説明

生体情報取得装置

【課題】照明光を自由に照射させること抑制することで、光音響装置の安全性を改善させること。
【解決手段】光音響装置において、被検体に照射する光を出射する出射部を有する光照射手段と、前記光照射手段からの光の照射を受けて前記被検体が発する光音響波を受信して電気信号を出力する探触子と、前記出射部の位置または向きを検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて光源の発光許可及び発光停止を制御する制御装置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検体に照明光を照射し、被検体から放出された超音波を画像化する生体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がんに起因して発生する血管新生を特異的に画像化する方法として、光音響トモグラフィ(以下、PAT;Photoacoustic tomography)が注目されている。PATは照明光(近赤外線)を被検体に照明し、被検体内部から発せられる光音響波を超音波探触子で受信して画像化する方式の技術である。この光音響装置について、非特許文献1に、その詳細が記載されている。しかし、非特許文献1には、照明光の照射制御、特にその安全な照射に関しての十分な考察がなされていない。そのため、照明光は被検体内への照射だけでなく空間内にも自由に照射されることがあり、照明光の照射に対する安全性は改善の余地がある。
【0003】
一方、レーザー脱毛等、PAT技術ではないが、照明光の照射に対する安全性に関しては、特許文献1に記載の技術が知られている。図8は特許文献1の構成を示したものである。図8において、エネルギー放出面101は皮膚と接触する面であり、光などエネルギーが照射される。支持構造体102はエネルギー放出面101を固定しており、接触センサ103を介してハウジング104に内包されている。接触センサ103はエネルギー放出面101と不図示の皮膚との接触を検出するものであり、エネルギー放出面101を取り囲むように配置されている。そして、接触センサ103で皮膚との接触が検出されない限り、エネルギー放出を停止する。こうすることで、エネルギー放出面101が皮膚に完全に密着した状態でのみエネルギー照射がなされ、エネルギー照射に対して安全性が改善している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S.A.Ermilov et al.,Development of laser optoacoustic and ultrasonic imaging system for breast cancer utilizing handheld array probes,Photons Plus Ultrasound:Imaging and Sensing 2009,Proc.of SPIE vol.7177,2009.
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−525036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の技術では以下のような課題がある。
【0007】
接触センサによる照射制御の場合、接触の有無で光等のエネルギーの照射を判断するため、接触物によっては照射を停止しなければいけない。例えば光照射対象物以外のものが接触している場合でも光等のエネルギーの照射が行われるため、更なる改善が求められていた。また、光等のエネルギーに対して透明な物質が接触している場合、接触物を透過したエネルギーが他のものに照射してしまうため、やはり改善が求められていた。したがって、接触センサ103によるエネルギー放出の制御は必ずしも万全ではなく、それとは異なる安全対策を施し、その安全性をさらに改善する必要がある。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑み発明したものである。
【0009】
本発明は光音響装置の安全性改善のために、照明光の照射を適正に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本出願に係る発明は、被検体に照射する光を出射する出射部を有する光照射手段と、前記光照射手段からの光の照射を受けて前記被検体が発する光音響波を受信して電気信号を出力する探触子と、前記出射部の位置または向きを検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記光照射手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする生体情報取得手段である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、照明光が自由に照射されることを抑制することが可能となるため、光音響装置等の生体情報取得装置の安全性をさらに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における、装置構成を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態における、制御方法を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態における、さらに異なる制御方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1における、照明光の照射領域を説明する図である。
【図5】本発明の実施例2における、支持体を説明する図である。
【図6】本発明の実施例3における、支持体のない装置構成を説明する図である。
【図7】本発明の実施例4における、さらに異なる位置センサを説明する図である。
【図8】背景技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は照明光を照射する方向が少なくとも水平方向より下向き(重力方向)であれば、術者または使用者や被検者の目に直接照射されるリスクを低減できるという分析に基づいている。
【0014】
図面を用いて、本実施の形態を説明する。図1は、生体情報取得装置である光音響装置を模式的に示した図である。生体情報取得装置である光音響装置100は、不図示の被検体に照射する光を出射する出射部を有する光照射手段と、光照射手段からの光の照射を受けて被検体が発する光音響波を受信して電気信号を出力する探触子2と、出射部の位置または向きを検知する検知手段である位置センサ8と、検知手段である位置センサ8の検知結果に基づいて光照射手段を制御する制御手段である制御装置9とを備えている。それぞれについて、以下詳述する。
【0015】
光照射手段は、照明光を発する光源4と、光源4が発した光を不図示の被検体に向けて出射する出射部である出射端3aとを備えている。図1に示す本実施の形態においては、光源4からの光をバンドルファイバ3で伝送させた後、不図示の被検体に照射しているので、出射部はバンドルファイバ3の端部3aである。しかし、これに限らず、光源4の光をミラー等で反射させてそのまま不図示の被検体に照射しても良い。さらに被検体と接する、または近接する部分には透明の窓を設けることが好適であり、この場合、出射部は透明の窓となる。尚、図1では好ましい形態として光源4と出射部である出射端3aとの間に照明光学系5を介在させている。
【0016】
探触子2は、例えば各々が複数の振動子等からなる複数の素子で構成された、音響波を電気信号に変換する変換素子アレイ等が使用できる。尚、以下の説明においては、探触子2と出射端3aとを総称して、光音響プローブ1と称する場合がある。
【0017】
検知手段である位置センサ8は、出射部である出射端3aの位置を検知するものであり、図1に示す形態においては、好ましい形態として、探触子2を支持する支持体であるの後述のアーム機構12を有し、このアーム機構12の3か所に配置されている。尚、位置センサ8としては、例えばエンコーダが使用できる。
【0018】
制御手段である制御装置9は、本実施形態においては、上述の位置センサ8のエンコーダが測定したアーム機構12の各関節部の角度に基づき、出射部である出射端3aの向き、つまり照明光の照射方向を算出し、光照射手段の動作を制御する。また更には、アーム機構12の長さと、検知手段である位置センサ8(エンコーダ)の検知結果である各関節部の角度から、出射部である出射端3aの位置及び照射方向を求め、光照射手段の動作を制御する。光照射手段の動作の制御方法としては、光源4の内部シャッタを開閉する方法や、内部トリガ信号(フラッシュランプやQスイッチ)を制御する方法等が使用できる。また、光源4と照明光学系5との間に外部シャッタを設け、そのシャッタ開閉を制御しても良い。このように、制御手段である制御装置9は、検知手段の検知結果に基づいて光照射手段による光の発生を許可及び停止する。
【0019】
尚、本実施の形態においては、より好ましい形態として、処理装置6とモニタ7を有している。処理装置6は、探触子2が受信した光音響波に基づいて出力された電気信号に増幅処理、ディジタル変換処理、また画像再構成処理などの様々な処理を施し、モニタ7は処理装置6が出力する画像情報を表示する。
【0020】
上述のように、本実施形態においては、光照射手段の出射部である出射端3aの位置または向きを検知手段である位置センサ8で検知し、その検知結果に基づき、制御手段である制御装置9で光照射手段の動作を制御している。これによって、接触センサによる光照射制御が抱えていた、被検体以外の非照射物が接触した際の誤った光照射や、光透過物が接触した際の誤った光照射等が防止できる。付言すると、生体情報取得装置のように、測定最中(装置動作最中)における、被検体と、光照射手段の出射部と、術者(または使用者)との相対位置関係がほぼ維持される形態においては、出射部の位置または向きによって光照射の可否を制御することで誤動作をより高い精度で抑制出来る。具体的には、例えば、照明光を照射する方向が少なくとも水平方向より下向き(重力方向)であれば、術者または使用者や被検者の目に直接照射されるリスクを低減できる。
【0021】
尚、上記においては、検知手段としてエンコーダを例にして説明したが、検知手段はこれに限らず、例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ、磁気センサ、光学式センサ、カメラなどが使用できる。また、これらを適宜組み合わせることで、光照射手段の、より高精度な動作制御が可能となる。
【0022】
また、上述の実施形態においては、検知手段である位置センサ8が、探触子2を支持する支持体であるアーム機構12に設けられていたが、これに限らず、後述の図6にしめす形態のように、光音響プローブ1に設けられても良い。
【0023】
また、光照射手段の出射部である出射端3aと不図示の被検体との間には、拡散板などの光学系を設けても良い。
【0024】
尚、光源4としては、Nd:YAGレーザやアレクサンドライトレーザなどパルスレーザを用いる。このほか、Nd:YAGレーザ光を励起光とするTi:saレーザやOPOレーザを用いても良い。
【0025】
また、図1に示す本実施の形態においては、光源が発する照明光の一部を分岐して、測定されるフォトダイオード(不図示)からの出力をトリガ信号とし、処理装置6はそのトリガ信号が入力されたら、探触子2は光音響信号を取得するように構成した。なおトリガ信号はフォトダイオードに限定されず、信号発生器で光源4の発光と処理装置6への入力トリガを同期させる方法でも有効である。
【0026】
光音響プローブ1を支持する支持体であるアーム機構12は、光音響プローブ1自身の重量をキャンセルするための構造である。アーム機構12の自由度は、X,Y,Zと各軸周り(ωx,ωy,ωz)の合計6自由度とすることが好適である。アーム機構12には、図1の形態では光音響プローブ1からベースまでの間の3つの各関節部に、位置センサ8としてエンコーダが設けられている。そして上述の通り、制御装置9は各エンコーダの出力やアーム長等の情報に基づき、光照射手段を制御する。
【0027】
この、制御装置9が行う制御方法について、図2(a)、(b)、図3(a)、(b)のフロー図を用いて詳細に説明する。
(S21) 制御装置9は位置センサ8であるエンコーダで角度情報を取得する。そして、制御装置9は照明光の出射方向であるバンドルファイバの出射端3aの向きが所定以内か判定する。
(S22) S21の判定が所定以内の場合には、光源4の発光を許可するように、光源4の照射制御を行う。
(S23) S21の判定が所定以上の場合には光源4の発光を停止するように、光源4の照射制御を行う。
【0028】
このように、照明光の出射を所定の方向に制限することにより、照明光が自由に照射されることを軽減でき、その安全性を改善できる。そしてさらに好ましくは、制限を設けた照明光の出射方向にある部材表面や、ベッドなどの設備、床や壁などの部屋環境は照明光を散乱および/または吸収させる材質にする。例えば金属の場合は表面をマット調にする、黒など濃色のメッキや塗装を施す、あるいは表面に植毛紙や布を貼りつける。そうすると、照明光が被検体以外に照射されても、照明光は散乱/吸収するため、さらに安全性を改善する。尚、多重の安全性を確保するため、少なくとも術者・使用者と被検者はレーザ安全ゴーグルを着用し、被検者の目と光音響プローブ1との間を遮光カーテンで遮るべきである。
【0029】
また、照明光の出射方向であるバンドルファイバの出射端3aの角度だけでなく、その角速度も光源4の照射制御の対象としてもよい。これについて図2(b)のフロー図を用いて説明する。
(S24) 制御装置9はエンコーダの測定出力である角度情報を取得する。そして、照明光の出射方向であるバンドルファイバの出射端3aの向きが所定以内か判定する。
(S25) S24の角度情報を時間微分して照明光の出射方向であるバンドルファイバの出射端3aの角速度を求める。そして、角速度が所定以内か判定する。また、さらに角加速度を制御対象としても良い。
(S26) S24とS25の判定がいずれも所定以内の場合には光源4の発光を許可するように、光源4の照射制御を行う。
(S27) S24とS25のいずれかの判定が所定以上の場合には光源4の発光を停止するように、光源4の照射制御を行う。
【0030】
このように、照明光の出射方向の動きも検知することにより、制御装置9は、光音響プローブ1に急激な動きがあった場合にも光源4の発光を制御することが可能となるため、さらにその安全性を改善できる。
【0031】
なお、S21やS24で判定する照明光の出射方向の判定値は、被検体に応じて設定する。例えば、被検体を乳房とし、被検者の体位が仰向として光音響画像を取得する場合、照明光の出射方向は重力方向(図1(a)における−Z方向)が標準方向となる。光音響画像取得では被検体に沿って光音響プローブ1を走査させるため、その標準方向から±90°を判定値とする。さらに、S15で判定する照明光の出射方向の動き(角速度)の判定値も被検体や被検者の体位に応じて設定すればよく、上記の場合では±90°/秒程度をこの判定値とする。ただし、ここで述べた判定値は一例を示しただけであり、例え被検体や被検者の体位がここで説明したものと同一だとしても、これらの判定値に限定されない。
【0032】
さらにアーム機構12のアーム長と位置センサ8であるエンコーダの出力から、光音響プローブ1の照明光の出射方向だけでなく、その位置情報も得られる。そして、照明光の照射端の位置が所定の位置にあるときだけ制御装置9は光源4の照射を許可する。そこでつぎに、制御装置9が行うこの制御方法について図3(a)のフロー図を用いて説明する。
(S31) 制御装置9は位置センサ8であるエンコーダとアーム機構12のアーム長とから、照射端の位置情報と角度情報(出射方向)を取得する。そして、制御装置9は照射端の位置と照明光の出射方向が所定以内か判定する。
(S32) S31の判定が所定以内の場合には光源4の発光を許可するように、光源4の照射制御を行う。
(S33) S31の判定が所定以上の場合には光源4の発光を停止するように、光源4の照射制御を行う。
【0033】
S31で判定する照明光の出射位置の判定値は、被検体や被検者の体位に応じて設定する。例えば、照明光の出射の標準方向を重力方向(図1における−Z方向)とした場合、光音響プローブ1の+Z方向における位置を判定値に用いる。そうすると、光音響プローブを高く持ち上げた状態では光源4から照明光の照射を停止させることができる。+Z方向の判定値は、覗き込み防止を目安とすれば良く、平均的な測定位置から100mm程度の高さとする。さらに、X,Y方向の判定値は平均的な測定位置から±200mm程度とする。当然、図2のS21やS24で説明した通り、照明光の出射方向にも判定値を設ける。このように、照明光の出射方向だけでなく、その位置全体から光源4の照射制御を行うことによって、より安全性を改善できる。
【0034】
さらに、図3(b)のように、照射端の位置や照明光の出射方向だけでなく、その動きも光源4の照射制御の対象としても良い。
(S34) 制御装置9は位置センサ8であるエンコーダとアーム機構12のアーム長とから、照射端の位置情報と角度情報(出射方向)を取得する。そして、制御装置9は照射端の位置と照明光の出射方向が所定以内か判定する。
(S35) S34の照射端の位置情報と角度情報を時間微分して、照射端の速度と角速度を求める。そして、その速度と角速度が所定以内か判定する。また、さらに加速度や角加速度を制御対象としても良い。
(S36) S34とS35の判定がいずれも所定以内の場合には、光源4の発光を許可するように、光源4の照射制御を行う。
(S37) S34とS35のいずれかの判定が所定以上の場合には、光源4の発光を停止するように、光源4の照射制御を行う。
【0035】
このように、照明光の出射端の動きの判定値は、各軸ともに速度は、例えば200mm/s、加速度は重力加速度程度を上限に判定基準とする。そして、出射端の動きにも制限を加えることにより、光音響プローブ1に急激な動きがあった場合にも、制御装置9は光源4の発光を制御することが可能となるため、さらにその安全性を改善できる。
【0036】
以下、本発明を実施例でより詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
上記で説明した光音響装置において、本実施例では図1で説明した光音響装置によってPAT画像を取得した。光源4にはNd:YAGレーザとそれを励起光とするTi:sa
レーザを使用した。照明光の伝搬にはバンドルファイバ3を用い、バンドルファイバの出射端3aには拡大光学系と拡散板を設けた。光音響プローブ1は、探触子2とバンドルファイバの出射端3a、拡大光学系および拡散板を一体にハウジングした。照明光の照射方向は光音響プローブ1の光音響信号取得方向と一致させている。そして、光音響プローブ1はアーム機構12に装着され、その自由度をX,Y,Zと各軸周り(ωx,ωy,ωz)の合計6自由度とした。アーム機構12には、光音響プローブ1からベースまでの間の各関節部に、位置センサ8としてエンコーダを設けている。エンコーダは各関節部の角度を測定するものである。そして、制御装置9は各エンコーダの出力を、回転成分ごとに合計することで光音響プローブ1の向き、具体的には出射端3aの向き、ひいては照明光の照射方向を算出できる。また、アーム機構12の各アーム長と、位置センサ8であるエンコーダの出力、すなわち各関節の角度から、照明光の照射端の位置および照射方向を求めることができる。ここではいずれのアーム長も約500mmとして光音響プローブ1の可動域を確保した。
【0038】
また、光源4の照射制御は、図3(b)のフロー図で説明した制御方法を適用し、Nd:YAGレーザに内蔵しているシャッタで発光と停止の制御を行った。次に、照明光の照射方向と照射位置の判定値について、図4を用いて説明する。
【0039】
被検者の胸部中央を装置の基準位置とし、それに合わせて被検者が仰向けになる。その基準位置から、−150mm<X<+200mm,−200mm<Y<+200mm,−50mm<Z<+50mmの範囲を照射可能領域とする。また、X≧0の領域では0<ωy<+90°を照射可能領域とする。X<0では−50mm<Z<+10mmの範囲内であって、且つ−90°<ωy<0を照射可能領域とする。それ以外では−90°<ωx<+90°,−90°<ωy<+90°を照射領域とする。そして、速度は各軸とも200mm/秒以下、加速度は重力加速度以下とし、角速度は+/−90°/秒以下を判定値(照射可能)とした。
【0040】
以上の構成によれば、術者・使用者あるいは被検者の目に直接照明光が照射されることがなくなり、安全性を改善できた。
【実施例2】
【0041】
実施例1とは異なる光音響プローブ1の支持体について実施例2で説明する。実施例2では、図5のように、光音響プローブ1を位置センサ8(エンコーダ)にワイヤ13で接続することで、光音響プローブを支持した。各エンコーダには、ワイヤ13のロータが内蔵されており、各ロータの回転数から光音響プローブ1の位置を測定する。ただしこの場合、ワイヤ13が弛むと光音響プローブ1の位置の測定精度が低下するので、ワイヤ13の弛み防止のために、ロータには巻取り機構、より好ましくはモータ駆動を適用する。本実施例ではワイヤ13の張力を測定する不図示のセンサ(ロードセル)と、ロータ部分にワイヤ13を巻き取るモータを設け、その張力を保つようにフィードバック制御した。
【0042】
本実施例も実施例1と同様に、図3(b)のフロー図に基づき照射の制御を行った。さらに、装置の基準位置と照明光の照射可能領域は実施例1と同様とした。
【0043】
以上の構成によれば、光音響プローブ1をアーム機構12以外の支持体に搭載しても、照射端の位置やその向きを測定することができる。そして、照明光の照射制御を行うことにより、術者・使用者あるいは被検者の目に直接照明光が照射されることがなくなり、安全性を改善できた。
【実施例3】
【0044】
実施例1と実施例2は光音響プローブ1を支持体に装着している。実施例3では光音響プローブ1を支持体に装着せず、光音響プローブ1に位置センサ8を設け、照射端の向きを測定する。
【0045】
図6においても、ここまで説明した他の図面と同じ構成には同じ符号を用いているので、その符号の説明は省略する。図6においては、位置センサ8にジャイロセンサ(振動ジャイロ)を適用した。ジャイロセンサの測定軸はX軸まわり(ωx)とY軸まわり(ωy)とした。またジャイロセンサの出力は角速度であり、照明光の出射端を水平にした状態でジャイロセンサを較正し、その出力を積分することで出射端であるバンドルファイバの出射端3aの角度を求めた。そして、図2(b)のフロー図で説明した制御方法を適用し、照射の制御を行った。なお、照射可能角度を−90°<ωx<+90°,−90°<ωy<0,照射可能角速度を±90°/秒以下として判定した。
【0046】
以上の構成によれば、光音響プローブ1を支持体に装着しなくても、少なくとも照射端が上向きになればその照射を停止することができる。そのため、空間内に自由に照明光が照射されることなく、その安全性を改善できた。
【実施例4】
【0047】
実施例3の位置センサ8はジャイロセンサを適用したが、実施例4ではそれに加えて加速度センサを設けた。ジャイロセンサは角速度に応じて測定結果(検知結果)が出力され、加速度センサは加速度に応じて出力される。図6においてジャイロセンサの測定軸は、X軸まわり(ωx)とY軸まわり(ωy)、Z軸まわり(ωz)の三軸とし、加速度センサの測定軸はX,Y,Zの三軸とした。照射端の位置や動きの速度を求めるために、そのジャイロセンサや加速度センサの出力を積分する必要がある。位置センサ8の出力を積分して求める位置情報などは測定開始からの相対位置である。したがって、光音響プローブ1を原点となる位置に設置した状態で、位置センサ8をあらかじめ較正することが必要である。そこで本実施例では、あらかじめ設けた原点位置に光音響プローブ1を置き、その状態でジャイロセンサと加速度センサを較正した。そして装置の基準位置は較正した原点からの移動距離で管理した。これにより、光音響プローブ1の空間座標におけるX,Y,Z,ωx,ωyの位置,角度を求めることができる。
【0048】
被検者は被検者の胸部中央が装置の基準位置になるように仰向けになる。そして、基準位置と照明光の照射可能領域は実施例1と同様とし、光源4の照射制御は、図3(b)のフロー図で説明した制御方法を適用した。
【0049】
さらに、光音響プローブ1の角度や位置を検出する位置センサ8は、ここまで説明したもの以外に代替することができる。例えば、図7のように、光音響プローブ1にマーカ10を取り付け、空間内に設置した複数のカメラ11を用いてマーカ10位置を検出し、上述の制御装置9で光源4の照射制御を行う方法でも有効である。このほかにも、位置センサ8に磁気センサや光学式センサなども適用できる。
【0050】
以上の構成によれば、光音響プローブ1を支持体に装着しなくても、照明光の出射端の位置と向きが測定でき、術者・使用者あるいは被検者の目に直接照明光が照射されることがなくなり、安全性を改善できた。
【符号の説明】
【0051】
1 光音響プローブ
2 探触子
3 バンドルファイバ
3a 出射端
3b 入射端
4 光源
5 照明光学系
6 処理装置
7 モニタ
8 位置センサ
9 制御装置
10 マーカ
11 カメラ
12 アーム機構
13 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に照射する光を出射する出射部を有する光照射手段と、
前記光照射手段からの光の照射を受けて前記被検体が発する光音響波を受信して電気信号を出力する探触子と、
前記出射部の位置または向きを検知する検知手段と
前記検知手段の検知結果に基づいて前記光照射手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする生体情報取得装置。
【請求項2】
前記検知手段が、エンコーダ、ジャイロセンサ、加速度センサ、磁気センサ、光学式センサ、カメラのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記検知手段の検知結果に基づいて前記光照射手段による光の発生を許可することを特徴とする請求項1または2に記載の生体情報取得装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記検知手段の検知結果に基づいて前記光照射手段による光の発生を停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体情報取得装置。
【請求項5】
前記探触子を支持する支持体を更に有し、前記検知手段が前記支持体に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−249694(P2012−249694A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122741(P2011−122741)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】