説明

生体音取得端末、電子聴診器および生体音測定装置

【課題】周囲の雑音や声および医師等の指から伝わる音等に起因する雑音を除去するとともに、超低周波音を含む音データを取得する。
【解決手段】音センサ12を支持するセンサ支持部111と、指で持つための操作部112とを備えた生体音取得端末において、音センサ12が、人体からの音を、空気層を介さず肌から直接取得する圧電素子からなり、センサ支持部111と操作部112とが雑音吸収部材113を介して結合していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可聴域以下の超低周波音を含む音データを取得できる生体音取得端末、電子聴診器および生体音測定装置に関し、特に、周囲の雑音や声および医師等の指から伝わる音等に起因する雑音を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野で聴診器は広く使用されており、近年、聴診結果をデータに残すため等に便宜な、圧電素子を使用した電子聴診システム(特許文献1参照)も知られている。
【0003】
一般的な耳で聴く聴診器において、伝統的なベル型の聴診器からさらに低音域をカットする膜型の聴診器が出現したことからも理解できるように、心音の聴診には高音域が重要であると認識されている。このことは電子聴診器においても踏襲されており、およそ30Hz以下の音域は通常フィルター処理によりカットされることが多く、その集音構造も低音域を意識したものにはなっていない。
この種の電子聴診システムは、図16に示すように、聴診器91と本体装置92とからなる。聴診器91は、ケース911と聴診面(膜面)912とPZT913(圧電素子)とを備えている。聴診器91からの心音等の生体音は信号ケーブル93を介して本体装置92に送られ、本体装置92では当該生体音の解析等を行うことができる。
【0004】
聴診面912にPZT913を設けると、操作者の指からの音等が雑音として検出される。膜型の聴診器においては膜912が低域カットフィルターの役目を果たすため、PZT913は空間Sを通じて超低周波音を除いた可聴域の音を検出する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−273817
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図16の聴診システムに使用される聴診器91は、前述したように、PZT913と聴診面(膜面)912の間の空間Sを伝わる振動を検出する膜型であるため、低音域の周波数帯の検出感度が低下している。
そこで、これまで注目されていない1Hzから数十Hz帯域の周波数の低音域を効率よく検出し解析を行うことができれば、心疾患の診断等の解析において新たな進展が得られることが大いに期待される。
本発明は、周囲の雑音や声および医師等の指から伝わる音等の影響を受けることなく、超低周波音を含む音データを取得できる生体音取得技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
音センサを支持するセンサ支持部と、指で持つための操作部とを備えた生体音取得端末において、
前記音センサが、人体からの音を、空気層を介さず肌から直接取得する圧電素子からなり、
前記センサ支持部と前記操作部とが雑音吸収部材を介して結合していることを特徴とする生体音取得端末。
【0008】
本発明の生体音取得端末は、心音,脈音,呼吸音等、生体が発生する音を広い周波数範囲で取得する。
圧電素子は、圧電セラミック(ピエゾ素子:PZT)またはPZT複合素子である。
センサ支持部および操作部は、合成樹脂から構成することができるし、金属から構成することができる。なお、音センサの圧電素子側を大気圧に保障する必要がある。
雑音吸収部材は、周囲の雑音や声および操作者の指を介して伝わる雑音や、本体装置に接続するための信号ケーブルを伝達する雑音を吸収する。
雑音吸収部材として、次に述べる合成樹脂発泡体やジェルの他、グラスウールや、エアーチューブを使用することができる。
【0009】
(2)
前記圧電素子は、一方の面が人体の肌に接する金属板と、当該金属板の他方の面に形成された圧電セラミックからなることを特徴とする(1)に記載の生体音取得端末。
金属板の人体に向いた面には合成樹脂膜を設けることができる。これにより、生体音取得端末が、人の肌に触れたときに金属板の冷たさを感じさせることがない、また、この合成樹脂膜により、金属板の腐食が防止される。
【0010】
(3)
前記雑音吸収部材が合成樹脂発泡体またはジェルであることを特徴とする(1)または(2)に記載の生体音取得端末。
【0011】
合成樹脂発泡体は、連通気泡とすることもできるし、独立気泡とすることもできる。独立気泡とした場合には、音センサの圧電素子側を大気圧に保障する手段を設けることが好ましい。
合成樹脂発泡体として、たとえばポリウレタンフォームを使用することができ、発泡倍率は、適宜決定することができる。発泡倍率を高くし過ぎると、雑音吸収効果が低下する。一方、発泡倍率を低くし過ぎると、操作性が低下する。たとえば、発泡体にポリウレタンウレタンを使用した場合の発泡倍率は3から10倍の中から適宜選択することができる。
【0012】
(4)
前記センサ支持部および前記操作部がともに円筒であり、
径が大きい前記操作部の内側に、径が小さい前記センサ支持部が前記雑音吸収部材を介して収容され、または、
径が大きい前記センサ支持部の内側に、径が小さい前記操作部が前記雑音吸収部材を介して収容されている(1)に記載の生体音取得端末。
【0013】
前記センサ支持部および前記操作部は、長い円筒であってもよいし、扁平な円筒であってもよい。
【0014】
(5)
(1)から(4)の何れかに記載の生体音取得端末と、
前記生体音取得端末から検出信号を受け取る聴診回路と、
を備えた電子聴診器において、
前記聴診回路は、前記生体音取得端末から音信号を受け取り、当該音信号をフィルタリングして音出力装置に送ることを特徴とする電子聴診器。
【0015】
本発明の電子聴診器では、聴診回路には音センサからのアナログ音信号を増幅する増幅器や、アナログ音信号をディジタル信号に変換するAD変換器や、前記本体装置に搭載することができる。
【0016】
(6)
(1)から(4)の何れかに記載の生体音取得端末と、
前記生体音取得端末から検出信号を受け取る本体装置と、
を備えた生体音測定装置において、
前記本体装置は、受信した検出信号の解析部、解析結果の記憶部および解析結果の出力部を備えたことを特徴とする生体音測定装置。
【0017】
本発明の生体音測定装置では、音センサからのアナログ音信号を増幅する増幅器や、アナログ信号をディジタル信号に変換するAD変換器を、前記生体音取得端末に搭載することができるし、このAD変換器を、前記本体装置に搭載することができる。
【0018】
アナログ信号の音センサからの本体装置への送信は、有線で行ってもよいし、無線で行ってもよい。前記音センサからのアナログ信号を本体装置に送信する間に、当該アナログ信号に雑音が混入し検出情報が劣化するような場合には、AD変換器は前記本体装置に設けずに前記生体音取得端末に設けることが好ましい。この場合のAD変換器の駆動電力は、アナログ信号の音センサからの本体装置への送信を有線で行う場合には、本体装置から供給を受けてもよい。また、たとえば、アナログ信号の音センサからの本体装置への送信を無線で行う場合には、前記生体音取得端末にバッテリーおよびスイッチングレギュレータを組み込んでおくことでAD変換器の駆動電力を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の生体音取得端末では、周囲の雑音や声および操作者の指等からの雑音を排除しつつ、センサを人体に直接接触できる。
したがって、本発明の生体音測定装置では、検出周波数が制限されることがなくなり、超低周波数から可聴域周波数(1Hz〜数百Hz)にわたる心拍動に起因する振動、心音,脈音,呼吸音等の情報を検出できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の生体音取得端末の第1実施形態を示す説明図であり、(A)は全体説明図、(B)は(A)のSJ部分の拡大図である。
【図2】図2は第1実施形態の第1の設計変更例を示す説明図であり、(A)は雑音吸収部材がエアーチューブである場合を示す図、(B)は雑音吸収部材がジェル入りチューブである場合を示す図である。
【図3】図3は第1実施形態の第2の設計変更例を示す説明図である。
【図4】図4は本発明の生体音取得端末の第2実施形態を示す説明図である。
【図5】図5は第2実施形態の第1の設計変更例を示す説明図である。
【図6】図6は第2実施形態の第2の設計変更例を示す説明図である。
【図7】図7は第2実施形態の第3の設計変更例を示す説明図である。
【図8】図8は本発明の電子聴診器の実施形態を示す説明図であり、(A)は概略説明図、(B)は回路説明図である。
【図9】図9は本発明の生体音測定装置の第1実施形態を示す説明図である。
【図10】図10は本発明の生体音測定装置の第2実施形態を示す説明図である。
【図11】図11は本発明の生体音測定装置の第3実施形態を示す説明図である。
【図12】図12は本発明の生体音測定装置の第4実施形態を示す説明図である。
【図13】図13は、図9の生体音測定装置における、生体音取得端末の出力波形、ディジタルフィルタによる処理波形および表示出力装置の出力波形例を示している。
【図14】図14(A)は本発明の生体音取得端末モデル(実験装置)を示す図、図14(B)は従来の生体音取得端末モデル(実験装置)を示す図である。
【図15】図15(A)は図14(A)の生体音取得端末モデルと図14(B)の生体音取得端末モデルにそれぞれ50Hzの正弦波(実効値10V)を加えたときの各PZTセンサの応答を示す波形図、図15(B)は図14(A)の生体音取得端末モデルと図14(B)の生体音取得端末モデルにそれぞれ8Hzの正弦波(実効値10V)を加えたときの各PZTセンサの応答を示す波形図である。
【図16】従来技術(生体音測定システム)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1(A),(B)は、本発明の生体音取得端末の第1実施形態を示す説明図である。
図1(A)において、生体音取得端末1は、センサ支持部111と、操作部112と、雑音吸収部材113とを備えている。
センサ支持部111は、本実施形態では筒状のポリエチレンからなり、下端には、音センサ12が支持されている。センサ支持部111の材質を考慮して(たとえば、重量を大きくして)センサ支持部111自体が奏する雑音吸収性を高くすることもできる。
【0022】
音センサ12は、一方の面(図1(A)では下面)が人体側に向いた金属板122と、金属板122の他方の面に形成された圧電素子121とからなる。音センサ12からは(圧電素子121の両面からは)信号線1231,1232が引き出されている。
音センサ12に接続された信号線1231,1232は、信号ケーブル31としてケーブル口Jを介し生体音測定装置50の本体装置5に接続されている。
【0023】
操作部112は操作時に医師等が指で持つ部分であり、本実施形態ではステンレスにより形成されている。
雑音吸収部材113は、筒状をなし、図1(A)では発泡倍率5の独立気泡のポリウレタンフォームからなる。図1(A)では、センサ支持部111の内部空間を大気圧に保つため、センサ支持部111に孔hiが、操作部112の上部に孔hoが開けられている。
【0024】
本実施形態では、音センサ12を人の肌に直接接触させて、心音等を直接採取する。音センサ12は、人の肌に直接接触していない場合(センサと人の肌との間に空気がある場合)には、取得できる周波数に大きな制限が生じる。図1(A)の例では、周波数12Hz程度から数百Hzの音が採取される。しかも周囲の雑音や声および医師等の指からの振動や信号ケーブル31を伝達する振動は雑音吸収部材113により減衰ないし消去される。
【0025】
図1(B)は、図1(A)のSJ部分の拡大図である。図1(B)に示すように、センサ支持部111と操作部112とは直接接触することなく、雑音吸収部材113を介して結合している。図1(C)は、センサ支持部111と操作部112との間を、合成ゴム等の緩衝部材114で連結した例を示している。
【0026】
本実施形態では、音センサ12を人の肌に直接接触させて、心音等を直接採取する。音センサ12は人の肌に直接接触していない場合(センサと人の肌との間に空気がある場合)には、取得できる周波数に大きな制限が生じる。図1の例では、前述したように周波数1Hz程度から数百Hzの音が採取される。しかも周囲の雑音や声および医師等の指からの振動や信号ケーブル31を伝達する振動は雑音吸収部材113により減衰ないし消去される。
【0027】
図2(A),(B)は第1実施形態の第1の設計変更例を示す説明図である。
図2(A)において、生体音取得端末1は、雑音吸収部材113の構成を除き、図1の生体音取得端末1と同じである。本設計変更例では、雑音吸収部材113は、3つのドーナツ状のエアーチューブからなる。
図2(B)の設計変更例では、雑音吸収部材113は、ジェルが封入されたチューブからなる。
【0028】
これらの設計変更例でも、音センサ12を人の肌に直接接触させて、心音等を直接採取する。本設計変更例でも、周波数1Hz程度から数百Hzの音が採取され、しかも周囲の雑音や声および医師等の指からの振動や信号ケーブル31を伝達する振動は雑音吸収部材113により減衰ないし消去される。
【0029】
図3は第1実施形態の第2の設計変更例を示す説明図であり、図3の生体音取得端末1は、センサ支持部111が操作部112に対して自由状態では突出しており、センサ支持部111の先端(音センサ12)を人の肌等に直接接触させたときにセンサ支持部111の突出部が操作部112内に収容されるように構成されている。
【0030】
本設計変更例では、音センサ12の人の肌等に対する接触圧を一定にできるので、安定した心音等の採取が可能である。本設計変更例でも、周波数12Hz程度から数百Hzの音が採取され、しかも周囲の雑音や声および医師等の指からの振動や信号ケーブル31を伝達する振動は雑音吸収部材113により減衰ないし消去される。
なお、図3の生体音取得端末1において、たとえば図3(B)の状態になったときに、図3(A)の状態に付勢するバネをセンサ支持部111と操作部112との間に設けておくこともできる。
【0031】
図4は、本発明の生体音取得端末の第2実施形態を示す説明図である。
図4において、生体音取得端末2は、センサ支持部211と、操作部212と、雑音吸収部材213とを備えている。
【0032】
センサ支持部211は本実施形態では扁平なポリエチレンからなり、下端(肌に接する側)には、音センサ22が支持されている。
音センサ22は、一方の面(図4では下面)が人体側に向いた金属板222と、金属板222の他方の面に形成された圧電素子221とからなる。音センサ12に接続された信号線2231,2232は、信号ケーブル31としてケーブル口Jを介し生体音測定装置50の本体装置5に接続されている。
【0033】
操作部212は操作時に医師等が指で持つ部分であり、本実施形態では扁平カップ状のポリエチレンにより形成されている。操作部212の外径は、センサ支持部211の外径よりも大きく、操作部212が、センサ支持部211を覆うように構成される。
雑音吸収部材213は、図4でも、発泡倍率5の独立気泡のポリウレタンフォームからなる。図4では、センサ支持部211の内部空間を大気圧に保つため、センサ支持部211に孔hiが、操作部212に孔hoが、雑音吸収部材213に孔hmがそれぞれ開けられている。
【0034】
本実施形態では、音センサ22を人の肌に直接接触させて、心音等を直接採取する。音センサ22は人の肌に直接接触していない場合(センサと人の肌との間に空気がある場合)には、取得できる周波数に大きな制限が生じる。図4の例では、周波数12Hz程度から数百Hzの音が採取される。しかも周囲の雑音や声および医師等の指からの振動や信号ケーブル31を伝達する振動は雑音吸収部材113により減衰ないし消去される。
【0035】
図5は第2実施形態の第1の設計変更例を示す説明図であり、図5の生体音取得端末2は、雑音吸収部材213の構成を除き、図4の生体音取得端末2と同じである。本設計変更例では、雑音吸収部材213は、センサ支持部211の上面の一部と操作部212の下面の一部との間に形成されている。
【0036】
本設計変更例でも、音センサ22を人の肌に直接接触させて、心音等を直接採取する。本設計変更例でも、周波数12Hz程度から数百Hzの音が採取され、しかも周囲の雑音や声および医師等の指からの振動や信号ケーブル31を伝達する振動は雑音吸収部材213により減衰ないし消去される。
【0037】
図6は、第2実施形態の第2の設計変更例を示す説明図である。図6において、生体音取得端末2は、センサ支持部211と、操作部212と、雑音吸収部材213とを備えており、概ね、図4の生体音取得端末2と構成は同じである。
ただし、センサ支持部211の外径は、操作部212の外径よりも大きく、センサ支持部211が操作部212を下から覆うように構成される。
【0038】
本設計変更例でも、音センサ22を人の肌に直接接触させて、心音等を直接採取する。本設計変更例でも、周波数12Hz程度から数百Hzの音が採取され、しかも周囲の雑音や声および医師等の指からの振動や信号ケーブル31を伝達する振動は雑音吸収部材213により減衰ないし消去される。
【0039】
図7は第2実施形態の第3の設計変更例を示す説明図であり、図7の生体音取得端末2は、雑音吸収部材213の構成を除き、図6の生体音取得端末2と同じである。本設計変更例では、雑音吸収部材213は、センサ支持部211の上面の一部と操作部212の下面の一部との間に形成されている。
【0040】
本設計変更例でも、音センサ22を人の肌に直接接触させて、心音等を直接採取する。本設計変更例でも、周波数12Hz程度から数百Hzの音が採取され、しかも周囲の雑音や声および医師等の指からの振動や信号ケーブル31を伝達する振動は雑音吸収部材213により減衰ないし消去される。
【0041】
図8は本発明の電子聴診器の実施形態を示す説明図であり、(A)は概略説明図、(B)は回路説明図である。図8(A),(B)に示すように、電子聴診器40は、生体音取得端末2と、この生体音取得端末2から音信号を受け取る聴診回路4を備えている。
【0042】
図8(B)に示すように、聴診回路4は、CPU41と、記憶装置42と、音出力インタフェース43と、ディジタルフィルタ44と、AD変換器45と、増幅器46とを備えている。
生体音取得端末2からのアナログの音信号は増幅器46により増幅され、AD変換器45によりディジタル信号に変換される。このディジタル信号は、ディジタルフィルタ44によりフィルタリングされ、所望周波数の聴取可能な音に変換され、音出力インタフェース43を介して聴診部SSに送出される。
【0043】
本発明の電子聴診器では、従来聴取できなかった周波数帯域の心音等を抽出して聴取できるようになった。
【0044】
図9は本発明の生体音測定装置の第1実施形態を示す説明図である。図9において、生体音測定装置50は、生体音取得端末1と本体装置5からなる。
本体装置5は、CPU51と、記憶装置52と、表示出力装置(ディスプレイ)53と、印刷装置54と、ディジタルフィルタ55と、AD変換器56と、増幅器57とを備えている。
【0045】
生体音取得端末1からの生体音のアナログ検出信号は、信号ケーブル31を介して、増幅器57に送られる。このアナログ検出信号は、AD変換器56によりディジタル信号に変換される。このディジタル信号をディジタルフィルタ55に通過させることで、所望の信号が取り出される。
【0046】
記憶装置52には検出信号解析プログラムが格納されており、CPU51はこのプログラムを、ディジタルフィルタ55を通過した信号に適用することで信号解析を行う。なお、CPU51は、検出信号解析プログラムを実行することで、本発明における検出信号解析部としての機能を達成する。
検出信号解析の結果は、表示出力装置53や印刷装置54から出力することができる。
【0047】
図10は本発明の生体音測定装置の第2実施形態を示す説明図である。図10において、生体音測定装置50は、生体音取得端末1と本体装置5からなる。
本実施形態では、生体音取得端末1は、音センサ12と増幅器15を含む。図示はしていないが、生体音取得端末1には、本体装置5から信号ケーブル31を介して電力が供給され、増幅器15を駆動する。
本体装置5は、CPU51と、記憶装置52と、表示出力装置(ディスプレイ)53と、印刷装置54と、ディジタルフィルタ55と、AD変換器56とを備えている。
【0048】
図11は本発明の生体音測定装置の第3実施形態を示す説明図である。図11において、生体音測定装置50は、生体音取得端末1と本体装置5からなる。
本実施形態では、生体音取得端末1は、音センサ12と増幅器15とAD変換器16とUSBI/O17(USB入出力回路)を含む。図示はしていないが、生体音取得端末1には、本体装置5から信号ケーブル31を介して電力が供給され、増幅器15とAD変換器16とUSBI/O17を駆動する。
本体装置5は、CPU51と、記憶装置52と、表示出力装置(ディスプレイ)53と、印刷装置54と、ディジタルフィルタ55と、USBターミナル58とを備えている。
【0049】
図12は本発明の生体音測定装置の第4実施形態を示す説明図である。図12において、生体音測定装置50は、生体音取得端末1と、聴診回路4と、本体装置5からなる。
【0050】
図12に示すように、聴診回路4は、CPU41と、記憶装置42と、音出力インタフェース43と、ディジタルフィルタ44と、AD変換器45と、増幅器46とを備えている。
また、本体装置5は、CPU51と、記憶装置52と、表示出力装置(ディスプレイ)53と、印刷装置54と、ディジタルフィルタ55と、マイクターミナル59とを備えている。図示はしていないが、本実施形態では、聴診回路4には、本体装置5から信号ケーブル31を介して電力が供給されている。
【0051】
生体音取得端末2からのアナログの音信号は増幅器46により増幅され、AD変換器45によりディジタル信号に変換される。このディジタル信号は、ディジタルフィルタ44によりフィルタリングされ、所望周波数の聴取可能な音に変換され、音出力インタフェース43を介して聴診部SSに送出される。
本設計変更例では、上記の所望周波数の聴取可能な音は、音出力インタフェース43を介してマイクターミナル59に送出される。
【0052】
図13は、図9の生体音測定装置50における、生体音取得端末1(音センサ12)の出力波形、ディジタルフィルタ55による処理波形および表示出力装置53の出力波形を示している。
音センサ12の出力波形は端子間の電圧波形であり、ディジタルフィルタ55による処理波形は音センサ12からの信号のうち20〜100Hz成分をバンドパス処理した波形であり、表示出力装置53の出力波形は同時記録の心電図波形である。
【0053】
なお、上記の生体音測定装置50の各実施形態においては、聴診する際に生体音測定装置50を起動するようにしてもよいし、常に生体音測定装置50を起動状態にしておいてもよい。また、本実施形態では、図示はしないが生体音取得端末1に生体音測定装置50を起動するためのスイッチ(タッチセンサ式スイッチであってもよい)を搭載しておくことができる。
また、上記の生体音測定装置50は、汎用のコンピュータを使用することができる。この場合には、前記スイッチが、コンピュータ上のアプリケーションソフトウェア(解析プログラム等)をアクティブにするようにできる。
【0054】
以下に本発明の効果を実証するため実験例を示す。
図14(A)は本発明の生体音取得端末モデル(実験装置)を示す図である。図14(A)において、本発明の生体音取得端末モデル6は、人体に対応させたプラスチック板61と、プラスチック板61の上面に取り付けられた音センサ62と、プラスチック板61の下面に取り付けられた振動体63と、これらを支持するゴムスペーサ64とにより構成されている。音センサ62は、径20mmの金属基板621と、PZTセンサ622とからなる。振動体63は径35mmの金属基板631とPZTセンサ632とからなる。
【0055】
一方、図14(B)は本発明の生体音取得端末モデル(実験装置)を示す図である。図14(B)において、本発明の生体音取得端末モデル7は、人体に対応させたプラスチック板71と、プラスチック板71の上面に内径14mm、高さ13mmのプラスチック円筒75を介して取り付けられた音センサ72と、プラスチック板71の下面に取り付けられた振動体73と、これらを支持するゴムスペーサ74とにより構成されている。音センサ72は、図14(A)の音センサ62と同じ構造であり、径20mmの金属基板721と、PZTセンサ722とからなる。振動体73は、図14(A)の振動体63と同じ構造であり、径35mmの金属基板731とPZTセンサ732とからなる。
【0056】
図15(A)は、図14(A)の生体音取得端末モデル6と図14(B)の生体音取得端末モデル7にそれぞれ50Hzの正弦波(実効値10V)を加えたときの各PZTセンサの応答Voutを示す波形図である。また、図15(B)は図14(A)の生体音取得端末モデル6と図14(B)の生体音取得端末モデル7にそれぞれ8Hzの正弦波(実効値10V)を加えたときの各PZTセンサの応答Voutを示す波形図である。なお、図14(A),図14(B)では、押し圧Pを43gとした。
【0057】
図14(A)の生体音取得端末モデル6、すなわち本発明のモデルでは、プラスチック板61の上に直接音センサ62が接触しているので、50Hzの音(振動)を検出することができることはもちろん(図15(A)参照)、8Hzの音(振動)も良好に検出することができる(図15(B)参照)。
【0058】
これに対して、図14(B)の生体音取得端末モデル7、すなわち従来のモデルでは、プラスチック板71の上にプラスチック円筒75を介して取り付けられているので、50Hzの音(振動)の検出は微弱ながら検出できるものの、8Hzの音(振動)については全く検出ができない。
以上の実験例からわかるように、空気を介して心音等を検出する従来の聴診器91(図16参照)では、超低周波音を含む低い周波数の音(振動)を検出することは全く困難であるか相当に困難であるが、音センサが直接肌に接触する本発明の生体音取得端末1,2(図1から図8参照)によれば、超低周波音を含む低い周波数の音(振動)を良好に検出することができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、現存の機器たとえば携帯電話やコンピュータ用マウスなどに小型化して組み込むなどの種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から除外するものではない。
【符号の説明】
【0060】
1,2 生体音取得端末
4 聴診回路
5 本体装置
6,7 生体音取得端末モデル
12,22 音センサ
15,46,57 増幅器
16 AD変換器
17 USBI/O
31 信号ケーブル
40 電子聴診器
41,51 CPU
42,52 記憶装置
43 音出力インタフェース
44,55 ディジタルフィルタ
45,56 AD変換器
50 生体音測定装置
53 表示出力装置
54 印刷装置
58 USBターミナル
59 マイクターミナル
61,71 プラスチック板
62,72 音センサ
63,73 振動体
64,74 ゴムスペーサ
75 プラスチック円筒
111,211 センサ支持部
112,212 操作部
113,213 雑音吸収部材
114 緩衝部材
121,221 圧電素子
122,222 金属板
621,631,721,731 金属基板
622,722,632,732 PZTセンサ
1231,2231 信号線
J ケーブル口
S 空間
SS 聴診部
hi,hm,ho 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音センサを支持するセンサ支持部と、指で持つための操作部とを備えた生体音取得端末において、
前記音センサが、人体からの音を、空気層を介さず肌から直接取得する圧電素子からなり、
前記センサ支持部と前記操作部とが雑音吸収部材を介して結合していることを特徴とする生体音取得端末。
【請求項2】
前記圧電素子は、一方の面が人体の肌に接する金属板と、当該金属板の他方の面に形成された圧電セラミックからなることを特徴とする請求項1に記載の生体音取得端末。
【請求項3】
前記雑音吸収部材が合成樹脂発泡体またはジェルであることを特徴とする請求項1または2に記載の生体音取得端末。
【請求項4】
前記センサ支持部および前記操作部がともに円筒であり、
径が大きい前記操作部の内側に、径が小さい前記センサ支持部が前記雑音吸収部材を介して収容され、または、
径が大きい前記センサ支持部の内側に、径が小さい前記操作部が前記雑音吸収部材を介して収容されている請求項1に記載の生体音取得端末。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の生体音取得端末と、
前記生体音取得端末から検出信号を受け取る聴診回路と、
を備えた電子聴診器において、
前記聴診回路は、前記生体音取得端末から音信号を受け取り、当該音信号をフィルタリングして音出力装置に送ることを特徴とする電子聴診器。
【請求項6】
請求項1から4の何れかに記載の生体音取得端末と、
前記生体音取得端末から検出信号を受け取る本体装置と、
を備えた生体音測定装置において、
前記本体装置は、受信した検出信号の解析部、解析結果の記憶部および解析結果の出力部を備えたことを特徴とする生体音測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−90909(P2012−90909A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242862(P2010−242862)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)