説明

生体情報計測装置

【課題】被計測部に塗り付ける又は貼り付ける手間や、被計測部の付着物質を拭き取る作業を無くし、かつ同一条件で計測を可能とする取扱いを簡便にすること。
【解決手段】生体情報計測装置は、被検体に対して光を照射したときの被検体からの光に基づいて被検体内の物質を非侵襲的に計測する計測部と、被検体と計測部との間に介在し、被検体と計測部との間をカップリングする帯状のカップリングテープと、カップリングテープを搬送する搬送機構とを具備し、カップリングテープは、帯状に形成されたシート本体と、シート本体に所定間隔毎に設けられ、計測部から照射された光と被検体からの光とを透過するカップリングシートとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体等の被検体内に存在する物質の成分や濃度等、又は生体組織の物性情報を非侵襲的に計測する生体情報計測装置に係わり、生体情報の計測精度向上に用いる被検体との生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば健康管理、疾病の診断及びその治療、或いは美容のために、血液や生体組織細胞中又は生体組織細胞外の体液中の物質濃度、さらには生体組織の光物性情報を非侵襲で計測するのに生体情報計測装置が用いられる。この生体情報計測装置は、例えば生体等の被検体内に可視光線又は近赤外線、中赤外線、遠赤外線等の光を照射し、生体内を透過、反射、散乱した光を受光し、生体内に存在する生体物質の成分濃度等を計測する。このような光を利用した生体情報計測装置は、被検体における被計測部の温度を変化させることで当該被計測部の状態を変化させ、この変化による光学強度の変化に基づいて生体情報を計測する。
【0003】
計測する生体物質の成分濃度等としては、例えばグルコース、コレステロール、中性脂肪、アルブミン等の蛋白成分、ヘモグロビン又はクレアチニンなどの血中成分濃度、酸素や二酸化炭素などの生体内ガス濃度、アルコールや薬物などの濃度である。又、生体情報計測装置は、癌、炎症、皮膚保湿能、動脈硬化等に代表される生体情報の変性に関する情報も非侵襲で測定する。
【0004】
このような生体情報計測装置は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1は、近赤外線の光を利用して非侵襲で血液中のグルコースレベルを計測する技術であって、手首から肘の部分をパッド上に載せ、この手首から肘の部分の皮膚表面にセンサを直接接触させてグルコースレベルを計測することを開示する。
【0005】
生体情報の計測では、例えば生体内を透過した光に基づいて生体情報を効果的に得るために高効率で生体内に光を照射すると共に生体内からの光を受光する必要がある。このために、被検体における被計測部と計測部との間にカップリング部材を配置し、被計測部と計測部との間の光学特性及び熱伝導性を高めている。このカップリング部材としては、被計測部に塗布するタイプと、被計測部に付着させるシール状のタイプとを有する。
【0006】
これらカップリング部材は、塗布するタイプとシール状のタイプとのいずれも生体情報計測装置とは別々に携帯しなければならない。又、計測する際、塗布するタイプのカップリング部材は、被検体の被計測部に塗り付ける作業を行わなければならず、シール状のタイプのカップリング部材は、被検体の被計測部に貼り付ける作業を行わなければならず、いずれのタイプも手間がかかる。
【0007】
カップリング部材を被計測部に塗り付ける又は貼り付ける為、例えばカップリング部材を被計測部に塗り付ける又は貼り付けるときに付着した物質によって被計測部に汚れが生じることがある。被計測部が汚れたままで計測を行うと、被計測部に付着した物質によって生体物質に応じて透過、反射、散乱した光にさらに散乱を生じてしまう。このため、計測結果の精度が低下してしまう。計測結果の精度の低下を防ぐには、被計測部に付着した物質を拭き取る作業をする必要がある。
【0008】
カップリング部材は、塗布するタイプとシール状のタイプとのいずれも同一条件で被計測部に塗布したり、又は貼り付けることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6088605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、被計測部に塗り付ける又は貼り付ける手間や、被計測部の付着物質を拭き取る作業を無くし、かつ同一条件で計測を可能とする取扱いの簡便な生体情報計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明の生体情報計測装置は、被検体に対して光を照射したときの前記被検体からの光に基づいて前記被検体内の物質を非侵襲的に計測する計測部と、前記被検体と前記計測部との間に介在し、前記被検体と前記計測部との間をカップリングする帯状のカップリングテープと、前記カップリングテープを搬送する搬送機構とを具備し、前記カップリングテープは、帯状に形成されたシート本体と、前記シート本体に所定間隔毎に設けられ、前記計測部から照射された光と前記被検体からの光とを透過するカップリングシートとを有する。
【0012】
請求項2に記載の本発明の生体情報計測装置は、被検体に対して光を照射したときの前記被検体からの光に基づいて前記被検体内の物質を非侵襲的に計測する計測部と、帯状に形成されたシート本体と、当該シート本体に所定間隔毎に設けられて前記計測部から照射された光と前記被検体からの光とを透過するカップリングシートとを有し、前記被検体と前記計測部との間に介在してこれら被検体と計測部との間をカップリングする帯状のカップリングテープを搬送する搬送機構とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被計測部に塗り付ける又は貼り付ける手間や、被計測部の付着物質を拭き取る作業を無くし、かつ同一条件で計測を可能とする取扱いの簡便な生体情報計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る生体情報計測装置の第1の実施の形態を示す内部構造図。
【図2】同装置の機能ブロック図。
【図3】同装置におけるカップリングテープ及び計測部の周辺構成を示す図。
【図4】同装置における剥離式カップリングテープの具体的な断面構成図。
【図5】同装置におけるカップリングシートの上面図。
【図6】同装置におけるカップリングシートの平面構成図。
【図7】同装置における接着部の具体的な構成図。
【図8】同装置における計測時のカップリングシートの配置を示す図。
【図9】同装置における計測部の上昇によるカップリングシートの被検体への貼り付けを示す図。
【図10】同装置におけるカップリングシートを被検体に貼り付けた状態を示す図。
【図11】同装置におけるカップリングテープのスライド移動を示す図。
【図12】同装置におけるカップリングシートを介しての被検体と計測部との結合を示す図。
【図13】同装置における計測完了後における計測部の元の位置への戻りを示す図。
【図14】同装置における清掃シートによる計測部の清掃状態を示す図。
【図15】同装置における次の計測時でのカップリングシートの配置を示す図。
【図16】同装置における剥離機構の変形例を示す構成図。
【図17】本発明に係る生体情報計測装置における一体式カップリングテープの第2の実施の形態を示す具体的な断面構成図。
【図18】同装置におけるカップリングシートの上面図。
【図19】同装置におけるカップリングシートの平面構成図。
【図20】同装置における接着部の具体的な構成図。
【図21】同装置の内部構造図。
【図22】同装置におけるカップリングテープ及び計測部の周辺構成を示す図。
【図23】同装置における計測時のカップリングシートの配置を示す図。
【図24】同装置における計測部の上昇によるカップリングシートの被検体への貼り付けを示す図。
【図25】同装置における清掃シートによる計測部の清掃状態を示す図。
【図26】同装置における次の計測時でのカップリングシートの配置を示す図。
【図27】同装置における計測時のカップリングシートと計測部との対峙を示す図。
【図28】同装置における計測部の上昇によるカップリングシートの被検体への貼り付けを示す図。
【図29】同装置における計測部の上面に付着したシリコン樹脂等を示す図。
【図30】同装置における清掃シートと計測部との対峙状態を示す図。
【図31】同装置における清掃シートによる計測部の清掃状態を示す図。
【図32】同装置における清掃シートによる計測部の清掃状態を示す図。
【図33】同装置における次の計測時でのカップリングシートの配置を示す図。
【図34】同装置におけるカップリングテープケースのテープ送り時における扉開放の状態を示す図。
【図35】同装置におけるカップリングテープケースのテープ送り停止時における扉閉口の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は生体情報計測装置の内部構造図を示し、図2は機能ブロック図を示す。装置筐体1の上面には、U字状に形成されたホルダ部2が設けられている。このホルダ部2上には、例えば被検体としての人体の腕が載せられる。このホルダ部2は、人体の腕の形状に合せたU字状に形成されている。
装置筐体1の内部には、計測部3が設けられている。この計測部3は、被検体Hとして例えば人体の腕に対して光を照射したときの人体の腕からの光に基づいて人体の腕内の物質を非侵襲的に計測する。この計測部3は、ホルダ部2に設けられた計測窓4の下方に設けられている。
【0016】
装置筐体1の内部には、カップリングテープケース5と、回収ケース6とが設けられている。これらカップリングテープケース5と回収ケース6とは、それぞれ計測部3の両側に設けられている。このカップリングテープケース5内には、巻回されたカップリングテープ7が軸8に回転可能に軸支されている。このカップリングテープケース5は、装置筐体1の内部に取り付け、取り外し可能である。このカップリングテープケース5は、機密性高く構成され、当該ケース5内の湿度を保つ。これにより、カップリングテープ7に含まれる計測部3の清掃用の薬品成分が蒸発しない。
【0017】
回収ケース6は、カップリングテープ7から計測部3の上方に供給され、計測に使用されたカップリングテープ7を回収する。具体的に回収ケース6には、回転可能な軸9が設けられている。この軸9には、カップリングテープ7の先端部が係止される。又、軸9には、モータ等を有する駆動部9aが接続されている。この駆動部9aは、カップリングテープ7を回収するとき、所定期間駆動する。これにより、駆動部9aの駆動により軸9が回転すると、この軸9にカップリングテープ7が巻回され、これと共にカップリングテープ7が矢印A方向に所定距離だけ搬送される。
従って、カップリングテープケース5と回収ケース6とは、カップリングテープ7の搬送機構となっており、カップリングテープケース5側がカップリングテープ7の搬送の上流側であり、回収ケース6側がカップリングテープ7の搬送の下流側である。
【0018】
計測部3は、図2に示すように光源部10を有する。この光源部10は、所望の一つの波長の単色光又はそれぞれ波長の異なる複数の単色光、或いはこれら単色光に近い波長の光を出力する。この光源部10は、例えば半導体レーザ(LD)又は発光ダイオード(LED)等の小型の発光素子を用いる。この光源部10は、例えば所望の波長の光を出力するLD又はLED等の発光素子を一つ又は複数用いる。
合波部11は、光源部10から出力された光の各波長の単色光を同一光軸に重ね合わせる。照射・受光部12は、合波部11により各波長の単色光を同一光軸に重ね合わせられた光をインタフェース部13を介して人体の腕等の被検体Hの被計測部に照射し、かつ被検体Hの被計測部を拡散、透過又は反射した各光を同時に受光するための各光の光軸を制御する。このインタフェース部13は、照射・受光部12からの光を被検体Hに照射し、かつ被検体Hからの拡散、透過又は反射した各光を光検出部14に導く。なお、インタフェース部13と被検体Hとの間には、カップリングテープ7が介在する。
【0019】
光検出部14は、照射・受光部12により各光軸が制御された被検体Hの被計測部を拡散、透過又は反射した各光信号を同時に受光し、これら光信号をそれぞれアナログの電気信号である各検出信号に変換する。被検体Hを拡散、透過又は反射した各光の強度は、被検体H内に存在する所定の物質、例えばグルコースの存在比率や濃度に依存する。従って、光検出部14から出力される各検出信号のレベルは、被検体H内に存在する所定の物質の存在比率や濃度に依存している。信号増幅部15は、光検出部14から出力される各検出信号を所望の振幅に増幅する。
【0020】
装置筐体1内には、温度制御部16と温度センサ17とが設けられている。これら温度制御部16と温度センサ17とは、計測部3の近傍、例えば被検体Hの被計測部の近傍に設けられている。温度制御部16は、温度センサ17から出力される温度測定信号を入力し、被検体Hの被計測部の温度を予め設定された所定温度にフィードバック制御する。この温度制御部16は、例えば被検体Hとの熱インタフェース部として熱伝導製の良いアルミニュームなどの金属材料を用い、この熱インタフェース部の底面部に熱源となるペルチェ素子を取り付けて成る。温度センサ17は、被検体Hの被計測部の温度を測定し、その温度測定信号を出力する。この温度センサ17は、例えば熱電対又はサーミスタなどから成り、被検体Hとの熱インタフェース部に埋め込まれる。
【0021】
制御部18には、表示部19と、操作部20と、データ記憶部21と、データ収集部22と、信号処理部23とが接続されている。制御部18は、コンピュータを構成するCPUを有し、表示部19に対して表示指令を発し、操作部20からの操作指示を受け、データ記憶部21に対してデータの書き込み、読み取りを行い、データ収集部22と信号処理部23とに対して各処理指令を発する。
表示部19は、例えば液晶表示装置により成り、その表示画面に例えば被検体Hの体内の物質、例えばグルコース濃度の計測結果などを表示する。
操作部20は、例えばマン・マシン・インタフェースによる情報入力部として機能し、例えばキーボード、マウス、ボタン、又はタッチキーパネル等からなる。
データ収集部22は、信号増幅部15により所望の振幅に増幅された各検出信号をデジタル信号に変換して各計測データとして収集する。
信号処理部23は、データ収集部22により収集された各計測データを処理して被検体H内に存在する物質の成分や濃度、或いは被検体Hの組織の変性に関する情報、例えば被検体Hの体内のグルコース濃度を算出し、このグルコース濃度等を必要に応じてデータ記憶部21に記憶する。
【0022】
制御部18は、操作部20からの操作信号等に基づいて表示部19、電源部24、光源部10、信号増幅部15、温度制御部16、データ記憶部21、データ収集部22、信号処理部23などを動作制御する。又、制御部18は、必要に応じて温度制御部16、データ記憶部21、信号処理部23などに電力を供給する。電源部24は、表示部19、光源部10、信号増幅部15、制御部18などに電力を供給する。
図3は剥離式のカップリングテープ7及び計測部3の周辺構成を示し、図4は剥離式のカップリングテープ7の具体的な断面構成を示す。このカップリングテープ7は、シート本体としての帯状の保護シート30と、この保護シート30の上面に設けられた複数のカップリングシート31と、これらカップリングシート31上に設けられた帯状の剥離シート32と、保護シート30の下面に設けられた帯状の清掃シート33とから成る。
保護シート30は、帯状に形成されている。この保護シート30は、光源部10から出力される所望の一つの波長の単色光又はそれぞれ波長の異なる複数の単色光、或いはこれら単色光に近い波長の光を透過する。
【0023】
複数のカップリングシート31は、それぞれ保護シート30上面に所定の一定間隔毎に設けられている。これらカップリングシート31は、計測部3と被検体Hとの間をカップリングする。図5はカップリングシート31の上面図を示す。これらカップリングシート31は、例えば楕円形に形成されている。これらカップリングシート31は、保護シート30に対して剥離可能に設けられている。これらカップリングシート31は、光透過性で、かつ高い熱伝導性を有し、例えばシリコンをコートしたグラシン紙を有する。
【0024】
図6はカップリングシート31の具体的の構成を示す。これらカップリングシート31は、それぞれ楕円形状に形成された光透過部34と接着部35とから成る。これら光透過部34と接着部35とは、光透過部34を内側とし、接着部35を外側とする同心円状に設けられている。光透過部34は、計測部3から出射された光と被検体Hからの光とを透過する。この光透過部34は、例えばシリコンゴム等のシリコン樹脂から成る。この光透過部34は、例えば波長400〜2500nmの光を透過し、かつ屈折率1.38〜1.50の値を有する。又、光透過部34は、温度10〜45℃で熱伝導率1.0Mw/cm/℃以上を有する。
【0025】
接着部35は、被検体Hに対して接着する。この接着部35は、例えばアクリル系粘着剤エマルジョンから成る。この接着部35は、図7に示すように第1層接着部35aと第2層接着部35bとから成る。第1層接着部35aは、保護シート30の上面に接着する。この第1層接着部35aは、第2層接着部35bの粘着度よりも低い粘着度を有する。しかるに、第1層接着部35aは、例えば保護シート30の上面に軽く接着し、第2層接着部35bが被検体Hに接着したときに保護シート30の上面から剥がれる程度の粘着度を有する。第2層接着部35bは、剥離シート32に対して剥離可能で、かつ被検体Hに対して所定の強度で粘着する。これにより、接着部35は、被検体Hとの間の粘着強度が最も高く、次に保護シート30との間の粘着強度、次に剥離シート32との間の粘着強度の順に低下する粘着強度を有する。
【0026】
剥離シート32は、各カップリングシート31の上面に設けられ、これらカップリングシート31を保護する。この剥離シート32は、カップリングシート31を被検体Hに付着させる直前にカップリングシート31上から剥離される。
清掃シート33は、保護シート30の下面、すなわち計測部3と対峙する側に設けられている。この清掃シート33は、計測部3の上面に対して一定の圧力で接触し、かつ計測部3の上面を擦りながら移動するときの摩擦により計測部3の上面の付着物を取り除く。すなわち、清掃シート33は、カップリングテープ7と一体となって回収ケース6に向かって搬送される。このとき、清掃シート33は、計測部3に対して一定の圧力で接触して移動することにより計測部3との間で摩擦が生じ、この摩擦により計測部3の上面の付着物を取り除く。この清掃シート33は、例えば繊維物質から成る。この清掃シート33は、計測部3を清掃する薬品成分、例えばエタノール等を含む。
【0027】
上下機構40が計測部3に設けられている。この上下機構40は、被検体Hとして例えば人体の腕等内の物質を非侵襲的に計測するときに計測部3を矢印B方向に移動し、この計測部3をカップリングテープ7を介して人体の腕等に密着させる。この上下機構40は、計測が終了すると、元の位置に戻す。
【0028】
計測窓4の周囲には、アームレスト41が設けられている。このアームレスト41上には、被検体Hが載置される。このアームレスト41におけるカップリングテープ7の供給側には、剥離機構としての剥離用導入部材42及び剥離用ローラ43が設けられている。剥離用導入部材42とアームレスト41との間には、剥離シート32の回収用の通路が形成されている。剥離用導入部材42における計測窓4側の先端部には、剥離用ローラ43が設けられている。従って、剥離シート32は、剥離用ローラ43に掛けられ、回収用の通路内にセットされる。これにより、剥離シート32は、カップリングテープ7の矢印A方向への搬送と共に、剥離用ローラ43を介して回収用の通路内に導かれ、各カップリングシート31上から剥離される。
【0029】
スライド機構44がカップリングテープケース5及び回収ケース6に設けられている。このスライド機構44は、カップリングテープケース5と回収ケース6とを一体的に装置筐体1内で矢印C方向にスライド移動し、カップリングテープ7を計測部3の上方位置から退避させる。このスライド移動の矢印C方向は、カップリングテープ7を搬送する矢印A方向に対して例えば直交する方向である。
なお、制御部18は、駆動部9a及びスライド機構44を駆動制御する。
【0030】
次に、剥離式のカップリングテープ7を用いた計測動作について図8乃至図15を参照して説明する。なお、図8(a)乃至図15(a)は上面図、図8(b)乃至図15(b)は側面図を示す。又、同図において複数のカップリングシート31は、説明の度合い上、カップリングシート31−1、31−2、31−3として示す。
【0031】
先ず、カップリングテープケース5と回収ケース6とがそれぞれ装置筐体1の内部に取り付けられる。カップリングテープケース5内に収納されているカップリングテープ7は、その先端部がカップリングテープケース5内から引き出され、計測部3の上部を介して回収ケース6の軸9に係止される。又、剥離シート32の先端部は、各カップリングシート31上から剥離され、剥離用ローラ43に掛けられ、回収用の通路内にセットされる。
【0032】
次に、人体の腕等の被検体HがU字状に形成されたホルダ部2上に載せられる。この状態で、制御部18は、駆動部9aを駆動し、軸9を回転させて当該軸9にカップリングテープ7を巻回すると共に、このカップリングテープ7の巻回に伴ってカップリングテープ7を矢印A方向に搬送する。このカップリングテープ7の搬送と共に、剥離シート32は、剥離用ローラ43を介して回収用の通路内に導かれ、カップリングシート31上から剥離される。この剥離された剥離シート32は、回収される。
【0033】
このカップリングテープ7の搬送により図8(a)に示すように剥離シート32が剥離された直後の1つのカップリングシート31−1が計測窓4の下方で、かつ計測窓4の略中央部に搬送されると、制御部18は、駆動部9aの駆動を停止し、カップリングテープ7の搬送を停止する。このとき、剥離シート32が剥離されたカップリングシート31−1よりも下流側のカップリングシート31−2は、図3に示すように剥離用ローラ43よりも上流側に在り、未だ剥離シート32が剥離されていない。なお、カップリングテープ7の搬送の停止制御は、制御部18に対する手動による指示により停止してもよいし、又はカップリングシート31が計測窓4の下方でかつ計測窓4の略中央部に搬送されたことを検知したときに自動的に停止してもよい。
【0034】
次に、上下機構40は、図9(b)に示すように計測部3を矢印B方向に所定の距離だけ上昇させる。この計測部3は、上昇と共に、カップリングテープ7を押し上げて被検体Hである人体の腕等に圧着させる。これにより、カップリングテープ7上のカップリングシート31−1は、接着部35により被検体Hに付着する。なお、計測部3の上昇距離は、例えば、計測部3が上昇移動する前の計測部3の上面と清掃シート33との間隔と、カップリングテープ7における清掃シート33からカップリングシート31−1の上面までの厚さと、カップリングシート31−1の上面と計測窓4との間隔と、カップリングシート31−1を被検体Hに所定の圧力で圧着させるための上昇距離とを加算して決定される。
【0035】
次に、上下機構40は、図10(b)に示すように計測部3を矢印B方向に下降させて元の位置に戻す。これにより、カップリングテープ7も計測部3の下降と共に下降する。このとき、カップリングシート31−1における第1層接着部35aは、第2層接着部35bの粘着度よりも低い粘着度を有するので、カップリングシート31−1は、被検体Hに付着したまま保護シート30から剥離する。
【0036】
次に、スライド機構44は、図11(a)(b)に示すようにカップリングテープケース5と回収ケース6とを一体的に装置筐体1内で矢印C方向にスライド移動し、カップリングテープ7を計測部3の上方位置から退避させる。これにより、計測部3の上面は、計測窓4を介して被検体Hと直接対峙する。
次に、上下機構40は、図11(b)に示すように計測部3を矢印B方向に所定の距離だけ上昇させる。この計測部3は、上昇によりカップリングシート31−1と接触し、かつ当該カップリングシート31−1を押し上げて被検体Hに押し付ける。この押し付けによりカップリングテープ7上のカップリングシート31−1は、被検体Hに付着する。この結果、計測部3は、カップリングシート31−1を介して被検体Hに結合される。これにより、計測部3と被検体Hとの間の光学特性及び熱伝導性が高められる。なお、計測部3の上昇距離は、例えば、計測部3が上昇移動する前の計測部3の上面と計測窓4との間隔と、カップリングシート31−1を被検体Hに所定の圧力で圧着させるための上昇距離とを加算して決定される。
【0037】
この状態で計測部3は、カップリングシート31−1を介して被検体Hに対して光を照射し、このときの被検体Hからの光に基づいて被検体H内の物質を非侵襲的に計測する。すなわち、光源部7からは、所望の一つの波長の単色光又はそれぞれ波長の異なる複数の単色光、或いはこれら単色光に近い波長の光が出力される。この光は、合波部8に入射して各波長の単色光が同一光軸に重ね合わされる。この合波器8から出射された光は、照射・受光部9によりインタフェース部10を介して被検体Hに照射される。このとき、被検体Hで拡散、透過又は反射した各光は、照射・受光部9によって光検出部11で同時に受光するために各光の光軸が制御される。
【0038】
光検出部11は、照射・受光部9により各光軸が制御された被検体Hの所望の一部位又は複数の被測定部位を拡散、透過又は反射した各光を同時に受光し、これら光をそれぞれアナログの電気信号である各検出信号に変換する。このときの被検体Hを拡散、透過又は反射した各光信号の強度は、被検体H内に存在する所定の物質、例えばグルコースの存在比率や濃度に依存する。
【0039】
従って、光検出部11から出力される各検出信号のレベルは、被検体H内に存在する所定の物質の存在比率や濃度に依存している。信号増幅部12は、光検出部11から出力される各検出信号を所望の振幅に増幅する。データ収集部17は、信号増幅部12により所望の振幅に増幅された各検出信号をデジタル信号に変換して各計測データとして収集する。これら収集された計測データは、制御部15によって計測時の時刻情報と共にデータ記憶部16に記憶される。これにより被検体H内の物質の計測が終了する。なお、非侵襲計測時、温度制御部13は、温度センサ14から出力される温度測定信号を入力し、被検体Hの所望の一部位又は複数の被測定部位の温度を所定温度にフィードバック制御する。
被検体H内の物質の非侵襲的な計測が終了すると、上下機構40は、図13(b)に示すように計測部3を矢印B方向に下降させて元の位置に戻す。このとき、カップリングシート31−1における第1層接着部35aは、第2層接着部35bの粘着度よりも低い粘着度を有する。これにより、カップリングシート31−1は、被検体Hに付着したまま計測部3の上面から離れる。この状態で、人体の腕等の被検体Hがホルダ部2上から外される。
【0040】
次に、スライド機構44は、図14(a)(b)に示すようにカップリングテープケース5と回収ケース6とを一体的に装置筐体1内で矢印C方向にスライド移動し、カップリングテープ7を計測部3の上方位置に戻す。これにより、計測部3の上面には、カップリングテープ7が配置され、清掃シート33が計測部3の上面に接触する。そして、この状態で、次の計測まで待機する。
【0041】
次の計測時になると、制御部18は、駆動部9aを所定期間駆動し、軸9を回転させて当該軸9にカップリングテープ7を巻回すると共に、このカップリングテープ7の巻回に伴ってカップリングテープ7を矢印A方向に搬送する。このときのカップリングテープ7の搬送距離は、各カップリングシート31−1、31−2の配置間隔と同一に設定される。カップリングテープ7の搬送により剥離シート32は、上記同様に、カップリングテープ7の搬送と共に、剥離用ローラ43を介して回収用の通路内に導かれ、カップリングシート31−2上から剥離される。この剥離された剥離シート32は、回収される。
【0042】
カップリングテープ7の搬送と共に、清掃シート33は、図14(b)に示すように計測部3の上面に対して一定の圧力で接触し、かつ摩擦しながら移動することにより計測部3の上面の付着物、例えばカップリングシート31−1の光透過部34を形成する例えばシリコンゴム等のシリコン樹脂を拭き取る。清掃シート33は、エタノール等の薬品成分を含んでいるので、計測部3の上面の付着物を残すことなく拭き取る。
【0043】
カップリングテープ7の搬送により図15(a)(b)に示すように剥離シート32の剥離された次のカップリングシート31−2が計測窓4の下方で、かつ計測窓4の略中央部に搬送されると、制御部18は、駆動部9aの駆動を停止し、カップリングテープ7の搬送を停止する。
これ以降、上記同様に被検体H内の物質の計測が行われる。
【0044】
このように上記第1の実施の形態によれば、保護シート30上に複数のカップリングシート31を設け、これらカップリングシート31上に剥離シート32を設け、かつ保護シート30の下面に清掃シート33を設けて剥離式のカップリングテープ7を形成し、被検体H内の物質情報の計測を行うときに、自動的にカップリングテープ7を搬送し、この搬送に伴って剥離シート32を剥離し、計測部3をカップリングテープ7を介して被検体Hに結合させる。各カップリングシート31は、それぞれ大きさや厚さ等が均一であり、かつ被検体Hに付着させる位置も略同一にすることができる。しかるに、計測部3をカップリングテープ7を介して被検体Hに結合させて被検体H内の物質情報の計測を行うときの状態の再現性を向上でき、同一条件での被検体H内の物質の非侵襲的な計測ができる。
【0045】
被検体H内の物質の非侵襲的な計測時、被検体Hと計測部3との間にカップリングシート31を密着して挟むので、人体の腕等の被検体Hにおける皮膚表面での反射光を抑えることができ、光を効率良く人体の腕等の被検体H内に照射することができる。
【0046】
カップリングシート31は、被検体H内の物質の非侵襲的な計測を開始する直前に剥離シート32が剥離されて被検体Hに密着し、かつ当該カップリングシート31を介して計測部3と被検体Hとの結合を行うので、カップリングシート31に塵埃等が付着し、これら付着物によって計測部3及び被検体Hが汚れることがない。又、カップリングテープ7の搬送と共に、清掃シート33によって計測部3の上面の付着物を残すことなく拭き取ることができる。これにより、被検体H内の生体物質情報に応じた透過光、反射光、散乱光を受光することができ、計測結果の精度を高く維持できる。計測部3の上面に付着した物質を拭き取る作業も無くなる。
【0047】
カップリングシート31の被検体Hへの付着は、計測部3の上昇により自動的に行うので、例えばオペレータの手作業により貼り付ける作業の時間とその手間を無くすことができる。カップリングテープ7は、装置筐体1内に取り付けられるので、装置筐体1とは別々に携帯することも無くなる。
【0048】
カップリングシート31が計測に使用された後のカップリングテープ7、すなわち保護シート30と清掃シート33とは、回収ケース6内に回収されるので、カップリングシート31の全てを使用した後の保護シート30及び清掃シート33を纏めて廃棄できる。剥離シート32も同様に回収して廃棄することができる。
【0049】
なお、剥離シート32を剥離する剥離機構は、図16に示す構成にしてもよい。計測部3は、上昇した状態にある。下面側テープガイド50、51がカップリングテープ7の下面側に回転可能に設けられている。これら下面側テープガイド50、51は、計測部3の上昇位置における当該計測部3の上面の高さ位置と略同一高さ位置に設けられている。
【0050】
計測部3においてカップリングテープ7の搬送の上流側でかつ剥離シート32の上面側には、一対の上面側テープガイド52、53が回転可能に設けられている。これら上面側テープガイド52、53は、剥離シート32を挟んだ状態で回転し、剥離シート32をカップリングテープ7から剥離する。この剥離された剥離シート32は、上記同様に回収して廃棄することができる。
【0051】
計測部3においてカップリングテープ7の搬送の下流側でかつ剥離シート32の上面側には、回収用テープガイド54が設けられている。この回収用テープガイド54は、カップリングシート31が使用されたカップリングテープ7を例えば回収ケース6に送る。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。
図17は一体式のカップリングテープ60の具体的な断面構成を示す。このカップリングテープ60は、シート本体としての帯状の保護シート61と、この保護シート61の下面に設けられた帯状の清掃シート62と、これら保護シート61と清掃シート62との間に挟持された複数のカップリングシート63と、保護シート30の上面に設けられた帯状の剥離シート64とから成る。
【0053】
保護シート61は、帯状に形成されている。この保護シート61は、光源部10から出力される所望の一つの波長の単色光又はそれぞれ波長の異なる複数の単色光、或いはこれら単色光に近い波長の光を透過する。
清掃シート62は、計測部3に対して一定の圧力で接触し、かつ摩擦することにより計測部3の付着物を取り除く。すなわち、清掃シート62は、保護シート61と一体となって回収ケース6に向かって搬送される。このとき、清掃シート62は、計測部3に対して一定の圧力で接触し、計測部3との間で摩擦が生じる。この清掃シート62は、繊維物質から成る。又、清掃シート62は、計測部3を清掃する薬品成分、例えばエタノール等を含む。
【0054】
複数のカップリングシート63は、それぞれ保護シート61と清掃シート62とに挟持されて所定の一定間隔毎に設けられている。具体的には、保護シート61と清掃シート62とが積層され、これら保護シート61及び清掃シート62に例えば複数の円形状の孔が一定間隔毎に設けられ、これら孔内にそれぞれカップリングシート63が設けられる。これらカップリングシート63は、計測部3と被検体Hとの間をカップリングする。これらカップリングシート63は、図19の上面図に示すように例えば円形に形成されている。これらカップリングシート63は、保護シート61と清掃シート62とに対して固定して設けられている。これらカップリングシート61は、光透過性で、かつ高い熱伝導性を有し、例えばシリコンをコートしたグラシン紙を有する。なお、カップリングシート63は、保護シート61と清掃シート62とに対して剥離可能に設けてもよい。
【0055】
これらカップリングシート63は、具体的に例えば図19に示すようにそれぞれ円形状に形成された光透過部65と接着部66とから成る。これら光透過部65と接着部66とは、光透過部65を内側とし、接着部66を外側とする同心円状に設けられている。
光透過部65は、計測部3から出射された光と被検体Hからの光とを透過する。この光透過部65は、例えばシリコンゴム等のシリコン樹脂から成る。この光透過部65は、例えば波長400〜2500nmの光を透過し、かつ屈折率1.38〜1.50の値を有する。又、光透過部65は、温度10〜45℃で熱伝導率1.0Mw/cm/℃以上を有する。
【0056】
接着部66は、被検体Hに対して接着する。この接着部66は、例えばアクリル系粘着剤エマルジョンから成る。この接着部66は、図20に示すように第1層接着部66aと第2層接着部66bとから成る。第1層接着部66aは、第2層接着部66bの粘着度よりも低い粘着度を有する。従って、接着部66は、保護シート61及び清掃シート62との間の粘着強度が最も高く、次に被検体Hとの間の粘着強度、次に剥離シート64との間の粘着強度の順に低下する粘着強度を有する。
【0057】
なお、カップリングシート63が保護シート61及び清掃シート62との挟持から剥離可能な場合、第2層接着部66bが被検体Hに接着したとき、第1層接着部66a及び第2層接着部66bは、保護シート61及び清掃シート62との挟持から剥がれる程度の粘着度を有する。剥離シート64は、第2層接着部66bに対して剥離可能で、かつ被検体Hに対して所定の強度で粘着する。これにより、接着部66は、被検体Hとの間の粘着強度が最も高く、次に保護シート61及び清掃シート62との間の粘着強度、次に剥離シート64との間の粘着強度の順に低下する粘着強度を有する。
【0058】
剥離シート64は、保護シート61及び各カップリングシート63の上面に設けられ、各カップリングシート63を保護する。この剥離シート32は、カップリングシート31を被検体Hに付着させる直前に保護シート61及びカップリングシート63上から剥離される。
【0059】
図21は一体式のカップリングテープ60を用いる生体情報計測装置の内部構造図を示す。なお、図1と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。この生体情報計測装置は、図1に示す装置からスライド機構44を省略している。
カップリングテープケース5内には、カップリングテープ60が軸8に回転可能に軸支されている。回収ケース6は、カップリングテープケース5から計測部3の上方に供給され、計測に使用されたカップリングテープ60を回収する。
【0060】
次に、一体式のカップリングテープ60を用いた計測動作について図23乃至図26を参照して説明する。なお、図23(a)乃至図26(a)は上面図、図23(b)乃至図26(b)は側面図を示す。又、同図において複数のカップリングシート63は、説明の度合い上、カップリングシート63−1、63−2、63−3として示す。
先ず、カップリングテープケース5と回収ケース6とがそれぞれ装置筐体1の内部に取り付けられる。カップリングテープケース5内に収納されているカップリングテープ60の先端部がカップリングテープケース5内から引き出され、計測部3の上部を介して回収ケース6の軸9に係止される。又、剥離シート64の先端部は、各保護シート61上から剥離され、剥離用ローラ43に掛けられ、回収用の通路内にセットされる。
【0061】
次に、人体の腕等の被検体HがU字状に形成されたホルダ部2上に載せられる。この状態で、制御部18は、駆動部9aを駆動し、軸9を回転させて当該軸9にカップリングテープ60を巻回すると共に、このカップリングテープ60の巻回に伴ってカップリングテープ60を矢印A方向に搬送する。このカップリングテープ60の搬送と共に、剥離シート64は、剥離用ローラ43を介して回収用の通路内に導かれ、カップリングシート60上から剥離される。この剥離された剥離シート64は、回収される。
【0062】
このようなカップリングテープ60の搬送により図23(a)に示すように剥離シート64が剥離された直後の1つのカップリングシート63−1が計測窓4の下方で、かつ計測窓4の略中央部に搬送されると、制御部18は、駆動部9aの駆動を停止し、カップリングテープ60の搬送を停止する。このとき、剥離シート64が剥離されたカップリングシート63−1よりも下流側のカップリングシート63−2は、図22に示すように剥離用ローラ43よりも上流側に在り、未だ剥離シート64が剥離されていない。
【0063】
次に、上下機構40は、図24(b)に示すように計測部3を矢印B方向に所定の距離だけ上昇させる。この計測部3は、上昇と共に、カップリングテープ60を押し上げて人体の腕等の被検体Hに圧着させる。これにより、カップリングシート63−1は、被検体Hに押し付けられて付着する。この結果、計測部3は、カップリングシート63−1を介して被検体Hに結合される。これにより、計測部3と被検体Hとの間の光学特性及び熱伝導性が高められる。なお、計測部3の上昇距離は、例えば、計測部3が上昇移動する前の計測部3の上面と清掃シート62との間隔と、清掃シート62の厚さと、保護シート61の厚さと、保護シート61の上面と計測窓4との間隔と、カップリングシート63−1を被検体Hに所定の圧力で圧着させるための上昇距離とを加算して決定される。
この状態で計測部3は、上記同様に、被検体Hに対して光を照射し、このときの被検体Hからの光に基づいて被検体H内の物質を非侵襲的に計測する。
【0064】
被検体H内の物質の非侵襲的な計測が終了すると、上下機構40は、図25(b)に示すように計測部3を矢印B方向に下降させて元の位置に戻す。このとき、カップリングシート63−1は、人体の腕等の被検体Hから剥離され、保護シート61及び清掃シート62に挟持された状態で下降する。
【0065】
次の計測時になると、制御部18は、駆動部9aを所定期間駆動し、軸9を回転させて当該軸9にカップリングテープ60を巻回すると共に、このカップリングテープ60の巻回に伴ってカップリングテープ60を矢印A方向に搬送する。このときのカップリングテープ60の搬送距離は、各カップリングシート60の配置間隔と同一に設定される。これにより、剥離シート64は、上記同様に、カップリングテープ60の搬送と共に、剥離用ローラ43を介して回収用の通路内に導かれ、カップリングシート60上から剥離される。この剥離された剥離シート60は、回収される。
【0066】
カップリングテープ60の搬送と共に、清掃シート63は、図25(b)に示すように計測部3の上面に対して一定の圧力で接触し、かつ移動するときの摩擦することにより計測部3の上面の付着物、例えばカップリングシート63の光透過部65を形成する例えばシリコンゴム等のシリコン樹脂を拭き取る。清掃シート63は、エタノール等の薬品成分を含んでいるので、計測部3の上面の付着物を残すことなく拭き取る。
【0067】
このようなカップリングテープ60の搬送により図26(a)(b)に示すように剥離シート62の剥離された次のカップリングシート63−2が計測窓4の下方で、かつ計測窓4の略中央部に搬送されると、制御部18は、駆動部9aの駆動を停止し、カップリングテープ60の搬送を停止する。
これ以降、上記同様に被検体H内の物質の計測が行われる。
【0068】
ここで、清掃シート63による計測部3の清掃について図27乃至図33を参照して説明する。
カップリングテープ60の搬送によりカップリングシート63−1が図27に示すように計測部3と対峙する位置に搬送されると、計測部3は、図28に示すように上昇し、カップリングシート63−1を介して被検体Hに結合される。この状態で計測部3は、被検体H内の物質を非侵襲的に計測する。
【0069】
被検体H内の物質の非侵襲的な計測が終了すると、計測部3は、図29に示すように下降して元の位置に戻る。このとき、計測部3の上面には、カップリングシート63−1の透過部65を形成する例えばシリコンゴム等のシリコン樹脂65a等が付着する。すなわち、計測部3の上面がカップリングシート63−1を介して人体の腕等の被検体Hに圧着するので、計測部3が下降しても、透過部65を形成するシリコン樹脂65a等一部が計測部3の上面に付着して残る。
【0070】
次の計測時、図30に示すようにカップリングテープ60の巻回に伴ってカップリングテープ60が矢印A方向に搬送されるので、このとき計測部3は、図31に示すように上昇し、計測部3の上面を清掃シート63に対して一定の圧力で接触させる。これにより、計測部3の上面は、図31に示すように清掃シート63に対して一定の圧力で接触し、かつ清掃シート63の移動により摩擦されるので、計測部3の上面の付着物、例えばカップリングシート63の光透過部65を形成する例えばシリコンゴム等のシリコン樹脂は拭き取られる。
【0071】
このように上記第2の実施の形態によれば、保護シート61と、この保護シート61の下面に設けられた清掃シート62と、これら保護シート61と清掃シート62との間に挟持された複数のカップリングシート63と、保護シート30の上面に設けられた剥離シート64とから成る一体式のカップリングテープ60を用いるので、上記第1の実施の形態の効果と同様の効果、すなわち各カップリングシート63は、それぞれ大きさや厚さ等が均一であり、かつ被検体Hに付着させる位置も略同一にすることができ、これにより、計測部3をカップリングテープ7を介して被検体Hに結合させて被検体H内の物質情報の計測を行うときの状態の再現性を向上でき、同一条件での被検体H内の物質の非侵襲的な計測ができる。
【0072】
被検体H内の物質の非侵襲的な計測時、被検体Hと計測部3との間にカップリングシート63を密着して挟むので、人体の腕等の被検体Hにおける皮膚表面での反射光を抑えることができ、光を効率良く人体の腕等の被検体H内に照射することができる。
カップリングシート63は、被検体H内の物質の非侵襲的な計測を開始する直前に剥離シート32が剥離されて被検体Hに密着し、かつ当該カップリングシート63を介して計測部3と被検体Hとの結合を行うので、カップリングシート31に塵埃等が付着し、これら付着物によって計測部3及び被検体Hが汚れることがない。又、カップリングテープ7の搬送と共に、清掃シート62によって計測部3の上面の付着物を残すことなく拭き取ることができる。これにより、被検体H内の生体物質情報に応じた透過光、反射光、散乱光を受光することができ、計測結果の精度を高く維持できる。計測部3の上面に付着した物質を拭き取る作業も無くなる。
【0073】
カップリングシート63の被検体Hへの付着は、計測部3の上昇により自動的に行うので、例えばオペレータの手作業により貼り付ける作業の時間とその手間を無くすことができる。カップリングテープ7は、装置筐体1内に取り付けられるので、装置筐体1とは別々に携帯することも無くなる。
カップリングシート63が計測に使用された後のカップリングテープ7、すなわち保護シート61と清掃シート62とは、回収ケース6内に回収されるので、カップリングシート63の全てを使用した後の保護シート61及び清掃シート62を纏めて廃棄できる。剥離シート64も同様に回収して廃棄することができる。
【0074】
複数のカップリングシート63は、保護シート61及び清掃シート62と一体的に設けられているので、計測部3を上昇させて被検体H内の物質の非侵襲的な計測を行うとき、上記第1の実施の形態のようにカップリングテープ60を計測部3の上方位置から退避させる必要がない。これにより、本実施の形態では、カップリングテープケース5と回収ケース6とを一体的に装置筐体1内で矢印C方向にスライド移動させるスライド機構44を備える必要はない。
【0075】
本実施の形態では、一体式のカップリングテープ60を図21に示す装置に適用したが、図1に示す装置にも適用可能である。この場合、図1に示す装置では、スライド機構44を動作させる必要はないが、敢えて動作させてもよい。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、カップリングテープケース5には、図34に示すようにテープ供給口70が設けられている。このテープ供給口70には、開閉扉71が設けられている。この開閉扉71は、カップリングテープ7、60のテープ送り時にテープ供給口70を開放する。又、開閉扉71は、図35に示すようにカップリングテープ7、60のテープ送りを停止しているときテープ供給口70を閉口する。これにより、カップリングテープケース5内の湿度を一定に保つことができる。
【0077】
各保護シート30、61及び各清掃シート33、62は、それぞれ紙力が強い例えばグラシン紙を用いてもよい。これにより、各保護シート30、61及び各清掃シート33、62は、搬送中に切断されることを防止できる。
【0078】
各カップリングシート31、63における各接着部35、66は、それぞれ粘着強度を適宜変更してもよい。これにより、各剥離シート32、64の剥離力を調整することが可能となる。
人体の腕等の被検体Hの表面を例えば綿部材等で拭き取ったり、被検体Hの表面に風を吹き付けたりして被検体Hの表面を乾燥させる機構を設けてもよい。これにより、被検体Hの表面に対してカップリングシート31、63が付着し易くできる。
【0079】
剥離式及び一体式の各カップリングテープ7、60の搬送位置を手動又は自動で調整する機構を設けてもよい。これにより、計測部3に対する各清掃シート33、62の搬送位置を調整し、計測部3の上面の付着物を確実に拭き取ることができる。
【0080】
計測部3の上面に対して各清掃シート33、62を接触させながらスライド移動させるとき、例えばテープガイド等を用いて各清掃シート33、62を計測部3の上面に対して一定の圧力で押し付けてもよい。計測部3の上面の付着物を確実に除去できる。
剥離式及び一体式の各カップリングテープ7、60の搬送機構は、カップリングテープケース5及び回収ケース6に対して例えば一定距離毎に各カップリングテープ7、60を搬送させる機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1:装置筐体、2:ホルダ部、3:計測部、4:計測窓、5:カップリングテープケース、6:回収ケース、7:カップリングテープ、8,9:軸、9a:駆動部、10:光源部、11:合波部、12:照射・受光部、13:インタフェース部、14:光検出部、15:信号増幅部、16:温度制御部、17:温度センサ、18:制御部、19:表示部、20:操作部、21:データ記憶部、22:データ収集部、23:信号処理部、24:電源部、30:保護シート、31:剥離式のカップリングシート、31−1,31−2,31−3:カップリングシート、32:剥離シート、33:清掃シート、34:光透過部、35:接着部、35a:第1層接着部、35b:第2層接着部、40:上下機構、41:アームレスト、42:剥離用導入部材、43:剥離用ローラ、44:スライド機構、50,51:下面側テープガイド、52,53:上面側テープガイド、54:回収用テープガイド、60:カップリングテープ、61:保護シート、62:清掃シート、63:一体式のカップリングシート、63−1,63−2,63−3:カップリングシート、64:剥離シート、65:光透過部、65a:シリコン樹脂、66:接着部、66a:第1層接着部、66b:第2層接着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して光を照射したときの前記被検体からの光に基づいて前記被検体内の物質を非侵襲的に計測する計測部と、
前記被検体と前記計測部との間に介在し、前記被検体と前記計測部との間をカップリングする帯状のカップリングテープと、
前記カップリングテープを搬送する搬送機構と、
を具備し、
前記カップリングテープは、帯状に形成されたシート本体と、前記シート本体に所定間隔毎に設けられ、前記計測部から照射された光と前記被検体からの光とを透過するカップリングシートとを有することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】
被検体に対して光を照射したときの前記被検体からの光に基づいて前記被検体内の物質を非侵襲的に計測する計測部と、
帯状に形成されたシート本体と、当該シート本体に所定間隔毎に設けられて前記計測部から照射された光と前記被検体からの光とを透過するカップリングシートとを有し、前記被検体と前記計測部との間に介在してこれら被検体と計測部との間をカップリングする帯状のカップリングテープを搬送する搬送機構と、
を具備することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項3】
前記カップリングシートは、前記シート本体に対して剥離可能に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記カップリングシートは、前記シート本体に対して一体化して設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記カップリングシートは、光透過性で、かつ高い熱伝導性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記カップリングシートは、シリコンをコートしたグラシン紙を有することを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
前記カップリングシートは、前記計測部から出射された前記光と前記被検体からの前記光とを透過する光透過部と、
前記被検体に対して接着する接着部と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項8】
前記光透過部は、シリコンゴム又はシリコン樹脂を有することを特徴とする請求項7記載の生体情報計測装置。
【請求項9】
前記光透過部は、波長400〜2500nmの光を透過し、屈折率1.38〜1.50の値を有し、かつ温度10〜45℃で熱伝導率1.0Mw/cm/℃以上を有することを特徴とする請求項7記載の生体情報計測装置。
【請求項10】
前記カップリングシートを保護する剥離シートを有し、
前記接着部は、前記剥離シートとの剥離可能で、かつ前記被検体に対して所定の強度で粘着する、
ことを特徴とする請求項7記載の生体情報計測装置。
【請求項11】
前記カップリングシートを保護する剥離シートを有し、
前記接着部は、前記被検体との間の粘着強度、次に前記シート本体との間の粘着強度、次に前記剥離シートとの間の粘着強度の順に低下する粘着強度を有する、
ことを特徴とする請求項7記載の生体情報計測装置。
【請求項12】
前記接着部は、アクリル系粘着剤エマルジョンを有することを特徴とする請求項7記載の生体情報計測装置。
【請求項13】
前記カップリングシートは、前記被検体毎に交換可能とすることを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項14】
前記計測部に対して一定の圧力で接触し、かつ摩擦することにより前記計測部の付着物を取り除く清掃シートを有することを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項15】
前記清掃シートは、繊維物質から成ることを特徴とする請求項14記載の生体情報計測装置。
【請求項16】
前記清掃シートは、前記計測部を清掃する薬品成分を含むことを特徴とする請求項14記載の生体情報計測装置。
【請求項17】
前記シート本体上に設けられ、前記カップリングシートを保護する剥離シートと、
前記剥離シートを剥離する剥離機構と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項18】
前記剥離シートは、前記複数のカップリングシートが設けられた前記シート本体上に剥離可能に設けられ、
前記搬送機構は、前記各カップリングシート間の距離毎に前記シート本体を搬送し、
前記剥離機構は、前記搬送機構により前記シート本体が搬送される毎に前記剥離シートを剥離する、
ことを特徴とする請求項17記載の生体情報計測装置。
【請求項19】
前記剥離機構は、前記剥離シートを前記シート本体から剥離導く複数のガイドローラを有することを特徴とする請求項18記載の生体情報計測装置。
【請求項20】
前記カップリングシートは、前記計測部を清掃する清掃シートを有し、
前記搬送機構は、前記清掃シートを前記計測部に対して一定の圧力で接触させながら前記カップリングシートを搬送して前記計測部の付着物を取り除く、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項21】
前記搬送機構は、前記カップリングテープを巻回した状態で収納する第1のケースと、
前記第1のケースに収納されている前記カップリングテープを前記計測部に介して巻き取って回収する第2のケースと、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の生体情報計測装置。
【請求項22】
前記第1及び第2のケースは、気密に形成されたことを特徴とする請求項21記載の生体情報計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2012−135635(P2012−135635A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54848(P2012−54848)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2006−162586(P2006−162586)の分割
【原出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】