説明

生体磁場計測装置

【課題】最高の感度を得るためにセンサー部の真下に生体の所定の部位が来る様に生体を乗せた移動部を移動する。
【解決手段】生体500を身長方向に挿入可能な強磁性体で構成された筒部100と、生体500の所定の部位510から発せられる微弱磁場を計測した磁場データBを出力するセンサー部200と、生体500を身長方向に搭載し筒部100の長さ方向に挿入可能な移動部300と、磁場データBに基づき駆動信号Dを出力する制御部220と、駆動信号Dに基づき移動部300の位置を調整する駆動部320と、を含み、制御部220は、磁場データBが最大値となる位置に生体500の所定の部位510が来るように移動部300の位置を調整する駆動信号Dを出力する、ことを特徴とする生体磁場計測装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の心臓などから発せられる生体磁場を計測する生体磁場計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地磁気に比べて微小な心臓磁場や脳磁場などを測定するための超電導量子干渉素子(SQUID;Superconducting Quantum interference Device)装置などは、建物周囲の環境磁場(磁気ノイズ)の影響を極力遮蔽する必要がある。そのため、SQUID装置などは、環境磁場から遮蔽するための透磁率の高い電磁鋼板・パーマロイ等の磁性材料板で囲まれたパッシブ(受動)磁気シールド室の中に設置する必要がある。
【0003】
しかしながら、このようなパッシブ磁気シールド室では、一つの部屋全体を高価な磁性材料板で囲むため大掛かりな施工が必要となり、それに伴い多大な費用がかかってしまうという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、例えば特許文献1には、パーマロイ等の強磁性体を筒状に形成し、この筒状の開口部内に複数のSQUID磁束計を配置し、この筒状の内部で横たわる生体をSQUID磁束計で検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−136492号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では、筒状の内部に横たわる生体をSQUID磁束計で検出するときに、最高の感度を得るための最適位置である、SQUID磁束計の真下に生体の所定の部位(例えば心臓など)が来たかどうかが目視では判らないため、生体を乗せた移動台を最適位置に調整することが難しいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の生体磁場計測装置は、生体を身長方向に挿入可能な強磁性体で構成された筒部と、前記生体の所定の部位から発せられる微弱磁場を計測した磁場データを出力するセンサー部と、前記生体を身長方向に搭載し前記筒部の長さ方向に挿入可能な移動部と、前記磁場データに基づき駆動信号を出力する制御部と、前記駆動信号に基づき前記移動部の位置を調整する駆動部と、を含み、前記制御部は、前記磁場データが最大値となる位置に前記生体の所定の部位が来るように前記移動部の位置を調整する前記駆動信号を出力する、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、センサー部により生体の所定の部位(例えば心臓など)からの微弱磁場を計測した磁場データが最大値となるように移動部の位置を調整できるので、センサー部の真下に生体の所定の部位が来る様に生体を乗せた移動部を移動することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に記載の生体磁場計測装置において、前記センサー部は複数のセンサーから構成され、前記制御部は、前記複数のセンサーのうちの所定の1つのセンサーが計測した磁場データが最大値となる位置に前記生体の所定の部位が来るように前記移動部の位置を調整する前記駆動信号を出力する、ことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、例えば所定の1つのセンサーをセンサー部の中心近傍に位置するセンサーとすることにより、生体の所定の部位がセンサー部の中心近傍に位置するセンサーの真下に来る様に移動部の位置を調整することができるので、生体の所定の部位全体をセンサー部で計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る生体磁場計測装置の構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は上面図、(D)はセンサー部の概略図。
【図2】第1実施形態に係る生体磁場計測装置の動作を示す側面図。
【図3】第1実施形態に係る生体磁場計測装置の動作を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、生体磁場計測装置の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
(第1実施形態)
<生体磁場計測装置の構成>
先ず、第1実施形態に係る生体磁場計測装置の構成について、図1を参照して説明する。図1(A)は、第1実施形態に係る生体磁場計測装置の構成を示す正面図、図1(B)は、生体磁場計測装置の構成を示す左側面図、図1(C)は、生体磁場計測装置の構成を示す上面図、図1(D)は、生体磁場計測装置のセンサー部の構成を示す概略図、である。
【0015】
図1(A)〜(C)に示すように、生体磁場計測装置1は、筒部100と、センサー部200と、移動部300と、端部311と、棒310と、制御部220と、駆動部320と、から構成されている。
【0016】
筒部100は、例えば、強磁性体のパーマロイなどの薄い板を円筒または中空の多面体柱(四角柱、六角柱、八角柱など)に加工して形成され、筒部100の内部を周囲の外乱磁場から遮蔽する役割を担っている。図1では、筒部100は円筒で構成されている。ここで、筒部100の長さ方向をY軸、筒部100の高さ方向をZ軸、筒部100の幅方向をX軸とし、X軸とY軸とZ軸との交点を筒部100の長さ方向の真ん中で、Z軸方向に縦割りした断面の円の中心と定義する。筒部100は、生体500(本実施形態では人体を例に説明する。)を身長方向に挿入可能である十分に大きな空間を内部に有している。
【0017】
センサー部200は、SQUID磁束計や光ポンピング磁束計などで構成されており、筒部100のZ軸上かつ生体500の所定の部位としての心臓510がある胸部よりも高さ方向で上になるように配置されている。なお、図1ではセンサー部200の固定方法は図示していない。また特許文献1にも示すように、SQUID磁束計においては、高さ方向が筒部100内に収まらない場合、筒部100のZ軸と交わる上面に開口部を必要とするが、図1には開口部を図示していない。
【0018】
センサー部200は、図1(D)に示すように複数のセンサー201から構成されている。図1(D)では、センサー部200は、5行5列の25個のセンサー201で構成した場合を例示している。また、所定の1つのセンサーとしてのセンサー202は、センサー部200の中心である3行3列目に位置する。
【0019】
制御部220は、センサー部200と信号線210を介して接続され、センサー部200が計測した磁場データBを取得し、駆動信号Dを出力する。
【0020】
移動部300は、生体500を身長方向に搭載可能である十分な面積の台を有し、筒部100のY軸方向に挿入可能なように構成されている。なお、本実施形態では、説明の簡略化のためにY軸方向のみ稼動可能な場合について説明するが、X軸方向、Z軸方向にも稼動可能に構成することもできる。
【0021】
移動部300には、例えば、ねじ切りされた棒310がY軸方向に挿入されており、棒310は駆動部320と端部311との間に渡されている。
【0022】
駆動部320は、制御部220が出力する駆動信号Dに基づいて、棒310を回転し、棒310に切られたねじにより移動部300を移動させ位置を調整する。移動部300の位置を調整する他の方法として、例えば、油圧方式で移動させるなどの方法が考えられるが、ここでは詳細な説明は省略する。
【0023】
<生体磁場計測装置の動作>
次に、第1実施形態に係る生体磁場計測装置の動作について、図2、3を参照して説明する。図2は、第1実施形態に係る生体磁場計測装置の動作を示す側面図である。図3は、第1実施形態に係る生体磁場計測装置の動作を示すグラフである。
【0024】
図2(A)は、移動部300が筒部100の外にあり、生体500が搭乗可能な状態を示す。この時、図3(A)に示すようにセンサー部200から出力される磁場データBは値b1を保っている。
【0025】
次に、図2(B)は、移動部300をY軸方向に移動させて筒部100の中に入り、Z軸近くに生体500の心臓510が来た状態を示す。この時、図3(B)に示すようにセンサー部200から出力される磁場データBは値b2に達する。
【0026】
さらに、移動部300を筒部100のY軸方向に移動させていくと、図2(C)に示すように心臓510がZ軸と重なる位置(センサー部200の中心の真下)に来ると、図3(C)に示すようにセンサー部200から出力される磁場データBは値b3の最大値に達する。
【0027】
さらに、移動部300を筒部100のY軸方向に移動させていくと、心臓510がZ軸と重なる位置から離れ、磁場データBは値b3よりも下がっていく。そこで、制御部220は、磁場データBが値b3の最大値に達した図2(C)の位置まで戻るように駆動信号Dを駆動部320に出力する。
【0028】
<複数のセンサーで構成された生体磁場計測装置の動作>
ここで、第1実施形態に係る生体磁場計測装置のセンサー部が複数のセンサーで構成されている場合の動作について説明する。
【0029】
本実施形態の生体磁場計測装置1において、センサー部200を構成する複数のセンサー201のうちの所定の1つのセンサーであるセンサー202は、計測した磁場データBを駆動制御部220に出力する。
【0030】
駆動制御部220は、磁場データBを取得し、駆動信号Dを駆動部320に出力する。
【0031】
駆動部320は、出力された駆動信号Dに基づき、センサー202が計測した磁場データBが最大値となる位置に、生体500の所定の部位としての心臓510が来るように移動部300の位置を調整する。
【0032】
以上に述べた本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0033】
本実施形態では、センサー部200により生体500の所定の部位(例えば心臓510など)からの微弱磁場を計測した磁場データBが最大値となるように制御部220が移動部300の位置を調整する。そのため、最高の感度が得られるセンサー部200の真下に生体500の心臓510が来る様に生体500を乗せた移動部300を移動することができる。
【0034】
また、所定の1つのセンサー202をセンサー部200の中心近傍に位置することにより、生体500の心臓510がセンサー部200の中心近傍の真下に来る様に移動部300の位置を調整することができる。よって、生体500の心臓510全体をセンサー部200で計測することができる。
【0035】
以上、生体磁場計測装置の実施形態を説明したが、こうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることができる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0036】
(変形例1)
生体磁場計測装置の変形例1について説明する。上記第1実施形態では、移動部300の位置を調整してセンサー部200の中心に心臓510が来るように説明したが、センサー部200の位置を調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…生体磁場計測装置、100…円部、200…センサー部、201,202…センサー、210…信号線、220…制御部、300…移動部、310…棒、311…端部、320…駆動部、500…生体、510…心臓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を身長方向に挿入可能な強磁性体で構成された筒部と、
前記生体の所定の部位から発せられる微弱磁場を計測した磁場データを出力するセンサー部と、
前記生体を身長方向に搭載し前記筒部の長さ方向に挿入可能な移動部と、
前記磁場データに基づき駆動信号を出力する制御部と、
前記駆動信号に基づき前記移動部の位置を調整する駆動部と、
を含み、
前記制御部は、前記磁場データが最大値となる位置に前記生体の所定の部位が来るように前記移動部の位置を調整する前記駆動信号を出力する、
ことを特徴とする生体磁場計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体磁場計測装置において、前記センサー部は複数のセンサーから構成され、前記制御部は、前記複数のセンサーのうちの所定の1つのセンサーが計測した磁場データが最大値となる位置に前記生体の所定の部位が来るように前記移動部の位置を調整する前記駆動信号を出力する、
ことを特徴とする生体磁場計測装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生体磁場計測装置において、前記センサー部は、計測部に対して位置調整可能である
ことを特徴とする生体磁場測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−229808(P2011−229808A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104923(P2010−104923)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】