説明

生体情報測定装置

【課題】使用前においても、生体情報を正常に計測できる状態であるか否かを確認することができる生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】在床した就寝者Mにより生じる振動を検知可能に設置された振動検知部1と、振動検知部1の出力に基づいて、就寝者Mの生体情報を算出する生体情報算出部とを備え、就寝者Mが在床した状態における所定期間の振動検知部1の出力に基づいて、振動検知部1の検知状態の良否を判定し、その判定結果を表示部20に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を測定する装置に関し、特に、就寝時における就寝者の生体情報を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠の質の重要の重要性が認められつつある。そのため、睡眠の質を測る目安として就寝者の心臓の拍動の状態や呼吸状態(以下、これらを生体情報と総称する)を測定する生体情報測定装置が提案されている。
【0003】
このような生体情報測定装置は当然ながら睡眠時に使用するものであるため、睡眠中に装置の動作状態を確認することはできない。そのため、測定自体ができていなかったり、測定が記録できていなかったり、といったことが起こり得る。
【0004】
このような問題点を解決するために、例えば、生体の生体情報を計測する生体情報計測手段と、前記生体情報計測手段の計測した生体情報データを記憶し蓄積するデータ蓄積手段と、前記データ蓄積手段のデータ空き領域を検出する空き領域検出手段と、時刻、データ蓄積量及び計測データを表示する表示手段と、前記データ蓄積手段のデータ空き領域が、当該装置の一定の計測期間に蓄積する生体情報データ量を下回ったことを判断してデータ空き領域不足の警告を報知するデータ空き領域警告手段とを備えた生体情報計測装置がある(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1の生体情報計測装置は、計測した生体情報データを記憶蓄積するデータ蓄積手段を備えており、データ特積手段に一定計測期間分の計測データを蓄積するための空き容量がない場合には、警告がなされる。これにより、測定前に蓄積手段の空き容量が十分であるか否かを確認することができ、空き容量不足により計測データが記録されないという不都合を回避することができる。
【0006】
また、外部の機器と通信するための通信手段を有する生体情報測定装置であって、生体の生体情報を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した生体情報と該生体情報を評価するための生体評価情報とを比較して前記生体の状態を判別する生体状態判別手段と、前記生体状態判別手段の判別結果に基づいて、前記生体情報測定装置の電力消費を制御する電力消費制御手段とを有する生体情報測定装置がある(特許文献2参照)。
【0007】
この特許文献2の生体情報測定装置では、電力消費を制御することにより不要な電力消費を抑制することにより、いわゆるバッテリー切れにより生体情報の測定が行えなくなる不都合を回避している。
【0008】
さらに、就寝者の体動に伴う体動信号を検出する体動検出手段と、上記体動信号を所定の確認信号に変換する信号変換手段と、上記体動検出手段によって体動が検出されていることを確認できるように、上記確認信号を出力する信号出力手段とを備え、上記信号出力手段は、上記確認信号を可視化するように該確認信号の入力に伴い発光し、且つ該確認信号の出力レベルに応じて輝度を変更するように構成される一方、周辺の照度を検出する照度検出手段と、上記照度検出手段によって検出された照度に基づいて上記信号出力手段の輝度を補正する輝度補正手段と、を備えている体動判定装置がある(特許文献3参照)。
【0009】
この特許文献3の体動判定装置では、体動の検出状態が可視化されるため、検出状態の良否を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−319233号公報
【特許文献2】特開2008−061663号公報
【特許文献3】特許第4059298号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1、2の装置では、測定結果を確実に記録することはできるものの、正常な測定が行われているか否かを確認することができない。一方、特許文献3の装置では、測定状態の良否を確認することができるものの、実際の使用時にしか確認を行うことができない。すなわち、特許文献3の装置では、就寝者以外の者は測定状態を確認できるが、就寝者自体は確認することができない。そのため、動作状態を確認するためには、他者の協力が必要であり、その他者に不要な負荷を与えることとなり、好ましくない。また、特許文献3の装置では測定状態に応じた発光がなされるため、発光状態が制御されるとはいえ就寝者の睡眠を阻害するという問題は依然として残る可能性がある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用前においても、生体情報を正常に計測できる状態であるか否かを確認することができる生体情報測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の生体情報測定装置は、在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置された振動検知部と、前記振動検知部の出力に基づいて、前記就寝者の心臓の拍動と呼吸との少なくとも一方の状態を示す生体情報を算出する生体情報算出部と、前記就寝者が在床した状態における所定期間の前記振動検知部の出力に基づいて、前記振動検知部の検知状態の良否の判定をする判定部と、前記判定部による判定結果を表示部に表示させることができる表示制御部と、を備えている。
【0014】
この構成の生体情報測定装置は、振動検知部により検知された在床状態の就寝者の振動に基づいて生体情報(心臓の拍動、呼吸の状態等)を求めるものである。一方、所定期間において検知部により検知された在床状態の就寝者の振動に基づいて振動検知部の検知状態の良否が判定され、その判定結果が表示部に表示される。したがって、就寝者は実際の生体情報の測定に先立ち、この判定動作を行うことにより、就寝時において生体情報が測定可能であるか否かを予め知ることができる。また、判定は所定期間に限られているため、睡眠時に判定結果が表示され、睡眠を阻害することもない。
【0015】
様々な原因による微細な振動や振動検知部自身のノイズにより、就寝者が非在床状態であっても、振動検知部は振動の検出信号を検出する可能性がある。したがって、就寝者が在床した状態で検知した振動にもそのノイズが重畳されている可能性がある。そのため、上記判定部による判定はこのノイズを考慮することが望ましい。そのため、本発明の生体情報測定装置の好適な実施形態の一つでは、前記判定部は、前記就寝者が在床した状態における前記振動検知部の出力と、前記就寝者が在床していない状態における前記振動検知部の出力と、に基づいて前記判定を行う。これにより、判定部は振動検知部のノイズを考慮した判定を行うことができる。
【0016】
また、本発明の生体情報測定装置は、在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置された振動検知部と、前記振動検知部の出力に基づいて、前記就寝者の心臓の拍動と呼吸との少なくとも一方の状態を示す生体情報を算出する生体情報算出部と、所定期間の前記生体情報に基づいて、前記振動検知部の検知状態の良否の判定をする判定部と、前記判定部による判定結果を表示部に表示させることができる表示制御部と、を備えている。
【0017】
この構成では、所定期間の就寝者の生体情報に基づいて振動検知部の検知状態の良否が判定され、その判定結果が表示部に表示される。すなわち、この構成では、振動検知部により検出された振動に基づくのではなく、その振動から得られた生体情報に基づいて判定を行っている。したがって、就寝者は実際の生体情報の測定に先立ち、この判定動作を行うことにより、就寝時において生体情報が測定可能であるか否かを予め知ることができる。また、判定は所定期間に限られているため、睡眠時に判定結果が表示され、睡眠を阻害することもない。
【0018】
本発明の生体情報測定装置の好適な実施形態の一つでは、前記振動検知部は、複数の領域毎の前記振動を検知する複数の振動センサにより構成され、前記複数の振動センサのうち最良の検知状態の前記振動センサを選択するセンサ選択部を備え、前記判定部は、前記センサ選択部により選択された前記振動センサの出力から得られる情報に基づいて前記判定を行う。
【0019】
この構成では、振動検知部は複数の振動センサにより構成されており、各々の振動センサは独自に振動の検知信号を出力している。この複数の振動の検知信号に対してセンサ選択部が最良の検知状態の振動センサを選択し、その選択された振動センサの出力から得られる情報に基づいて判定部による判定が行われている。これにより、安定した判定を行うことができる。
【0020】
本発明の生体情報測定装置の好適な実施形態の一つでは、前記生体情報算出部は、各々の前記振動センサの出力に基づいて前記生体情報を算出し、前記センサ選択部は、前記各々の振動センサから算出された生体情報に基づいて前記振動センサの選択を行う。
【0021】
この構成では、各々の振動センサの出力から算出された生体情報に基づいて振動センサの選択が行われるため、生体情報の算出に最も適した信号を出力する振動センサを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】生体情報測定装置の構成図である。
【図2】処理装置の機能部を表す機能ブロック図である。
【図3】生体情報測定装置の初期状態確認の処理の流れを表すフローチャートである。
【図4】通常状態におけるディスプレイに表示される表示例である。
【図5】ディスプレイに表示される初期状態確認画面の例である。
【図6】振動検知部の検知状態の判定結果を示す判定結果表示画面の例である。
【図7】実施例1における判定部の処理の流れを表すフローチャートである。
【図8】実施例2における初期状態確認の処理の流れを表すフローチャートである。
【図9】実施例2における非在床振動データを取得する際に表示する初期状態確認画面の例である。
【図10】実施例2における判定部の処理の流れを表すフローチャートである。
【図11】情報の提示画面の例である。
【図12】情報の提示画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を用いて本発明の生体情報測定装置の実施形態を説明する。図1は、生体情報測定装置の構成図である。図に示すように、本実施形態における生体情報測定装置は、在床する就寝者Mによる振動を検知する振動検知部1および振動検知部1からの出力から就寝者Mの生体情報を求める処理装置10を備えている。この振動検知部1は、就寝者Mの下、または、就寝者Mが用いる寝具(敷布団、マットレス等)の下に設置され、就寝者Mの心臓の拍動や呼吸等に起因する振動を検知する。
【0024】
本実施形態における振動検知部1は、8つの領域における振動を検知するために8つの公知の振動センサ1aを備えており、各々の振動センサ1aからの出力は処理装置10に入力されている。なお、以下の説明では、各振動センサ1aからの出力信号の流れをチャネルと称する。したがって、本実施形態では振動検知部1から処理装置10に対して8チャネルの信号系が形成されている。
【0025】
図1に示すように、処理装置10の前面には各種情報を表示するためのディスプレイ20(表示部の例)およびディスプレイ20の表面に形成されたタッチパネル21を備えている。就寝者M等のユーザは、タッチパネル21を操作することにより、処理装置10に対して指示を与えることができる。また、処理装置10の前面右下隅にはプッシュ式の電源スイッチ22が設けられており、この電源スイッチ22により生体情報測定装置の起動・終了を行うことができる。
【0026】
図2は、処理装置10に備えられている機能部を表す機能ブロック図である。本実施形態では、処理装置10は各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)やメモリを中核としてソフトウェアにより各機能部が構成されているが、各機能部はハードウェアにより構成しても構わないし、ハードウェアとソフトウェアとを協働させて構成しても構わない。
【0027】
図に示すように、処理装置10は、振動センサ1aからの出力信号を取得するセンサ出力取得部11、センサ出力取得部11により取得された出力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部12、8つの振動センサ1aのうち最良のものを選択するセンサ選択部13、センサ選択部13により選択された振動センサ1aに対応するチャネルの出力信号に基づいて振動検知部1の振動の検知状態の良否を判定する判定部14、判定部14により判定結果をディスプレイ20に表示させる表示制御部15を備えている。
【0028】
センサ出力取得部11には、リアルタイムに計測された各振動センサ1aからの8チャネルの出力信号が入力されている。センサ出力取得部11は、入力される出力信号を所定のサンプリング間隔(例えば、1msec)でサンプリングし、A/D変換する。センサ出力取得部11によりA/D変換された8チャネルのデータ(以下、振動データと称する)は、生体情報算出部12および判定部14に送られる。
【0029】
生体情報算出部12は、センサ出力取得部11から振動データを取得し、その振動データに基づいて生体情報を算出する。ここで、生体情報とは、就寝者Mの心臓の拍動の状態や呼吸の状態を表す情報(以下、これらを区別する場合には拍動情報、呼吸情報と称する)である。なお、本実施形態では、生体情報として拍動情報と呼吸情報の双方を算出しているが、いずれか一方のみを用いても構わない。また、本実施形態では8チャネルの振動データのそれぞれから拍動情報および呼吸情報を生成している。したがって、本実施形態では、生体情報として8つの拍動情報と8つの呼吸情報とが得られることとなる。
【0030】
振動データからの生体情報の算出は、フィルタリング処理、例えば、特開2009−112596号公報に開示されている方法等の公知の方法を用いることができる。生体情報算出部12により算出された生体情報は、判定部14に送られる。また、この生体情報は睡眠の質等の判定にも用いることができる。
【0031】
判定部14は、センサ出力取得部11から取得した振動データ、または、生体情報算出部12から取得した生体情報に基づいて、振動検知部1の振動の検知状態の良否を判定する。この検知状態の良否の判定方法は後述する。
【0032】
表示制御部15は、判定部14による判定結果や各種情報を就寝者M等に通知するために、ディスプレイ20への表示を制御する。また、タッチパネル21に対する操作を取得する機能も有している。
【0033】
通常、就寝者Mが入床した場合には振動検知部1の上に位置することとなり、就寝者Mにより生じる振動は振動検知部1に検知される。振動検知部1により検知された振動データは処理装置10に送られ、生体情報算出部12により生体情報が算出される。生体情報算出部12により算出された生体情報は、ディスプレイ20に表示されたり、睡眠の質の判定に用いられたりする。
【0034】
このように、生体情報測定装置は、就寝者Mの睡眠時における生体情報を測定するものである。したがって、実際に生体情報測定装置を使用している状態では、就寝者Mは生体情報が測定されているか否かを知ることができない。そのため、例えば、振動検知部1の設置状態が良くないために、生体情報を測定できないような場合でも、翌朝に測定結果を見るまではそのことを知ることができなかった。そこで、本発明の生体情報測定装置は、初期状態確認機能を備えている。ここで、初期状態確認とは、生体情報測定装置を新たに設置した場合や、振動検知部1の設置状態等を変更した際に、振動検知部1による振動の検知状態の良否、すなわち、正常に生体情報が取得できるか否かの確認である。
【0035】
図3は生体情報測定装置の初期状態確認処理の流れを表すフローチャートである。通常状態、すなわち、日常的に就寝者Mの生体情報を測定する状態では、電源スイッチ22を操作することにより生体情報測定装置を起動させるとディスプレイ20には図4に示すような初期画面30が表示される。
【0036】
図に示すように、初期画面30には表示を切り替えるための4つの表示切替ボタン31および就寝時の生体情報の測定を開始するためのスタートボタン32が表示されている。表示切替ボタン31は、ユーザ情報等の設定変更を行う表示に移行するためのユーザ情報ボタン31a、目覚ましを設定する表示に移行するための目覚まし設定ボタン31b、就寝時の生体情報や睡眠の質等の表示に移行するための結果表示ボタン31c、および、振動検知部1の振動の検知状態の良否を判定する表示に移行するためのセンサチェックボタン31dからなっている。
【0037】
結果表示ボタン31cを操作すると、ディスプレイ20には測定されている生体情報をリアルタイムで表示したり、生体情報等に基づいて判定した睡眠の質を表示したりすることができる。なお、睡眠中にディスプレイ20に生体情報の表示を行うと、良質の睡眠を阻害するおそれがあるため、入床または入眠から一定時間経過した後は、表示を行わない構成としてもよい。
【0038】
一方、初期状態確認を行いたい場合には、就寝者M等のユーザはタッチパネル21を操作し、センサチェックボタン31dをタッチする。これにより、以下の処理が実行される。
【0039】
先ず、表示制御部15はディスプレイ20に対して図5の初期状態確認画面40を表示する(#01)。図に示すように、初期状態確認画面40には就寝者Mに対する指示が表示されるとともに、初期状態確認を開始するためのチェック開始ボタン41が表示されている。これに対して、就寝者Mは入床した状態でタッチパネルを操作し、チェック開始ボタン41を押下する(#02)。このチェック開始ボタン41が押下された旨の情報はセンサ出力取得部11に送られる。
【0040】
チェック開始ボタン41が押下された旨の通知を受けたセンサ出力取得部11は、所定の待機時間(例えば、10秒間)の間待機した後(#04のNo分岐)、振動検知部1からの出力信号から振動データを生成する(#05)。生成された振動データは、生体情報算出部12、センサ選択部13および判定部14に送られる。
【0041】
ここで、センサ出力取得部11が所定の待機時間の間振動データの生成を行わずにいるのは、チェック開始ボタン41が押下された直前は、就寝者Mの姿勢変更に伴う大きな振動が発生していると考えられ、そのような振動に基づいて振動検知部1の振動の検知状態を判定しても十分な精度の判定結果が得られない可能性が高いという理由による。
【0042】
振動データを取得した生体情報算出部12は、取得した8チャネルの振動データに基づいて8チャネルの就寝者Mの拍動情報および呼吸情報を生体情報として生成する(#06)。生成された生体情報はセンサ選択部13および判定部14に送られる。なお、上述したように、本実施形態では振動データはセンサ出力取得部11によりA/D変換された信号となっているため、生体情報算出部12は振動データをデジタル信号処理することにより生体情報を生成する。当然ながら、センサ出力取得部11がA/D変換せずに振動データを出力した場合には、生体情報算出部12はアナログ信号処理により生体情報を生成すればよい。
【0043】
センサ選択部13は、8つの振動センサ1aのうち最良のものを選択する(#07)。ここで、最良とは、生体情報を最も安定して算出できる信号を出力している状態をいう。具体的には、以下の2種類の方法により最良の振動センサ1aを選択し、その振動センサ1aに対応するチャネル番号CH(1〜8のいずれか。以下、最良チャネル番号CHと称する)を判定部14に送る。
【0044】
〔振動データに基づく選択〕
第1の方法は振動データに基づいて最良の振動センサ1aを選択する。まず、センサ選択部13は所定時間範囲の各チャネルの振動データの振幅(上下ピーク値の差)の平均値を求める。この処理を行うためには、過去の振動データをメモリ(図示せず)等に記録しておけばよい。各チャネルの平均値を求めると、平均値が最大となるチャネルに対応する振動センサ1aを最良であると判定する。
【0045】
〔生体情報に基づく選択〕
第2の方法は、生体情報に基づいて最良の振動センサ1aを選択する。この方法では、センサ選択部13は、所定時間範囲の各チャネルの生体情報(拍動情報、呼吸情報)を参照し、拍動情報および呼吸が示す波形のピーク間隔、大きさが一定であるか、また、不連続な範囲(正常な生体情報が求められていない範囲)が存在しないか等に基づいて最良の振動センサ1aを求める。
【0046】
なお、最良の振動センサ1aの選択は、振動データと生体情報とに基づいて決定しても構わない。また、最良の振動センサ1aの選択基準は上述の基準に限定されるものではなく、他の基準を用いても構わない。
【0047】
センサ選択部13は、上述のようにして選択した最良の振動センサ1aに対応するチャネル番号CH(1〜8のいずれか)を最良チャネル番号CHとして判定部14に送る。なお、センサ選択部13は、振動データや生体情報を取得するたびに処理を実行しても構わないし、所定時間毎に最良チャネルの選択を行っても構わない。後者の場合には、所定時間に達するまでは直近の最良チャネル番号CHを出力し続けるように構成すればよい。
【0048】
センサ選択部13から最良チャネル番号CHを取得した判定部14は、その最良チャネル番号CHに対応する振動データ、生体情報の少なくとも一方を記憶しておき、これらの一連の処理(#05〜#07)を所定時間繰り返す(#08のNo分岐)。本実施形態では、上述の待機時間を含め30秒間の測定を行っている。これらの処理により、チェック開始ボタン41の押下から30秒経過すると判定部14には、20秒間の振動データまたは生体情報が記録されることとなる。このような状態で、判定部14は記憶した振動データまたは生体情報に基づいて振動検知部1の振動の検知状態の良否を判定する(#09)。判定部14の判定結果は表示制御部15に送られる。なお、具体的な処理は後述する。
【0049】
判定部14の判定結果を取得した表示制御部15は、ディスプレイ20に判定結果画面50を表示する(#10)。図6(a)および(b)はそれぞれ判定部14により振動検知部1による振動の検知状態が良好および不良である旨の判定結果を受けた際の判定結果画面50の例である。
【0050】
図6(a)に示すように、振動検知部1の検知状態が良好である場合の判定結果画面50には、検知状態が良好である旨のメッセージが表示される。また、就寝者Mの視認性を高めるために検知状態が良好であることを示す記号(この例では二重丸)が大きく表示されている。また、初期画面30に移行させる戻るボタン51も併せて表示されている。
【0051】
一方、図6(b)に示すように、振動検知部1の検知状態が不良である場合の判定結果画面50には、検知状態が不良である旨および対処方法が表示される。また、検知状態が良好である場合と同様に、就寝者の視認性を高めるために検知状態が不良であることを示す記号(この例では×)が大きく表示されている。就寝者Mは、表示された対処方法に従って振動検知部1を設置し直し、再測定ボタン52を押下することにより、初期状態確認画面に移行し、再度上述の初期状態確認処理を実行する。
【0052】
このようにして初期状態確認処理を行い、振動検知部1の検知状態が良好となった状態で生体情報測定装置を用いることにより、確実に就寝中の就寝者Mの生体情報を取得することができる。
【0053】
本発明の生体情報測定装置の初期状態確認処理におけるセンサ選択部13および判定部14の処理にはそれぞれ異なった処理態様が存在する。以下に、これらの処理の内容を具体的に説明する。
【実施例1】
【0054】
本実施例では、判定部14における処理は振動データに基づいて行われる。以下、図7のフローチャートに基づいて処理の流れを説明する。まず、判定部14は所定時間範囲における最良チャネル番号CHの振動データの振幅(上限ピーク値の差)の平均値を求める(#21)。判定部14は、この平均値と所定の閾値THとを比較し(#22)、平均値が閾値THよりも大きければ(#22のYes分岐)、判定結果を良好とする(#23)。一方、平均値が閾値TH以下であれば(#22のNo分岐)、判定結果を不良とする(#24)。
【実施例2】
【0055】
本実施例では、実施例1と同様に判定部14は振動データに基づいて判定を行う。ただし、実施例1では閾値THが固定値であったのに対し、本実施例では閾値THは適応的に変化させている。そのため、初期状態確認処理の流れが上述の実施形態とは若干異なっている。
【0056】
図8は、本実施例における初期状態確認処理の流れを表すフローチャートである。図8のフローチャートは図3のフローチャートに対して、#03の処理が追加されている。#03以外の処理は図3のフローチャートの処理と同様であるため、ここでは#03の処理についてのみ説明する。
【0057】
#03では、就寝者Mが在床しない状態における各振動センサ1aの出力から振動データを生成する(以下、この振動データを非在床振動データと称する)。具体的には、センサチェックボタン31dが押下されると、図9に示す初期状態確認画面60を表示する。上述したように、#03での処理では就寝者Mが在床しない状態での各振動センサ1aの出力を取得する必要があるため、初期状態確認画面60にはその旨を伝えるメッセージが表示されている。
【0058】
チェック開始ボタン41が押下されると、センサ出力取得部11は各振動センサ1aの出力信号から非在床振動データを生成する。生成された非在床振動データは判定部14に送られる。
【0059】
非在床振動データの生成が完了すると、ディスプレイ20に初期状態確認画面40を表示し、#04移行の処理が実行される。
【0060】
次に、図10のフローチャートを用いて本実施例における判定部14の処理の流れを説明する。本実施例における判定部14の処理は、実施例1における判定部14の処理に対して、閾値THを算出する処理(#31)が追加されている。#31の処理では、まず判定部14は取得した非在床振動データの振幅(上下ピーク値の差)の平均値を求める。上述したように、非在床振動データは就寝者Mが在床指定ない状態での振動データである。そのため、理想的な状態では振幅は0となる。しかしながら、振動センサ1aのノイズや様々な原因による微振動のために非在床振動データの振幅は0とはならない。すなわち、非在床振動データはノイズレベルを表していると言える。本実施例では、ここで算出した平均値に対して所定の定数(例えば2)を乗じることにより閾値THを求めている。
【0061】
#32以下の処理では#21以下の処理と同様の処理が行われ、振動検知部1の検知状態が判定される。このようにして閾値THを求めることにより、S/N比に基づく振動検知部1の検知状態の良否を判定することができる。
【実施例3】
【0062】
本実施例では、判定部14における処理は生体情報に基づいて行われる。判定部14における振動検知部1の検知状態の良否の判定は、センサ選択部13における最良の振動センサ1aの選択と同様に、拍動情報および呼吸が示す波形のピーク間隔、大きさが一定であるか、また、不連続な範囲(正常な生体情報が求められていない範囲)が存在しないか等に基づいて判定を行う。
【0063】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、振動検知部1は8つの振動センサ1aを備え、8チャネルの信号系を構成したが、振動センサ1aの数は適宜増減可能である。したがって、振動センサ1aを1つとしても構わず、その場合には、センサ選択部13が不要となり、判定部14はセンサ出力取得部11または生体情報算出部12からの出力に基づいて判定を行えばよい。
【0064】
(2)上述の実施形態おいて、判定部14を備えない構成としても構わない。この場合には、表示制御部がセンサ出力取得部11からの振動データと生体情報算出部12からの生体情報の少なくとも一方をディスプレイ20に表示させ、就寝者M等に振動の検知状態を確認させる。例えば、図11に示すような振動データと閾値TH(図中の横実線)とを重畳表示した振動データ表示画面70を表示することができる。就寝者Mは、この表示から振動データの上下のピークと閾値THとを比較し、振動検知部1の検知状態の良否を確認することができる。なお、この場合には最良の振動センサ1aの振動データのみを表示しても構わないし、全ての振動センサ1aの振動データを切り換え可能に表示しても構わない。
【0065】
また、図12に示すように生体情報を示す生体情報表示画面80を表示することもできる。この例では、拍動情報および呼吸情報に基づく波形が表示されている、就寝者Mは、この表示から各波形のピーク間隔が一定であるか、不連続な範囲(正常な生体情報が求められていない範囲)か等を確認し、振動検知部1の検知状態の良否を確認することができる。
【0066】
なお、図11、12の振動データ表示画面70および生体情報表示画面80には、振動センサ1aの検知状態が不良であると判断した際にその対処法を表示するためのボタン71、81が表示されている。また、図11、12では30秒間の測定が終わった状態で表示を行っているが、計測途中のデータをリアルタイムで表示しても構わない。
【0067】
(3)上述の実施例では、表示部としてディスプレイを用いたが、表示部はこれに限定されるものではなく、他のデバイスを用いても構わない。例えば、LED等の発光装置を表示部として用いることもできる。この場合には、振動検知部1による振動の検知状態に応じて点灯/消灯を切り換えたり、点灯色を異ならせたりすることにより、検知状態を示すことができる。
【0068】
(4)上述の実施形態では、生体情報に基づいて最良の振動センサ1aを選択する際に、拍動情報および呼吸情報に基づいて一の振動センサ1aを選択したが、拍動情報に基づいて最良の振動センサ1aを選択し、呼吸情報に基づいて最良の振動センサ1aを選択しても構わない。この場合には、生体情報算出部12からは、それぞれの最良の振動センサ1aに対応する拍動情報および呼吸情報が出力される。
【0069】
(5)上述の実施形態において、センサ選択部13が各振動センサ1aの出力に基づいて最良の振動センサ1aを選択した場合には、生体情報算出部12は選択された振動センサ1aの出力に基づいて生体情報を算出する構成としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、就寝時等における人の生態情報を測定する生体情報測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
CH:チャネル番号
M:就寝者
1:振動検知部
1a:振動センサ
10:処理装置
11:センサ出力取得部
12:生体情報算出部
13:センサ選択部
14:判定部
15:表示制御部
20:ディスプレイ(表示部)
21:タッチパネル
22:電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置された振動検知部と、
前記振動検知部の出力に基づいて、前記就寝者の心臓の拍動と呼吸との少なくとも一方の状態を示す生体情報を算出する生体情報算出部と、
前記就寝者が在床した状態における所定期間の前記振動検知部の出力に基づいて、前記振動検知部の検知状態の良否の判定をする判定部と、
前記判定部による判定結果を表示部に表示させることができる表示制御部と、を備えた生体情報測定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記就寝者が在床した状態における前記振動検知部の出力と、前記就寝者が在床していない状態における前記振動検知部の出力と、に基づいて前記判定を行う請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置された振動検知部と、
前記振動検知部の出力に基づいて、前記就寝者の心臓の拍動と呼吸との少なくとも一方の状態を示す生体情報を算出する生体情報算出部と、
所定期間の前記生体情報に基づいて、前記振動検知部の検知状態の良否の判定をする判定部と、
前記判定部による判定結果を表示部に表示させることができる表示制御部と、を備えた生体情報測定装置。
【請求項4】
前記振動検知部は、複数の領域毎の前記振動を検知する複数の振動センサにより構成され、
前記複数の振動センサのうち最良の検知状態の前記振動センサを選択するセンサ選択部を備え、
前記判定部は、前記センサ選択部により選択された前記振動センサの出力から得られる情報に基づいて前記判定を行う請求項1から3のいずれか一項に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記生体情報算出部は、各々の前記振動センサの出力に基づいて前記生体情報を算出し、
前記センサ選択部は、前記各々の振動センサから算出された生体情報に基づいて前記振動センサの選択を行う請求項4記載の生体情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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