説明

生体組織処理装置

【課題】各容器を配管等で接続した閉鎖系において脂肪組織と脂肪由来細胞との混合物を生成することができる生体組織処理装置を提供する。
【解決手段】脂肪組織を収容する少なくとも2つの収容部12,13を備え、両収容部12,13に収容された脂肪組織を洗浄するとともに、洗浄された収容部12内の脂肪組織を消化して脂肪由来細胞を分離する洗浄消化処理部2と、洗浄消化処理部2に接続され、洗浄消化処理部2において分離された脂肪由来細胞を濃縮する細胞濃縮部3とを備え、収容部13が、細胞濃縮部3に接続され、細胞濃縮部3において濃縮された脂肪由来細胞と収容部13において洗浄された脂肪組織とを混合する生体組織処理装置1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪組織等の生体組織を消化酵素液とともに攪拌することにより消化し、得られた細胞懸濁液を遠心分離機によって濃縮することにより、脂肪由来細胞を回収する生体組織処理装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
この生体組織処理装置においては、生体組織に対して、洗浄液のような処理液を供給して洗浄処理が行われ、処理後に洗浄液が廃液として排出される。また、生体組織を消化して得られた細胞懸濁液に対しても、洗浄液のような処理液が供給され、遠心分離機において濃縮処理が行われ、処理後に上清が廃液として排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/012480号
【特許文献2】特開2009−136172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば乳房再建術や豊胸術の場合には、洗浄した脂肪組織と脂肪由来細胞とを混合して体内に注入する必要がある。この場合において、特許文献1および2に開示されている生体組織処理装置によれば、脂肪組織と脂肪由来細胞との混合物を直接生成することができないため、洗浄を終えた脂肪組織の一部を取り出して保存しておく必要がある。この際、洗浄を終えた脂肪組織が外気に触れることとなるため、異物や菌のコンタミネーションの可能性が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、各容器を配管等で接続した閉鎖系において脂肪組織と脂肪由来細胞との混合物を生成することができる生体組織処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、生体組織を収容する少なくとも2つの収容部を備え、両収容部に収容された生体組織を洗浄するとともに、洗浄された一方の収容部内の生体組織を消化して組織由来細胞を分離する洗浄消化処理部と、該洗浄消化処理部に接続され、該洗浄消化処理部において分離された組織由来細胞を濃縮する細胞濃縮部と、該細胞濃縮部に接続され、該細胞濃縮部において濃縮された組織由来細胞と、前記洗浄消化処理部の他方の収容部において洗浄された生体組織とを混合する混合部とを備える生体組織処理装置を採用する。
【0008】
本発明に係る生体組織処理装置によれば、洗浄消化処理部により、少なくとも2つの収容部に収容された生体組織が洗浄され、一方の収容部内の生体組織が消化されて組織由来細胞が分離される。分離された組織由来細胞は、細胞濃縮部により濃縮され、混合部により洗浄消化処理部の他方の収容部内の生体組織と混合される。これにより、例えば乳房再建術や豊胸術において体内に注入される脂肪組織と脂肪由来細胞との混合物が生成される。
【0009】
この場合において、本発明に係る生体組織処理装置は、洗浄消化処理部、細胞濃縮部、混合部がそれぞれ配管等で接続された閉鎖系を構成している。これにより、洗浄された生体組織が外気に触れることを防止して、外気中の異物や菌のコンタミネーションを防止することができる。
【0010】
上記発明において、前記洗浄消化処理部が、少なくとも2つの前記収容部を有する容器と、該容器内に収容された生体組織を攪拌する攪拌手段とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、攪拌手段により洗浄消化処理部の一方の収容部に収容された生体組織を攪拌して、生体組織の消化を促進することができ、効率的に組織由来細胞を分離することができる。
【0011】
上記発明において、前記混合部が、前記他方の収容部と前記攪拌手段とから構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、洗浄消化処理部の他方の収容部において、洗浄消化処理部の一方の収容部において分離された組織由来細胞と、他方の収容部内に保存された生体組織とを攪拌手段により攪拌することができ、その混合状態を良好にすることができる。
【0012】
上記発明において、生体内の前記生体組織を採取する組織採取部と、該組織採取部により採取された前記生体組織を少なくとも前記2つの収容部に分配する分配手段とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、組織採取部により生体内の生体組織を採取し、分配手段により採取された生体組織を洗浄消化処理部の少なくとも2つの収容部に分配することができる。これにより、少なくとも2つの収容部への脂肪組織の注入作業を同時に行うことができ、効率的に脂肪組織と脂肪由来細胞との混合物を生成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各容器を配管等で接続した閉鎖系において脂肪組織と脂肪由来細胞との混合物を生成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体組織処理装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の取り出しポートの詳細図である。
【図3】図1の洗浄消化処理部の詳細図である。
【図4】図1の生体組織処理装置により実行される処理を示すフローチャートである。
【図5】第1の変形例に係る洗浄消化処理部の詳細図である。
【図6】第2の変形例に係る洗浄消化処理部の詳細図である。
【図7】第3の変形例に係る洗浄消化処理部の詳細図である。
【図8】第4の変形例に係る洗浄消化処理部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る生体組織処理装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織処理装置1は、図1に示されるように、例えば脂肪組織等の生体組織の洗浄および消化を行う洗浄消化処理部2と、洗浄消化処理部2により脂肪組織が消化されて得られた細胞懸濁液を濃縮する細胞濃縮部3と、細胞濃縮部3において濃縮された細胞懸濁液を洗浄するための洗浄液を貯留する洗浄液収容部4と、細胞濃縮部3における濃縮処理(洗浄処理を含む)において排出された廃液を収容する廃液回収部5と、これらを接続する搬送路(配管)6とを備えている。
【0016】
洗浄消化処理部2は、ヒトから採取した脂肪組織を収容する容器11を備えている。
容器11は、隔壁14により2つの収容部12,13に分けられている。2つの収容部12,13には、それぞれ脂肪組織を注入するための脂肪注入ポート15,16が設けられている。収容部12,13には、それぞれ洗浄液収容部4が接続されており、洗浄液収容部4から洗浄液を供給して攪拌することで、内部に収容された脂肪組織を洗浄するようになっている。
【0017】
収容部12には、脂肪組織を消化する消化酵素液を注入するための酵素注入ポート17が設けられている。収容部12は、洗浄された収容部12内の脂肪組織を消化酵素液により消化して、脂肪由来細胞を分離するようになっている。収容部12は、細胞濃縮部3に接続されており、脂肪由来細胞が分離した細胞懸濁液を細胞濃縮部3に送るようになっている。
【0018】
収容部13は、洗浄された脂肪組織を一時的に保存するようになっている。
収容部13には、細胞濃縮部3により濃縮された細胞懸濁液を導入するための細胞懸濁液導入ポート18が設けられている。すなわち、収容部13は、細胞懸濁液導入ポート18から導入された細胞懸濁液と、収容部13の内部に一時的に保存されていた脂肪組織とを混合する役割をも有している。また、収容部13には、細胞懸濁液と脂肪組織との混合液を取り出すための取り出しポート19が設けられている。
【0019】
取り出しポート19は、図2に示すように、収容部13の壁面に設けられたノズル55と、ノズル55に嵌め込まれたゴムやスポンジ等の弾性部材56とから構成されている。このような構成とすることで、収容部13からの漏れを防止しつつ、シリンジ針を弾性部材56に刺して内部の細胞懸濁液と脂肪組織との混合液を取り出すことができるようになっている。
【0020】
収容部12,13には、洗浄液を透過させ、脂肪組織の通過を禁止するフィルタ21,22が設けられている。これにより、収容部12,13は、洗浄液のみを排出できるようになっている。なお、フィルタ21,22が無くても、脂肪は洗浄液の上側に浮いているため、後述する送液ポンプP1の時間制御のみで、洗浄液を収容部12,13の底部から排出することも可能である。
【0021】
収容部12,13は、外周部にヒータ23が設けられており、その内部が例えば37℃に維持されるようになっている。
また、収容部12,13には、収容部12,13を一体的に揺動させる図示しない揺動機構(攪拌手段)が設けられている。揺動機構により収容部12を揺動させることで、収容部12内の消化酵素液と脂肪組織とを攪拌し、消化酵素液による脂肪組織の消化を促進するようになっている。また、揺動機構により収容部13を揺動させることで、細胞懸濁液導入ポート18から導入された細胞懸濁液と、内部に一時的に保存されていた脂肪組織との混合を促進するようになっている。
【0022】
図3に示すように、収容部12,13には、生体内の脂肪組織を採取するカニューレ(組織採取部)61がチューブ63により接続されている。チューブ63は、分岐部(分配手段)64において、チューブ63aとチューブ63bとに分岐し、チューブ63a,63bはそれぞれ収容部12,13の上方に接続されている。
【0023】
収容部12,13内は、予め吸引ポンプ65により減圧されており、チューブ63に接続されたカニューレ61を患者の体内に挿入して、収容部12,13内に脂肪組織を取り込むようになっている。このようにすることで、収容部12,13の上方から、脂肪組織が収容部12,13内に注入される。
【0024】
なお、上記方法に代えて、シリンジ62の先にカニューレ61を取付けて患者から脂肪組織を採取し、カニューレ61をシリンジ62から取り外した後に、シリンジ62から収容部12,13内に脂肪組織を注入することとしてもよい。
【0025】
細胞濃縮部3は、図1に示すように、2つの遠心容器31,32と、遠心容器31,32を支持するアーム(図示略)と、該アームを中心軸線回りに回転させるモータ(図示略)と、該モータの回転軸に接続されたロータリージョイント33とを備えている。
【0026】
遠心容器31,32は、周方向に等間隔をあけて配置され、図示しないアームにより、半径方向に揺動自在に支持されている。したがって、図示しないモータを作動させてアームを中心軸線回りに回転させると、遠心容器31,32は、底部が半径方向外方に向かうように回転させられる。これにより、遠心容器31,32は、内部に細胞懸濁液等を収容して回転させることで、細胞懸濁液に含まれている成分の比重の差によって、細胞懸濁液を細胞群と上清とに遠心分離するようになっている。
【0027】
遠心容器31,32は、円筒状に形成され、一端が開口し他端がテーパ状に漸次先細になって閉塞された形状を有している。遠心容器31,32は、開口部を閉塞する蓋体34,35を有している。
【0028】
遠心容器31の内部には、蓋体34の略中央から遠心容器31の軸線に沿って延びた一対の管路36a,36bが設けられている。管路36aは遠心容器31の底部近傍に開口しており、管路36bは遠心容器31の途中位置に開口している。管路36a,36bは二重構造とされている(例えば、管路36bの管孔内部に管路36aが配設されている)が、別個に設けられた管が並設されていてもよい。
【0029】
管路36a,36bは、それぞれチューブ38a,38bに接続されている。チューブ38a,38bは合流してロータリージョイント40の軸体41に接続されている。チューブ38a,38bにはそれぞれ逆止弁25a,25bが設けられている。逆止弁25aは遠心容器31への給液方向のみに、逆止弁25bは遠心容器31からの排液方向のみに流体を流通させるようになっている。
【0030】
また、チューブ38aには、逆止弁25aをバイパスするチューブが設けられ、該チューブとチューブ38aとの分岐点には、三方弁27が設けられている。この三方弁27を開閉動作させることで、チューブ38aは、遠心容器31への給液方向および遠心容器31からの排液方向へ流体を流通させることができるようになっている。具体的には、チューブ38aは、三方弁27を開閉動作させることで、洗浄液収容部4からの洗浄液を遠心容器31へ供給するとともに、遠心容器31から濃縮した細胞懸濁液を洗浄消化処理部2へ送液することができるようになっている。
【0031】
遠心容器32の内部には、蓋体35の略中央から遠心容器32の軸線に沿って延びた一対の管路37a,37bが設けられている。管路37aは遠心容器31の底部近傍に開口しており、管路37bは遠心容器32の途中位置に開口している。管路37a,37bは二重構造とされている(例えば、管路37bの管孔内部に管路37aが配設されている)が、別個に設けられた管が並設されていてもよい。
【0032】
管路37a,37bは、それぞれチューブ39a,39bに接続されている。チューブ39a,39bは合流してロータリージョイント40の軸体41に接続されている。チューブ39a,39bにはそれぞれ逆止弁26a,26bが設けられている。逆止弁26aは遠心容器32への給液方向のみに、逆止弁26bは遠心容器32からの排液方向のみに流体を流通させるようになっている。
【0033】
また、チューブ39aには、逆止弁26aをバイパスするチューブが設けられ、該チューブとチューブ39aとの分岐点には、三方弁28が設けられている。この三方弁28を開閉動作させることで、チューブ39aは、遠心容器32への給液方向および遠心容器32からの排液方向へ流体を流通させることができるようになっている。具体的には、チューブ39aは、三方弁28を開閉動作させることで、洗浄液収容部4からの洗浄液を遠心容器32へ供給するとともに、遠心容器32から濃縮した細胞懸濁液を洗浄消化処理部2へ送液することができるようになっている。
【0034】
ロータリージョイント40は、円筒形状の軸体41と、軸体41の外側に同心円に配置された円筒形状のハウジング42と、軸体41およびハウジング42を中心軸線回りに相対回転可能に支持する回転軸受43とを備えている。軸体41の内部には流路44,45が形成されており、これら流路44,45は軸体41およびハウジング42に開口している。流路44,45は、ハウジング42の開口部に設けられたポートを介して、チューブ51,52にそれぞれ接続されている。
【0035】
搬送路6は、チューブ51,52に接続されており、洗浄消化処理部2、細胞濃縮部3、洗浄液収容部4および廃液回収部5を接続する複数のチューブと、これらチューブを外側から押して内部の液体を送る送液ポンプP1,P2と、これらチューブを分岐させる複数の継手と、分岐されたチューブを各位置で開閉する複数の電磁弁V1〜V12とを備えている。
【0036】
このように構成された本実施形態に係る生体組織処理装置1の作用について、図4に示すフローチャートを用いて以下に説明する。
まず、カニューレ61を患者の体内に挿入して、生体内の脂肪組織を採取する(ステップS1)。
次に、収容部12,13の上部に設けられた脂肪注入ポート15,16から、収容部12,13のそれぞれに略等量の脂肪組織(チューメセント液入り)を注入する(ステップS2)。
【0037】
次に、収容部12,13内の脂肪組織の洗浄を行う(ステップS3,S8)。
具体的には、まず、電磁弁V4を開放し、送液ポンプP1を回すことにより、チューメッセント液を廃液回収部5に排出する。
次に、電磁弁V12,V6,V2,V3を開放して、送液ポンプP2を回し、収容部12,13のそれぞれに洗浄液収容部4から洗浄液を注入する。そして、図示しない揺動機構により、収容部12,13を攪拌して、脂肪組織内の赤血球を洗浄液中に浮遊させる。
次に、電磁弁V4を開放し、送液ポンプP1を回すことにより、収容部12,13内の洗浄液を廃液回収部5に排出する。
上記の動作を数回繰り返し、洗浄工程を終了させる。
【0038】
次に、収容部12内の脂肪組織の消化を行う(ステップS4)。
具体的には、電磁弁V12,V6,V2を開放して、送液ポンプP2を回し、収容部12に洗浄液を注入するとともに、収容部12上部の酵素注入ポート17から消化酵素液を注入する。そして、揺動機構により収容部12を揺動させて、攪拌、放置することにより、収容部12内の脂肪組織を2層(上層は成熟脂肪組織、下層は消化後の細胞懸濁液)に分離する。
【0039】
次に、電磁弁V2,V6,V10,V11を開き、送液ポンプP2をステップS4とは逆方向に回転させることにより、2つの遠心容器31,32の底部近傍に開口する管路36b,37bから、容部12内の細胞懸濁液を細胞濃縮部3の遠心容器31,32内に送液する(ステップS5)。
【0040】
次に、細胞濃縮部3において、細胞懸濁液の遠心分離および洗浄濃縮を行う(ステップS6)。
具体的には、まず、図示しないモータを作動させ、遠心容器31,32を底部が半径方向外方に向かうように回転させる。これにより、遠心容器31,32内の細胞懸濁液は、その成分の比重の差によって細胞群と上澄み液とに遠心分離される。
【0041】
次に、モータを停止して遠心回転を止めた後、電磁弁V8,V9を開き、送液ポンプP1を回転させて、遠心容器31,32内の上澄み液を廃液回収部5に送液する。
そして、再び電磁弁V7、V9,V10を開き、送液ポンプP2を回転させて、洗浄液を遠心容器31,32内に注入し、再びモータを回転させて遠心分離を行う。
上記の動作を複数回繰り返した後、電磁弁V8,V9を開き、送液ポンプP1を回転させて、遠心容器31,32内の上澄み液を廃液回収部5に送液する。
【0042】
次に、遠心容器31,32内において遠心分離された脂肪由来細胞を取り出す(ステップS7)。
具体的には、遠心容器31,32の上側の三方弁27,28を手動ないし制御系で切り替え、電磁弁V1,V6,V10,V11を開き、送液ポンプP2を回転させて、遠心容器31,32底部の細胞懸濁液を収容部13に送液する。
また、本実施形態においては三方弁27,28での切り替えを開示しているが、三方弁が無い状態であっても、逆止弁25a,26aを取り外すか、または、逆向きにすることによっても同様の機能を達成することができる。
【0043】
次に、収容部13に細胞懸濁液を注入し(ステップS9)、揺動機構により収容部12,13を攪拌し、細胞濃縮部3から送液された細胞懸濁液と収容部13の内部に一時的に保存されていた脂肪組織とを混合する(ステップS10)。
【0044】
次に、細胞懸濁液と脂肪組織との混合液を、収容部13の取り出しポート19からシリンジ等により取出した後、患者に注入する(ステップS11)。このようにして得られた細胞懸濁液と脂肪組織との混合液は、患部に移植することでき、乳房再建術や豊胸術等に用いることが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る生体組織処理装置1によれば、洗浄消化処理部2により、2つの収容部12,13に収容された脂肪組織が洗浄され、一方の収容部12内の脂肪組織が消化されて脂肪由来細胞が分離される。分離された脂肪由来細胞は、細胞濃縮部3により濃縮され、混合部により洗浄消化処理部2の他方の収容部13内の脂肪組織と混合される。これにより、例えば乳房再建術や豊胸術において体内に注入される脂肪組織と脂肪由来細胞との混合物が生成される。
【0046】
この場合において、本実施形態に係る生体組織処理装置1は、洗浄消化処理部2、細胞濃縮部3がそれぞれ搬送路6の配管等で接続された閉鎖系を構成している。これにより、洗浄された脂肪組織が外気に触れることを防止して、外気中の異物や菌のコンタミネーションを防止することができる。
【0047】
また、収容部12を揺動させる揺動機構を備えることで、揺動機構により収容部12に収容された脂肪組織を攪拌して、脂肪組織の消化を促進することができ、効率的に脂肪由来細胞を分離することができる。
【0048】
また、収容部13を揺動させる揺動機構を備えることで、収容部13において、収容部12において分離されて細胞濃縮部3により濃縮された細胞懸濁液と、収容部13内に保存された脂肪組織とを揺動機構により攪拌することができ、その混合状態を良好にすることができる。
【0049】
また、カニューレ61により生体内の脂肪組織を採取し、分岐部64により採取された脂肪組織を収容部12,13に分配することで、2つの収容部12,13への脂肪組織の注入作業を同時に行うことができ、効率的に脂肪組織と脂肪由来細胞との混合物を生成することができる。
【0050】
[第1の変形例]
本実施形態に係る生体組織処理装置1において、図5に示すように、隔壁14と容器11上面部との間に隙間を設け、この隙間に脂肪組織を注入するための脂肪注入ポート71を設けることとしてもよい。
【0051】
この場合、容器11は、底面部においては2つの収容部12,13に分けられている一方、上面部近傍では2つの収容部12,13が連通している。そして、この連通部分の略中央に脂肪注入ポート71が設けられており、この脂肪注入ポート71からカニューレ61により採取された脂肪組織が注入される。
このように構成することで、2つの収容部12,13に略均等に脂肪組織を注入することができる。
【0052】
[第2の変形例]
第1の変形例に係る生体組織処理装置1において、図6に示すように、隔壁14の頂上部、すなわち隔壁14の容器11の上面部と対向する領域に、上方を頂点とする二等辺三角形の断面形状を有するテーパ部材72を設けることとしてもよい。テーパ部材72は、上方から下方に従って互いに離間する2つのテーパ面を有している。
【0053】
このようにすることで、2つの収容部12,13に注入される脂肪組織の均等性を向上することができる。また、隔壁14の頂上部に脂肪組織が残留してしまうことを防止することができる。
なお、テーパ部材72は、2つの収容部12,13に注入される脂肪組織が均等になればよく、頂点からの垂線に線対称な断面形状を有していればよい。また、テーパ部材72の頂点部やテーパ面を曲面で形成することとしてもよい。
【0054】
[第3の変形例]
本実施形態に係る生体組織処理装置1において、図7に示すように、2つの収容部12,13を分離し、各収容部12,13を独立した容器としてもよい。この場合、各収容部12,13にそれぞれ別個の駆動機構を設けてもよいし、各収容部12,13を1つの揺動台(駆動機構)に載置することとしてもよい。
【0055】
[第4の変形例]
本実施形態に係る生体組織処理装置1において、図8に示すように、容器11とカニューレ61とを接続するチューブ63(チューブ63a,63b)と、容器11と吸引ポンプ65とを接続するチューブ67(チューブ67a,67b)のそれぞれに電磁弁を設置し、これら電磁弁の開閉制御を行うこととしてもよい。
【0056】
このような構成とすることで、カニューレ61により採取され、収容部12,13に注入される脂肪組織の量を自由に可変することができる。
なお、電磁弁は、チューブ63(チューブ63a,63b)か、チューブ67(チューブ67a,67b)のいずれか一方に設置されているだけでもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、細胞を分離する生体組織として、脂肪組織を例示したが、これに限定されるものではなく、他の生体組織から該生体組織由来細胞を分離する場合に使用することとしてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、細胞濃縮部3が2つの遠心容器31,32を有していることとして説明したが、この例に限定されるものではなく、3つ以上の遠心容器を有していることしてもよい。この場合には、モータの回転軸に偏心荷重がかからないように、3つ以上の遠心容器を回転軌跡の周方向に均等に配置すればよい。
【0059】
また、本実施形態では、洗浄消化処理部2が2つの収容部12,13を有していることとして説明したが、この例に限定されるものではなく、3つ以上の収容部を有していることしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 生体組織処理装置
2 洗浄消化処理部
3 細胞濃縮部
4 洗浄液収容部
5 廃液回収部
6 搬送路
11 容器
12 収容部
13 収容部(混合部)
14 隔壁
61 カニューレ(組織採取部)
64 分岐部(分配手段)
72 テーパ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を収容する少なくとも2つの収容部を備え、両収容部に収容された生体組織を洗浄するとともに、洗浄された一方の収容部内の生体組織を消化して組織由来細胞を分離する洗浄消化処理部と、
該洗浄消化処理部に接続され、該洗浄消化処理部において分離された組織由来細胞を濃縮する細胞濃縮部と、
該細胞濃縮部に接続され、該細胞濃縮部において濃縮された組織由来細胞と、前記洗浄消化処理部の他方の収容部において洗浄された生体組織とを混合する混合部とを備える生体組織処理装置。
【請求項2】
前記洗浄消化処理部が、
少なくとも2つの前記収容部を有する容器と、
該容器内に収容された生体組織を攪拌する攪拌手段とを備える請求項1に記載の生体組織処理装置。
【請求項3】
前記混合部が、前記他方の収容部と前記攪拌手段とから構成されている請求項2に記載の生体組織処理装置。
【請求項4】
生体内の前記生体組織を採取する組織採取部と、
該組織採取部により採取された前記生体組織を少なくとも2つの前記収容部に分配する分配手段とを備える請求項1に記載の生体組織処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−182737(P2011−182737A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53120(P2010−53120)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】