説明

生体情報測定便器

【課題】洋式便器の排泄物排出機能を低下させることなく、簡便な操作で、高精度の尿量測定を行うことができる生体情報測定便器を提供する。
【解決手段】洋式便器11は、使用者の尿を受けるボール16と、ボール16内を洗浄する給水ノズル24と、大気と区画された接続室26を介してボール16と下水配管35とを連通するとともに下水配管を水封するための溜水W1を貯留するトラップ25と、溢流水位Fを設定するため接続室26内に位置するトラップ25の下水配管側端部に設けられた昇降可能な自由端部25aと、を有している。移動手段28で自由端部25aを上昇させることにより、トラップ25内の溜水水位W1Lと同じ高さにある溢流水位Fを、溜水水位W1Lより高い位置へ移動させた後、ボール16内へ排泄された尿による溜水水位W1Lの変化量をトラップ背圧測定手段33または水位測定手段27で計測して排尿量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器を利用して被験者の排尿量や尿量率などの各種生体情報を測定することのできる生体情報測定便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生体情報測定便器としては、一般の洋式便器に排泄された尿をボール内に回収し、ボール内の溜水の水量が尿によって変化するのを計測して排尿量を算出するものがある。この場合、尿を貯留するスペースをボール内に確保する手段として、ボール内の溜水を予め下げた後、測定開始するという方式が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
一方、従来の洋式便器には、ボール底部の排水口から便器後方へ筒状のトラップ部が延設され、トラップ部後端の自由端部が上下回動可能に支持されたものもある(例えば、特許文献3参照。)。この便器の場合、トラップ部後端の自由端部を下方へ回動させることにより、ボール内に排泄された排泄物は溜水とともに自由端部から下水配管に向けて排出される。
【0004】
【特許文献1】特開平8−299348号公報
【特許文献2】国際公開第2004/113630号パンフレット
【特許文献3】特開2004−293147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載された生体情報測定便器(排泄量測定装置、大便器ユニット)の場合、尿量測定終了時のボール内の溜水は、測定開始水位をトラップの溢流水位よりも下げているため、溜水水位とボール面間の溜水深さ(封水深)が比較的浅くなっており、かつ、排尿後の溜水水位も排尿量によって変化するため、尿量測定終了後、そのままの状態で便器洗浄を行うと、トラップに発生するサイホン現象の強度にバラツキが生じて洗浄不良が生じることがある。即ち、便器のボール面が排泄物の付着で汚れたり、ボール内の排泄物が完全に排出されなかったり、または、排泄物が排出途中で詰まって汚水が便器外に溢れてしまったりすることがある。
【0006】
一方、特許文献3に記載された便器装置の場合、ボール内の溜水は、トラップ部の自由端部を下方へ回動させることにより全て下水配管に向けて排出される方式であるため、排泄された尿をボール内へ貯留して尿量測定を行うことはできない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、洋式便器の排泄物排出機能を低下させることなく、簡便な操作で、高精度の尿量測定を行うことができる生体情報測定便器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体情報測定便器は、
使用者の尿を受けるボールと、前記ボール内を洗浄する洗浄手段と、
大気と区画された接続室を介して前記ボールと下水配管とを連通するとともに前記下水配管を水封するための溜水を貯留するトラップと、
溢流水位を設定するため前記接続室内に位置する前記トラップの下水配管側端部に設けられた移動可能な自由端部と、を有し、
前記自由端部の移動により前記ボール内の排泄物などを前記下水配管へ排出する生体情報測定便器であって、
前記トラップ内の溜水水位と同じ高さにある溢流水位を、前記自由端部を移動させることによって前記溜水水位より高い位置に設定した後、前記ボール内へ排泄された尿による前記溜水水位の変化量を水位測定手段で計測し、
予め記憶された溜水量と溜水水位との関係より、
少なくとも排尿量を含む排尿情報を測定することを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、トラップ内の溜水水位と同じ高さにある溢流水位を、トラップの自由端部を移動させることによって前記溜水水位より高い位置に設定した後、排尿量の測定を行うので、トラップ内の溜水を全く減らすことなく、トラップ内に排泄された尿を貯留する範囲を確保して、尿量測定を行うことができる。このため、尿量測定終了後、そのままの状態で便器洗浄を行っても溜水量は減少していないのだから、便器洗浄に関する不具合が発生せず、洋式便器の排泄物排出機能を低下させることがない。また、トラップの自由端部を移動させるだけで測定開始水位を正確に設定することができるため、簡便な操作で、高精度の尿量測定を行うことができる。
【0010】
また、本発明の生体情報測定便器は、
使用者の尿を受けるボールと、前記ボール内を洗浄する洗浄手段と、
大気と区画された接続室を介して前記ボールと下水配管とを連通するとともに前記下水配管を水封するための溜水を貯留するトラップと、
溢流水位を設定するため前記接続室内に位置する前記トラップの下水配管側端部に設けられた移動可能な自由端部と、を有し、
前記自由端部の移動により前記ボール内の排泄物などを前記下水配管へ排出する生体情報測定便器であって、
前記自由端部を移動させ前記溜水の一部を排出した後に、前記自由端部を元の位置へ復帰させることにより、溢流水位と同じ高さにある前記トラップ内の溜水水位を、前記溢流水位より低い位置に設定した後、前記ボール内へ排泄された尿による前記溜水水位の変化量を水位測定手段で計測し、
予め記憶された溜水量と溜水水位との関係より、
少なくとも排尿量を含む排尿情報を測定することを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、トラップの自由端部を移動、復帰させ溜水の一部を排出することにより、溢流水位と同じ高さにある溜水水位を、前記溢流水位より低い位置に設定することによって、トラップ内に排泄された尿を貯留する範囲を確保して、排尿量の測定を行うことができる。排尿を行って溜水水位が上昇しても、元の溜水排出前の水位を超えないため、排尿後に局部をトイレットペーパーで拭う時に溜水に指が接触する可能性を低減することができ、便器としての衛生性の確保を配慮することができる。また、トラップの自由端部を移動させ、元の位置へ復帰させるだけで測定開始水位を正確に設定することができるため、簡便な操作で、高精度の尿量測定を行うことができる。
【0012】
ここで、前記下水配管内の圧力変動に起因する前記接続室内の圧力変動を計測し、前記圧力変動の計測値に基づいて前記水位測定手段による溜水水位の計測値の補正を行うことが望ましい。このような構成とすれば、下水配管内に圧力変動が生じた場合でも、圧力変動によって変化した溜水水位を、圧力変動のない状態に補正換算することができるため、高精度の尿量測定を行うことができる。
【0013】
また、前記自由端部の開口部を開閉する開閉手段を設け、前記開閉弁で前記開口部を気密状に閉止した状態において、前記ボール内へ排泄された尿による前記溜水水位の変化量を前記水位測定手段で計測することもできる。このような構成とすれば、下水配管内に圧力変動に起因して接続室内の圧力が変動しても、溜水水位が変動しないため、高精度の尿量測定を行うことができる。
【0014】
この場合、前記開閉弁で前記開口部を気密状に閉止したとき前記自由端部内に形成される密閉空間内の圧力変化量を計測することによって前記溜水水位の変化量を計測することができる。このような構成とすれば、トラップ内にある尿混じりの溜水に水位測定手段が接触することなく溜水水位を計測することができる。このため、溜水に含まれる尿成分による水位測定手段の腐食、劣化を防止することができる。
【0015】
一方、前記溜水による前記トラップ内の水圧変化量を測定することによって前記溜水水位の変化量を計測することもできる。このような構成とすれば、トラップの自由端部などに気密状の密閉空間を形成する必要がないので、非清浄空間でシール性を確保するために測定機構が複雑化することを回避することができる。
【0016】
さらに、前記ボール内に投入した水量または前記ボール内から排出した水量を入力するための溜水入力手段を設け、
前記溜水量入力手段に入力された前記水量と、前記水量を投入または排出したときの前記水位測定手段による水位測定値と、に基づいて検量線を設定する検量線作成部を設けることができる。このような構成とすれば、生体情報測定便器をトイレに設置する際に、検量線作成部を使用して溜水水位と溜水量との間の検量線を設定することが可能となる。従って、陶器製であるが故に回避できない洋式便器の製品ごとの寸法のバラツキによる影響を受けることなく、正確な尿量測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、洋式便器の排泄物排出機能を低下させることなく、簡便な操作で、高精度の尿量測定を行うことができる生体情報測定便器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第一実施形態である生体情報測定便器を示す斜視図、図2は図1に示す生体情報測定便器のシステムブロック図、図3は図1に示す生体情報測定便器の垂直断面図、図4は図1に示す生体情報測定便器が待機状態にあるときの垂直断面図、図5は前記生体情報測定便器が尿量測定状態にあるときの垂直断面図、図6は前記生体情報測定便器が便器洗浄開始したときの垂直断面図、図7は前記生体情報測定便器が排出状態にあるときの垂直断面図である。
【0019】
図1,図2に示すように、生体情報測定便器10は、使用者の排泄物を受けて下水に排出する洋式便器11と、尿量測定機などの排尿情報測定ユニット12および制御手段13などが内蔵されたキャビネット14と、洋式便器11の側方壁面に配置された操作・表示部20と、を備えている。洋式便器11は、使用者が着座するための便座15と、ボール16および便座15を開閉可能に覆う便蓋17と、採尿器18aおよび採尿アーム18bを有する採尿ユニット18とを備えている。操作・表示部20は、洋式便器11に設けられた衛生洗浄装置23を操作するためのリモコン19と、排尿情報測定ユニット12を機能させるためのリモコン21と、排尿情報測定データを印刷するためのプリンタ22と、を備えている。制御手段13には、検量線記憶手段38,排尿情報演算手段39、情報記憶手段40が設けられ、溜水水位補正手段41が接続されている。なお、採尿ユニット18および衛生洗浄装置23は、本発明に係る生体情報測定便器を構成する必須要件ではない。
【0020】
図2,3に示すように、洋式便器11は、使用者の尿を受けるボール16と、ボール16内を洗浄する給水手段34を構成する給水ノズル24と、大気と区画された接続室26を介してボール16と下水配管35とを連通するとともに、便器洗浄時以外は下水配管35との連通を滞留水で遮断する水封を行なうための溜水W1を貯留するトラップ25と、溢流水位Fを設定するため接続室26内に位置するトラップ25の下水配管35側端部に設けられた移動可能な自由端部25aと、を有し、この自由端部25aを移動手段28で移動させることによりボール16内の排泄物などを下水配管35へ排出したり、測定開始水位を設定したりする。
【0021】
トラップ25の自由端部25aは可撓性を有する管材で形成され、接続室26内に移動可能に配置されており、トラップ位置検出手段37でその位置を検出しながら、移動手段28により移動される。接続室26の天井部には、自由端部25aの開口部25bを開閉する排水管路開閉手段29が設けられ、排水管路開閉手段29を貫通して配管された通気管30の上部に三方弁31が取り付けられている。三方弁31には、トラップ背圧測定手段33および大気連通管32が取り付けられ、切替機構31aにより、通気管30とトラップ背圧測定手段33とを連通させたり、トラップ背圧測定手段33と大気連通管32とを連通させたりすることができる。
【0022】
本実施形態の生体情報測定便器10においては、トラップ25内の溜水W1と同じ高さにある溢流水位Fを、移動手段28で自由端部25aを上昇させることによって溜水水位W1Lより高い位置へ移動させた後、ボール16内へ排泄された尿による溜水水位W1Lの変化量を、トラップ背圧測定手段33または水位測定手段27で計測して排尿量を測定する。トラップ背圧測定手段33は気圧センサである。また、図3に示す水位測定手段27は、溜水W1の水位によって生じる水頭圧を圧力センサで計測して相当する水位を求めるものである。
【0023】
ここで、図4〜図7を参照しながら、尿量測定手順について説明する。図4に示すように、洋式便器11が待機状態にあるとき、トラップ25の自由端部25aは接続室26において開口部25bを上に向けた傾斜状態にあり、開口部25bは排水管路開閉手段29から離れて傾斜姿勢をとっている。このとき、トラップ25内の溜水W1の溢流水位Fは、開口部25bの低位側の周縁部25cの高さ位置によって設定される。この状態で、三方弁31の切替機構31aを作動させ、トラップ背圧測定手段33と大気連通管32とを連通させて、その時の気圧を圧力センサの計測基準にする大気圧校正を行った後、再び切替機構31aを作動させ、通気管30とトラップ背圧測定手段33とを連通させておく。
【0024】
次に、洋式便器11において尿量測定開始するときは、図5に示すように、移動手段28がトラップ25の自由端部25aを上昇させることによって溢流水位Fを溜水水位W1Lより高い位置へ移動させる。このとき、自由端部25aの開口部25bは排水管路開閉手段29に密着して気密状に閉止され、これによって自由端部25a内に気密状の密閉空間25dが形成される。
【0025】
図5に示す状態において、使用者がボール16内へ排尿すると、溜水W1に流入する尿により、測定開始水位である溜水水位W1Lが上昇し、自由端部25a内に形成された密閉空間25dの圧力が増加する。このときの圧力をトラップ背圧測定手段33で計測し、その圧力を溜水水位変換手段51で溜水の水位に換算することにより溜水水位W1Lが計測される。このようにして求められた排尿による溜水水位W1Lの変化データが排尿情報測定ユニット12の制御手段13へ送信される。制御手段13においては、送られたデータと検量線記憶手段38の記憶データとに基づいて、排尿情報演算手段39が少なくとも排尿量を含む排尿情報を算出し、その測定値が操作・表示部20に表示されるとともに、情報記憶手段40に記憶される。
【0026】
なお、トラップ25内の溜水W1に流入する尿によって上昇したときの溜水水位W1Lをトラップ背圧測定手段33ではなく、水位測定手段27で求めることによって溜水水位W1Lの変化量を計測し、尿量値を算出することもできる。
【0027】
また、本実施形態の変形例として、自由端部25aの開口部25bが排水管路開閉手段29で閉止されていなくても溜水W1の水位変化を計測することができる。このように、開口部25bが開放状態にあるときは、下水配管35内の圧力変動によって接続室26内の圧力が変動するにともなって溜水水位も変動する。そこで、図5に示すように、接続室26内の圧力変動を計測する気圧センサ42を設け、この気圧センサ42の計測値に基づき、溜水水位補正手段41(図2参照)において水位測定手段27による溜水水位W1Lの計測値を常に圧力変動がない状態の換算水位に補正を行えば、下水配管35内に圧力変動が生じた場合でも、高精度の尿量測定を行うことができる。この場合、気圧センサ42の代わりに前述したトラップ背圧測定手段33の圧力センサを使用して接続室26内の圧力変動を計測するような構成としても良い。
【0028】
排水路開閉手段29を閉止した場合、密閉空間25d内部の空気は排尿に伴って圧縮されることになるが、ヒトの排尿量程度の溜水量変化で密閉空間25dの容積はほとんど変化せず、ボール16の溜水量変化は、そのまま投入された尿量による体積変化ということになる。対して、前述の排水路開閉手段29を閉止せずに、水位測定手段27の測定値を接続室26内の圧力で補正する場合、トラップ25内部の自由水面位置が排尿量と下水圧変動の圧力バランスによって変化するため、測定される溜水水位と溜水量の検量関係は、前記排水路開閉手段29の有無で異なることになる。同じ水位測定手段27を使用しても、排水路開閉手段29の有無で検量関係は異なるものになるため、測定方法にマッチした方法で収集された検量関係を使用する必要がある。
【0029】
尿量測定が終わると、図6に示すように、移動手段28によって自由端部25aが下降して開口部25bが排水管路開閉手段29から離れた後、給水ノズル24からボール16内へ洗浄水が供給される。給水ノズル24からの給水開始から一定時間経過すると、移動手段28が作動して、図7に示すように、開口部25bがほぼ真下を向くまで自由端部25aを下降させる。これによって、トラップ25内にある尿混じりの溜水W1は開口部25bから下水配管35(図2参照)に向かって排出される。この状態で排泄物の排出が完了すると、再び移動手段28が作動して、開口部25bが図4に示す待機状態になるまで自由端部25aを上昇させる。同時に、給水ノズル24からの給水が引き続き行われ、一定時間経過後、停止されるため、トラップ25内には一定量の溜水W1が貯留されて下水配管に対して封止され、下水配管から悪臭や衛生害虫がトイレ内に侵入することに対する衛生性を確保し、通常の待機状態に復帰する。
【0030】
次に、図1,図3および図8を参照しながら、本実施形態の生体情報測定便器10の動作について説明する。図8は図1に示す生体情報測定便器の動作シーケンスを示す図である。図8に示すように、使用者が生体情報測定便器10が配置されたトイレ内に入室してリモコン21に対して準備操作を行うと、移動手段28が作動して自由端部25aが測定位置まで上昇し、開口部25bが排水管路開閉手段29によって気密状に閉止される(図5参照)。準備操作が完了するとリモコン21に準備完了報知が示されるので、使用者は脱衣して、便座15上に着座し、ボール16に向かって排尿を開始する。
【0031】
使用者の尿がトラップ25内の溜水W1に流入すると、その水位W1Lが上昇することにより、自由端部25a内の密閉空間25d内の圧力が増加するので、前述したように、トラップ背圧測定手段33がその変化量を計測する。排尿が終了し、使用者がリモコン21に対して終了操作を行うと、測定値がリモコン21の表示部に表示されるとともに、移動手段28が作動して自由端部25aが待機位置まで下降し、開口部25bが排水管路開閉手段29から離れる(図6参照)。このとき、リモコン21に所定の出力操作を行うと、測定値が印字された紙片がプリンタ22(図1参照)から出力される。また、電子情報は情報記憶手段40に記憶される。情報記憶手段40は、IDカードや半導体メモリーの他、本装置が設置された医療機関の院内LANを介してサーバーに情報を伝送するものであっても良い。
【0032】
この後、便器洗浄操作を行うと、トラップ給水手段である給水ノズル24からボール16へ洗浄水が供給され、一定時間経過すると、移動手段28が作動して開口部25bが下向きになるまで自由端部25aが下降する(図7参照)。これによってトラップ25内の尿混じりの溜水W1が下水配管へ排出される。この状態で排泄物の排出が完了すると、再び移動手段28が作動して、図4の状態まで自由端部25aを上昇させる。同時に、給水ノズル24からの給水が引き続き行われ、一定時間経過した後、停止されるため、トラップ25内には一定量の溜水W1が貯留されて下水配管に対して封止され、下水配管から悪臭や衛生害虫がトイレ内に侵入することに対する衛生性を確保し、通常の待機状態に復帰する。このような一連の動作は自動的に行われるため、使用者は便器洗浄操作を行った後、トイレから自由に離室することができる。
【0033】
以上のように本実施形態の生体情報測定便器10においては、トラップ25内の溜水水位W1Lと同じ高さにある溢流水位Fを、トラップ25の自由端部25aを上昇させることによって溜水水位W1Lより高い位置へ移動させた後、排尿量の測定を行うので、トラップ25内の溜水W1を全く減らすことなく、尿量測定を行うことができる。このため、尿量測定終了後、そのままの状態で便器洗浄を行っても便器内の溜水量が減少していることに伴う洗浄不良や便器ボール面の汚れが発生せず、洋式便器11の排泄物排出機能を低下させることがない。また、トラップ25の自由端部25aを上昇させるだけで測定開始水位を正確に設定することができるため、簡便な操作で、高精度の尿量測定を行うことができる。
【0034】
さらに、本実施形態の生体情報測定便器10においては、洋式便器11のボール16が空の状態から、ボール16内に投入した水量を入力するための溜水量入力手段(図示せず)を設け、この溜水量入力手段に入力された前記水量と、前記水量を投入したときの水位測定手段27による水位測定値と、に基づいて検量線を作成する検量線作成部(図示せず)を設けている。そして、検量線作成部によって作成された検量線は制御手段13の検量線記憶手段38に記憶され、その後の尿量測定に供される。
【0035】
従って、生体情報測定便器10をトイレに設置する場合、検量線作成部を使用して当該洋式便器11に応じた正確な検量線を設定することができる。このため、陶器製であるが故に回避できない洋式便器11の製品ごとの寸法のバラツキによる影響を受けることなく、正確な尿量測定を行うことができる。なお、ボール16内から排出した水量を入力するための溜水量入力手段を設け、溜水量入力手段に入力された前記水量と、前記水量を排出したときの水位測定手段27による水位測定値と、に基づいて検量線を設定する検量線作成部を設けることもできる。尚、溜水量入力手段による所定水量の投入や排出は自動的に行うだけでなく、作業者が手動で実施し、都度、記憶させるような方法をとっても良い。この場合、作業自体に手間は増えるが、製品コストの低減を図れるという効果を期待することができる。
【0036】
次に、図9〜図14を参照し、本発明の第二実施形態である生体情報測定便器について説明する。図9は本発明の第二実施形態である生体情報測定便器を示す斜視図、図10は前記生体情報測定便器のシステムブロック図、図11は図9に示す生体情報測定便器を構成する洋式便器が待機状態にあるときの垂直断面図、図12は前記生体情報測定便器が測定準備状態にあるときの垂直断面図、図13は前記生体情報測定便器が尿量測定状態にあるときの垂直断面図、図14は前記生体情報測定便器が排出状態にあるときの垂直断面図である。
【0037】
図9,図10に示すように、生体情報測定便器50は、洋式便器11と、尿量測定機などの排尿情報測定ユニット12および制御手段13などが内蔵されたキャビネット14と、洋式便器11の側方壁面に配置された操作・表示部20と、を備えている。洋式便器11は、使用者が着座するための便座15と、ボール16および便座15を開閉可能に覆う便蓋17と、採尿器18aおよび採尿アーム18bを有する採尿ユニット18とを備えている。操作・表示部20は、洋式便器11に設けられた衛生洗浄装置23を操作するためのリモコン19と、排尿情報測定ユニット12を機能させるためのリモコン21と、排尿情報測定データを印刷するためのプリンタ22と、を備えている。制御手段13には、検量線記憶手段38,排尿情報演算手段39、情報記憶手段40が設けられ、溜水水位補正手段41が接続されている。なお、採尿ユニット18や衛生洗浄装置23は、本発明に係る生体情報測定便器50を構成するための必須要件ではない。
【0038】
図11に示すように、洋式便器11は、使用者の尿を受けるボール16と、ボール16内を洗浄する給水手段34(図10参照)を構成する給水ノズル24と、大気と区画された接続室26を介してボール16と下水配管35とを連通するとともに下水配管35を水封するための溜水W2を貯留するトラップ25と、溢流水位F1を設定するため接続室26内に位置するトラップ25の下水配管35側端部に設けられた昇降可能な自由端部25aと、を有している。この自由端部25aを移動手段28で昇降させることによりボール16内の排泄物などを下水配管35へ排出したり、測定開始水位を設定したりする。図10に示すように、接続室26と下水配管35とは排水ソケット36を介して接続されている。
【0039】
トラップ25の自由端部25aは可撓性を有する管材で形成され、接続室26内に昇降可能に配置されており、トラップ位置検出手段37でその位置を検出しながら、移動手段28により昇降移動される。接続室26の天井部には、自由端部25aの開口部25bを開閉する排水管路開閉手段29が設けられ、排水管路開閉手段29を貫通して配管された通気管30の上部に三方弁31が取り付けられている。三方弁31には、トラップ背圧測定手段33および大気連通管32が取り付けられ、切替機構31aにより、通気管30とトラップ背圧測定手段33とを連通させたり、トラップ背圧測定手段33と大気連通管32とを連通させたりすることができる。
【0040】
本実施形態の生体情報測定便器50においては、移動手段28で自由端部25aを下降させ、溜水W2の一部を排出して溜水W3とした後、自由端部25aを元の位置より高い位置まで上昇させることにより、図11に示す状態で溢流水位F1と同じ高さに位置するトラップ25内の溜水水位W2Lを、溢流水位F1より低い位置へ移動させる。この後、ボール16内へ排泄された尿による溜水水位L1の変化量を水位測定手段27またはトラップ背圧測定手段33で計測して排尿量を測定する。水位測定手段27は、溜水W3の水圧を計測可能な水圧センサであり、トラップ背圧測定手段33は気圧センサである。
【0041】
ここで、図11〜図14を参照し、尿量測定手順について説明する。図11に示すように、洋式便器11が待機状態にあるとき、トラップ25の自由端部25aは接続室26において開口部25bを上に向けた傾斜状態にあり、開口部25bは排水管路開閉手段29から離れて傾斜姿勢をとっている。このとき、トラップ25内の溜水W2の溢流水位W2Lは、開口部25bの低位側の周縁部25cの高さ位置によって設定される。この状態で、三方弁31の切替機構31aを作動させ、トラップ背圧測定手段33と大気連通管32とを連通させて、トラップ背圧測定手段33である圧力センサの大気圧校正を行った後、再び切替機構31aを作動させ、通気管30とトラップ背圧測定手段33とを連通させておく。
【0042】
次に、洋式便器11において尿量測定開始するときは、その準備段階として、図12に示すように、移動手段28がトラップ25の自由端部25aを下降させ、溜水W2の一部を排出した後、図13に示すように、自由端部25aを元の位置より高い位置まで上昇させることによって、溜水W3の溜水水位L1を溢流水位F1より低い位置に設定する。このとき、自由端部25aの開口部25bは排水管路開閉手段29に密着して気密状に閉止され、これによって自由端部25a内に気密状の密閉空間25dが形成される。
【0043】
図12に示す溜水水位L1が測定開始水位となるので、この状態において、使用者がボール16内へ排尿すると、溜水W3に流入する尿によって溜水水位L1が上昇する。このとき、溜水W3の水圧変化を水圧センサである水位測定手段27で計測することによって溜水水位L1の変化量を計測し、そのデータが排尿情報測定ユニット12の制御手段13へ送られる。制御手段13においては、送られたデータと検量線記憶手段38の記憶データとに基づいて排尿情報演算手段39が尿量を算出し、その尿量値が操作・表示部20に表示されるとともに、情報記憶手段40に記憶される。
【0044】
この場合、自由端部25aの開口部25bが排水管路開閉手段29で閉止されていなくても溜水W3の水圧変化を計測することができるが、開口部25bが開放状態にあるときは、下水配管35内の圧力変動によって接続室26内の圧力が変動して計測に影響を及ぼすことがある。そこで、図5で示したように、接続室26内の圧力変動を計測する気圧センサ42を設け、この気圧センサ42の計測値に基づき、溜水水位補正手段41(図10参照)において水位測定手段27による溜水水位L1の計測値の補正を行えば、下水配管35内に圧力変動が生じた場合でも、高精度の尿量測定を行うことができる。
【0045】
なお、トラップ25内の溜水W3に流入する尿によって溜水水位L1が上昇したときの溜水W3の水圧変化を、水位測定手段27ではなく、気圧センサであるトラップ背圧測定手段33で計測することにより溜水水位L1の変化量を計測し、少なくとも排尿量を含む排尿情報を算出することもできる。
【0046】
尿量測定が終わると、移動手段28によって自由端部25aが下降して開口部25bが排水管路開閉手段29から離れた後、給水ノズル24からボール16内へ洗浄水が供給される。給水ノズル24からの給水開始から一定時間経過すると、移動手段28が作動して、図14に示すように、開口部25bがほぼ真下を向くまで自由端部25aを下降させる。これによって、トラップ25内にある尿混じりの溜水W3は開口部25bから下水配管35(図10参照)に向かって排出される。排泄物の排出が完了すると、再び移動手段28が作動して、開口部25bが図11に示す状態になるまで自由端部25aを上昇させる。同時に、給水ノズル24からの給水が引き続き行われ、一定時間経過した後、停止されるため、トラップ25内には一定量の溜水W2が貯留されて下水配管に対して封止され、下水配管から悪臭や衛生害虫がトイレ内に侵入することに対する衛生性を確保し、通常の待機状態に復帰する。
【0047】
次に、図9,図10および図15に基づいて、本実施形態の生体情報測定便器50の動作について説明する。図15は図9に示す生体情報測定便器の動作シーケンスを示す図である。図15に示すように、使用者が生体情報測定便器50が設置されたトイレ内に入室してリモコン21に対して準備操作を行うと、移動手段28が作動して自由端部25aが下降し、溜水W2の一部を排出した後、自由端部25aを元の位置より高い位置まで上昇させることにより、溜水W3の溜水水位L1を溢流水位F1より低い位置に設定する(図13参照)。準備操作が完了するとリモコン21に準備完了報知が示されるので、使用者は脱衣して、便座15上に着座するか、起立姿勢のまま、ボール16に向かって排尿を開始する。
【0048】
使用者の尿がトラップ25内の溜水W3に流入すると、その水位L1が上昇することにより、溜水W2の水圧が増加するので、水位測定手段27がその変化量を計測する。排尿が終了し、使用者がリモコン21に対して終了操作を行うと、測定値がリモコン21の表示部に表示されるとともに、移動手段28が作動して自由端部25aが待機位置まで下降し、開口部25bが排水管路開閉手段29から離れる(図11参照)。このとき、リモコン21に所定の出力操作を行うと、測定値が印字された紙片がプリンタ22から出力される。また、電子情報は情報記憶手段40に記憶される。情報記憶手段40は、IDカードや半導体メモリーの他、本装置が設置された医療機関の院内LANを介してサーバーに情報を伝送するものであっても良い。
【0049】
この後、便器洗浄操作を行うと、トラップ給水手段である給水ノズル24からボール16へ洗浄水が供給され、一定時間経過すると、移動手段28が作動して開口部25bが下向きになるまで自由端部25aが下降する(図14参照)。これによってトラップ25内の尿混じりの溜水W3が下水配管へ排出される。排泄物の排出が完了すると、再び移動手段28が作動し、開口部25bが上向きになるまで自由端部25aを上昇させる。同時に、給水ノズル24からの給水が引き続き行われ、一定時間経過した後、停止されるため、トラップ25内には一定量の溜水W2が貯留されて下水配管に対して封止され、下水配管から悪臭や衛生害虫がトイレ内に侵入することに対する衛生性を確保し、通常の待機状態に復帰する(図11参照)。このような一連の動作は自動的に行われるため、使用者は便器洗浄操作を行った後、トイレから自由に離室することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態の生体情報測定便器50においては、溢流水位F1と同じ高さにあるトラップ25内の溜水水位W2Lを、移動手段28で自由端部25aを下降させ、溜水W2の一部を排出して溜水W3とし、自由端部25aを元の位置より高い位置へ復帰させることによって、溢流水位F1より低い位置へ移動させた後、ボール16内へ排泄された尿による溜水水位L1の変化量を水位測定手段27(またはトラップ背圧測定手段33)で計測して排尿量を測定する。
【0051】
従って、排尿を行って溜水水位が上昇しても、元の溜水排出前の水位を超えないように設計仕様を設定すると、排尿後に陰部をトイレットペーパーで拭う時に溜水に指が接触する可能性を低減することができ、便器としての衛生性確保を配慮することができる。また、トラップ25の自由端部25aを下降させ、元の位置より高い位置へ上昇させるだけで測定開始水位を正確に設定することができるため、簡便な操作で、高精度の尿量測定を行うことができる。その他の部分の構造、機能については、前述した生体情報測定便器10と同様である。
【0052】
次に、図16〜図19に基づいて、本発明の第三実施形態である生体情報測定便器について説明する。図16は本発明の第三実施形態である生体情報測定便器が待機状態にあるときの垂直断面図、図17は前記生体情報測定便器が尿量測定状態にあるときの垂直断面図、図18は前記生体情報測定便器が洗浄開始状態にあるときの垂直断面図、図19は前記生体情報測定便器が排出状態にあるときの垂直断面図である。なお、図16〜図19において図1〜図15に示す符号と同符号を付している部分は前述した生体情報測定便器の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0053】
本実施形態の生体情報測定便器においては、図16に示すように、洋式便器11は、使用者の尿を受けるボール16と、ボール16内へ洗浄水を供給する給水ノズル24と、大気と区画された接続室26を介してボール16と下水配管とを連通するとともに下水配管を水封するための溜水W1を貯留するトラップ45と、溢流水位F3を設定するため接続室26内に位置するトラップ45の下水配管側端部に回動可能に設けられた自由端部45aと、を有し、この自由端部45aの開口部45bを移動手段48で昇降させることによりボール16内の排泄物などを下水配管へ排出したり、測定開始水位を設定したりする。本実施形態では、略L形状をした自由端部45aの基端部を移動手段48で回動させることにより開口部45bが接続室26内で昇降する。
【0054】
図16に示すように、洋式便器11が待機状態にあるとき、トラップ45の自由端部45aは接続室26において開口部45bを上に向けた状態にあり、開口部45bは開閉弁49から離れて傾斜姿勢をとっている。このとき、トラップ45内の溜水W4の溢流水位F3は、開口部45bの低位側の周縁部45cの高さ位置によって設定される。
【0055】
次に、洋式便器11において尿量測定開始するときは、図17に示すように、移動手段48がトラップ45の自由端部45aを回動させ開口部45bを真上に向けるとともに、昇降機構47によって下降する開閉弁49が開口部45bに密着して気密状に閉止する。これによって自由端部45a内に気密状の密閉空間45dが形成される。図17に示す状態において、使用者がボール16内へ排尿すると、溜水W4に流入する尿により、測定開始水位である溜水水位W4Lが上昇し、自由端部45a内に形成された密閉空間45dの圧力が増加する。このときの圧力変化をトラップ背圧測定手段33で計測することにより溜水水位W4Lの変化量を計測し、尿量を算出することができる。
【0056】
なお、トラップ45内の溜水W4に流入する尿によって溜水水位W4Lが上昇したときの溜水W4の水圧変化を、トラップ背圧測定手段33ではなく、水圧センサである水位測定手段27で計測することによって溜水水位W4Lの変化量を計測し、尿量値を算出することもできる。
【0057】
尿量測定が終わると、図18に示すように、昇降機構47によって開閉弁49が上昇して開口部45bから排水管路開閉手段29から離れた後、給水ノズル24からボール16内へ洗浄水が供給される。給水ノズル24からの給水開始から一定時間経過すると、移動手段48が作動して、図19に示すように、開口部45bが真下を向くまで自由端部45aを回動させる。これによって、トラップ45内にある尿混じりの溜水W4は開口部45bから下水配管に向かって排出される。排泄物の排出が完了すると、再び移動手段48が作動して、開口部45bが図16に示す状態になるまで自由端部45aを回動させる。同時に、給水ノズル24からの給水が引き続き行われ、一定時間経過後、停止されるため、トラップ45内には一定量の溜水W4が貯留されて下水配管に対して封止され、下水配管から悪臭や衛生害虫がトイレ内に侵入することに対する衛生性を確保し、通常の待機状態に復帰する。
【0058】
次に、図20〜図23に基づいて、本発明の第四実施形態である生体情報測定便器について説明する。図20は本発明の第四実施形態である生体情報測定便器が待機状態にあるときの垂直断面図、図21は前記生体情報測定便器が測定準備状態にあるときの垂直断面図、図22は前記生体情報測定便器が尿量測定状態にあるときの垂直断面図、図23は前記生体情報測定便器が排出状態にあるときの垂直断面図である。なお、図20〜図23において図1〜図15に示す符号と同符号を付している部分は前述した生体情報測定便器の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0059】
本実施形態の生体情報測定便器の構造は図16〜図19で示した生体情報測定便器と同じであるが、測定開始水位の設定の仕方が異なっている。図20に示すように、洋式便器11が待機状態にあるとき、トラップ45の自由端部45aは接続室26において開口部45bを上に向けた状態にあり、開口部45bは開閉弁49から離れて傾斜姿勢をとっている。このとき、トラップ45内の溜水W4の溢流水位F3は、開口部45bの低位側の周縁部45cの高さ位置によって設定される。
【0060】
次に、洋式便器11において尿量測定開始するときは、その準備段階として、図21に示すように、移動手段48がトラップ45の自由端部45aを回動させ開口部45bを下に向けてトラップ45内の溜水W4の一部を排出した後、開口部45bが真上を向く位置まで逆に回動させる。開口部45bが真上を向くと、昇降機構47によって下降する開閉弁49が開口部45bに密着して気密状に閉止する。これによって自由端部45a内に気密状の密閉空間45dが形成される。このとき、トラップ45内には溜水W4よりも若干少ない溜水W5が存在する状態となるため、溜水水位W5Lは、図20の溢流水位F3より低い位置となり、この溜水水位W5Lが測定開始水位となる。
【0061】
図22に示す状態において、使用者がボール16内へ排尿すると、溜水W5に流入する尿により、測定開始水位である溜水水位W5Lが上昇し、自由端部45a内に形成された密閉空間45dの圧力が増加する。このときの圧力変化をトラップ背圧測定手段33で計測することにより溜水水位W5Lの変化量が計測され、尿量が算出される。なお、溜水水位W5Lが上昇したときの溜水W5の水圧変化を、トラップ背圧測定手段33ではなく、水圧センサである水位測定手段27で計測することによって溜水水位W5Lの変化量を計測し、尿量値を算出することもできる。
【0062】
尿量測定が終わると、昇降機構47によって開閉弁49が上昇して開口部45bから排水管路開閉手段29から離れた後、給水ノズル24からボール16内へ洗浄水が供給される。給水ノズル24からの給水開始から一定時間経過すると、移動手段48が作動して、図23に示すように、開口部45bが真下を向くまで自由端部45aを回動させる。これによって、トラップ45内にある尿混じりの溜水W5は開口部45bから下水配管に向かって排出される。排泄物の排出が完了すると、再び移動手段48が作動して、開口部45bが図20に示す状態になるまで自由端部45aを回動させる。同時に、給水ノズル24からの給水が引き続き行われ、一定時間経過後、停止されるため、トラップ45内には一定量の溜水W4が貯留されて下水配管に対して封止され、下水配管から悪臭や衛生害虫がトイレ内に侵入することに対する衛生性を確保し、通常の待機状態に復帰する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の生体情報測定便器は、一般家庭のトイレ、尿量測定を必要とする病院のトイレなどにおいて広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第一実施形態である生体情報測定便器を示す斜視図である。
【図2】図1に示す生体情報測定便器のシステムブロック図である。
【図3】図1に示す生体情報測定便器の垂直断面図である。
【図4】図1に示す生体情報測定便器が待機状態にあるときの垂直断面図である。
【図5】図1に示す生体情報測定便器が尿量測定状態にあるときの垂直断面図である。
【図6】図1に示す生体情報測定便器が便器洗浄開始したときの垂直断面図である。
【図7】図1に示す生体情報測定便器が排出状態にあるときの垂直断面図である。
【図8】図1に示す生体情報測定便器の動作シーケンスを示す図である。
【図9】本発明の第二実施形態である生体情報測定便器を示す斜視図である。
【図10】図9に示す生体情報測定便器のシステムブロック図である。
【図11】図9に示す生体情報測定便器が待機状態にあるときの垂直断面図である。
【図12】図9に示す生体情報測定便器が測定準備状態にあるときの垂直断面図である。
【図13】図9に示す生体情報測定便器が尿量測定状態にあるときの垂直断面図である。
【図14】図9に示す生体情報測定便器が排出状態にあるときの垂直断面図である。
【図15】図9に示す生体情報測定便器の動作シーケンスを示す図である。
【図16】本発明の第三実施形態である生体情報測定便器が待機状態にあるときの垂直断面図である。
【図17】図16に示す生体情報測定便器が尿量測定状態にあるときの垂直断面図である。
【図18】図16に示す生体情報測定便器が洗浄開始状態にあるときの垂直断面図である。
【図19】図16に示す生体情報測定便器が排出状態にあるときの垂直断面図である。
【図20】本発明の第四実施形態である生体情報測定便器が待機状態にあるときの垂直断面図である。
【図21】図20に示す生体情報測定便器が測定準備状態にあるときの垂直断面図である。
【図22】図20に示す生体情報測定便器が尿量測定状態にあるときの垂直断面図である。
【図23】図20に示す生体情報測定便器が排出状態にあるときの垂直断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10,50 生体情報測定便器
11 洋式便器
12 排尿情報測定ユニット
13 制御手段
14 キャビネット
15 便座
16 ボール
17 便蓋
18 採尿ユニット
18a 採尿器
18b 採尿アーム
19,21 リモコン
20 操作・表示部
22 プリンタ
23 衛生洗浄装置
24 給水ノズル
25,45 トラップ
25a,45a 自由端部
25b,45b 開口部
25c,45c 周縁部
25d,45d 密閉空間
26 接続室
27 水位測定手段
28,48 トラップ移動手段
29 排水管路開閉手段
30 通気管
31 三方弁
31a 切替機構
32 大気連通管
33 トラップ背圧測定手段
34 給水手段
35 下水配管
37 トラップ位置検出手段
38 検量線記憶手段
39 排尿情報演算手段
40 情報記憶手段
41 溜水水位補正手段
42 気圧センサ
47 昇降機構
49 開閉弁
51 溜水水位変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の尿を受けるボールと、前記ボール内を洗浄する洗浄手段と、
大気と区画された接続室を介して前記ボールと下水配管とを連通するとともに前記下水配管を水封するための溜水を貯留するトラップと、
溢流水位を設定するため前記接続室内に位置する前記トラップの下水配管側端部に設けられた移動可能な自由端部と、を有し、
前記自由端部の移動により前記ボール内の排泄物などを前記下水配管へ排出する生体情報測定便器であって、
前記トラップ内の溜水水位と同じ高さにある溢流水位を、前記自由端部を移動させることによって前記溜水水位より高い位置に設定した後、前記ボール内へ排泄された尿による前記溜水水位の変化量を水位測定手段で計測し、
予め記憶された溜水量と溜水水位との関係より、
少なくとも排尿量を含む排尿情報を測定することを特徴とする生体情報測定便器。
【請求項2】
使用者の尿を受けるボールと、前記ボール内を洗浄する洗浄手段と、
大気と区画された接続室を介して前記ボールと下水配管とを連通するとともに前記下水配管を水封するための溜水を貯留するトラップと、
溢流水位を設定するため前記接続室内に位置する前記トラップの下水配管側端部に設けられた移動可能な自由端部と、を有し、
前記自由端部の移動により前記ボール内の排泄物などを前記下水配管へ排出する生体情報測定便器であって、
前記自由端部を移動させ前記溜水の一部を排出した後に、前記自由端部を元の位置へ復帰させることにより、溢流水位と同じ高さにある前記トラップ内の溜水水位を、前記溢流水位より低い位置に設定した後、前記ボール内へ排泄された尿による前記溜水水位の変化量を水位測定手段で計測し、
予め記憶された溜水量と溜水水位との関係より、
少なくとも排尿量を含む排尿情報を測定することを特徴とする生体情報測定便器。
【請求項3】
前記下水配管内の圧力変動に起因する前記接続室内の圧力変動を計測し、前記圧力変動の計測値に基づいて前記水位測定手段による溜水水位の計測値の補正を行うことを特徴とする請求項1または2記載の生体情報測定便器。
【請求項4】
前記自由端部の開口部を開閉する開閉手段を設け、前記開閉弁で前記開口部を気密状に閉止した状態において、前記ボール内へ排泄された尿による前記溜水水位の変化量を前記水位測定手段で計測することを特徴とする請求項1または2記載の生体情報測定便器。
【請求項5】
前記開閉弁で前記開口部を気密状に閉止したとき前記自由端部内に形成される密閉空間内の圧力変化量を計測することによって前記溜水水位の変化量を計測することを特徴とする請求項4記載の生体情報測定便器。
【請求項6】
前記溜水による前記トラップ内の水圧変化量を測定することによって前記溜水水位の変化量を計測することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生体情報測定便器。
【請求項7】
前記ボール内に投入した水量または前記ボール内から排出した水量を入力するための溜水入力手段を設け、
前記溜水量入力手段に入力された前記水量と、前記水量を投入または排出したときの前記水位測定手段による水位測定値と、に基づいて検量線を設定する検量線作成部を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の生体情報測定便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−271576(P2007−271576A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100639(P2006−100639)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】