説明

生体情報検出装置

【課題】測定位置への生体部位の位置合わせの制約を大幅に軽減してユーザの操作上の負担を減らし、しかも回路構成の簡単小型化と消費電力の低減を図る。
【解決手段】光検出ユニット100を、長方体板からなるプリズム2にその入射面2aから発光素子1のセンサ光4を入射し、このセンサ光4がプリズム2内で全反射を繰り返して出射面2cから出射し受光素子3で受光されるように構成している。そして、プリズム2のセンサ面に生体部位が接触した場合に、その接触面における屈折率の変化によりプリズム2から生体部位にセンサ光4を照射して散乱光を発生させ、この散乱光のうちプリズム2内に再入射した光成分を受光素子3で受光し、その受光信号を信号処理ユニット200に入力することで上記生体部位の容積脈波の波形を検出するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばユーザの健康状態の診断やユーザ本人の属性判定のために、当該ユーザの生体情報を検出する生体情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報には脈拍、脈波、血流、血圧等があるが、このうち末梢動脈の容積変化を示す波形である容積脈波が注目されている。容積脈波は、人間に関する様々な有益な情報が得られる可能性があることから、動脈の硬化度合や精神的ストレスの検出等といった医学診断分野に留まらず、それ以外にも種々の分野への適用が検討されている。
【0003】
例えば、テレビジョン装置やビデオ機器、STB(Settop Box)のリモートコントローラに代表される操作端末をユーザが操作した際に、当該ユーザの容積脈波からユーザの属性を判定し、その判定結果に基づいて当該ユーザに適したコンテンツ等を選択し配信するシステムが提案されている。
【0004】
容積脈波を取得するための手法としては、指先や耳朶といった末梢動脈が存在する生体部位の近辺に受光素子を配置し、自然光や発光素子により生体部位に照射した光のうち、生体部位内部の末梢動脈中に存在するヘモグロビンに吸収されず生体部位外に散乱する光量の変化を受光素子により計測することにより、末梢動脈中の容積変化を計測する手法が一般的である(例えば、特許文献1を参照。)。
また、容積脈波を計測する際のユーザの操作上の負担を考慮した手法として、受光素子を利用者の生体部位が触れる可能性がある位置に多数配置する手法も提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−259912号公報
【特許文献2】特開2009−039568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載された手法では、受光素子の設置位置に指先等の生体部位を意識的に置くというような明示的な位置合わせを行う必要があるため、ユーザの本来の行動を妨げてしまうことになり、操作上のユーザビリティを低下させ好ましくない。
一方、特許文献2に記載された手法であれば、受光素子を設置した測定位置への生体部位の位置合わせの制約が減るため、ユーザの操作上の負担は軽減される。しかしながら、装置の部品点数及び回路のチャンネル数が増加することから、装置構成の複雑化や大型化、消費電力の増加が避けられない。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、測定位置への生体部位の位置合わせの制約を大幅に軽減してユーザの操作上の負担を減らし、しかも回路構成の簡単小型化と消費電力の低減を図った生体情報検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の第1の観点は、生体部位から容積脈波に関する情報を検出する装置にあって、板状又は柱状をなしその第1の側面から入射した光を前記生体部位の接触面となる上面と下面との間で全反射させながら第2の側面に導いてこの第2の側面から外部へ出射するプリズムと、このプリズムの第2の側面から出射された光を受光してその受光量に応じた受光信号を出力する受光素子と、信号処理部とを備える。そして、この信号処理部により、前記受光素子から出力された受光信号をもとに、前記プリズムの上面に生体部位が接触したときに発生する前記受光量の変化を検出し、この検出された受光量の変化を表す情報を前記生体部位の容積脈波を表す情報として出力するように構成したものである。
【0009】
すなわち、プリズムの上面に生体部位が接触したときに、この生体部位に照射され散乱した散乱光がプリズムの側面に設置された受光素子で受光され、その受光量の変化が生体部位の容積脈波を表す情報として検出される。
したがって、プリズムの上面のどの位置に生体部位が接触しても、この接触による受光量の変化をもとに生体部位の容積脈波を表す情報を検出することができる。このため、測定位置への生体部位の位置合わせの制約を大幅に軽減してユーザの操作上の負担を減らすことができる。また、ユーザの操作上の負担を軽減するために多数のセンサを配置する必要がなくなり、これにより装置の部品点数及び回路のチャンネル数の増加を防止して、回路構成の簡単小型化と消費電力の低減を図ることができる。さらに、入射光がプリズムの内部で全反射する範囲内であれば、プリズムの形状及びサイズを任意に設計することができる。すなわち、装置をユーザの手指などの生体部位がよく触れる箇所に設置しておけば、ユーザが普段と同様の生活をするだけでその容積脈波を検出することができ、その結果種々様々な用途へ利用可能である。
【0010】
この発明の第1の観点は以下のような種々態様を備えることも特徴とする。
第1の態様は、プリズム内にその第1の側面から光を入射する発光素子をさらに備えるようにしたものである。このようにすると、自然光や室内光では十分な受光量が得られない場合でも、常に高精度で安定した測定を行うことができる。
【0011】
第2の態様は、プリズムの第2の側面と受光素子との間に集光光学系を配置し、第2の側面から出射する光を集光光学系により集光して受光素子に受光させるようにしたものである。このようにすると、プリズムから出射される光を効率良く受光することができ、これにより測定精度を高めることが可能となる。
【0012】
第3の態様は、プリズムの下面と接触又は対向する位置に反射光学系を配置し、プリズムの下面から漏出した光をこの反射光学系により反射させて当該下面からプリズム内に再入射させるようにしたものである。このようにすると、プリズムの下面から漏出する光を結果的に低減して受光素子の受光量を高めることができ、これにより測定精度を高めることが可能となる。
【0013】
この発明の第2の観点は、生体部位から容積脈波に関する情報を検出する装置にあって、面発光する面発光源と、板状又は柱状をなし上記面発光源から面発光された光をその下面から導入したのち生体部位の接触面となる上面と下面との間で全反射させながら側面に導いてこの側面から外部へ出射するプリズムと、このプリズムの側面から出射された光を受光してその受光量に応じた受光信号を出力する受光素子と、信号処理部とを備える。そして、この信号処理部により、上記受光素子から出力された受光信号をもとに、上記プリズムの上面に生体部位が接触したときに発生する上記受光量の変化を検出し、この検出された受光量の変化を表す情報を上記生体部位の容積脈波を表す情報として出力するように構成したものである。
【0014】
したがって、上記第1の観点と同様にこの第2の観点においても同じ効果を得ることができる。さらにこの第2の観点では、プリズムには面発光源から面発光される光が入射されるため、プリズムの上面のどの位置においても光量を均一にすることが可能となる。このため、生体部位をプリズム上面のどの位置に接触させても均一な受光量の変化を検出することが可能となり、これにより容積脈波の検出結果の接触位置によるばらつきを低減することができる。
【0015】
また、この発明の第2の観点においても以下のような種々態様が考えられる。
第1の態様は、上記面発光源を、単一あるいは複数の発光素子により構成するものである。このようにすると、単一あるいは複数の発光素子の発光をプリズムに直接入射させることができる。
第2の態様は、面発光源を、板状をなしその側面から入射した光を上面から面発光させる導光部材により構成するものである。このようにすると、小数の発光素子を用いて面発光を実現することができる。
第3の態様は、上記導光部材の側面に光を入射する発光素子をさらに備えたものである。このようにすると、第1の観点においても述べたように、自然光や室内光では十分な受光量が得られない場合でも、常に高精度で安定した測定を行うことが可能となる。
【0016】
第4の態様は、プリズムの側面と受光素子との間に集光光学系を配置し、プリズムの側面から出射する光をこの集光光学系により集光して受光素子に受光させるようにするものである。このようにすると、プリズムから出射される光を効率良く受光することができ、これにより測定精度を高めることが可能となる。
【0017】
この発明の第3の観点は、生体部位から容積脈波に関する情報を検出する装置において、生体部位が接触していない状態では側面から入射した光を上面と下面との間で全反射させ、生体部位が前記上面に接触した状態では前記入射光の生体部位による散乱光を下面から出射する弾性透明部材と、前記弾性透明部材の下面から出射された散乱光を上面から導入して当該上面と下面との間で全反射させながら側面に導き、この側面から外部へ出射するプリズムと、このプリズムの側面から出射された光を受光してその受光量に応じた受光信号を出力する受光素子と、信号処理部を備える。そして、信号処理部により、受光素子から出力された受光信号をもとに、弾性透明部材の上面に生体部位が接触したときに発生する前記受光量の変化を検出し、この検出された受光量の変化を表す情報を生体部位の容積脈波を表す情報として出力するように構成したものである。
【0018】
したがって、上記第1及び第2の観点で述べたように、この第3の観点においても同様の効果を得ることができる。さらにこの第3の観点によれば、生体部位の接触面を弾性透明部材としたことにより、生体部位の接触による光の散乱をより多く発生させることができ、これにより容積脈波の検出精度をより高めることが可能となる。
【0019】
またこの第3の観点においても以下のような態様が考えられる。
第1の態様は、弾性透明部材内にその側面から光を入射する発光素子をさらに備えるようにしたものである。このようにすると、第1及び第2の観点においても述べたように、自然光や室内光では十分な受光量が得られない場合でも、常に高精度で安定した測定を行うことが可能となる。
【0020】
第2の態様は、プリズムの側面と前記受光素子との間に集光光学系を配置し、プリズムの側面から出射する光を集光して受光素子に受光させるようにしたものである。このように構成すると、プリズムから出射される光を効率良く受光することができ、これにより測定精度を高めることが可能となる。
【0021】
第3の態様は、プリズムの下面と接触又は対向する位置に反射光学系を配置し、プリズムの下面から漏出した散乱光を反射させて当該下面からプリズム内に再入射させるようにしたものである。このようにすると、プリズムの下面から漏出する光を結果的に低減して受光素子の受光量を高めることができ、これにより測定精度を高めることが可能となる。
【0022】
この発明の第4の観点は、板状又は柱状をなしその第1の側面から入射した光を前記生体部位の接触面となる上面と下面との間で全反射させながら当該入射光の主たる成分を第2の側面に導いてこの第2の側面から外部へ出射するプリズムと、このプリズム内にその第1の側面から光を入射する発光素子とを備える生体情報検出装置において、上記プリズムの第2の側面を除いた面に受光素子を対向配置し、上記プリズムの上面に生体部位が接触したときに当該生体部位により散乱して当該プリズムの上記第2の側面を除いた面から漏出する光を上記受光素子で受光する。そして、この受光素子から出力された受光信号をもとに、上記プリズムの上面に生体部位が接触したときに発生する前記受光量の変化を検出し、この検出された受光量の変化を表す情報を上記生体部位の容積脈波を表す情報として出力するように構成したものである。
【0023】
このように構成すると、検出感度を高めるために発光素子からプリズム内に入射するセンサ光の光量を大きく設定した場合でも、上記したように受光素子では、生体部位により散乱してプリズムの側面から漏出する光成分と、プリズムの側面や上下面から自然に漏出する光量の小さいセンサ光のみが受光され、光量の大きな主たるセンサ光は受光されない。このため、受光素子の飽和を防止して、生体部位において散乱した光成分の変化を高感度に検出することが可能となり、これにより生体情報の取得精度が向上する。
【0024】
さらに、上記第1乃至第4の観点においては以下のような態様も考えられる。すなわち、上記受光素子と同一又は類似する受光特性を有する環境光受光素子を少なくとも有する環境光受光部をさらに具備し、この環境光受光部により上記プリズムから漏出する環境光を受光してその受光信号を出力する。また、上記信号処理部に環境光成分除去部をさらに備え、上記環境光受光部から出力された環境光受光信号をもとに、上記受光素子から出力された受光信号から当該受光信号に含まれる環境光の信号成分を除去し、この環境光の信号成分が除去された受光信号を上記受光量の変化を検出するための処理に供する。
【0025】
このように構成すると、生体部位の容積脈波を表す情報を得ようとするときに、受光素子で受光される光に含まれる環境光と同一又は類似する環境光が環境光検出部において受信検出される。そして、信号処理部に新たに設けられた環境光成分除去部により、上記環境光検出部により受信検出された環境光を表す信号に基づいて、上記受光素子から出力された受光信号に含まれる環境光由来のノイズ成分が除去される。このため、上記環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号をもとに容積脈波の波形を検出することが可能となり、容積脈波波形の検出精度をより高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
すなわちこの発明によれば、測定位置への生体部位の位置合わせの制約を大幅に軽減してユーザの操作上の負担を減らすことができ、しかも回路構成の簡単小型化と消費電力の低減を図った生体情報検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例1の構成を示す図。
【図2】図1に示した生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例2及び実施例3の構成を示す図。
【図3】図1に示した生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの動作説明に使用するための図。
【図4】図1に示した生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例4の構成を示す図。
【図5】図1に示した生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例5の構成を示す図。
【図6】図1に示した生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例6の構成を示す図。
【図7】この発明の第2の実施形態に係わる生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例1の構成を示す図。
【図8】図7に示した光検出ユニットの動作説明に使用するための図。
【図9】図7に示した光検出ユニットの実施例2の構成を示す図。
【図10】図7に示した光検出ユニットの実施例3の構成を示す図。
【図11】この発明の第3の実施形態に係わる生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例1の構成を示す図。
【図12】図11に示した光検出ユニットの動作説明に使用するための図。
【図13】図11に示した光検出ユニットの実施例2、3及び4の構成を示す図。
【図14】図11に示した光検出ユニットの実施例5の構成を示す図。
【図15】この発明の第1の実施形態に係る生体情報検出装置における光検出ユニットの実施例8の構成を示す図。
【図16】この発明の第1の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例9の第1の構成を示す図。
【図17】この発明の第1の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例9の第2の構成を示す図。
【図18】この発明の第1の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例9の第3の構成を示す図。
【図19】この発明の第2の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例5の第1の構成を示す図。
【図20】この発明の第2の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例5の第2の構成を示す図。
【図21】この発明の第2の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例5の第3の構成を示す図。
【図22】この発明の第1の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例6の第1の構成を示す図。
【図23】この発明の第1の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例6の第2の構成を示す図。
【図24】この発明の第1の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例6の第3の構成を示す図。
【図25】この発明の第4の実施形態に係わる生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例1の構成を示す図。
【図26】この発明の第4の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例2の第1の構成を示す図。
【図27】この発明の第4の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例2の第2の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照してこの発明に係わる種々実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
(実施例1)
図1は、この発明の第1の実施形態に係わる生体情報検出装置の実施例1の構成を示す図である。この生体情報検出装置は、光検出ユニット100と、信号処理ユニット200とから構成される。
【0029】
光検出ユニット100は、短冊状をなす長方形板に成形されたプリズム2を備え、このプリズム2の入射面として機能する第1の端面(第1の側面)2aに発光素子1を対向配置すると共に、出射面として機能する第2の端面(第2の側面)2cに受光素子3を対向配置したものとなっている。
【0030】
発光素子1は、例えばLED(Light Emitting Diode)からなり、上記プリズム2内に上記入射面2aからセンサ光4を入射する。センサ光4としては、例えば0.7〜2.5μmの波長を持つ近赤外光が用いられる。それは、血液中のヘモグロビンが特にこの波長を持つ近赤外光を吸収する特性があるためである。しかしながら、必ずしもこの波長に限定されるものではない。
【0031】
プリズム2は、上記発光素子1が照射するセンサ光4に対して透明で、空気よりも高い屈折率を持つことが望ましく、一例としてはアクリル樹脂(屈折率1.49)を素材とするものが用いられる。ただし、必ずしもこの素材及びこの屈折率に限定されるものではない。プリズム2の上面は、測定対象物である生体部位を接触させるセンサ面2bとして機能する。
【0032】
受光素子3は、フォトダイオードやフォトトランジスタ、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary MOS)といった光量を検出可能なセンサからなり、上記プリズム2の出射面2cから出射されたセンサ光4を受光してその受光信号を信号処理ユニット200に入力する。
【0033】
信号処理ユニット200は、増幅部21と、アナログ/ディジタル変換部(A/D変換部)22と、波形処理・出力部23を備えている。増幅部21は、上記受光素子3から入力されたアナログの受光信号を、いわゆるオペアンプ等を用いた公知の増幅回路により増幅して出力する。A/D変換部22は、上記増幅部21から出力されたアナログの受光信号をディジタル信号に変換して出力する。
【0034】
波形処理・出力部23は、A/D変換器から出力されたディジタルの受光信号を取り込み、容積脈波の波形解析を行う。解析処理の内容としては、ディジタル受光信号の時間変化を時系列データとして取得し、この取得された時系列データを平滑化してノイズ成分を除去する処理と、このノイズ成分が除去された時系列データを2階微分することで容積脈波の波形の詳細な変化を検出する処理と、この検出された容積脈波の波形の変化に基づいて容積脈波の特徴を検出する処理がある。
【0035】
なお、容積脈波の特徴を検出する処理としては、例えば医学診断分野であれば生体の血管の硬化度合いを検出することや、時系列データのピークを検出してこの検出されたピークの間隔から脈拍間隔を検出すること、時系列データの周期性を検出してこの検出された周期性から生体が安静状態であるかどうかを判定すること等が考えられる。また、テレビジョン装置等のリモートコントローラを使用した情報入力の技術分野であれば、容積脈波の波形データから特徴量ベクトルを抽出し、この抽出した特徴量ベクトルが確率分布に従うものとしてとらえてクラスタリング処理を行う。そして、このクラスタリング処理の結果をもとにユーザを認識する処理等が考えられる。なお、容積脈波の特徴を検出する処理の用途は、これらのみに限定されるものでなくその他の用途でもよい。
【0036】
次に、以上のように構成された生体情報検出装置のうち、光検出ユニット100の動作を説明する。
プリズム2の入射面2aからプリズム2内に入射された発光素子1のセンサ光4は、例えば図3(a)に示すように、プリズム2内でそのセンサ面2bと下面との間で全反射を繰り返しながら出射面2cに到達し、この出射面2cから出射されて受光素子3により受光される。
【0037】
このとき、センサ光4を全反射させるための条件は以下のように定義される。すなわち、プリズム2のセンサ面2b又は下面から外部の空気層へセンサ光4が出射する際の臨界角θは、プリズム2の屈折率をn1、空気の屈折率をn2とすると、反射の法則を用いて以下の式で計算される。
θ=arcsin(n2/n1) …(1)
そして、プリズム2として先に述べた屈折率n1=1.49のアクリル樹脂を用いたとすれば、空気の屈折率n2=1であるから、上記(1)よりθ=42.155°と算出される。すなわち、プリズム2のセンサ面2bおよびその下面に対しこのθ=42.155°より小さい角度でセンサ光4が入射するよう、プリズム2の内部にセンサ光4を入射すれば、入射されたセンサ光4はプリズム2のセンサ面2b又は下面から外部へ漏出することなく全反射を繰り返して出射面2cまで伝達されることになる。
【0038】
さて、この状態で例えば図3(b)に示すように、被検査者が生体部位7としての自身の指先をプリズム2のセンサ面2bの任意の位置Pに接触させたとする。このとき、プリズム2のセンサ面2bから生体部位7へセンサ光4が出射する際の臨界角θ′は、生体部位7(皮膚)の屈折率n3を1.35とすると、
θ′=arcsin(n3/n1) …(2)
より、θ′=64.964°と算出される。なお、生体部位の皮膚の屈折率が1.35であることは、例えば上田豊甫、「経皮導入機器を用いた皮膚透過性の研究」、2007年、明星大学研究成果報告会に詳しく記載されている。
【0039】
したがって、プリズム2の上面(センサ面)2bの位置Pに生体部位7を接触させると、プリズム2内のセンサ光4のうち上記位置Pに対し64.964°〜90°の入射角で入射する光成分4pbについては、接触前の(a)のときと同様に全反射するが、プリズム2内で42.155°〜64.964°の角度で上記接触位置Pに入射する光成分4paは、全反射せずにプリズム2のセンサ面2bから外部へ漏出して生体部位7に照射され、散乱光5となる。
【0040】
散乱光5の光量は、血液中のヘモグロビン量に応じて変化する。これは、血液中のヘモグロビンは赤外光を吸収する性質があるため、生体部位7の内部に存在する末梢血管の容積変化に応じて、生体部位7の外部へ散乱する光量と、吸収される光量の割合が変化するためである。散乱光5のうちその一部である光成分6は、プリズム2の内部へセンサ面2bから再び入射したのちプリズム2の内部で全反射してセンサ光4の一部となり、出射面2cから出射されて受光素子3で受光される。なお、プリズム2内に再入射後にセンサ光4の一部となる光成分6とは、プリズム2の内部の上面及び下面に対する入射角が上述した42.155°より大きい成分である。
【0041】
上記したように、センサ光4の一部に含まれる光成分6の光量は生体部位7中の血液容積に応じて変化する。このため、受光素子3から出力される受光信号の信号レベルも、上記生体部位7中の血液容積の変化が反映された値となる。ここで、生体部位7の中の血液容積は心臓の拍動によって時間的に変化する。このため、上記受光信号の信号レベルの時間変化は容積脈波の波形を表すものとなり、この波形より生体の血管の硬化度合いや脈拍間隔、その周期性等を判定することが可能となり、また容積脈波の波形データの特徴からユーザを認識することが可能になる。
【0042】
(実施例2、3)
プリズム2の形状としては、実施例1として図1に示した短冊状をなす長方形板以外に、例えば図2(a)の実施例2に示すようにセンサ面2bが曲面に形成されたものであってもよく、また図2(b)の実施例3に示すように円柱形状としてその側面をセンサ面2bとして使用するものでもよい。要するに、プリズム2内部においてセンサ光4が全反射し、生体部位が接触している位置ではその一部がプリズム2の外部へ漏出し、さらに生体部位に散乱した散乱光が内部へ再入射し、再び内部で全反射する特性を保持した形状であれば、プリズム2の形状は如何なるものであってもよい。
【0043】
(実施例4)
さらに、プリズム2へのセンサ光4の入射角は、プリズム2内に入射したセンサ光4がセンサ面2bのできる限り広い領域で全反射するように設定することが望ましい。このため、発光素子1の配置及び構成として、例えば図4(a)〜(d)の実施例4に示すものが考えられる。
【0044】
先ず図4(a)に示すものは、発光素子1として指向角が比較的広いものを用いることでプリズム2のセンサ面2bに対し入射角を大きく設定したものである。次に図4(b)に示すものは発光素子1をプリズム2のセンサ面2bに対して角度を持たせて配置したものであり、図4(c)に示すものはプリズム2の入射面2aをセンサ面2bに対して垂直ではない角度に設定したものである。また、図4(d)に示すものは、発光素子1とプリズム2の入射面2aとの間に光を拡散させる機能を持ったフィルタ1aを設けるようにしたものである。要するに、プリズム2内に入射されたセンサ光4がセンサ面2b上で位置によらず全反射するように、発光素子1の配置や構成を決定すればよい。
また、発光素子1として使用される発光ダイオード(LED)には指向角が8°〜15°程度のものが考えられるが、これより指向角度が狭いものでも、また広いものであってもよく、この数値で指定した範囲に限定されるものではない。
【0045】
(実施例5)
図5は、第1の実施形態に係る生体情報検出装置における光検出ユニット100の実施例5の構成を示すものである。この実施例5は、プリズム2の出射面2cと受光素子3との間に集光レンズ8を配置したものである。このように構成すると、受光素子3の受光精度を高めることが可能になる。
【0046】
(実施例6)
図6は、第1の実施形態に係る生体情報検出装置における光検出ユニット100の実施例6の構成を示すものである。この実施例6は、プリズム2の下面にわずかな空気層を介して反射鏡9を配置したものである。
このように構成すると、生体部位7において散乱したのちプリズム2のセンサ面2bからプリズム内に再入射した散乱光のうち、プリズム2の内部で全反射せずにプリズム2の下面から外部へ出射した光4xを上記反射鏡9で反射して再度生体部位7に照射することが可能になる。この結果、生体部位7に対する照射光量を増やして生体情報の取得精度を向上させることができる。
【0047】
(実施例7)
プリズム2のセンサ面2bに対する生体部位7の接触面積を増やすために、プリズム2のセンサ面2bにシリコン等のコーティングを施すようにしてもよい。このようにすると、プリズム2のセンサ面2bから漏出する光量を増加させ、より精度よく生体情報を取得することが可能になる。ただし、その場合の加工はこの例に限定されない。
また、プリズム2のセンサ面2bには外乱光を遮断するための偏光板を設置してもよい。このようにすると、プリズム2の内部に外乱光が侵入することを防ぎ、より精度よく生体情報を取得することが可能になる。
【0048】
(実施例8)
図15は、第1の実施形態に係る生体情報検出装置における光検出ユニット100の実施例8の構成を示すものである。実施例1では発光素子1と受光素子3とを対向配置していたのに対し、この実施例8は発光素子1からプリズム2に入射されたセンサ光4を直接受光しない位置に受光素子3を配置したものである。
【0049】
すなわち、図15の構成ではプリズム2の側面部に対向するように受光素子3が配置している。その配置位置として、図15の構成では、生体部位7の接触位置の近傍の側面に1個の受光素子3を配置しているが、プリズム2の側面全体を網羅するように、受光素子3を複数個配置してもよい。なお、発光素子1と受光素子3との位置関係としては直交する関係が考えられるが、これに限定されるものではなく、発光素子1からプリズム2に入射されたセンサ光4のうち、受光素子3に直接入射する光量が小さくなる位置関係であればよい。
【0050】
一例としては、発光素子1からプリズム2に入射されたセンサ光4のうちの主たる光成分が出射するプリズム2の側面2cを除き、プリズム2のその他の側面や上面、下面の中から選んだ面に受光素子3を対向配置する。上記位置関係を決めるための具体的な手法としては、例えばセンサ光4が受光素子3に入射する光量が、受光素子3が検出可能な光量の上限値(ダイナミックレンジ)を超えない位置を選択する手法が考えられる。
【0051】
このように構成すると、生体部位7において散乱したのちプリズム2の内部へ再び入射して当該内部で全反射したのちプリズム2の側面から漏出する光成分6と、プリズム2の側面から漏出する光量の小さいセンサ光4が受光素子3で受光されることになる。このため、出射面2cから出射される光量の大きい主たるセンサ光4は受光素子3では受光されない。
【0052】
ちなみに、実施例1に例示した構成(図1)では、発光素子1からプリズム2内に入射されたセンサ光4の光量が大きく、その結果プリズム2の出射面2cから出射される主たるセンサ光4の光量が、受光素子3が検出可能な光量の上限値(ダイナミックレンジ)を超えてしまうことがある。この場合、受光素子3が飽和してしまい、上記光成分6の光量変化を検出することが困難となる。
【0053】
これに対し実施例8の構成であれば、検出感度を高めるために発光素子1からプリズム2内に入射するセンサ光4の光量を大きく設定した場合でも、上記したように受光素子3では、生体部位7により散乱してプリズムの側面から漏出する光成分6と、プリズム2の側面2c以外の側面から自然に漏出する光量の小さいセンサ光4のみが受光され、光量の大きな主たるセンサ光4は受光されない。このため、受光素子3の飽和を防止して、生体部位7において散乱した光成分6の変化を高感度に検出することが可能となり、これにより生体情報の取得精度が向上する。
【0054】
(実施例9)
図16は、第1の実施形態に係る生体情報検出装置の実施例9の構成を示すものである。なお、図16において前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例9では、実施例1で述べた光検出ユニット100に加え、環境光の変化に応じた環境光信号を出力するための環境光検出ユニット300を新たに設けている。また信号処理ユニット210には、環境光ノイズ除去部24を新たに設けている。
【0055】
環境光検出ユニット300は、光検出ユニット100の使用環境中における光量変化を表す環境光を検出するためのもので、環境光受光素子302を有する。この環境光受光素子302は、その受光面が光検出ユニット100のプリズム2の受光面と同一の面に対向するように配置され、環境光に応じた環境光信号を生成してこの環境光信号を信号処理ユニット210の環境光ノイズ除去部24へ出力する。環境光ノイズ除去部24は、上記環境光検出ユニット300から出力された環境光信号に基づいて、上記光検出ユニット100の受光素子3が送信した受光信号から、環境光由来のノイズ成分を減算して除去する処理を行う。
【0056】
なお、環境光受光素子302は光検出ユニット100の受光素子3と同一の受光素子を用いるか、或いは当該受光素子3と同一又は類似した受光特性を持つものを用いることで、受光素子3が受光する受光信号に含まれる環境光由来のノイズ成分を正確に生成できる。
【0057】
このような構成であるから、光検出ユニット100の使用中に環境光検出ユニット300では、当該光検出ユニット100の使用環境中に発生する環境光と同一の環境光に応じた環境光信号が生成され、信号処理ユニット210の環境光ノイズ除去部24に入力される。そして、環境光ノイズ除去部24において、上記環境光検出ユニット300から出力された環境光信号に基づいて、光検出ユニット100の受光素子3が出力した受光信号から環境光由来のノイズ成分が除去され、この環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号が増幅部21及びA/D変換部22を介して波形処理・出力部23に入力される。このため、波形処理・出力部23では、上記環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号をもとに容積脈波の波形を検出することが可能となる。
【0058】
なお、環境光検出ユニット300には以下のような変形例が考えられる。すなわち、図16では環境光受光素子302のみを設けた場合を例示したが、図17に示すように環境光検出ユニット310を環境光受光素子302と環境光プリズム303とから構成してもよい。環境光プリズム303は、光検出ユニット100のプリズム2と同一の素材で構成されかつ同一の形状及びサイズを有するもので、プリズム2と近接して平行に配置される。また、環境光受光素子302は、上記環境光プリズム303の光出射端に対向配置され、環境光プリズム303内部に入射したのち出射した環境光を受光する。
【0059】
環境光は、プリズム2に入射してプリズム2内を進行した後出射するまでの過程で環境光自身が持つゲインが減少するといった、環境光自身の特性変化が生じる可能性がある。しかし、このように構成することで、プリズム2において発生する環境光の特性変化を環境光プリズム303において再現することが可能となり、これにより環境光由来のノイズ成分をより精度良く除去した良好な受光信号を検出することが可能になる。
【0060】
また、図18に示すように環境光検出ユニット320を、環境光受光素子302と、環境光プリズム303と、環境光発光素子304とから構成してもよい。環境光発光素子304は、環境光プリズム303の光入射端となる面に対向して配置される。環境光発光素子304には、光検出ユニット100の発光素子1と同一種類、或いは同一又は類似した特性を有する素子を使用することが望ましい。
このように構成することで、環境光受光素子302では、光検出ユニット100の受光素子3が検出する受光信号に含まれる環境光の成分と類似した信号を環境光信号として検出することが可能になる。
【0061】
さらに、環境光ノイズ除去部24における除去処理の手段としては、光検出ユニット100から出力された受光信号から環境光検出ユニット300,310又は320から出力された環境光信号を減算する以外に、フィルタリング処理により環境光信号特有の波長成分を除去するものであってもよい。
【0062】
なお、環境光検出ユニット300、310又は320の設置個数は特に限定されず、単一であっても、あるいは複数個の設置であってもよい。複数個を設置する場合には、例えば複数個の環境光検出ユニットが検出した環境光信号を平均することで環境光信号を生成することが考えられる。
【0063】
また、環境光検出ユニット300、310又は320の設置位置は、光検出ユニット100の受光素子3により検出される受光信号に含まれる環境光由来のノイズに近い信号を環境光信号として検出できる位置が望ましく、その例としては光検出ユニット100に隣接する位置に設置することが考えられるが、これに限定されない。
【0064】
以上詳述したように実施例9によれば、例えば生体情報取得装置がテレビジョン受信機等の映像変化により環境光が変動するような環境で使用され、環境光の変動が受光信号にノイズの影響を及ぼすような状況であっても、そのノイズ成分を除去して良好な受光信号を生成することが可能となる。
【0065】
以上詳述したように第1の実施形態では、光検出ユニット100を、短冊状をなす長方形板からなるプリズム2にその入射面2aから発光素子1のセンサ光4を入射し、このセンサ光4がプリズム2内で全反射を繰り返して出射面2cから出射し受光素子3で受光されるように構成している。そして、プリズム2のセンサ面2bに生体部位7が接触した場合に、その接触面における屈折率の変化によりプリズム2から生体部位7にセンサ光4の一部を照射して散乱光5を発生させ、この散乱光5のうちプリズム2内に再入射してプリズム2の内部で全反射する光成分6を生じさせ、そしてこの光成分6を含んだセンサ光4を受光素子3で受光し、その受光信号を信号処理ユニット200に入力することで上記生体部位7の容積脈波の波形を検出するようにしている。
【0066】
したがって、プリズム2のセンサ面2bのどの位置に生体部位7が接触しても、この接触による受光量の変化をもとに生体部位7の容積脈波の波形を検出することが可能となる。このため、生体部位7の位置合わせの制約を大幅に軽減してユーザの操作上の負担を減らすことができる。また、ユーザの操作上の負担を軽減するために多数のセンサを配置する必要もなくなり、これにより装置の部品点数及び回路のチャンネル数の増加を防止して、回路構成の簡単小型化と消費電力の低減を図ることができる。
【0067】
[第2の実施形態]
(実施例1)
この発明の第2の実施形態は、プリズムのセンサ面とは反対側となる面に空気層を隔てて導光板を配置し、この導光板の上面から面発光されたセンサ光を上記プリズムにその下面から入射させる。そして、この状態でプリズムのセンサ面に生体部位が接触したときに、上記センサ光のうちプリズムの端部から出射される光を受光素子で受光し、この受光信号を信号処理ユニットで処理して生体部位の容積脈波の波形の特徴を検出するようにしたものである。
【0068】
図7はこの発明の第2の実施形態に係わる生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例1の構成を示すものである。なお、信号処理ユニット200については第1の実施形態と同一であるため図示を省略している。また、光検出ユニット110についても前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0069】
プリズム2の下面側には、わずかな空気層を隔てて導光板10が対向配置されている。導光板10はその平面寸法がプリズム2と同じサイズに設定され、発光素子1から発光されたセンサ光4をその端面から入射して面発光する面発光センサ光4aに変換し、この面発光センサ光4aを上面から出射してプリズム2の下面に入射させるものである。すなわち、導光板10は液晶ディスプレイのバックライト等で用いられている公知の技術を採用することにより実現される。
【0070】
導光板10から面発光された面発光センサ光4aのプリズム2への入射角は、プリズム2に入射する際に全反射せずにプリズム2の内部へ入射し、プリズム2を通過してそのセンサ面2bから上方へ出射することが可能な角度に設定される。入射角度の一例としては、0°が最適であるが、それ以外の角度、例えば1°〜10°程度のわずかに角度を持たせた角度であってもよい。
【0071】
このような構成であるから、プリズム2のセンサ面2bに生体部位7である指先を接触させると、上記面発光センサ光4aが図8に示すように生体部位7に照射されて散乱する散乱光5が生じる。そして、この散乱光5の一部がプリズム2のセンサ面2bからプリズム2内に入射し、プリズム2内を全反射する光成分6となり、光成分6はプリズム2内を全反射しながらその端部から出射されて受光素子3で受光される。
したがって、この第2の実施形態においても、受光素子3による受光信号を信号処理ユニット200で信号処理することにより、生体部位7の容積脈波の波形の特徴を検出することが可能となる。
【0072】
(実施例2)
図9は、この第2の実施形態に係る生体情報検出装置の実施例2の構成を示すものである。この実施例2は、導光板10の相対向する両端面にそれぞれ発光素子1,1を配置して導光板10内に光を入射し、かつプリズム2の両端面にそれぞれ受光素子3,3を配置してプリズム2の出射光を受光するようにしたものである。受光素子3,3から出力された受光信号は信号処理ユニット200内で合成される。
【0073】
このように構成すると、プリズム2に対する面発光の入射位置によるばらつきを低減し、かつ生体部位7による散乱光の受光量の合計値を増やすことができる。このため、生体部位7をプリズム2のセンサ面2bのどこに接触させても、受光素子3から得られる受光信号の信号レベルを高めることができ、これにより容積脈波の検出精度をより高めることが可能となる。
【0074】
(実施例3)
図10は、この第2の実施形態に係る光検出ユニット110の実施例3の構成を示すものである。この実施例3は、プリズム2の出射面と受光素子3との間に集光レンズ8を配置し、プリズム2の出射面から出射される光成分6を集光レンズ8により集光して受光素子3に受光させるように構成したものである。
このような構成であるから、受光素子3における光成分6の受光量を増やすことが可能となり、これにより信号処理ユニット200における容積脈波の検出精度をさらに高めることが可能となる。
【0075】
(実施例4)
また、プリズム2のセンサ面2bを加工することによって、プリズム2のセンサ2bと生体部位7とが接触する際の接触面積を増やすようにしてもよい。このようにすると、散乱光5の光量を増やして、生体情報の検出精度を向上させることが可能になる。
その一例としては、プリズム2のセンサ面2bにシリコンをコーティングすることが考えられる。さらに、プリズム2のセンサ面2bに特定の角度の外乱光を遮断する偏光板を貼ってもよい。例えば、プリズム2のセンサ面2bに対して垂直に入射する外乱光を遮る性質を持った偏光板を貼ることが考えられる。これにより、散乱光5がプリズム2の内部へ入射することを遮ることなく外乱光の影響を抑え、生体情報の検出精度を向上させることが可能になる。
【0076】
(実施例5)
図19は、第2の実施形態に係る生体情報検出装置の実施例5の構成を示すものである。なお、図19において前記図7と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例5では、実施例1で述べた光検出ユニット110に加え、環境光の変化に応じた環境光信号を出力するための環境光検出ユニット300を新たに設けている。また信号処理ユニット210には、環境光ノイズ除去部24を新たに設けている。
【0077】
環境光検出ユニット300は、光検出ユニット110の使用環境中における光量変化を表す環境光を検出するためのもので、環境光受光素子302を有する。この環境光受光素子302は、その受光面が光検出ユニット110のプリズム2の受光面と同一の面に対応するように配置され、環境光に応じた環境光信号を生成してこの環境光信号を信号処理ユニット210の環境光ノイズ除去部24へ出力する。環境光ノイズ除去部24は、上記環境光検出ユニット300から出力された環境光信号に基づいて、上記光検出ユニット110の受光素子3が送信した受光信号から、環境光由来のノイズ成分を減算して除去する処理を行う。
【0078】
なお、環境光受光素子302は光検出ユニット110の受光素子3と同一の受光素子を用いるか、或いは当該受光素子3と同一又は類似した受光特性を持つものを用いることで、受光素子3が受光する受光信号に含まれる環境光由来のノイズ成分を正確に生成できる。
【0079】
このような構成であるから、光検出ユニット110の使用中に環境光検出ユニット300では、当該光検出ユニット110の使用環境中に発生する環境光と同一の環境光に応じた環境光信号が生成され、信号処理ユニット210の環境光ノイズ除去部24に入力される。そして、環境光ノイズ除去部24において、上記環境光検出ユニット300から出力された環境光信号に基づいて、光検出ユニット110の受光素子3が出力した受光信号から環境光由来のノイズ成分が除去され、この環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号が増幅部21及びA/D変換部22を介して波形処理・出力部23に入力される。このため、波形処理・出力部23では、上記環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号をもとに容積脈波の波形を検出することが可能となる。
【0080】
なお、環境光検出ユニット300には以下のような変形例が考えられる。すなわち、図19では環境光受光素子302のみを設けた場合を例示したが、図20に示すように環境光検出ユニット330を環境光受光素子302と、環境光プリズム303と、環境光導光板305とから構成してもよい。環境光導光板305は、光検出ユニット110の導光板10と同一の素材で構成されかつ同一の形状及びサイズを有するもので、導光板10と近接して平行に配置される。環境光プリズム303は、光検出ユニット110のプリズム2と同一の素材で構成されかつ同一の形状及びサイズを有するもので、プリズム2と近接して平行に配置される。環境光受光素子302は、上記環境光プリズム303の光出射端に対向配置され、上記環境光導光板305から環境光プリズム303内部に入射したのち出射した環境光を受光する。
【0081】
環境光は、導光板10を経たのちプリズム2に入射して当該プリズム2内を進行したのち出射するまでの過程で環境光自身が持つゲインが減少するといった、環境光自身の特性変化が生じる可能性がある。しかし、このように構成することで、導光板10及びプリズム2を通過中に発生する環境光の特性変化を環境光導光板305及び環境光プリズム303において再現することが可能となり、これにより環境光由来のノイズ成分をより精度良く除去した良好な受光信号を検出することが可能になる。
【0082】
また、図21に示すように環境光検出ユニット340を、環境光受光素子302と、環境光プリズム303と、環境光発光素子304と、環境光導光板305とから構成してもよい。環境光発光素子304は、環境光導光板305の光入射端となる面に対向して配置される。環境光発光素子304には、光検出ユニット110の発光素子1と同一種類、或いは同一又は類似した特性を有する素子を使用することが望ましい。
このように構成することで、環境光受光素子302では、光検出ユニット110の受光素子3が検出する受光信号に含まれる環境光の成分と類似した信号を環境光信号として検出することが可能になる。
【0083】
さらに、環境光ノイズ除去部24における除去処理の手段としては、光検出ユニット110から出力された受光信号から環境光検出ユニット300,330又は340から出力された環境光信号を減算する以外に、フィルタリング処理により環境光信号特有の波長成分を除去するものであってもよい。
【0084】
なお、環境光検出ユニット300、330又は340の設置個数は特に限定されず、単一であっても、あるいは複数個の設置であってもよい。複数個を設置する場合には、例えば複数個の環境光検出ユニットが検出した環境光信号を平均することで環境光信号を生成することが考えられる。
【0085】
また、環境光検出ユニット300、330又は340の設置位置は、光検出ユニット110の受光素子3により検出される受光信号に含まれる環境光由来のノイズに近い信号を環境光信号として検出できる位置が望ましく、その例としては光検出ユニット110に隣接する位置に設置することが考えられるが、これに限定されない。
【0086】
以上詳述したように実施例5によれば、例えば生体情報取得装置がテレビジョン受信機等の映像変化により環境光が変動するような環境で使用され、環境光の変動が受光信号にノイズの影響を及ぼすような状況であっても、そのノイズ成分を除去して良好な受光信号を生成することが可能となる。
【0087】
以上詳述したように第2の実施形態に係る光検出ユニット110では、プリズム2のセンサ面2bとは反対側となる面にわずかな空気層を隔てて導光板10を配置し、この導光板10から面発光されたセンサ光を上記プリズム2にその下面から入射させる。そして、この状態でプリズム2のセンサ面2bに生体部位7が接触したときに、上記センサ光のうちプリズム2の端部から出射される光成分6を受光素子3で受光するようにしている。
【0088】
したがって、先に述べた第1の実施形態と同様の作用効果が得られることは勿論のこと、導光部材11から面発光される光がプリズム2に入射されるため、プリズム2のセンサ面のどの位置においても光量を均一にすることが可能となる。このため、生体部位7をプリズム2のセンサ面のどの位置に接触させても均一な受光量の変化を検出することが可能となり、これにより容積脈波の検出結果の接触位置によるばらつきを低減することができる。
【0089】
[第3の実施形態]
(実施例1)
この発明の第3の実施形態は、プリズムのセンサ面に対しわずかな空気層を隔てて透明な弾性部材を配置し、発光素子の光を弾性部材にその端面から入射する。この状体で弾性部材に生体部位が接触したとき、弾性部材の弾性変形により上記入射光が生体部位に照射され、これにより発生した散乱光の一部を弾性部材を介してプリズムに入射させる。そして、この入射光のうちプリズム端部から出射される光を受光素子で受光し、この受光信号を信号処理ユニットで処理して生体部位の容積脈波の波形の特徴を検出するように構成したものである。
【0090】
図11はこの発明の第3の実施形態に係わる生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例1の構成を示すものである。なお、信号処理ユニット200については第1の実施形態と同一であるため図示を省略している。また、光検出ユニット120についても前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0091】
プリズム2の上面には、わずかな空気層を隔てて透明な弾性部材11が対向配置されている。この弾性部材11の一端面には発光素子1が配置され、またプリズム2の一端面には受光素子3が配置されている。発光素子1から出射されたセンサ光4は、図12(a)に示すように弾性部材11内を直進するか、又は弾性部材11内で全反射する。このため、上記センサ光4はプリズム2へは漏出しない。
【0092】
これに対し、弾性部材11の表面に生体部位7である指先を押しつけると、図12(b)に示すように生体部位7は弾性部材11に沈み込み、それによってセンサ光4は生体部位7に照射され、散乱光5が発生する。そして、この散乱光5の一部は弾性部材11を通過してプリズム2の内部へ入射し、さらにその一部である光成分6がプリズム2の内部で全反射を繰り返しながらプリズム2の端面から出射して受光素子3により受光される。
したがって、この第3の実施形態においても、受光素子3による受光信号を信号処理ユニット200で信号処理することにより、生体部位7の容積脈波の波形の特徴を検出することが可能となる。
【0093】
(実施例2)
図13(a)は、この第3の実施形態に係る光検出ユニット120の実施例2の構成を示すものである。この実施例2は、弾性部材11の相対向する両端面にそれぞれ発光素子1,1を配置して弾性部材11内に光を入射し、かつプリズム2の両端面にそれぞれ受光素子3,3を配置してプリズム2の出射光を受光するようにしたものである。受光素子3,3から出力された受光信号は信号処理ユニット200内で合成される。
【0094】
このように構成すると、弾性部材11の内部の位置による光量のばらつきを減らし、かつ生体部位7による散乱光の受光量の合計値を増やすことができる。このため、生体部位7を弾性部材11のどこに接触させても、受光素子3から得られる受光信号の信号レベルを高く維持することができ、これにより容積脈波の検出精度をより高めることが可能となる。
【0095】
(実施例3)
図13(b)は、この第3の実施形態に係る光検出ユニット120の実施例3の構成を示すものである。この実施例3は、弾性部材11の発光素子1が配置された端面とは異なる他の端面に反射鏡12を配置し、弾性部材11の光入射端以外の端面から出射した光を上記反射鏡12により反射させて弾性部材11内に再入射させるように構成したものである。
このような構成であるから、新たな発光素子を設けなくても、弾性部材11内部の位置による光量のばらつきを減らし、受光素子3における光成分6の受光量を増やすことが可能となり、これにより信号処理ユニット200における容積脈波の検出精度をより高めることが可能となる。
【0096】
(実施例4)
図13(c)は、この第3の実施形態に係る光検出ユニット120の実施例4の構成を示すものである。この実施例4は、プリズム2の出射面と受光素子3との間に集光レンズ8を配置し、プリズム2の出射面から出射される光成分6を集光レンズ8により集光して受光素子3に受光させるように構成したものである。
このような構成であるから、受光素子3における出射光の受光量を増やすことが可能となり、これにより信号処理ユニット200における容積脈波の検出精度をさらに高めることが可能となる。
【0097】
(実施例5)
図14は、この第3の実施形態に係る光検出ユニット120の実施例5の構成を示すものである。この実施例5は、プリズム2の下面に対しわずかな空気層を隔てて反射鏡9を対向配置したものである。
このように構成すると、生体部位7により発生した散乱光5のうち、プリズム2を通過してその下面から漏出した光が上記反射鏡9により反射されてプリズム2に再入射する。そして、この再入射された光の一部がプリズム2の端面から出射された受光素子3で受光される。またそれと共に、上記再入射された光の他の一部は弾性部材11を介して生体部位7に再照射される。このため、受光素子3における光成分6の受光量を増やすことが可能となり、これにより信号処理ユニット200における容積脈波の検出精度をさらに高めることが可能となる。
【0098】
(実施例6)
図22は、第3の実施形態に係る生体情報検出装置の実施例6の構成を示すものである。なお、図22において前記図11と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例6では、実施例1で述べた光検出ユニット120に加え、環境光の変化に応じた環境光信号を出力するための環境光検出ユニット300を新たに設けている。また信号処理ユニット210には、環境光ノイズ除去部24を新たに設けている。
【0099】
環境光検出ユニット300は、光検出ユニット100の使用環境中における光量変化を表す環境光を検出するためのもので、環境光受光素子302を有する。この環境光受光素子302は、その受光面が光検出ユニット120のプリズム2の受光面と同一の面に対向するように配置され、環境光に応じた環境光信号を生成してこの環境光信号を信号処理ユニット210の環境光ノイズ除去部24へ出力する。環境光ノイズ除去部24は、上記環境光検出ユニット300から出力された環境光信号に基づいて、上記光検出ユニット120の受光素子3が送信した受光信号から、環境光由来のノイズ成分を減算して除去する処理を行う。
【0100】
なお、環境光受光素子302は光検出ユニット120の受光素子3と同一の受光素子を用いるか、或いは当該受光素子3と同一又は類似した受光特性を持つものを用いることで、受光素子3が受光する受光信号に含まれる環境光由来のノイズ成分を正確に生成できる。
【0101】
このような構成であるから、光検出ユニット120の使用中に環境光検出ユニット300では、当該光検出ユニット120の使用環境中に発生する環境光と同一の環境光に応じた環境光信号が生成され、信号処理ユニット210の環境光ノイズ除去部24に入力される。そして、環境光ノイズ除去部24において、上記環境光検出ユニット300から出力された環境光信号に基づいて、光検出ユニット120の受光素子3が出力した受光信号から環境光由来のノイズ成分が除去され、この環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号が増幅部21及びA/D変換部22を介して波形処理・出力部23に入力される。このため、波形処理・出力部23では、上記環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号をもとに容積脈波の波形を検出することが可能となる。
【0102】
なお、環境光検出ユニット300には以下のような変形例が考えられる。すなわち、図22では環境光受光素子302のみを設けた場合を例示したが、図23に示すように環境光検出ユニット350を環境光受光素子302と、環境光プリズム303と、環境光弾性部材306とから構成してもよい。環境光弾性部材306は、光検出ユニット110の弾性部材11と同一の素材で構成されかつ同一の形状及びサイズを有するもので、弾性部材11と近接して平行に配置される。環境光プリズム303は、光検出ユニット120のプリズム2と同一の素材で構成されかつ同一の形状及びサイズを有するもので、プリズム2と近接して平行に配置される。環境光受光素子302は、上記環境光プリズム303の光出射端に対向配置され、環境光弾性部材306を経て環境光プリズム303内部に入射したのち出射した環境光を受光する。
【0103】
環境光は、弾性部材11を経てプリズム2に入射し、さらにプリズム2内を進行したのち出射するまでの過程で、環境光自身が持つゲインが減少するといった、環境光自身の特性変化が生じる可能性がある。しかし、このように構成することで、弾性部材11及びプリズム2において発生する環境光の特性変化を環境光弾性部材306及び環境光プリズム303において再現することが可能となり、これにより環境光由来のノイズ成分をより精度良く除去した良好な受光信号を検出することが可能になる。
【0104】
また、図24に示すように環境光検出ユニット360を、環境光受光素子302と、環境光プリズム303と、環境光発光素子304と、環境光弾性部材306とから構成してもよい。環境光発光素子304は、環境光弾性部材306の光入射端となる面に対向して配置される。環境光発光素子304には、光検出ユニット100の発光素子1と同一種類、或いは同一又は類似した特性を有する素子を使用することが望ましい。
このように構成することで、環境光受光素子302では、光検出ユニット120の受光素子3が検出する受光信号に含まれる環境光の成分と類似した信号を環境光信号として検出することが可能になる。
【0105】
さらに、環境光ノイズ除去部24における除去処理の手段としては、光検出ユニット100から出力された受光信号から環境光検出ユニット300,350又は360から出力された環境光信号を減算する以外に、フィルタリング処理により環境光信号特有の波長成分を除去するものであってもよい。
【0106】
なお、環境光検出ユニット300、350又は360の設置個数は特に限定されず、単一であっても、あるいは複数個の設置であってもよい。複数個を設置する場合には、例えば複数個の環境光検出ユニットが検出した環境光信号を平均することで環境光信号を生成することが考えられる。
【0107】
また、環境光検出ユニット300、350又は360の設置位置は、光検出ユニット120の受光素子3により検出される受光信号に含まれる環境光由来のノイズに近い信号を環境光信号として検出できる位置が望ましく、その例としては光検出ユニット120に隣接する位置に設置することが考えられるが、これに限定されない。
【0108】
以上詳述したように実施例6によれば、例えば生体情報取得装置がテレビジョン受信機等の映像変化により環境光が変動するような環境で使用され、環境光の変動が受光信号にノイズの影響を及ぼすような状況であっても、そのノイズ成分を除去して良好な受光信号を生成することが可能となる。
【0109】
以上詳述したように第3の実施形態では、プリズム2の上面に対しわずかな空気層を隔てて透明な弾性部材11を配置し、発光素子1の光を弾性部材11にその端面から入射する。この状体で弾性部材11に生体部位7が接触したとき、弾性部材11の弾性変形により上記入射光が生体部位7に照射され、これにより発生した散乱光の一部を弾性部材11を介してプリズム2に入射させる。そして、この入射光のうちプリズム2端部から出射される光成分6を受光素子3で受光するようにしている。
【0110】
したがって、先に述べた第1の実施形態と同様の作用効果が得られることは勿論のこと、生体部位7の接触面を透明な弾性部材11としたことにより、生体部位7の接触による光の散乱をより多く発生させることができ、これにより容積脈波の検出精度をさらに高めることが可能となる。
【0111】
[第4の実施形態]
(実施例1)
この発明の第4の実施形態は、前記第2の実施形態をさらに改良したもので、プリズムのセンサ面とは反対側となる面に対向して面発光源を構成する単一あるいは複数の発光素子を配置し、この単一あるいは複数の発光素子から発光されたセンサ光を上記プリズムにその下面から入射させる。そして、この状態でプリズムのセンサ面に生体部位が接触したときに、上記センサ光のうちプリズムの端部から出射される光を受光素子で受光し、この受光信号を信号処理ユニットで処理して生体部位の容積脈波の波形の特徴を検出するようにしたものである。
【0112】
図25はこの発明の第4の実施形態に係わる生体情報検出装置で使用される光検出ユニットの実施例1の構成を示すものである。なお、信号処理ユニット200については第1の実施形態と同一であるため図示を省略している。また、光検出ユニット130についても前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0113】
プリズム2の下面側には、等間隔で並べられた複数の発光素子1Aが対向配置されている。これらの発光素子1Aは、プリズム2の下面からセンサ光4aを直接入射するもので、その入射角はプリズム2に入射する際に全反射せずにプリズム2の内部へ入射し、プリズム2を通過してそのセンサ面2bから上方へ出射することが可能な角度に設定される。入射角度の一例としては、0°が最適であるが、それ以外の角度、例えば1°〜10°程度のわずかに角度を持たせた角度であってもよい。
【0114】
このような構成であるから、プリズム2のセンサ面2bに生体部位7である指先を接触させると、上記センサ光4aが図8に示したように生体部位7に照射されて散乱する散乱光5が生じる。そして、この散乱光5の一部がプリズム2のセンサ面2bからプリズム2内に入射し、プリズム2内を全反射する光成分6となり、光成分6はプリズム2内を全反射しながらその端部から出射されて受光素子3で受光される。
【0115】
したがって、この第4の実施形態においても、受光素子3による受光信号を信号処理ユニット200で信号処理することにより、生体部位7の容積脈波の波形の特徴を検出することが可能となる。また、面発光源として等間隔に並べられた複数の発光素子1Aを使用したことにより、第2の実施形態で述べたように面発光源として発光素子1と導光板10を使用する場合に比べ、より高照度のセンサ光を効率良くプリズム2に入射させることが可能となる。
【0116】
(実施例2)
図26は、第4の実施形態に係る生体情報検出装置の実施例2の構成を示すものである。なお、図26において前記図25と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例2では、実施例1で述べた光検出ユニット130に加え、環境光の変化に応じた環境光信号を出力するための環境光検出ユニット300を新たに設けている。また信号処理ユニット210には、環境光ノイズ除去部24を新たに設けている。
【0117】
環境光検出ユニット300は、光検出ユニット110の使用環境中における光量変化を表す環境光を検出するためのもので、環境光受光素子302を有する。この環境光受光素子302は、その受光面が光検出ユニット110のプリズム2の受光面と同一の面に対応する位置に配置され、環境光に応じた環境光信号を生成してこの環境光信号を信号処理ユニット210の環境光ノイズ除去部24へ出力する。環境光ノイズ除去部24は、上記環境光検出ユニット300から出力された環境光信号に基づいて、上記光検出ユニット110の受光素子3が送信した受光信号から、環境光由来のノイズ成分を減算して除去する処理を行う。
【0118】
なお、環境光受光素子302は光検出ユニット130の受光素子3と同一の受光素子を用いるか、或いは当該受光素子3と同一又は類似した受光特性を持つものを用いることで、受光素子3が受光する受光信号に含まれる環境光由来のノイズ成分を正確に生成できる。
【0119】
このような構成であるから、光検出ユニット130の使用中に環境光検出ユニット300では、当該光検出ユニット130の使用環境中に発生する環境光と同一の環境光に応じた環境光信号が生成され、信号処理ユニット210の環境光ノイズ除去部24に入力される。そして、環境光ノイズ除去部24において、上記環境光検出ユニット300から出力された環境光信号に基づいて、光検出ユニット130の受光素子3が出力した受光信号から環境光由来のノイズ成分が除去され、この環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号が増幅部21及びA/D変換部22を介して波形処理・出力部23に入力される。このため、波形処理・出力部23では、上記環境光由来のノイズ成分が除去された受光信号をもとに容積脈波の波形を検出することが可能となる。
【0120】
なお、環境光検出ユニット300には以下のような変形例が考えられる。すなわち、図26では環境光受光素子302のみを設けた場合を例示したが、図27に示すように環境光検出ユニット370を、環境光受光素子302と、環境光プリズム303と、等間隔で並べられ面発光源を構成する複数の環境光発光素子304Aとから構成してもよい。各環境光発光素子304Aは、環境光プリズム303の光入射端となる面に対向して配置される。各環境光発光素子304Aには、光検出ユニット130の各発光素子1Aと同一種類、或いは同一又は類似した特性を有する素子を使用することが望ましい。
このように構成することで、環境光受光素子302では、光検出ユニット130の受光素子3が検出する受光信号に含まれる環境光の成分と類似した信号を環境光信号として検出することが可能になる。
【0121】
さらに、環境光ノイズ除去部24における除去処理の手段としては、光検出ユニット130から出力された受光信号から環境光検出ユニット300又は370から出力された環境光信号を減算する以外に、フィルタリング処理により環境光信号特有の波長成分を除去するものであってもよい。
【0122】
なお、環境光検出ユニット300又は370の設置個数は特に限定されず、単一であっても、あるいは複数個の設置であってもよい。複数個を設置する場合には、例えば複数個の環境光検出ユニットが検出した環境光信号を平均することで環境光信号を生成することが考えられる。
【0123】
また、環境光検出ユニット300又は370の設置位置は、光検出ユニット130の受光素子3により検出される受光信号に含まれる環境光由来のノイズに近い信号を環境光信号として検出できる位置が望ましく、その例としては光検出ユニット130に隣接する位置に設置することが考えられるが、これに限定されない。
【0124】
以上詳述したように実施例2によれば、例えば生体情報取得装置がテレビジョン受信機等の映像変化により環境光が変動するような環境で使用され、環境光の変動が受光信号にノイズの影響を及ぼすような状況であっても、そのノイズ成分を除去して良好な受光信号を生成することが可能となる。
【0125】
以上詳述したように第4の実施形態に係る光検出ユニット130では、プリズム2のセンサ面2bとは反対側となる面に等間隔で並べられ面発光源を構成する単一あるいは複数の発光素子1Aを配置し、この発光素子1Aから発光されたセンサ光を上記プリズム2にその下面から直接入射させる。そして、この状態でプリズム2のセンサ面2bに生体部位7が接触したときに、上記センサ光のうちプリズム2の端部から出射される光成分6を受光素子3で受光するようにしている。
【0126】
したがって、先に述べた第1の実施形態と同様の作用効果が得られることは勿論のこと、発光素子1Aから発光されたセンサ光がプリズム2に直接入射されるため、プリズム2のセンサ面のどの位置においても光量を十分なレベルで均一にすることが可能となる。このため、生体部位7をプリズム2のセンサ面のどの位置に接触させても均一な受光量の変化を検出することが可能となり、これにより容積脈波の検出結果の接触位置によるばらつきを低減することができる。
【0127】
[その他の実施形態]
前記第1乃至第3の各実施形態では、発光素子1を設け、この発光素子1が発生したセンサ光4をプリズム2等に入射するようにした。しかし、十分な光量の自然光又は室内光が得られる環境下で使用する場合には、上記自然光又は室内光をセンサ光4として使用するようにしてもよい。このようにすると、発光素子1を不要にすることができ、その分部品点数を削減して装置の簡単小型化、低価格化及び消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0128】
また、前記各実施形態ではいずれも短冊状の長方形板からなるプリズム2を用いた場合を例にとって説明したが、正方形、長方形、円形、楕円形又は多角形の板からなるプリズムを使用してもよい。これを実現するには、プリズム2又は弾性部材11の側面に複数の発光素子1,1を分散配置してプリズム2内にセンサ光を多方向から入射させることにより、プリズム2又は弾性部材11の上面のどの位置に生体部位7を接触させても、生体部位7に対し均一にセンサ光が照射されるように構成すればよい。
【0129】
その他、プリズムの形状、受光素子の種類、信号処理ユニットの構成とその処理内容、容積脈波の用途等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1,1A…発光素子、2…プリズム、2a…入射面、2b…センサ面、2c…出射面、3…受光素子、4…センサ光、4a…面反射センサ光、5…散乱光、6…光成分、7…生体部位、8…集光レンズ、9,12…反射鏡、10…導光板、11…透明な弾性部材、21…増幅部、22…A/D変換部、23…波形処理・出力部、24…環境光ノイズ除去部、100,110,120,130…光検出ユニット、200,210…信号処理ユニット、300,310,320,330,340,350,360,370…環境光検出ユニット、302…環境光受光素子、303…環境光プリズム、304,304A…環境光発光素子、305…環境光導光板、306…環境光弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体部位から容積脈波に関する情報を検出する生体情報検出装置において、
板状又は柱状をなしその第1の側面から入射した光を前記生体部位の接触面となる上面と下面との間で全反射させながら第2の側面に導いてこの第2の側面から外部へ出射するプリズムと、
前記プリズムの第2の側面から出射された光を受光してその受光量に応じた受光信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力された受光信号をもとに、前記プリズムの上面に生体部位が接触したときに発生する前記受光量の変化を検出し、この検出された受光量の変化を表す情報を前記生体部位の容積脈波を表す情報として出力する信号処理部と
を具備することを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項2】
前記プリズム内にその第1の側面から光を入射する発光素子を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記プリズムの第2の側面と前記受光素子との間に配置され、前記第2の側面から出射する光を集光して前記受光素子に受光させる集光光学系を、さらに具備することを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
前記プリズムの下面と接触又は対向する位置に配置され、前記プリズムの下面から漏出した光を反射させて当該下面からプリズム内に再入射させる反射光学系を、さらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項5】
生体部位から容積脈波に関する情報を検出する生体情報検出装置において、
板状又は柱状をなしその第1の側面から入射した光を前記生体部位の接触面となる上面と下面との間で全反射させながら当該入射光の主たる成分を第2の側面に導いてこの第2の側面から外部へ出射するプリズムと、
前記プリズム内にその第1の側面から光を入射する発光素子と、
前記プリズムの上面に生体部位が接触したときに当該生体部位により散乱して前記プリズムの前記第2の側面を除いた面から漏出する光を受光し、その受光量に応じた受光信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力された受光信号をもとに、前記プリズムの上面に生体部位が接触したときに発生する前記受光量の変化を検出し、この検出された受光量の変化を表す情報を前記生体部位の容積脈波を表す情報として出力する信号処理部と
を具備することを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項6】
前記受光素子と同一又は類似する受光特性を有する環境光受光素子を少なくとも有し、前記プリズムから漏出する環境光を受光してその受光信号を出力する環境光受光部を、さらに具備し、
かつ前記信号処理部は、前記環境光受光部から出力された環境光受光信号をもとに、前記受光素子から出力された受光信号から当該受光信号に含まれる環境光の信号成分を除去し、この環境光の信号成分が除去された受光信号を前記受光量の変化を検出するための処理に供する環境光成分除去部を、さらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項7】
生体部位から容積脈波に関する情報を検出する生体情報検出装置において、
面発光する面発光源と、
板状又は柱状をなし、前記面発光源から面発光された光をその下面から導入したのち前記生体部位の接触面となる上面と下面との間で全反射させながら側面に導き、この側面から外部へ出射するプリズムと、
前記プリズムの側面から出射された光を受光してその受光量に応じた受光信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力された受光信号をもとに、前記プリズムの上面に生体部位が接触したときに発生する前記受光量の変化を検出し、この検出された受光量の変化を表す情報を前記生体部位の容積脈波を表す情報として出力する信号処理部と
を具備することを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項8】
前記面発光源は、単一あるいは複数の発光素子により構成されることを特徴とする請求項7記載の生体情報検出装置。
【請求項9】
前記面発光源は、板状をなしその側面から入射した光を上面から面発光させる導光部材により構成されることを特徴とする請求項7記載の生体情報検出装置。
【請求項10】
前記導光部材内にその側面から光を入射する発光素子を、さらに具備することを特徴とする請求項9記載の生体情報検出装置。
【請求項11】
前記プリズムの側面と前記受光素子との間に配置され、前記側面から出射する光を集光して前記受光素子に受光させる集光光学系を、さらに具備することを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項12】
前記受光素子と同一又は類似する受光特性を有する環境光受光素子を少なくとも有し、前記導光部材を経て前記プリズムから漏出する環境光を受光してその受光信号を出力する環境光受光部を、さらに具備し、
かつ前記信号処理部は、前記環境光受光部から出力された環境光受光信号をもとに、前記受光素子から出力された受光信号から当該受光信号に含まれる環境光の信号成分を除去し、この環境光の信号成分が除去された受光信号を前記受光量の変化を検出するための処理に供する環境光成分除去部を、さらに備えることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項13】
生体部位から容積脈波に関する情報を検出する生体情報検出装置において、
板状をなし、生体部位が接触していない状態では側面から入射した光を直進又は上面と下面との間で全反射させ、生体部位が前記上面に接触した状態では前記入射光の生体部位による散乱光を下面から出射する弾性透明部材と、
前記弾性透明部材の下面から出射された散乱光を上面から導入して当該上面と下面との間で全反射させながら側面に導き、この側面から外部へ出射するプリズムと、
前記プリズムの側面から出射された光を受光してその受光量に応じた受光信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力された受光信号をもとに、前記弾性透明部材の上面に生体部位が接触したときに発生する前記受光量の変化を検出し、この検出された受光量の変化を表す情報を前記生体部位の容積脈波を表す情報として出力する信号処理部と
を具備することを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項14】
前記弾性透明部材内にその側面から光を入射する発光素子を、さらに具備することを特徴とする請求項13記載の生体情報検出装置。
【請求項15】
前記プリズムの側面と前記受光素子との間に配置され、前記側面から出射する光を集光して前記受光素子に受光させる集光光学系を、さらに具備することを特徴とする請求項13又は14記載の生体情報検出装置。
【請求項16】
前記プリズムの下面と接触又は対向する位置に配置され、前記プリズムの下面から漏出した散乱光を反射させて当該下面からプリズム内に再入射させる反射光学系を、さらに具備することを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の生体情報検出装置。
【請求項17】
前記受光素子と同一又は類似する受光特性を有する環境光受光素子を少なくとも有し、前記弾性透明部材を経て前記プリズムから漏出する環境光を受光してその受光信号を出力する環境光受光部を、さらに具備し、
かつ前記信号処理部は、前記環境光受光部から出力された環境光受光信号をもとに、前記受光素子から出力された受光信号から当該受光信号に含まれる環境光の信号成分を除去し、この環境光の信号成分が除去された受光信号を前記受光量の変化を検出するための処理に供する環境光成分除去部を、さらに備えることを特徴とする請求項13乃至16のいずれかに記載の生体情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−176225(P2012−176225A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161247(P2011−161247)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2011年3月3日 一般社団法人情報処理学会発行の「情報処理学会シンポジウムシリーズ Vol.2011,No.3 インタラクション2011 論文集」に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】