生体高分子分析支援装置
【課題】固体撮像デバイスで得られた画像のうち、複数のスポットに対応する部分の明暗の差を肉眼で判別しやすいようにする。
【解決手段】コントローラ84は、光電変換期間を初期値に設定した状態で固体撮像デバイス10の駆動回路70に駆動動作を行わせることによって駆動回路70から出力された予備検出値を入力し、入力した予備検出値のうち最大値に対応する設定期間をデータテーブルから検索し、検索した設定期間に光電変換期間を設定した状態で駆動回路70に再び駆動動作を行わせることによって駆動回路70から出力された検出値を入力する。
【解決手段】コントローラ84は、光電変換期間を初期値に設定した状態で固体撮像デバイス10の駆動回路70に駆動動作を行わせることによって駆動回路70から出力された予備検出値を入力し、入力した予備検出値のうち最大値に対応する設定期間をデータテーブルから検索し、検索した設定期間に光電変換期間を設定した状態で駆動回路70に再び駆動動作を行わせることによって駆動回路70から出力された検出値を入力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像デバイスを用いた生体高分子分析支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種の遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することである。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されている。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである(例えば特許文献1参照)。ここで、既知の塩基配列のcDNAとしては、検体において既知のmRNAと同一、またはその一部と同一の塩基配列のcDNAが用いられる。DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0004】
まず、複数種類の配列既知のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いて蛍光物質で標識したcDNA(以下、サンプルDNAという)を合成する。次に、サンプルDNAを蛍光物質で標識化してからDNAマイクロアレイ上に添加すると、サンプルDNAが相補的なプローブDNAとハイブリダイズすることによりDNAマイクロアレイ上に固定される。サンプルDNAを標識する蛍光物質は励起されるとサンプルDNAが結合したプローブDNAの位置から蛍光を発することになる。
【0005】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、励起光の照射点をDNAマイクロアレイに対して二次元的に移動し、それと共に集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAマイクロアレイを二次元走査する。励起光により励起された蛍光物質から発した蛍光を集光レンズで集光させ、蛍光強度をフォトマルチプライヤーで計測することで、DNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測し、これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、プローブDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したサンプルDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって、配列既知のmRNAのうち、どれが検体で発現しているかを同定することができる。
【特許文献1】特開2002−286643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発明者等は、固体撮像デバイスの受光面にプローブDNAをスポットした生体高分子分析チップを開発している。このような生体高分子分析チップでは、固体撮像デバイスによって取得した画像のうち明るい部分が、サンプルDNAの付着したスポットに相当する。そのため、その明るい部分を特定することで、サンプルDNAの付着したスポットを特定することができ、サンプルDNAの配列を特定することができる。かかる生体高分子分析チップではスポットが固体撮像デバイスの受光面に点在しているから、レンズ等を必要とせず、装置が小型になるという利点がある。
【0007】
ところが、固体撮像デバイスで得られた画像のうち、或るスポットに対応する部分と他のスポットに対応する部分の明暗の差を肉眼で判別することが困難な場合がある。特に、一塩基多型(SNP)の判定を行う場合等、ミスハイブリダイゼーションが多く起こりうる状況下では、或るスポットに対応する部分と他のスポットに対応する部分の明暗の差を肉眼で判別することが困難である。
そこで、本発明は、このような問題点を解決しようとしてなされたものであり、固体撮像デバイスで得られた画像のうち、複数のスポットに対応する部分の明暗の差を肉眼で判別しやすいようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明によれば、
受光面と、前記受光面の下において配列された複数の光電変換素子とを有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記受光面上に点在した複数種のスポットと、
前記固体撮像デバイスを駆動することによって、前記光電変換素子で光電変換が行われる光電変換期間において前記光電変換素子の受光量に応じた検出値を出力するとともに、前記光電変換期間を調整可能な駆動回路と、
予備検出値と設定期間との対応関係を示したデータテーブルを記憶した記憶装置と、
前記光電変換期間を初期値に設定した状態で前記駆動回路に駆動動作を行わせることによって前記駆動回路から出力された予備検出値を入力し、入力した予備検出値のうち最大値に対応する設定期間を前記データテーブルから検索し、検索した設定期間に前記光電変換期間を設定した状態で前記駆動回路に再び駆動動作を行わせることによって前記駆動回路から出力された検出値を入力するコントローラと、を備えることを特徴とする生体高分子分析支援装置が提供される。
また、前記生体高分子分析支援装置において、前記複数種のスポットに固定される前記既知の生体高分子は、それぞれ一塩基多型のプローブDNAであることを特徴とする。
また、前記生体高分子分析支援装置が、前記固体撮像デバイスの温度を検出して電気信号に変換する温度センサと、前記温度に基づき冷却装置を制御する温度制御回路と、を備えることを特徴とする。
また、前記生体高分子分析支援装置が、前記検出値に該当した階調表示が可能な表示装置を備えることを特徴とする。
また、前記生体高分子分析支援装置が、前記検出値に該当した階調印刷が可能な印刷装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固体撮像デバイスが初期値の光電変換期間で予備に駆動され、それにより得られた予備検出値のうち最大値から最適な設定期間が検索され、光電変換期間がその設定期間に変更され、その変更後の光電変換期間で固体撮像デバイスが再び駆動されるから、それによって得られた画像のうち複数のスポットに対応する部分の明暗の差が判別しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
〔1〕生体高分子分析支援装置の概要
図1は、本発明の実施形態における生体高分子分析支援装置80の主要部を示した斜視図である。
図1に示すように、この生体高分子分析支援装置80においては、生体高分子分析チップ1、冷却装置2及び温度センサ3が伝熱台4の上に搭載されている。伝熱台4の上方に励起光照射装置81が配設されている。
【0012】
この生体高分子分析チップ1は、固体撮像デバイス10、スポット60,60、駆動回路70及び記憶装置82を有する。
【0013】
固体撮像デバイス10はその受光面を励起光照射装置81に向けた状態で伝熱台4の上に設置される。また、固体撮像デバイス10は、伝熱台4から取り外し可能とされている。
スポット60,60は、固体撮像デバイス10の有効画素領域11の受光面に点着されている。
駆動回路70及び記憶装置82は、有効画素領域11の周囲の領域12に搭載されている。駆動回路70及び記憶装置82には、フレキシブル配線シート83が接続されている。
【0014】
〔2〕固体撮像デバイス
図2〜図4を用いて固体撮像デバイス10について説明する。図2は、図1における1つのスポット60を拡大した平面図である。図3は、1つのダブルゲートトランジスタ20を示す平面図である。図4は、図3に示されたIV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【0015】
図2に示すように、固体撮像デバイス10には、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が縦横に配列されている。また、固体撮像デバイス10には、複数のボトムゲートライン41、ソースライン42、ドレインライン43及びトップゲートライン44が設けられている。
【0016】
図4に示すように、固体撮像デバイス10は、透明基板13と、ボトムゲート絶縁膜22と、トップゲート絶縁膜29と、保護絶縁膜32と、励起光遮蔽膜33と、スポット固定層34とを積層してなる。
【0017】
透明基板13は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、ガラス基板(例えば、石英ガラス製の基板)、プラスチック基板(例えば、ポリカーボネート又はPMMA製の基板)その他の絶縁性透明基板である。
【0018】
ボトムゲート絶縁膜22、トップゲート絶縁膜29及び保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有する。ボトムゲート絶縁膜22、トップゲート絶縁膜29及び保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜である。
励起光遮蔽膜33は、励起光照射装置81から放射される励起光(例えば、紫外線波長域の光)を遮蔽するとともに蛍光(例えば、可視光波長域の光)を透過する性質を有する。
スポット固定層34は、スポット60となるプローブとシランカップリング剤等によって共有結合することで、スポット60を固定する。
【0019】
この固体撮像デバイス10においては、ダブルゲートトランジスタ20が光電変換素子として利用され、ダブルゲートトランジスタ20が画素である。複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板13上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列されている。これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が保護絶縁膜32によってまとめて被覆されている。なお、図3では8行×8列の64個のダブルゲートトランジスタ20,20,…が示されているが、ダブルゲートトランジスタ20の数は複数であれば、64個に限定するものではない。
【0020】
図3、図4に示すように、ダブルゲートトランジスタ20は、ボトムゲート電極21、半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25、不純物半導体膜26、ソース電極27、ドレイン電極28及びトップゲート電極31を有する。
【0021】
ボトムゲート電極21は透明基板13とボトムゲート絶縁膜22との間に形成されている。半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25、不純物半導体膜26、ソース電極27及びドレイン電極28はボトムゲート絶縁膜22とトップゲート絶縁膜29との間に形成されている。トップゲート電極31はトップゲート絶縁膜29と保護絶縁膜32との間に形成されている。
【0022】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板13上に形成されている。また、透明基板13とボトムゲート絶縁膜22との間には、複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成され、これらボトムゲートライン41,41,…が互いに平行となって行方向(横方向)に延在している。行方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0023】
半導体膜23は、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んで、ボトムゲート電極21に相対している。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されている。半導体膜23が受光部であり、半導体膜23に入射した光量に応じた量の電子−正孔対が半導体膜23に形成される。半導体膜23は、アモルファスシリコンからなる。
【0024】
チャネル保護膜24は、半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされたものである。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生する。
【0025】
不純物半導体膜25は、半導体膜23の一部に重なるように形成されている。不純物半導体膜25の一部は、チャネル保護膜24に重なっている。不純物半導体膜26は、半導体膜23の別の部分に重なるように形成されている。不純物半導体膜26の一部は、チャネル保護膜24に重なっている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物(例えば、ホスフィン)を含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0026】
ソース電極27は、不純物半導体膜25に重なっている。ドレイン電極28は、不純物半導体膜26に重なっている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。ボトムゲート絶縁膜22とトップゲート絶縁膜29との間には、複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…が形成され、これらソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…が列方向(縦方向)に延在している。列方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体となって形成されており、列方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体なって形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0027】
トップゲート電極31は、半導体膜23との間にチャネル保護膜24及びトップゲート絶縁膜29を挟んで、半導体膜23に相対している。トップゲート電極31は、ダブルゲートトランジスタ20ごとにトップゲート絶縁膜29上に形成されている。また、トップゲート絶縁膜29と保護絶縁膜32との間には、複数本のトップゲートライン44,44,…が形成され、これらトップゲートライン44,44,…が互いに平行となって行方向に延在している。行方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31が共通のトップゲートライン44と一体となって形成されている。トップゲート電極31及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0028】
以上のように構成された固体撮像デバイス10はスポット固定層34の表面を受光面としており、固体撮像デバイス10が駆動されることによってダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量が電気信号に変換される。
【0029】
図5、図6は、ダブルゲートトランジスタ20の感光特性を示したグラフである。
図5においては、横軸は、ダブルゲートトランジスタ20への入射光度(単位:mcd)を表し、縦軸は、ダブルゲートトランジスタ20の光電変換による検出値(単位:任意単位)を表す。
図6においては、横軸は、ダブルゲートトランジスタ20への入射光度(単位:mcd)を表し、縦軸は、その入射光度によるダブルゲートトランジスタ20の検出値とその光度の2分の1の光度によるダブルゲートトランジスタ20の検出値との差を表す。
光電変換期間(ダブルゲートトランジスタ20に光を照射して、ダブルゲートトランジスタ20にキャリアが蓄積されて、ダブルゲートトランジスタ20で光電変換が行われている時間をいう。)は、1200 msec、2400 msec、4800 msecとしている。
【0030】
図6から明らかなように、光度が0.4〜0.7 mcdの場合には、検出値の差は光電変換期間を4800 msとしたときに最も大きく、光度が0.8〜1.6 mcdの場合には、検出値の差は光電変換期間を2400 msとしたときに最も大きく、光度が1.7〜2.5 mcdの場合には、検出値の差は光電変換期間を1200 msとしたときに最も大きい。
【0031】
〔3〕スポット
図1、図2に示すように、固体撮像デバイス10の受光面(スポット固定層34の表面)にはスポット60,60が形成されている。スポット60は、既知の塩基配列のcDNA(プローブDNA)の群集であったり、既知の抗体の群集であったりする。スポット60は、プローブとなるcDNA(プローブDNA)、抗体その他生体高分子の溶液を固体撮像デバイス10の受光面に滴下し、乾燥して形成される。以下ではプローブとして既知である2種類の一塩基多型(SNP)のcDNAを用いた場合について説明する。
【0032】
1つのスポット60では、同じ塩基配列の一本鎖のプローブDNAが多数集まってその群集が固定化されている。スポット60ごとにプローブDNAの塩基配列が異なっている。プローブDNAとしては、既知のmRNAの塩基配列が用いられたり、その一部と同一の又は相補的な塩基配列のDNAが用いられたりする。具体的には、例えば、蛍光標識DNAで用いるのと同じ細胞検体から作成したcDNAライブラリを用いることができる。ここでは、一塩基多型の判定を行うため、一塩基異なるプローブDNA(A)とプローブDNA(B)をそれぞれ別のスポット60に固定化する。
【0033】
図2に示すように、1つのスポット60は4つのダブルゲートトランジスタ20上に重なるように形成されている。なお、スポット60の数は2つに限らず、3以上であってもよい。また、1つのスポット60に重なるダブルゲートトランジスタ20の数も4つに限らず、1つのスポット60につき一又は複数のダブルゲートトランジスタ20が重なっていればよい。
【0034】
〔4〕駆動回路
図7は、固体撮像デバイス10及びその周辺回路を示した回路図である。
図1に示された駆動回路70は、図7に示すようにトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を有する。
【0035】
固体撮像デバイス10のトップゲートライン44,44,…がトップゲートドライバ71の端子に接続され、ボトムゲートライン41,41,…がボトムゲートドライバ72の端子に接続され、ドレインライン43,43,…がドレインドライバ73の端子に接続されている。また、固体撮像デバイス10のソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン42,42,…が接地されている。トップゲートドライバ71は、トップゲートライン44,44,…を列方向に走査する第一の走査ドライバである。ボトムゲートドライバ72は、ボトムゲートライン41,41,…を列方向に走査する第二の走査ドライバである。
【0036】
図8は、固体撮像デバイス10を駆動するための信号の推移を示したタイミングチャートである。
トップゲートドライバ71は、トップゲートライン44,44,…の走査によってダブルゲートトランジスタ20,20,…を行ごとに順次選択し、選択した同一行のダブルゲートトランジスタ20,20…をリセットするものである。具体的には、図8に示すように、トップゲートドライバ71はトップゲートライン44,44,…にリセットパルスを順次出力するようになっている。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルである。一方、トップゲートドライバ71は、リセットパルスを出力しない時にローレベルの−20〔V〕の電位をそれぞれのトップゲートライン44に印加するようになっている。トップゲートドライバ71としては、シフトレジスタを用いることができる。
【0037】
ボトムゲートドライバ72は、ボトムゲートライン41,41,…の走査によってダブルゲートトランジスタ20,20,…を行ごとに順次選択し、選択した同一行のダブルゲートトランジスタ20,20…の光電による検出値の読み出しをするものである。具体的には、図8に示すように、ボトムゲートドライバ72は、ボトムゲートライン41,41,…にリードパルスを順次出力するようになっている。リードパルスのレベルは+10〔V〕のオンレベル(ハイレベル)であり、リードパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のオフレベル(ローレベル)である。ボトムゲートドライバ72としては、シフトレジスタを用いることができる。
【0038】
トップゲートドライバ71の水平走査周期(任意の行にリセットパルスを出力してから次の行にリセットパルスを出力するまでの期間)と、ボトムゲートドライバ72の水平走査周期(任意の行にリードパルスを出力してから次の行にリードパルスを出力するまでの期間)とが等しく、ボトムゲートドライバ72による走査の位相はトップゲートドライバ71による走査の位相に対して遅れている。具体的には、トップゲートドライバ71が何れかの行のトップゲートライン44にリセットパルスを出力した後に光電変換期間を経てボトムゲートドライバ72が同じ行のボトムゲートライン41にリードパルスを出力するように、トップゲートドライバ71及びボトムゲートドライバ72が出力信号をシフトする。つまり、各行では、リードパルスが出力されるタイミングは、リセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。また、何れかの行のトップゲートライン44へのリセットパルスの入力が開始してから、同じ行のボトムゲートライン41へのリードパルスの入力が終了するまでの期間は、その行の選択期間である。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、リセットパルスが出力されていない時のレベルは−20〔V〕のローレベルである。
【0039】
ここで、トップゲートドライバ71は、水平走査周期を調整可能である。また、ボトムゲートドライバ72も、水平走査周期を調整可能である。これにより、光電変換期間が調整される。具体的には、光電変換期間は、1200 msec、2400 msec、4800 msecの何れかに設定される。なお、光電変換期間は、1200 msec、2400 msec、4800 msecの三段階に設定可能であるが、それに限らず、複数段階に設定可能であれば何段階であってもよい。
【0040】
ドレインドライバ73は、トップゲートドライバ71によって読み出されたダブルゲートトランジスタ20,20…の検出値を読み込み、読み込んだダブルゲートトランジスタ20,20…の検出値を順次出力するものである。具体的には、図8に示すように、ドレインドライバ73は、それぞれの行の選択期間において、リセットパルスが出力されてからリードパルスが出力されるまでの間に、全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力するようになっている。プリチャージパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、プリチャージパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。ドレインドライバ73は、プリチャージパルスの出力後にドレインライン43,43,…の電圧(検出値)を列順次に出力するようになっている。
【0041】
駆動回路70による固体撮像デバイス10の撮像動作について説明する。
トップゲートドライバ71が1行目のトップゲートライン44から最終行目のトップゲートライン44へと順次リセットパルスを出力し、ボトムゲートドライバ72がボトムゲートライン41,41,41,…に順次リードパルスを出力する。その際、ドレインドライバ73が各行でリセットパルスが出力されているリセット期間と各行でリードパルスが出力されている期間との間に、プリチャージパルスを全てのドレインライン43,43,…に出力する。
【0042】
i行目の各ダブルゲートトランジスタ20の動作について詳細に説明する。トップゲートドライバ71がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力すると、i行目のトップゲートライン44がハイレベルになる。i行目のトップゲートライン44がハイレベルになっている間(この期間をリセット期間という。)、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20では、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート電極31の電圧により反発して吐出される。
【0043】
次に、トップゲートドライバ71がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力することを終了して、半導体膜23に蛍光が入射することによって半導体膜23内に生成された電子−正孔対のうちの正孔を電気的に捕捉するためのするため負電位(−20〔V〕)をトップゲートライン44に出力する。つまり、i行目のトップゲートライン44のリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが出力されるまでの光電変換期間において、光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート電極31の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
【0044】
次に、光電変換期間中に、ドレインドライバ73が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力する。プリチャージパルスが出力されている間(プリチャージ期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20においては、トップゲート電極31に印加されている電位が−20〔V〕である。そうすると、この負電界によって半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔による電界は、必然的に負電界を完全に相殺して半導体膜23のチャネル領域にnチャネルを形成する程度の正電界には成り得ない。そうすると、ボトムゲート電極21に印加されている電位が±0〔V〕であるため、ドレイン電極28とソース電極27との間にプリチャージパルスの電位差が生じても半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流は流れない。プリチャージ期間において、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスによってi行目の各ダブルゲートトランジスタ20のドレイン電極28に電荷がチャージされる。
【0045】
次に、ドレインドライバ73がプリチャージパルスの出力を終了するとともに、ボトムゲートドライバ72がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力する。ボトムゲートドライバ72がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力している間(この期間を、リード期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20のボトムゲート電極21に+10〔V〕の電位が印加されているため、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20がオン状態になる。
【0046】
リード期間においては、光電変換期間において蓄積されたキャリアがトップゲート電極31の負電界を緩和するように働く。そのため、入射される光量が十分であってキャリアの量が十分であれば、ボトムゲート電極21の正電界とあわせて半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン電極28からソース電極27に電流が流れるようになり、ドレイン電極28の電荷が減少する。従って、リード期間では、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0047】
光電変換期間において半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、リード期間におけるドレイン電極28の電荷減少レートが大きくなるとともに、リード期間においてドレイン電極28からソース電極27に流れる電流のレベルも大きくなる。従って、リード期間におけるドレインライン43,43,…の電圧の減少傾向は、光電変換期間で半導体膜23に入射した光量に深く関連する。
【0048】
そして、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、リード期間が開始してから所定の時間経過後のドレインライン43,43,…の電圧(検出値)がドレインドライバ73によって検出される。その電圧が光量を示す。ドレインドライバ73は、ドレインライン43,43,…の電圧を列順次に出力する。
【0049】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各ダブルゲートトランジスタ20にも同等の処理手順を繰り返すことにより、固体撮像デバイス10の受光面における光量分布が得られる。
【0050】
〔5〕記憶装置
図1に示された記憶装置82は、半導体記憶装置である。
記憶装置82には、予備検出値と設定期間との対応関係を表したデータテーブルが格納されている。図9は、記憶装置82に格納されたデータテーブルの一例である。
【0051】
図9は、予め試験により求めた図5及び図6のグラフに基づき得られたものである。光度が0.4〜0.7 mcdの場合には、1200 msecの光電変換期間のダブルゲートトランジスタ20の検出値が33〜54 A.U.であり(図5)、その場合の検出値の差は光電変換期間を4800 msecとしたときに最も大きい(図6)。そのため、図9のデータテーブルにおいては、予備検出値が33〜54 A.U.である場合、それに対応する設定期間が4800 msecとなっている。
また、光度が0.8〜1.6 mcdの場合には、1200 msの光電変換期間のダブルゲートトランジスタ20の検出値が61〜122 A.U.であり(図5)、その場合の検出値の差は光電変換期間を2400 msecとしたときに最も大きい(図6)。そのため、図9のデータテーブルにおいては、予備検出値が61〜122 A.U.である場合、それに対応する設定期間が2400 msecとなっている。
また、光度が1.7〜2.5 mcdの場合には、1200 msの光電変換期間でのダブルゲートトランジスタ20の検出値が129〜190 A.U.であり(図5)、その場合の検出値の差は光電変換期間を1200 msecとしたときに最も大きい(図6)。そのため、図9のデータテーブルにおいては、予備検出値が129〜190 A.U.である場合、それに対応する設定期間が1200 msecとなっている。
また、光度が0〜0.4 mcdの場合には、1200 msの光電変換期間でのダブルゲートトランジスタ20の検出値が28 A.U.で一定であるから、図9のデータテーブルにおいては、予備検出値が28 A.U.である場合、それに対応する設定期間は設定されていない(測定不可となっている)。
なお、図9に示されたデータテーブルの数値は一例であり、データテーブルの数値は適宜変更可能である。
【0052】
〔6〕伝熱台
図1に示された伝熱台4は、熱伝導性の高い材料からなり、具体的には銅、アルミ、鉄、ステンレス鋼その他の金属材料又は窒化アルミニウムその他のセラミック材料からなる。
【0053】
〔7〕冷却装置
図1に示された冷却装置2は、伝熱台4の熱を強制的に外部に放出することによって伝熱台4を冷却するものであり、具体的にはペルチェ素子、ヒートポンプその他の冷却装置である。
【0054】
〔8〕温度センサ
図1に示された温度センサ3は、固体撮像デバイス10の温度を検出して検出温度を電気信号に変換するものであり、具体的にはサーミスタ、熱電体、熱電対その他の温度センサである。ここで、温度センサ3が伝熱台4の上に搭載され、伝熱台4の温度が温度センサ3によって検出されるが、伝熱台4の熱伝導率が高いから、固体撮像デバイス10の温度が殆ど遅延無く温度センサ3によって検出される。なお、温度センサ3が固体撮像デバイス10に設けられていてもよい。
【0055】
〔9〕その他の構成要素
図10は生体高分子分析支援装置80の構成を示すブロック図である。
生体高分子分析支援装置80は、生体高分子分析チップ1、冷却装置2、温度センサ3、伝熱台4及び励起光照射装置81のほか、コントローラ84、出力装置85、メモリ86、A/D変換器87を備える。
【0056】
図1に示されたフレキシブル配線シート83によって記憶装置82、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73がコントローラ84に接続される。また、ドレインドライバ73の出力端子は、フレキシブル配線シート83によってA/D変換器87に接続される。
【0057】
コントローラ84は、励起光照射装置81の点灯・消灯を行う機能を有する。
コントローラ84は、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72の水平走査周期を設定することによって光電変換期間を設定する機能を有する。
コントローラ84は、励起光照射装置81を点灯した状態でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73に制御信号を出力することによって、設定した光電変換期間でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させる機能を有する。これにより、固体撮像デバイス10の撮像動作を行う。
【0058】
A/D変換器87は、ドレインドライバ73の出力(各ダブルゲートトランジスタ20の検出値)を量子化してコントローラ84に出力する。
【0059】
コントローラ84は、A/D変換器87の出力をメモリ86に記録する機能を有する。これにより、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布が二次元の画像データとしてメモリ86に記録される。
【0060】
ここで、コントローラ84は、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させることを2回行う。1回目については、コントローラ84は、光電変換期間を初期値(具体的には、1200 msec)に設定し、その初期値の光電変換期間でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させる。2回目については、コントローラ84は、光電変換期間を初期値から変更して、その変更後の光電変換期間でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させる。具体的には、コントローラ84は、1回目の撮像動作におけるA/D変換器87の出力(各ダブルゲートトランジスタ20の検出値を量子化したもの)のうち最大値を予備検出値として、その予備検出値に対応する設定期間を記憶装置82のデータテーブルから検索し、光電変換期間を初期値からその設定期間に変更する。
【0061】
また、コントローラ84は、メモリ86に記録された画像データに従った画像を出力装置85に出力させる機能を有する。これにより出力装置85によって画像が出力される。出力装置85は、例えばプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
【0062】
また、コントローラ84は、温度制御回路88に対して設定温度を設定する機能を有する。
温度制御回路88は冷却装置2を制御する。ここで、温度制御回路88は、温度センサ3による検出温度をフィードバックし、その検出温度に基づき冷却装置2を制御することによって、設定温度に保つような定温度制御を行う。例えば、下閾値<設定温度<上閾値とした場合、検出温度が下閾値未満であるときには、温度制御回路88が冷却装置2の冷却能力を上げ、検出温度が下閾値以上、上閾値以下であるときには、温度制御回路88が冷却装置2の冷却能力を維持し、検出温度が上閾値を超えるときには、温度制御回路88が冷却装置2の冷却能力を下げる。
【0063】
〔10〕分析手順
生体高分子分析支援装置80を用いて試料を分析する方法について説明するとともに、生体高分子分析支援装置80の使用方法及び動作方法について説明する。
【0064】
〔10−1〕蛍光標識DNAの作成
分析する試料としては、DNAを用いることができる。試料となるDNAとしては、任意の細胞検体内で発現しているmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いるRT−PCR反応により得られたcDNAを用いることができる。cDNAは蛍光体で標識する。蛍光体としては、例えばインビトロジェン株式会社製のAlexa Fluor 350(吸収波長346nm、蛍光波長442nm)等を用いることができる。
【0065】
cDNAを蛍光体で標識するには、例えば、蛍光体で標識されたオリゴdTプライマや、標識されたdNTPミックスを用いてRT−PCR反応を実施すればよい。以下では、この標識されたcDNAを蛍光標識DNAという。
【0066】
〔10−2〕ハイブリダイゼーション
まず、作業者が、蛍光標識DNAを含有した溶液(以下、蛍光標識DNA)を固体撮像デバイス10の受光面に塗布する。蛍光標識DNA溶液を各スポット60,60に順次又は同時に滴下してもよい。
【0067】
このとき、DNAが一本鎖となるように蛍光標識DNA溶液を加熱する。また、スポット60のDNAが一本鎖となるように固体撮像デバイス10の受光面も加熱する。
【0068】
次いで、固体撮像デバイス10を冷却する。すると、蛍光標識DNA溶液内の蛍光標識DNAのうち、スポット60のプローブDNAと相補的な蛍光標識DNAは、そのプローブDNAとハイブリダイズする。一方、プローブDNAと相補的ではない蛍光標識DNAは、このスポット60には結合しないか、結合したとしても僅かである。
【0069】
その後、洗浄用バッファー溶液で蛍光標識DNA溶液を固体撮像デバイス10の受光面から洗い流し、蛍光標識DNAのうちハイブリダイズしなかったものを固体撮像デバイス10の受光面から除去する。
【0070】
〔10−3〕サンプルの検出
上記処理を行った後、生体高分子分析チップ1を伝熱台4の上に設置し、フレキシブル配線シート83をコントローラ84に接続する。これにより、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72、ドレインドライバ73及び記憶装置82がコントローラ84に接続され、ドレインドライバ73がA/D変換器87に接続される。その後、コントローラ84を起動させる。
【0071】
図11は、コントローラ84の処理の流れを示したフローチャートである。
図11に示すように、コントローラ84は、起動後、温度制御回路88に対して設定温度(例えば、10℃)を設定する(ステップS1)。そうすると、温度制御回路88が、温度センサ3による検出温度をフィードバックしながら冷却装置2を制御する。これにより、伝熱台4及び固体撮像デバイス10が設定温度になって、その設定温度に維持される。固体撮像デバイス10が冷却装置2及び伝熱台4によって冷却されることで、固体撮像デバイス10の暗電流が軽減される。
【0072】
次に、コントローラ84は、光電変換期間を初期値(具体的には、1200 msec)に設定する(ステップS2)。続いて、コントローラ84が励起光照射装置81を点灯させる(ステップS3)。励起光照射装置81によってスポット60,60が照射される。そうすると、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出される。一方、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出されない。
【0073】
そして、コントローラ84は、励起光照射装置81を点灯した状態で、励起光照射装置81を点灯した状態でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73に制御信号を出力する(ステップS4)。そうすると、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73が初期値の光電変換期間で動作し、上述のように、固体撮像デバイス10がトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73によって駆動され、ダブルゲートトランジスタ20,20,…において光電変換が起こる。各ダブルゲートトランジスタ20の光電変換期間は、初期値となる。そして、ダブルゲートトランジスタ20,20,…における光量に従った電圧(ドレイン電極28の電圧:予備検出値)がドレインドライバ73から順次出力され、その出力がA/D変換器87によって量子化されて、コントローラ84に入力される。コントローラ84は、A/D変換器87の出力をメモリ86に記録することによって、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布が二次元の画像データ(各画素の予備検出値の集合体)としてメモリ86に記録される。
【0074】
コントローラ84は、メモリ86に記録された画像データの中から最大の検出値を求める(ステップS5)。そして、コントローラ84は、記憶装置82のデータテーブルを参照して、その最大の検出値に対応する設定期間をそのデータテーブルから検索する(ステップS6)。
そして、コントローラ84は、検索した設定期間が光電変換期間の初期値(1200 msec)に等しいか否かを判断する(ステップS7)。
【0075】
検索した設定期間が光電変換期間の初期値に等しい場合(ステップS7:Yes)、コントローラ84がメモリ86に記録された画像データに従った画像を出力装置85に出力させる(ステップS13)。一方、コントローラ84は、検索した設定期間が「測定不可」であるか否かを判断する(ステップS8)。そして、検索した設定期間が「測定不可」である場合(ステップS8:Yes)、コントローラ84が測定不可の旨を出力装置85に出力させる(ステップS9)。一方、検索した設定期間が「測定不可」でない場合(設定期間が1200 msec、2400 msec又は4800 msecである場合)、コントローラ84は光電変換期間を変更し、その検索した設定期間を新たな光電変換期間とする(ステップS10)。
【0076】
コントローラ84が励起光照射装置81を点灯させ(ステップS11)、励起光照射装置81によってスポット60,60が照射される。そうすると、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出される。一方、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出されない。
【0077】
そして、コントローラ84は、励起光照射装置81を点灯した状態で、励起光照射装置81を点灯した状態でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73に制御信号を出力する(ステップS12)。そうすると、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73が変更後の光電変換期間で動作し、上述のように、固体撮像デバイス10がトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73によって駆動され、ダブルゲートトランジスタ20,20,…において光電変換が起こる。各ダブルゲートトランジスタ20の光電変換期間は、設定期間となる。そして、ダブルゲートトランジスタ20,20,…における光量に従った電圧(ドレイン電極28の電圧:検出値)がドレインドライバ73から順次出力され、その出力がA/D変換器87によって量子化されて、コントローラ84に入力される。コントローラ84は、A/D変換器87の出力をメモリ86に記録することによって、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布が二次元の画像データ(各画素の検出値の集合体)としてメモリ86に記録される。そして、コントローラ84が、メモリ86に記録された画像データに従った画像を出力装置85に出力させる(ステップS13)
【0078】
出力装置85によって出力された画像から蛍光標識DNAの配列を特定することができる。つまり、画像において一方のスポット60の箇所が明るければ、蛍光標識DNAの配列はそのスポット60のDNAと相補的であることになり、他方のスポット60の箇所が明るければ、蛍光標識DNAの配列はそのスポットと相補的であることになる。
【0079】
本実施形態によれば、固体撮像デバイス10が初期値の光電変換期間で予備に駆動され(ステップS4)、それにより得られた予備検出値のうち最大値から最適な光電変換期間が求められ(ステップS6)、その最適な光電変換期間で固体撮像デバイス10が駆動されるから、出力装置85によって出力された画像を肉眼で見たときに、両スポット60に対応する部分の濃淡がはっきりとする。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなっても良い。
上記実施形態では、光電変換素子としてダブルゲートトランジスタ20,20,…を用いた固体撮像デバイス10を例にして説明したが、光電変換素子としてフォトダイオードを用いた固体撮像デバイスに本発明を適用しても良い。フォトダイオードを用いた固体撮像デバイスとしては、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサがある。CCDイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲には、フォトダイオードで光電変換された電気信号を転送するための垂直CCD、水平CCDが形成されている。CMOSイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲にはフォトダイオードで光電変換された電気信号を増幅するための画素回路が設けられている。固体撮像デバイス10がCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサである場合には、駆動回路70の回路構成はCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサに適したものに変更するのは勿論である。CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサの駆動回路は周知であるので、ここでは説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態における生体高分子分析支援装置の主要部を示した斜視図である。
【図2】生体高分子分析チップを概略して示した平面図である。
【図3】固体撮像デバイスの画素を示した平面図である。
【図4】IV−IV矢視断面図である。
【図5】固体撮像デバイスの感光特性を示したグラフである。
【図6】固体撮像デバイスの感光特性を示したグラフである。
【図7】固体撮像デバイス及びその周辺回路を示した図面である。
【図8】固体撮像デバイスの信号の推移を示したチャートである。
【図9】記憶装置に格納されたデータテーブルの一例を示した図である。
【図10】生体光高分子分析支援装置の構成を概略的に示したブロック図である。
【図11】コントローラによる処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
10 固体撮像デバイス
20 ダブルゲートトランジスタ
60 スポット
70 駆動回路
80 生体高分子分析支援装置
82 記憶装置
84 コントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像デバイスを用いた生体高分子分析支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種の遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することである。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されている。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである(例えば特許文献1参照)。ここで、既知の塩基配列のcDNAとしては、検体において既知のmRNAと同一、またはその一部と同一の塩基配列のcDNAが用いられる。DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0004】
まず、複数種類の配列既知のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いて蛍光物質で標識したcDNA(以下、サンプルDNAという)を合成する。次に、サンプルDNAを蛍光物質で標識化してからDNAマイクロアレイ上に添加すると、サンプルDNAが相補的なプローブDNAとハイブリダイズすることによりDNAマイクロアレイ上に固定される。サンプルDNAを標識する蛍光物質は励起されるとサンプルDNAが結合したプローブDNAの位置から蛍光を発することになる。
【0005】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、励起光の照射点をDNAマイクロアレイに対して二次元的に移動し、それと共に集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAマイクロアレイを二次元走査する。励起光により励起された蛍光物質から発した蛍光を集光レンズで集光させ、蛍光強度をフォトマルチプライヤーで計測することで、DNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測し、これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、プローブDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したサンプルDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって、配列既知のmRNAのうち、どれが検体で発現しているかを同定することができる。
【特許文献1】特開2002−286643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発明者等は、固体撮像デバイスの受光面にプローブDNAをスポットした生体高分子分析チップを開発している。このような生体高分子分析チップでは、固体撮像デバイスによって取得した画像のうち明るい部分が、サンプルDNAの付着したスポットに相当する。そのため、その明るい部分を特定することで、サンプルDNAの付着したスポットを特定することができ、サンプルDNAの配列を特定することができる。かかる生体高分子分析チップではスポットが固体撮像デバイスの受光面に点在しているから、レンズ等を必要とせず、装置が小型になるという利点がある。
【0007】
ところが、固体撮像デバイスで得られた画像のうち、或るスポットに対応する部分と他のスポットに対応する部分の明暗の差を肉眼で判別することが困難な場合がある。特に、一塩基多型(SNP)の判定を行う場合等、ミスハイブリダイゼーションが多く起こりうる状況下では、或るスポットに対応する部分と他のスポットに対応する部分の明暗の差を肉眼で判別することが困難である。
そこで、本発明は、このような問題点を解決しようとしてなされたものであり、固体撮像デバイスで得られた画像のうち、複数のスポットに対応する部分の明暗の差を肉眼で判別しやすいようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明によれば、
受光面と、前記受光面の下において配列された複数の光電変換素子とを有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記受光面上に点在した複数種のスポットと、
前記固体撮像デバイスを駆動することによって、前記光電変換素子で光電変換が行われる光電変換期間において前記光電変換素子の受光量に応じた検出値を出力するとともに、前記光電変換期間を調整可能な駆動回路と、
予備検出値と設定期間との対応関係を示したデータテーブルを記憶した記憶装置と、
前記光電変換期間を初期値に設定した状態で前記駆動回路に駆動動作を行わせることによって前記駆動回路から出力された予備検出値を入力し、入力した予備検出値のうち最大値に対応する設定期間を前記データテーブルから検索し、検索した設定期間に前記光電変換期間を設定した状態で前記駆動回路に再び駆動動作を行わせることによって前記駆動回路から出力された検出値を入力するコントローラと、を備えることを特徴とする生体高分子分析支援装置が提供される。
また、前記生体高分子分析支援装置において、前記複数種のスポットに固定される前記既知の生体高分子は、それぞれ一塩基多型のプローブDNAであることを特徴とする。
また、前記生体高分子分析支援装置が、前記固体撮像デバイスの温度を検出して電気信号に変換する温度センサと、前記温度に基づき冷却装置を制御する温度制御回路と、を備えることを特徴とする。
また、前記生体高分子分析支援装置が、前記検出値に該当した階調表示が可能な表示装置を備えることを特徴とする。
また、前記生体高分子分析支援装置が、前記検出値に該当した階調印刷が可能な印刷装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固体撮像デバイスが初期値の光電変換期間で予備に駆動され、それにより得られた予備検出値のうち最大値から最適な設定期間が検索され、光電変換期間がその設定期間に変更され、その変更後の光電変換期間で固体撮像デバイスが再び駆動されるから、それによって得られた画像のうち複数のスポットに対応する部分の明暗の差が判別しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
〔1〕生体高分子分析支援装置の概要
図1は、本発明の実施形態における生体高分子分析支援装置80の主要部を示した斜視図である。
図1に示すように、この生体高分子分析支援装置80においては、生体高分子分析チップ1、冷却装置2及び温度センサ3が伝熱台4の上に搭載されている。伝熱台4の上方に励起光照射装置81が配設されている。
【0012】
この生体高分子分析チップ1は、固体撮像デバイス10、スポット60,60、駆動回路70及び記憶装置82を有する。
【0013】
固体撮像デバイス10はその受光面を励起光照射装置81に向けた状態で伝熱台4の上に設置される。また、固体撮像デバイス10は、伝熱台4から取り外し可能とされている。
スポット60,60は、固体撮像デバイス10の有効画素領域11の受光面に点着されている。
駆動回路70及び記憶装置82は、有効画素領域11の周囲の領域12に搭載されている。駆動回路70及び記憶装置82には、フレキシブル配線シート83が接続されている。
【0014】
〔2〕固体撮像デバイス
図2〜図4を用いて固体撮像デバイス10について説明する。図2は、図1における1つのスポット60を拡大した平面図である。図3は、1つのダブルゲートトランジスタ20を示す平面図である。図4は、図3に示されたIV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【0015】
図2に示すように、固体撮像デバイス10には、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が縦横に配列されている。また、固体撮像デバイス10には、複数のボトムゲートライン41、ソースライン42、ドレインライン43及びトップゲートライン44が設けられている。
【0016】
図4に示すように、固体撮像デバイス10は、透明基板13と、ボトムゲート絶縁膜22と、トップゲート絶縁膜29と、保護絶縁膜32と、励起光遮蔽膜33と、スポット固定層34とを積層してなる。
【0017】
透明基板13は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、ガラス基板(例えば、石英ガラス製の基板)、プラスチック基板(例えば、ポリカーボネート又はPMMA製の基板)その他の絶縁性透明基板である。
【0018】
ボトムゲート絶縁膜22、トップゲート絶縁膜29及び保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有する。ボトムゲート絶縁膜22、トップゲート絶縁膜29及び保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜である。
励起光遮蔽膜33は、励起光照射装置81から放射される励起光(例えば、紫外線波長域の光)を遮蔽するとともに蛍光(例えば、可視光波長域の光)を透過する性質を有する。
スポット固定層34は、スポット60となるプローブとシランカップリング剤等によって共有結合することで、スポット60を固定する。
【0019】
この固体撮像デバイス10においては、ダブルゲートトランジスタ20が光電変換素子として利用され、ダブルゲートトランジスタ20が画素である。複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板13上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列されている。これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が保護絶縁膜32によってまとめて被覆されている。なお、図3では8行×8列の64個のダブルゲートトランジスタ20,20,…が示されているが、ダブルゲートトランジスタ20の数は複数であれば、64個に限定するものではない。
【0020】
図3、図4に示すように、ダブルゲートトランジスタ20は、ボトムゲート電極21、半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25、不純物半導体膜26、ソース電極27、ドレイン電極28及びトップゲート電極31を有する。
【0021】
ボトムゲート電極21は透明基板13とボトムゲート絶縁膜22との間に形成されている。半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25、不純物半導体膜26、ソース電極27及びドレイン電極28はボトムゲート絶縁膜22とトップゲート絶縁膜29との間に形成されている。トップゲート電極31はトップゲート絶縁膜29と保護絶縁膜32との間に形成されている。
【0022】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板13上に形成されている。また、透明基板13とボトムゲート絶縁膜22との間には、複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成され、これらボトムゲートライン41,41,…が互いに平行となって行方向(横方向)に延在している。行方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0023】
半導体膜23は、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んで、ボトムゲート電極21に相対している。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されている。半導体膜23が受光部であり、半導体膜23に入射した光量に応じた量の電子−正孔対が半導体膜23に形成される。半導体膜23は、アモルファスシリコンからなる。
【0024】
チャネル保護膜24は、半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされたものである。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生する。
【0025】
不純物半導体膜25は、半導体膜23の一部に重なるように形成されている。不純物半導体膜25の一部は、チャネル保護膜24に重なっている。不純物半導体膜26は、半導体膜23の別の部分に重なるように形成されている。不純物半導体膜26の一部は、チャネル保護膜24に重なっている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物(例えば、ホスフィン)を含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0026】
ソース電極27は、不純物半導体膜25に重なっている。ドレイン電極28は、不純物半導体膜26に重なっている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。ボトムゲート絶縁膜22とトップゲート絶縁膜29との間には、複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…が形成され、これらソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…が列方向(縦方向)に延在している。列方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体となって形成されており、列方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体なって形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0027】
トップゲート電極31は、半導体膜23との間にチャネル保護膜24及びトップゲート絶縁膜29を挟んで、半導体膜23に相対している。トップゲート電極31は、ダブルゲートトランジスタ20ごとにトップゲート絶縁膜29上に形成されている。また、トップゲート絶縁膜29と保護絶縁膜32との間には、複数本のトップゲートライン44,44,…が形成され、これらトップゲートライン44,44,…が互いに平行となって行方向に延在している。行方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31が共通のトップゲートライン44と一体となって形成されている。トップゲート電極31及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0028】
以上のように構成された固体撮像デバイス10はスポット固定層34の表面を受光面としており、固体撮像デバイス10が駆動されることによってダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量が電気信号に変換される。
【0029】
図5、図6は、ダブルゲートトランジスタ20の感光特性を示したグラフである。
図5においては、横軸は、ダブルゲートトランジスタ20への入射光度(単位:mcd)を表し、縦軸は、ダブルゲートトランジスタ20の光電変換による検出値(単位:任意単位)を表す。
図6においては、横軸は、ダブルゲートトランジスタ20への入射光度(単位:mcd)を表し、縦軸は、その入射光度によるダブルゲートトランジスタ20の検出値とその光度の2分の1の光度によるダブルゲートトランジスタ20の検出値との差を表す。
光電変換期間(ダブルゲートトランジスタ20に光を照射して、ダブルゲートトランジスタ20にキャリアが蓄積されて、ダブルゲートトランジスタ20で光電変換が行われている時間をいう。)は、1200 msec、2400 msec、4800 msecとしている。
【0030】
図6から明らかなように、光度が0.4〜0.7 mcdの場合には、検出値の差は光電変換期間を4800 msとしたときに最も大きく、光度が0.8〜1.6 mcdの場合には、検出値の差は光電変換期間を2400 msとしたときに最も大きく、光度が1.7〜2.5 mcdの場合には、検出値の差は光電変換期間を1200 msとしたときに最も大きい。
【0031】
〔3〕スポット
図1、図2に示すように、固体撮像デバイス10の受光面(スポット固定層34の表面)にはスポット60,60が形成されている。スポット60は、既知の塩基配列のcDNA(プローブDNA)の群集であったり、既知の抗体の群集であったりする。スポット60は、プローブとなるcDNA(プローブDNA)、抗体その他生体高分子の溶液を固体撮像デバイス10の受光面に滴下し、乾燥して形成される。以下ではプローブとして既知である2種類の一塩基多型(SNP)のcDNAを用いた場合について説明する。
【0032】
1つのスポット60では、同じ塩基配列の一本鎖のプローブDNAが多数集まってその群集が固定化されている。スポット60ごとにプローブDNAの塩基配列が異なっている。プローブDNAとしては、既知のmRNAの塩基配列が用いられたり、その一部と同一の又は相補的な塩基配列のDNAが用いられたりする。具体的には、例えば、蛍光標識DNAで用いるのと同じ細胞検体から作成したcDNAライブラリを用いることができる。ここでは、一塩基多型の判定を行うため、一塩基異なるプローブDNA(A)とプローブDNA(B)をそれぞれ別のスポット60に固定化する。
【0033】
図2に示すように、1つのスポット60は4つのダブルゲートトランジスタ20上に重なるように形成されている。なお、スポット60の数は2つに限らず、3以上であってもよい。また、1つのスポット60に重なるダブルゲートトランジスタ20の数も4つに限らず、1つのスポット60につき一又は複数のダブルゲートトランジスタ20が重なっていればよい。
【0034】
〔4〕駆動回路
図7は、固体撮像デバイス10及びその周辺回路を示した回路図である。
図1に示された駆動回路70は、図7に示すようにトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を有する。
【0035】
固体撮像デバイス10のトップゲートライン44,44,…がトップゲートドライバ71の端子に接続され、ボトムゲートライン41,41,…がボトムゲートドライバ72の端子に接続され、ドレインライン43,43,…がドレインドライバ73の端子に接続されている。また、固体撮像デバイス10のソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン42,42,…が接地されている。トップゲートドライバ71は、トップゲートライン44,44,…を列方向に走査する第一の走査ドライバである。ボトムゲートドライバ72は、ボトムゲートライン41,41,…を列方向に走査する第二の走査ドライバである。
【0036】
図8は、固体撮像デバイス10を駆動するための信号の推移を示したタイミングチャートである。
トップゲートドライバ71は、トップゲートライン44,44,…の走査によってダブルゲートトランジスタ20,20,…を行ごとに順次選択し、選択した同一行のダブルゲートトランジスタ20,20…をリセットするものである。具体的には、図8に示すように、トップゲートドライバ71はトップゲートライン44,44,…にリセットパルスを順次出力するようになっている。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルである。一方、トップゲートドライバ71は、リセットパルスを出力しない時にローレベルの−20〔V〕の電位をそれぞれのトップゲートライン44に印加するようになっている。トップゲートドライバ71としては、シフトレジスタを用いることができる。
【0037】
ボトムゲートドライバ72は、ボトムゲートライン41,41,…の走査によってダブルゲートトランジスタ20,20,…を行ごとに順次選択し、選択した同一行のダブルゲートトランジスタ20,20…の光電による検出値の読み出しをするものである。具体的には、図8に示すように、ボトムゲートドライバ72は、ボトムゲートライン41,41,…にリードパルスを順次出力するようになっている。リードパルスのレベルは+10〔V〕のオンレベル(ハイレベル)であり、リードパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のオフレベル(ローレベル)である。ボトムゲートドライバ72としては、シフトレジスタを用いることができる。
【0038】
トップゲートドライバ71の水平走査周期(任意の行にリセットパルスを出力してから次の行にリセットパルスを出力するまでの期間)と、ボトムゲートドライバ72の水平走査周期(任意の行にリードパルスを出力してから次の行にリードパルスを出力するまでの期間)とが等しく、ボトムゲートドライバ72による走査の位相はトップゲートドライバ71による走査の位相に対して遅れている。具体的には、トップゲートドライバ71が何れかの行のトップゲートライン44にリセットパルスを出力した後に光電変換期間を経てボトムゲートドライバ72が同じ行のボトムゲートライン41にリードパルスを出力するように、トップゲートドライバ71及びボトムゲートドライバ72が出力信号をシフトする。つまり、各行では、リードパルスが出力されるタイミングは、リセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。また、何れかの行のトップゲートライン44へのリセットパルスの入力が開始してから、同じ行のボトムゲートライン41へのリードパルスの入力が終了するまでの期間は、その行の選択期間である。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、リセットパルスが出力されていない時のレベルは−20〔V〕のローレベルである。
【0039】
ここで、トップゲートドライバ71は、水平走査周期を調整可能である。また、ボトムゲートドライバ72も、水平走査周期を調整可能である。これにより、光電変換期間が調整される。具体的には、光電変換期間は、1200 msec、2400 msec、4800 msecの何れかに設定される。なお、光電変換期間は、1200 msec、2400 msec、4800 msecの三段階に設定可能であるが、それに限らず、複数段階に設定可能であれば何段階であってもよい。
【0040】
ドレインドライバ73は、トップゲートドライバ71によって読み出されたダブルゲートトランジスタ20,20…の検出値を読み込み、読み込んだダブルゲートトランジスタ20,20…の検出値を順次出力するものである。具体的には、図8に示すように、ドレインドライバ73は、それぞれの行の選択期間において、リセットパルスが出力されてからリードパルスが出力されるまでの間に、全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力するようになっている。プリチャージパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、プリチャージパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。ドレインドライバ73は、プリチャージパルスの出力後にドレインライン43,43,…の電圧(検出値)を列順次に出力するようになっている。
【0041】
駆動回路70による固体撮像デバイス10の撮像動作について説明する。
トップゲートドライバ71が1行目のトップゲートライン44から最終行目のトップゲートライン44へと順次リセットパルスを出力し、ボトムゲートドライバ72がボトムゲートライン41,41,41,…に順次リードパルスを出力する。その際、ドレインドライバ73が各行でリセットパルスが出力されているリセット期間と各行でリードパルスが出力されている期間との間に、プリチャージパルスを全てのドレインライン43,43,…に出力する。
【0042】
i行目の各ダブルゲートトランジスタ20の動作について詳細に説明する。トップゲートドライバ71がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力すると、i行目のトップゲートライン44がハイレベルになる。i行目のトップゲートライン44がハイレベルになっている間(この期間をリセット期間という。)、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20では、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート電極31の電圧により反発して吐出される。
【0043】
次に、トップゲートドライバ71がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力することを終了して、半導体膜23に蛍光が入射することによって半導体膜23内に生成された電子−正孔対のうちの正孔を電気的に捕捉するためのするため負電位(−20〔V〕)をトップゲートライン44に出力する。つまり、i行目のトップゲートライン44のリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが出力されるまでの光電変換期間において、光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート電極31の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
【0044】
次に、光電変換期間中に、ドレインドライバ73が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力する。プリチャージパルスが出力されている間(プリチャージ期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20においては、トップゲート電極31に印加されている電位が−20〔V〕である。そうすると、この負電界によって半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔による電界は、必然的に負電界を完全に相殺して半導体膜23のチャネル領域にnチャネルを形成する程度の正電界には成り得ない。そうすると、ボトムゲート電極21に印加されている電位が±0〔V〕であるため、ドレイン電極28とソース電極27との間にプリチャージパルスの電位差が生じても半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流は流れない。プリチャージ期間において、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスによってi行目の各ダブルゲートトランジスタ20のドレイン電極28に電荷がチャージされる。
【0045】
次に、ドレインドライバ73がプリチャージパルスの出力を終了するとともに、ボトムゲートドライバ72がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力する。ボトムゲートドライバ72がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力している間(この期間を、リード期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20のボトムゲート電極21に+10〔V〕の電位が印加されているため、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20がオン状態になる。
【0046】
リード期間においては、光電変換期間において蓄積されたキャリアがトップゲート電極31の負電界を緩和するように働く。そのため、入射される光量が十分であってキャリアの量が十分であれば、ボトムゲート電極21の正電界とあわせて半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン電極28からソース電極27に電流が流れるようになり、ドレイン電極28の電荷が減少する。従って、リード期間では、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0047】
光電変換期間において半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、リード期間におけるドレイン電極28の電荷減少レートが大きくなるとともに、リード期間においてドレイン電極28からソース電極27に流れる電流のレベルも大きくなる。従って、リード期間におけるドレインライン43,43,…の電圧の減少傾向は、光電変換期間で半導体膜23に入射した光量に深く関連する。
【0048】
そして、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、リード期間が開始してから所定の時間経過後のドレインライン43,43,…の電圧(検出値)がドレインドライバ73によって検出される。その電圧が光量を示す。ドレインドライバ73は、ドレインライン43,43,…の電圧を列順次に出力する。
【0049】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各ダブルゲートトランジスタ20にも同等の処理手順を繰り返すことにより、固体撮像デバイス10の受光面における光量分布が得られる。
【0050】
〔5〕記憶装置
図1に示された記憶装置82は、半導体記憶装置である。
記憶装置82には、予備検出値と設定期間との対応関係を表したデータテーブルが格納されている。図9は、記憶装置82に格納されたデータテーブルの一例である。
【0051】
図9は、予め試験により求めた図5及び図6のグラフに基づき得られたものである。光度が0.4〜0.7 mcdの場合には、1200 msecの光電変換期間のダブルゲートトランジスタ20の検出値が33〜54 A.U.であり(図5)、その場合の検出値の差は光電変換期間を4800 msecとしたときに最も大きい(図6)。そのため、図9のデータテーブルにおいては、予備検出値が33〜54 A.U.である場合、それに対応する設定期間が4800 msecとなっている。
また、光度が0.8〜1.6 mcdの場合には、1200 msの光電変換期間のダブルゲートトランジスタ20の検出値が61〜122 A.U.であり(図5)、その場合の検出値の差は光電変換期間を2400 msecとしたときに最も大きい(図6)。そのため、図9のデータテーブルにおいては、予備検出値が61〜122 A.U.である場合、それに対応する設定期間が2400 msecとなっている。
また、光度が1.7〜2.5 mcdの場合には、1200 msの光電変換期間でのダブルゲートトランジスタ20の検出値が129〜190 A.U.であり(図5)、その場合の検出値の差は光電変換期間を1200 msecとしたときに最も大きい(図6)。そのため、図9のデータテーブルにおいては、予備検出値が129〜190 A.U.である場合、それに対応する設定期間が1200 msecとなっている。
また、光度が0〜0.4 mcdの場合には、1200 msの光電変換期間でのダブルゲートトランジスタ20の検出値が28 A.U.で一定であるから、図9のデータテーブルにおいては、予備検出値が28 A.U.である場合、それに対応する設定期間は設定されていない(測定不可となっている)。
なお、図9に示されたデータテーブルの数値は一例であり、データテーブルの数値は適宜変更可能である。
【0052】
〔6〕伝熱台
図1に示された伝熱台4は、熱伝導性の高い材料からなり、具体的には銅、アルミ、鉄、ステンレス鋼その他の金属材料又は窒化アルミニウムその他のセラミック材料からなる。
【0053】
〔7〕冷却装置
図1に示された冷却装置2は、伝熱台4の熱を強制的に外部に放出することによって伝熱台4を冷却するものであり、具体的にはペルチェ素子、ヒートポンプその他の冷却装置である。
【0054】
〔8〕温度センサ
図1に示された温度センサ3は、固体撮像デバイス10の温度を検出して検出温度を電気信号に変換するものであり、具体的にはサーミスタ、熱電体、熱電対その他の温度センサである。ここで、温度センサ3が伝熱台4の上に搭載され、伝熱台4の温度が温度センサ3によって検出されるが、伝熱台4の熱伝導率が高いから、固体撮像デバイス10の温度が殆ど遅延無く温度センサ3によって検出される。なお、温度センサ3が固体撮像デバイス10に設けられていてもよい。
【0055】
〔9〕その他の構成要素
図10は生体高分子分析支援装置80の構成を示すブロック図である。
生体高分子分析支援装置80は、生体高分子分析チップ1、冷却装置2、温度センサ3、伝熱台4及び励起光照射装置81のほか、コントローラ84、出力装置85、メモリ86、A/D変換器87を備える。
【0056】
図1に示されたフレキシブル配線シート83によって記憶装置82、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73がコントローラ84に接続される。また、ドレインドライバ73の出力端子は、フレキシブル配線シート83によってA/D変換器87に接続される。
【0057】
コントローラ84は、励起光照射装置81の点灯・消灯を行う機能を有する。
コントローラ84は、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72の水平走査周期を設定することによって光電変換期間を設定する機能を有する。
コントローラ84は、励起光照射装置81を点灯した状態でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73に制御信号を出力することによって、設定した光電変換期間でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させる機能を有する。これにより、固体撮像デバイス10の撮像動作を行う。
【0058】
A/D変換器87は、ドレインドライバ73の出力(各ダブルゲートトランジスタ20の検出値)を量子化してコントローラ84に出力する。
【0059】
コントローラ84は、A/D変換器87の出力をメモリ86に記録する機能を有する。これにより、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布が二次元の画像データとしてメモリ86に記録される。
【0060】
ここで、コントローラ84は、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させることを2回行う。1回目については、コントローラ84は、光電変換期間を初期値(具体的には、1200 msec)に設定し、その初期値の光電変換期間でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させる。2回目については、コントローラ84は、光電変換期間を初期値から変更して、その変更後の光電変換期間でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73を動作させる。具体的には、コントローラ84は、1回目の撮像動作におけるA/D変換器87の出力(各ダブルゲートトランジスタ20の検出値を量子化したもの)のうち最大値を予備検出値として、その予備検出値に対応する設定期間を記憶装置82のデータテーブルから検索し、光電変換期間を初期値からその設定期間に変更する。
【0061】
また、コントローラ84は、メモリ86に記録された画像データに従った画像を出力装置85に出力させる機能を有する。これにより出力装置85によって画像が出力される。出力装置85は、例えばプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
【0062】
また、コントローラ84は、温度制御回路88に対して設定温度を設定する機能を有する。
温度制御回路88は冷却装置2を制御する。ここで、温度制御回路88は、温度センサ3による検出温度をフィードバックし、その検出温度に基づき冷却装置2を制御することによって、設定温度に保つような定温度制御を行う。例えば、下閾値<設定温度<上閾値とした場合、検出温度が下閾値未満であるときには、温度制御回路88が冷却装置2の冷却能力を上げ、検出温度が下閾値以上、上閾値以下であるときには、温度制御回路88が冷却装置2の冷却能力を維持し、検出温度が上閾値を超えるときには、温度制御回路88が冷却装置2の冷却能力を下げる。
【0063】
〔10〕分析手順
生体高分子分析支援装置80を用いて試料を分析する方法について説明するとともに、生体高分子分析支援装置80の使用方法及び動作方法について説明する。
【0064】
〔10−1〕蛍光標識DNAの作成
分析する試料としては、DNAを用いることができる。試料となるDNAとしては、任意の細胞検体内で発現しているmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いるRT−PCR反応により得られたcDNAを用いることができる。cDNAは蛍光体で標識する。蛍光体としては、例えばインビトロジェン株式会社製のAlexa Fluor 350(吸収波長346nm、蛍光波長442nm)等を用いることができる。
【0065】
cDNAを蛍光体で標識するには、例えば、蛍光体で標識されたオリゴdTプライマや、標識されたdNTPミックスを用いてRT−PCR反応を実施すればよい。以下では、この標識されたcDNAを蛍光標識DNAという。
【0066】
〔10−2〕ハイブリダイゼーション
まず、作業者が、蛍光標識DNAを含有した溶液(以下、蛍光標識DNA)を固体撮像デバイス10の受光面に塗布する。蛍光標識DNA溶液を各スポット60,60に順次又は同時に滴下してもよい。
【0067】
このとき、DNAが一本鎖となるように蛍光標識DNA溶液を加熱する。また、スポット60のDNAが一本鎖となるように固体撮像デバイス10の受光面も加熱する。
【0068】
次いで、固体撮像デバイス10を冷却する。すると、蛍光標識DNA溶液内の蛍光標識DNAのうち、スポット60のプローブDNAと相補的な蛍光標識DNAは、そのプローブDNAとハイブリダイズする。一方、プローブDNAと相補的ではない蛍光標識DNAは、このスポット60には結合しないか、結合したとしても僅かである。
【0069】
その後、洗浄用バッファー溶液で蛍光標識DNA溶液を固体撮像デバイス10の受光面から洗い流し、蛍光標識DNAのうちハイブリダイズしなかったものを固体撮像デバイス10の受光面から除去する。
【0070】
〔10−3〕サンプルの検出
上記処理を行った後、生体高分子分析チップ1を伝熱台4の上に設置し、フレキシブル配線シート83をコントローラ84に接続する。これにより、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72、ドレインドライバ73及び記憶装置82がコントローラ84に接続され、ドレインドライバ73がA/D変換器87に接続される。その後、コントローラ84を起動させる。
【0071】
図11は、コントローラ84の処理の流れを示したフローチャートである。
図11に示すように、コントローラ84は、起動後、温度制御回路88に対して設定温度(例えば、10℃)を設定する(ステップS1)。そうすると、温度制御回路88が、温度センサ3による検出温度をフィードバックしながら冷却装置2を制御する。これにより、伝熱台4及び固体撮像デバイス10が設定温度になって、その設定温度に維持される。固体撮像デバイス10が冷却装置2及び伝熱台4によって冷却されることで、固体撮像デバイス10の暗電流が軽減される。
【0072】
次に、コントローラ84は、光電変換期間を初期値(具体的には、1200 msec)に設定する(ステップS2)。続いて、コントローラ84が励起光照射装置81を点灯させる(ステップS3)。励起光照射装置81によってスポット60,60が照射される。そうすると、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出される。一方、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出されない。
【0073】
そして、コントローラ84は、励起光照射装置81を点灯した状態で、励起光照射装置81を点灯した状態でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73に制御信号を出力する(ステップS4)。そうすると、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73が初期値の光電変換期間で動作し、上述のように、固体撮像デバイス10がトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73によって駆動され、ダブルゲートトランジスタ20,20,…において光電変換が起こる。各ダブルゲートトランジスタ20の光電変換期間は、初期値となる。そして、ダブルゲートトランジスタ20,20,…における光量に従った電圧(ドレイン電極28の電圧:予備検出値)がドレインドライバ73から順次出力され、その出力がA/D変換器87によって量子化されて、コントローラ84に入力される。コントローラ84は、A/D変換器87の出力をメモリ86に記録することによって、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布が二次元の画像データ(各画素の予備検出値の集合体)としてメモリ86に記録される。
【0074】
コントローラ84は、メモリ86に記録された画像データの中から最大の検出値を求める(ステップS5)。そして、コントローラ84は、記憶装置82のデータテーブルを参照して、その最大の検出値に対応する設定期間をそのデータテーブルから検索する(ステップS6)。
そして、コントローラ84は、検索した設定期間が光電変換期間の初期値(1200 msec)に等しいか否かを判断する(ステップS7)。
【0075】
検索した設定期間が光電変換期間の初期値に等しい場合(ステップS7:Yes)、コントローラ84がメモリ86に記録された画像データに従った画像を出力装置85に出力させる(ステップS13)。一方、コントローラ84は、検索した設定期間が「測定不可」であるか否かを判断する(ステップS8)。そして、検索した設定期間が「測定不可」である場合(ステップS8:Yes)、コントローラ84が測定不可の旨を出力装置85に出力させる(ステップS9)。一方、検索した設定期間が「測定不可」でない場合(設定期間が1200 msec、2400 msec又は4800 msecである場合)、コントローラ84は光電変換期間を変更し、その検索した設定期間を新たな光電変換期間とする(ステップS10)。
【0076】
コントローラ84が励起光照射装置81を点灯させ(ステップS11)、励起光照射装置81によってスポット60,60が照射される。そうすると、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出される。一方、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出されない。
【0077】
そして、コントローラ84は、励起光照射装置81を点灯した状態で、励起光照射装置81を点灯した状態でトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73に制御信号を出力する(ステップS12)。そうすると、トップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73が変更後の光電変換期間で動作し、上述のように、固体撮像デバイス10がトップゲートドライバ71、ボトムゲートドライバ72及びドレインドライバ73によって駆動され、ダブルゲートトランジスタ20,20,…において光電変換が起こる。各ダブルゲートトランジスタ20の光電変換期間は、設定期間となる。そして、ダブルゲートトランジスタ20,20,…における光量に従った電圧(ドレイン電極28の電圧:検出値)がドレインドライバ73から順次出力され、その出力がA/D変換器87によって量子化されて、コントローラ84に入力される。コントローラ84は、A/D変換器87の出力をメモリ86に記録することによって、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布が二次元の画像データ(各画素の検出値の集合体)としてメモリ86に記録される。そして、コントローラ84が、メモリ86に記録された画像データに従った画像を出力装置85に出力させる(ステップS13)
【0078】
出力装置85によって出力された画像から蛍光標識DNAの配列を特定することができる。つまり、画像において一方のスポット60の箇所が明るければ、蛍光標識DNAの配列はそのスポット60のDNAと相補的であることになり、他方のスポット60の箇所が明るければ、蛍光標識DNAの配列はそのスポットと相補的であることになる。
【0079】
本実施形態によれば、固体撮像デバイス10が初期値の光電変換期間で予備に駆動され(ステップS4)、それにより得られた予備検出値のうち最大値から最適な光電変換期間が求められ(ステップS6)、その最適な光電変換期間で固体撮像デバイス10が駆動されるから、出力装置85によって出力された画像を肉眼で見たときに、両スポット60に対応する部分の濃淡がはっきりとする。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなっても良い。
上記実施形態では、光電変換素子としてダブルゲートトランジスタ20,20,…を用いた固体撮像デバイス10を例にして説明したが、光電変換素子としてフォトダイオードを用いた固体撮像デバイスに本発明を適用しても良い。フォトダイオードを用いた固体撮像デバイスとしては、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサがある。CCDイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲には、フォトダイオードで光電変換された電気信号を転送するための垂直CCD、水平CCDが形成されている。CMOSイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲にはフォトダイオードで光電変換された電気信号を増幅するための画素回路が設けられている。固体撮像デバイス10がCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサである場合には、駆動回路70の回路構成はCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサに適したものに変更するのは勿論である。CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサの駆動回路は周知であるので、ここでは説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態における生体高分子分析支援装置の主要部を示した斜視図である。
【図2】生体高分子分析チップを概略して示した平面図である。
【図3】固体撮像デバイスの画素を示した平面図である。
【図4】IV−IV矢視断面図である。
【図5】固体撮像デバイスの感光特性を示したグラフである。
【図6】固体撮像デバイスの感光特性を示したグラフである。
【図7】固体撮像デバイス及びその周辺回路を示した図面である。
【図8】固体撮像デバイスの信号の推移を示したチャートである。
【図9】記憶装置に格納されたデータテーブルの一例を示した図である。
【図10】生体光高分子分析支援装置の構成を概略的に示したブロック図である。
【図11】コントローラによる処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
10 固体撮像デバイス
20 ダブルゲートトランジスタ
60 スポット
70 駆動回路
80 生体高分子分析支援装置
82 記憶装置
84 コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面と、前記受光面の下において配列された複数の光電変換素子とを有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に点在した複数種のスポットと、
前記固体撮像デバイスを駆動することによって、前記光電変換素子で光電変換が行われる光電変換期間において前記光電変換素子の受光量に応じた検出値を出力するとともに、前記光電変換期間を調整可能な駆動回路と、
予備検出値と設定期間との対応関係を示したデータテーブルを格納した記憶装置と、
前記光電変換期間を初期値に設定した状態で前記駆動回路に駆動動作を行わせることによって前記駆動回路から出力された予備検出値を入力し、入力した予備検出値のうち最大値に対応する設定期間を前記データテーブルから検索し、検索した設定期間に前記光電変換期間を設定した状態で前記駆動回路に再び駆動動作を行わせることによって前記駆動回路から出力された検出値を入力するコントローラと、を備えることを特徴とする生体高分子分析支援装置。
【請求項2】
前記複数種のスポットに固定される前記既知の生体高分子は、それぞれ一塩基多型のプローブDNAであることを特徴とする請求項1記載の生体高分子分析支援装置。
【請求項3】
前記固体撮像デバイスの温度を検出して電気信号に変換する温度センサと、前記温度に基づき冷却装置を制御する温度制御回路と、を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の生体高分子分析支援装置。
【請求項4】
前記検出値に該当した階調表示が可能な表示装置を備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の生体高分子分析支援装置。
【請求項5】
前記検出値に該当した階調印刷が可能な印刷装置を備えることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の生体高分子分析支援装置。
【請求項1】
受光面と、前記受光面の下において配列された複数の光電変換素子とを有する固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に点在した複数種のスポットと、
前記固体撮像デバイスを駆動することによって、前記光電変換素子で光電変換が行われる光電変換期間において前記光電変換素子の受光量に応じた検出値を出力するとともに、前記光電変換期間を調整可能な駆動回路と、
予備検出値と設定期間との対応関係を示したデータテーブルを格納した記憶装置と、
前記光電変換期間を初期値に設定した状態で前記駆動回路に駆動動作を行わせることによって前記駆動回路から出力された予備検出値を入力し、入力した予備検出値のうち最大値に対応する設定期間を前記データテーブルから検索し、検索した設定期間に前記光電変換期間を設定した状態で前記駆動回路に再び駆動動作を行わせることによって前記駆動回路から出力された検出値を入力するコントローラと、を備えることを特徴とする生体高分子分析支援装置。
【請求項2】
前記複数種のスポットに固定される前記既知の生体高分子は、それぞれ一塩基多型のプローブDNAであることを特徴とする請求項1記載の生体高分子分析支援装置。
【請求項3】
前記固体撮像デバイスの温度を検出して電気信号に変換する温度センサと、前記温度に基づき冷却装置を制御する温度制御回路と、を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の生体高分子分析支援装置。
【請求項4】
前記検出値に該当した階調表示が可能な表示装置を備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の生体高分子分析支援装置。
【請求項5】
前記検出値に該当した階調印刷が可能な印刷装置を備えることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の生体高分子分析支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−85115(P2010−85115A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251440(P2008−251440)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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