説明

生体物質を抽出する方法、チップ、デバイス及びシステム

本発明は、生体細胞から生体物質を抽出する方法、チップ、デバイス及びシステムに関する。本発明は、生体粒子を試料チャンバ内の交流電場に対して暴露することに関し、そして、抽出後に生体物質を続いて分析することにも関与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体細胞から生体物質を抽出する方法、チップ、デバイス及びシステムに関する。本発明は、生体粒子を試料チャンバ内の交流電場に対して暴露することに関し、そして、抽出後に生体物質を続いて分析することにも関与することができる。
【背景技術】
【0002】
生物テロの脅威に対して、生物戦争用物質を迅速且つ正確に検出することがますます重要になってきている。Bacillus anthracis細菌は、内生胞子形成Bacillus cereus群の一員である。Bacillus anthracisは、獲得し、貯蔵し、そして生物兵器として適用するのが容易である高致死性の生物戦争用物質である。Bacillus anthracisを信頼性高く検出するためには、DNAを分析しなければならない。それというのも、いくつかの事例におけるBacillus cereus群の構成員間の表現型の差異が1%に満たないからである。
【0003】
一例としては、Bacillus cereusはBacillus anthracisとは、後者がPXO1及びPXO2と呼ばれる2つの付加的なプラスミドを含有するという理由でのみ異なる。PXO1及びPXO2を欠いたBacillus anthracisの無毒性菌株は、Bacillus cereusとは事実上区別できない。理論上は、PXO1及びPXO2プラスミドをBacillus cereusの構成員中に転移させると、これらの細菌は官能性Bacillus anthracisになる。このような理由から、DNAハイブリダイゼーション、配列決定又はPCRによってプラスミドPXO1及びPXO2をDNA分析して識別することが、検出された有機体がBacillus anthracisであるかどうかを決定する唯一有効な方法である。
【0004】
過酷な環境に対する抵抗能力により、内生胞子からのDNAの解放及び抽出は難しい仕事である。Bacillus anthracisの検出に用いられる通常の手順は、培養基質内で胞子を発芽させ、細菌を集め、続いて増殖性細菌からDNAを抽出させることであり、これは数時間から最大1日かかる可能性のある手順である(Levi他、2003年)。他の方法は、機械的崩壊、冷凍/解凍サイクル、又は化学的処理のような込み入った技術を含む(Johns他、1994)。しかし胞子殻及び皮層は、数千年続くことができる長い冬眠期間にわたって発生させられた生化学構造である。著名な例は、琥珀内に埋め込まれたミツバチの消化管内に見いだされた内生胞子から生き返った細菌である(Cano及びBorucki、1995)。さらに、機械的崩壊(ビード打撃)の結果、解放されたDNAの質は悪くなる(Levi他、2003)。この技術を用いると、物理的、機械的及び化学的処理を組み合わせることによって、内生胞子から5〜10分以内にDNAを解放することができるが、しかしその用途がエアロゾルによって担持された生物テロ攻撃物をモニタリングすることである場合には、DNA抽出のための時間は5分でも長い時間と考えられる。手の込んだ複数ステップの手順を用いることは、炭疽菌攻撃が起こり得るという緊張に満ちた状況では最適ではない。このような理由から、グラム陽性菌の内生胞子からの迅速な(数秒以内)、手動操作不要の単一ステップDNA抽出を可能にする技術が必要である。
【0005】
Bacillus属及びClostridia属のグラム陽性菌には、胞子形成と呼ばれる指数増殖期の終わりに所定のプロセスを被ることができる。胞子形成中、細菌は、過酷な環境を生き残ることができる頑丈な胞子を形成する。胞子は、胞子が栄養素に暴露されたときに発芽を誘発した数種の代謝活性酵素だけを有する休眠構造である。胞子は、表1に示されているように、生化学組成において著しく異なる。
【表1】

【0006】
生化学構造及び生理学的休眠状態は、内生胞子を機械的、化学的及び熱的に高耐性の存在にし、このような存在は、迅速な同定のための生物戦争用物質の迅速な試料調製及びDNA抽出という点で、特定の問題をもたらす。胞子は例えば、ばらばらになることなしに長時間の煮沸に耐えることができる。胞子の環境運命は詳細には知られていない。胞子は乾燥した保護環境内で「無期限」に生き残ることができる。南アフリカのKruger国立公園における発掘により、年齢200歳を上回るB. anthracis胞子(14C法による年代決定)が明らかになった。これらの胞子は実験室内でまだ発芽することができた。
細菌及びウィルスの最も感受性の高い検出方法は、有機体の細胞内成分、例えば遺伝物質にアクセスすることに依存する。
【0007】
米国特許出願公開第2003/0,146,100号明細書には、血液から細胞を誘電泳動分離し、続いて単離された細胞を溶解して消化し、このことが流動チャンバ内の電極アレイを有する1つのチップ上で行われることが開示されている。電気泳動は10 KHz正弦波電場で、そして溶解は、500 V及び50 μs持続時間から成る一続きの400パルスで、又は、200v及び10 μs持続時間から成る一続きの40パルスで実施される(方形波)。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0,115,201号明細書には、2.45〜310 GHzのマイクロ波を使用し、これにより懸濁液中の細胞からDNAを解放する細胞溶解が開示されている。前記明細書にはさらに、マイクロ波を印加するための並列の平面外部電極を有するチャンバが開示されており、このチャンバは、チャンバ内に試料を提供するための流路を有している。
【0009】
米国特許第4,970,154号明細書には、パルス化ラジオ周波数を使用して細胞内に外来遺伝子を挿入する方法が開示されている。前記明細書にはさらに、チャンバ内の電極間の電場を振動させるパルス化ラジオ周波数を使用して、チャンバ内の溶液中に懸濁された細胞を電気穿孔及び融合することが記載されている。周波数は60 Hz〜10 MHzであり、場の強さは100〜400 V/cmである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
本発明の対象は、抽出のための、すなわち、生体細胞の生体物質にアクセスするための方法、チップ、デバイス及びシステムを提供することに関する。
【0011】
本発明の別の対象は、高解放パーセンテージで生体細胞の生体物質を抽出するための、すなわち、高パーセンテージの生体細胞から生体物質を抽出又は解放するための方法、チップ、デバイス及びシステムを提供することに関する。
【0012】
本発明の別の対象は、生体物質を損傷することなしに、生体細胞から生体物質を抽出するための方法、チップ、デバイス及びシステムを提供することに関する。
【0013】
本発明のさらに別の対象は、抽出された生体物質の更なる分析を容易に可能にする方法、チップ、デバイス及びシステムを提供することに関する。
【0014】
本発明のさらに別の対象は、生体物質の抽出、及びこれに続く生体物質の分析が同じ構造内で、好ましくは同じチャンバ内で実施される方法、チップ、デバイス及びシステムを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の他の対象は、説明及び例を読めば明らかになる。
本発明の1観点は、生体細胞から生体物質を抽出する方法であって、該方法は、
a) 試料チャンバと、第1及び第2の電極とを用意し、該第1及び第2の電極、並びに該試料チャンバは、該試料チャンバの少なくとも一部が該第1の電極と該第2の電極との間にあるように位置決めされ、
b) 該試料チャンバ内に、生体細胞を含む液体試料を提供し、
c) 前記液体試料を前記試料チャンバ内の交流電場に対して暴露し、前記交流電場は、該第1及び第2の電極によって提供され、また、該生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有する
ステップを含む、生体細胞から生体物質を抽出する方法に関連する。
【0016】
本発明の好ましい実施態様の場合、この方法はさらに、該生体細胞から抽出された生体物質を含む、該暴露された液体試料の一部に対する分析を行うステップ(d)を含む。この分析は、例えば遺伝分析又はタンパク質分析を含むことができる。
【0017】
本発明の別の観点は、生体細胞から生体物質を抽出するチップであって、試料チャンバを含む該チップは、試料チャンバと、第1及び第2の電極とを含み、
- 該試料チャンバは、周囲空気と流体連通する第1の開口と、デバイスと流体連通を形成するための第2の開口とを含み、
- 該第1及び第2の電極は、該試料チャンバの互いに対向する側に位置決めされている、
生体細胞から生体物質を抽出するチップに関する。
【0018】
本発明の別の観点は、生体細胞から生体物質を抽出するデバイスであって、該デバイスが:
- 該デバイスと機能上連携するための、チップが配置されるべきチップ位置、
- 該試料チャンバの電極間に交流電場を印加するための、該デバイスと該チップとの間の電気界面、及び
- 該デバイスが、
- 該チップが該デバイスと機能上連携しているかどうかをチェックすること、
- 該試料チャンバ内に、生体細胞を含む液体試料を提供すること、
- 前記液体試料を前記試料チャンバ内の交流電場に対して暴露し、前記交流電場は、該第1及び第2の電極によって提供され、また、該生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有すること、及び
- 該生体細胞から抽出された生体物質を含む、該暴露された液体試料の一部に対する分析を行うこと
から成る群から選択された1つ又は2つ以上の作用を実施するようにするソフトウェアを含むプログラム可能ユニット
を含む、生体細胞から生体物質を抽出するデバイスに関する。
【0019】
本発明のさらに別の観点は、生体細胞から生体物質を抽出するシステムであって、該システムは、本明細書中に定義されたデバイスと機能上連携する本明細書中に定義されたチップを含む、生体細胞から生体物質を抽出するシステムに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明の1観点は、生体細胞から生体物質を抽出する方法であって、該方法は、
a) 試料チャンバと、第1及び第2の電極とを用意し、該第1及び第2の電極、並びに該試料チャンバは、該試料チャンバの少なくとも一部が該第1の電極と該第2の電極との間にあるように位置決めされ、
b) 該試料チャンバ内に、生体細胞を含む液体試料を提供し、そして
c) 前記液体試料を前記試料チャンバ内の交流電場に対して暴露し、前記交流電場は、該第1及び第2の電極によって提供され、また、該生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有する、
ステップを含む、生体細胞から生体物質を抽出する方法に関する。
【0021】
本発明の好ましい実施態様の場合、この方法はさらに、該生体細胞から抽出された生体物質を含む、該暴露された液体試料の一部に対する分析を行うステップ(d)を含む。この分析は、例えば遺伝分析又はタンパク質分析を含むことができる。
【0022】
遺伝分析は、例えば、制限酵素とのインキュベーション、核酸増幅、例えばPCR法、電気泳動、及び検出、例えば蛍光検出又は電気化学検出のようなプロセスを含む。PCR法及び検出は、例えば出願番号No. YYYYYYYを有する同時係属中のPCT出願「Method, kit and system for enhanced nested PCR」に記載された方法に従って、そしてこれに記載されたキットを使用して行うことができる。これを参考のため本明細書中に引用する。
【0023】
本発明の好ましい実施態様の場合、さらなる遺伝子分析が行われる暴露された液体試料部分は、試料チャンバ内の液体試料の20 %以上、例えば、試料チャンバ内の液体試料の最小30、40、50、60、70、80、90、95、97.5、99, 99.5又は99.9 %以上、例えば試料チャンバ内の液体試料の約100 %以上である。
【0024】
本発明によれば、「抽出」及び「抽出する」という用語は、1つ又は2つ以上の生体細胞の生体物質を解放すること、すなわち、例えば、液体試料中の更なる分析のために生体物質を利用可能にすることに関する。「抽出」及び「抽出する」という用語はまた、生体物質が周囲液体中に逃れるのを可能にするのに十分に、生体細胞の細胞壁又は細胞バリアを開放及び/又は破裂させることに関する。生体物質が抽出されたあと、これを生体細胞の近くになおも配置することができ、或いは、例えば電気泳動力によってこれを別の場所に輸送することもできる。生体物質は例えば、電気泳動輸送後に電極上に吸着されてよい。
【0025】
本文脈において、「生体細胞」という用語は、例えば、微生物、ウィルス、真核細胞又はこれらの断片を含む粒子に関する。
【0026】
真核細胞は、例えば植物細胞、植物胞子、動物細胞、例えば哺乳動物細胞であってよい。哺乳動物は例えばヒト細胞、例えば白血球又は有核赤血球であってよい。
【0027】
微生物は例えば、古細菌微生物、真性細菌微生物、又は真核細胞微生物から成る群から選択することができる。
【0028】
例えば、微生物は、細菌、細菌胞子、ウィルス、真菌、及び真菌胞子から成る群から選択することができる。
【0029】
本発明の好ましい実施態様の場合、生体細胞は、空気中に浮遊する微生物である。
【0030】
本発明の好ましい実施態様の場合、生体細胞は細菌胞子である。
【0031】
例えば、細菌胞子は、Bacillus属及び/又はClostridium属から選択された細菌によって形成することができる。
【0032】
本発明の好ましい実施態様の場合、細菌胞子は、Bacillus anthracisによって形成される胞子である。生体細胞は例えば、Bacillus anthracisによって形成される細菌胞子を含んでよい。また、生体細胞は事実上、Bacillus anthracisによって形成される1つ又は2つ以上の細菌胞子から成ってもよい。
【0033】
また、生体細胞は、増殖性細菌又は胞子であってもよい。
【0034】
生体細胞から抽出された生体物質は典型的には、細胞小器官、遺伝物質、及びタンパク質から成る群から選択された成分を含む。
【0035】
遺伝物質は例えば、染色体DNA及び/又はプラスミドDNA及び/又は任意のタイプのRNAを含んでよい。
【0036】
タンパク質は例えば、酵素、構造タンパク質、輸送タンパク質、イオンチャネル、毒素、ホルモン、及び受容体から成る群から選択されてよい。
【0037】
好ましくは、生体物質はDNA及び/又はRNAを含む。
【0038】
本発明によれば、「液体試料」という用語は、液体物質、溶液又は懸濁液に関し、これは、1種又は2種以上の当該化合物を含んでも含まなくてもよい。液体試料は例えば生体試料又は非生体試料であってよい。
【0039】
生体試料は例えば、綿棒で採取された皮膚試料、脳脊髄液、血液、唾液、気管支-肺胞洗浄物、気管支吸引物、肺組織及び尿から成る群から選択することができる。
【0040】
非生体試料は例えば、空気試料からの粉末、粒子、並びに土壌試料及び表面スワイプからの粒子であってよい。
【0041】
生体試料又は非生体試料は培養することができる。次いで本発明の方法、キット、チップ、デバイス及びシステムを用いて、例えば微生物(例えばB. anthracis)の存在に関して培養を評価することができる。
【0042】
加えて、液体試料は、核酸増幅を実施するのに必要とされる1種又は2種以上の試薬を含んでよい。
【0043】
液体試料は、プライマー、核酸、デオキシヌクレオシド三リン酸、及び核酸ポリメラーゼから成る群から選択された1種又は2種以上の試薬を含んでよい。
【0044】
液体試料はさらに、例えば10 mMの濃度の2-メルカプトエタノール、例えば1 mg/mlの濃度のBSA、及び/又は例えば0.5%〜6%(w/v)の濃度の洗剤のような添加剤を含んでもよい。洗剤は、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Tween 20、Tween 80、及び同様の非イオン性洗剤から成る群から選択されてよい。
【0045】
本文脈において、「核酸」、「核酸配列」又は「核酸分子」は、幅広く解釈されるべきであり、そして例えば、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)又はこれらの疑似体のオリゴマー又はポリマーであってよい。この用語は天然発生型の核塩基、糖及び共有ヌクレオシド間(バックボーン)結合から成る分子、並びに、同様に機能する非自然発生型の核塩基、糖及び共有ヌクレオシド間(バックボーン)結合を有する分子、又はこれらの組み合わせを含む。このような改質型又は置換型核酸は、例えば核酸ターゲット分子に対する親和性の増強、並びにヌクレアーゼ及び他の酵素の存在における安定性の増大といった望ましい特性により、天然形態よりも好ましい場合があり、そして、本文脈においては「核酸類似体」又は「核酸疑似体」という用語によって記述される。核酸疑似体の好ましい例は、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、キシロ-LNA、ホスホロチオエート、2'-メトキシ、2'-メトキシエトキシ、モルホリノ及びホスホルアミデートを含む分子、又は機能上類似する核酸誘導体である。
【0046】
「核酸ポリメラーゼ」という用語は、好ましくは熱安定的である、DNA又はRNA依存性のDNAポリメラーゼ酵素に関する。すなわちこの酵素は、鋳型に対して相補的なプライマー伸長生成物の形成を触媒し、そして、二本鎖鋳型核酸の変性をもたらすのに必要な時間にわたって高温に暴露されると、不可逆的に変性することはない。一般に、合成は各プライマーの3'末端で開始され、5'から3'の方向に、鋳型鎖に沿って進行する。熱安定的なポリメラーゼは、好熱性又は高温活性菌株、例えばThermus flavus, T. ruber, T. thermophilus, T. aquaticus, T. lacteus, T. rubens, Thermococcus litoralis, pyrococcus furiosus, Bacillus stearothermophilus及びMethanothermus fervidusから単離されている。しかし、酵素が補充されるならば、熱安定的でないポリメラーゼを核酸増幅に採用することもできる。
【0047】
液体試料はさらに、5'-3'エクソヌクレアーゼで分解可能なオリゴ核酸プローブを含むことができ、前記核酸プローブの分解の結果、レドックス活性成分が放出される。
【0048】
レドックス活性成分は例えばメタロセン、例えば例えばフェロセンであってよい。
【0049】
本発明の1実施態様の場合、第1の電極と第2の電極とは、20 mm以下、好ましくは20 mm以下、例えば15 mm、10 mm、9 mm、8 mm、7 mm、6 mm、5 mm、又は4 mm以下、より好ましくは3 mm以下、そしてさらにより好ましくは0.5 mm以下、例えば0.3 mm、0.2 mm、0.1 mm以下、例えば0.05mm以下の距離だけ分離されている。
【0050】
例えば、第1の電極と第2の電極とは、0.05〜20 mm、例えば0.05〜0.1 mm、0.1〜0.2 mm、0.2〜0.3 mm、0.3〜0.4 mm、0.4〜0.5 mm、0.5〜1 mm、1〜2 mm、2〜5 mm、5〜10 mm、又は10〜15 mm、例えば15〜20 mmの距離だけ分離されてよい。
【0051】
典型的には、第1の電極と第2の電極とは、0.02 mm以上、例えば0.03 mm又は0.05 mm以上の距離だけ分離される。
【0052】
通常、試料室内の液体試料の少なくとも一部が、第1の電極と第2の電極との間に位置決めされる。例えば、液体試料の容積の40%以上、例えば液体試料の容積の50、60、70、80、90、95、97.5、99、99.5又は99.9%以上が、第1の電極と第2の電極との間に位置決めされ、例えば液体試料の容積の100%以上が、第1の電極と第2の電極との間に位置決めされる。
【0053】
好ましくは、生体細胞はステップ(c)の間中、第1の電極と第2の電極との間に配置される。生体細胞は、ステップ(c)の少なくとも初めに、そして可能であればステップ(c)の間中にも、第1の電極又は第2の電極に付着することもできる。
【0054】
「X及び/又はY」という関連において使用される「及び/又は」という用語は、「X」又は「Y」又は「X及びY」として解釈されるべきである。
【0055】
本発明のチップは、第1の開口を含む試料チャンバを含む。
【0056】
第1の開口は、試料チャンバ内に試料を導入するために使用することができる。第1の開口は、試料、例えば周囲空気と流体連通することができる。或いは、第1の開口は、1つ又は2つ以上の弁に接続される。この弁は、試料と流体連通する試料チャンバに試料を運ぶために開くことができる。
【0057】
本発明の重要な実施態様の場合、試料チャンバ、例えばチップの試料チャンバは、第2の開口を含む。第2の開口は例えば、試料チャンバの空気又は試料が逃れるのを可能にすることにより、試料チャンバ内への新しい試料の導入を簡単にするために使用することができる。第2の開口は、第1の液体試薬を試料チャンバ内に導入するために使用することもできる。或いは、第1の液体試薬は、第1の開口を介して試料チャンバに入ることもできる。
【0058】
試料チャンバ、例えばチップの試料チャンバは、典型的にはマイクロスケールの試料チャンバである。本発明の1実施態様の場合、試料チャンバの容積は、500 μL以下、例えば400 μL、300 μL、200 μL、100 μL、50 μL、25 μL、15 μL、10 μL、5 μL、4 μL、3 μL、2 μL以下、例えば1 μL以下である。例えば、試料チャンバの容積は、500 nL以下、例えば400 nL、300 nL、200 nL、100 nL、50 nL、25 nL、15 nL、10 nL、5 nL、4 nL、3 nL、2 nL以下、例えば1 nL以下である。
【0059】
典型的には、試料チャンバの容積は10 nL以上である。本発明の好ましい実施態様の場合、試料チャンバの容積は1 μL〜50 μL、例えば5 μL〜30 μLである。
【0060】
本発明の1実施態様の場合、互いに対向する一対の壁の間の最小距離は、20 mm以下であり、例えば15 mm、10 mm、8 mm、6 mm、4 mm、3 mm、又は2 mm以下、例えば1 mm以下である。例えば、互いに対向する一対の壁の間の最小距離は、800 μm以下であり、例えば600 μm、500 μm、400 μm、300 μm、200 μm、100 μm、50 μm、25 μm、15 μm、10 μm、5 μm、4 μm、3 μm、又は2 μm以下、例えば1 μm以下である。
【0061】
典型的には、互いに対向する一対の壁の間の最小距離は、5 μm以上である。本発明の好ましい実施態様の場合、互いに対向する一対の壁の間の最小距離は、50 μm〜500 μm、例えば100 μm〜400 μm、及び150 μm〜350 μmである。
【0062】
本発明の1実施態様の場合、試料チャンバ、例えばチップの試料チャンバの長さは、1 mm〜50 mm、例えば1 mm〜10 mm、10 mm〜20 mm、20 mm〜30 mm、30 mm〜40 mm、又は40 mm〜50 mmである。好ましい実施態様の場合、試料チャンバの長さは、2 mm〜8 mm、例えば3 mm〜7 mm、又は4 mm〜6 mmである。例えば試料チャンバの長さは、約4.5 mmであってよい。
【0063】
本発明の1実施態様の場合、試料チャンバ、例えばチップの試料チャンバの幅は、0.2 mm〜10 mm、例えば0.2 mm〜1 mm、1 mm〜3 mm、3 mm〜5 mm、5 mm〜7 mm、又は7 mm〜10 mmである。好ましい実施態様の場合、試料チャンバの幅は、0.2 mm〜2 mm、例えば0.5 mm〜1.5 mm、及び0.75 mm〜1.25 mmである。例えば試料チャンバの幅は、約1 mmであってよい。
【0064】
本発明の1実施態様の場合、試料チャンバ、例えばチップの試料チャンバの高さは、50 μm〜2 mm、例えば100 μm〜1 mm、200 μm〜900 μm、300 μm〜800 μm、500 μm〜700 μmである。好ましい実施態様の場合、試料チャンバの高さは、100 μm〜400 μm、例えば200 μm〜300 μmである。
【0065】
本発明の1実施態様の場合、試料チャンバ、例えばチップの試料チャンバの長さは約4.5 mmであり、試料チャンバの幅は約1 mmであり、試料チャンバの高さは約300 μmである。
【0066】
本発明の1実施態様の場合、チップはさらに、第1及び第2の電極を含む。
【0067】
第1及び/又は第2の電極は異なる形状又は寸法を有することができる。例えば、第1及び/又は第2の電極は、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、ロッド、又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択された実質的な形状を有することができる。
【0068】
本発明の好ましい実施態様の場合、第1及び第2の電極は、例えばシート状電極であってよい。
【0069】
本発明の好ましい実施態様の場合、第1の電極と第2の電極とは互いに対面している。例えば、これらは試料チャンバの互いに対向する側に位置決めすることができる。
【0070】
第1及び/又は第2の電極は、例えば試料チャンバ内部に位置決めされるか、試料チャンバ内で自立するか、又は試料チャンバの壁のうちの1つ又は2つ以上に取り付けられてよい。
【0071】
第1及び/又は第2の電極は、試料チャンバ壁内に埋め込むことができる。例えば、第1及び第2の電極は試料チャンバ壁内に埋め込むことができる。或いは、第1及び/又は第2の電極は、チップの外面に位置決めすることもできる。
【0072】
好ましくは、第1の電極と第2の電極とは、試料チャンバの対向側に位置決めされる。
【0073】
第1の電極と第2の電極との間の電位差は、均一又は異なるサイズの粒子が表面上に捕捉されるか、又は当該粒子の選択又は捕捉に対応することができる所与の方向に変向される範囲内であってよい。
【0074】
電極、例えば第1の電極及び/又は第2の電極は、多くの種々異なる材料で形成することができる。典型的には、電極は金属又は合金で形成される。第1及び第2の電極は例えば、銀、金、白金、銅、炭素、鉄、グラファイト、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、水銀、又はこれらの合金から成る群から選択された金属を含むことができる。
【0075】
電極が導電性液体を含み、そしてさらに事実上、導電性液体から成ることも考えられる。導電性液体は例えば水銀であってよい。
【0076】
電極の寸法及び/又は構造は典型的には、試料チャンバの寸法及び/又は構造に依存する。電極の長さ及び幅は、試料チャンバの長さ及び幅と同じ規模である。
【0077】
電極は、導電性材料から成る2,3の原子層のコーティングという僅かな量によって形成することができる。
【0078】
本発明の1実施態様の場合、電極、例えば第1及び/又は第2の電極の厚さは、0.001 μm〜2000 μm、例えば0.001 μm〜1 μm、1 μm〜20 μm、20 μm〜200 μm、及び200 μm〜2000 μmである。
【0079】
本発明の1実施態様の場合、チップの試料チャンバはさらに、レドクッス活性成分の存在又は不存在を検出するための検出電極のセット、例えば2つ又は3つの検出電極を含む。このレドクッス活性成分は例えば、プローブから放出することができる。2つの検出電極はそれぞれ作業電極及び対向電極として働くことができる。検出電極のセットはさらに基準電極を含むことができる。典型的には、検出電極は金属又は合金で形成される。電極は例えば、炭素、銀、金、又は白金から成る群から選択された材料を含むことができる。検出後、電極は電極表面上に膜形成を被ることがある。消化されたプローブのさらなる検出を可能にするために、さらに別の検出電極セットを、チップの試料チャンバ内部に配置することができる。
【0080】
本発明の実施態様の場合、第1及び第2の電極は、検出電極セットであってよい。
【0081】
本発明の好ましい実施態様の場合、チップはさらに、温度感知素子を含む。温度感知素子は例えば、正の温度係数(PTC)を有する、感熱性金属ベースの抵抗器(サーミスタ)であってよい。すなわち、このサーミスタは、環境温度が上昇するとともに電気抵抗の増大を示し、そして温度の低下とともに電気抵抗の減小を示す。
【0082】
サーミスタは、例えば、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、白金、又はこれらの合金を含む材料群から選択することができる。
【0083】
サーミスタは、種々異なる形状又は寸法を有することができる。例えばサーミスタは、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、又はロッドから成る群から選択された実質的な形態を有することができる。
【0084】
本発明の好ましい実施態様の場合、サーミスタは、例えばワイヤ状電極であってよい。
加熱電極は、種々異なる形状又は寸法を有することができる。例えば加熱電極は、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、又はロッドから成る群から選択された実質的な形態を有することができる。
【0085】
本発明の好ましい実施態様の場合、加熱電極は、例えばシート状電極であってよい。本発明の好ましい実施態様の場合、加熱電極は、反応チャンバの少なくとも1つの側からの加熱を可能にするように位置決めすることができる。
【0086】
さらに別の実施態様の場合、1つ又は2つ以上の補足的な加熱電極を、反応チャンバの互いに対向する側に位置決めすることができる。
【0087】
加熱電極は、導電性材料から形成され、好ましくはニッケル-クロム(NiCr)、鉄-クロム-アルミニウム(FeCrAl)、鉄-ニッケル-クロム(FeNiCr)、又はその他の加熱素子合金から成る群から選択される。
【0088】
本発明の好ましい実施態様の場合、チップは、チップの電極と電気的な接触状態にある1つ又は2つ以上の導電性コンタクト・パッドを含む。チップは、第1の電極と電気的な接触状態にある導電性コンタクト・パッドを含んでよい。チップは、第2電極と電気的な接触状態にある導電性コンタクト・パッドを含んでよい。チップは、加熱電極の各端部と電気的な接触状態にある2つの導電性コンタクト・パッドを含んでよい。チップは、検出電極セットの各電極と電気的な接触状態にある2つ又は3つの導電性コンタクト・パッドを含んでよい。
【0089】
図1には、2つのチップ実施態様の例が示されている。図1A)では、チップ(1)は、試料チャンバ(2)及び第1の電極(3)及び第2の電極(4)を含む。第1の電極(3)はチップの上側部分(5)に取り付けられており、第2の電極(4)はチップの下側部分(6)に取り付けられている。第1及び第2双方の電極は、試料チャンバ(2)の液体内容物の望ましくない電気分解を防止するために、電気絶縁層(7)によってカバーされている。第2の電極の上側の絶縁層内には加熱電極が埋め込まれている。試料チャンバは、スペーサ部分(9)を介して形成されており、スペーサ部分(9)は、チップ(1)の第1の部分(5)と第2の部分(6)との間でサンドイッチされている。検出電極セット及び温度感知素子は図1には示されていない。
【0090】
チップは多様の種々異なる材料を含んでよい。チップは例えば、有機ポリマー、例えばプラスチック、金属及び半導体、例えばケイ素、ガラス及びセラミックなどを含んでよい。
【0091】
図1に関して、第1の部分及び第2の部分は、例えばプラスチック、半導体、例えばケイ素、ガラス及びセラミックのような材料を含んでよい。第1及び第2の電極は例えば、金又は銅のような金属を含むこともできる。絶縁層は、例えばSiO2又はポリイミドから成るフィルムであってもよい。加熱電極は例えばNiCr電極であることも可能であり、そしてスペーサ層は、例えばキャストされたポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーであってもよい。
【0092】
図1B)において、第1及び第2の電極はチップに含まれていないが、しかし、例えばチップを操作するためのデバイスに含まれてよい。
【0093】
チップは、単一の試料チャンバだけを含むことができ、或いは、多数の試料チャンバを含むこともできる。
【0094】
チップの典型的な厚さは、0.5 mm〜50 mmであり、好ましくは2 mm〜8 mmである。
【0095】
チップの典型的な長さ又は直径は、10 mm〜500 mmであり、好ましくは40 mm〜200 mmである。
【0096】
チップの典型的な幅は、5 mm〜200 mmであり、好ましくは20 mm〜100 mmである。
【0097】
ステップc)において、液体試料は、第1及び第2の電極によって提供された交流電場に対して暴露される。交流電場が、生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有し、そして生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な時間にわたって印加されることが重要である。
【0098】
本発明によれば、「交流電場」という用語は、経時変化する電場に関連する。交流電場は例えば、例えばAC源を電極に接続することにより、正/負と負/正との間で2つの電極の極性を周期的にシフトすることから生じる電場であってよい。交流電場は、例えばAC場を含むか、又はAC場であってよい。交流電場は例えば1つ又は2つ以上のDCパルスを含んでよい。
【0099】
交流電場が、生体物質を抽出するのに十分な振幅を有し、そして生体物質を抽出するのに十分な時間にわたって印加されることが重要である。交流電場がさらに、生体物質を抽出するのに十分な周波数を有することも重要である。
【0100】
本発明の好ましい実施態様の場合、交流電場の周波数は5 kHz以上、好ましくは20 kHz、そしてより好ましくは50 kHz以上である。
【0101】
本発明の別の好ましい実施態様の場合、交流電場の周波数は100 kHz以上、好ましくは250 kHz、そしてより好ましくは500 kHz以上である。
【0102】
例えば、交流電場の周波数は5 kHz以上、例えば10, 20, 50, 100, 200, 300, 又は400 kHz以上、例えば500 kHz以上であってよい。より高い周波数、例えば1000 kHz、2000kHz、又は5000 kHzも考えられる。
【0103】
好ましくは交流電場の周波数は750 kHz以下、例えば500 kHz以下である。
【0104】
従って、交流電場の周波数は、5〜750 kHz、例えば5〜10、10〜20、20〜50、50〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500 kHz、例えば500〜750 kHzであってよい。
【0105】
好ましい実施態様の場合、交流電場は、2つの電極の極性を調節することにより提供される。
【0106】
交流電場は、方形、正弦、鋸歯、非対称三角形、対称三角形;又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択された実質的な形態を有することができる。
【0107】
また、周波数領域における交流電場は、少なくとも第1及び第2の周波数成分を含んでよい。
【0108】
交流電場の振幅、すなわち第1の電極と第2の電極との間の最大電位差は、典型的には30 V以下、例えば25、20、15、10、8、6、5、4、3、又は2V以下、例えば1 V以下である。
交流電場の振幅、すなわち第1の電極と第2の電極との間の最大電位差は、例えば1〜100 V、例えば1〜2、2〜3、3〜4、4〜5、5〜6、6〜8、8〜10、10〜15、15〜20、20〜30 V、例えば30〜100であってよい。好ましくは、第1の電極と第2の電極との間の最大電位差は、5〜50 V、例えば10〜25 Vである。
【0109】
生体物質の抽出収率の有用な尺度は、DNA/RNA解放パーセンテージである。「DNA/RNA解放パーセンテージ」は、ステップc)で交流電場に対して暴露することにより、染色体DNA及び/又は染色体RNAを解放する試料チャンバ内の生体細胞のパーセンテージである。DNA/RNA解放パーセンテージは、例5に記載された、標準化された方法に従って見極められる。
【0110】
試料チャンバ又は試料チャンバを含むチップ内の生体細胞の抽出量、ひいてはDNA/RNA解放パーセンテージは、第1及び第2の電極の構成、及び第1の電極と第2の電極との間の距離、試料チャンバの構造及び材料、並びに、第1及び第2の電極に印加される電位に強く依存する。
【0111】
本発明の極めて好ましい実施態様の場合、第1の電極の第1の電位、及び第2の電極の第2の電位、ひいては第1の電極と第2の電極との間の交流電場は、DNA/RNA解放パーセンテージ30%以上、例えばDNA/RNA解放パーセンテージ40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは70%、80%、90%、95%、97.5%、99%、99.5%又は99.9以上、例えば約100%をもたらすように調節される。
【0112】
本発明の別の好ましい実施態様の場合、第1の電極の第1の電位、及び第2の電極の第2の電位、ひいては第1の電極と第2の電極との間の交流電場は、試料チャンバ内の細菌胞子のDNA/RNA解放パーセンテージ30%以上、例えば試料チャンバ内の細菌胞子のDNA/RNA解放パーセンテージ40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、例えば、試料チャンバ内の細菌胞子のDNA/RNA解放パーセンテージ70%、80%、90%、95%、97.5%、99%、99.5%又は99.9以上、例えば約100%をもたらすように調節される。
【0113】
本発明の1実施態様の場合、液体試料が交流電場に対して暴露される持続時間は、3600秒以下、例えば3000、2000、1000、500、250、100、50、40、30、20、10、5、4、又は3秒以下、例えば1秒以下である。
【0114】
例えば、液体試料が交流電場に対して暴露される持続時間は、0.01〜3600秒、例えば0.1〜1、1〜5、5〜10、10〜25、25〜50、50〜100、100〜250、250〜500、500〜1000、又は1000〜2000秒、例えば2000〜3600秒である。本発明の好ましい実施態様の場合、液体試料が交流電場に対して暴露される持続時間は、5〜100秒、例えば6〜90、7〜80、8〜70、9〜60、及び10〜50秒である。
【0115】
本発明の好ましい実施態様の場合、液体試料は、250秒以下、好ましくは100秒以下、例えば30秒以下にわたって交流電場に対して暴露される。
【0116】
本発明の別の観点は、生体細胞から生体物質を抽出するチップであって、試料チャンバを含む該チップは、試料チャンバと、第1及び第2の電極とを含み、
- 該試料チャンバは、周囲空気と流体連通する第1の開口と、デバイスと流体連通を形成するための第2の開口とを含み、
- 該第1及び第2の電極は、該試料チャンバの互いに対向する側に位置決めされている、
生体細胞から生体物質を抽出するチップに関する。
【0117】
本発明の好ましい実施態様の場合、チップの試料チャンバはさらに、生体細胞を含む液体試料を含む。
【0118】
チップはさらに、第1及び第2の電極によって提供される、第1の電極と第2の電極との間の交流電場を含み、前記交流電場は、生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有することができる。
【0119】
本発明の実施態様の場合、チップの第1及び第2の電極は、試料チャンバの第1の開口と第2の開口との間に位置決めされている。
【0120】
生体細胞は好ましくは、チップの第1の電極と第2の電極との間に配置されている。
【0121】
なお、本発明の1観点との関連において記載された実施態様及び特徴は、本発明の他の観点に適用することもできる。
【0122】
本発明の別の観点は、生体細胞から生体物質を抽出するデバイスであって、該デバイスが:
- 該デバイスと機能上連携するための、チップが配置されるべきチップ位置、
- 該試料チャンバの電極間に交流電場を印加するための、該デバイスと該チップとの間の電気界面、及び
- 該デバイスが、
- 該チップが該デバイスと機能上連携しているかどうかをチェックすること、
- 該試料チャンバ内に、生体細胞を含む液体試料を提供すること、
- 前記液体試料を前記試料チャンバ内の交流電場に対して暴露し、前記交流電場は、該第1及び第2の電極によって提供され、また、該生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有すること、及び
- 該生体細胞から抽出された生体物質を含む、該暴露された液体試料の一部に対する分析を行うこと
から成る群から選択された1つ又は2つ以上の作用を実施するようにするソフトウェアを含むプログラム可能ユニット
を含む、生体細胞から生体物質を抽出するデバイスに関する。
【0123】
本文脈において、「機能上連携する」という用語は、チップがデバイスと連携することにより、デバイスは、チップに影響を与える1つ又は2つ以上の作用を実施することができる。
【0124】
本発明の実施態様の場合、デバイスが試料チャンバの内容物の電場に影響を及ぼすことができると、チップはデバイスと機能上連携する。
【0125】
本発明の実施態様の場合、デバイスがチップの1つ以上の電極の電位を制御することができると、チップはデバイスと機能上連携する。例えば、デバイスがチップの第1の電極及び/又は第2の電極の電位を制御することができると、デバイスはチップと機能上連携することができる。
【0126】
機能上連携することはさらに、チップの試料チャンバが流れ制御手段と流体連通していることを含んでよい。
【0127】
本発明の実施態様の場合、デバイスは捕集電極セットを含み、そしてチップが機能上連携していると、捕集電極セット間の電場は、試料チャンバ内の気体試料の生体細胞を捕集するのを助ける。この実施態様の場合、チップは、捕集電極セットを含む必要はない。
【0128】
デバイスは、第1の液体試薬を受理及び/又は保持するための第1の試薬チャンバを含んでもよい。典型的には、第1の試薬チャンバは1つ以上の開口を有する。開口は、チップがデバイスと機能上連携すると、試料チャンバと流体連通する。或いは、第1の試薬チャンバの1つ以上の開口は、例えば流れを制御する手段を用いて、試料チャンバと流体連通される。第1の試料チャンバは、貯蔵中、除去可能なバリアによって閉鎖することもでき、前記バリアは、デバイスが使用されると可逆的又は不可逆的に除去される。
【0129】
デバイスはさらに、例えば流れ発生手段、及び/又はプログラム可能ユニット、第1及び第2の電極に給電するための電源を含むことができる。
【0130】
本発明の実施態様の場合、チップは、チップ位置を介してデバイスに機能上連携する。チップ位置は例えば、接続材料として、そして空気及び液体の漏れを排除するためにチップ・ポートとデバイス・ポートとの間の密な接合を保証するガスケットとしても役立つプラスチック界面を含むことができる。チップ位置は、例えばチップを受容するための表面及び/又はクレードルを含んでよい。典型的には、チップ位置は、1つ以上の導電性コンタクト・パッドを含む。好ましくは、チップ位置は少なくとも、チップの第1の電極との電気的な接続を可能にするための導電性コンタクト・パッド、及びチップの第2の電極との電気的な接続を可能にするための導電性コンタクト・パッドを含む。
【0131】
プログラム可能ユニットは、好ましくはコンピュータで読み取り可能な指示書、例えば、操作前、操作下、及び/又は操作後に、デバイスの制御、モニタリング、及び/又は取り扱いを容易にするように適合されたソフトウェアを含む。
【0132】
プログラム可能ユニットは好ましくは、連携するデータ記憶手段内部に記憶された1つ又は2つ以上のコンピュータ・プログラムを有する1つ以上のコンピュータを含む。コンピュータ・システムは、デバイスを制御するように適合されている。プログラム可能ユニットは本発明の文脈において、汎用コンピュータ、パーソナル・コンピュータ(PC)、プログラム可能論理制御(PLC)ユニット、ソフト・プログラム可能論理制御(soft-PLC)ユニット、ハード・プログラム可能論理制御(hard-PLC)ユニット、産業用パーソナル・コンピュータ、又は専用マイクロプロセッサから成る非包括的な群から選択することができる。
【0133】
本発明はまた、連携するデータ記憶手段を有する1つ以上のコンピュータを含むコンピュータ・システムが、操作前、操作下、及び/又は操作後に、デバイスの制御、モニタリング、及び/又は取り扱いを行うことを可能にするように適合されたコンピュータ・プログラム製品に関する。本発明はさらに、連携するデータ記憶手段を有する1つ以上のコンピュータを含むコンピュータ・システムが、操作前、操作下、及び/又は操作後に、デバイスの制御、モニタリング、及び/又は取り扱いを行うことを可能にするためのルーチン・セットが記憶されたコンピュータ読み取り可能媒体に関する。
【0134】
操作前、操作下、及び/又は操作後に、デバイスの制御、モニタリング、及び/又は取り扱いを行うためのプログラム可能ユニットは、好ましくは、過酷な条件下、例えば寒帯気候、熱帯気候、及び戦闘環境下で、具体的には、核戦争、生物戦争及び/又は化学戦争(ABC戦争)に晒されている特定の戦闘地域内での操作に適合される。好ましくは、プログラム可能ユニットは、このようなユニットのための当該軍事仕様に従う。
【0135】
本発明の実施態様の場合、ソフトウェアを含むプログラム可能ユニットによって、さらにデバイスは、チップがデバイスと機能上連携しているかどうかをチェックするようになる。
【0136】
ソフトウェアを含むプログラム可能ユニットによって、さらにデバイスが、 - 試料チャンバ内に液体試料を提供すること、
- 液体試料を前記試料チャンバ内の交流電場に対して暴露し、前記交流電場は、生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有すること、及び
- 暴露された液体試料の生体物質に対する分析を行うこと
から成る群から選択された1つ又は2つ以上の作用、例えば2つ又は3つの作用を実施するようになってよい。
【0137】
ソフトウェアを含むプログラム可能ユニットによって、例えば、気体試料を提供するための流れ発生手段を操作することにより、デバイスが試料チャンバ内に気体試料を提供するようになってよい。
【0138】
ソフトウェアを含むプログラム可能ユニットによって、例えば、デバイスが第1の電極に第1の電位差を、そして第2の電極に第2の電位差を印加するようになってよい。
【0139】
ソフトウェアを含むプログラム可能ユニットによって、例えば、2つ以上の電極、例えば本明細書中に記載された第1及び第2の電極、又は交流電場専用の他の電極セットの電位差を調節することにより、デバイスが前記試料チャンバ内の交流電場に対して反応混合物を暴露するようになってよい。
【0140】
ソフトウェアを含むプログラム可能ユニットによって、例えば、本明細書中に記載された加熱電極を操作することにより、ターゲット核酸配列の核酸増幅を実施するようになってよい。
【0141】
ソフトウェアを含むプログラム可能ユニットによって、例えば、示差パルス・ボルタンメトリーに関連して検出電極を操作することにより、デバイスが、増幅されたターゲット核酸配列の存在を測定し、且つ/又は、ターゲット核酸配列の増幅から生じた生成物を測定するようになってよい。
【0142】
本発明の好ましい実施態様の場合、デバイスはさらに、試料チャンバの第1の電極と第2の電極との間に交流電場を印加するための、デバイスとチップとの間の電気界面を含む。
【0143】
デバイスはさらに、基準信号、すなわち、生体細胞なしの試料を含むか又は明確な量の所与の生体細胞を含む試料からの信号を測定することができる。基準信号は、例えば試料チャンバから離れた別のチャンバ、チップの別の位置に配置されたチャンバ、又は別のチップに配置されたチャンバから回収することができる。
【0144】
デバイスはさらに、内部電源を含むことができる。
内部電源は例えばバッテリーを含んでよい。PCR反応中に利用されるべきエネルギーの量は、PCRサイクルの最小温度と最大温度との間で、流体試料の容積と等価の容積の水を加熱するのに必要とされる熱の量として推定することができる。この温度差は約50 Kであり、ひいては、1サイクル当たり移動されるべき熱は、30 μL試料容積に対して約6ジュールである。例えば60サイクル行うと、1PCR反応の総エネルギー消費量は、60*6 = 360ジュールになる。商業的熱サイクラーに匹敵するランプ時間を用いると(すなわち1秒当たり2℃)、所要出力は360*2/50 = 14.4 Wである。
【0145】
バッテリー電圧は、バッテリーの定格電圧、例えばニッケル-カドミウム(NiCd)及びニッケル水素(NiMH)バッテリーの場合1セル当たり1.2 Vであり、また大抵のリチウム-イオン(Li-イオン)バッテリーの場合1セル当たり3.6 Vであると考えられる。バッテリーの電荷容量は典型的には、ミリアンペア-時間(mAh)という用語で示され、C-格付けと呼ばれる。例えばC-格付け1200 mA-時間のバッテリーの場合、1Cの負荷電流は1200 mAである。0.1C未満の負荷電流でドレインする場合に、バッテリーは理想的とみなすことができる(すなわち一定のエネルギー容量を有する)(Linden, D. 1984. Handbook of Batteries and Fuel Cess. New York: McGraw-Hill)。従って、例えば10.8Vを供給するバッテリーを使用して、電力14.4 Wを供給する場合、このバッテリーのC-格付けは、エネルギー容量を急激に低減するピーク電力消費を回避するために、14.4/(10.8*0.1) = 13300 mAhであるべきである。
【0146】
このエネルギー消費及び電力供給を可能にするために、そして真の可搬性をさらに保証するために、再充電可能なバッテリーが好ましい。本発明の好ましい実施態様の場合、再充電可能なバッテリーは、ニッケル水素(NiMH)バッテリー及びリチウム-イオン(Li-イオン)バッテリーから成る群から選択される。
【0147】
また、内部電源は、発電機、例えば可搬性発電機を含んでよい。可搬性発電機は、外部電源として利用することができる。可搬性発電機は、ソーラー・モジュール、バッテリー・チャージャ(例えばAC又は自動車用バッテリー・チャージャ)、又は燃料燃焼発電機などから再充電することができ、或いは、単にこれらから成ることができる。
【0148】
或いは、外部電源からの電力は、例えばバッテリー・バックアップが補充されたデバイスに供給することもできる。
【0149】
本発明の実施態様の場合、デバイスはさらに、例えば、チップの試料チャンバ内に気体試料を提供し、そしてチップがデバイス内に挿入されたときに試料チャンバの第2の開口と流体連通されるための流れ発生手段を含む。
【0150】
流れ発生手段は、ポンプ、例えばピストン・ポンプ、膜ポンプ、又は容積移送式ポンプを含んでよい。
【0151】
本発明の実施態様の場合、ポンプは、試料採取中にチップを通過する適切な気流を供給することができるように選択される(10 mL/分〜500 mL/分)。好ましくは、ポンプは下記基準のうちの1つ又は2つ以上を満たすように選択されるべきである:小さなサイズ、軽量、脈動なしの流れ、モータ極性を変化させることによる可逆的な媒質流、電圧を制御することにより調節可能な流れ容積。
【0152】
本発明の実施態様の場合、流れ発生手段は、試薬の小さな液滴を形成するためのインクジェット・ディスペンサー、又は同様のマイクロ計量分配デバイスを含んでよい。
【0153】
本発明の実施態様の場合、気体状試料は、チップを通る受動流によって提供することができる。このことは、チップと、試料採取されるべき周囲空気との間の速度差を要求することになる。例えば、チップは空気中を進ませることができ、例えば、チップを飛行機上に取り付けて、最適には飛行方向と対向する状態で、第1の開口が周囲空気と流体連通されるようにすることができる。或いは、このような条件は、空気が例えば、換気口に取り付けられたチップのように、空気と比較して速度を有さないチップの周りで空気が動く場合に発生する。
【0154】
本発明の実施態様の場合、デバイスはさらに、例えば試料チャンバを通る流れを制御するための手段を含む。
【0155】
流れは例えば液体流及び/又は気体流であってよい。
【0156】
流れを制御する手段は典型的には、1つ又は2つ以上の弁を含む。弁は例えば、逆止弁、二方向弁、多位置弁及びピンチ弁から成る群から選択することができる。
【0157】
弁は、例えばマイクロ加工弁であってよく、また1実施態様の場合、弁はチップ内に一体的に組み込まれている。
【0158】
本発明の実施態様の場合、第1の試薬液体は、インクジェット・マイクロ計量分配技術を用いて供給することができる。第1の液体試薬又は第1の液体試薬の別個の成分を含む1つ又は2つ以上の区画を含有するインクジェット・カートリッジが、反応チャンバ内に液体をマイクロ計量分配することを可能にするように取り付けられる。
【0159】
本発明のさらに別の実施態様の場合、第1の液体試薬又はその別個の成分は、プラスチック・ポリマーから成る密閉封入体内部にカプセル封入される。プラスチック・ポリマー封入体は、組み込み式加熱電極を備えていて、適切な電流の供給によってプラスチック・ポリマーを溶融し、そして続いて、カプセル封入された液体をチップ内に放出することを可能にする。さらに別の実施態様の場合、密封されたプラスチック・ポリマー封入体からの液体の放出は、封入体の機械的又は物理的破裂によって、例えば鋭利な物体で封入体を刺すことによって、達成することができる。
【0160】
本発明の1実施態様の場合、デバイスは、結果の視覚的読み出しを可能にするディスプレイを備えることができる。ディスプレイは、発光源(LED、又は電球など)、スクリーン、デジタル読み出し値、又はこれらの任意の組み合わせのフォーマットであってよい。本発明のさらに別の実施態様の場合、読み出し値は、聴覚信号の形態で通信することができる。
【0161】
本発明の好ましい実施態様の場合、デバイスは、無線通信を可能にする成分を含む。無線通信の例は、802.11 Mobile Wireless LAN、携帯電話、Bluetooth(登録商標)、GPS、及びUltra Widebandである。通信は一方向、例えばデバイスからのデータの輸送又はデバイスへのデータの輸送であることが可能であり、或いは通信はその組み合わせ、すなわち二方向であることも可能である。確立された通信はさらに、デバイス間通信へ拡張することができ、すなわち、特別ネットワークを確立することにより、1つのデバイスが、別のデバイスの試料採取の開始をトリガーさせるのを可能にし、ひいては、例えばエアロゾル・クラウドの発達のモニタリングを容易にする。
【0162】
本発明の好ましい実施態様の場合、デバイスは軽量且つ/又は可搬性のデバイスである。
【0163】
本発明の実施態様の場合、デバイスの重さは10 kg以下、例えば8 kg、6 kg、4 kg、3 kg、又は2 kg、例えば1 kg以下である。デバイスの重さは800 g以下、例えば600 g、500 g、400 g、300 g、200 g、150 g、100 g、80 g、60 g、50 g、40 g、30 g、20 g、10 g、5 g、例えば1 g以下であることが好ましい場合もある。
【0164】
典型的には、デバイスの総重量は、20 g〜1 kg、例えば20 g〜50 g、50 g〜100 g、100 g〜250 g、250 g〜500 g又は500 g〜1000 gである。
【0165】
本発明の別の観点は、生体細胞から生体物質を抽出するシステムであって、該システムは、本明細書中に定義されたデバイスと機能上連携する本明細書中に定義されたチップを含む、生体細胞から生体物質を抽出するシステムに関する。
【0166】
本発明の実施態様の場合、システムのチップとデバイスとは一体的に形成されており、互いに物理的に分離されることはない。本発明の実施態様の場合、システムのチップとデバイスとは一体的に形成されて、チップ又はデバイスを損傷することなしにはこれらを互いに物理的に分離することはできない。
【0167】
本発明の重要な実施態様の場合、システムは使い捨てシステムであり、例えば一度だけしか使用されないようになっている。
【0168】
別の重要な実施態様の場合、システムのチップは使い捨てであるが、しかしデバイスは再使用されるようになっている。
【0169】
本発明の特別な観点は、Bacillus群に由来する細菌の内生胞子からDNAを抽出する方法を容易にする方法及びマイクロ構造に関する。
【0170】
本発明の目的は、Bacillus anthracisを含むグラム陽性細菌の機械的、化学的及び熱的に高耐性の内生胞子から迅速にDNAを抽出することにより、迅速なDNA検出を可能にすることである。
【0171】
この目的は、胞子上に誘発されたパルス電場の複合使用を含む方法及び構造によって達成される。前記使用は、周波数及び振幅を変更することができる電場の間又は電場に隣接して埋め込まれた胞子の溶液を含有する流体構造と、前記使用のための最適なパラメータ設定値セットとから成る。
【0172】
本発明は、胞子含有溶液を横切ってパルス電場を印加するのを可能にする方法を記載する。前記方法の結果として、DNAは、前記方法の初期化から5秒以内に解放される。
【0173】
特別な実施態様の場合、本発明は、内生胞子を含有する内位添加溶液と一緒に2電極構造を利用して、胞子からDNAを迅速に抽出する方法を提供する。電極は電圧源及び周波数発生器に接続され、パルス電場が溶液上に誘発されるのを可能にする。
【0174】
別の特別な実施態様の場合、本発明は、上記のものと同じ機能を発揮し、そして迅速なDNA抽出のための試料調製システムの一体部分であってもよいマイクロ流体デバイスを利用する。
【0175】
本発明のさらに別の特別な観点は、前記方法の適用結果として解放されたDNAの品質は、続いてPCRを行うか又はDNAの品質を視覚的に検査する(アガロースゲル電気泳動及び染色の後)ことにより測定したところ、影響を及ぼされない。
【0176】
溶液を横切って実際に出現する印加電位の量に関する問題は、細胞又は胞子溶液に電気穿孔電圧を印加するために2電極構造を使用したマイクロ構造において特に重要である。これにより、電極・溶液界面における電圧低下は、印加電圧と比較して著しい。当業者には明らかなように、試験において使用される溶液は、経時的な電位勾配に制限を課す。例えば、印加電圧が低い(<2 V)と、ピーク形状勾配を発生させる長いパルス時間(>100 μs)でも、電極を横切る電位勾配は極めて小さくなる。溶液中の印加電圧の最大規模は、機器の立ち上がり時間及び充電時間のための指数関数を畳み込むことにより計算することができる。例えば、機器立ち上がり時間8 μs及び充電時間20〜40 μsは、印加振幅の最大15〜18%をもたらす。この最大値は、パルス印加から約10〜15 μs後に達成される。50〜75 μs後に、電位低下は事実上ゼロになる。なぜならば、印加電圧すべてが電極-溶液界面に出現するからである。電圧が高くなると、界面インピーダンスは無視できる程度のものになり、電極間を通る電流は、溶液コンダクタンスによって制限される。
【0177】
10 μmを上回る距離の場合の100 mM KCl溶液の抵抗は、一般に30±3 kΩであることが判っている。
【0178】
胞子殻は、胞子構造全体に機械的保護をもたらすタンパク質から成る。Bacillus cereusは、1種のタンパク質から成る胞子殻を有するのに対して、Bacillus subtilisは、殻内で同定された20種を上回るタンパク質を有する。さらに、殻は最小分子以外の全てに対して胞子内部を保護する機能性分子篩であるが、胞子殻は塩化物及びヨウ素のようなハロゲンに対する耐性と関連している。殻はまた発芽に関与し、胞子殻内の突然変異を有する胞子が、発芽に関して最も不良であることが判っている。
【0179】
Bacillus種の増殖性細胞において、細胞壁ペプチドグリカンは、β-1,4結合におけるN-アセチルグルコサミン(NAG)とN-アセチルムラミン酸(NAM)との反復二糖から成っている。ペプチド鎖(最初はL-アラニン-D-グルタメート-メソ-ジアミノピメリン酸[Dpm]-D-アラニン-D-アラニン)がNAM残基に結合され、増殖性細胞中の全てのPGの約35%が架橋に関与する。異なるBacillus種間の有意な変異を示すことができる増殖性細胞PGとは対照的に、皮層PGの構造の基本的特徴は全ての種において類似している。皮層PGの構造は、増殖性細胞PGとは、2つの主な点で異なっている。
1. 皮層内のNAM残基の約50%は、ムラミン酸-rho-ラクタム(MAL)として存在し、MAL残基の大部分は、グリカン鎖内のムラミン酸位置1つおきに配置されている。
2. NAM残基の約25%が単一のL-アラニンだけを担持し、そしてMAL残基はペプチド側鎖を担持しないので、成長中の細胞と比較して、胞子皮層内の架橋形成に関与するためには、多くのDdm残基の1/4だけが利用可能である。その結果、胞子PGは、増殖性細胞内よりも架橋される量が著しく少ない。しかし、胞子皮層内の正確な分子配列は知られていない。胞子皮層は胞子の浸透膨潤及び収縮に関与することが判っている。
【0180】
印加された交流電位の結果として、電極における酸化又は還元反応により、DNAのヌクレオチド塩基に化学変化が発生することがある。このことは、続くDNA増幅中に熱安定性DNAポリメラーゼによる誤ったヌクレオチド認識をもたらし、増幅速度の低下又はヌクレオチドの誤組み込みを招くおそれがある。
【0181】
従って、本発明の特別な観点は、高周波数交流電解場を印加することにより、細胞内成分を胞子からアクセス可能にする方法に関する。
【0182】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は例えば、DNAの抽出及び/又はDNAの精製を目的とすることができる。
【0183】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は例えば、診断分析との関連において、DNA検出に用いることを目的とすることもできる。
【0184】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は例えば、PCRにおいて用いること、例えば一体的に形成されたPCRデバイスにおいて用いることを目的とすることもできる。
【0185】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は例えば、可搬性PCRデバイスにおいて用いること、又は生物戦争用物質検出において用いることを目的とすることもできる。
【0186】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は例えば、細菌胞子を対象とすることもできる。
【0187】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、グラム陽性細菌に由来する胞子を対象とする。
【0188】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、Bacillus属及びClostridia属に由来する胞子を対象とする。
【0189】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、Bacillus cereus群に由来する胞子を対象とする。
【0190】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、Bacillus anthracis種に由来する胞子を対象とする。
【0191】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、原核細胞を検出することを目的とする。
【0192】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、細菌細胞からDNAを解放することを目的とする。
【0193】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、耐熱性細菌細胞を対象とする。
【0194】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、好熱性又は高温活性細菌を対象とする。
【0195】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、PCRによる耐熱性細菌の検出を目的とする。
【0196】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、熱溶解耐性細菌の検出を目的とする。
【0197】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、マイコバクテリアとともに用いることを目的とする。
【0198】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、真核細胞とともに用いることを目的とする。
【0199】
本発明の特別な実施態様の場合、本明細書に記載された方法は、哺乳動物細胞とともに用いることを目的とする。
【0200】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、ヒト細胞、真菌細胞、植物細胞とともに、又はウィルスとともに用いることを目的とする。
【0201】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、2つ又は3つ以上の電極表面間に細胞又は胞子懸濁液が含有される毛管構成において用いることを目的とする。
【0202】
本発明の特別な実施態様の場合、溶解は、高周波数交流電場の印加によって誘発される。
【0203】
本発明の特別な実施態様の場合、高周波数交流電場の印加周波数は、8000〜200,000 Hzである。
【0204】
本発明の特別な実施態様の場合、交流電場は、1〜60秒の印加パルス系列である。
【0205】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、パルス間の短い中断を適用することを含む。
【0206】
本発明の特別な実施態様の場合、印加電圧は6〜40 Vである。
【0207】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、脱塩水中に懸濁された細胞又は胞子上で行われる。
【0208】
本発明の特別な実施態様の場合、細胞又は胞子は、PCR緩衝配合物中に懸濁される。
【0209】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、捕捉デバイスとの組み合わせで用いることを目的とする。
【0210】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、胞子捕捉デバイスとの組み合わせで用いることを目的とする。
【0211】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、細胞捕捉デバイスとの組み合わせで用いることを目的とする。
【0212】
本発明の特別な実施態様の場合、方法は、静電捕捉デバイスとの組み合わせで用いることを目的とする。
【0213】
本発明の特別な実施態様の場合、静電捕捉デバイスは、一体的に形成された胞子捕捉・溶解構成の一部である。
【0214】
本発明の特別な実施態様の場合、方法、チップ、デバイス及びシステムは、生体細胞の電気穿孔及び/又は融合には用いられない。
【0215】
なお、本発明によれば、本発明の観点のうちの1つとの関連において記載された実施態様及び特徴は、本発明の他の観点にも当てはまる。
【実施例1】
【0216】
交流電場の印加に続くDNA品質
緩衝剤、dNTP及びTaqポリメラーゼを含有する一体化溶液であるTaqMan Universal PCR Master Mixシステム(Applied Biosystems)を使用して、Opticon DNAエンジン(MJ research)上でリアルタイムPCR分析を実施した。全てBacillus thurigiensisの16S及び23S tRNAの遺伝子間スペーサを増幅することを目的として、2つのプライマー269-16-23スペーサ1 5'-TAT GAG CTA CAC TGT TAT CTA GTT TTC AAA GAA-3'(SEQ ID NO:1)及び270-16-23スペーサ2 5'-TTT-CCG TGT TTC GTT TTG TTC AG-3'(SEQ ID NO:2)を最終濃度900 nMで添加し、そして蛍光TAQMANプローブ(FAM-ACT TCT CTC ATA TAT AAA TGT-MGB-NFQ)(SEQ ID NO:3)を100 nMで添加した。標準PCRは15 μl試料容積を使用し、そして15分間95℃でインキュベートしてTaq ポリメラーゼを活性化することにより、PCRを開始した。続いて、15秒、94℃の溶融ステップと、60秒、60℃のアニール・伸長複合ステップとから成る2ステップPCR反応を40サイクル適用した。各サイクルの終了時に、蛍光をオンライン測定することにより、PCR生成物の形成を分析した。
【0217】
Boe他(Boe他、1989)の方法を用いて、Bacillus thuringiensis subsp. kurstakiの一晩の培養物2 ml(約109細胞/ml)の染色体DNAを単離した。精製されたDNAを75 μlのTE緩衝剤中に溶解し、このことは、10-6希釈物が約27細胞/μlのDNAを含有することを意味する。
【0218】
染色体DNA溶液の10-6希釈物4 μl(〜100ゲノムコピーと当量)を使用して、希釈されたDNA試料上の高周波数電場の生じ得る損傷効果を分析した。標準的な検出PCRを実施して、印加された電場の影響を調べた。詳細には、Bacillus thuringiensis染色体DNAの10-6希釈物20 μlに、5、10、20、又は30秒目で10 V、100 kHz高周波数電解場を施した。続いて、処理されたDNA4 μl(100コピーの染色体と当量)に、リアルタイムPCR分析を施した。電解条件を施された全ての試料を、34サイクルのPCR後に検出した。このことは、検出感度の損失が観察されなかったことを意味する。全て異なる処理を施されたDNA試料が同じCT点で検出されるという事実は、ヌクレオチド塩基の化学的還元又は酸化が、検出PCRの感度に及ぼす影響が僅かであることを示す(図1参照)。しかし、電解処置の持続時間がさらに増大すると(30、90、又は180秒)、長時間の処置が適用されたときに、電解時間が影響を及ぼすことが判る(図2)。30秒を上回る電気分解は推定上、ターゲットDNAの解放及び過飽和を招き、次いで、定量PCRによって測定して不良のPCR検出をもたらす。
【実施例2】
【0219】
定量PCTによって測定した、交流電場印加に続く胞子溶解
3.2 x 109胞子/g(Valent BioSciences Corp, Libertyville, USA)を含有する100 mgのBiobit Bacillus thuringiensis subsp. kurstakiを、1 mlの脱塩水中に再懸濁し、そして12000 rpmで90秒にわたって遠心分離した。この手順を4回にわたって反復した。上澄みを廃棄した。最終溶液は約3.2 x 108個の胞子を含有した。この溶液を約3.2 x 105胞子/mlの最終濃度まで希釈し、続いて電気分解及びPCRのために使用した。
【0220】
周波数及び電圧を一定に保って(それぞれ100 kHz及び10 V)、電解処置の持続時間を、5〜30秒で暴露時間を変化させることによって試験した。図3から明らかなように、CT値に対する顕著な影響はなく、このことは胞子の溶解が時間に対して事実上独立していることを示す。しかし、電解処置の持続時間がさらに増大すると(30、90、又は180秒)、長時間の処置が適用されたときに、電解時間が影響を及ぼすことが判る(図4参照)。30秒を上回る電気分解は推定上、ターゲットDNAの解放及び過飽和を招き、次いで、不良のPCR検出をもたらす。
【実施例3】
【0221】
胞子電解効率に対する、変化する周波数(10〜100 kHz)の効果
3.2 x 109胞子/g(Valent BioSciences Corp, Libertyville, USA)を含有する100 mgのBiobit Bacillus thuringiensis subsp. kurstakiを、1 mlの脱塩水中に再懸濁し、そして12000 rpmで90秒にわたって遠心分離した。この手順を4回にわたって反復した。上澄みを廃棄した。最終溶液は約3.2 x 108個の胞子を含有した。この溶液を約3.2 x 105胞子/mlの最終濃度まで希釈し、続いて電気分解及びPCRのために使用した。
【0222】
電圧及び時間を一定に保った(それぞれ10 V及び30秒)。図4はこの試験の結果を示し、そしてこれから明らかなように、100 kHzの高周波数はCT(閾値サイクル)の減小を示し、こうして、胞子から増幅可能なDNAの解放を実証した。50 kHz又は10 kHzに周波数が低下することによって、CT値の改善(すなわち未処理対照と比較したCTの低下)が引き起こされることはなかった。
【実施例4】
【0223】
胞子の電気分解のための最小有効電圧の測定
周波数及び電圧を一定に保って(それぞれ100 kHz及び30秒)、電解処置の電圧を、暴露電圧を3から10ボルトに変化させる(それぞれ3、5、7及び10 V)ことによって試験した。図5から判るように、膜/胞子破裂のための電圧閾値VTが存在することが明らかである。こうして、印加された電圧は、界面電極抵抗に高く依存する臨界パラメータであり、例えば、印加電圧が低い(<2 V)と、ピーク形状勾配を発生させる長いパルス時間(>100 μs)でも、電極を横切る電位勾配は極めて小さくなる。
【0224】
機器の立ち上がり時間及び充電時間のための指数関数を畳み込むことにより、溶液中の印加電圧の最大規模を計算することができる。例えば、機器立ち上がり時間8 μs及び充電時間20〜40 μsは、印加振幅の最大15〜18%をもたらす。この最大値は、パルス印加から約10〜15 μs後に達成される。50〜75 μs後に、電位低下は事実上ゼロになる。なぜならば、印加電圧すべてが電極-溶液界面に出現するからである。電圧が高くなると、界面インピーダンスは無視できる程度のものになり、電極間を通る電流は、溶液コンダクタンスによって制限される。
【実施例5】
【0225】
DNA/RNA解放パーセンテージの測定
ほぼ109CFU/g(Valent BioSciences Corp, Libertyville, USA)を含有する100 mgのBiobit Bacillus thuringiensis subsp. kurstakiを、1 mlの脱塩水中に再懸濁し、続いて5分間にわたって70℃で低温殺菌し、続いて溶液を遠心分離する(5000 x g、5分)。上澄みを廃棄する。この(チンダル化)手順をさらに2回反復する。最終溶液1 mlは約108個の胞子を含有する。
【0226】
溶液を最終濃度胞子105/mlまで希釈し、こうして原液を構成する。
【0227】
試料チャンバには原液試料を充填し、そして選択された周波数、振幅及び持続時間を有する交流電場に対して試料を暴露する。
【0228】
試料の生体細胞のDNA/RNA解放パーセンテージを測定するために、暴露された試料、及び原液を含有する対照の両方を、フルオロクロム4,6'-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI(登録商標))で処理する。DAPIはDNA染色剤として幅広く使用される。DNA染色剤は、dsDNAの副溝内でA-Tが豊富な配列に結合されると、蛍光複合体を形成する。染色溶液は、2.0 μg/mlのDAPIを含有する水溶液である。さらに、DAPIは、制限された細胞透過性を有し、従って遺伝物質の細胞解放を示すのに最適である。
【0229】
試料チャンバ容積の3倍の容積の染色溶液で、試料チャンバを溶出する。試料チャンバからの溶出物を、5分間にわたって室温でインキュベートしておく。
【0230】
暴露済試料の容積と匹敵する容積の対照を、対照容積の約3倍の容積の染色溶液で、5分間にわたって別個に染色する。
【0231】
次いで、適切な容積の対照、及び適切な容積の暴露済試料を、位相差顕微鏡法及び蛍光顕微鏡法(DAPIフィルターが供給)で観察する。対照及び暴露済試料の両方に対して、胞子の数を位相差顕微鏡法によってカウントし、そして染色体DNA分子の解放を示す胞子(青色スポットとして見える)の数を蛍光顕微鏡法によってカウントする。DNA/RNA解放パーセンテージを次いで
【数1】


として測定する。dsはカウントされた青色DNAスポット数であり、ssは総胞子数である。
バックグラウンドDNA/RNA解放パーセンテージを対照に関して測定することもでき、そしてこれが5%を上回るバックグラウンド解放を示す場合には、この測定は無効とみなされ、生体細胞の新しい原液において測定が繰り返されることが示唆される。
【0232】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0233】
以下に、本発明のいくつかの実施態様を図面を参照しながら説明する。
【図1】図1は、DNA/RNA解放パーセンテージに与えられる、交流電場に対する暴露時間の効果を示す図である(リアルタイムPCR及び蛍光を介して測定)。
【図2】図2は、DNA/RNA解放パーセンテージに与えられる、交流電場に対する長時間暴露の効果を示す図である(リアルタイムPCR及び蛍光を介して測定)。
【図3】図3は、より長い暴露時間が、ターゲットDNAの品質に対して不都合な影響を及ぼさないことを示す図である。
【図4】図4は、DNA/RNA解放パーセンテージに与えられる、交流電場の周波数の効果を示す図である(リアルタイムPCR及び蛍光を介して測定)。
【図5】図5は、DNA/RNA解放パーセンテージに与えられる、交流電場の振幅の効果を示す図である(リアルタイムPCR及び蛍光を介して測定)。
【図6】図6は、チップの2つの実施態様を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体細胞から生体物質を抽出する方法であって、該方法は、
a) 試料チャンバと、第1及び第2の電極とを用意し、該第1及び第2の電極、並びに該試料チャンバは、該試料チャンバの少なくとも一部が該第1の電極と該第2の電極との間にあるように位置決めされ、
b) 該試料チャンバ内に、生体細胞を含む液体試料を提供し、
c) 前記液体試料を前記試料チャンバ内の交流電場に対して暴露し、前記交流電場は、該第1及び第2の電極によって提供され、また、該生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有し、そして
d) 任意には、該生体細胞から抽出された生体物質を含む、該暴露された液体試料の一部に対する分析を行う、
ステップを含む、生体細胞から生体物質を抽出する方法。
【請求項2】
該第1の電極と該第2の電極とが、20 mm以下、好ましくは10 mm以下、そしてより好ましくは5 mm以下の距離だけ分離されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該生体細胞が、該第1の電極と該第2の電極とに付着させられ、且つ/又は、該第1の電極と該第2の電極との間に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記交流電場の周波数は、5 kHz以上であり、好ましくは20 kHz以上であり、そしてより好ましくは50 kHz以上である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記交流電場の周波数は、100 kHz以上であり、好ましくは250 kHz以上であり、そしてより好ましくは500 kHz以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記交流電場が、該第1及び第2の電極の極性を調節することによって形成される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該交流電場が、方形、正弦、鋸歯、非対称三角形、対称三角形;又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択された実質的な形態を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該交流電場が、周波数領域において、少なくとも第1及び第2の周波数成分を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該生体物質が、細胞小器官、遺伝物質、及びタンパク質から成る群から選択された成分を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該遺伝物質が、染色体DNA及び/又はプラスミドDNA及び/又は任意のタイプのRNAを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該タンパク質が、酵素、構造タンパク質、輸送タンパク質、イオンチャネル、毒素、ホルモン、及び受容体から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該生体細胞が、細菌、古細菌、又は真核微生物、及び真核生物細胞から成る群から選択される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該細菌が胞子形成細菌である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該胞子形成細菌が、Bacillus属及び/又はClostridium属から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該細菌がBacillus群に由来する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該細菌がBacillus anthracisである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該生体細胞が増殖性細菌、又は胞子である、請求項12から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
生体細胞から生体物質を抽出するチップであって、試料チャンバを含む該チップは、試料チャンバと、第1及び第2の電極と、任意には該第1の電極と該第2の電極との間の交流電場とを含み、
- 該試料チャンバは、周囲空気と流体連通する第1の開口と、デバイスと流体連通を形成するための第2の開口とを含み、
- 該第1及び第2の電極は、該試料チャンバの互いに対向する側に位置決めされており、
- 任意には、該試料チャンバはさらに、生体細胞を含む液体試料を含み、
- 任意には、該交流電場が、該生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有する、
生体細胞から生体物質を抽出するチップ。
【請求項19】
該第1及び第2の電極が、該第1の開口と該第2の開口との間に位置決めされている、請求項18に記載のチップ。
【請求項20】
該生体細胞が、該第1の電極と該第2の電極との間に配置されている、請求項18又は19に記載のチップ。
【請求項21】
生体細胞から生体物質を抽出するデバイスであって、該デバイスが:
- 該デバイスと機能上連携するための、チップが配置されるべきチップ位置、
- 該試料チャンバの電極間に交流電場を印加するための、該デバイスと該チップとの間の電気界面、及び
- 該デバイスが、
- 試料チャンバ内に、生体細胞を含む液体試料を提供すること、
- 前記液体試料を前記試料チャンバ内の交流電場に対して暴露し、前記交流電場は、生体細胞から生体物質を抽出するのに十分な振幅を有すること、及び
- 該生体細胞から抽出された生体物質を含む、該暴露された液体試料の一部に対する分析を行うこと
から成る群から選択された1つ又は2つ以上の作用を実施するようにするソフトウェアを含むプログラム可能ユニット
を含む、生体細胞から生体物質を抽出するデバイス。
【請求項22】
生体細胞から生体物質を抽出するシステムであって、該システムは、請求項21に記載のデバイスと機能上連携する請求項18から20までのいずれか1項に記載のチップを含む、生体細胞から生体物質を抽出するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−527237(P2007−527237A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500053(P2007−500053)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000132
【国際公開番号】WO2005/083078
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506290224)トムセン バイオサイエンス アクティーゼルスカブ (3)
【Fターム(参考)】