説明

生分解性プラスチック材料

【課題】 加工して得られた製品の着色が少ない生分解性プラスチック材料を提供することである。
【解決手段】 膜厚を100μの均一なフィルムに成形したときの、色差計によるL値、a値およびb値がそれぞれ、70以上、−30〜30、および−30〜30の範囲である生分解性プラスチック材料。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解性プラスチック材料に関する。詳しくは、繊維、フィルム、シート等の形状の製品に有用な生分解性プラスチック材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、生分解性プラスチック材料としては、脂肪族ポリエステル系、酢酸セルロース系、澱粉と変性ポリビニルアルコールとのポリマーアロイ系、天然ポリエステル系等の材料が知られており、特に脂肪族ポリエステル系の材料は、加工性および機械的物性に優れ、経済的に有利である特徴を有しており、その特徴を生かして繊維、成形品、シートやフィルムに使用することが期待されている。
【0003】しかしながら、前記の生分解性プラスチック材料、例えば脂肪族ポリエステル系の材料の合成は通常非常に厳しい反応条件下で行われるため、それらの材料を加工して得られた製品の着色は問題となっており、着色の少ない生分解性プラスチック材料が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記生分解性プラスチック材料の問題点を解決し、加工して得られた製品の着色が少ない生分解性プラスチック材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、膜厚を100μの均一なフィルムに成形したときの、色差計によるL値、a値およびb値がそれぞれ、70以上、−30〜30、および−30〜30の範囲である生分解性プラスチック材料を開発することにより上記の目的を達成した。
【0006】すなわち本発明は、膜厚を100μの均一なフィルムに成形したときの、色差計によるL値、a値およびb値がそれぞれ、70以上、−30〜30、および−30〜30の範囲である生分解性プラスチック材料に関する。
【0007】なお本発明においては、材料の着色の程度を、色差計によるL値、a値およびb値により評価を行う。L値、a値およびb値の測定は市販の色差計、例えば日本電色工業社製のVGS−1001DP等を用いて測定することができる。色差計によるL値、a値およびb値に基づく評価は、塗料の一般試験法(JIS K5400)における塗膜の色の評価法として一般的であり、L値が100に近いほど明度が高く(白く)、0に近いほど明度が低い(黒い)。またa値は−60に近いほど緑味が強く、80に近いほど赤味が強くなり、b値は−80に近いほど青味が強く、60に近いほど黄味が強い。
【0008】本発明の生分解性プラスチック材料は、膜厚を100μの均一なフィルムに成形したときの色差計によるL値、a値およびb値がそれぞれ、70以上、−30〜30、および−30〜30の範囲であり、好ましくは、80以上、−20〜20、および−20〜20の範囲であり、更に好ましくは、90以上、−10〜10および−10〜10の範囲である。L値が70未満であると、a値およびb値が−30〜30であっても黒っぽいフィルムであり、またL値が70以上であっても、a値およびb値が−30より小さいと緑〜青味の強い色になり、30よりも大きいと赤〜黄味の強い色になる。
【0009】前記生分解性プラスチック材料は、高分子量脂肪族ポリエステルを含んでなるものが好ましい。前記高分子量脂肪族ポリエステルとしては、例えば炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分と、炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分とから得られる高分子量脂肪族ポリエステル、または環状酸無水物と環状エーテルとの開環共重合を含む工程により得られる高分子量脂肪族ポリエステル等である。
【0010】また前記生分解性プラスチック材料は、リン系酸化防止剤を含んでなるものが好ましい。
【0011】本発明の他の発明は、前記生分解性プラスチック材料を成形してなる生分解性プラスチック成形品に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の生分解性プラスチック材料としては、生分解性を有するプラスチック材料であれば特に限定されないが、具体的には脂肪族ポリエステル系、酢酸セルロース系、澱粉と変性ポリビニルアルコールとのポリマーアロイ系、天然ポリエステル系等の材料等が挙げられ、なかでも脂肪族ポリエステル系材料が、生分解性のコントロールのしやすさおよび加工性に優れている点で好ましく、さらに高分子量脂肪族ポリエステルを含む材料が、耐熱性および機械的物性が優れている点で好ましい。
【0013】前記高分子量脂肪族ポリエステルを得るには、イ)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールを重縮合する方法、ロ)ヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)を重縮合する方法、ハ)環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方法, ニ)環状エステルを開環重合する方法が挙げられる。
【0014】イ)の方法で用いられる多塩基酸は、二官能以上の多価カルボン酸またはその無水物および三官能以上のオキシカルボン酸から選ばれたものであるが、酸性分とアルコール成分とが直線上に結合したポリエステルを生成するためにはカルボキシル基を1分子中に2個有するものが好ましい。イ)の方法で用いられる多塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸あるいはそれらのエステル等が挙げられ、酸無水物としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シラコン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、二無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体などが挙げられ、三官能以上のオキシカルボン酸としてはリンゴ酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。
【0015】グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール等が挙げられる。また、グリコール成分の一部としてポリオキシアルキレングリコールを使用することも可能であり、例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールおよびこれらの共重合体が例示される。またグリコール成分の一部として三官能以上の多価アルコールを使用することも可能であり、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリットなどが例示される。またグリコール成分の一部としてジエポキシドを使用することも可能であり、例えば(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0016】これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮すると、コハク酸とエチレングリコールとの組合せ、及び/またはコハク酸と1,4ーブタンジオールとの組合せが好ましい。
【0017】イ)の方法での高分子量脂肪族ポリエステルの製造に際しては多塩基酸(あるいはそのエステル)成分およびグリコール成分の全量を初期混合し反応させてもよく、または反応の進行に伴って分割して添加してもさしつかえない。重縮合反応としては通常のエステル交換法またはエステル化法更には両方の併用によっても可能であり、また必要により反応容器内を加圧または減圧にすることにより重合度を上げることができる。
【0018】ロ)の方法で用いられるヒドロキシカルボン酸としては、例えばグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2、2−ジメチルプロピオン酸、3−ヒドロキシ−3−メチル−酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、クエン酸、リンゴ酸あるいはそれらのエステル等が挙げられる。重縮合反応としては通常のエステル交換法またはエステル化法さらには両方の併用によっても何らさしつかえなく、また必要により反応容器内を加圧または減圧にすることにより重合度を上げることができる。
【0019】ハ)の方法で用いられる環状酸無水物は、酸無水物基を1分子中に1個有していても良いし2個以上有していてもよいが、酸成分とアルコール成分とが直線上に結合したポリエステルを生成するためには酸無水物基を1分子中に1個有するものが好ましい。ハ)の方法で用いられる環状酸無水物としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、二無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体などが挙げらる。
【0020】ハ)の方法で用いられる環状エーテルは、エポオキシ基を1分子中に1個有していてもよいし2個以上有していてもよいが、酸成分とアルコール成分とが直線上に結合したポリエステルを生成するためにはエポキシ基を1分子中に1個有するものが好ましい。ハ)の方法で用いられる環状エーテルとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ο−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮すると無水コハク酸とエチレンオキシドの組合せが好ましい。開環重合は公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
【0021】ニ)の方法で用いられる環状エステルとしては、例えばβ−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。開環重合は公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
【0022】このような高分子量脂肪族ポリエステルを得る方法のなかで比較的短い時間で工業的に効率よく製造できる方法としてハ)の環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方法が好ましい。以下、環状酸無水物と環状エーテルの開環重合についてさらに詳しく説明する。
【0023】本発明で用いられる無水コハク酸等の環状酸無水物は、これまで単独重合しないことが知られていた。このような単独重合しない環状酸無水物に対し、重合触媒の存在下に環状エーテルを逐次的に添加して重合させることによって、実質的に酸成分とアルコール成分が交互共重合したポリエステルが短時間で生成させ得る。
【0024】重合は溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶媒中での重合では環状酸無水物は溶媒に溶解させて用い、塊状重合では環状酸無水物を溶融させてから本発明に用いる。
【0025】溶媒中での重合は、回分式でも連続式でも行うことができ、その際使用される溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの不活性溶媒をあげることができる。
【0026】重合触媒としては、特に限定はなく、通常ポリエステルを開環重合する際に使用するものを用いる。例えばテトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−iso−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−iso−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−iso−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、モノ−sec−ブトキシ−ジ−iso−プロポキシアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、トリ−iso−プロポキシガリウム、トリ−iso−プロポキシアンチモン、トリ−iso−ブトキシアンチモン、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリ−iso−プロポキシボロン、トリ−n−プロポキシボロン、トリ−iso−ブトキシボロン、トリ−n−ブトキシボロン、トリ−sec−ブトキシボロン、トリ−t−ブトキシボロン、トリ−iso−プロポキシガリウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラ−iso−プロポキシゲルマニウム、テトラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−iso−ブトキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−sec−ブトキシゲルマニウム、テトラ−t−ブトキシゲルマニウムなどの金属アルコキド;五塩化アンチモン、塩化亜鉛、臭化リチウム、塩化すず(IV)、塩化カドミウム、三フッ化ホウ素ジエチルエーテルなどのハロゲン化物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛などのアルキル亜鉛;トリアリルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの三級アミン;リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸およびそのアルカリ金属塩;酸塩化ジルコニウム、オクチル酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、硝酸ジルコニールなどのジルコニウム化合物等が挙げられ、中でもオクチル酸ジルコニール、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシアルミニウム化合物が特に好ましい。重合触媒の使用量には特に制限はないが、通常環状酸無水物および環状エーテルの合計量に対して0.001〜10重量%である。重合触媒の添加方法は環状酸無水物に添加しておいてもよく、環状エーテルのように逐次添加してもよい。
【0027】重合温度は環状酸無水物と環状エーテルが反応する温度であれば特に制限はないが、10〜250℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは100〜150℃である。反応に際して、反応容器内の圧力は反応温度および溶媒の有無や溶媒の種類によって異なるが、環状エーテルの逐次的な添加による圧力の上昇に伴う未反応環状エーテルの増加は、反応生成物中のポリエーテル成分を増やすことになり好ましくない。したがって、反応容器内の圧力は常圧〜50kgf/cm2が好ましく、より好ましくは常圧〜15kgf/cm2 となるように環状エーテルを添加する。
【0028】環状エーテルの逐次添加は、環状酸無水物100重量部に対し1時間あたり環状エーテルを3〜90重量部が好ましく、より好ましくは5〜50重量部の割合で行なう。
【0029】環状エーテルの添加速度が下限の3重量部より遅い場合には、反応が長時間となり生産性が低下するなど工業的に好ましくない。また、上限の90重量部より速い場合には、反応生成物中のポリエーテル成分が増加して融点の低いポリエステルしか得られなくなる。なお、環状エーテルの逐次添加とは、環状エーテルを一括して添加しないことであり、連続的に滴下する方法や多段階に分割して断続的に添加する方法のいずれでもよい。好ましくは添加量が経時的に大きく変動しないように連続的に添加するのがよい。
【0030】本発明における環状酸無水物および環状エーテルの反応比率は、これらのモル比で40/60〜60/40の比率となるようにするのが好ましく、残存環状酸無水物およびポリエステルの末端カルボキシル基がポリエステルの物性を低下させることを考慮すると、前記環状エーテルを過剰に添加するために40/60〜49/51の比率となるようにするのがさらに好ましい。このようにすることにより、ポリエステルの末端カルボキシル基の50%未満がカルボキシル基となり、耐熱性が向上する。この比率の範囲をはずれると、未反応モノマーが増大して収率が低下することがある。本発明で前記モル比を考慮して決定した所定量の環状エーテルを逐次添加し終わった後、前記反応温度で重合を継続して熟成するのが好ましい。熟成反応後に重合系から生成したポリエステルを分離すればよい。
【0031】イ)、ロ)、ハ)、ニ)のいずれの方法によって得られたポリエステルも数平均分子量が10000よりも低い場合、さらに(i)エステル交換反応で高分子量化しても良いし、(ii)種々の鎖延長剤と反応させて高分子量化しても良い。
【0032】前記高分子量脂肪族ポリエステルの分子量範囲は、通常数平均で20000〜100000であるが、得られるポリエステルの物性および加工性が良い点で、好ましくは25000〜80000、より好ましくは30000〜80000である。
【0033】前記高分子量脂肪族ポリエステルを得るには、反応温度が重要な要因であり、(i)エステル交換反応、および(ii)種々の鎖延長剤との反応、における最適な条件は以下の通りである。
【0034】(i)エステル交換反応の反応温度は180〜270℃、好ましくは230〜250℃、またその時の減圧度は0.1〜3.0mmHg、好ましくは0.3〜2.0mmHg、更に好ましくは0.5〜1.5mmHgである。
【0035】(ii)鎖延長剤とポリエステルの反応温度は20〜270℃が好ましく、より好ましくは100〜200℃である。
【0036】いずれの場合も反応温度がこの範囲より低い場合は、反応時間が著しく長くなり工業的に不利であり、この範囲より高い場合は、着色したり分解生成物が多くなるため好ましくない。
【0037】(ii)の鎖延長剤としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、多価金属化合物、多官能酸無水物、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられ、一種、または二種以上を組み合わせてもよい。
【0038】前記イソシアナート化合物としては特に制限はないが、一分子中にイソシアナート基を二個以上有するものであり、例えば、トリレンジイソシアナート(「TDI」とも言う)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(「MDI」とも言う)、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、メタキシリレンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、水素化ジフェニルメタンジイソシアナート、水素化トリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等のイソシアナート化合物;スミジュールN(住友バイエルウレタン社製)の如きビュレットポリイソシアナート化合物;デスモジュールIL、HL(バイエルA.G.社製)、コロネートEH(日本ポリウレタン工業(株)製)の如きイソシアヌレート環を有するポリイソシアナート化合物;スミジュールL(住友バイエルウレタン(株)社製)の如きアダクトポリイソシアナート化合物、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)の如きアダクトポリイソシアナート化合物等を挙げることができる。これらは、単独で使用し得るほか、2種以上を併用することもできる。また、ブロックイソシアナートを使用しても構わない。
【0039】ポリエステルとイソシアナート化合物との反応比率は特に限定されないが、例えば、イソシアナート化合物が有するイソシアナート基とポリエステルが有する水酸基との比率(NCO/OH(モル比))が0.5〜3.0であることが好ましく、0.8〜1.5であることがより好ましい。
【0040】なお、ポリエステルとイソシアネート化合物とのウレタン化反応を促進するために、必要に応じて、有機スズ化合物や第3級アミン等の公知の触媒を用いることは自由である。
【0041】前記エポキシ化合物としては特に制限はないが、分子中に少なくとも二個エポキシ基を有するものであり、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ο−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0042】エポキシ化合物との反応は、まず前記環状酸無水物と前記環状エーテルを開環重合させ、得られたポリエステルと前記エポキシ化合物を反応させる方法、あるいは前記環状酸無水物と前記環状エーテルと前記エポキシ化合物を同時に開環反応させる方法、あるいは前記環状酸無水物と前記環状エーテルとエポキシ化合物を同時に開環反応させ、さらに前記エポキシ化合物を反応させる方法がある。
【0043】なお、ポリエステルと前記エポキシ化合物との反応を促進するために、必要に応じて、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール化合物等の公知の触媒を用いることは自由である。
【0044】前記アジリジン化合物としては特に制限はないが、例えば2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、エチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ポリエチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、プロピレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ポリプロピレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、テトラメチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ポリテトラメチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、、N,N’−テトラメチレンビスエチレン尿素、N,N’−ペンタメチレンビスエチレン尿素、N,N’−ヘキサメチレンビスエチレン尿素、N,N’−ヘプタメチレンビスエチレン尿素、N,N’−オクタメチレンビスエチレン尿素、N,N’−フェニレンビスエチレン尿素、N,N’−トルイレンビスエチレン尿素、N,N’−ジフェニル−4,4’−ビスエチレン尿素、3,3’−ジメチルジフェニル4,4’−ビスエチレン尿素、3,3’−ジメトキシジフェニル4,4’−ビスエチレン尿素、ジフェニルメタンP,P−ビスエチレン尿素等が挙げられる。これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0045】アジリジン化合物の使用量はポリエステルに対して0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0046】前記オキサゾリン化合物としては特に制限はないが、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。これらの中から一種または二種以上を用いることができる。さらに好ましくは2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィドである。
【0047】ポリエステルとオキサゾリン化合物との反応比率は特に限定されないが、例えば、オキサゾリン化合物が有する2−オキサゾリン基(Ox)とポリエステルが有するカルボキシル基(COOH)との比率(Ox/COOH(モル比))が0.5〜10.0であることが好ましく、0.8〜5.0であることがより好ましい。
【0048】なお、ポリエステルとオキサゾリン化合物との反応を促進するために、必要に応じて、酸性化合物のアミン塩等の公知の触媒を用いることは自由である。
【0049】前記多価金属化合物としては特に制限はないが、2価以上の有機金属化合物、金属塩および/または金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0050】2価以上の有機金属化合物および/または金属塩の好ましい金属としては、亜鉛、カルシウム、銅、鉄、マグネシウム、コバルト、バリウムなどが挙げられる。さらに好ましくは中和後、反応系中から多価金属化合物の対アニオンを揮発分として分離・回収できる亜鉛(II)アセチルアセトネート、酢酸亜鉛、蟻酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。金属アルコキシドとしてはアルミニウムイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムエチレート、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタンなどが挙げられる。
【0051】ポリエステルと多価金属化合物との反応比率は特に限定されないが、ポリエステル末端のカルボキシル基と2価以上の有機金属化合物および/または金属塩との中和反応の場合、例えば、金属化合物とポリエステルが有するカルボキシル基との比率(金属化合物/COOH(モル比))が0.1〜2.0であることが好ましく、0.2〜1.2であることがより好ましい。
【0052】ポリエステル末端の水酸基と金属アルコキシドとの反応の場合、例えば、金属化合物とポリエステルが有する水酸基との比率(金属化合物/OH(モル比))が0.1〜2.0であることが好ましく、0.2〜1.2であることがより好ましい。
【0053】前記多官能酸無水物としては特に制限はないが、例えば、二無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0054】多官能酸無水物との反応は、まず前記環状酸無水物と前記環状エーテルとを開環重合させ、得られたポリエステルと前記多官能酸無水物とを反応させる方法、あるいは前記環状酸無水物と前記環状エーテルと前記多官能酸無水物とを同時に開環反応させる方法、あるいは前記環状酸無水物と前記環状エーテルと前記多官能酸無水物とを同時に開環反応させ、さらに前記多官能酸無水物を反応させる方法がある。
【0055】前記多官能酸無水物の使用量は、ポリエステルに対して0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0056】前記リン酸エステルまたは亜リン酸エステルとしては特に制限はないが、ジエステル、トリエステルいずれでもよくエステル基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、2−エチルヘキシルなどが挙げられるが反応性、経済性を考慮するとメチル、エチル、フェニルが好ましい。
【0057】リン酸エステルまたは亜リン酸エステルの使用量はポリエステルに対して0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0058】鎖延長剤とポリエステルとの反応方法は特に制限はないが、ポリエステルを適当な溶媒に溶かして鎖延長剤と反応させる方法、ポリエステルを加熱溶融させて鎖延長剤と反応させる方法などが挙げられる。
【0059】また本発明の材料を得るためには、主として着色を抑制することを目的に、前記生分解性プラスチック材料に、市販の種々の着色防止剤を添加することが有効である。前記着色防止剤としては、例えばリン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、例えば亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジフェニルイソデシル、亜リン酸フェニルジイソデシル、亜リン酸ジベンジル、亜リン酸ジラウリルフェニル、亜リン酸n−デシルジフェニル、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリ−n−ブチル、亜リン酸トリメチル、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、オクタデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノおよび/あるいはジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の、次亜リン酸、亜リン酸およびそのエステル類;リン酸ジフェニル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸ジベンジル、リン酸トリエチル、リン酸トリメチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリス(4−tert−ブチルフェニル)、リン酸トリス(ブトキシエチル)、リン酸トリ−n−ブチル等の、リン酸およびそのエステル類;等が挙げられる。
【0060】フェノール系酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2、4、6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3、3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェロール等が挙げられる。
【0061】イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0062】これら着色防止剤は、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0063】上記着色防止剤の中では、上記リン系酸化防止剤が好ましく、特に次亜リン酸、亜リン酸および亜リン酸エステルは、少量の添加で効率良く大きな着色防止効果を発揮する点で好ましい。
【0064】上記着色防止剤の添加量は、その効果が量論的であるため化合物の分子量と、反応温度によるが、脂肪族ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部、より好ましくは0.01〜1重量部である。0.01重量部未満では着色防止効果は小さく、3重量部より多く添加しても効果は変わらない。
【0065】また本発明の材料を得るためには、製造の際反応系内の酸素を積極的に排除する操作は、着色防止の点で有効である。例えば反応前に原料と揮発性の溶媒を仕込み、系内を溶媒の沸点以上で沸騰させることにより原料内の酸素を気相部に追い出し、出てきた酸素をできれば急激に蒸発させ外部に除去する方法である。このとき原料は溶媒に溶解した状態か、あるいは沸点以上の温度で溶融している必要がある。前記溶媒としては沸点が比較的低く、反応速度・分子量等に影響を与えず、また揮発性や蒸気圧力が大きすぎないものが良く、例えばトルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等である。また溶媒の使用量としては原料に対して5重量部から200重量部の範囲が好ましく、5重量部未満では系内を沸騰させる効果が小さく、また200重量部より多く使用しても効果に増大はなく、逆に溶媒を揮発させるために無駄な労力を費やすことになりかねない。
【0066】本発明の生分解性プラスチック材料には、必要に応じて他の成分、例えば、耐熱剤、耐候剤、キレート化剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、強化材、難燃剤、可塑剤、他の重合体等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0067】また本発明の生分解性プラスチック材料には、さらに製品の着色を目的とした成分、例えば顔料、染料等を必要に応じ添加することもできる。
【0068】本発明の生分解性プラスチック成形品は、前記の生分解性プラスチック材料を成形してなる成形品である。成形品の形状としては、例えば各種部品、容器、資材、器具、フィルム、シート、繊維等が挙げられる。本発明の成形品は、着色が少なく、また任意の着色剤により思い通りの着色が可能であるため、各種用途に有用である。
【0069】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、例中の部は重量部を表わす。実施例で実施した評価方法は以下の通りである。結果をまとめて表1に示した。
【0070】(分子量)ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いてポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。
【0071】(融点)DSCにて測定した。
【0072】(L値、a値、b値)130℃、150kg/cm2、2分間の条件で圧縮成形機により厚さ100ミクロンのフィルムを作成し、得られたフィルムを色差計(日本電色工業社製、VGS−1001DP)にて測定した。
【0073】(フィルム外観)上記条件で作成したフィルムを目視法(JIS K 5400)により評価した。見本品には同条件でフィルム化した市販の低密度ポリエチレン(Ultzex、三井石油化学社製)を用いた。なお見本品のL値、a値およびb値はそれぞれ、94.62、−0.94、および−0.46であった。
【0074】結果は下記の通りに記載した。
【0075】(+):見本品と比べ色の差は大きくない。
【0076】(−):見本品と比べ色の差は大きい。
【0077】(生分解性試験)130℃、150kg/cm2、2分間の条件で圧縮成形機により厚さ200ミクロンのフィルムを作成し、得られたフィルムを土壌を仕込んだプランター中に埋設して、1日1回散水し23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室中に保存し、100日後の外観変化を観察した。
【0078】なお、土壌は、箕面市小野原及び吹田市西御旅町で採取したもの、腐葉土を、それぞれ3:1:3の割合で混合したものを使用した。
【0079】結果は下記の通りに記載した。
【0080】(+):外観変化が認められた。
【0081】(−):外観変化が認められなかった。
【0082】(実施例1)オートクレーブに、無水コハク酸500.0部(ロンザ社製、純度99.8%)、と、水素化カルシウムで脱水乾燥後、ろ過したオクチル酸ジルコニール2.42部(第一希元素化学工業社製、酸含有率;無水コハク酸に対して0.008モル%以下、水含有率;無水コハク酸に対して0.02モル%以下)とを加え、窒素置換を行った。次いで撹拌下にオートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水コハク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を4.0〜8.5kgf/cm2に維持しながら、酸化エチレン231.1部(日本触媒社製、純度99.9%以上)を1時間あたり58部の添加速度で4.0時間にわたって連続的に導入した。酸化エチレン導入後130℃で1.0時間熟成反応を行ってから系を常温にもどすことにより、重合生成物を得た。得られた重合生成物をクロロホルムに溶解させてテトラヒドロフラン中で沈澱精製する操作を3回繰り返して脂肪族ポリエステル(1)を得た。この脂肪族ポリエステル(1)の収率を求めたところ99.8%であった。また、GPC測定による数平均分子量は42300、DSCによる融点は104.2℃であった。中和滴定によりポリエステル中のカルボキシル基量を求めたところ0.0106mmol/gであった。以上の測定結果よりポリエステル末端に対するカルボキシル基の割合は45.0%であった。またこの時のL値は95.63、a値は−0.67、b値は1.28であった。
【0083】(実施例2)実施例1で用いた酸化エチレンを粗製酸化エチレン(純度98.0%)とした他は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル(2)を得た。この脂肪族ポリエステル(2)の収率を求めたところ99.2%であった。また、GPC測定による数平均分子量は13500、DSCによる融点は101.2℃であった。中和滴定によりポリエステル中のカルボキシル基量を求めたところ0.0501mmol/gであった。以上の測定結果よりポリエステル末端に対するカルボキシル基の割合は33.8%であった。
【0084】得られた重合生成物70.0部、着色防止剤として亜リン酸ジフェニル0.700部、および結晶核剤としてタルク2.8部を、セルフクリーニング型2軸混合機((株)栗本鉄工所製S1KRCリアクター、内径25mm、L/D=10.2)で窒素気流中、0.1〜0.2mmHgの減圧下、100rpm、ジャケット温度240℃の条件で2.5時間反応させ、生分解性プラスチック(2)を得た。GPC測定による数平均分子量は52000、DSCによる融点は101.6℃、であった。またこの時のL値は94.49、a値は−0.90、b値は4.38であった。
【0085】(実施例3)実施例2の亜リン酸ジフェニルを添加しなかった以外は実施例2と同様にして、生分解性プラスチック(3)を得た。GPC測定による数平均分子量は52000であり、DSC測定による融点は100.8℃であった。またこの時のL値は89.06、a値は−2.02、b値は24.70であった。
【0086】(実施例4)実施例2のKRCリアクターによるエステル交換反応温度を240℃から270℃に変更すること以外は実施例2と同様にして、生分解性プラスチック(4)を得た。GPC測定による数平均分子量は58000であり、DSC測定による融点は100.4℃であった。またこの時のL値は90.25、a値は−1.34、b値は10.50であった。
【0087】(実施例5)実施例2のKRCリアクターによるエステル交換反応温度を240℃から190℃に変更し、反応時間を5時間にしたこと以外は実施例1と同様にして、生分解性プラスチック(5)を得た。GPC測定による数平均分子量は50000であり、DSC測定による融点は101.7℃であった。またこの時のL値は95.98、a値は−0.35、b値は1.20であった。
【0088】(実施例6)開環重合を行う前にオートクレーブに無水コハク酸と同重量のトルエンを仕込み、反応前に120℃で系内を沸騰後突沸しない程度に急激にトルエンを除去し、完全に溶媒を除去した後更に窒素置換を3回繰り返し行った。以後の操作は、酸化エチレンは純度98.0%の粗製品を使用し、実施例2の操作と同様にして脂肪族ポリエステル(6)を得た。この脂肪族ポリエステル(6)70.0部とトルエン70.0部とをKRCリアクターに仕込み130℃で系内を沸騰させた後、開環重合前と同様の操作によりトルエンを除去し、系内を窒素置換後着色防止剤を用いずに実施例2と同条件でエステル交換反応を行った。GPC測定による数平均分子量は51000であり、DSC測定による融点は102.2℃であった。またこの時のL値は94.15、a値は−1.94、b値は10.81であった。
【0089】(比較例1)実施例2の亜リン酸ジフェニルを添加せずに、KRCリアクターによるエステル交換反応温度を240℃から270℃に変更すること以外は実施例2と同様にして、生分解性プラスチック(7)を得た。GPC測定による数平均分子量は58000であり、DSC測定による融点は100.7℃であった。またこの時のL値は73.25、a値は−0.23、b値は31.52であった。
【0090】
【表1】


【0091】
【発明の効果】本発明の生分解性プラスチック材料は、それを加工して得られた製品の着色が少なく、また任意の着色剤により思い通りの着色が可能であるため、各種部品、容器、資材、器具、フィルム、シート、繊維等の成形品とすることができる。
【0092】本発明の生分解性プラスチック成形品は、従来の生分解性プラスチック成形品に比べて着色が少なく、また任意の着色剤により思い通りの着色が可能であるため、例えば食品飲料容器、洗剤その他の日用品容器、薬品容器、化粧品容器等の容器類;機械および電子機器の部品;家具;建築材料;一般包装用や食品包装用あるいは農業資材用等のフィルムおよびシート;衣料用、非衣料用、医療用、衛生材料用、農業用、釣り糸、魚網、一般資材用、工業資材用等の繊維;編物、織物、不織布、紙、フェルト、糸、紐、ロープ等の各種用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 膜厚を100μの均一なフィルムに成形したときの、色差計によるL値、a値およびb値がそれぞれ、70以上、−30〜30、および−30〜30の範囲である生分解性プラスチック材料。
【請求項2】 高分子量脂肪族ポリエステルを含んでなる請求項1記載の生分解性プラスチック材料。
【請求項3】 前記高分子量脂肪族ポリエステルが、炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分と、炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分とから得られるものである、請求項2記載の生分解性プラスチック材料。
【請求項4】 前記高分子量脂肪族ポリエステルが、環状酸無水物と環状エーテルとの開環共重合を含む工程により得られるものである、請求項2記載の生分解性プラスチック材料。
【請求項5】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の生分解性プラスチック材料を成形してなる生分解性プラスチック成形品。