生体改善効果解析システムおよび生体改善効果の解析方法
【課題】個々人が摂取した保健機能性食品等の摂取物の、生体に対する改善効果を腸内状態から解析することにより、適正な摂取物種類、その摂取量、摂取方法等を、メーカー側が把握し、また当該個人に対してもフィードバックすることのできる生体改善効果解析システムおよび解析方法を提供する。
【解決手段】摂取物の摂取情報を入力する摂取情報入力手段と、排便時に併発する排便ガス中の所定成分濃度を測定する排便ガス濃度計測手段と、前記排便ガス濃度計測手段によって計測された計測データから被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標を推定する腸内状態指標推定手段と、前記摂取物の摂取情報と前記腸内状態指標の時系列との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析する改善効果解析手段と、その解析結果を報知する報知手段とを備えている。
【解決手段】摂取物の摂取情報を入力する摂取情報入力手段と、排便時に併発する排便ガス中の所定成分濃度を測定する排便ガス濃度計測手段と、前記排便ガス濃度計測手段によって計測された計測データから被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標を推定する腸内状態指標推定手段と、前記摂取物の摂取情報と前記腸内状態指標の時系列との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析する改善効果解析手段と、その解析結果を報知する報知手段とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々人が摂取した摂取物の生体に対する機能改善効果を、排便時に併発する排便ガス濃度を利用して腸内状態を推定することで解析する生体改善効果解析システムおよび解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体に良いと言われるサプリメント(健康補助食品)や食品が世の中に数多く出回っている。しかし、その有効性については判断が難しいため、宣伝を信じるか知り合いの言葉を信じて購入し、試しに飲んでみて、利いたような気がするという程度の不明確な判断をしているのが現状である。サプリメントに限らず、ヨーグルト等の乳酸菌入り食品など、整腸効果が一般に認められている補助食品についても、はたして特定の個人についてどの程度有効に機能しているのかは不明である。
【0003】
したがって上記のようなサプリメントやヨーグルト等(以下、「補助食品」と総称する。)については、使用者(以下、「ユーザ」という。)側から見ると、体に良いかも知れないとは思っても効果が目に見えないため摂取が長続きしないという問題がある。
【0004】
一方、補助食品を生産している企業側にとっても、個々人に有効性が検証された最適な商品種類、摂取方法を提供することができれば、売り上げを伸ばすことができるがそのような手段がない。
【0005】
個々人が摂取した補助食品などの摂取物の、生体に対する改善効果を腸内状態から検証するためのシステムおよび検証方法については知られていない。わずかに関連する技術としては下記の特許文献1、2が知られている。
【0006】
特許文献1の生理機能の計測方法及び試験用食品には、特定の疾患に対応して指標となる成分を添加した試験用食品を作成し、一定期間、この試験用食品のみを摂取させながら血液、尿、糞便を採取し、ここから得られたデータに基づいて被験者の特定の消化器系、循環器系に対する状態を計測する方法が記載されている。
【0007】
また特許文献2の生体モニタ装置は、布製のT字帯にガスセンサを装着し、肛門から放出されたガスをガスセンサで検知してデータ化し、メモリに蓄えられたデータと過去のデータとを比較し、差が大きい場合など異常が認められる場合に表示装置に警告を表示するものである。
【0008】
【特許文献1】特許第3611996号公報
【特許文献2】特開平9−43182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、従来にあっては、個々人が摂取した補助食品などの摂取物の、生体に対する改善効果を腸内状態から検証することができず、適正な食品種類、その摂取量、摂取方法等を、メーカー側が把握し、また当該個人に対してもフィードバックすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1による本発明の生体改善効果解析システムは、被験者が摂取した摂取物の生体に対する改善効果を解析するためのシステムであって、このシステムは、前記摂取物の摂取情報を入力する摂取情報入力手段と、排便時に併発する排便ガス中の所定成分濃度を測定する排便ガス濃度計測手段と、前記排便ガス濃度計測手段によって計測された計測データから被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標を推定する腸内状態指標推定手段と、前記摂取物の摂取情報と前記腸内状態指標の時系列との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析する改善効果解析手段と、その解析結果を報知する報知手段と、を備えている。
【0011】
本発明によれば、補助食品などの摂取物を摂取した時の効果を、被験者の排便ガス成分濃度測定によって推定される腸内状態指標の変化状態と摂取物の摂取状況とから解析するので、使用者一人一人に対して摂取物の摂取の効果があるか否かを客観的にしかも簡便に判断できる。
【0012】
請求項2による生体改善効果解析システムは、請求項1に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記腸内状態指標が便のpH値を表す便pHであることを特徴とする。
本発明によれば、便pHはもっとも広く認知されている腸内状態指標のひとつであり、また排便ガスから便pHを推定することが容易なことから、腸内状態として便pHを用いることにより、精度の高い生体改善効果を解析することができる。
【0013】
請求項3による生体改善効果解析システムは、請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が二酸化炭素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の二酸化炭素濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された二酸化炭素濃度と前記の換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、排便ガスの中でも二酸化炭素は含有率が高く、また二酸化炭素濃度と腸内状態指標である便pHとの相関も高いことから、排便ガス中の濃度測定対象とする所定成分を二酸化炭素とし、二酸化炭素濃度から腸内状態指標である便pHを推定することで、的確な生体改善効果を解析することができる。
【0015】
請求項4に記載の生体改善効果解析システムは、請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が二酸化炭素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の二酸化炭素濃度−カルボン酸濃度換算データおよびカルボン酸濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された二酸化炭素濃度と前記2つの換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、排便ガスの中でも二酸化炭素は濃度が高く、また二酸化炭素濃度から便中カルボン酸濃度を経由して腸内状態指標である便pHを推定することで、腸内状態指標である便pHの他に、便中カルボン酸に関する情報も取得するので、より的確な生体改善効果を解析することができる。
【0017】
請求項5による生体改善効果解析システムは、請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が水素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の水素濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された水素濃度と前記の換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、排便ガスの中でも水素は占有率が比較的高くまた環境中に存在しないので精度良く測定でき、さらに腸内状態指標である便pHとの相関も高いことから、所定成分を水素とすることで、便pHを精度良く推定することで、的確な生体改善効果を解析することができる。
【0019】
請求項6による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記生体となる被験者を識別するための個人情報を入力する個人情報入力手段を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、個人情報入力手段を設けることによって、ひとつのシステムで複数の使用者に対して摂取物の生体改善効果を同時に解析することが可能である。
【0020】
請求項7による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記摂取物の摂取情報が摂取物の摂取開始、摂取停止に関する情報であることを特徴とする。
本発明によれば、摂取開始および摂取停止を摂取情報とすることで、簡単な操作での摂取情報の入力で解析システムを利用できる。
【0021】
請求項8による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、摂取物の生体改善効果に影響を与える可能性のある要因が発生した場合に入力する影響要因情報入力手段を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、摂取物の生体改善効果が現れるのに一定の期間を要する。摂取期間中に薬の服用や普段と異なる飲酒など、解析対象の摂取物の効果に影響を与える可能性のある要因が発生した場合、これを入力する入力手段を設けることによって、使用者が普段通りの生活の中で本発明の生体効果改善システムを使用しても効果解析時に影響要因の有無を考慮した解析が可能となるので、摂取物の生体改善効果を的確に解析することが可能となる。
【0022】
請求項9による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、衛生洗浄便座装置の付いた洋式便器に設置され、または既設の洋式便器に後付けされていることを特徴とする。
本発明によれば、洋式便器に設置することで、使用者が普段の生活リズムの中で必要な測定が出来るため、使用者に余計な手間をかけずに気軽に、本発明のシステムを利用することができる。
【0023】
また、請求項10による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の生体改善効果の解析において、摂取物の摂取停止後の排便ガス濃度も測定し、摂取停止後における効果の継続性、効果の遅発をも解析することを特徴とする。
本発明によれば、摂取期間中だけではなく、摂取停止後に効果が継続的に残る、または摂取してから一定期間後になって初めて効果が現れる、といった種類の摂取物の効果をも解析することができるので、多様な摂取物の多様な効果解析に適用が可能となる。
【0024】
本発明による生体改善効果の解析方法は、個々人が摂取した摂取物の生体に対する改善効果を解析する方法であって、この方法は、個人識別ボタンが操作されることによって個人を特定し、摂取物の摂取前、摂取継続中の当該個人について、排便時に併発する排便ガスの濃度を測定し、その測定データから被験者の腸内状態を表す指標とする腸内状態指標を推定し、前記摂取物の摂取情報とその時の腸内状態指標との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の生体改善効果解析システムおよび解析方法は、上記の構成を備えているため、補助食品などの摂取物を摂取したときの効果があるのかどうかをユーザ一人一人が、実際に試してみて判断することができるという従来にない機能を有する。したがって、補助食品メーカーにとっても、当該ユーザに対する有効性が検証されることによって、より積極的に商品を推奨することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の解析システムおよび解析方法についての第一の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の生体改善効果解析システムに係る操作手段と計測手段が、衛生洗浄便座装置の付いた洋式便器に設置された一例を示す(部分透視)外観図である。
【0027】
トイレの個室内には、洋式便器1が設置され、その壁面には衛生洗浄便座装置操作部2および生体改善効果解析システム操作パネル3が取り付けられている。操作部2と操作パネル3とは、本図のように別々に取り付けられていても良いが、両者を一体化して一つの操作パネルとしても良い。
【0028】
洋式便器1には、脱臭装置排気通路4に面してガスセンサ5が取り付けられている。本実施形態では排便ガス中の二酸化炭素ガスを本発明における所定成分として計測するため、ガスセンサ5として二酸化炭素センサを使用している。生体改善効果解析システムを使用する場合は、操作パネル3を操作して個人認識と摂取物の摂取状況登録等とを行い、排便に伴って発生する二酸化炭素ガスをガスセンサ5に検知させる。
【0029】
そして二酸化炭素ガス濃度−pH値換算データを保管するための記憶部、および前記換算データから便のpH値、すなわち本発明における腸内状態指標の一例として便pH値を計算するための演算部を内蔵する制御装置6によって便pH値を推定し、上記摂取状況登録データと便pHデータを、データ解析を行う外部機関に送信する。後述するように制御装置6の機能も外部機関に任せることも可能である。尚、装置内でデータ解析を行うことも可能である。
【0030】
図2は、生体改善効果解析システムの機能全体の一例の説明図である。本システムは、(1)効果解析方法の開始、から始まる。すなわち、操作手段である操作パネル3によってユーザが誰であるかを認識させる。次に、個人情報としての摂取食品の(2)摂取のあり、なしを入力する。ここで摂取食品はサプリメントやヨーグルトなどの保健機能性食品や一般に体に良いとされている食品である。ここまではユーザが入力しなければならないが、以後は、(3)排便、の開始により自動的に処理、解析がなされる。
【0031】
(3)排便、に伴って発生した二酸化炭素ガスは、(4)ガス測定、の工程でガスセンサ5によって検知され、後述の手段により便pHに換算される。腸内状態指標として便pH値の他に、二酸化炭素ガス濃度から便の水分量や硬さや腐敗物濃度を腸内状態指標として推定して、生体改善効果を判断する情報として用いることもできる。
【0032】
上記便pHデータは、(5)データ処理、の工程で制御装置6を使ってデータ処理するか、通信手段を使って外部機関へ送り、そこでデータ処理する。ここで、外部機関としては、ヨーグルトやサプリメントのメーカーやデータ処理専門機関を挙げることができる。
【0033】
(5)データ処理、は、当該摂取食品の摂取前、摂取継続中、摂取停止後のデータを時系列に処理し、平均値、最大値、標準偏差等を求めるものである。こうして求めたデータを上記外部機関に送信しても良い。
【0034】
(6)判定、は、摂取食品の有効性について判断するもので、摂取前の便pHと摂取継続中、あるいは摂取中断後の便pHと比較して判定を行う。この判定についても、制御装置6内あるいは外部機関で行うことができる。
【0035】
(7)報知、は、判定結果の報知を意味する。制御装置6を使用して(6)判定までの処理を行った場合、判定データそのものはユーザに報知しても分かり難くい場合がある。したがってユーザには直接報知せず外部機関に送信することとし、外部機関ではこのデータを蓄積して、当該ユーザにたいする健康アドバイスなどの理解しやすい情報に作り直してフィードバックするということができる。
【0036】
また腸内状態指標としての便pHのユーザにわかりやすい報知方法として腸内年齢に換算してユーザに報知することができる。ここで、腸内年齢とは腸内の状態により決定された年齢であり、例えばある腸内年齢に対応した腸内の状態(ここでは便pH)は、その腸内年齢と実際の年齢とが同じである複数のユーザの平均的な腸内状態(ここでは便pH)である。ユーザは便pHという科学的な数値ではその意味がわかりずらいこともあるが、このように身近に使用する年齢を尺度として使用することで自分の年齢とのずれや変化を実感できるため、判定結果がわかりやすくなる。
【0037】
また、外部機関が(4)、(5)、および(6)のデータ処理を行った場合にも、データ解析の結果である、当該食品の有効性のみをユーザ側に報知するのではなく、上述の健康アドバイスなどの理解しやすい情報に作り直してフィードバックするということができる。また、フィードバック情報は操作パネル3に表示しても良いが、ユーザの携帯電話やPCに送ることもできる。
【0038】
次に、ガスセンサ5で検知した二酸化炭素ガス濃度から腸内状態指標である便pHを推定する方法を詳細に説明する。まず、二酸化炭素ガス濃度から便中の酢酸濃度を推定し、次に酢酸濃度から便pH値を推定する例について説明する。
【0039】
図3は本発明に係る二酸化炭素ガス濃度からpH値を推定する手順を示すグラフの一例である。図3(a)は排便時に発生した排便ガスを含む便鉢内の空気をガスセンサ5で測定した例を示すグラフである。横軸の時間(秒)は排便の所要時間を表し、t1は排便開始時刻、t2は排便終了時刻であり、縦軸はガスセンサ5の出力電圧(Volt)である。
【0040】
本実施例で用いるガスセンサは被検ガス中の二酸化炭素濃度(Vol%)に対応する電圧値が出力されるものを使用している。一方、排便時の便鉢内の空気中の所定成分濃度は排便ガス自体の放出量変化だけでなく、排便ガスの拡散により刻々変化する。従って、便鉢内の排便ガス混合空気を採取して計測するガスセンサ5の出力もこの図に示すように刻々変化することとなる。そこで、本実施例では一回の排便における排便ガス中の二酸化炭素濃度の測定値としてガスセンサ5の出力電圧Vの出力最大値Vp(以下、ピーク値Vpと呼ぶ)に対応する濃度を採用している。
【0041】
ここで、本発明が測定対象とする成分の種類によっては、ガスセンサの出力が測定雰囲気中の成分濃度変化や温度変化の影響を受ける場合があるため、基準とする測定雰囲気のときの出力電圧値を基準出力値(Vb値)として、この値からの変化量をセンサ出力最大値(Vp値)とする必要がある。従って、本実施例では後述するように、一回の排便による連続したガス濃度測定におけるセンサ出力電圧Vの計測値群Vxのなかでの最大値をVmaxとしたとき、排便開始時刻t1の時のセンサ出力電圧値Vb1を前記の基準出力値として採用して、図中のVmax−Vb1をその測定におけるセンサ出力最大値(Vp値)としている。
【0042】
なお、本実施例で用いるガスセンサの出力電圧は二酸化炭素濃度(Vol%)に対応して出力されるものであるため、このピーク値Vpは一回の排便における二酸化炭素濃度測定での最高濃度値に相当するものとなる。
【0043】
以上のことからガスセンサ5は、少なくとも最高濃度に対応した出力を検出することが可能であればどのようなものでも使用可能である。また、このVp値は排便量が最も多い時点で出現するため、そのときのガス濃度を採用すれば、より簡便に便pH値を推定することができる。
【0044】
図3(b)は二酸化炭素の濃度と便中の酢酸濃度との相関を示す検量線である。実測したところ便中の酢酸濃度と併発したガス中の二酸化炭素濃度には、本図のような相関があることが判明した。その理由は明確ではないが、便のpH値は含まれる総カルボン酸の濃度によって左右され、このカルボン酸の一定割合が体内で水と二酸化炭素に分解されているためと推測される。したがって、カルボン酸の内の大部分を占める酢酸の濃度も上記二酸化炭素濃度と相関があることになる。ここでは、センサー出力最大値(Vp値)の計測値Vpxを計測したある測定における二酸化炭素濃度に対応する酢酸濃度をCacとした。
【0045】
図3(c)は酢酸濃度とpH値との相関を示す検量線である。便中の酢酸濃度とpH値の相関は、他に含まれる酸や塩基の影響を受けてデータは多少乱れるものの、ほぼ、直線的な関係を示すことが判明している。従って本検量線から、上記の酢酸濃度Cacに対応するpH値が求められる。
【0046】
以上のことから、排便時に排出される排便ガス中の二酸化炭素濃度を測定することによって二酸化炭素濃度に対応する便pH値を得ることができることが判る。
【0047】
図4(a)は二酸化炭素ガス濃度から便pH値を推定する手順を示す流れ図、および図4(b)および(c)は実測の換算データである。図4(a)に示したように、排便時に併発するガス中の二酸化炭素を利用して便の酢酸濃度を推定し、さらに酢酸濃度から便pH値を推定する。図4(b)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度(容量%で表示)と、そのときに採取した便中の酢酸濃度(μmol/g)との相関を調べたデータである。データのばらつきはあるものの、ほぼ直線的な相関があることが判明した。また、図4(c)は便中の酢酸濃度と便のpH値との相関を示すデータである。このデータもばらつきはあるものの、ほぼ直線的な相関を認めることができている。
【0048】
本実施形態において、腸内状態指標としての便pHの他に、便中酢酸濃度をも推定することができるので、便中酢酸濃度を摂取物の生体効果解析の補助情報として利用することもできる。
【0049】
図5(a)は、便pH値から腸内年齢を推定する手順を示す流れ図、および図5(b)は実測のデータである。先の図4(a)に示したように二酸化炭素ガス濃度から便pH値を推定した後、図5(a)に示すようにpH値を腸内年齢に換算する。ここで腸内年齢とは、加齢に伴って腸内環境が弱酸性からアルカリ性に変わってゆく状況を、ユーザに理解されやすいよう年齢に換算したものである。
【0050】
図5(b)のデータは、20代から80代までの約150人の便のpH値から作成した検量線であり、多少のばらつきはあるものの、便pH値と腸内年齢とに相関性があることが判る。
【0051】
図6は、本発明の生体改善効果解析システムを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の解析方法の手順を示す一例である。ユーザの動作を左側に、便座装置が行う処理を右側に分別して表示した。
【0052】
図6において、ユーザはトイレ内に入室し排便して退室するのであるが、このトイレには本発明の生体改善効果解析システムが取り付けてあるため、後日、補助食品を摂取した効果の解析結果を得ることができる。
【0053】
まずユーザが入室すると人体検知センサによって入室が検知される。ここで、測定の初日であればユーザは初回の個人登録を操作パネル3で行う。このとき登録する内容としては個人ID、性別、年齢、測定開始日、終了予定日等であり、本実施形態では操作パネル3に設けられた個人識別ボタンを選択して行う。測定の初日でなく、測定継続中のユーザの場合は、個人識別情報入力から始める。個人識別情報入力は、登録した前記の個人識別ボタンを押すことによって、たとえば、「被験者A」であることをシステムに認識させる。
これにより、例えば病院などで一つのトイレを複数の人で共用する場合においても個人の識別が可能であり、個々人に対する摂取物の効果解析が可能である。
【0054】
個人識別が入力されるとガスセンサ5のスイッチが入る。そしてユーザが着座すると着座センサが着座を検知し、ガスセンサ5と制御装置6が連動して二酸化炭素ガス濃度の記録および記憶を開始する。着座センサを使わずにユーザが各センサの始動記録および記憶開始スイッチを押してもよい。
【0055】
ガスセンサ5の稼動開始時の時刻を図3(a)に示したようにt1とし、その時刻に対応するガスセンサ5の電圧値(Vol%濃度)をV1とする。ユーザが排便を開始し終了するまで、ガスセンサ5は一定時間おき、たとえば1秒おきにデータVxを検出し記憶部に書き込む。
【0056】
排便終了後、ユーザが人体洗浄を開始する。洗浄開始ボタンが押されたときにガスセンサ5の記録を終了させる。排便終了時の時間t2とガスセンサ5のそのときの検知データV2が記憶される。なお、排便前または排便中に洗浄ボタンが使われるケースもあることを考慮する場合は、洗浄ボタンと連動させずにユーザが手動で記憶終了させる形式としてもよい。
【0057】
さらに制御装置6の演算部では、t1〜t2の範囲で二酸化炭素ガス濃度の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxの値またはVmaxから二酸化炭素ガス濃度の最小値Vb1を引いた値を測定値(ピーク値Vp)として記憶部に記録する。
【0058】
上述の図4(b)に示したような相関データに基づいてピーク値Vpに対応する酢酸濃度Cacを同定し、図4(c)の相関データに基づいて酢酸濃度Cacに対応するpH値を推定する。続いて図5(b)に示したような相関データに基づいてpH値と対応する腸内年齢を推定する。
【0059】
得られた推定結果と測定日を記憶部に書き込み当日が測定最終日かどうかを判定する。最終日でない場合、すなわち、測定初日または測定継続日であった場合は着座センサによるユーザの離座感知、人体検知センサによる退室検知がなされた時点で生体改善効果解析システムは停止する。
【0060】
また、当日が測定最終日であった場合には、摂取なし期間に得られた便pHの合計を排便回数で除して平均値を出し、その結果を記憶する。また、同様に摂取期間に得られた便pHの合計を排便回数で除して平均値を出し、その結果を記憶する。そして上記2つの平均値の大小を比較し、摂取なし期間の便pHよりも摂取期間の便pHの平均値が小さければユーザである「被験者A」にとって、摂取食品は効果ありと判断する。これらの演算および判断は制御装置6またはデータ送信先の前記外部機関によって行い、後刻、「被験者A」に情報がもたらされる。
【0061】
図6で説明した解析方法においては、摂取なしおよび摂取ありの場合の例のみを示したが、摂取食品の摂取効果を確かめるための手段としては他にも様々な方法がある。図7は、本発明の生体改善効果解析システムを使った解析方法の例を示す一覧である。
【0062】
図7において、(1)は、図6で説明した摂取なし、摂取ありのみの2段階方式であって、単に、食品摂取の効果を見たい場合の方法である。また、摂取食品の摂取有効性の判断をpH値の増減で行って、その結果を腸内年齢に換算しユーザに伝えるようにしている。
【0063】
(2)および(3)は摂取なし期間(t1〜t2)、摂取あり期間(t2〜t3)および摂取なし期間(t3〜t4)を経る3段階方式であって、t1〜t2のpH値よりもt2〜t3およびt3〜t4のpH値が低くなる(2)の場合には、摂取終了後にも持続効果があることを解析でき、また、t2〜t3のpH値のみがt1〜t2およびt3〜t4のpH値よりもが低くなる(3)の場合には、摂取期間中のみ効果があることを解析できる。
【0064】
(4)と(5)は、摂取終了後の期間をt3〜t4、t4〜t5およびt5〜t6の3期間に分ける。このうち(4)は効果持続の期間を解析する方法であり、(5)は摂取効果発現時期を解析する方法である。
【0065】
(6)は摂取食品Aを先に摂取し、効果が発現しなかった場合に次の摂取食品Bを摂取して効果を解析する方法である。
【0066】
最後に(7)は、薬物摂取等、摂取食品の効果を阻害する状況があった場合の対処方法であり、この薬物等を摂取した期間のデータを除外することによって、摂取食品の摂取効果解析の正確性を保証するものである。
【0067】
次に、本発明の生体改善効果解析システムを、より具体的に説明する。図8は、本発明に係る操作パネルのもっとも単純な例を示す正面図である。操作パネル3は、各個人を識別するための個人識別ボタンA、BおよびC、個人情報を表示させるための表示部10および表示ボタン11を備えている。補助食品の摂取ありなしは個人識別ボタンを押した後、表示ボタン11を複数回押すことで登録することができる。
【0068】
図9は、図8の操作パネルを使用して初回登録を行う例である。個人識別(本例では35歳および40歳の男性、被験者A、被験者Bの2名が登録)、試験開始日(2007/9/1)、摂取開始日(2007/9/15)および試験終了日(2007/9/28)を登録する。また同時に、ヨーグルト等おなかの調子を整える保健機能食品の摂取のありなしについても、それらの日を登録しておく。
【0069】
図10は、図8の操作パネルを使用して毎回登録を行う例である。個人識別(ユーザが上記被験者A、被験者Bのどちらであるか)を登録する。すると図6に示した手順で生体改善効果解析システムが動作し、二酸化炭素ガス濃度の測定→酢酸濃度に換算→pH値に換算→腸内年齢に換算の順に進行し、これらのデータが記録される。
【0070】
図11は、図9および図10を経て試験期間が終了した場合の処理を示す例である。図10で記録、演算して作成したマトリクス図11(a)から、図11(b)に示すように被験者Aのみのデータを抜き取る。そして摂取前と摂取後の平均腸内pHをそれぞれ演算し効果の有無を解析する。(検証結果を表示部10に表示し被験者に報知する。)
【0071】
図12は、本発明に係る操作パネルの他の例を示す正面図である。操作パネル3は、図8の機能に加えて食品ボタン12を追加している。この食品ボタン12は、ヨーグルト等の保健機能食品を摂取したことを登録するためのものであり、(1)摂取している日に毎回押す方法、あるいは、(2)摂取開始日に押し、摂取終了日に押すことで切り替えボタンとして使用する方法がある。
【0072】
図13は、図12の操作パネルを使用して初回登録を行う例である。個人識別、試験開始日(2007/9/1)および試験終了日(2007/9/28)を登録する。この例ではヨーグルト摂取日の登録は毎回登録時に行うものとする。一方、図14は 前記図9の例と同様、ヨーグルト摂取のありなしについても、初回登録時に決定し登録しておく方法である。
【0073】
図15は、図12の操作パネルを使用して図13の方式で解析を行う場合について、毎回登録を行う例である。個人識別(ユーザが上記被験者A、被験者Bのどちらであるか)の登録とヨーグルト摂取ありなしを登録する。ヨーグルト摂取のありなしについては毎回ボタンを押すか、あるいはヨーグルト摂取の開始日および停止時にボタンを押す、のどちらかの方式をとる。すると図6に示した手順で生体改善効果解析システムが動作し、二酸化炭素ガス濃度の測定→酢酸濃度に換算→pH値に換算→腸内年齢に換算の順に進行し、これらのデータが記録される。
【0074】
図16は、図12の操作パネルを使用し試験終了日までのデータが登録され演算が行われた例である。図15で記録、演算して作成したマトリクス図16(a)から、図16(b)に示すように被験者Aのみのデータを抜き取る。そしてヨーグルト摂取前と摂取期間中および摂取停止後の平均便pHをそれぞれ演算し、摂取停止後の持続効果を解析する。
【0075】
図17は、図16の変形例である。ここではヨーグルト摂取前の期間の腸内年齢(A1)と、摂取後の期間の腸内年齢(A2)を算出(平均値)し、A1>A2であれば効果ありと判定する。
【0076】
図18は、本発明に係る操作パネルの他の例を示す正面図である。操作パネル3は、図12の操作パネル3の機能に加えて、異常ボタン13を追加している。異常ボタン13は、ヨーグルト等の保健機能食品の効果やおなかの状態に影響を与える因子があるとき、例えば抗生物質等の薬品類を摂取したり、飲酒したり、あるいは他の機能性食品を摂取したりした場合に押すことで、異常時のデータを外したデータ解析が可能となる。
【0077】
図19は、図18の操作パネルを使用して毎回登録を行う例である。初回登録の図は省略するが、初回登録時には他の例と同様、個人識別、試験開始日、摂取開始日および試験終了日を登録する。そして本図の毎回登録では、個人識別(ユーザが上記被験者A、被験者Bのどちらであるか)の登録とヨーグルト摂取ありなし、および異常ありなしを登録する。ヨーグルト摂取のありなしについては毎回ボタンを押すか、あるいはヨーグルト摂取の開始日および停止時にボタンを押す、のどちらかの方式をとる。すると図6に示した手順で生体改善効果解析システムが動作し、二酸化炭素ガス濃度の測定→酢酸濃度に換算→pH値に換算→腸内年齢に換算の順に進行し、これらの毎日のデータが記録、演算される。
【0078】
図20は、図18の操作パネルを使って試験終了日までのデータが登録され演算が行われた例である。図19で記録、演算して作成したマトリクス図20(a)から、図20(b)に示すように被験者Aのみのデータを抜き取る。そして、異常ボタンの押された日のデータを除いてヨーグルト摂取前と摂取期間中の平均便pHをそれぞれ演算し摂取効果を解析する。
【0079】
以上述べた第一の実施形態では、二酸化炭素濃度から便pHを推定する際にカルボン酸濃度を介して便pHを推定するものであったが、本発明の別の第二の実施形態として二酸化炭素濃度から直接便pHを推定することも可能である。以下に、先に述べた第一の実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0080】
図21は、第一の実施形態と同じ構成で併発ガス中の二酸化炭素濃度を計測して便pH値との関係を求めた実験データを示す図である。
このように、両者の間には良好な相関性が認められ、併発ガスの二酸化炭素濃度の測定によって直接に便のpH値の推定が可能であることが分かる。すなわち、本発明は先に述べた第一の実施形態と同じ構成及び方法を採用することによって、排便ガス中の二酸化炭素を所定成分とする濃度測定結果から腸内状態指標としての便pH値を直接求めることも可能である。さらに、この便pH値の代わりの腸内状態指標として被験者の腸内年齢による報知も同様な手順で可能である。
【0081】
次に本発明の第三の実施形態について説明する。
本実施形態においては、排便ガス中の所定成分が水素であり、ガスセンサが水素センサである点が異なるが、それ以外の装置の構成及び手順は第一の実施形態と同じなため、省略して異なる部分を以下に説明する。
【0082】
図22に示すように、水素ガスセンサの出力(ピーク値:Vp)と便pH値との間に良好な相関関係が得られた。このとき用いた水素ガスセンサは出力のピーク値(Vp)と水素濃度との間には対応関係が認められるものであるため、先の形態での二酸化炭素濃度の場合と同様に、ガス中の水素濃度とpH値との相関も認められることとなり、併発ガス中の水素濃度の測定によってそのときの便のpH値を推定することが可能であることが判った。すなわち、本発明は排便ガス中の水素を所定成分とする濃度測定によって便のpH値を直接求めることも可能である。
【0083】
以下、排便ガス中の所定成分としての水素ガスを利用する本実施形態について詳細に説明する。
【0084】
水素濃度から直接に便pHを推定する場合、ガスセンサが水素センサであること、およびセンサ出力が水素濃度である点が異なるが、その他のシステム構成と動作、および腸内状態指標である便pHから摂取物の効果を解析する解析手段などは前記した二酸化炭素濃度から直接に便pHを推定する場合と同様であり、データ処理手順も二酸化炭素濃度を水素濃度に置き換えたものであるため、以下では異なる部分を中心として説明する。
【0085】
まず、水素ガスセンサによって排便ガス中の水素濃度を測定する。次に、前記二酸化炭素の場合と同様に、水素ガスセンサ出力から水素ガス濃度の最大値に対応するピーク値Vp(Volt)を求める。次に予め記憶部に記憶されている水素ガス濃度の最大値に対応するピーク値Vpと便pHとの対応データ(図22の相関図に基く)を用いて、便のpH値を推定する。推定した便pH値を、摂取物の生体効果改善の解析に利用するために記憶部に書き込む。さら得られた便pH値を、第一の実施形態と同様に図5(b)に示す相関関係に基いて腸内年齢を推定し、推定結果をユーザに表示等により報知する。
【0086】
以上排便ガス中の所定成分として二酸化炭素と水素を例示して本発明を説明したが、所定成分の別の例としてメタンガス、アンモニア、硫化水素、メチルカプタンなどの場合でも本発明を適用することができる。
【0087】
また、排便ガス濃度から推定される腸内状態指標として便pH値を例として挙げて以上で詳細に説明したが、他の指標、例えば便中腐敗成分濃度、腸内細菌の総数、腸内細菌の分布、さらにニオイ強度や臭気指数など、を例として挙げることができる。
【0088】
本発明の別の実施形態として、生体改善効果システムを便器に設置する代わりに、排便時の便器のボウル内の空気を採取する構成を持たせて便器機能とは独立したシステムとし、トイレの便器の近辺に設置することができる。
本実施形態によれば、ことによって既存のトイレ空間に便器との取り合いを考慮することなく後付でどんなトイレでも自由に設置することができるので、好ましい。
【0089】
また、本発明の別の実施形態として、生体改善効果システムをトイレのキャビネットなどの建具の中に設置することができる。
本実施形態によれば、外見上生体改善効果システムが見えないようにすることで、トータルデザインに配慮しすっきりとしたトイレ空間を実現することができるので、好ましい。
【0090】
本発明のさらなる別の実施形態として、生体改善効果システムを携帯タイプとすることができる。
本実施形態によれば、生体改善システムを持ち運び可能となるので、排便する場所の制限を受けることなく、例えば外出先での測定が可能となるため、本発明が目的の一つとする継続した測定が必要となる摂取物の摂取効果測定が被験者の日常生活を制限することなく実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る生体改善効果解析システムに係る操作手段と計測手段が、衛生洗浄便座装置の付いた洋式便器に設置された一例を示す(部分透視)外観図
【図2】同生体改善効果解析システムの機能全体を示す図
【図3】二酸化炭素ガス濃度から便pH値を推定する手順を示すグラフ
【図4】二酸化炭素ガス濃度から便pH値を推定する手順を示す流れ図および実測換算データ
【図5】二酸化炭素ガス濃度から腸内年齢を推定する手順を示す流れ図および実測のデータ
【図6】本発明の生体改善効果解析システムを衛生洗浄便座装置組込タイプ洋式便器に搭載した場合の解析方法の手順を示す図
【図7】本発明に係る生体改善効果解析システムを使った解析方法の例を示す図
【図8】本発明に係る生体改善効果解析システムを構成する操作パネルの例を示す正面図
【図9】図8の操作パネルを使用して初回登録を行う例を説明した図
【図10】図8の操作パネルを使用して毎回登録を行う例を説明した図
【図11】図9および図10を経て試験期間が終了した場合の処理の例を説明した図
【図12】操作パネルの他の例を示す正面図
【図13】図12の操作パネルを使用して初回登録を行う例を説明した図
【図14】ヨーグルト摂取のありなしについても、初回登録時に決定し登録しておく例を説明した図
【図15】図12の操作パネルを使用して図13の方式で解析を行う場合について、毎回登録を行う例を説明した図
【図16】図12の操作パネルを使用し試験終了日までのデータが登録され演算が行われた例を説明した図
【図17】図16の変形例を示す図
【図18】操作パネルの他の例を示す正面図
【図19】図18の操作パネルを使用して毎回登録を行う例を説明した図
【図20】図18の操作パネルを使って試験終了日までのデータが登録され演算が行われた例を説明した図
【図21】二酸化炭素ガス濃度から直接、便のpHを推定する実測換算データを示す図
【図22】水素ガス濃度から直接、便pHを推定する実測換算データを示す図
【符号の説明】
【0092】
1…洋式便器、2…衛生洗浄便座装置操作部、3…生体改善効果解析システム操作パネル、4…脱臭装置排気通路、5…ガスセンサ、6…制御装置、10…表示部、11…表示ボタン、12…食品ボタン、13…異常ボタン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々人が摂取した摂取物の生体に対する機能改善効果を、排便時に併発する排便ガス濃度を利用して腸内状態を推定することで解析する生体改善効果解析システムおよび解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体に良いと言われるサプリメント(健康補助食品)や食品が世の中に数多く出回っている。しかし、その有効性については判断が難しいため、宣伝を信じるか知り合いの言葉を信じて購入し、試しに飲んでみて、利いたような気がするという程度の不明確な判断をしているのが現状である。サプリメントに限らず、ヨーグルト等の乳酸菌入り食品など、整腸効果が一般に認められている補助食品についても、はたして特定の個人についてどの程度有効に機能しているのかは不明である。
【0003】
したがって上記のようなサプリメントやヨーグルト等(以下、「補助食品」と総称する。)については、使用者(以下、「ユーザ」という。)側から見ると、体に良いかも知れないとは思っても効果が目に見えないため摂取が長続きしないという問題がある。
【0004】
一方、補助食品を生産している企業側にとっても、個々人に有効性が検証された最適な商品種類、摂取方法を提供することができれば、売り上げを伸ばすことができるがそのような手段がない。
【0005】
個々人が摂取した補助食品などの摂取物の、生体に対する改善効果を腸内状態から検証するためのシステムおよび検証方法については知られていない。わずかに関連する技術としては下記の特許文献1、2が知られている。
【0006】
特許文献1の生理機能の計測方法及び試験用食品には、特定の疾患に対応して指標となる成分を添加した試験用食品を作成し、一定期間、この試験用食品のみを摂取させながら血液、尿、糞便を採取し、ここから得られたデータに基づいて被験者の特定の消化器系、循環器系に対する状態を計測する方法が記載されている。
【0007】
また特許文献2の生体モニタ装置は、布製のT字帯にガスセンサを装着し、肛門から放出されたガスをガスセンサで検知してデータ化し、メモリに蓄えられたデータと過去のデータとを比較し、差が大きい場合など異常が認められる場合に表示装置に警告を表示するものである。
【0008】
【特許文献1】特許第3611996号公報
【特許文献2】特開平9−43182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、従来にあっては、個々人が摂取した補助食品などの摂取物の、生体に対する改善効果を腸内状態から検証することができず、適正な食品種類、その摂取量、摂取方法等を、メーカー側が把握し、また当該個人に対してもフィードバックすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1による本発明の生体改善効果解析システムは、被験者が摂取した摂取物の生体に対する改善効果を解析するためのシステムであって、このシステムは、前記摂取物の摂取情報を入力する摂取情報入力手段と、排便時に併発する排便ガス中の所定成分濃度を測定する排便ガス濃度計測手段と、前記排便ガス濃度計測手段によって計測された計測データから被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標を推定する腸内状態指標推定手段と、前記摂取物の摂取情報と前記腸内状態指標の時系列との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析する改善効果解析手段と、その解析結果を報知する報知手段と、を備えている。
【0011】
本発明によれば、補助食品などの摂取物を摂取した時の効果を、被験者の排便ガス成分濃度測定によって推定される腸内状態指標の変化状態と摂取物の摂取状況とから解析するので、使用者一人一人に対して摂取物の摂取の効果があるか否かを客観的にしかも簡便に判断できる。
【0012】
請求項2による生体改善効果解析システムは、請求項1に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記腸内状態指標が便のpH値を表す便pHであることを特徴とする。
本発明によれば、便pHはもっとも広く認知されている腸内状態指標のひとつであり、また排便ガスから便pHを推定することが容易なことから、腸内状態として便pHを用いることにより、精度の高い生体改善効果を解析することができる。
【0013】
請求項3による生体改善効果解析システムは、請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が二酸化炭素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の二酸化炭素濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された二酸化炭素濃度と前記の換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、排便ガスの中でも二酸化炭素は含有率が高く、また二酸化炭素濃度と腸内状態指標である便pHとの相関も高いことから、排便ガス中の濃度測定対象とする所定成分を二酸化炭素とし、二酸化炭素濃度から腸内状態指標である便pHを推定することで、的確な生体改善効果を解析することができる。
【0015】
請求項4に記載の生体改善効果解析システムは、請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が二酸化炭素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の二酸化炭素濃度−カルボン酸濃度換算データおよびカルボン酸濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された二酸化炭素濃度と前記2つの換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、排便ガスの中でも二酸化炭素は濃度が高く、また二酸化炭素濃度から便中カルボン酸濃度を経由して腸内状態指標である便pHを推定することで、腸内状態指標である便pHの他に、便中カルボン酸に関する情報も取得するので、より的確な生体改善効果を解析することができる。
【0017】
請求項5による生体改善効果解析システムは、請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が水素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の水素濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された水素濃度と前記の換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、排便ガスの中でも水素は占有率が比較的高くまた環境中に存在しないので精度良く測定でき、さらに腸内状態指標である便pHとの相関も高いことから、所定成分を水素とすることで、便pHを精度良く推定することで、的確な生体改善効果を解析することができる。
【0019】
請求項6による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記生体となる被験者を識別するための個人情報を入力する個人情報入力手段を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、個人情報入力手段を設けることによって、ひとつのシステムで複数の使用者に対して摂取物の生体改善効果を同時に解析することが可能である。
【0020】
請求項7による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記摂取物の摂取情報が摂取物の摂取開始、摂取停止に関する情報であることを特徴とする。
本発明によれば、摂取開始および摂取停止を摂取情報とすることで、簡単な操作での摂取情報の入力で解析システムを利用できる。
【0021】
請求項8による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、摂取物の生体改善効果に影響を与える可能性のある要因が発生した場合に入力する影響要因情報入力手段を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、摂取物の生体改善効果が現れるのに一定の期間を要する。摂取期間中に薬の服用や普段と異なる飲酒など、解析対象の摂取物の効果に影響を与える可能性のある要因が発生した場合、これを入力する入力手段を設けることによって、使用者が普段通りの生活の中で本発明の生体効果改善システムを使用しても効果解析時に影響要因の有無を考慮した解析が可能となるので、摂取物の生体改善効果を的確に解析することが可能となる。
【0022】
請求項9による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、衛生洗浄便座装置の付いた洋式便器に設置され、または既設の洋式便器に後付けされていることを特徴とする。
本発明によれば、洋式便器に設置することで、使用者が普段の生活リズムの中で必要な測定が出来るため、使用者に余計な手間をかけずに気軽に、本発明のシステムを利用することができる。
【0023】
また、請求項10による生体改善効果解析システムは、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の生体改善効果の解析において、摂取物の摂取停止後の排便ガス濃度も測定し、摂取停止後における効果の継続性、効果の遅発をも解析することを特徴とする。
本発明によれば、摂取期間中だけではなく、摂取停止後に効果が継続的に残る、または摂取してから一定期間後になって初めて効果が現れる、といった種類の摂取物の効果をも解析することができるので、多様な摂取物の多様な効果解析に適用が可能となる。
【0024】
本発明による生体改善効果の解析方法は、個々人が摂取した摂取物の生体に対する改善効果を解析する方法であって、この方法は、個人識別ボタンが操作されることによって個人を特定し、摂取物の摂取前、摂取継続中の当該個人について、排便時に併発する排便ガスの濃度を測定し、その測定データから被験者の腸内状態を表す指標とする腸内状態指標を推定し、前記摂取物の摂取情報とその時の腸内状態指標との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の生体改善効果解析システムおよび解析方法は、上記の構成を備えているため、補助食品などの摂取物を摂取したときの効果があるのかどうかをユーザ一人一人が、実際に試してみて判断することができるという従来にない機能を有する。したがって、補助食品メーカーにとっても、当該ユーザに対する有効性が検証されることによって、より積極的に商品を推奨することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の解析システムおよび解析方法についての第一の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の生体改善効果解析システムに係る操作手段と計測手段が、衛生洗浄便座装置の付いた洋式便器に設置された一例を示す(部分透視)外観図である。
【0027】
トイレの個室内には、洋式便器1が設置され、その壁面には衛生洗浄便座装置操作部2および生体改善効果解析システム操作パネル3が取り付けられている。操作部2と操作パネル3とは、本図のように別々に取り付けられていても良いが、両者を一体化して一つの操作パネルとしても良い。
【0028】
洋式便器1には、脱臭装置排気通路4に面してガスセンサ5が取り付けられている。本実施形態では排便ガス中の二酸化炭素ガスを本発明における所定成分として計測するため、ガスセンサ5として二酸化炭素センサを使用している。生体改善効果解析システムを使用する場合は、操作パネル3を操作して個人認識と摂取物の摂取状況登録等とを行い、排便に伴って発生する二酸化炭素ガスをガスセンサ5に検知させる。
【0029】
そして二酸化炭素ガス濃度−pH値換算データを保管するための記憶部、および前記換算データから便のpH値、すなわち本発明における腸内状態指標の一例として便pH値を計算するための演算部を内蔵する制御装置6によって便pH値を推定し、上記摂取状況登録データと便pHデータを、データ解析を行う外部機関に送信する。後述するように制御装置6の機能も外部機関に任せることも可能である。尚、装置内でデータ解析を行うことも可能である。
【0030】
図2は、生体改善効果解析システムの機能全体の一例の説明図である。本システムは、(1)効果解析方法の開始、から始まる。すなわち、操作手段である操作パネル3によってユーザが誰であるかを認識させる。次に、個人情報としての摂取食品の(2)摂取のあり、なしを入力する。ここで摂取食品はサプリメントやヨーグルトなどの保健機能性食品や一般に体に良いとされている食品である。ここまではユーザが入力しなければならないが、以後は、(3)排便、の開始により自動的に処理、解析がなされる。
【0031】
(3)排便、に伴って発生した二酸化炭素ガスは、(4)ガス測定、の工程でガスセンサ5によって検知され、後述の手段により便pHに換算される。腸内状態指標として便pH値の他に、二酸化炭素ガス濃度から便の水分量や硬さや腐敗物濃度を腸内状態指標として推定して、生体改善効果を判断する情報として用いることもできる。
【0032】
上記便pHデータは、(5)データ処理、の工程で制御装置6を使ってデータ処理するか、通信手段を使って外部機関へ送り、そこでデータ処理する。ここで、外部機関としては、ヨーグルトやサプリメントのメーカーやデータ処理専門機関を挙げることができる。
【0033】
(5)データ処理、は、当該摂取食品の摂取前、摂取継続中、摂取停止後のデータを時系列に処理し、平均値、最大値、標準偏差等を求めるものである。こうして求めたデータを上記外部機関に送信しても良い。
【0034】
(6)判定、は、摂取食品の有効性について判断するもので、摂取前の便pHと摂取継続中、あるいは摂取中断後の便pHと比較して判定を行う。この判定についても、制御装置6内あるいは外部機関で行うことができる。
【0035】
(7)報知、は、判定結果の報知を意味する。制御装置6を使用して(6)判定までの処理を行った場合、判定データそのものはユーザに報知しても分かり難くい場合がある。したがってユーザには直接報知せず外部機関に送信することとし、外部機関ではこのデータを蓄積して、当該ユーザにたいする健康アドバイスなどの理解しやすい情報に作り直してフィードバックするということができる。
【0036】
また腸内状態指標としての便pHのユーザにわかりやすい報知方法として腸内年齢に換算してユーザに報知することができる。ここで、腸内年齢とは腸内の状態により決定された年齢であり、例えばある腸内年齢に対応した腸内の状態(ここでは便pH)は、その腸内年齢と実際の年齢とが同じである複数のユーザの平均的な腸内状態(ここでは便pH)である。ユーザは便pHという科学的な数値ではその意味がわかりずらいこともあるが、このように身近に使用する年齢を尺度として使用することで自分の年齢とのずれや変化を実感できるため、判定結果がわかりやすくなる。
【0037】
また、外部機関が(4)、(5)、および(6)のデータ処理を行った場合にも、データ解析の結果である、当該食品の有効性のみをユーザ側に報知するのではなく、上述の健康アドバイスなどの理解しやすい情報に作り直してフィードバックするということができる。また、フィードバック情報は操作パネル3に表示しても良いが、ユーザの携帯電話やPCに送ることもできる。
【0038】
次に、ガスセンサ5で検知した二酸化炭素ガス濃度から腸内状態指標である便pHを推定する方法を詳細に説明する。まず、二酸化炭素ガス濃度から便中の酢酸濃度を推定し、次に酢酸濃度から便pH値を推定する例について説明する。
【0039】
図3は本発明に係る二酸化炭素ガス濃度からpH値を推定する手順を示すグラフの一例である。図3(a)は排便時に発生した排便ガスを含む便鉢内の空気をガスセンサ5で測定した例を示すグラフである。横軸の時間(秒)は排便の所要時間を表し、t1は排便開始時刻、t2は排便終了時刻であり、縦軸はガスセンサ5の出力電圧(Volt)である。
【0040】
本実施例で用いるガスセンサは被検ガス中の二酸化炭素濃度(Vol%)に対応する電圧値が出力されるものを使用している。一方、排便時の便鉢内の空気中の所定成分濃度は排便ガス自体の放出量変化だけでなく、排便ガスの拡散により刻々変化する。従って、便鉢内の排便ガス混合空気を採取して計測するガスセンサ5の出力もこの図に示すように刻々変化することとなる。そこで、本実施例では一回の排便における排便ガス中の二酸化炭素濃度の測定値としてガスセンサ5の出力電圧Vの出力最大値Vp(以下、ピーク値Vpと呼ぶ)に対応する濃度を採用している。
【0041】
ここで、本発明が測定対象とする成分の種類によっては、ガスセンサの出力が測定雰囲気中の成分濃度変化や温度変化の影響を受ける場合があるため、基準とする測定雰囲気のときの出力電圧値を基準出力値(Vb値)として、この値からの変化量をセンサ出力最大値(Vp値)とする必要がある。従って、本実施例では後述するように、一回の排便による連続したガス濃度測定におけるセンサ出力電圧Vの計測値群Vxのなかでの最大値をVmaxとしたとき、排便開始時刻t1の時のセンサ出力電圧値Vb1を前記の基準出力値として採用して、図中のVmax−Vb1をその測定におけるセンサ出力最大値(Vp値)としている。
【0042】
なお、本実施例で用いるガスセンサの出力電圧は二酸化炭素濃度(Vol%)に対応して出力されるものであるため、このピーク値Vpは一回の排便における二酸化炭素濃度測定での最高濃度値に相当するものとなる。
【0043】
以上のことからガスセンサ5は、少なくとも最高濃度に対応した出力を検出することが可能であればどのようなものでも使用可能である。また、このVp値は排便量が最も多い時点で出現するため、そのときのガス濃度を採用すれば、より簡便に便pH値を推定することができる。
【0044】
図3(b)は二酸化炭素の濃度と便中の酢酸濃度との相関を示す検量線である。実測したところ便中の酢酸濃度と併発したガス中の二酸化炭素濃度には、本図のような相関があることが判明した。その理由は明確ではないが、便のpH値は含まれる総カルボン酸の濃度によって左右され、このカルボン酸の一定割合が体内で水と二酸化炭素に分解されているためと推測される。したがって、カルボン酸の内の大部分を占める酢酸の濃度も上記二酸化炭素濃度と相関があることになる。ここでは、センサー出力最大値(Vp値)の計測値Vpxを計測したある測定における二酸化炭素濃度に対応する酢酸濃度をCacとした。
【0045】
図3(c)は酢酸濃度とpH値との相関を示す検量線である。便中の酢酸濃度とpH値の相関は、他に含まれる酸や塩基の影響を受けてデータは多少乱れるものの、ほぼ、直線的な関係を示すことが判明している。従って本検量線から、上記の酢酸濃度Cacに対応するpH値が求められる。
【0046】
以上のことから、排便時に排出される排便ガス中の二酸化炭素濃度を測定することによって二酸化炭素濃度に対応する便pH値を得ることができることが判る。
【0047】
図4(a)は二酸化炭素ガス濃度から便pH値を推定する手順を示す流れ図、および図4(b)および(c)は実測の換算データである。図4(a)に示したように、排便時に併発するガス中の二酸化炭素を利用して便の酢酸濃度を推定し、さらに酢酸濃度から便pH値を推定する。図4(b)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度(容量%で表示)と、そのときに採取した便中の酢酸濃度(μmol/g)との相関を調べたデータである。データのばらつきはあるものの、ほぼ直線的な相関があることが判明した。また、図4(c)は便中の酢酸濃度と便のpH値との相関を示すデータである。このデータもばらつきはあるものの、ほぼ直線的な相関を認めることができている。
【0048】
本実施形態において、腸内状態指標としての便pHの他に、便中酢酸濃度をも推定することができるので、便中酢酸濃度を摂取物の生体効果解析の補助情報として利用することもできる。
【0049】
図5(a)は、便pH値から腸内年齢を推定する手順を示す流れ図、および図5(b)は実測のデータである。先の図4(a)に示したように二酸化炭素ガス濃度から便pH値を推定した後、図5(a)に示すようにpH値を腸内年齢に換算する。ここで腸内年齢とは、加齢に伴って腸内環境が弱酸性からアルカリ性に変わってゆく状況を、ユーザに理解されやすいよう年齢に換算したものである。
【0050】
図5(b)のデータは、20代から80代までの約150人の便のpH値から作成した検量線であり、多少のばらつきはあるものの、便pH値と腸内年齢とに相関性があることが判る。
【0051】
図6は、本発明の生体改善効果解析システムを内蔵した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の解析方法の手順を示す一例である。ユーザの動作を左側に、便座装置が行う処理を右側に分別して表示した。
【0052】
図6において、ユーザはトイレ内に入室し排便して退室するのであるが、このトイレには本発明の生体改善効果解析システムが取り付けてあるため、後日、補助食品を摂取した効果の解析結果を得ることができる。
【0053】
まずユーザが入室すると人体検知センサによって入室が検知される。ここで、測定の初日であればユーザは初回の個人登録を操作パネル3で行う。このとき登録する内容としては個人ID、性別、年齢、測定開始日、終了予定日等であり、本実施形態では操作パネル3に設けられた個人識別ボタンを選択して行う。測定の初日でなく、測定継続中のユーザの場合は、個人識別情報入力から始める。個人識別情報入力は、登録した前記の個人識別ボタンを押すことによって、たとえば、「被験者A」であることをシステムに認識させる。
これにより、例えば病院などで一つのトイレを複数の人で共用する場合においても個人の識別が可能であり、個々人に対する摂取物の効果解析が可能である。
【0054】
個人識別が入力されるとガスセンサ5のスイッチが入る。そしてユーザが着座すると着座センサが着座を検知し、ガスセンサ5と制御装置6が連動して二酸化炭素ガス濃度の記録および記憶を開始する。着座センサを使わずにユーザが各センサの始動記録および記憶開始スイッチを押してもよい。
【0055】
ガスセンサ5の稼動開始時の時刻を図3(a)に示したようにt1とし、その時刻に対応するガスセンサ5の電圧値(Vol%濃度)をV1とする。ユーザが排便を開始し終了するまで、ガスセンサ5は一定時間おき、たとえば1秒おきにデータVxを検出し記憶部に書き込む。
【0056】
排便終了後、ユーザが人体洗浄を開始する。洗浄開始ボタンが押されたときにガスセンサ5の記録を終了させる。排便終了時の時間t2とガスセンサ5のそのときの検知データV2が記憶される。なお、排便前または排便中に洗浄ボタンが使われるケースもあることを考慮する場合は、洗浄ボタンと連動させずにユーザが手動で記憶終了させる形式としてもよい。
【0057】
さらに制御装置6の演算部では、t1〜t2の範囲で二酸化炭素ガス濃度の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxの値またはVmaxから二酸化炭素ガス濃度の最小値Vb1を引いた値を測定値(ピーク値Vp)として記憶部に記録する。
【0058】
上述の図4(b)に示したような相関データに基づいてピーク値Vpに対応する酢酸濃度Cacを同定し、図4(c)の相関データに基づいて酢酸濃度Cacに対応するpH値を推定する。続いて図5(b)に示したような相関データに基づいてpH値と対応する腸内年齢を推定する。
【0059】
得られた推定結果と測定日を記憶部に書き込み当日が測定最終日かどうかを判定する。最終日でない場合、すなわち、測定初日または測定継続日であった場合は着座センサによるユーザの離座感知、人体検知センサによる退室検知がなされた時点で生体改善効果解析システムは停止する。
【0060】
また、当日が測定最終日であった場合には、摂取なし期間に得られた便pHの合計を排便回数で除して平均値を出し、その結果を記憶する。また、同様に摂取期間に得られた便pHの合計を排便回数で除して平均値を出し、その結果を記憶する。そして上記2つの平均値の大小を比較し、摂取なし期間の便pHよりも摂取期間の便pHの平均値が小さければユーザである「被験者A」にとって、摂取食品は効果ありと判断する。これらの演算および判断は制御装置6またはデータ送信先の前記外部機関によって行い、後刻、「被験者A」に情報がもたらされる。
【0061】
図6で説明した解析方法においては、摂取なしおよび摂取ありの場合の例のみを示したが、摂取食品の摂取効果を確かめるための手段としては他にも様々な方法がある。図7は、本発明の生体改善効果解析システムを使った解析方法の例を示す一覧である。
【0062】
図7において、(1)は、図6で説明した摂取なし、摂取ありのみの2段階方式であって、単に、食品摂取の効果を見たい場合の方法である。また、摂取食品の摂取有効性の判断をpH値の増減で行って、その結果を腸内年齢に換算しユーザに伝えるようにしている。
【0063】
(2)および(3)は摂取なし期間(t1〜t2)、摂取あり期間(t2〜t3)および摂取なし期間(t3〜t4)を経る3段階方式であって、t1〜t2のpH値よりもt2〜t3およびt3〜t4のpH値が低くなる(2)の場合には、摂取終了後にも持続効果があることを解析でき、また、t2〜t3のpH値のみがt1〜t2およびt3〜t4のpH値よりもが低くなる(3)の場合には、摂取期間中のみ効果があることを解析できる。
【0064】
(4)と(5)は、摂取終了後の期間をt3〜t4、t4〜t5およびt5〜t6の3期間に分ける。このうち(4)は効果持続の期間を解析する方法であり、(5)は摂取効果発現時期を解析する方法である。
【0065】
(6)は摂取食品Aを先に摂取し、効果が発現しなかった場合に次の摂取食品Bを摂取して効果を解析する方法である。
【0066】
最後に(7)は、薬物摂取等、摂取食品の効果を阻害する状況があった場合の対処方法であり、この薬物等を摂取した期間のデータを除外することによって、摂取食品の摂取効果解析の正確性を保証するものである。
【0067】
次に、本発明の生体改善効果解析システムを、より具体的に説明する。図8は、本発明に係る操作パネルのもっとも単純な例を示す正面図である。操作パネル3は、各個人を識別するための個人識別ボタンA、BおよびC、個人情報を表示させるための表示部10および表示ボタン11を備えている。補助食品の摂取ありなしは個人識別ボタンを押した後、表示ボタン11を複数回押すことで登録することができる。
【0068】
図9は、図8の操作パネルを使用して初回登録を行う例である。個人識別(本例では35歳および40歳の男性、被験者A、被験者Bの2名が登録)、試験開始日(2007/9/1)、摂取開始日(2007/9/15)および試験終了日(2007/9/28)を登録する。また同時に、ヨーグルト等おなかの調子を整える保健機能食品の摂取のありなしについても、それらの日を登録しておく。
【0069】
図10は、図8の操作パネルを使用して毎回登録を行う例である。個人識別(ユーザが上記被験者A、被験者Bのどちらであるか)を登録する。すると図6に示した手順で生体改善効果解析システムが動作し、二酸化炭素ガス濃度の測定→酢酸濃度に換算→pH値に換算→腸内年齢に換算の順に進行し、これらのデータが記録される。
【0070】
図11は、図9および図10を経て試験期間が終了した場合の処理を示す例である。図10で記録、演算して作成したマトリクス図11(a)から、図11(b)に示すように被験者Aのみのデータを抜き取る。そして摂取前と摂取後の平均腸内pHをそれぞれ演算し効果の有無を解析する。(検証結果を表示部10に表示し被験者に報知する。)
【0071】
図12は、本発明に係る操作パネルの他の例を示す正面図である。操作パネル3は、図8の機能に加えて食品ボタン12を追加している。この食品ボタン12は、ヨーグルト等の保健機能食品を摂取したことを登録するためのものであり、(1)摂取している日に毎回押す方法、あるいは、(2)摂取開始日に押し、摂取終了日に押すことで切り替えボタンとして使用する方法がある。
【0072】
図13は、図12の操作パネルを使用して初回登録を行う例である。個人識別、試験開始日(2007/9/1)および試験終了日(2007/9/28)を登録する。この例ではヨーグルト摂取日の登録は毎回登録時に行うものとする。一方、図14は 前記図9の例と同様、ヨーグルト摂取のありなしについても、初回登録時に決定し登録しておく方法である。
【0073】
図15は、図12の操作パネルを使用して図13の方式で解析を行う場合について、毎回登録を行う例である。個人識別(ユーザが上記被験者A、被験者Bのどちらであるか)の登録とヨーグルト摂取ありなしを登録する。ヨーグルト摂取のありなしについては毎回ボタンを押すか、あるいはヨーグルト摂取の開始日および停止時にボタンを押す、のどちらかの方式をとる。すると図6に示した手順で生体改善効果解析システムが動作し、二酸化炭素ガス濃度の測定→酢酸濃度に換算→pH値に換算→腸内年齢に換算の順に進行し、これらのデータが記録される。
【0074】
図16は、図12の操作パネルを使用し試験終了日までのデータが登録され演算が行われた例である。図15で記録、演算して作成したマトリクス図16(a)から、図16(b)に示すように被験者Aのみのデータを抜き取る。そしてヨーグルト摂取前と摂取期間中および摂取停止後の平均便pHをそれぞれ演算し、摂取停止後の持続効果を解析する。
【0075】
図17は、図16の変形例である。ここではヨーグルト摂取前の期間の腸内年齢(A1)と、摂取後の期間の腸内年齢(A2)を算出(平均値)し、A1>A2であれば効果ありと判定する。
【0076】
図18は、本発明に係る操作パネルの他の例を示す正面図である。操作パネル3は、図12の操作パネル3の機能に加えて、異常ボタン13を追加している。異常ボタン13は、ヨーグルト等の保健機能食品の効果やおなかの状態に影響を与える因子があるとき、例えば抗生物質等の薬品類を摂取したり、飲酒したり、あるいは他の機能性食品を摂取したりした場合に押すことで、異常時のデータを外したデータ解析が可能となる。
【0077】
図19は、図18の操作パネルを使用して毎回登録を行う例である。初回登録の図は省略するが、初回登録時には他の例と同様、個人識別、試験開始日、摂取開始日および試験終了日を登録する。そして本図の毎回登録では、個人識別(ユーザが上記被験者A、被験者Bのどちらであるか)の登録とヨーグルト摂取ありなし、および異常ありなしを登録する。ヨーグルト摂取のありなしについては毎回ボタンを押すか、あるいはヨーグルト摂取の開始日および停止時にボタンを押す、のどちらかの方式をとる。すると図6に示した手順で生体改善効果解析システムが動作し、二酸化炭素ガス濃度の測定→酢酸濃度に換算→pH値に換算→腸内年齢に換算の順に進行し、これらの毎日のデータが記録、演算される。
【0078】
図20は、図18の操作パネルを使って試験終了日までのデータが登録され演算が行われた例である。図19で記録、演算して作成したマトリクス図20(a)から、図20(b)に示すように被験者Aのみのデータを抜き取る。そして、異常ボタンの押された日のデータを除いてヨーグルト摂取前と摂取期間中の平均便pHをそれぞれ演算し摂取効果を解析する。
【0079】
以上述べた第一の実施形態では、二酸化炭素濃度から便pHを推定する際にカルボン酸濃度を介して便pHを推定するものであったが、本発明の別の第二の実施形態として二酸化炭素濃度から直接便pHを推定することも可能である。以下に、先に述べた第一の実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0080】
図21は、第一の実施形態と同じ構成で併発ガス中の二酸化炭素濃度を計測して便pH値との関係を求めた実験データを示す図である。
このように、両者の間には良好な相関性が認められ、併発ガスの二酸化炭素濃度の測定によって直接に便のpH値の推定が可能であることが分かる。すなわち、本発明は先に述べた第一の実施形態と同じ構成及び方法を採用することによって、排便ガス中の二酸化炭素を所定成分とする濃度測定結果から腸内状態指標としての便pH値を直接求めることも可能である。さらに、この便pH値の代わりの腸内状態指標として被験者の腸内年齢による報知も同様な手順で可能である。
【0081】
次に本発明の第三の実施形態について説明する。
本実施形態においては、排便ガス中の所定成分が水素であり、ガスセンサが水素センサである点が異なるが、それ以外の装置の構成及び手順は第一の実施形態と同じなため、省略して異なる部分を以下に説明する。
【0082】
図22に示すように、水素ガスセンサの出力(ピーク値:Vp)と便pH値との間に良好な相関関係が得られた。このとき用いた水素ガスセンサは出力のピーク値(Vp)と水素濃度との間には対応関係が認められるものであるため、先の形態での二酸化炭素濃度の場合と同様に、ガス中の水素濃度とpH値との相関も認められることとなり、併発ガス中の水素濃度の測定によってそのときの便のpH値を推定することが可能であることが判った。すなわち、本発明は排便ガス中の水素を所定成分とする濃度測定によって便のpH値を直接求めることも可能である。
【0083】
以下、排便ガス中の所定成分としての水素ガスを利用する本実施形態について詳細に説明する。
【0084】
水素濃度から直接に便pHを推定する場合、ガスセンサが水素センサであること、およびセンサ出力が水素濃度である点が異なるが、その他のシステム構成と動作、および腸内状態指標である便pHから摂取物の効果を解析する解析手段などは前記した二酸化炭素濃度から直接に便pHを推定する場合と同様であり、データ処理手順も二酸化炭素濃度を水素濃度に置き換えたものであるため、以下では異なる部分を中心として説明する。
【0085】
まず、水素ガスセンサによって排便ガス中の水素濃度を測定する。次に、前記二酸化炭素の場合と同様に、水素ガスセンサ出力から水素ガス濃度の最大値に対応するピーク値Vp(Volt)を求める。次に予め記憶部に記憶されている水素ガス濃度の最大値に対応するピーク値Vpと便pHとの対応データ(図22の相関図に基く)を用いて、便のpH値を推定する。推定した便pH値を、摂取物の生体効果改善の解析に利用するために記憶部に書き込む。さら得られた便pH値を、第一の実施形態と同様に図5(b)に示す相関関係に基いて腸内年齢を推定し、推定結果をユーザに表示等により報知する。
【0086】
以上排便ガス中の所定成分として二酸化炭素と水素を例示して本発明を説明したが、所定成分の別の例としてメタンガス、アンモニア、硫化水素、メチルカプタンなどの場合でも本発明を適用することができる。
【0087】
また、排便ガス濃度から推定される腸内状態指標として便pH値を例として挙げて以上で詳細に説明したが、他の指標、例えば便中腐敗成分濃度、腸内細菌の総数、腸内細菌の分布、さらにニオイ強度や臭気指数など、を例として挙げることができる。
【0088】
本発明の別の実施形態として、生体改善効果システムを便器に設置する代わりに、排便時の便器のボウル内の空気を採取する構成を持たせて便器機能とは独立したシステムとし、トイレの便器の近辺に設置することができる。
本実施形態によれば、ことによって既存のトイレ空間に便器との取り合いを考慮することなく後付でどんなトイレでも自由に設置することができるので、好ましい。
【0089】
また、本発明の別の実施形態として、生体改善効果システムをトイレのキャビネットなどの建具の中に設置することができる。
本実施形態によれば、外見上生体改善効果システムが見えないようにすることで、トータルデザインに配慮しすっきりとしたトイレ空間を実現することができるので、好ましい。
【0090】
本発明のさらなる別の実施形態として、生体改善効果システムを携帯タイプとすることができる。
本実施形態によれば、生体改善システムを持ち運び可能となるので、排便する場所の制限を受けることなく、例えば外出先での測定が可能となるため、本発明が目的の一つとする継続した測定が必要となる摂取物の摂取効果測定が被験者の日常生活を制限することなく実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る生体改善効果解析システムに係る操作手段と計測手段が、衛生洗浄便座装置の付いた洋式便器に設置された一例を示す(部分透視)外観図
【図2】同生体改善効果解析システムの機能全体を示す図
【図3】二酸化炭素ガス濃度から便pH値を推定する手順を示すグラフ
【図4】二酸化炭素ガス濃度から便pH値を推定する手順を示す流れ図および実測換算データ
【図5】二酸化炭素ガス濃度から腸内年齢を推定する手順を示す流れ図および実測のデータ
【図6】本発明の生体改善効果解析システムを衛生洗浄便座装置組込タイプ洋式便器に搭載した場合の解析方法の手順を示す図
【図7】本発明に係る生体改善効果解析システムを使った解析方法の例を示す図
【図8】本発明に係る生体改善効果解析システムを構成する操作パネルの例を示す正面図
【図9】図8の操作パネルを使用して初回登録を行う例を説明した図
【図10】図8の操作パネルを使用して毎回登録を行う例を説明した図
【図11】図9および図10を経て試験期間が終了した場合の処理の例を説明した図
【図12】操作パネルの他の例を示す正面図
【図13】図12の操作パネルを使用して初回登録を行う例を説明した図
【図14】ヨーグルト摂取のありなしについても、初回登録時に決定し登録しておく例を説明した図
【図15】図12の操作パネルを使用して図13の方式で解析を行う場合について、毎回登録を行う例を説明した図
【図16】図12の操作パネルを使用し試験終了日までのデータが登録され演算が行われた例を説明した図
【図17】図16の変形例を示す図
【図18】操作パネルの他の例を示す正面図
【図19】図18の操作パネルを使用して毎回登録を行う例を説明した図
【図20】図18の操作パネルを使って試験終了日までのデータが登録され演算が行われた例を説明した図
【図21】二酸化炭素ガス濃度から直接、便のpHを推定する実測換算データを示す図
【図22】水素ガス濃度から直接、便pHを推定する実測換算データを示す図
【符号の説明】
【0092】
1…洋式便器、2…衛生洗浄便座装置操作部、3…生体改善効果解析システム操作パネル、4…脱臭装置排気通路、5…ガスセンサ、6…制御装置、10…表示部、11…表示ボタン、12…食品ボタン、13…異常ボタン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が摂取した摂取物の生体に対する改善効果を解析するためのシステムであって、このシステムは、前記摂取物の摂取情報を入力する摂取情報入力手段と、排便時に併発する排便ガス中の所定成分濃度を測定する排便ガス濃度計測手段と、前記排便ガス濃度計測手段によって計測された計測データから被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標を推定する腸内状態指標推定手段と、前記摂取物の摂取情報と前記腸内状態指標の時系列との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析する改善効果解析手段と、その解析結果を報知する報知手段と、を備えることを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記腸内状態指標が便のpH値を表す便pHであることを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が二酸化炭素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の二酸化炭素濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された二酸化炭素濃度と前記の換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項4】
請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が二酸化炭素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の二酸化炭素濃度−カルボン酸濃度換算データおよびカルボン酸濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された二酸化炭素濃度と前記2つの換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項5】
請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が水素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の水素濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された水素濃度と前記の換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記生体となる被験者を識別するための個人情報を入力する個人情報入力手段を設けたことを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記摂取物の摂取情報が摂取物の摂取開始、摂取停止に関する情報であることを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、摂取物の生体改善効果に影響を与える可能性のある要因が発生した場合に入力する影響要因情報入力手段を設けたことを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、衛生洗浄便座装置の付いた洋式便器に設置され、または既設の洋式便器に後付けされていることを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の生体改善効果の解析において、摂取物の摂取停止後の排便ガス濃度も測定し、摂取停止後における効果の継続性、効果の遅発をも解析することを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項11】
個々人が摂取した摂取物の生体に対する改善効果を解析する方法であって、この方法は、個人識別ボタンが操作されることによって個人を特定し、摂取物の摂取前、摂取継続中の当該個人について、排便時に併発する排便ガスの濃度を測定し、その測定データから被験者の腸内状態を表す指標とする腸内状態指標を推定し、前記摂取物の摂取情報とその時の腸内状態指標との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析することを特徴とする生体改善効果の解析方法。
【請求項1】
被験者が摂取した摂取物の生体に対する改善効果を解析するためのシステムであって、このシステムは、前記摂取物の摂取情報を入力する摂取情報入力手段と、排便時に併発する排便ガス中の所定成分濃度を測定する排便ガス濃度計測手段と、前記排便ガス濃度計測手段によって計測された計測データから被験者の腸内状態を表す指標となる腸内状態指標を推定する腸内状態指標推定手段と、前記摂取物の摂取情報と前記腸内状態指標の時系列との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析する改善効果解析手段と、その解析結果を報知する報知手段と、を備えることを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記腸内状態指標が便のpH値を表す便pHであることを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が二酸化炭素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の二酸化炭素濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された二酸化炭素濃度と前記の換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項4】
請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が二酸化炭素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の二酸化炭素濃度−カルボン酸濃度換算データおよびカルボン酸濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された二酸化炭素濃度と前記2つの換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項5】
請求項2に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記所定成分が水素であると共に、前記腸内状態指標推定手段は、排便ガス中の水素濃度−便pH換算データを保管するための記憶部と、計測された水素濃度と前記の換算データとから便pHの推定値を計算するための演算部と、を有することを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記生体となる被験者を識別するための個人情報を入力する個人情報入力手段を設けたことを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、前記摂取物の摂取情報が摂取物の摂取開始、摂取停止に関する情報であることを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、摂取物の生体改善効果に影響を与える可能性のある要因が発生した場合に入力する影響要因情報入力手段を設けたことを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の生体改善効果解析システムにおいて、衛生洗浄便座装置の付いた洋式便器に設置され、または既設の洋式便器に後付けされていることを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の生体改善効果の解析において、摂取物の摂取停止後の排便ガス濃度も測定し、摂取停止後における効果の継続性、効果の遅発をも解析することを特徴とする生体改善効果解析システム。
【請求項11】
個々人が摂取した摂取物の生体に対する改善効果を解析する方法であって、この方法は、個人識別ボタンが操作されることによって個人を特定し、摂取物の摂取前、摂取継続中の当該個人について、排便時に併発する排便ガスの濃度を測定し、その測定データから被験者の腸内状態を表す指標とする腸内状態指標を推定し、前記摂取物の摂取情報とその時の腸内状態指標との対応データの時系列変化を解析して、当該個人に対する改善効果の有効性を解析することを特徴とする生体改善効果の解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−204606(P2009−204606A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332706(P2008−332706)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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