すオリゴヌクレオチドは、5’末端をビオチン化した。また、配列番号4及び5に示すオリゴヌクレオチドは、実施例1に記載の配列番号1及び2に示すオリゴヌクレオチドの5’末端に10個のチミジンが連結した配列を有している。配列番号5のオリゴヌクレオチドは、前記ビオチン化プローブと相補性を持っており、配列番号6に示すオリゴヌクレオチドは、配列番号5に示すオリゴヌクレオチドと1塩基配列が異なるため相補性を持っていない。これらのオリゴヌクレオチドを100pmol/mlになるように5×SSCに溶解した。
市販品のステンレス製の平板(特殊金属工業株式会社製)の所定の位置に、上記オリゴヌクレオチド溶液それぞれを、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。スポットの大きさは直径約0.3mmであった。この平板を乾燥機に入れ、42℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から300mJ/cm照射した。照射時間は120秒であった。その後、前記平板を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(2xSSC緩衝液)も同様に平板にスポットし、固定化の操作を行った。
比較例2
予め、ステンレス製の平板に、Uvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から300mJ/cm照射した。実施例3に記載のオリゴヌクレオチド溶液それぞれを、ステンレス製の平板の所定の位置に、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。照射時間は120秒であった。この平板を乾燥機に入れ42℃で20分乾燥した。その後、前記平板を水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(2xSSC緩衝液)も同様に平板にスポットし、固定化の操作を行った。
実施例4 ハイブリダイゼーション及びその検出
実施例3及び比較例2のオリゴヌクレオチド固定化平板の核酸を固定化した部分に、3pmolビオチン化プローブ(262bp)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、平板を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、45℃で2時間加熱した。
以下、実施例2と同様にしてポストハイブリダイゼーション、及び平板に固定化されたオリゴヌクレオチドならびにハイブリダイゼーションの検出を行った。その結果を、表2に示す。配列番号4のオリゴヌクレオチドを固定化した位置のシグナルは固定化されたオリゴヌクレオチドの量を、配列番号5のオリゴヌクレオチドを固定化した位置のシグナルはハイブリダイゼーションの強度を、それぞれ示す。

表2の結果から明らかなように、実施例3のオリゴヌクレオチド固定化平板は、比較例2のオリゴヌクレオチド固定化平板に比べて、オリゴヌクレオチドが確実に平板上に固定化されていることがわかる。また、実施例3のオリゴヌクレオチド固定化平板では、ハイブリダイゼーションシグナルも明瞭に現れた。ここで、コントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)及び配列番号6にはシグナルはまったく現れなかった。
実施例5 核酸の平板への固定化
銀タングステン製の平板(イースタン技研株式会社製)の所定の位置に、実施例3で調製したオリゴヌクレオチド溶液それぞれを、スポッターを用いて3箇所づつスポットした。スポットの大きさは直径約0.3mmであった。この平板を乾燥機に入れ、42℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から400mJ/cm照射した。照射時間は160秒であった。その後、前記平板を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(2xSSC緩衝液)も同様に平板にスポットし、固定化の操作を行った。
比較例3
予め、銀タングステン製の平板に、Uvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から400mJ/cm照射した。実施例3に記載のオリゴヌクレオチド溶液それぞれを、銀タングステン製の平板の所定の位置に、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。照射時間は160秒であった。この平板を乾燥機に入れ42℃で20分乾燥した。その後、前記平板を水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(2xSSC緩衝液)も同様に平板にスポットし、固定化の操作を行った。
実施例6 ハイブリダイゼーション及びその検出
実施例5及び比較例3のオリゴヌクレオチド固定化平板の核酸を固定化した部分に、3pmolビオチン化プローブ(262bp)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、平板を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、45℃で2時間加熱した。
以下、実施例2と同様にしてポストハイブリダイゼーション、及び平板に固定化されたオリゴヌクレオチドならびにハイブリダイゼーションの検出を行った。その結果を、表3に示す。

表3の結果から明らかなように、実施例5のオリゴヌクレオチド固定化平板は、比較例3のオリゴヌクレオチド固定化平板に比べて、オリゴヌクレオチドが確実に平板上に固定化されていることがわかる。また、実施例5のオリゴヌクレオチド固定化平板では、ハイブリダイゼーションシグナルも明瞭に現れた。ここで、コントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)及び配列番号6にはシグナルはまったく現れなかった。
実施例7 核酸の平板への固定化
常法に従い、配列番号7及び8に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、λDNA断片(A)を増幅した。得られた断片をアガロース電気泳動し、エチジウムブロマイド染色により検出した結果、その断片の長さは約300bであった。また、前記λDNAと相補的でないλDNA断片(B)(約300b)も同様に増幅した。
市販品のアルミニウム箔(三菱アルミニウム株式会社製)の所定の位置に、上記λDNA溶液それぞれを、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。スポットの大きさは直径約0.3mmであった。このアルミニウム箔を乾燥機に入れ、42℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から600mJ/cm照射した。照射時間は240秒であった。その後、前記アルミニウム箔を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様にアルミニウム箔にスポットし、固定化の操作を行った。
比較例4
実施例7に記載のλDNA溶液(濃度1pmol/μl)それぞれを、アルミニウム箔の所定の位置に、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。このアルミニウム箔を乾燥機に入れ42℃で20分乾燥した。その後、前記アルミニウム箔を水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様にアルミニウム箔にスポットし、固定化の操作を行った。
実施例8 ハイブリダイゼーション及びその検出
(1)ハイブリダイゼーション
配列番号7に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの5’末端にビオチンを標識したオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして、λDNA断片(C)を増幅した。このλDNA断片(C)の配列は、実施例7で作製したλDNA断片(A)の配列と同一である。
実施例7及び比較例4のλDNA固定化アルミニウム箔を95℃に暖めた水中に5分間浸し、4℃に冷やした水中に5分間浸した。次いで、λDNA固定化アルミニウム箔の核酸を固定化した部分に、前記0.5pmolビオチン化λDNA(C)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、アルミニウム箔を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、55℃で2時間加熱した。
(2)ポストハイブリダイゼーション
上記ハイブリダイゼーションの後、以下の条件でポストハイブリダイゼーション洗浄を行い、λDNA固定化アルミニウム箔に非特異的に吸着したプローブを除去した。
〔ポストハイブリダイゼーション洗浄の条件〕
1)2×SSC,0.1%SDS;室温、5分間、2回
2)0.2×SSC,0.1%SDS;40℃、5分間、2回
3)2×SSC;室温1分間、3回
(3)ハイブリダイゼーションの検出
アルミニウム箔のハイブリダイゼーション溶液を載せた部分に、乳タンパクを含むブロッキング溶液(ブロックエース 雪印乳業製)1.5mlをのせ、室温で30分間ブロッキングを行った。ブロッキング溶液を除いた後、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート溶液(VECTOR社製)を1.5mlのせ、室温で30分間反応させた。つぎに、アルミニウム箔をTBST(50mM Tris−HCl(pH7.5),0.15M NaCl,0.05% Tween20)溶液に浸し、5分間振とうして反応しなかったコンジュゲートを除去した。最後に、アルミニウム箔(はく)のハイブリダイゼーション溶液を載せた部分に基質溶液(TMB)を1.5mlのせて、30分間放置し、発色反応を行った。
その結果を表4に示す。

表4の結果から明らかなように、ハイブリダイゼーションシグナルが特異的かつ明瞭に現れたことから、実施例7のλDNA断片固定化アルミニウムはくはλDNA断片が確実にアルミニウムはく上に固定化されていることがわかる。一方、比較例4のλDNA断片固定化アルミニウムはくには、シグナルはまったく現れなかった。さらに、実施例7のλDNA断片固定化アルミニウムはく及び比較例4のλDNA断片固定化アルミニウムはくのコントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)にもシグナルはまったく現れなかった。
実施例9 核酸の平板への固定化
市販品のステンレス製の平板(特殊金属工業株式会社製)の所定の位置に、実施例7に記載のλDNA溶液それぞれを、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。スポットの大きさは直径約0.3mmであった。この平板を乾燥機に入れ、42℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から1200mJ/cm照射した。照射時間は480秒であった。その後、前記平板を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様に平板にスポットし、固定化の操作を行った。
比較例5
実施例7記載のλDNA溶液(濃度1pmol/μl)それぞれを、ステンレス製の平板の所定の位置に、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。この平板を乾燥機に入れ42℃で20分乾燥した。その後、前記平板を水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様に平板にスポットし、固定化の操作を行った。
実施例10 ハイブリダイゼーション及びその検出
実施例9及び比較例5のλDNA固定化平板を95℃に暖めた水中に10分間浸し、4℃に冷やした水中に5分間浸した。次いで、λDNA固定化平板の核酸を固定化した部分に、実施例8に記載の1pmolビオチン化λDNA(C)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、平板を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、60℃で2時間加熱した。
以下、実施例8と同様にしてポストハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの検出を行った。その結果を表5に示す。

表5の結果から明らかなように、ハイブリダイゼーションシグナルが特異的かつ明瞭に現れたことから、実施例9のλDNA断片固定化平板はλDNA断片が確実に平板上に固定化されていることがわかる。一方、比較例5のλDNA断片固定化平板には、シグナルはまったく現れなかった。さらに、実施例9のλDNA断片固定化平板及び比較例5のλDNA断片固定化平板のコントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)にもシグナルはまったく現れなかった。
実施例11 核酸の平板への固定化
市販品のシリコンウェーハ(三菱住友シリコン株式会社製)の所定の位置に、実施例7に記載のλDNA溶液それぞれを、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。スポットの大きさは直径約0.3mmであった。このシリコンウェーハを乾燥機に入れ、42℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から1200mJ/cm照射した。照射時間は480秒であった。その後、前記シリコンウェーハを水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様にシリコンウェーハにスポットし、固定化の操作を行った。
比較例6
実施例7記載のλDNA溶液(濃度1pmol/μl)それぞれを、シリコンウェーハの所定の位置に、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。この平板を乾燥機に入れ42℃で20分乾燥した。その後、前記シリコンウェーハを水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
実施例12 ハイブリダイゼーション及びその検出
実施例11及び比較例6のλDNA固定化シリコンウェーハを95℃に暖めた水中に10分間浸し、4℃に冷やした水中に5分間浸した。次いで、λDNA固定化シリコンウェーハの核酸を固定化した部分に、実施例8に記載の1pmolビオチン化λDNA(C)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、シリコンウェーハを水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、60℃で2時間加熱した。
以下、実施例8と同様にしてポストハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの検出を行った。その結果を表6に示す。

表6の結果から明らかなように、ハイブリダイゼーションシグナルが特異的かつ明瞭に現れたことから、実施例11のλDNA断片固定化シリコンウェーハはλDNA断片が確実にシリコンウェーハ上に固定化されていることがわかる。一方、比較例6のλDNA断片固定化シリコンウェーハには、シグナルはまったく現れなかった。さらに、実施例11のλDNA断片固定化シリコンウェーハ及び比較例6のλDNA断片固定化シリコンウェーハのコントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)にもシグナルはまったく現れなかった。
実施例13 核酸の平板への固定化
ガラス板に金蒸着させた基板の所定の位置に、実施例7に記載のλDNA溶液それぞれを、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。スポットの大きさは直径約0.3mmであった。この金蒸着ガラス基板を乾燥機に入れ、42℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から1200mJ/cm照射した。照射時間は480秒であった。その後、前記金蒸着ガラス基板を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様に金蒸着ガラス基板にスポットし、固定化の操作を行った。
比較例7
実施例7記載のλDNA溶液(濃度1pmol/μl)それぞれを、金蒸着ガラス基板の所定の位置に、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。この平板を乾燥機に入れ42℃で20分乾燥した。その後、前記金蒸着ガラス基板を水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
実施例14 ハイブリダイゼーション及びその検出
実施例13及び比較例7のλDNA固定化金蒸着ガラス基板を95℃に暖めた水中に10分間浸し、4℃に冷やした水中に5分間浸した。次いで、λDNA固定化金蒸着ガラス基板の核酸を固定化した部分に、実施例8に記載の1pmolビオチン化λDNA(C)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、金蒸着ガラス基板を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、60℃で2時間加熱した。
以下、実施例8と同様にしてポストハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの検出を行った。その結果を表7に示す。

表7の結果から明らかなように、ハイブリダイゼーションシグナルが特異的かつ明瞭に現れたことから、実施例13のλDNA断片固定化金蒸着ガラス基板はλDNA断片が確実に金蒸着ガラス基板上に固定化されていることがわかる。一方、比較例7のλDNA断片固定化金蒸着ガラス基板には、シグナルはまったく現れなかった。さらに、実施例13のλDNA断片固定化金蒸着ガラス基板及び比較例7のλDNA断片固定化金蒸着ガラス基板のコントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)にもシグナルはまったく現れなかった。
実施例15 核酸の平板への固定化
市販の銅箔(日鉱金属加工株式会社製)の所定の位置に、実施例7に記載のλDNA溶液それぞれを、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。スポットの大きさは直径約0.3mmであった。この銅箔を乾燥機に入れ、42℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長254nmを含む紫外線を16cmの距離から1200mJ/cm照射した。照射時間は480秒であった。その後、前記銅箔を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様に銅箔にスポットし、固定化の操作を行った。
比較例8
実施例7記載のλDNA溶液(濃度1pmol/μl)それぞれを、銅箔の所定の位置に、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。この銅箔を乾燥機に入れ42℃で20分乾燥した。その後、前記銅箔を水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
実施例16 ハイブリダイゼーション及びその検出
実施例15及び比較例8のλDNA固定化銅箔を95℃に暖めた水中に10分間浸し、4℃に冷やした水中に5分間浸した。次いで、λDNA固定化銅箔の核酸を固定化した部分に、実施例8に記載の1pmolビオチン化λDNA(C)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、銅箔を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、60℃で2時間加熱した。
以下、実施例8と同様にしてポストハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの検出を行った。その結果を表8に示す。

表8の結果から明らかなように、ハイブリダイゼーションシグナルが特異的かつ明瞭に現れたことから、実施例15のλDNA断片固定化銅箔はλDNA断片が確実に銅箔上に固定化されていることがわかる。一方、比較例8のλDNA断片固定化銅箔には、シグナルはまったく現れなかった。さらに、実施例15のλDNA断片固定化金蒸着ガラス基板及び比較例8のλDNA断片固定化銅箔のコントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)にもシグナルはまったく現れなかった。
実施例17 核酸の平板への固定化
市販の純ニッケル箔(日鉱金属加工株式会社製)の所定の位置に、実施例7に記載のλDNA溶液それぞれを、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。スポットの大きさは直径約0.3mmであった。この純ニッケル箔を乾燥機に入れ、42℃で20分乾燥した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、波長280nmを含む紫外線を16cmの距離から1200mJ/cm照射した。照射時間は480秒であった。その後、前記純ニッケル箔を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させた。
一方、コントロールとして核酸を含まない溶液(1×TE緩衝液)も同様に純ニッケル箔にスポットし、固定化の操作を行った。
比較例9
実施例7記載のλDNA溶液(濃度1pmol/μl)それぞれを、純ニッケル箔の所定の位置に、スポッター(Pyxsis5500 CARTESIAN社製)を用いて3箇所づつスポットした。この純ニッケル箔を乾燥機に入れ42℃で20分乾燥した。その後、前記純ニッケル箔を水中で30分間振とうして洗浄し、乾燥させた。
実施例18 ハイブリダイゼーション及びその検出
実施例17及び比較例9のλDNA固定化純ニッケル箔を95℃に暖めた水中に10分間浸し、4℃に冷やした水中に5分間浸した。次いで、λDNA固定化純ニッケル箔の核酸を固定化した部分に、実施例8に記載の1pmolビオチン化λDNA(C)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、純ニッケル箔を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、60℃で2時間加熱した。
以下、実施例8と同様にしてポストハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの検出を行った。その結果を表9に示す。

表9の結果から明らかなように、ハイブリダイゼーションシグナルが特異的かつ明瞭に現れたことから、実施例17のλDNA断片固定化銅箔はλDNA断片が確実に純ニッケル箔上に固定化されていることがわかる。一方、比較例9のλDNA断片固定化純ニッケル箔には、シグナルはまったく現れなかった。さらに、実施例17のλDNA断片固定化純ニッケル箔及び比較例9のλDNA断片固定化純ニッケル箔のコントロールの位置(核酸を含まない溶液をスポットした箇所)にもシグナルはまったく現れなかった。
【実施例19】
常法に従い、オリゴヌクレオチド合成機(Perkin−elmer Applied biosystems)を用いて、配列番号9、10及び11に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(26mer)を合成した。尚、配列番号9に示すオリゴヌクレオチドは、5’末端をビオチン化した。また、配列番号9及び10に示すオリゴヌクレオチドは、実施例1に記載の配列番号1及び2に示すオリゴヌクレオチドの5’末端に5個のチミジンが連結した配列を有している。配列番号11に示すオリゴヌクレオチドは、配列番号5に示すオリゴヌクレオチドと1塩基配列が異なるため相補性を持っていない。すなわち、これらのオリゴヌクレオチドは、実施例3の配列番号4、5及び6のオリゴヌクレオチドの5’末端のチミジンを5個に減らしたものである。
上記オリゴヌクレオチドを、実施例3と同様にして市販品のステンレス製の平板(特殊金属工業株式会社製)に固定化した。以下、実施例2と同様にしてポストハイブリダイゼーション、及び平板に固定化されたオリゴヌクレオチドならびにハイブリダイゼーションの検出を行った。
比較例10
実施例19に記載のオリゴヌクレオチド溶液を用いた他は、比較例2と同様にして、ステンレス製の平板に各々のオリゴヌクレオチドを固定化した。
【実施例20】
実施例19及び比較例10のオリゴヌクレオチド固定化平板の核酸を固定化した部分に、3pmolビオチン化プローブ(262bp)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb(TeleCHem International,Inc.)60mlをのせ、平板を水が浸入しないケース(ハイブリカセット)に入れてそのケースごとウォーターバスに沈め、45℃で2時間加熱した。
以下、実施例2と同様にしてポストハイブリダイゼーション、及び平板に固定化されたオリゴヌクレオチドならびにハイブリダイゼーションの検出を行った。その結果を、表10に示す。配列番号9のオリゴヌクレオチドを固定化した位置のシグナルは固定化されたオリゴヌクレオチドの量を、配列番号10のオリゴヌクレオチドを固定化した位置のシグナルはハイブリダイゼーションの強度を、それぞれ示す。

【産業上の利用の可能性】
本発明の方法により、生体分子、例えば核酸、特に鎖長の短い核酸を、金属製担体に簡便、かつ、効率よく固定することができる。また、担体表面のコーティングが不要であるため、金属製の電極等に直接生体分子を固定化することができる。
【配列表】




【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子を担体に固定化する方法であって、生体分子の溶液を担体上にスポットする工程と、前記生体分子溶液をスポットした担体に波長280nmの成分を含む紫外線を照射する工程を含み、前記担体は金属であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記紫外線が、波長220〜300nmの成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属は、周期律表第2周期〜第7周期のI、II、III、IV、V、VI、VII族および遷移元素から選ばれる金属、又は同金属を含む合金である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記紫外線の照射量は100mJ/cm以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生体分子は核酸、タンパク質、糖、抗原、抗体、ペプチド、酵素から選ばれる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
生体分子が担体上に固定化された生体分子固定化担体の製造法であって、生体分子の溶液を担体上にスポットする工程と、前記生体分子溶液をスポットした担体に波長280nmの成分を含む紫外線を照射し、前記生体分子を担体に固定化する工程を含む方法。
【請求項7】
前記紫外線が、波長220〜300nmの成分を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生体分子は核酸であって、核酸固定化担体はハイブリダイゼーションによる核酸の分析に用いられるものである請求項6に記載の方法。

【国際公開番号】WO2004/048973
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555033(P2004−555033)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015010
【国際出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)