説明

生殖性除去構築物

本発明は、生殖発育の調節、特に被子植物種および裸子植物種における生殖組織の遺伝的除去に関する。生殖選好的プロモーター、調節エレメント、および細胞毒性ヌクレオチド配列が本明細書で開示され、遺伝的除去のための構築物および方法も同様に開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生殖発育の調節に関する。特に、本発明は、被子植物種および裸子植物種における生殖組織の遺伝的除去(genetic ablation)に関する。生殖選好的(reproductive-preferred)プロモーター、調節エレメントおよび細胞毒性ヌクレオチド配列が提供される。遺伝的除去のための構築物および方法も本発明に含まれる。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、「REPRODUCTIVE ABLATION CONSTRUCTS」と題する、2004年9月22日に提出された米国特許出願第10/946,622号に対する優先権の恩典を主張し、それは全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
植物遺伝子工学技術の登場により、遺伝子組換え作物の生態学的な影響は大きな懸念となっており、有性生殖による導入遺伝子の拡散に対して固有の障壁がない場合は特にそうである。具体的には、導入遺伝子がハイブリダイゼーションによってトランスジェニック植物から雑草種へと拡散しうる場合、または作物種それ自体が雑草の形態で存在する場合に懸念が生じている。Bergelson et al. Nature 395: 25 (1998)(非特許文献1)。このような懸念に対処する1つのやり方は、生殖構造の完全な除去を通じて、植物における不稔性を遺伝的に操作して導入することによる。
【0004】
最近、植物における生殖発育を制御するための除去システムに大きな関心が寄せられている。生殖制御は、遺伝的除去によっていくつかの植物種で実現されており、これは生殖細胞を除去するために生殖選好的プロモーターを細胞毒性遺伝子と結び付けることを伴う。例えば、デンプン液化バチルス(Bacillus amyloliquifaciens)由来の細胞外リボヌクレアーゼであるバルナーゼが、雄性不稔を誘導するために用いられている。Paddon et al. J. Bacteriol. 171: 1185-1187 (1989)(非特許文献2)。欧州特許第344,029号(特許文献1)は、タペータム特異的プロモーターの制御下にあってバルナーゼをコードするDNAで植物を形質転換することによって雄性不稔植物を作製するためのシステムを記載している。このようなプロモーター-遺伝子構築物によるタバコおよびアブラナ植物体の形質転換により、植物体が稔性花粉を産生することが防がれた。Mariani et al., Nature 347: 737-741 (1990)(非特許文献3)。APETALA3(AP3)プロモーターとジフテリア毒素A鎖(DTA)遺伝子との融合構築物を発現するトランスジェニックシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物体の花は花弁および雄蕊を欠いており、このことは導入遺伝子の発現によって花弁細胞および雄蕊細胞が除去されたことを示唆する。LEAFYプロモーターの制御下にあるDTA遺伝子を発現するトランスジェニックシロイヌナズナは、花を生じなかった。バルナーゼ遺伝子を作動させるタバコ柱頭特異的プロモーターにより形質転換されたタバコ植物体は柱頭分泌区域を欠き、雌性不稔であった。
【0005】
遺伝的除去は有効であるが、除去のために一般に用いられるプロモーターは組織特異的発現のためにはあまり適していない。その結果として、漏出性遺伝子発現が植物の栄養生長を著しく低下させ、損なわせる恐れがある。植物種によるが、除去は栄養生長を80%低下させる恐れがある。Strauss, S.H. and Meilan, R. TGERC Annual Report (1998)(非特許文献4)。遺伝的除去が森林産業において商業的に有用なものとなるためには、栄養組織に対する損傷の量をごくわずかなレベルまで抑えなければならない。
【0006】
数多くの特許および特許出願公報が、種々のプロモーターおよび細胞毒性遺伝子を用いた遺伝的除去を開示しているが、植物の栄養生長および発育に対する除去の影響に対処した開示はほとんどない。花の分裂組織で強く発現され、発育中の葉で弱く発現されるシロイヌナズナ由来のLFYプロモーターは、花が除去された植物を作製するために用いられている。Nilsson et al., Plant J. 15: 799-804 (1998)(非特許文献5)。しかし、LFYにより形質転換された植物のうち、花が除去され、しかも栄養発育が損なわれていないものはごくわずかに過ぎない。したがって、樹木種における生殖性除去(reproductive ablation)のために同様のアプローチを用いることは、不稔性および正常な栄養生長性を有数する少数の樹木を同定するために多くのトランスジェニック樹木を作製し、生長させて検査するのに何年もかかると考えられるため、実用的でないと考えられる。
【0007】
生殖器官の遺伝的除去は、プロモーター活性と除去遺伝子の毒性との微妙なバランスを必要とする。バルナーゼ遺伝子は植物における除去のために広く用いられているが、バルナーゼにより誘導される毒性はしばしば、植物の生長および発育に対して有害な影響を及ぼす。したがって、生殖性除去が植物の栄養生長に対する有害で回復不能な障害を伴わずに起こるように、バルナーゼの毒性を低下させることが望ましいと思われる。
【0008】
毒性の低下した突然変異型バルナーゼの作製とともに、植物の栄養組織における生殖性除去構築物の漏出性発現を最小限に抑えることも望ましいと思われる。植物における生殖性除去構築物の漏出性または異所性発現を最小限に抑えることにより、栄養組織における突然変異型バルナーゼ遺伝子の発現に対する植物の認容性が、除去の減弱によって改善されると考えられ、それはバルナーゼ突然変異体のプロモーター活性およびRNアーゼ活性に依存する。
【0009】
したがって、植物の栄養組織におけるバルナーゼにより誘導される毒性が低下していて漏出性発現が最小限である生殖性除去システムに対する需要が存在する。
【0010】
【特許文献1】欧州特許第344,029号
【非特許文献1】Bergelson et al., Nature 395: 25 (1998)
【非特許文献2】Paddon et al., J. Bacteriol. 171: 1185-1187 (1989)
【非特許文献3】Mariani et al., Nature 347: 737-741 (1990)
【非特許文献4】Strauss, S.H. and Meilan, R., TGERC Annual Report (1998)
【非特許文献5】Nilsson et al., Plant J. 15: 799-804 (1998)
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、SEQ ID NO:1〜8および13〜17からなる群より選択される単離されたポリヌクレオチド、ならびにSEQ ID NO. 18〜27のいずれか1つに示された配列を含むプラスミドを提供する。
【0012】
本発明はまた、図1(すなわち、SEQ ID NO. 18)、図2(すなわち、SEQ ID NO. 19)、図3(すなわち、SEQ ID NO. 20)、図4(すなわち、SEQ ID NO. 21)、図5(すなわち、SEQ ID NO. 22)、図6(すなわち、SEQ ID NO. 23)、図7(すなわち、SEQ ID NO. 24)、図8(すなわち、SEQ ID NO. 25)、図9(すなわち、SEQ ID NO. 26)、または図19(すなわち、SEQ ID NO. 27)のいずれか1つに示された配列を含むプラスミドも提供する。
【0013】
植物細胞における生殖選好的な遺伝子発現を付与する単離されたポリヌクレオチドであって、SEQ ID NO. 1、2、3、4、または16のいずれか1つに示された配列を含むポリヌクレオチドも提供される。
【0014】
1つの態様において、ポリヌクレオチドは、植物細胞における雄性選好的な遺伝子発現を付与する。
【0015】
SEQ ID NO. 1、2、3、4、または16のいずれか1つに示された配列を含むプロモーターも提供される。
【0016】
1つの態様において、SEQ ID NO. 1〜8のポリヌクレオチドは、前雄性または前雌性生殖構造において発現される、または活性を有する。
【0017】
SEQ ID NO:1、2、3、4、または16のいずれか1つに対して、配列において99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、または60%を上回るかそれに等しい配列同一性を有する、単離されたポリヌクレオチドも提供される。
【0018】
もう1つの態様においては、(i)SEQ ID NO. 1〜8および16〜17のいずれか1つのポリヌクレオチドに対して相補的な配列、(ii)SEQ ID NO. 1〜8および16〜17のいずれか1つのポリヌクレオチドの逆配列である配列、ならびに(iii)SEQ ID NO. 1〜8および16〜17のいずれか1つのポリヌクレオチドの逆相補物である配列、からなる群より選択される配列を有するポリヌクレオチドが提供される。
【0019】
ストリンジェントな条件下で請求項1のポリヌクレオチドとハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチドであって、その完全長配列にわたってSEQ ID NO. 1〜26のいずれか1つのポリヌクレオチドとハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチドも提供される。
【0020】
SEQ ID NO. 17に示された配列を含む、単離されたポリヌクレオチドも提供される。
【0021】
1つの態様においては、SEQ ID NO. 1〜4および16のいずれか1つの配列を有し、かつ(i)核酸分子と結合すること、または(ii)双子葉植物において機能的に結合した遺伝子の発現を調節すること、のうち少なくとも1つを行いうるポリヌクレオチドが提供される。
【0022】
もう1つの態様においては、SEQ ID NO. 1〜4および16のいずれか1つの配列を有し、(i)核酸分子と結合すること、または(ii)裸子植物において機能的に結合した遺伝子の発現を調節すること、のうち少なくとも1つを行いうるポリヌクレオチドが提供される。
【0023】
1つの態様においては、SEQ ID NO. 1〜4および16のいずれか1つの配列を有し、植物における機能的に結合した遺伝子の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートしうるポリヌクレオチドが提供される。
【0024】
本発明の1つの局面においては、所望の核酸と機能的に結合した、SEQ ID NO:1、2、3、4、または16およびそれらの機能的変異体のいずれか1つより選択される単離されたポリヌクレオチドを含む構築物であって、構築物により形質転換された植物細胞における該所望の核酸の発現を該プロモーターが調節するような構築物が提供される。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、該所望の核酸の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする。もう1つの態様において、所望の核酸は、植物における生殖発育を妨害しうる発現産物をコードする。
【0025】
本発明は、本明細書に開示された構築物のいずれか1つにより形質転換された植物を提供する。1つの態様において、このような形質転換植物の表現型は、該構築物で形質転換されていない同じ種の植物と比較して生殖発育における違いを表す。1つの態様において、生殖発育における違いは雄性生殖構造に生じる。もう1つの態様において、生殖発育における違いは、葯、花糸(filament)、タペータム、花粉、小胞子葉、または雄蕊性の錐(staminate cone)のいずれか1つに生じる。1つの代替的な態様において、生殖発育における違いは雌性生殖構造に生じる。その場合に、1つの態様において、生殖発育における違いは、柱頭、花柱、子房、大胞子、胚珠生成性の錐(ovuliferous cone)のいずれか1つに生じる。さらにもう1つの態様において、生殖発育における違いは前雄性または前雌性生殖構造に生じる。
【0026】
1つの局面において、所望の核酸はRNA転写物を生成し、1つの態様において、それは植物細胞にとって内因性である遺伝子のアンチセンス配列を含む。1つの態様において、RNA転写物は、植物細胞において通常発現される遺伝子のRNA干渉を誘導する。
【0027】
(i)SEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有するポリヌクレオチド、および(ii)所望の核酸、を含む構築物を含む植物細胞であって、該ポリヌクレオチドが該所望の核酸と機能的に結合している植物細胞も提供される。このような植物細胞を含むトランスジェニック植物も提供される。
【0028】
1つの局面において、本発明は、トランスジェニック植物を作製するための方法であって、(a)(i)SEQ ID NO. 1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および(ii)所望の核酸、を含む構築物であって該ポリヌクレオチドが該所望の配列の活性を調節するような構築物によって植物細胞の形質転換を行う段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階であって、該植物は、該構築物を含まない同じ種の植物とは異なる表現型を呈するトランスジェニック植物である、段階を含む方法を提供する。
【0029】
1つの態様において、形質転換植物の表現型は、構築物を含まない同じ種の植物と比較しての、生殖発育における違いによって特徴づけられる。もう1つの態様において、形質転換植物の表現型は、構築物を含まない同じ種の植物と比較しての、雄性生殖発育における違いによって特徴づけられる。または、形質転換植物の表現型は、構築物を含まない同じ種の植物と比較しての、雌性生殖発育における違いによって特徴づけられる。さらにもう1つの態様において、形質転換植物の表現型は、構築物を含まない同じ種の植物と比較しての、前雄性または前雌性生殖構造における違いによって特徴づけられる。
【0030】
もう1つの局面においては、植物における生殖不稔性を付与するための方法であって、(a)(i)SEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有するプロモーター、および(ii)生殖発育を除去させうる遺伝子をコードする核酸、を含む構築物を植物細胞に導入する段階であって、該核酸は該プロモーターに対してセンス性であり、該プロモーターが該遺伝子の発現を調節する、段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階であって、該植物は、該構築物を含まない同じ種の植物とは異なる表現型を呈するトランスジェニック植物である、段階;および(c)生殖不稔性である植物を選択する段階を含む方法が提供される。
【0031】
もう1つの局面には、植物における生殖構造を除去するための方法であって、(a)(i)SEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有するプロモーター、および(ii)生殖発育を除去させうる遺伝子をコードする核酸、を含む構築物を植物細胞に導入する段階であって、該プロモーターが該遺伝子の発現を調節する、段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階であって、該植物は、該構築物を含まない同じ種の植物とは異なる表現型を呈するトランスジェニック植物である、段階;および(c)生殖構造が除去された植物を選択する段階を含む方法がある。1つの態様において、植物は被子植物種または裸子植物種より選択される。
【0032】
花粉稔性を改変するための方法であって、(a)(i)SEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有するプロモーター、および(ii)所望の核酸、を含む構築物であって該プロモーターが該所望の核酸の発現を調節するような構築物を木本植物の植物細胞に導入する段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階;および(c)花粉稔性が改変された植物を得る段階を含む方法も提供される。1つの態様において、木本植物はユーカリ属またはマツ属の種より選択される。
【0033】
SEQ ID NO:5〜8およびそれらの変異体のいずれか1つより選択される、単離されたポリヌクレオチドも本明細書で同じく提供される。1つの態様において、これらのポリヌクレオチドのいずれか1つは突然変異型バルナーゼ酵素をコードする。1つの態様において、このようなポリヌクレオチドは、野生型バルナーゼ酵素と比較して活性が弱められた突然変異型バルナーゼ酵素をコードする。1つの態様において、変異体は、SEQ ID NO:5〜8のいずれか1つに対して、配列において99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、または60%を上回るかそれに等しい配列同一性を有する。
【0034】
(i)SEQ ID NO:5〜8のいずれか1つのポリヌクレオチドに対して相補的な配列、(ii)SEQ ID NO:5〜8のいずれか1つのポリヌクレオチドの逆配列である配列、および(iii)SEQ ID NO:5〜8のいずれか1つのポリヌクレオチドの逆相補物である配列、より選択される配列を有する、単離されたポリヌクレオチドも提供される。
【0035】
もう1つの態様においては、ストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:5〜8のいずれか1つのポリヌクレオチドとハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチドであって、その完全長配列にわたってSEQ ID NO:5〜8のいずれか1つのポリヌクレオチドとハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0036】
もう1つの局面においては、栄養生長を妨げることなく植物における生殖不稔性を付与するための方法であって、(a)(i)生殖選好的活性を有するプロモーター;および(ii)生殖発育を除去させうる遺伝子をコードする核酸、を含む構築物であって該プロモーターが該遺伝子の発現を調節するような構築物を植物細胞に導入する段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階であって、該植物は、該構築物を含まない同じ種の植物とは異なる表現型を呈するトランスジェニック植物である、段階;および(c)生殖不稔性を有し、栄養生長が妨げられていない植物を選択する段階を含む方法が提供される。
【0037】
栄養生長を妨げることなく植物における生殖発育を除去するための方法であって、(a)(i)SEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有するプロモーター、および(ii)生殖発育を除去させうる遺伝子をコードする核酸、を含む構築物であって該プロモーターが該遺伝子の発現を調節するような構築物を植物細胞に導入する段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階であって、該植物は、該構築物を含まない同じ種の植物とは異なる表現型を呈するトランスジェニック植物である、段階;および(c)生殖発育が除去され、栄養生長が妨げられていない植物を選択する段階を含む方法も提供される。
【0038】
栄養生長を妨げることなく植物における雄性不稔性を付与するための方法であって、(a)(i)生殖選好的発現を有するプロモーター;(ii)突然変異型バルナーゼであって野生型バルナーゼと比較して活性が弱められた該突然変異型バルナーゼをコードする核酸、を含む構築物を植物細胞に導入する段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階であって、該植物は、該構築物を含まない同じ種の植物とは異なる生殖表現型を呈するトランスジェニック植物である、段階;および(c)雄性不稔性を有し、栄養生長が妨げられていない植物を選択する段階を含む方法も提供される。1つの態様において、プロモーターは、SEQ ID NO:1、2、3、4、および16からなる群より選択される配列を有する。もう1つの態様において、プロモーターは、SEQ ID NO:1、2、3、4、および16からなる群より選択される配列のいずれか1つの機能的変異体である。
【0039】
1つの態様において、上記の(ii)の核酸は、SEQ ID NO:5〜8のいずれか1つの配列を有する。
【0040】
本発明はまた、1つの態様において、生殖発育が除去され、栄養生長が影響されていない植物も提供する。
【0041】
本発明はまた、もう1つの態様において、生殖発育が除去され、栄養生長が正常である木本植物も提供する。
【0042】
さらなる局面においては、木材を得るための方法であって、(a)(i)SEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有するプロモーター、および(ii)所望の核酸、を含む構築物を木本植物の植物細胞に導入する段階であって、該プロモーターが該所望の核酸の発現を調節する、段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階;および(c)該植物から木材を得る段階を含む方法が提供される。
【0043】
もう1つの局面には、木材パルプを得るための方法であって、(a)(i)SEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有するプロモーター、および(ii)所望の核酸、を含む構築物を木本植物の植物細胞に導入する段階であって、該プロモーターが該所望の核酸の発現を調節する、段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階;および(c)該植物から木材パルプを得る段階を含む方法がある。
【0044】
植物における生殖構造を除去するための方法であって、(a)SEQ ID NO 13〜15からなる群より選択されるプラスミドを植物細胞に導入する段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階であって、該植物は、該プラスミドを含まない同じ種の植物とは異なる表現型を呈するトランスジェニック植物である、段階;および(c)生殖構造が除去された植物を選択する段階を含む方法も提供される。もう1つの態様において、SEQ ID NO 18〜26からなる群より選択されるプラスミドを、上記の段階(a)で植物細胞に導入することもできる。
【0045】
植物における生殖不稔性を付与するための方法であって、(a)SEQ ID NO 13〜15からなる群より選択されるプラスミドを植物細胞に導入する段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階であって、該植物は、該プラスミドを含まない同じ種の植物とは異なる表現型を呈するトランスジェニック植物である、段階;および(c)生殖構造が除去された植物を選択する段階を含む方法も提供される。もう1つの態様において、SEQ 1D NO 18〜26からなる群より選択されるプラスミドを、上記の段階(a)で植物細胞に導入することもできる。
【0046】
もう1つの態様においては、本明細書に開示されたプラスミドのいずれかで安定的に形質転換された植物が提供される。1つの態様において、植物に安定的に導入されるプラスミドは、SEQ ID NO. 13〜15または18〜26のいずれか1つの配列を有する。
【0047】
本発明はまた、トランスジェニック植物における生殖不稔性を付与するための方法であって、(a)細胞毒性遺伝子と機能的に結合した生殖選好的プロモーター、および該細胞毒性遺伝子を阻害するタンパク質をコードする遺伝子と機能的に結合した生殖非選好的プロモーターを有する構築物によって植物の形質転換を行う段階であって;該生殖選好的プロモーターが被子植物または裸子植物の生殖構造において活性を有し、該生殖非選好的プロモーターが被子植物または裸子植物の生殖構造において活性を有しないような段階;(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階;および(c)生殖構造が除去されたトランスジェニック植物を選択する段階を含む方法も提供する。1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、SEQ ID NO:1、2、3、4、または16からなる群より選択される。もう1つの態様において、生殖非選好的プロモーターは、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO. 17からなる群より選択される。
【0048】
SEQ ID NO.:9〜12またはそれらの変異体のいずれか1つに示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。1つの態様において、ポリペプチドの変異体は、SEQ ID NO:9〜12のいずれか1つに対して、配列において99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、または60%を上回るかそれと等しい配列同一性を有する。
【0049】
本発明はまた、SEQ ID NO 5〜8のいずれか1つの配列を含むポリヌクレオチドと機能的に結合したSEQ ID NO. 1または2のいずれかの配列を含むプロモーターを含む構築物も想定している。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO. 5に示された配列を含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO. 6に示された配列を含む。もう1つの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO. 7に示された配列を含む。もう1つの態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO. 8に示された配列を含む。この構築物により形質転換された植物も提供される。
【0050】
SEQ ID NO. 9〜12のいずれか1つに示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合したSEQ ID NO. 1または2のいずれかの配列を有するプロモーターを含む構築物も提供される。この構築物により形質転換された植物も提供される。
【0051】
1つの態様において、これらの構築物の1つは、バルスター遺伝子と機能的に結合した生殖非選好的プロモーターも含みうる。
【0052】
本明細書に開示された生殖非選好的プロモーターは、SEQ ID NO. 3またはSEQ ID NO. 17に示された配列を含みうる。
【0053】
マツ属における球果の形成を誘導する方法であって、(a)ピッチパイン(リギダマツ(P. rigida))とロブロリーパイン(テーダマツ(P. taeda))との交配による雑種子孫植物を得る段階、(b)生殖組織選好的プロモーターと機能的に結合した所望のポリヌクレオチドにより雑種植物の形質転換を行う段階、(c)形質転換された雑種植物からトランスジェニック雑種植物を再生させる段階、および(d)球果を回収する段階を含む方法も提供される。1つの態様において、生殖組織選好的プロモーターは、SEQ ID NO. 1、2、3、4または16のいずれか1つに示された配列を含む。もう1つの態様において、雑種植物は、アグロバクテリウム法または遺伝子銃法を介した形質転換によって形質転換される。1つの態様において、球果は雄性または雌性である。もう1つの態様において、球果は、形質転換から1〜3年以内にトランスジェニック雑種植物によって産生される。
【0054】
もう1つの局面においては、裸子植物の生殖組織における活性に関して候補プロモーターを試験する方法であって、(a)候補プロモーター配列を得る段階、(b)候補プロモーターをレポーター遺伝子と機能的に結合させる段階、(c)レポーター遺伝子と機能的に結合した候補プロモーターを植物材料に導入する段階、および(d)植物材料におけるレポーター遺伝子の発現を同定する段階を含む方法が提供される。この方法において、レポーター遺伝子はGUSである。1つの態様において、植物材料は植物外植片または植物細胞である。もう1つの態様において、レポーター遺伝子発現が同定される植物材料は、花弁、雄蕊、心皮、茎頂、葯、タペータム、カルス、および胚からなる群より選択される。
【0055】
本発明はまた、所望のポリヌクレオチドと機能的に結合した生殖組織選好的プロモーターを含む雑種子孫植物であって、ピッチパイン(リギダマツ(P. rigida))とロブロリーパイン(テーダマツ(P. taeda))との交配によって得られる雑種子孫植物も提供する。1つの態様において、生殖組織選好的プロモーターは、SEQ ID NO. 1、2、3、4、または16のいずれか1つに示された配列を含む。1つの態様において、所望のポリヌクレオチドはSEQ ID NO. 5〜8のいずれか1つに示された配列を含む。もう1つの態様において、所望のポリヌクレオチドは、SEQ ID NO. 9〜12のいずれか1つに示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。SEQ ID NO. 13〜15のいずれかの配列を含む構築物により形質転換された雑種子孫植物であって、ピッチパイン(リギダマツ(P. rigida))とロブロリーパイン(テーダマツ(P. taeda))との交配によって得られる雑種子孫植物も提供される。
【0056】
本発明はまた、花成制御構築物と推定されるものを裸子植物における生殖を遅延させる活性に関して試験する方法であって、(i)所望のポリヌクレオチドと機能的に結合したプロモーターにより、リギダマツとテーダマツとの雑種の体細胞胚形成性培養物の形質転換を行う段階、(ii)形質転換された培養物からトランスジェニック細胞を選択する段階、(iii)少なくとも1つの体細胞胚を得るためにトランスジェニック細胞を培養する段階、(iv)トランスジェニック植物を得るために胚を発芽させる段階、(v)植物を生長させる段階、および(vi)球果の形成に関して植物を検査する段階を含む方法も提供する。1つの態様において、プロモーターは、植物の生殖組織におけるプロモーター活性を試験するために選択されたポリヌクレオチドである。もう1つの態様において、培養物は、アグロバクテリウムを介した、または遺伝子銃による形質転換によって形質転換される。さらなる態様において、所望のポリヌクレオチドはレポーター遺伝子または除去構築物である。この点に関して、1つの態様において、除去構築物は、SEQ ID NO. 13〜15のいずれか1つに示された核酸配列を有する。もう1つの態様において、構築物はSEQ ID NO. 18〜26のいずれか1つに示された配列を含みうる。1つの態様において、上記の段階(v)の植物は1〜3年にわたって生長させる。
【0057】
一般に、プロモーターと結合した、または本明細書に開示されたプラスミドもしくは構築物中に組み入れられた、本発明の所望の核酸または所望のポリヌクレオチドは、SEQ ID NO. 5〜8のいずれか1つの配列を含みうる。1つの態様において、所望の核酸または所望のポリヌクレオチドは、突然変異したバルナーゼ遺伝子配列である。1つの好ましい態様において、生殖選好的プロモーターは、被子植物種および裸子植物種における生殖組織の遺伝的除去を促進するポリヌクレオチドと機能的に結合している。1つの好ましい態様において、ポリヌクレオチドは突然変異型バルナーゼ遺伝子である。1つの態様において、プロモーターは、SEQ ID NO. 1〜4または16のいずれか1つに示された配列を含む。もう1つの態様において、バルナーゼ遺伝子は、SEQ ID NO. 5〜8のいずれか1つに示された配列を有するか、またはSEQ ID NO. 9〜12のいずれか1つに示された配列を含むポリペプチドをコードする。任意の構築物が、このようなプロモーター-所望のポリヌクレオチド発現カセットを含んでよい。
【0058】
態様の詳細な説明
本発明は、以下に示されたポリヌクレオチド配列のいずれか、すなわちSEQ ID NO. 1〜26のほか、図1〜9に示されたもの、およびそれらの部分からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子に関する。本発明はまた、本明細書に開示されたポリヌクレオチド配列の機能的断片も提供する。本発明はさらに、本明細書に開示されたポリヌクレオチド配列のいずれかに対する相補的核酸またはそれらの断片のほか、本明細書に開示されたポリヌクレオチド配列のいずれかとハイブリダイズする、少なくとも15個の連続した塩基を含む核酸も提供する。
【0059】
本発明はまた、SEQ ID NO 9〜12に示された配列などの、本明細書に示された配列より選択される配列を有するポリペプチドを含む、単離されたポリペプチド配列にも関する。
【0060】
本発明は、当業者に周知の用語および語句を用いる。別に定義する場合を除き、本明細書で用いたすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で用いた命名法、ならびに本明細書に記載された細胞培養、分子遺伝学および核酸科学およびハイブリダイゼーションにおける実験手順は、当技術分野で周知のものであって一般的に用いられている。組換え核酸法、ポリヌクレオチド合成、微生物培養、細胞培養、組織培養、形質転換、トランスフェクション、形質導入、分析化学、有機合成化学、化学合成、化学分析、ならびに医薬品の配合および送達に関しては標準的な手法が用いられる。一般に、酵素反応ならびに精製および/または単離の段階は、製造元の仕様書に従って行われる。手法および手順は一般に従来の方法に従って行われる。例えば、Sambrook & Russel, 「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001を参照のこと。
【0061】
アグロバクテリウム:当分野で周知であるように、植物細胞の形質転換を行うために用いられるアグロバクテリウムは、通常はベクターを含むアグロバクテリウム-ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム-リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)の、無害化された病毒性派生物である。ベクターは典型的には、T-DNAの境界部の間に配置された所望のポリヌクレオチドを含む。
【0062】
被子植物:子房内に囲まれた種子を有する維管束植物。被子植物は果実のなる花を生じる種子植物である。被子植物は双子葉植物および単子葉植物に分けられる。
【0063】
被子植物生殖構造:これには花を含む雄性および雌性組織が含まれる。典型的には、被子植物の花は4つの異なる花器官を有する:萼片(萼)、花弁(花冠)、雄蕊(雄蕊群)および雌蕊(雌蕊群)。
【0064】
被子植物生殖構造にはまた、前雄性および前雌性生殖構造も含まれる。前雄性および前雌性生殖構造には、雄性および雌性組織の発生および分化の前に形成される細胞および組織が含まれる。
【0065】
所望のポリヌクレオチド:本発明の所望のポリヌクレオチドは、所望のポリヌクレオチドをそのゲノム中に含む形質転換細胞において転写および/もしくは翻訳させようとする、プロモーター、エンハンサーもしくはターミネーターなどの遺伝子エレメント、または遺伝子もしくはポリヌクレオチドである。所望のポリヌクレオチドがタンパク質産物をコードする配列を含むならば、コード領域を、所望のポリヌクレオチドによってコードされる付随するメッセンジャーRNA転写物および/またはタンパク質産物の発現を生じさせる、プロモーターおよびターミネーターなどの調節エレメントと機能的に結合させることができる。したがって、「所望のポリヌクレオチド」には、5'から3'の向きに、プロモーター、タンパク質をコードする遺伝子およびターミネーターと機能的に結合した遺伝子が含まれうる。または、所望のポリヌクレオチドには、その転写により、植物細胞における内因性遺伝子の発現に影響を及ぼす二次構造を形成しうる核酸が生成されるような、「アンチセンス」の向きにある遺伝子またはその断片も含まれうる。所望のポリヌクレオチドが転写されて、所望のポリヌクレオチドに付随する遺伝子のRNA干渉を惹起する二本鎖RNA産物を生じてもよい。本発明の所望のポリヌクレオチドを、左側および右側のT-DNA境界配列が所望のポリヌクレオチドを挟み込むか、またはその両側にあるように、T-DNAの内部に配置してもよい。本発明は、少なくとも1つの植物細胞のゲノムへの1つまたは複数の所望のポリヌクレオチドの安定的な組込みを想定している。所望のポリヌクレオチドは、突然変異させることもでき、またはその野生型配列の変異体であってもよい。所望のポリヌクレオチドの全体または部分を植物のゲノム中に組み込みうることは認識されている。また、「所望のポリヌクレオチド」という用語が、このようなポリヌクレオチドの1つまたは複数を含むことも認識されている。したがって、本発明のT-DNAは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の所望のポリヌクレオチドを含みうる。
【0066】
双子葉植物(dicot):その胚が半分ずつに分かれた2つの種子または子葉を有し、分岐した葉脈、および4または5の倍数である花の部分を有する顕花植物。双子葉植物の例には、ユーカリ属、ポプラ属、フウ属、アカシア属、チーク、マホガニー、ワタ、タバコ、シロイヌナズナ、トマト、ジャガイモ、テンサイ、ブロッコリー、キャッサバ、サツマイモ、コショウ、ポインセチア、豆、アルファルファ、ダイズ、ニンジン、イチゴ、レタス、オーク、カエデ、クルミの木、バラ、ミント、カボチャ、デイジー、ゼラニウム、アボカドノキ、サボテンおよびダイコンドラ属が非限定的に含まれる。
【0067】
内因性:植物のゲノムにとって生来的である遺伝子のことを指す。
【0068】
雌性生殖組織:これには例えば、柱頭、花柱、子房、大胞子、雌錐(胚珠生成性の錐)、雌性配偶子、雌性接合子、大胞子母細胞および前雌性生殖構造が含まれる。
【0069】
雌性不稔性遺伝子:雌性配偶体、雌性配偶子、雌性接合子、種子、胚珠生成性の錐、または前雌性生殖構造の生長および発育を妨害するRNA、タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子のことを指す。雌性不稔性遺伝子を発現している植物は、生育不能な種子を生じる。雌性不稔性につながりうる突然変異には多くの異なるものがあり、これは雌性生殖器官または前雌性生殖構造の特定の組織の発育のすべての段階にかかわる。
【0070】
雌性不稔性遺伝子の例には、植物ホルモンの合成を触媒する酵素、例えば以下のものをコードするものが非限定的に含まれる:サイトカイニン生合成における最初の段階を触媒し、アグロバクテリウムT-DNAの遺伝子4によってコードされる酵素であるイソペンテニルトランスフェラーゼ;または、オーキシンの合成に関与し、アグロバクテリウムT-DNAの遺伝子1および遺伝子2によってコードされる酵素の一方もしくは両方。雌性不稔性遺伝子のさらに別の例は、以下のものをコードする:グルカナーゼ;ホスホリパーゼA.sub.2などのリパーゼ(Verheij et al. Rev. Blochem. Pharmacol. 91: 92-203 (1981));脂質ペルオキシダーゼ;または植物細胞壁阻害物質。雌性不稔性遺伝子のさらに別の例は、細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素のA断片またはボツリン)のような、植物細胞に対して毒性のあるタンパク質をコードする。
【0071】
雌性不稔性遺伝子のさらにもう1つの例には、アンチセンス核酸、または短鎖干渉性RNA(siRNA)などのようなRNA干渉(RNAi)に関与するRNAがあり、これらは標的とした遺伝子の発現を阻害または完全に阻止するために有用な可能性がある。例えば、本発明のアンチセンス分子またはRNAi分子は、例えば欧州特許公報第0,223,399号に記載されたように、植物の生殖細胞において内因性プロモーターの制御下で自然下に転写される鎖に対して相補的な核酸鎖をコードする。このようなアンチセンス核酸またはRNAi分子は、自然下に産生されたRNAの翻訳を阻害させるために、生殖細胞において自然下に産生されるRNAのコード部分および/または非コード部分に対して結合することができる。1つの態様において、本発明のアンチセンス核酸およびRNAi分子は、植物の相補的内因性DNA鎖(または遺伝子)の内因性プロモーターの制御下で、植物の花、胚珠生成性の錐、種子、胚、雌性配偶子、雌性配偶体、大胞子母細胞および前雌性生殖構造において発現させることができる。
【0072】
このようなアンチセンス核酸の例には、STMG07、STMG08、STMG4B12およびSTMG3C9遺伝子といったSTMG型遺伝子のアンチセンスDNA配列がある。Jofuku and Goldberg. The Plant Cell 1: 1079-1093 (1989)。遺伝子発現のRNAi阻害の使用法は、Paddison et al., Genes & Dev. 16: 948-958(2002)に全般的に記載され、植物における遺伝子発現を阻害するためのRNAiの使用法はWO 99/61631号に具体的に記載されており、これらは両方とも本明細書に参照として組み入れられる。
【0073】
雌性不稔性遺伝子のさらなる例は、Haseloff and Gerlach et al. Nature 334, 585-591 (1998)に記載されているような、所定の標的配列に対して高度に特異的な切断を行いうる特定のRNA酵素(すなわち、「リボザイム」)をコードする。
【0074】
繊維組成:本明細書で用いる場合、繊維組成とは、繊維の構造、外観または使用法を変化させるために改変することができる特質のことを指す。繊維組成を決定する特質には、繊維の長さ、粗さ、強度、色調、断面積、幅および繊維密度が非限定的に含まれる。例えば、繊維の長さは強度を与え、一方、繊維の粗さは質感および柔軟性を決定することが知られている。
【0075】
被子植物では、花の分裂組織が、4つの異なる型の花器官:萼片(萼)、花弁(花冠)、雄蕊(雄蕊群)および雌蕊(雌蕊群)を有する花構造を惹起する。それぞれの花器官は、花の分裂組織の側面に沿った同心円を含む輪生体として惹起される。花構造は小花柄または花柄によって支えられる。
【0076】
顕花植物は小胞子(雄性)または大胞子(雌性)のいずれかとして減数胞子を生じる。
【0077】
外来性:核酸に関する「外来性」とは、その核酸が、植物でない生物に由来すること、または形質転換しようとする植物と同じ種ではない植物に由来すること、または形質転換しようとする植物と異種交配可能でない植物には由来しないこと、または標的植物の種に属しないことを意味する。本発明によれば、外来性DNAまたはRNAには、真菌、細菌、ウイルス、哺乳動物、魚類または鳥類の遺伝子構成には天然に存在するが、形質転換しようとする植物には天然に存在しない核酸が含まれうる。したがって、外来性核酸は、例えば、形質転換植物によって天然には産生されないポリペプチドをコードするものである。外来性核酸がタンパク質産物をコードする必要はない。
【0078】
遺伝子:遺伝子とは、産物、ポリペプチド鎖またはRNA分子の合成のために必要な情報のすべてを含むDNA分子のセグメントのことであり、これにはコード配列および非コード配列の両方が含まれる。
【0079】
遺伝子エレメント:「遺伝子エレメント」とは、プロモーター、遺伝子、ターミネーター、イントロン、エンハンサー、スペーサー、5'-非翻訳領域、3'-非翻訳領域またはリコンビナーゼ認識部位を非限定的に含む、任意の離散的なヌクレオチド配列のことである。
【0080】
遺伝子改変:分子生物学および細胞生物学における方法を適用することによる、特定の生物のゲノム中へのDNAの安定的な導入。
【0081】
裸子植物:本明細書で用いる場合、子房を伴わない種子を有する種子植物のことを指す。裸子植物の例には、球果植物、ソテツ類、イチョウおよびマオウが含まれる。裸子植物では、生殖茎頂原基が雄錐(雄蕊性の錐)または雌錐(胚珠形成性の錐)のいずれかへと発育する。
【0082】
裸子植物生殖構造:雄性花粉錐(雄蕊性の錐)を含む雄性組織、および雌錐(胚珠形成性の錐)を含む雌性組織が含まれる。裸子植物生殖構造にはまた、前雄性および前雌性生殖構造も含まれる。前雄性および前雌性生殖構造には、雄性および雌性組織の発育および分化の前に形成される細胞および組織が含まれる。
【0083】
導入:本明細書で用いる場合、感染、トランスフェクション、形質転換または形質導入を含む方法による、細胞内への核酸配列の挿入のことを指す。
【0084】
リグニン:本明細書で用いる場合、モノリグノールであるコニフェリルアルコール、クマリルアルコールおよびシナピルアルコールの重合誘導体を含む、フェニルプロパノイド単位の重合体組成物のことを指す。リグニンの特性とは、リグニン組成物が細胞壁マトリックスに強度を与え、水の輸送を助け、および/または細胞壁多糖の分解を妨げる能力のことを指す。リグニン組成物またはリグニン構造は、モノリグノールのそれぞれの相対的な量を変更することによって、またはリグニンの型を変更することによって、変化させることができる。例えば、グアイアシルリグニン(フェルラ酸から導き出される)は軟木種において顕著であり、一方、グアイアシル-シリンギルリグニン(フェルラ酸およびシナピン酸から導き出される)は硬木種の特徴である。マツなどの軟木からのリグニンの分解は、硬木からリグニンを取り除くことと比較して、かなり多くのアルカリおよびより長いインキュベーションを必要とする。リグニン組成物は、リグニン生合成に関与する酵素のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれかによって調節されうる。例えば、重要なリグニン生合成酵素には、4-クマリン酸:補酵素Aリガーゼ(4CL)、シンナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)およびシナピルアルコールデヒドロゲナーゼ(SAD)が非限定的に含まれる。
【0085】
被子植物では、雄性配偶体または花粉粒は葯で発育し、葯は雄蕊の上にのっている。葯の発育は花粉の発育と相関する2つの段階で起こる。第I相では、葯の中の胞子形成細胞が小胞子形成を行う;非胞子形成性細胞は表皮およびタペータムを形成する。タペータムは胞子形成細胞を取り囲む組織であり、発育中の花粉に対して栄養材料を提供する。さらに、タペータムは酵素カラーゼ(callase)を分泌する。第II相では、葯が拡大して花糸が伸長する。この時点で、花粉粒が形成され、裂開が起こり、花粉粒が放出される。
【0086】
球果植物などの裸子植物では、雄性花粉錐は一連の鱗片および各鱗片の下面にある2つの花粉嚢を有する軸からなる。雄錐は、胞子茎軸上にらせん状配置で密にクラスター化した多数の小胞子葉からなる。それぞれの小胞子葉はその下方の背軸側に2つの小胞子嚢を有し、これは花粉嚢とも呼ばれる。それぞれの小胞子嚢の内部には胞子嚢組織がある。胞子嚢組織は小胞子母細胞と呼ばれる多数の二倍体細胞からなり、これは減数分裂を行う。それぞれの小胞子嚢の周辺にはタペータムがある。小胞子嚢の内部で、小胞子は有糸分裂を行い、2回の有糸分裂の後に、四細胞性の雄性配偶体が生じる。花粉粒は小胞子壁を含み、雄性配偶体の内部に含まれる。
【0087】
裸子植物において、雌錐は、数多くの高度に修飾された受精茎の融合によって形成される。例えばマツでは、雌錐は、単一の中心軸に付着した個々の単位から構成される。個々の単位は、胚珠生成性鱗片(胚珠を有する)および、その上方の胚珠生成性鱗片とほぼ完全に融合した、腋芽を抱く苞葉でできている。それぞれの胚珠生成性鱗片は、大胞子葉と他の受精茎要素との融合によって形成される。上方では、それぞれの胚珠生成性鱗片の向軸面は2つの胚珠である。胚珠はその珠孔を中心となる錐軸に向けて位置し、胚珠生成性鱗片の組織中に部分的に埋没している。それぞれの胚珠は珠皮(1つの多細胞層)を有し、これは珠孔を除いて、大胞子嚢を完全に取り囲む。珠皮または珠心は栄養組織として働き、それぞれの珠心は単一の大胞子母細胞を有する。大胞子母細胞は減数分裂を行う二倍体細胞である。珠孔室は各胚珠の内部の、珠心と珠孔との間に位置する。
【0088】
雄性生殖組織:これには例えば、花粉粒、タペータム、葯、花糸、花粉母細胞、小胞子、小胞子母細胞、雄性花粉錐(雄蕊性の錐)、花粉嚢および前雄性生殖構造が含まれる。
【0089】
雄性不稔性遺伝子:これは、雄性不稔性遺伝子が発現される任意の生殖細胞における適切な代謝、機能および/または発育を妨害し、それによってこのような任意の生殖細胞の死滅および/または破壊につながるRNA、タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子のことを指す。雄性不稔性につながりうる突然変異には多くの異なるものがあり、これは雄性生殖器官または前雄性生殖構造の特定の組織の発育のすべての段階にかかわる。
【0090】
雄性不稔性遺伝子の発現は、例えば、植物が稔性花粉を生じることをできなくする。形質転換植物における雄性不稔性遺伝子の発現が花粉を生じる植物をもたらしてもよいが、その花粉は受精に関して異常であるか非機能的であると考えられる。例えば、非機能的な花粉は花粉管を成長させることができないと考えられる。限定的ではないものの、雄性不稔性遺伝子の例は以下のものをコードする:RNアーゼT1(これは任意のグアニン残基の後の結合を加水分解することによってRNA分子を分解する)およびバルナーゼなどのRNアーゼ;エンドヌクレアーゼ(例えば、EcoRI)などのDNアーゼ;またはパパインなどのプロテアーゼ(例えば、パパイン酵素原およびパパイン活性タンパク質)。
【0091】
また別の雄性不稔性遺伝子は、植物ホルモンの合成を触媒する酵素をコードする。例えば、サイトカイニン生合成における最初の段階を触媒する酵素であるイソペンテニルトランスフェラーゼ、およびオーキシンの合成に関与する酵素を、雄性不稔性を誘導するために用いることができる。また別の雄性不稔性遺伝子は、グルカナーゼ;ホスホリパーゼA.sub.2などのリパーゼ(Verheij et al. Rev. Biochem. Pharmacol. 91: 92-203 (1981));脂質ペルオキシダーゼ;または植物細胞壁阻害物質をコードする。雄性不稔性遺伝子のさらに別の例は、細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素のB断片またはボツリン)などのような、植物細胞に対して毒性のあるタンパク質をコードする。
【0092】
雄性不稔性遺伝子のさらにもう1つの例には、アンチセンス核酸、または短鎖干渉性RNA(siRNA)などのようなRNA干渉(RNAi)に関与するRNAがあり、これらは標的とした遺伝子の発現を阻害または完全に阻止するために有用な可能性がある。例えば、本発明のアンチセンス分子またはRNAi分子は、例えば欧州特許公報第0,223,399号に記載されたように、植物の生殖細胞において内因性プロモーターの制御下で自然下に転写される鎖に対して相補的な核酸鎖をコードする。このようなアンチセンス核酸またはRNAi分子は、自然下に産生されたRNAの翻訳を阻害させるために、生殖細胞において自然下に産生されるRNAのコード部分および/または非コード部分に対して結合することができる。1つの態様において、本発明のアンチセンス核酸およびRNAi分子は、花粉粒、タペータム、葯、花糸、花粉母細胞、小胞子、小胞子母細胞、雄性花粉錐(雄蕊性の錐)、花粉嚢および前雄性生殖構造において発現させることができる。
【0093】
小胞子形成は、二倍体細胞である小胞子母細胞が減数分裂を行って、4つの半数体小胞子(四分子小胞子)を生じるプロセスである。四分子小胞子はカロース細胞壁に包まれている。
【0094】
被子植物において、小胞子形成は、花の雄性生殖組織である雄蕊内で起こる。それぞれの雄蕊は花糸および葯を有する。それぞれの葯は1つから4つまでの室を有し、これは花粉嚢または葯嚢と呼ばれる。それぞれの葯嚢は多数の小胞子母細胞を生じ、これは花粉母細胞とも呼ばれる。
【0095】
裸子植物において、小胞子形成は小胞子葉の小胞子嚢または花粉嚢で起こる。小胞子嚢の内部で、小胞子は有糸分裂を行い、四細胞性の雄性配偶体が生じる。裸子植物の花粉粒は小胞子壁を含み、雄性配偶体の内部に含まれる。
【0096】
単子葉植物(monocot):1つの子葉または種子葉を備えた胚を有し、平行な葉脈および3の倍数である花の部分を有する顕花植物。単子葉植物の例には、芝草、トウモロコシ、イネ、オートムギ、コムギ、オオムギ、モロコシ、ラン、アイリス、ユリ、タマネギおよびヤシが非限定的に含まれる。芝草の例には、コヌカグサ属(群集性ベントグラスおよび匍匐性ベントグラスを含むベントグラス種)、ナガハクサ(ケンタッキーブルーグラス)、ドクムギ属(一年生ライグラスおよび多年性ライグラスを含むライグラス種)、オニウシノケグサ(ヒロハノウシノケグサ)、オオウシノケグサ(ファインフェスク)、ギョウギシバ(ティフグリーン、ティフウェイIIおよびサンタアナを含む一般的なバミューダグラス品種、ならびにそれらの雑種);アフリカチカラシバ(キクユグラス)、イヌシバ(セントオーガスチングラス)、シバ(ノシバ)およびアオイゴケが非限定的に含まれる。
【0097】
機能的に結合した:それらが組み合わせとして植物細胞で適切に機能するような様式で、2つまたはそれ以上の分子を組み合わせること。例えば、プロモーターが構造遺伝子の転写を制御する場合には、プロモーターは構造遺伝子と機能的に結合している。
【0098】
表現型:表現型とはある植物を他と区別する特色または特徴のことであり、1つまたは複数の「所望のポリヌクレオチド」および/またはスクリーニング用/選択用マーカーを、形質転換植物の少なくとも1つの植物細胞のゲノム中に組み込むことにより、本発明に従って変更することができる。「所望のポリヌクレオチド」および/またはマーカーは、形質転換された植物細胞または植物全体のさまざまな遺伝的、分子的、生化学的、生理的、形態学的または農学的な特徴または特色を改変することにより、形質転換植物の表現型に変化を付与することができる。したがって、植物ゲノムに安定的に組み込まれた1つまたは複数の所望のポリヌクレオチドの発現は、例えば、耐乾性の向上、耐寒性および耐霜性の強化、活力の改善、色調の強化、健康上および栄養上の特徴の強化、保存性の改善、収量の強化、耐塩性の強化、耐重金属性の強化、耐病性の向上、耐虫性の向上、耐水ストレス性の向上、甘みの強化、活力の改善、味の改善、質感の改善、リン酸含有量の減少、発芽の向上、微量栄養素の取り込みの向上、デンプン組成の改善および花寿命の改善からなる群より選択される表現型を生じる可能性がある。
【0099】
植物組織:「植物」とは、葉緑体を含みセルロース細胞壁を有する胚を特徴的に生じる、植物界に属する光合成性で真核細胞性で多細胞性であるさまざまな生物のうち任意のものである。植物の部分、すなわち「植物組織」を本発明の方法に従って形質転換させ、トランスジェニック植物を作製することができる。多くの適した植物組織を本発明に従って形質転換させることができ、これには、体細胞胚、花粉、葉、茎、カルス、匍匐枝、マイクロチューバーおよびシュートが非限定的に含まれる。したがって、本発明は、芝草、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、オートムギ、テンサイ、ジャガイモ、トマト、タバコ、アルファルファ、レタス、ニンジン、イチゴ、キャッサバ、サツマイモ、ゼラニウム、ダイズ、オーク、リンゴ、ブドウ、マツ、モミ、アカシア、ユーカリ、クルミの木およびヤシといった被子植物および裸子植物の形質転換を想定している。本発明によれば「植物組織」には植物細胞も含まれる。植物細胞には、懸濁培養物、カルス、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉、種子および小胞子が含まれる。植物組織はさまざまな段階の成熟度にあってよく、液体もしくは固形培養物中で、または鉢、温室もしくは野外の土壌中もしくは適した培地中で成長させることができる。植物組織はまた、性的または無性的のいずれによって生じたものかを問わず、このような植物の任意のクローン、種子、子孫、ムカゴ、および、切り枝または種子といったこれらの任意のものの派生物のことも指す。特に関心が持たれるものには、マツ、モミおよびトウヒなどの球果植物、ケンタッキーブルーグラス、匍匐性ベントグラス、トウモロコシおよびコムギなどの単子葉植物、ならびにワタ、トマト、レタス、シロイヌナズナ、タバコ、リンゴおよびゼラニウムなどの双子葉植物がある。
【0100】
植物の形質転換および細胞培養:植物細胞を遺伝的に改変して、維持、さらなる生長、および/またはさらなる発育のために適した植物培養基に移すプロセスのことを広く指す。このような方法は当業者に周知である。
【0101】
花粉とは、種子植物の小胞子、ならびに葯および雄蕊性の花粉錐から散布される粉状の小胞子のことを指す。
【0102】
前雌性生殖構造:被子植物種および裸子植物種において雌性組織の発育および分化の前に形成される細胞および組織のことを指す。
【0103】
前雄性生殖構造:被子植物種および裸子植物種において雄性組織の発育および分化の前に形成される細胞および組織のことを指す。
【0104】
子孫:トランスジェニック植物の子孫のような本発明の「子孫」は、植物またはトランスジェニック植物を雄性親として生まれた、雌性親として生まれた、またはそれから派生したものである。したがって、「子孫」植物、すなわち「F1」世代植物は、本発明の方法によって作製されたトランスジェニック植物の後裔または派生物である。トランスジェニック植物の子孫は、その細胞ゲノムの少なくとも1つ、いくつかまたはすべての中に、本明細書に記載された方法によって親トランスジェニック植物の細胞に組み込まれた所望のポリヌクレオチドを含みうる。したがって、所望のポリヌクレオチドは、子孫植物に「伝達」または「遺伝」される。そのようにして子孫植物に遺伝する所望のポリヌクレオチドはT-DNA構築物の内部にあり、それもまた子孫植物にその親から遺伝する。本明細書で用いる「子孫」という用語を、一群の植物の末裔または派生物であると考えることもできる。
【0105】
プロモーター:RNAポリメラーゼおよび/またはその他の転写調節エレメントと結合する核酸、好ましくはDNAのことを意味するものとする。ほかのプロモーターと同様に、本発明のプロモーター配列はDNAまたはRNAの転写を促進または制御して、プロモーターと機能的に結合した核酸分子からmRNA分子を生じさせると考えられる。前述したように、生じるRNAはタンパク質もしくはポリペプチドをコードしてもよく、またはRNA干渉性分子もしくはアンチセンス分子をコードしてもよい。
【0106】
プロモーターは、本明細書で用いる場合、調節エレメントを含んでもよい。その反対に、調節エレメントがプロモーターから分離していてもよい。調節エレメントは、さまざまな重要な特徴をプロモーター領域に付与する。あるエレメントは、機能的に結合した核酸の転写の速度を高める転写因子と結合する。また別のエレメントは、転写活性を阻害するリプレッサーと結合する。プロモーター活性に対する転写因子の影響により、プロモーター活性が高いか低いか、すなわちプロモーターが「強い」か「弱い」かを判定することができる。
【0107】
植物プロモーターは、その起原が植物細胞であるか否かにかかわらず、植物細胞における転写を惹起しうるプロモーターである。例示的な植物プロモーターには、植物、植物ウイルス、および、植物細胞において発現される遺伝子を含むアグロバクテリウムまたは根粒菌などの細菌から得られるものが非限定的に含まれる。発育上の制御を受けるプロモーターの例には、タペータム、木部、葉、根または種子といった特定の組織における転写を選好的に惹起するプロモーターが含まれる。このようなプロモーターは組織選好的プロモーターと呼ばれる。特定の組織のみにおける転写を惹起するプロモーターは組織特異的プロモーターと呼ばれる。細胞種特異的プロモーターは、1つまたは複数の器官内の特定の細胞種、例えば、根または葉の維管束細胞における発現を主として作動させる。誘導性または抑制性プロモーターとは、環境的な制御を受けるプロモーターのことである。誘導性プロモーターによる転写に影響を及ぼす可能性のある環境条件の例には、嫌気的条件、熱、または光の存在が含まれる。組織特異的、組織選好的、細胞種特異的および誘導性プロモーターが、非構成性プロモーターのクラスを構成する。構成性プロモーターとは、ほとんどの環境条件下およびほとんどの植物部分において活性を有するプロモーターのことである。
【0108】
ポリヌクレオチドとは、遺伝子コード配列またはその断片(少なくとも15個の連続したヌクレオチド、少なくとも30個の連続したヌクレオチド、または少なくとも50個の連続したヌクレオチドを含む)、プロモーター、イントロン、エンハンサー領域、ポリアデニル化部位、翻訳開始部位、5'または3'非翻訳領域、レポーター遺伝子、選択用マーカーなどを含む、ヌクレオチド配列のことである。ポリヌクレオチドには一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAが含まれうる。ポリヌクレオチドは修飾塩基または修飾骨格を含みうる。ポリヌクレオチドは、ゲノム性でも、RNA転写物(mRNAなど)でも、またはプロセシングされたヌクレオチド配列(cDNA)でもよい。ポリヌクレオチドには、センスまたはアンチセンスのいずれの向きにある配列も含まれうる。
【0109】
単離されたポリヌクレオチドとは、その自然なままの状態にはないポリヌクレオチド配列のことであり、例えば、そのポリヌクレオチドは自然下では認められないヌクレオチド配列から構成される、またはそのポリヌクレオチドは、典型的にはそれが近接しているヌクレオチド配列から離れている、または典型的にはそれが近接していないヌクレオチド配列に近接している。
【0110】
再生能力:本明細書で用いる場合、脱分化した組織から再び分化する植物の能力を指す。
【0111】
生殖選好的プロモーターとは、植物の生殖組織において選好的に発現されるプロモーターのことを指す。生殖植物組織には、生殖構造の雄性および雌性部分の両方、さらには前雄性および前雌性生殖構造が含まれる。雄性生殖組織には例えば、花粉粒、タペータム、葯、花糸、花粉母細胞、小胞子、雄性花粉錐(雄蕊性の錐)および前雄性生殖構造が含まれる。雌性生殖組織には例えば、柱頭、花柱、子房、大胞子、胚珠生成性鱗片、苞葉、雌性花粉錐(胚珠生成性の錐)および前雌性生殖構造が含まれる。したがって、生殖選好的プロモーターは、任意の被子植物生殖構造または裸子植物生殖構造において選好的に発現されうる。
【0112】
種子:「種子」は、植物の胚、および塊茎または胞子のような繁殖部分を含む、成熟した植物胚珠とみなしうる。種子は、アグロバクテリウムを介した形質転換の前に、例えば発芽を促進させるために暗所でインキュベートすることができる。インキュベーションの前に、漂白剤による短時間の処理などによって種子を滅菌することもできる。続いて、その結果生じた実生をアグロバクテリウムの所望の菌株に曝露させることができる。
【0113】
選択用/スクリーニング用マーカー:植物または植物組織において発現された場合に、それらを、その遺伝子を発現しない他の植物または植物組織と識別することを可能にする遺伝子。スクリーニング手順には、スクリーニング用マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質の発現に関するアッセイが必要と考えられる。このようなマーカーの例には、βグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子およびルシフェラーゼ(LUX)遺伝子が含まれる。選択用マーカーの例には、カナマイシンおよびジェネティシン耐性をコードするネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子、ハイグロマイシンに対する耐性をコードするハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPTまたはAPHIV)遺伝子、スルホニル尿素型除草剤に対する耐性をコードするアセト乳酸シンターゼ(als)遺伝子、フォスフィノスリシン(LibertyまたはBasta)のようなグルタミンシンターゼの作用を阻害するように作用する除草剤に対する耐性をコードする遺伝子(BARおよび/またはPAT)、または当技術分野で公知のその他の同様の遺伝子が含まれる。
【0114】
配列同一性:本明細書で用いる場合、2つの核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」または「同一性」は、指定された領域にわたって最大の対応関係が得られるようにアラインメントした場合に同じである2つの配列中の残基に対する言及を含む。
【0115】
本明細書で用いる場合、配列同一性のパーセンテージとは、ある比較域にわたって最適にアラインメントされた2つの配列を比較することによって決定された値のことを意味し、この際、2つの配列の最適なアラインメントのために、比較域の内部のポリヌクレオチド配列は、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。パーセンテージは、両方の配列に同一な核酸塩基が存在する位置の数を決定してマッチする位置の数を求め、マッチする位置の数を比較域における位置の総数によって除算して、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを求めることによって算出される。
【0116】
雄蕊:雄性配偶子を生じる花の器官のことを指し、葯および花糸を含む。
【0117】
タペータム:被子植物の葯の内部の小胞子形成細胞または裸子植物の雄錐の内部の小胞子嚢細胞を取り囲む細胞の層のことを指す。発育中の小胞子に近接していることから、タペータムは還元糖、アミノ酸および脂質などの栄養分を発育中の小胞子に供給する可能性が高い。Reznickova, C.R., Acad. Bulg. Sci. 31: 1067 (1978). Nave, et al., J. Plant Physiol. 125: 451 (1986). Sawhney, et al., J. Plant Physiol 125: 467 (1986)。タペータム細胞は、カロース細胞壁を消化することによって小胞子の放出を促進するβ(1,3)グルカナーゼ(カラーゼ)も産生する。このため、タペータムと小胞子形成細胞との間には脆弱な関係が存在し、タペータム機能の妨害は非機能的な花粉粒をもたらす可能性が高い。例えば、タペータム生物発生の障害は、雄性不稔性突然変異体を生じさせることが示されている(Kaul,「Male Sterility in Higher Plants」in Monographs on Theoretical and Applied Genetics;Frankel et al. eds.; Springer Verlag;Vol.10;pp.15-95; (1988))。このため、カラーゼをコードする遺伝子は雄性生殖発育を妨害するために用いることができる。すなわち、小胞子の成熟花粉粒への発育の不全を、例えば、タペータム特異的調節配列の制御下にある、タペータム機能を妨害しうる遺伝子を含む組換えDNA分子を用いて誘導することができる。
【0118】
転写因子:転写因子とは、遺伝子コード配列に付随する1つもしくは複数のヌクレオチド配列と直接結合すること、または遺伝子コード配列に付随する1つもしくは複数のヌクレオチド配列と結合する別のポリペプチドの活性に間接的に影響を及ぼすことのいずれかにより、1つまたは複数の遺伝子の発現を調節するポリペプチド配列のことを指す。転写因子は、1つまたは複数の遺伝子の発現を活性化(アップレギュレート)してもよく、または抑制(ダウンレギュレート)してもよい。転写因子は、DNA結合ドメイン、活性化ドメイン、またはタンパク質-タンパク質相互作用のためのドメインを含みうる。本発明において、転写因子は、(1)核酸配列と結合すること、または(2)植物における遺伝子の発現を調節すること、のうち少なくとも1つを行うことができる。
【0119】
転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター:本発明の発現DNA構築物は、典型的には、転写開始調節エレメントとは反対側の末端に転写終結領域を有する。転写終結領域は、発現を増強するためのmRNAの安定性のため、および/または遺伝子転写産物に付加されるポリアデニル化尾部の付加のために選択することができる。
【0120】
転移DNA(T-DNA):アグロバクテリウムT-DNAは、その境界の内部に含まれるヌクレオチド配列を別のゲノム中に組み込むことができるエレメントとして周知の遺伝子エレメントである。この点に関して、T-DNAは、典型的には、2つの「境界」配列に挟まれている。本発明の所望のポリヌクレオチドおよび選択用マーカーを、T-DNAの左境界様配列と右境界様配列との間に配置することができる。T-DNAの内部に含まれる所望のポリヌクレオチドおよび選択用マーカーを、その発現を、すなわち所望のポリヌクレオチドまたは選択用マーカーによってコードされるDNA配列の転写および/または翻訳を促進する、プロモーターおよびターミネーター調節エレメントのような、さまざまな異なる植物特異的(すなわち、天然の)または外来性核酸と機能的に結合させてもよい。
【0121】
植物細胞の形質転換:植物細胞のゲノム中に核酸が安定的に挿入されるプロセス。形質転換は、当技術分野周知のさまざまな方法を用いて、自然条件または人工的条件の下で行われる。形質転換は、アグロバクテリウムを介した形質転換プロトコール、ウイルス感染、ウィスカー、電気泳動、微量注入法、ポリエチレングリコール処理、熱ショック、リポフェクションおよび粒子射入法を含む、原核性または真核性宿主細胞への核酸配列の挿入のための任意の公知の方法に依拠しうる。
【0122】
トランスジェニック植物:本発明のトランスジェニック植物は、内部に外因性核酸が安定的に組み込まれた少なくとも1つの細胞ゲノムを含むものである。本発明によれば、トランスジェニック植物とは、ただ1つのみの遺伝的に改変された細胞および細胞ゲノムを含みうる植物であり、またはそれが複数もしくは多数の遺伝的改変細胞を含んでもよく、細胞のすべてが遺伝的に改変されていてもよい。本発明のトランスジェニック植物は、所望のポリヌクレオチド、すなわち外因性核酸の発現が、植物の特定の部分のみで起こるものである。したがって、トランスジェニック植物は、その構造の特定の部分のみに遺伝的に改変された細胞を含みうる。
【0123】
変異体:「変異体」とは、本明細書で用いる場合、特定の遺伝子の参照(すなわち、天然の、標準的な、または所定の)ヌクレオチド配列から逸脱したヌクレオチド配列を意味するものと解釈される。「アイソフォーム」「アイソタイプ」および「類似体」という用語もまた、「変異」形態のヌクレオチド配列のことを指す。
【0124】
変異体はまた、Maxygenに対して譲渡された特許に記載されたもののような、「シャッフルされた遺伝子(shuffled gene)」のことも指す。例えば、本発明の変異体には、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,132,970号に開示されている方法および基本原理に従って改変された、配列および所望のポリヌクレオチドの変異体が含まれる。
【0125】
栄養生長:当技術分野で十分に受け入れられているこの用語は、植物の全般的で全体的な発育のことを指す。詳述すると、生殖の後に、分裂組織細胞は、頂部-、側部分裂組織へと分化し、それらは最終的には根およびシュートへと発育し、後には例えば葉および花へと発育する。シュートおよび根の構造、分枝パターン、茎、腋芽および原基細胞の葉、花弁、花および果実などへの発育は、すべて「栄養性」であって植物の「栄養生長」サイクルの一部であると考えられている。このような特徴の発育の速度は、植物の種、光合成、栄養分の利用能、および植物が生長する全般的環境といった、さまざまな要因に依存する。
【0126】
遺伝特質も、植物の発育において重要な、字義通りおよび字義通りではない役割を果たす。例えば、葉の「単純」または「複合的な」形状、すなわち、それが滑らかな辺縁、深く切れ込んだ裂片、個々の小葉または巻きひげによって特徴づけられるか否かは、遺伝子発現によって説明することができる。例えば、「LEAFY」遺伝子は複葉の発育に役割を果たし、栄養発育から生殖発育への移行に必須である。LEAFYはシロイヌナズナおよびキンギョソウで同定されたもので、他の被子植物にも相同体がある。エンドウでの相同体であるUnifoliataは、複葉が単葉へと単純化される突然変異型表現型を有し、これはシュートと複葉との間の調節的関係を示している。
【0127】
同様に、アカシア突然変異体「tl」は巻きひげを小葉に転換させ、突然変異体afilia「af」は、小葉を巻きひげに転換させる。「af tl」二重突然変異体は、パセリの葉に似た複雑な構造を有する。同じように、このような「栄養性」植物細胞および組織の全体にわたって発現されるその他の遺伝子は、植物のその他の離散的部分の発育的、生理学的および構造的な特徴を協調させ、結び付ける。したがって、根、シュート、茎および葉などのすべての栄養組織において特異的もしくは支配的に発現される多くの「栄養特異的」遺伝子があり、またはそれらは栄養組織特異的である。このため、このような遺伝子のプロモーターは、特定の栄養組織に対して、内因性であれ外来性であれ、所望の遺伝子の発現を導くのに有用である。したがって、生殖組織細胞などのような非栄養組織における同じ産物の発現を回避しながら、1つまたは複数の栄養組織において遺伝子産物を選好的に発現させることが可能である。
【0128】
木材組成:木材の構造、外観または使用法を変化させるために改変することができる特質のことを指す。非限定的であるが、木材組成を決定する特質には、細胞壁の厚さ、細胞の長さ、細胞のサイズ、管腔のサイズ、細胞密度、ミクロフィブリルの角度、引っ張り強度、引裂強度、木材の色調、ならびに細胞分裂の長さおよび頻度が含まれる。
【0129】
木材パルプ:木本から生成される、さまざまな純度の繊維のことを指す。木材パルプは、紙、紙板および化学製品の製造のために用いることができる。
【0130】
本発明が、本明細書に記載された特定の方法、プロトコール、ベクターおよび試薬には限定されず、これらはさまざまでありうることは理解されている。また、本明細書で用いる用語が、特定の態様のみを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも理解される必要がある。本明細書および添付する特許請求の範囲において用いる場合、単数形の「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」は、その文脈で明らかに別の指示がなされない限り、複数のものに関する言及も含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの遺伝子」に対する言及は、1つまたは複数の遺伝子に対する言及であり、当業者に公知であるその等価物を含み、その他も同様である。実際に、当業者は、植物宿主系において任意の天然の遺伝子(現在知られているもの、または後に知られるもの)を発現させるために本明細書に記載された方法を用いることができる。
【0131】
核酸
「単離された」核酸分子とは、その天然の環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAのことを意図している。例えば、ベクターに含まれる組換えDNA分子は、本発明の目的上は単離されているとみなされる。単離されたDNA分子のさらなる例には、異種宿主細胞内に維持される組換えDNA分子、および、溶液中にある(部分的または実質的に)精製されたDNA分子が含まれる。単離されたRNA分子には、本発明のDNA分子のインビトロでのRNA転写物が含まれる。本発明によれば、単離された核酸分子にはさらに、合成的に製造されたこのような分子も含まれる。
【0132】
本発明の核酸分子は、mRNAなどのRNAの形態であってもよく、または、クローニングにより得られたもしくは合成的に製造された、例えばcDNAおよびゲノムDNAを含むDNAの形態にあってもよい。DNAまたはRNAは二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNAは、センス鎖としても知られるコード鎖でもよく、またはアンチセンス鎖とも呼ばれる非コード鎖でもよい。
【0133】
別に指定する場合を除き、本明細書においてDNA分子のシークエンシングによって決定したすべてのヌクレオチド配列は、自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems, Inc.によるModel 3700など)を用いて決定し、本明細書において決定されたDNA分子によってコードされるポリペプチドのすべてのアミノ酸配列は、以上のように決定されたDNA配列の翻訳によって予測した。このため、この自動化アプローチによって決定される任意のDNA配列に関して当技術分野で公知であるように、本明細書において決定された任意のヌクレオチド配列はある程度の誤りを含む可能性がある。自動化によて決定されるヌクレオチド配列は、シークエンシングを行ったDNA分子の実際のヌクレオチド配列に対して、典型的には少なくとも約95%同一であり、より典型的には少なくとも約96%〜少なくとも約99.9%同一である。実際の配列は、当技術分野で周知の手作業によるDNAシークエンシング法を含む、他のアプローチによって、より正確に決定することができる。当技術分野で同じく公知であるように、実際の配列との比較による、決定されたヌクレオチド配列中の単一の挿入または欠失はヌクレオチド配列の翻訳におけるフレームシフトを引き起こすと考えられ、決定されたヌクレオチド配列によってコードされる予測されたアミノ酸配列は、このような挿入または欠失の箇所から以後は、シークエンシングを行ったDNA分子によって実際にコードされるアミノ酸配列とは全く異なる可能性がある。
【0134】
別に指定する場合を除き、本明細書に示されたそれぞれの「ヌクレオチド配列」は、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと略記される)の配列として提示されている。しかし、核酸分子またはポリヌクレオチドの「ヌクレオチド配列」とは、DNA分子またはポリヌクレオチドの場合はデオキシリボヌクレオチドの配列を意図し、RNA分子またはポリヌクレオチドの場合は対応するリボヌクレオチド(A、G、CおよびU)配列を意図しており、この場合、特定されたデオキシリボヌクレオチド配列中の各々のチミジン・デオキシリボヌクレオチド(T)はリボヌクレオチド・ウリジン(U)によって置換される。例えば、デオキシリボヌクレオチド略号を用いて示されたSEQ ID NO:1の配列を有するRNA分子に対する言及は、SEQ ID NO:1の各々のデオキシヌクレオチドA、GまたはCが対応するリボヌクレオチドA、GまたはCによって置換され、各々のデオキシヌクレオチドTがリボヌクレオチドUによって置換されたRNA分子を示すことを意図している。
【0135】
本発明はまた、本明細書に記載された単離された核酸分子の断片も対象とする。本明細書に開示されたヌクレオチド配列を有する単離されたDNA分子の断片とは、長さが少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチドであるDNA断片のことであり、これらは以下にさらに詳細に考察する診断用プローブおよびプライマーとして有用である。当然ながら、最大で本発明の核酸分子の全長にわたるようなより長い核酸断片も、従来のハイブリダイゼーション法に従ってプローブとして、または、例えば、その全開示内容が参照として本明細書に組み入れられるMolecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd. edition, edited by Sambrook, J and Russel, D.W.,(2001), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載されたように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による標的配列の増幅のためのプライマーとして、診断的に用いることができる。
【0136】
長さが例えば少なくとも20ヌクレオチドである断片とは、本明細書に開示されたヌクレオチド配列、すなわちSEQ ID NO. 1〜26からの20個またはそれ以上の連続した塩基を含む断片を意図している。本明細書に開示されたヌクレオチド配列を含む核酸は、従来のDNA合成方法を用いて作製することができ、それは当業者にとってはルーチン的であると考えられる。例えば、制限エンドヌクレアーゼによる切断または超音波処理による剪断を、さまざまなサイズの断片を作製するために容易に用いうると考えられる。または、本発明のDNA断片を、公知の手法に従って合成的に作製することも可能と考えられる。
【0137】
もう1つの局面において、本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、上記の本発明の核酸分子中のポリヌクレオチドの一部分とハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子を提供する。ポリヌクレオチドの「部分」とハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、参照ポリヌクレオチドの少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、および30個を上回るヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)のことを意図している。参照断片とハイブリダイズするこれらの断片は診断用プローブおよびプライマーとして有用である。プローブとは、本明細書で用いる場合、本明細書に開示された核酸、すなわちSEQ ID NO. 1〜8および13〜26のうち1つの、少なくとも約50個の連続した塩基と定義される。本発明の目的上は、2つの配列は、6×SSC、0.5%SDS、5×デンハルト溶液および100μgの非特異的担体DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中でそれらが二本鎖複合体を形成する場合に、ハイブリダイズするという。Ausubel et al., section 2.9, supplement 27 (1994)を参照のこと。配列が「中程度のストリンジェンシー」でハイブリダイズしてもよく、これは6×SSC、0.5%SDS、5×デンハルト溶液および100μgの非特異的担体DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中にて温度60℃で、と定義される。「高ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーションの場合は、温度を68℃に高める。中程度のストリンジェンシーでのハイブリダイゼーション反応の後に、2×SSC+0.05%SDSを含む溶液でヌクレオチドを室温にて5回洗浄し、その後に0.1×SSC+0.1%SDSにより60℃で1時間洗浄する。高ストリンジェンシーの場合は、洗浄温度を68℃に高める。本発明の目的上は、ハイブリダイズしたヌクレオチドとは、比放射能が10,000cpm/ngである放射標識プローブ1ngを用いて検出されるもののことであり、この際、ハイブリダイズしたヌクレオチドは、X線フィルムに対する-70℃での72時間を超えない露出の後に明瞭に見ることができる。
【0138】
前述したように、本出願は、上記の核酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である核酸分子を対象とする。1つの態様は、SEQ ID NO. 1〜8および13〜26に示された核酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である核酸配列を含む。参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも例えば95%「同一」なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、そのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチド毎に最大5つの点突然変異を含みうることを除いて、参照配列と同一であることを意図している。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中のヌクレオチドの最大5%が欠失するか別のヌクレオチドによって置換されてもよく、または参照配列中の総ヌクレオチドの最大5%までの数のヌクレオチドが参照配列中に挿入されてもよい。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5'もしくは3'末端位置またはそれらの末端位置の間の任意の場所に存在することができ、参照配列中のヌクレオチド間に個別に散在してもよく、または参照配列内部に1つまたは複数の連続した群としてあってもよい。
【0139】
実際問題として、任意の特定の核酸分子が、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かとは、当技術分野で周知の標準的なアルゴリズムを用いて2つの配列同士で行った比較のことを指す。配列同一性を定義するためには任意の配列アルゴリズムを用いうるが、分かりやすくするために、本発明では、Basis Local Alignment Search Tool(BLAST)アルゴリズム(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))を参照して同一性を定義しており、本開示に示されたプロモーター配列は、ポリヌクレオチド相同体の全長にわたる同一性パーセンテージを定義するための参照配列として用いられる。マッチ、ミスマッチおよび挿入または欠失に関するパラメーター値の選択は任意であるが、いくつかのパラメーター値は、他のものよりも生物学的に現実的な結果を与えることが見いだされている。
【0140】
特定の配列が本発明による参照配列に対して例えば95%同一であるか否かを判定するためにBLASTまたは任意のその他の配列アラインメントプログラムを用いる場合には、パラメーターは当然ながら、参照ヌクレオチド配列の全長にわたって同一性のパーセンテージが算出されるように設定され、相同性に関しては参照配列中のヌクレオチドの総数のうち最大5%のギャップが許容される。
【0141】
2つのポリヌクレオチド間の関連性を、それらが相補的塩基対の形成によって二本鎖複合体を形成する能力を参照することによって記述することもできる。ハイブリダイゼーション条件は本明細書中に前述されている。温度の上昇を利用して、これらの複合体を分離させることができる。2つの配列が構造的に同一であるほど、それらを分離するため、または「融解」させるために必要な温度は高くなる。二本鎖複合体を融解させるために必要な温度は「Tm」と呼ばれる。Tmとその他のハイブリダイゼーションパラメーターとの関係は、
Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(G+Cの割合)−0.63(ホルムアミド%)−(600/l)
によって与えられ、式中、Tmはプローブおよびその標的からなるDNA二重鎖の融解温度である;さらにl=ハイブリッドの塩基対での長さであり、ただしl>100塩基対である。Bolton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 48: 1390 (1962)。一般に、融点の1℃の変化は、DNA配列の類似性における0.7%から3.2%までの違いに相当する。Bonner et al., Journal of Molecular Biology 81: 123-35 (1973);McCarthy et al., In Evolution of Genetic Systems, H.H. Smith(ed.), Brookhaven Symposium in Biology No. 23, Gordon and Breach, New York, pp. 1-43 (1972)。60℃での安定的なDNA二重鎖の形成には、典型的には配列間に少なくとも80%の配列同一性を必要とする。Sibley et al., ACTA 1: 83-121(Proceedings of the 18th International Ornithological Congress, Moscow, August 16-24, 1982, Academy of Sciences of the USSR)。
【0142】
1つの態様において、本発明の核酸は、被子植物および裸子植物の生殖組織におけるポリペプチドまたはタンパク質の選好的発現を付与する。本発明の核酸はまた、植物の生殖組織における、アンチセンスRNA、または短鎖干渉性RNA(siRNA)といったRNA干渉(RNAi)に関与するRNAの発現を先行的に導くことができ、このことは標的とした遺伝子の発現を阻害または完全に阻止するために有用となりうる。
【0143】
生殖植物組織には、生殖器官の雄性および雌性部分の両方が含まれる。雄性組織には、例えば、花粉、タペータム、葯、花糸、花粉母細胞、小胞子、雄性花粉錐(雄蕊性の錐)および前雄性生殖構造が含まれる。雌性生殖組織には、例えば、柱頭、花柱、子房、大胞子、雌錐(胚珠生成性の錐)および前雌性生殖構造が含まれる。
【0144】
生殖選好的プロモーターとは、植物の生殖組織において選好的に発現されるプロモーターのことを指す。生殖植物組織には、生殖構造の雄性および雌性部分の両方、さらには前雄性および前雌性生殖構造において発現されるプロモーターが含まれる。雄性生殖組織には、例えば、花粉粒、タペータム、葯、花糸、花粉母細胞、小胞子、および花粉錐が含まれる。雌性生殖組織には、例えば、柱頭、花柱、子房、大胞子、および胚珠生成性の錐が含まれる。したがって、生殖選好的プロモーターは、裸子植物種および被子植物種の任意の前雄性または前雌性組織における発現に加えて、任意の被子植物種または裸子植物種の任意の生殖構造において選好的に選好的に発現されうる。
【0145】
1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、雄性生殖組織における遺伝子の発現を付与する。1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、被子植物種の葯、花粉または花糸細胞における遺伝子発現を付与する。さらなる態様において、生殖選好的プロモーターは、タペータムまたは葯表皮細胞における遺伝子発現を付与する。もう1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、雄性花粉錐、タペータム、小胞子葉、または裸子植物に存在する任意のその他の雄性生殖組織における遺伝子発現を付与する。被子植物種および裸子植物種の両方に対して、生殖選好的プロモーターは、前雄性または前雌性生殖構造における遺伝子発現を付与する。
【0146】
生殖選好的プロモーターは、例えば、植物を雄性不稔性にするために用いることができる。例えば、雄性生殖組織における細胞毒性遺伝子の発現によって植物が稔性雄性配偶子を生じることができなくなるように、生殖選好的プロモーターを細胞毒性遺伝子と機能的に結合させることができる。もう1つの態様において、プロモーターが栄養組織などの非生殖組織において機能的に結合した遺伝子を発現しないように、生殖選好的プロモーターを選択して単離することもできる。
【0147】
1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、雌性生殖組織における遺伝子の発現を付与する。1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、被子植物種の柱頭、花柱または子房における遺伝子発現を付与する。もう1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、雌錐(胚珠生成性の錐)、大胞子葉、または裸子植物種に存在する任意のその他の雌性生殖組織における遺伝子発現を付与する。被子植物種および裸子植物種の両方に対して、生殖選好的プロモーターは、前雄性または前雌性生殖構造における遺伝子発現を付与する。
【0148】
生殖選好的プロモーターは、例えば、植物を雌性不稔性にするために用いることができる。1つの態様においては、雌性生殖組織における細胞毒性遺伝子の発現によって植物が稔性雌性配偶子、雌性接合子および/または種子を生じることができなくなるように、生殖選好的プロモーターを細胞毒性遺伝子と機能的に結合させることができる。もう1つの態様において、プロモーターが栄養組織などの非生殖組織において機能的に結合した遺伝子を発現しないように、生殖選好的プロモーターを選択して単離することもできる。
【0149】
例えば、生殖選好的プロモーターは、生殖発育中にのみ存在するmRNAを探索することによって同定することができる。さらに、生殖選好的プロモーターは、前雄性および前雌性生殖組織に存在する可能性もある。1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、例えば葯、花粉、花糸、雄性雄蕊性の錐、および前雄性生殖組織を含む、植物の雄性生殖組織の発育中に存在するmRNAから同定される。1つの態様において、生殖選好的プロモーターは、例えば柱頭、花柱、子房、胚珠生成性の錐、および前雌性生殖組織を含む、植物の雌性生殖組織の発育中に存在するmRNAから同定される。生殖選好的mRNAの同定および単離の後に、この生殖選好的mRNAからcDNAを調製する。その結果得られたcDNAは、生殖選好的mRNAをコードするDNAを含む植物ゲノム中の領域を同定するためのプローブとして用いることができる。ひとたびDNAが同定されれば、生殖選好的プロモーターをコードするDNAの上流(すなわち、5'側)にある配列を単離するとよい。
【0150】
本明細書で用いる場合、プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび/またはその他の転写調節エレメントと結合する核酸、好ましくはDNAを意味するものとする。ほかのプロモーターと同様に、本発明のプロモーター配列は、DNAまたはRNAの転写を促進または制御して、プロモーターと機能的に結合した核酸分子からmRNA分子を生じさせると考えられる。前述したように、生じるRNAはタンパク質もしくはポリペプチドをコードしてもよく、またはRNA干渉性分子もしくはアンチセンス分子をコードしてもよい。本明細書で用いる場合、「機能的に結合した」とは、プロモーター-核酸配列の組み合わせが、核酸配列がRNAセグメントとして転写されるために適切な向きで形成されるような、DNAの化学的な融合、連結または合成のことを指す。本発明のプロモーターは、結果的に得られたmRNA転写物の5'非翻訳領域(5'UTR)の一部またはすべてを含みうる。また一方で、本発明のプロモーターは、5'UTRを必ず有する必要はない。
【0151】
プロモーターは、本明細書で用いる場合、調節エレメントを含んでもよい。その反対に、調節エレメントがプロモーターから分離していてもよい。調節エレメントは、さまざまな重要な特徴をプロモーター領域に付与する。あるエレメントは、機能的に結合した核酸の転写の速度を高める転写因子と結合する。また別のエレメントは、転写活性を阻害するリプレッサーと結合する。プロモーター活性に対する転写因子の総合的な影響により、プロモーター活性が高いか低いか、すなわちプロモーターが「強い」か「弱い」かを判定することができる。調節エレメントと結合する転写因子は、それ自体が、結合した他のタンパク質との相互作用によって、または細胞外刺激に応答した共有結合的修飾、例えばリン酸化によって調節されてもよい。ある種の転写因子の活性は、細胞内代謝産物、または細胞核と連絡する生物にとって外因性である化学物質などのシグナル伝達分子によって修飾される。細胞環境の変化による影響を受けないプロモーターは、構成性プロモーターと呼ばれる。
【0152】
もう1つの態様において、本発明の核酸は、核酸が発現された細胞の代謝、機能、および/または発育を妨害する発現産物をコードする。1つの態様において、本発明の核酸は細胞毒性発現産物をコードする。1つの態様において、本発明の核酸はバルナーゼを含む。さらなる態様において、バルナーゼ活性を上昇および/または低下させるために、バルナーゼを当技術分野で公知の方法によって突然変異させてもよい。1つの態様において、突然変異したバルナーゼは弱められた細胞毒性活性を有しうる。
【0153】
本発明はまた、本発明の単離された核酸分子およびポリペプチドを含むベクターも提供する。1つの態様において、本発明のベクターは、A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)に由来するTiプラスミドである。
【0154】
本発明の構築物を開発する際には、構築物のさまざまな構成要素またはその断片を、都合の良いクローニングベクター中に、例えば、細菌宿主、例えば大腸菌(E. coli)において複製しうるプラスミド中に、通常通りに挿入することが考えられる。文献中に記載された数多くのベクターが存在し、その多くは市販されている。それぞれのクローニングの後に、所望の挿入物を有するクローニングベクターを単離し、所望の配列の構成要素を調整するための、制限消化、新たな断片またはヌクレオチドの挿入、連結、欠失、突然変異、切除といったその後の操作に供することができる。ひとたび構築物が完成したところで、続いて、宿主細胞の形質転換の様式に従ったさらなる操作のために、それを適切なベクター中に移してもよい。
【0155】
本発明の組換えDNA分子は、典型的には、形質転換細胞を非形質転換細胞から容易に同定および選別しうるように、選択用マーカーを含む。このようなマーカーの例には、カナマイシン耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)遺伝子が非限定的に含まれる。Potrykus et al., Mol. Gen. Genet. 199: 183-188 (1985)。nptII遺伝子を発現する細胞は、カナマイシンまたはG418などの適切な抗生物質を用いて選別することができる。その他の一般的に用いられる選択用マーカーには、ビアラホス耐性を付与するbar遺伝子;グリホサート耐性を付与する突然変異型EPSPシンターゼ遺伝子(Hinchee et al., Bio/Technology 6: 915-922 (1988));ブロモキシニルに対する耐性を付与するニトリラーゼ遺伝子(Stalker et al. J. Biol. Chem. 263: 6310-6314 (1988));イミダゾリンまたはスルホニル尿素に対する耐性を付与する突然変異型アセト乳酸シンターゼ遺伝子(ALS)(欧州特許出願第154,204号、1985年);およびメソトレキサート耐性DHFR遺伝子(Thillet et al. J. Biol. Chem. 263: 12500-12508 (1988))が含まれる。
【0156】
さらに、ベクターが、特定の宿主細胞用の複製起点(レプリコン)を含んでもよい。さまざまな原核生物レプリコンが当業者に公知であり、原核宿主細胞における組換え遺伝子の自律複製および維持を導くように機能する。
【0157】
ベクターは、好ましくは選択用マーカーを含むと考えられる。大腸菌、A.ツメファシエンスおよびその他の細菌における培養のための、カナマイシン、グリホサート耐性遺伝子およびテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性を非限定的に含む、トランスフェクトされた植物細胞の選択に用いるためのさまざまな選択用マーカーがある。
【0158】
微粒子射入法を用いた単子葉植物への本発明の核酸の導入のために適したプラスミドベクターは、以下のものから構成される:選択したプロモーター;遺伝子の発現を促進するためのスプライス部位を与えるイントロン、例えばHsp70イントロン(PCT公報第WO 93/19189号)など;および、ノパリンシンターゼ3'配列(NOS 3')などの3'ポリアデニル化配列。Fraley et al. Proc Natl Acad Sci USA 80: 4803-4807 (1983)。この発現カセットを、DNAの大量生産のために適した高コピー数のレプリコン上に集めることもできる。
【0159】
双子葉植物の形質転換に用いるのに特に有用な、アグロバクテリウムを基にした植物形質転換ベクターは、プラスミドベクターpMON530である(Rogers et al. (1987) Improved vectors for plant transformation: expression cassette vectors and new selectable markers. In Methods in Enzymology. Edited by R. Wu and L. Grossman. p253-277. San Diego: Academic Press)。プラスミドpMON530は、pMON316の2.3kbのStuI-HindIII断片をpMON526に移入することによって調製されたpMON505の派生物である(Rogers et al. (1987) Improved vectors for plant transformation: expression cassette vectors and new selectable markers. In Methods in Enzymology. Edited by R. Wu and L. Grossman. p253-277. San Diego: Academic Press)。プラスミドpMON526は、XmaIによる消化、クレノウポリメラーゼによる処理および連結によってSmaI部位が取り除かれた、pMON505の単純な派生物である。プラスミドpMON530は、pMON505およびCaMV35S-NOS発現カセットのすべての特色を保っており、さらにプロモーターとポリアデニル化シグナルとの間にSmaI用の一意的な切断部位も含む。
【0160】
バイナリーベクターpMON505は、Tiプラスミド相同領域であるLIHが、ミニRK2プラスミドpTJS75(Schmidhauser and Helinski. J. Bacteriol. 164-155 (1985)の3.8kbのHindIII〜Smalセグメントによって置換された、pMON200(Rogers et al., 1987)の派生物である。このセグメントは、三親交配手順手順(Horsch and Klee Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4428-4432 (1986)を用いたアグロバクテリウムへの接合のために、RK2の複製起点oriVおよび移入起点oriTを含む。プラスミドpMON505は、所望のDNA断片の挿入のための合成性マルチリンカー、植物細胞におけるカナマイシン耐性のためのキメラ性NOS/NPTII'/NOS遺伝子、大腸菌およびA.ツメファシエンスにおける選択のためのスペクチノマイシン/ストレプトマイシン耐性決定因子、形質転換体の容易なスコア化および子孫における遺伝のための無傷のノパリンシンターゼ遺伝子、ならびに大腸菌における大量のベクターの生産を容易にするためのpBR322複製起点を含め、pMON200の重要な特色のすべてを保っている。プラスミドpMON505は、pTiT37ノパリン型T-DNAの右端に由来する単一のT-DNA境界を含む。サザンブロット分析により、プラスミドpMON505およびそれが運ぶ任意のDNAが植物ゲノム中に組み込まれること、すなわちプラスミド全体が植物ゲノム中に挿入されるT-DNAであることが示されている。組み込まれたDNAの一方の端は右境界配列とノパリンシンターゼ遺伝子との間に位置し、もう一方の端は境界配列とpBR322配列との間に位置する。
【0161】
もう1つの特に有用なTiプラスミドカセットベクターはpMON17227である。このベクターは、PCT公報第WO 92/04449号に記載されており、ジャガイモおよびトマトを含む多くの植物にとって優れた選択マーカー遺伝子である、グリホサート耐性を付与する酵素(CP4と命名されている)をコードする遺伝子を含む。この遺伝子をシロイヌナズナEPSPS葉緑体移行ペプチド(CTP2)と融合させ、発現を選択したプロモーターによって作動させる。
【0162】
翻訳されたタンパク質の小胞体内腔、細胞周辺腔または細胞外環境への分泌のために、発現されるポリペプチドに適切な分泌シグナルを組み入れることができる。シグナルはポリペプチドにとって内因性でもよく、またはそれらが異種シグナルであってもよい。
【0163】
1つの態様において、本発明のベクターは、本明細書に記載された核酸が、関心対象のポリペプチドをコードするDNAと機能的に結合した組織特異的プロモーターであるような様式で設計される。もう1つの態様において、関心対象のポリペプチドは、生殖発育のある局面または生殖発育の調節に関与するタンパク質である。生殖発育に関与するタンパク質の多くをコードするポリヌクレオチドには、AGAMOUS(AG)、APETALA1(AP1)、APETAL3(AP3)、PISTILLATA(PI)、LEAFY(LFY)およびLEUNIG(LUG)が非限定的に含まれる。
【0164】
もう1つの態様において、プロモーターと機能的に結合したコード配列が、生殖発育に関与するタンパク質の発現または活性を阻害する遺伝子産物をコードしてもよい。例えば、発育中の花粉粒を取り囲むカロース細胞壁を消化する酵素カラーゼをコードする遺伝子を、タペータム選好的プロモーターと機能的に結合させて、花粉成熟の前に発現させ、それによって花粉発育を妨害することが可能と考えられる。
【0165】
もう1つの態様において、プロモーターと機能的に結合したコード配列が、細胞毒性遺伝子産物をコードしてもよい。例えば、バルナーゼをコードする遺伝子を生殖選好的プロモーターと機能的に結合させ、生殖組織において発現させることができる。さらなる態様において、標準的な分子生物学の方法を、バルナーゼ活性を突然変異させるために用いることもできる。1つの態様において、突然変異したバルナーゼは、野生型バルナーゼタンパク質と比較してRNアーゼ活性が低下している。さらなる態様においては、RNアーゼ活性が低下した突然変異したバルナーゼを、生殖選好的プロモーターと機能的に結合させ、生殖組織において発現させることができる。さらなる態様において、RNアーゼ活性が低下した突然変異したバルナーゼの生殖組織における発現は、栄養生長および発育を損なわない。
【0166】
さらなる態様において、本発明のベクターは、本発明の核酸が、関心対象のポリペプチドをコードする遺伝子に対応するアンチセンスRNAまたは干渉性RNAをコードする核酸と機能的に結合され、標的とした遺伝子産物の発現低下をもたらすように設計される。1つの態様において、抑制のための標的とされる遺伝子産物は、生殖発育に関与するタンパク質である。遺伝子発現のRNAi阻害の使用法は、Paddison et al., Genes & Dev. 16: 948-958(2002)に全般的に記載され、植物における遺伝子発現を阻害するためのRNAiの使用法はWO 99/61631号に具体的に記載されており、これらは両方とも参照として本明細書に組み入れられる。
【0167】
特定の植物遺伝子の発現を低下または阻害するためのアンチセンス技術の使用法は、例えば欧州特許公報第271,988号に記載されている。遺伝子発現の低下は、例えば、赤い果実ではなく黄色い果実の生産につながるトマト果実におけるリコピン合成の欠乏といったような肉眼的な表現型の違いのレベル、または例えば、ポリガラクツロナーゼの量の変化およびトマト果実成熟過程でのペクチンの脱重合の減少というようなより微細な生化学的レベルで、植物の表現型の変化を招いている。Smith et al., Nature, 334: 724-726 (1988)。Smith et. al., Plant Mol. Biol., 14: 369-379 (1990)。このように、アンチセンスRNAは、植物における遺伝子発現の低下を実点するために有用であることが示されている。
【0168】
本発明の植物を作製する方法の1つの態様においては、植物内部で転写されてアンチセンスRNA転写物を生じうる外因性DNAを、植物内に、例えば植物細胞内に導入する。この外因性DNAは、例えば、遺伝子配列の向きをそのプロモーターに対して反転させることによって調製することができる。植物細胞における外因性DNAの転写は、その遺伝子に対して「アンチセンス」性である細胞内RNA転写物を生じさせる。
【0169】
本発明はまた、本発明のベクターを含む宿主細胞も提供する。本明細書で用いる場合、宿主細胞とは、コード性産物が最終的に発現される細胞のことを指す。したがって、宿主細胞は、個々の細胞、細胞培養物、または生物の一部としての細胞でありうる。宿主細胞はまた、胚、内乳、精子もしくは卵細胞、または受精卵の一部でももありうる。
【0170】
本発明のベクターは、組換えベクターDNAを標的宿主細胞に導入するための当技術分野で公知の標準的な手順によって宿主細胞に導入される。このような手順には、トランスフェクション、感染、形質転換、自然な取込み、電気泳動、遺伝子銃およびアグロバクテリウムが非限定的に含まれる。外来性遺伝子を植物に導入するための方法は当技術分野で公知であり、本発明の遺伝子構築物を植物宿主に導入するために用いることができ、これには生物学的および物理的な植物形質転換プロトコールが含まれる。例えば、Miki et al., 1993,「Procedure for Introducing Foreign DNA Into Plants」In: Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick and Thompson, eds., CRC Press, Inc., Boca Raton, pages 67-88を参照のこと。選択される方法は宿主植物によって異なり、これにはリン酸カルシウムなどの化学的トランスフェクション法、アグロバクテリウムなどの微生物を介した遺伝子導入(Horsch et al., Science 227: 1229-31, (1985))、電気泳動、微量注入法および微粒子射入法が含まれる。
【0171】
したがって、本発明はまた、本発明のベクターを含む植物または植物細胞も提供する。1つの態様において、植物は被子植物または裸子植物である。もう1つの態様において、植物は、ユーカリ属およびその雑種ならびにマツ属の種より選択される。または、植物を、バンクスマツ(Pinus banksiana)、トルコアカマツ(Pinus brutia)、カリビアマツ(Pinus caribaea)、パイナス・クラスサ(Pinus clasusa)、ロッジポールマツ(Pinus contorta)、オオミマツ(Pinus coulteri)、エキナタマツ(Pinus echinata)、パイナス・エルダリカ(Pinus eldarica)、スラッシュマツ(Pinus ellioti)、ジェフリーマツ(Pinus jeffreyi)、サトウマツ(Pinus lambertiana)、タイワンアカマツ(Pinus massoniana)、モンチコラマツ(Pinus monticola)、ヨーロッパクロマツ(Pinus nigra)、ダイオウマツ(Pinus palustrus)、フランスカイガンショウ(pinus pinaster)、ポンデローザマツ(Pinus ponderosa)、ラジアータマツ(Pinus radiata)、レジノサマツ(Pinus resinosa)、リギダマツ(Pinus rigida)、パイナス・セロティナ(Pinus serotina)、ストローブマツ(Pinus strobus)、ヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)、テーダマツ(Pinus taeda)、バージアナマツ(Pinus virginiana)、アマビリスモミ(Abies amabilis)、フラセリーモミ(Abies balsamea)、コロラドモミ(Abies concolor)、アメリカオオモミ(Abies grandis)、アルプスモミ(Abies lasiocarpa)、カリフォルニアアカモミ(Abies magnifica)、ノーブルモミ(Abies procera)、ローソンヒノキ(Chamaecyparis lawsoniona)、アラスカヒノキ(Chamaecyparis nootkatensis)、ヌマヒノキ(Chamaecyparis thyoides)、エンピツビャクシン(Juniperus virginiana)、ヨーロッパカラマツ(Larix decidua)、アメリカカラマツ(Larix laricina)、カラマツ(Larix leptolepis)、ニシカラマツ(Larix occidentalis)、シベリアアカマツ(Larix siberica)、インセンスシダー(Libocedrus decurrens)、ドイツトウヒ(Picea abies)、エンゲルマンスプルース(Picea engelmanni)、カナダトウヒ(Picea glauca)、クロトウヒ(Picea mariana)、アオトウヒ(Picea pungens)、アカトウヒ(Picea rubens)、シトカトウヒ(Picea sitchensis)、ベイマツ(Pseudotsuga menziesii)、ジャイアントセコイア(Sequoia gigantea)、センペルセコイア(Sequoia sempervirens)、ラクウショウ(Taxodium distichum)、カナダツガ(Tsuga canadensis)、アメリカツガ(Tsuga heterophylla)、ベイツガ(Tsuga mertensiana)、ニオイヒバ(Thuja occidentalis)、ベイスギ(Thuja plicata)、ポプラガム(Eucalyptus alba)、ユーカリプタス・バンクロフティ−(Eucalyptus bancroftii)、ボトロイデスユーカリ(Eucalyptus botryoides)、アップルユーカリ(Eucalyptus bridgesiana)、カロフィラユーカリ(Eucalyptus calophylla)、ユーカリプタス・カマルドゥレンシス(Eucalyptus camaldulensis)、レモンユーカリ(Eucalyptus citriodora)、オーストラリアシュガーガム(Eucalyptus cladocalyx)、ペパーミントユーカリ(Eucalyptus coccifera)、ユーカリプタス・カーティシー(Eucalyptus curtisii)、ユーカリプツス・ダルリンプレアナ(Eucalyptus dalrympleana)、カメレレ(Eucalyptus deglupta)、デレゲートユーカリ(Eucalyptus delagatensis)、カリ(Eucalyptus diversicolor)、ユーカリプタス・ダンニ(Eucalyptus dunnii)、アカバナユーカリ(Eucalyptus ficifolia)、グランディスユーカリ(Eucalyptus grandis)、ユーカリノキ(Eucalyptus globulus)、ゴムフォセファラユーカリ(Eucalyptus gomphocephala)、マルバユーカリ(Eucalyptus gunnii)、スポッテッドガム(Eucalyptus henryi)、ユーカリプタス・レボピニア(Eucalyptus laevopinea)、ユーカリプタス・マカースリー(Eucalyptus macarthurii)、ユーカリプタス・マクロリンチャ(Eucalyptus macrorhyncha)、ユーカリプタス・マキュラータ(Eucalyptus maculata)、ジャラ(Eucalyptus marginata)、ユーカリプタス・メガカルパ(Eucalyptus megacarpa)、ユーカリプタス・メリオドラ(Eucalyptus melliodora)、ユーカリプタス・ニコリー(Eucalyptus nicholii)、ユーカリプタス・ナイテンス(Eucalyptus nitens)、ユーカリプタス・ノバアンジェリカ(Eucalyptus nova-angelica)、ユーカリプタス・オブリクア(Eucalyptus obliqua)、ユーカリプタス・オクシデンタリス(Eucalyptus occidentalis)、ユーカリプタス・オブツシフローラ(Eucalyptus obtusiflora)、ユーカリプタス・オレアデス(Eucalyptus oreades)、ユーカリプタス・パウチフローラ(Eucalyptus pauciflora)、ユーカリプタス・ポリブラクテア(Eucalyptus polybractea)、ユーカリプタス・レグナンス(Eucalyptus regnans)、ユーカリプタス・レジニフェラ(Eucalyptus resinifera)、ユーカリプタス・ロブスタ(Eucalyptus robusta)、ユーカリプタス・ルディス(Eucalyptus rudis)、ユーカリプタス・サリグナ(Eucalyptus saligna)、ユーカリプタス・シデロキシロン(Eucalyptus sideroxylon)、ユーカリプタス・スチュアーティアナ(Eucalyptus stuartiana)、ユーカリプタス・テレチコルニス(Eucalyptus tereticornis)、ユーカリプタス・トレリアナ(Eucalyptus torelliana)、ユーカリプタス・ウルニゲラ(Eucalyptus urnigera)、ウロフィラユーカリ(Eucalyptus urophylla)、ビミナリスユーカリ(Eucalyptus viminalis)、ユーカリプタス・ビリディス(Eucalyptus viridis)、ユーカリプタス・ワンドゥー(Eucalyptus wandoo)およびユーカリプタス・ヨウマニ(Eucalyptus youmanni)より選択することもできる。特に、トランスジェニック植物は、グランディスユーカリ、ラジアータマツ、テーダマツL(ロブロリーパイン)、クロポプラ(Populus nigra)、ハコヤナギ(Populus deltoides)、チーク(Tectona grandis)、またはアカシア・マンギューム(Acacia mangium)種であってもよい。
【0172】
「植物」という用語は、植物の普通の意味の範囲を超えて、植物の果実、種子、花、球果なども意味するものとする。本発明の植物は、ベクターがアグロバクテリウムなどによって植物内に直接導入されたことを意味する直接的なトランスフェクト体であってもよく、または植物がトランスフェクトされた植物の子孫であってもよい。第二世代またはその後の世代の植物は、有性生殖、すなわち受精によって作製されたものでもそうでないものでもよい。さらに、植物は配偶体(半数体期)または胞子体(二倍体期)でもありうる。
【0173】
本発明はまた、植物における生殖発育を制御するための方法であって、本発明のベクターを含む植物または種子を栽培する段階を含む方法も提供する。本発明の植物または種子の生長または発芽を誘導または持続させるために適切な栽培は種特異的であり、当技術分野の通常の技能レベルの範囲内にある。栽培のための場は、植物または種子の生長または発芽を助長するいかなる場所でもよい。さらに、栽培は、これには限定されないが、胚発生を誘導しうるストレス処理(例えば、窒素欠乏、熱ショック、低温、スクロース欠乏)を与えることといった段階を含むこともできる。
【0174】
本発明はさらに、転写因子と結合して、組織選好的または組織特異的な発現を調節することができる、単離された調節エレメントも提供する。調節エレメントによって付与される調節の程度は、転写因子がなければ転写が検出不能であることを意味する、完全なものであってもよく、または転写が転写因子の存在下で強化されることを意味する、部分的なものであってもよい。1つの態様において、少なくとも1つの調節エレメントは、複合的プロモーターを与えるために、異種プロモーターと機能的に結合される。この複合的プロモーターは生殖組織において選好的または特異的に発現される。本明細書で用いる場合、異種プロモーターとは、調節エレメントに関連した意味の語句である。調節エレメントおよびプロモーターが自然な状況下で互いに会合しないのであれば、そのプロモーターは調節エレメントに対して異種であると考えられる。典型的には、プロモーター領域内部での調節エレメントの厳密な向きはその活性に影響を及ぼさないと考えられる。さらに、調節エレメントは、異種プロモーター領域に挿入された場合にも正常に機能しうる。このため、例えば、生殖選好的調節エレメントをそれらの内因性プロモーターから取り出して、生殖特異性または選好性を付与するために異種プロモーター領域に挿入することができる。異種プロモーターは、例えば、最小CaMV 35Sプロモーターであってよい。最小プロモーターに対する修飾のために適した、植物細胞における発現を導くプロモーターには、カリフラワーウイルス(CaMV)35Sプロモーター(Jefferson et al., EMBO J., 6: 3901-07 (1987))、イネアクチンプロモーター(McElroy et al., Plant Cell, 2: 163-71 (1990))、トウモロコシユビキチン-1プロモーター(Christensen et al., Transgenic Research, 5: 213-18 (1996))およびノパリンシンターゼプロモーター(Kononowics et al., Plant Cell 4: 17-27 (1992))が含まれる。
【0175】
本発明の核酸を調製するために、ゲノムを離散的断片へと消化するための種々の制限エンドヌクレアーゼを用いて、ラジアータマツおよびテーダマツからゲノムライブラリーを作製した。組織選択的プロモーターを得ることが望ましい任意の植物種から、ゲノムライブラリーを同様に構築することができる。これらのこれらのゲノム配列のそれぞれに対して、Clontech社により、そのGenome Walker(商標)システム(Clontech, Palo Alto, CA)を用いるために提供されている手順に従って、アダプターを連結した。続いて、プロモーター配列を、アダプター特異的プライマーおよび「遺伝子特異的プライマー」を用いてPCR増幅した。または、このPCR増幅の段階を、任意には、長さが長くバックグラウンドが最小限である反応産物を得るために、本明細書に参照として組み入れられる米国特許第5,565,340号および第5,759,822号に記載された方法によって実施することもできる。この一般的なPCR増幅法を用いると、本発明のプロモーターの同定および組織選択的プロモーターとしてのその同定は、「遺伝子特異的プライマー」の選択によって左右される。
【0176】
遺伝子特異的プライマーとは、関心対象の組織において高レベルで発現される、任意の転写された配列のことである。本発明において、遺伝子特異的プライマーは、生殖組織において高レベルで発現されるmRNAの断片であるか、またはそれに対して相補的である。1つの態様において、遺伝子特異的プライマーは、特定の型の生殖組織において特異的に発現されることが知られている遺伝子に対するその相同性によって選択される。特に関心が持たれる遺伝子は、特定の生殖組織において高レベルで発現されるものであり、これは典型的には、対応するプロモーターの生殖選好的活性の指標となる。
【0177】
発現配列タグ(EST)は、遺伝子特異的プライマーのもう1つの源となる。ESTは、所定のライブラリーに存在する対応するmRNAのcDNA断片である。任意の植物ESTデータベースを電子的に検索して、所望の型の組織において特異的に発現されることが知られている遺伝子のセグメントに対する同一性を有するESTを見いだすことができる(「インシリコスクリーニング」)。このため、これらのESTにより、所定のゲノムライブラリーにおける対応する遺伝子のプロモーターの増幅用の遺伝子特異的プライマーが得られる。増幅される遺伝子プロモーターは、ESTデータベースが得られたものと同じ種からのものである必要はない。必要なのは、ESTが、遺伝子の標的セグメントのPCR増幅用のプライマーとして作用する程度に、関心対象の遺伝子プロモーターに対して十分な配列類似性を有することのみである。
【0178】
組織特異的プロモーターを同定するための1つの代替的な方法は、1つの型の組織で発現されるが別のものでは発現されないmRNAの検出に基礎を置いており、このことはそれらが組織特異的プロモーターから転写されることを意味する。mRNAの集団を、これに基づいて、例えばサブトラクティブハイブリダイゼーションによって識別することができる。このような適したサブトラクティブハイブリダイゼーション法の1つは、Clontech社によって記載されているPCR-Select(商標)である。
【0179】
または、組織特異的mRNAの分布を、放射標識プローブを用いた、植物組織の薄切片のインサイチューハイブリダイゼーションによって判定することもできる。続いて、特定の型の組織を放射性に染色するプローブを用いて、下記の方法を用いたゲノムライブラリーのサザン分析により、mRNAに付随するプロモーターを検出する。前記の手法はすべて、関心対象の組織からの、この場合には生殖組織からの、mRNAライブラリーの調製を必要とする。cDNAライブラリーを、木本植物種から単離された生殖組織から作製することもできる。例えば、ラジアータマツおよびテーダマツから雄性および雌性の芽を単離した。手短に述べると、標準的な手法を用いて全RNAを単離し、続いてポリ(A)RNAを単離し、逆転写させて、生殖選好的組織cDNAライブラリーを構築する。Strategene社のcDNA合成キットおよびGigapakII Gold(商標)パッケージングキットを用いて、cDNAライブラリーをλZAP-XRベクター中に構築することもできる。続いて、遺伝子特異的プローブ、およびプロモーターの5'末端にある配列を認識するプライマーを用いるPCRにより、生殖特異的プロモーターを、このようなcDNAライブラリーから単離することができる。遺伝子特異的プローブは、上記のインシリコアプローチによって、またはmRNAの配列(知られていれば)に基づく特異的プローブを設計することによって、得ることができる。さらに、所望の標的遺伝子の5'UTRに対して相補的なプライマーを合成することもできる。または、コードされるタンパク質の部分的アミノ酸配列から、プライマーを、いわゆる縮重プライマーとして設計することもできる。
【0180】
関心対象のプロモーターの単離の後に、その組織特異的発現パターンおよびプロモーター強度を特徴づけるために、さまざまな方法を用いることができる。一般的に用いられる1つの方法は、プロモーターを、容易にアッセイしうるレポーター遺伝子と機能的に結合させることである。例えば、生殖選好的プロモーターは、β-グルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子と機能的に結合されている。Lacombe et al., Plant J. 23: 663-76(2000)。適した発現構築物は周知の方法を用いて作製することができる。
【0181】
植物の形質転換は、米国特許第6,051,757号に記載されているようなアグロバクテリウムを介した形質転換を含む、多くの適した手法のうち任意の1つによって行うことができる。樹木を形質転換するためのその他の方法は、裸子植物体細胞胚の加速粒子による形質転換方法を開示している米国特許第5,681,730号に例示されているように、当技術分野で公知である。その他の形質転換方法には、微粒子射入法(Klein et al., Biotechnology 6: 559-63 (1988))、電気泳動(Dhalluin et al., Plant Cell 4: 1495-1505 (1992))およびポリエチレングリコール処理(Golovkin et al., Plant Sci. 90: 41-52 (1993))が含まれる。さらに、米国特許第6,187,994号は、植物ゲノム内部の特定の選択された部位への、発現構築物のリコンビナーゼ補助による挿入を開示している。前記の特許および刊行物はすべて、参照として本明細書に組み入れられる。
【0182】
本発明のDNA分子は、任意の適した方法によって植物のゲノム中に挿入することができる。適した植物形質転換ベクターには、アグロバクテリウム-ツメファシエンスのTiプラスミドに由来するもの、ならびに例えば、Herrera-Estrella et al. Nature 303: 209 (1983)、Bevan Nucleic Acids Res. 12(22): 8711-8721 (1984)、Klee et al. Bio/Technology 3(7):637-642 (1985)および欧州特許公報第120,516号に記載されたものが含まれる。アグロバクテリウムのTiプラスミドまたは根誘導(Ri)プラスミドに由来する植物形質転換ベクターに加えて、本発明のDNA構築物を植物細胞に挿入するために代替的な方法を用いることもできる。このような方法には、例えば、リポソームの使用、電気泳動法、遊離DNA取込みを増加させる化学物質、微粒子射入法による遊離DNA送達、およびウイルスまたは花粉を用いた形質転換が含まれうる。DNAを葉緑体ゲノムに挿入することもできる(Daniell et al. Nature Biotechnology 16: 345-348 (1998))。
【0183】
関心対象の核酸を含む十分な数の細胞(またはプロトプラスト)が得られる場合には、細胞(またはプロトプラスト)を再生させて全植物体とする。再生のための方法の選択は決定的に重要ではないが、マメ科(アルファルファ、ダイズ、クローバーなど)、セリ科(ニンジン、セロリ、パースニップ)、アブラナ科(キャベツ、ダイコン、カノーラ/ナタネ種子など)、ウリ科(メロンおよびキュウリ)、イネ科(コムギ、オオムギ、イネ、トウモロコシなど)、ナス科(ジャガイモ、タバコ、トマト、コショウ)、種々の生殖性作物、例えばヒマワリなど、およびナッツが結実する樹木、例えばアーモンド、カシューナット、クルミの木およびペカンなどからの宿主に対しては、適したプロトコールを利用することができる。例えば、Ammirato et al. (1984) Handbook of Plant Cell Culture-Crop Species. Macmillan Publ. Co.; Fromm, M., (1990) UCLA Symposium on Molecular Strategies for Crop Improvement, Apr. 16-22, 1990. Keystone, CO.;Vasil et al. Bio/Technology 8: 429-434 (1990);Vasil et al. Bio/Technology 10: 667-674 (1992);Hayashimoto et al. Plant Physiol. 93: 857-863 (1990);およびDatta et al.(1990)を参照のこと。
【0184】
プロモーターおよびレポーター遺伝子を含むベクターは、ベクターによって首尾良く形質転換された植物細胞を選択するための機構を含み、これは例えばカナマイシン耐性であってよい。形質転換体におけるGUS遺伝子の存在は、GUS特異的PCRプライマー(Clontech, Palo Alto)を用いたPCRアプローチによって確かめることができる。形質転換植物細胞の子孫におけるカナマイシン耐性の分離(segregation)をサザン分析と組み合わせて利用して、安定的に挿入されたベクターを有する座位の数を決定することができる。続いて、プロモーター発現の時間的および空間的なパターンを、Jefferson et al., EMBO J. 6: 3901-07 (1987)に記載されたように、レポーター遺伝子発現の定量化によって推測する。一般に、GUS発現は、まず90%アセトン中で固定し、続いてGUS基質である5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-d-グルクロン酸(X-Gluc)を含む緩衝液中に置いた植物組織の薄切片において組織化学的に決定される。GUS発現産物の存在は、X-Glucによる比色反応によって示される。
【0185】
生殖特異的発現は、例えば、生殖組織において転写因子と特異的に結合する調節エレメントの存在によって付与しうる。生殖特異的調節エレメントと生殖選好的転写因子との相互作用は、調節エレメントの塩基対のサブセットと転写因子のアミノ酸残基とのアラインメントに依存する。同様に、タペータム特異的発現は、例えば、タペータム組織において転写因子と特異的に結合する調節エレメントの存在によって付与しうる。結合した転写因子と相互作用しない塩基対を、調節エレメントが組織特異的転写因子と特異的に結合する全体的な能力を維持しながら、他の塩基対と置換してもよい。
【0186】
ひとたびプロモーターが組織選好的または特異的なものとして同定されたならば、組織選好的または組織特異的プロモーター活性に影響を及ぼす調節エレメントの同定および特性決定のために、さまざまな方法を用いることができる。1つの方法では、プロモーター領域を5'末端で逐次的に短縮していき、一連の短縮型プロモーターをそれぞれ、レポーター遺伝子と機能的に結合させる。調節エレメントが欠失している場合には、レポーター遺伝子の組織特異的発現の損失によってプロモーター活性に対する影響を推測することができる。または、調節エレメントと推定されるものが組織特異的発現を付与するか否かを確かめるために、調節エレメントと推定されるものを、CaMV 35S最小プロモーター(Keller et al., Plant Mol. Biol. 26: 747-56)などの最小プロモーターを含む発現構築物中に挿入することもできる。最小プロモーターは、RNAポリメラーゼ結合部位のように、プロモーター活性のために絶対的に必要なエレメントのみを含む。調節エレメントと推定されるものを解明するためのそのほかの例は、1-フェニル-アラニンアンモニアリアーゼ(PAL)および4-クマラートCoAリガーゼ(4CL)をコードする遺伝子の転写を協調的に調節する組織特異的調節エレメントの試験によって得られる。Hatton et al., Plant J. 7: 859-76 (1995);Leyva et al., Plant Cell 4: 263-71 (1992);Hauffe et al., Plant J. 4: 235-53 (1993);Neustaedter et al., Plant J. 18: 77-88 (1999)、これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる。
【0187】
本発明のプロモーターの機能的変異体または断片
本発明のプロモーターのそのほかの変異体または断片には、配列全体にわたって散在する修飾を有するものがある。機能的変異体または断片とは、本明細書で用いる場合、参照核酸に対して少なくとも約70%同一な核酸配列を有するが、それでもなおコードする産物の組織特異的発現を付与する核酸のことである。機能的変異体の組織特異性または選好性は、参照核酸と同じ組織に対するものでなければならない。しかし、機能的変異体が、参照核酸ほど選好的でも特異的でもない場合でも、変異体はなお本明細書で用いる機能的変異体と考えられる。1つの態様において、機能的変異体または断片の配列は、参照核酸に対して少なくとも約75%同一である。また別の態様において、機能的変異体または断片の配列は、少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。
【0188】
機能的変異体を生じうる修飾は、5'末端からの残基の逐次的欠失により、または3'末端からの5'UTR配列の欠失によって作製することができる。または、内部残基を修飾することもできる。プロモーター領域の機能に影響を及ぼさない修飾は、転写因子の結合に影響を及ぼさないものである可能性が非常に高い。本発明が含む修飾には、本発明のプロモーターの対立遺伝子変異体の形態で天然に存在するものも含まれる。
【0189】
本発明の核酸の作製方法
本発明の核酸は、周知の合成手法、標準的な組換え方法、精製法またはそれらの組み合わせを用いることによって得ることができる。例えば、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、固相ホスホルアミダイトトリエステル法(Beaucage et al., Tetra. Letts. 22: 1859-1862 (1981))、自動合成装置(Van Devanter et al., Nucleic Acids Res. 12: 6159-6168 (1984))または米国特許第4,458,066号の固体支持物による方法を用いる直接的な化学合成によって調製することができる。化学合成では一般に一本鎖オリゴヌクレオチドが生成され、相補的配列を用いたハイブリダイゼーションによって、またはその一本鎖をテンプレートとして用いる重合によって、それを二本鎖オリゴヌクレオチドに変換することができる。また、短い配列の連結によって長い配列を得ることもできる。
【0190】
または、本発明の核酸を、相互プライミング性オリゴヌクレオチドを用いる組換え方法によって得ることもできる。例えば、Ausubel et al.,(eds.), Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons, Inc. 1990)を参照のこと。また、Wosnick et al., Gene 60: 115 (1987);およびAusubel et al.(eds.), Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed.,(John Wiley & Sons, Inc. 1995)も参照されたい。ポリメラーゼ連鎖反応を用いる確立された手法により、ポリヌクレオチドs長さが少なくとも2キロベースであるポリヌクレオチドを合成することができる。Adang et al., Plant Mol. Biol. 21: 1131 (1993);Bambot et al., PCR Methods and Applications 2: 266 (1993);Dillon et al.,「Use of Polymerase Chain Reaction for the Rapid Construction of Synthetic Genes」in Methods In Molecular Biology, Vol. 15: PCR Protocols: Current Methods And Applications, White(ed.), pages 263-268,(Humana Press, Inc. 1993);Holowachuk et al., PCR Methods Appl. 4: 299 (1995)。
【0191】
本発明の核酸の使用法
本発明の核酸は、植物の特徴を改変するために有用である。核酸を、生殖組織に認められる分子のレベルを上昇させるために、関心対象の遺伝子と機能的に結合させることができる。または、関心対象の遺伝子が生殖発育を阻害し、それによって植物に不稔性を付与してもよい。
【0192】
操作されるこのような発現の主な標的の1つは生殖発育である。上述した理由から、遺伝的除去を通じて実現される生殖発育の調節にはかなりの関心が持たれる。例えば、タペータム選好的プロモーターの制御下にある細胞毒性バルナーゼ分子が、生殖発育を制御するために用いられている。欧州特許公報第344,029号。
【0193】
例えば、RNアーゼ活性が低下した突然変異型バルナーゼ遺伝子を、生殖発育を調節するために用いることができる。1つの態様においては、バルナーゼ遺伝子の発現が栄養組織に対してはほとんどまたは全く障害を及ぼさず、それでもなお突然変異型バルナーゼが生殖性除去のために妥当なRNアーゼ活性をもたらすように、突然変異型バルナーゼ遺伝子をプロモーターと機能的に結合させることができる。
【0194】
このように全般的に説明してきた本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されると考えられるが、それらは例示として提示されるものであり、本発明を限定することは意図していない。
【0195】
実施例
実施例1
生殖選好的プロモーターの単離
生殖選好的植物プロモーターは、ゲノムライブラリーおよびcDNAライブラリーから単離することができる。生殖選好的プロモーターの配列をプローブとして用いて、生殖選好的プロモーター配列と推定されるものを単離することができる。例えば、ラジアータマツ由来のAGAMOUS(AG)プロモーターを、別の生殖選好的プロモーター配列を同定するためのプローブとして用いることができる。
【0196】
例として、ゲノムDNAを、ロブロリーパインからの雄性芽から単離した。雄性芽DNAの単離の後に、ラジアータマツAG1配列を、単離された雄性芽ゲノムDNAのスクリーニングのためのプローブとして用いた。PCRに基づくスクリーニングアプローチを用いて、LPAG1(SEQ ID NO:1)およびLPAG2(SEQ ID NO:2)と命名されている、ロブロリーパインAGプロモーター配列と推定される2つのものを単離した。クローニングされたそれぞれのLPAGプロモーターは、5'非翻訳領域の600bpを含めて約1400bpであり、これはLPAG1遺伝子またはLPAG2遺伝子の139bpの第1イントロンを含む。
【0197】
これらのプロモーターは、「Genome Walker」キット(Clontech, Palo Alto, CA)を用いてクローニングした。これはPCRに基づく方法であり、4種のPCRプライマーを構築する必要があってそのうち2つは遺伝子特異的でなければならない。遺伝子特異的プライマーは一般に、遺伝子の5'UTRの内部にあるように設計される。断片を増幅し、続いて、T尾部を有するベクター中に、GUSレポーター遺伝子の前に来るようにクローニングする。
【0198】
実施例2
プロモーターの組織特異性を判定するための方法
実施例1に記載された通りのプロモーターの同定およびクローニングの後に、プロモーターが活性を有する組織の型を決定するために、プロモーターをレポーター遺伝子と機能的に結合させる。この目的のために、本発明のプロモーターを含む構築物を、電気泳動により、アグロバクテリウム-ツメファシエンス中に形質転換導入する。手短に述べると、40μlの希釈AgL-1コンピテント細胞を氷上に置き、プロモーター配列を含む約10ngのpART27ベクターと接触させる。電気泳動は以下のパラメーターの下で行う:
抵抗=129ohm
荷電電圧=1.44kV
電場強度=14.4kV/cm
パルス持続時間=5.0ms
【0199】
電気泳動の後に、400μlのYEP液体培地を添加し、細胞を室温に1時間おいて回復させる。続いて細胞を6000rpmで3分間遠心し、〜50μlのYEP中に再懸濁させる。細胞試料をYEP Kan50/Rif50プレートの表面に播き拡げ、パラフィルムで密封して、コロニー増殖のために29℃で2日間インキュベートする。
【0200】
タバコ(Nicotiana tabacum)植物体に対して、アグロバクテリウムを介した葉組織の形質転換により、関心対象の構築物を用いた形質転換を行う(Burow et al., Plant Mol. Biol. Rep. 8: 124-139, 1990)。
【0201】
続いて、首尾良く形質転換された植物を、機能的に結合したレポーター遺伝子の発現に関してアッセイする。葉、茎、根および生殖領域を、染色溶液(50mM NaPO4、pH 7.2、0.5%Triton X-100、1mM X-グルクロニド、シクロヘキシミド塩(Ducheffa)中に浸漬する。組織に染色溶液を浸透させるために減圧処理を5分間ずつ2回適用する。続いて組織を発色のために37℃で一晩振盪しておく。着色を検査するために3つまたは4つの時点で組織を検査し、試料が早期発色を示しているならば、組織片を70%エタノール中で脱色する。
【0202】
GUSの局在は、表1に示されているように、開示される単離されたヌクレオチド配列が、タペータムなどの生殖組織において選好的にレポーター遺伝子の発現を付与することを示している。
【0203】
実施例6に示されているように、腋芽の栄養生長が抑制され、栄養芽および生殖芽からの移行が早い場合には、一次花序の存在下で、栄養先端における生殖選好的プロモーターの発現が予想される。
【0204】
(表1)GUS生殖性インプランタ(in planta)発現

【0205】
以下にさらに詳述するように、「PRMC2」プロモーター構築物は、ラジアータマツ由来の生殖選好的プロモーターをバルナーゼ突然変異体と、具体的にはPrMC2.400-1およびPrMC2.400-3に対してH102Eを機能的に結合させたものを含む。GUS発現は、PrMC2.400プロモーターにより形質転換されたタバコの葯では観察されていない。このため、インフレームPrMC2.400プロモーターを、除去構築物中に用いるためにクローニングし、上記の実験に用いた。
【0206】
実施例3
生殖特異的プロモーターの使用法
適切な組織特異的および発育上の発現パターンを有するプロモーターをひとたび見いだしたならば、トランスジェニック植物における所望の特徴を調節するためにこのプロモーターを用いることができる。1つの態様においては、植物における生殖発育を調節するためにタペータム選好的プロモーターが用いられる。本実施例では、本発明のタペータム選好的プロモーターを、細胞毒性タンパク質をコードする遺伝子と機能的に結合させる。例えば、タペータム選好的プロモーターを、バルナーゼをコードする遺伝子と機能的に結合させることができる。タペータムなどの生殖選好的組織におけるバルナーゼの発現は花粉除去をもたらす可能性がある。欧州特許公報第344,1990号。
【0207】
雄性生殖発育が除去されたトランスジェニック植物を構築するためには、バルナーゼcDNAの断片を、本発明の生殖特異的プロモーターおよびノパリンシンターゼ3'ターミネーターと、正しい向きで機能的に結合させる。構築物全体を制限断片としてバイナリーベクターpBI101.1(Clontech, Palo Alto, CA)中に挿入する。タバコまたはポプラの形質転換のためには、ベクターをそれぞれA.ツメファシエンスLBA4404株またはC58pMP90株に電気穿孔により導入する。概論については、No et al., Plant Science 160: 77-86(2000)を参照のこと。上記のようなタバコのリーフディスク、またはポプラ茎切片を、Leple et al., Plant Cell Rep. 11: 137-141 (1992)の手順に従って、上記のアグロバクテリウム培養液中に浸す。カナマイシン耐性形質転換体を活性に関して試験し、導入遺伝子のコピー数をサザン分析によって決定し、適した形質転換体を根付かせて温室に移す。
【0208】
実施例4
弱められた細胞毒性酵素を作製して選択するための方法
バルナーゼE73GおよびバルナーゼF106Sの合成
バルナーゼ突然変異体F106SおよびE73Gを、ランダムPCR突然変異誘発法によって得た。PrAGプロモーターを野生型バルナーゼコード領域と機能的に結合させ、PrAG翻訳開始コドンATGがバルナーゼ翻訳コドンによって置換されるように3回のPCR反応を行った。第1のPCRにおいて、5'プライマー、PrAGKpn

は、その翻訳開始ATG位置を基準としてPrAGプロモーターの-199から-179までの位置とアニールし、一方、3'プライマー、PrAG-7

は、翻訳開始ATGを含む-21から+3までの位置とアニールする。PrAG7プライマーは、バルナーゼコード領域の5'側に対して相補的な18塩基をさらに含む。PCR混合物は、50ngのテンプレートDNA(pWVCZ3 DNA)、200□MのdNTP、1.5mMのMgCl2および0.5□lのTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer)を含む。DNAを95℃に20秒間おいて変性させ、55℃で30秒間再アニーリングさせ、72℃で60秒間インキュベートする。このPCRサイクルを25回繰り返した。PCRの後に、220bpの産物がゲル精製された。
【0209】
第2のPCRにおいて、5'プライマー、PrAG-8

は、バルナーゼコード領の5'側とアニールし、このプライマーはPrAGプロモーターの3'側に対して相補的な21個の塩基をさらに有する。3'プライマー、3Barn

は、バルナーゼDNAの3'側とアニールし、クローニングのためのSacI部位を有している。PCR混合物は、50ngのテンプレートDNA(pWVR14)、200μMのdNTP、1.5mMのMgCl2および0.5μlのTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer)を含む。DNAを95℃に20秒間おいて変性させ、55℃で30秒間再アニーリングさせ、72℃で60秒間インキュベートする。このPCRサイクルを25回繰り返した。PCRの後には、462bpの産物がゲル精製される。
【0210】
第3のPCRにおいて、5'プライマーはPrAGKpnであり、3'プライマーは3Barnであり、DNAテンプレートは等量の第1および第2のPCR産物(それぞれ〜40ng)の混合物である。第3のPCRの増幅産物は640bpであり、これはPrAGプロモーターの3'側とバルナーゼコード領域との融合物である。第3のPCRの後に、PCR断片をKpnIおよびSacIで消化し、連結の後にバルナーゼが完全長のPrAGプロモーターによって作動するように、PrAGプロモーターをすでに有するプラスミド(pUC19)と連結した。
【0211】
この連結混合物を電気泳動によって大腸菌に導入し、形質転換コロニーを75ug/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地上で増殖させた。プラスミドを2つのコロニーから抽出し、制限酵素消化によってPrAG::バルナーゼ挿入物の存在を確かめた。これらのプラスミドDNAを、それらがすべてバルナーゼコード領域に突然変異を有することを確かめるためにシークエンシングした。
【0212】
LBプレート上で増殖したコロニーはすべて突然変異体のバルナーゼを含むことが認められ、突然変異のほとんどはバルナーゼ活性を消失させるものであった。しかし、突然変異のいくつかは、LBプレート上でのコロニーのサイズが小さくなったことによって示されるように、バルナーゼ活性を低下させた。約100個のコロニーを選択し、75ug/mLのアンピシリンを含むLB液体培地1ml中に接種した。37℃で一晩培養した後に培養物の細胞密度を比較し、細胞密度が有意に低い5つの培養物を選択した。細胞密度の低さは、バルナーゼに活性はあるがその毒性がはるかに弱いことを表す。5種類の大腸菌培養物からプラスミドを精製し、導入されたプラスミドが、プラスミドによって運ばれるバルナーゼ活性の減弱を示唆する、より小さいサイズのコロニーをLB寒天プレート上に実際に生じさせることを確かめるために、再び大腸菌に導入した。大腸菌へのプラスミドの再導入を3回繰り返した。確認したプラスミドのシークエンシングを行ったところ、その結果から、大腸菌培養物29-Sから抽出されたプラスミドが、バルナーゼコード領域の位置73のグルタミン酸に対するコドンに、グルタミン酸からグリシンへの変化を招く単一のヌクレオチド置換(A→G)を含むことが示された。このバルナーゼ突然変異体をバルナーゼE73Gと命名した(SEQ ID NO. 11)。大腸菌培養物43-Sから抽出されたプラスミドも、バルナーゼコード領域の位置106にあるフェニルアラニンに関するコドンに、フェニルアラニンからセリンへの変化を導く単一のヌクレオチド置換(T→C)を含んでいた。このバルナーゼ突然変異体はバルナーゼF106Sと命名された(SEQ ID NO. 12)。
【0213】
バルナーゼF106Sのアッセイ
アッセイF106Sの毒性をアッセイするために、タバコ植物体に対して、上記の実施例2に記載された通りに、PrAGプロモーターが突然変異型バルナーゼF106Sをコードする遺伝子と機能的に結合したものを有する構築物による形質転換を行った。突然変異型バルナーゼF106Sの発現は致死的であったため、生存能のあるタバコ形質転換体は作製されなかった。これらの結果は、例えば、栄養生長に有害な影響を及ぼすことなしに雄性不稔性を誘導することのできる、弱められたバルナーゼに対する需要が存在することを示している。
【0214】
バルナーゼE73Gのアッセイ
大腸菌における毒性スクリーニングの結果に基づき、バルナーゼ突然変異体E73Gを生殖性除去用に選択した。大腸菌におけるバルナーゼE73Gの発現は低レベルの毒性をもたらした。具体的には、バルナーゼE73Gは、LB液体培地中およびLB固形プレート上での大腸菌の増殖を阻害した。バルナーゼ突然変異体のRNアーゼ活性(毒性)の値の低下は、この生物学的スクリーニングからは得られなかったが、これらの結果は、E73Gが弱められたRNアーゼ活性を有することを示唆する。
【0215】
バルナーゼE73Gにおけるバルナーゼ活性の減弱に関するさらなる証拠は、バルナーゼE73GとF106Sとの比較試験に見いだすことができる。比較すると、バルナーゼF106SはバルナーゼE73Gよりも大腸菌毒性が有意に強かった。これらの結果は、バルナーゼF106SがバルナーゼE73Gよりも高いRNアーゼ活性を有することを示唆する。
【0216】
バルナーゼH102E
バルナーゼH102E突然変異は、類縁性のある酵素であるビナーゼにおける対応する突然変異が、天然の酵素の約2%の活性を有したという報告に基づいて選択した。Yakovlev et al. FEBS Lett. 354: 305-306 (1994)。以下の実施例5に記載したように、バルナーゼH102Eでは活性が減弱していた。この突然変異体では、ヒスチジン102に対するコドンがグルタミン酸のコドンによって置換されていた。
【0217】
野生型バルナーゼコード領域を含む既存のプラスミドpWVR14を利用して、バルナーゼセグメントの定方向突然変異誘発法を行った。バルナーゼのこの事前クローニングには、プラスミドpMT416のバルナーゼカセットからの全コード領域を増幅するために、プライマーBAR5NCO

およびBAR3MFE

を用いた。Hartley, R.W. J. Mol. Biol. 202: 913-915 (1988)。増幅された断片をNcoIで消化し、一方にNcoI末端を有しもう一方が平滑末端である調製済みのベクター中にクローニングした。この結果得られたプラスミドpWVR14では、バルナーゼセグメントがプロモーターおよびSEPALLATA1遺伝子(SEP1、以前はAGL2と呼ばれていた)の5'-UTRに隣接して配置されており、プロモーター配列を利用して突然変異誘発手順を行った。コード領域の5'部分+隣接するプロモーターのセグメントを増幅するために、プライマーAGL2PB

およびBARH2E

を用いた。野生型バルナーゼカセットの増幅にはプライマーBAR5NCOおよびBAR3MFEを用いた。増幅の後に、ゲル電気泳動およびQIAEXゲル精製キット(QIAGEN)を用いて、断片をプライマーおよびPCR試薬から分離精製した。約100ngの各々の断片を、50μlの反応液中にある1×Perkin Elmer Taq緩衝液、1.6mM MgCl2、0.10mMの各dNTPおよび0.5μlのPerkin Elmer Taq DNAポリメラーゼと混ぜ合わせ、SEP1プロモーターの一部分およびバルナーゼコード領域の全体を含む0.75kb断片を伸長させるために、混合物を繰り返し95℃で変性させ、50℃で再アニーリングさせ、72℃でインキュベートした(5サイクル)。10μlの伸長反応液を、それぞれ20pmolのプライマーAGL2PBおよびBAR3MFE、1×PCR緩衝液、1.6mM MgCl2、0.250mMの各dNTPおよび0.5μlのTaq DNAポリメラーゼを含む50μlの混合物に添加して、さらに7サイクルを実施することにより、この0.75kb断片をさらに増幅した。この断片をNcoIで消化し、バルナーゼセグメントをゲル精製して、NcoI末端および平滑末端を有するベクター中に連結した。突然変異の正しさが配列解析によって実証された。pWVR220の構築といったその後の作業のために、完全長バルナーゼH102E断片を、プライマーBAR5NCOおよびBAR3SAC

を用いて増幅し、NcoIおよびSacIで消化した上で精製した。翻訳開始コドンの場所にNcoI部位があることが望まれたため、プライマーBAR5NCOにはATGの直後にアラニンコドンを余分に1つ含めた。これにより、実際に最終的なコード領域内のコドン103にHisからGluへの突然変異が生じた。
【0218】
バルナーゼK27A突然変異は、類縁性のある酵素であるビナーゼにおける対応する突然変異が、天然の酵素の約20%の活性を有したという報告に基づいて選択した。Yakovlev et al. FEBS Lett. 354: 305-306 (1994)。もう1つの報告は、バルナーゼK27A突然変異体は天然の酵素と比較して活性が低下していることを示唆している。Mossakowska et al. Biochemistry 28: 3843-3850 (1989)。バルナーゼコード領域を、リジン27に対するコドンがアラニンコドンによって置換されるように改変した。バルナーゼセグメントの同時並行的な増幅および定方向突然変異誘発を、PCRを用いて行った。プライマーBAR5NCO

およびBARK27AR

を、コード領域の5'部分を増幅するために用い、プライマーBARK27AF

およびBAR3SAC

を、プラスミドpMT416のバルナーゼカセットからのコード領域の3'部分を増幅するために用いた。増幅の後に、断片をプライマーおよびPCR試薬から分離精製し、続いて一緒にした。約100ngの各断片を、25μlの反応液中にある1×Stratagene High Salt緩衝液、0.175mMの各dNTPおよび0.25μlのTaqPlusLongと混ぜ合わせ、全コード領域を伸展させるために、混合物を繰り返し95℃で変性させ、50℃で再アニーリングさせて、72℃でインキュベートした(5サイクル)。それぞれ20pmolのプライマーBAR5NCOおよびBAR3SAC、1×Stratagene High Salt緩衝液、0.175mMの各dNTPおよび0.75μlのTaqPlusLongを含む75μlの混合物に伸長反応液を添加して、さらに15サイクルを実施することにより、完全長バルナーゼK27A断片をさらに増幅した。その結果得られた完全長断片をNcoIおよびSacIで消化して精製した。突然変異したコード配列はSEQ ID NO:8に示されている。上述したように、プライマーBAR5NCO中のATGの直後にアラニンコドンを1つ余分に含めた。これにより、実際に最終的なコード領域内のコドン28にLysからAlaへの突然変異が生じた。
【0219】
実施例5
大腸菌におけるバルナーゼ突然変異体の毒性に関するアッセイ
バルナーゼDNAをPCRによってPrAGプロモーターの3'末端と融合させ、このPCR断片をpUC19中にクローニングして大腸菌に導入した。80ug/mlのアンピシリンを加えたLB寒天培地上にて37℃で一晩(〜16時間)増殖させた後、コロニーを1つずつ選択し、アンピシリンを含むLB液体培地1ml中に接種した。一晩のインキュベーションの後に、緩徐に増殖している大腸菌培養物を選択し、プラスミドを抽出した。精製したプラスミドを大腸菌に再び導入し、37℃での一晩のインキュベーションの後にLB寒天培地上のコロニーを1つずつ採取した。コロニーの直径を測定し、対照(PrAGプロモーターによって作動するバルナーゼH102Yの挿入物を有するpUC19)と比較した。バルナーゼ突然変異体を有する単一のコロニーの直径は、プラスミドを大腸菌に導入する段階から繰り返した3回の独立した実験の平均である。
【0220】
バルナーゼ突然変異体の毒性は、1つずつのコロニーの直径を対照コロニーと比較することによって判定した。表2に示されているように、直径の大きいコロニーは毒性がないことを示し、小さな直径は強い毒性を示唆する。
【0221】
(表2)大腸菌におけるバルナーゼ突然変異体の毒性

*バルナーゼH102Yは生物学的なRNアーゼ活性がないことが報告されている。
【0222】
実施例6A
LPAGプロモーターの組織選好的発現
上記の実施例1に概要を述べた手順によるプロモーターの同定およびクローニングの後に、プロモーターが活性を有する組織の型を決定するために、プロモーターをレポーター遺伝子と機能的に結合させる。LPAG1およびLPAG2プロモーターの組織特異性を判定するために、実施例2に記載したように、それぞれのプロモーターをGUSレポーター遺伝子と機能的に結合させ、その結果得られた構築物をタバコ植物体に導入した。
【0223】
萼片および花弁のGUS分析
手短に述べると、タバコにおけるLPAG1プロモーター活性によるGUS発現を分析するために、高さが約2〜5mmのまだ開いていない若い花から萼片および花弁を採取した。カミソリの刃を用いて心皮の中央部を縦方向に切開し、その結果得られた心皮の半分(2〜3個の若い雄蕊が付いている)を、GUS活性に関して37℃で16時間にわたって染色した。各々のトランスジェニック系統からの個々の花を染色し、70%のエタノールに続いて95%のエタノール中で脱色させた。
【0224】
若葉のGUS分析
花に隣接した若葉をGUS発現に関して分析した。各々のトランスジェニック系統ごとに、3枚の若葉を切って小さな四角形(9mm2)にし、萼片および花弁に関して上述したように、GUS活性に関して37℃で16時間にわたって染色し、続いて脱色した。
【0225】
栄養茎頂のGUS分析
生長の2つの異なる段階で、若い茎頂を個々の植物から収集した。第1の生長段階の分析は、一次頂生花序にある花の30%がすでに開いているタバコ植物体から茎頂を収集することを含んだ。この第1の生長段階では、一次頂生花序を有する茎頂を分析した。一次頂生花序を有する茎頂は、主茎および主葉の交点から生長する腋茎頂に相当する。一次頂生花序を有するそれぞれの茎頂の長さは約10〜15mmである。
【0226】
第2の生長段階の分析は、一次頂生花序を取り除いてから5日後に茎頂を収集することを含む。これらの茎頂は一次頂生花序を有せず、主茎および主葉の交点から生長している腋茎頂に相当する。一次頂生花序を有しない、収集したそれぞれの茎頂の長さは約25〜40mmである。
【0227】
茎頂を取り囲む若葉のほとんどを取り除き、1〜3枚の葉のみを茎頂に残した。切り離した茎頂を中央部で縦方向に切開し、その結果得られた頂部の半分(1〜3枚の葉がまだ付いている)をGUS活性に関して37℃で16時間にわたって染色した。各々のトランスジェニック系統ごとに3つの茎頂を収集して染色した。
【0228】
以下の表3に示されているように、LPAG1プロモーターは雄蕊および心皮(生殖組織)において選好的に活性を有し、葉(栄養組織)では活性を示さない。
【0229】
(表3)トランスジェニックタバコにおけるLPAG1活性のGUS発現分析

【0230】
表3に示されているように、LPAG1プロモーター活性は、一次頂生花序を取り除いた後の茎頂では低下する。一次花序の存在下では、腋芽の栄養生長が抑制され、栄養芽から生殖芽への移行が早い。場合によっては、腋芽の長さが10mmに過ぎない時点で花芽が出現する。タバコにおける生殖生長の過程では、栄養分の獲得およびホルモン産生によって腋芽における花系遺伝子発現が誘導される。一次頂生花序を取り除くことによりタバコ植物体は栄養生長に復帰し、腋芽の生長は頂花によって課せられる抑制を受けなくなる。
【0231】
一次頂生花序を取り除いた後には腋芽が早く生長し、腋芽の長さが40mmとなった時点では花芽が存在しないことが観察されている。このように、頂花の存在下では、腋芽の分裂組織はすでに花の分裂組織へと変換されているか、または花の分裂組織へと向かう途上にあり、そこではLEAFYおよびAGAMOUSといった花系遺伝子の発現が作動しており、LPAG1プロモーターも同じく作動している。頂花を取り除くことにより腋芽は栄養生長に復帰し、腋芽分裂組織における花系遺伝子の発現は停止し、このためLPAG1プロモーター活性もおそらく機能的に停止している。
【0232】
実施例6B
LPAG1プロモーターの欠失分析
プロモーター欠失分析を用いて、最小プロモーターおよびプロモーター配列内部の調節エレメントを決定することができる。それぞれのプロモーター欠失物をレポーター遺伝子と機能的に結合させ、プロモーター-レポーター遺伝子構築物の発現プロファイルを分析する。
【0233】
例として、LPAG1プロモーター(SEQ ID NO. 1)を逐次的に欠失させた。手短に述べると、LPAG1プロモーター配列の5'末端から5種類の逐次的欠失物を作製した。それぞれの逐次的欠失では約160bpを欠失させ、合計で800bpを欠失させた。以下は、LPAG1プロモーター欠失の予備的な結果のまとめである。この5種類の逐次的欠失構築物(LPAG1d1〜LPAG1d5と命名)をマツおよびタバコに導入した。欠失はLPAG1プロモーター配列の5'末端側から作製されているため、LPAG1d5欠失構築物はLPAG1遺伝子の5'非翻訳領域まで入り込んでおり、このためLPAG1d5構築物からはLPAG1プロモーター配列が消失しているはずと推測された。
【0234】
実施例2に記載された通りの、プロモーター-欠失構築物によるマツおよびタバコ植物体の形質転換に続いて、形質転換カルスをLPAG1プロモーター活性に関して分析した。GUS発現分析による評価は、実施例5に概要を述べた通りに行った。LPAG1プロモーター欠失実験の結果は以下の表4にまとめられている。
【0235】
(表4)LPAG1のプロモーター欠失分析

【0236】
表4に提示されたGUS発現プロファイルに基づくと、これらの結果は、LPAG1d3に存在するがLPAG1d4には存在しないヌクレオチド配列(〜150bp)は、LPAG1プロモーターがタバコ花の雄蕊および心皮において活性を有するためには必須であるが、しかし、その同じ配列は、GUS染色アッセイおよびMUGアッセイによって示されているように、LPAG1d4はカルス中で同様のGUS活性を依然として有することから、LPAG1プロモーターがマツのカルスにおいて活性を有するためには必須ではないことを明らかに示唆している。
【0237】
実施例7
LPAG1プロモーターおよびPrAGプロモーターを有する構築物を用いてマツの雄錐および雌錐を除去するための方法
実施例6における表4に示された結果に基づき、LPAG1プロモーターおよびPrAGプロモーターならびにそのプロモーター欠失物を、マツの木における雄錐および雌錐を除去するために用いることができる。
【0238】
例えば、除去構築物に、バルナーゼをコードする遺伝子と機能的に結合したLPAG1プロモーターを持たせるとともに、PrAGプロモーターまたはLPAG1d4プロモーターをバルスター(バルナーゼ阻害物質)をコードする遺伝子と機能的に結合させることが可能である。上記の実施例6で示されているように、LPAG1プロモーターはマツの錐および胚において活性を有するが、PrAGプロモーターまたはLPAGd4プロモーターはマツの胚のみで活性を有する。マツの錐においてほとんど活性を示さないプロモーター(PrAG)の下でバルスターをコードする遺伝子を配置することにより、他のプロモーター(LPAG)によって生じるバルナーゼ毒性が、雄錐および雌錐を効果的に除去することができる。また一方で、マツ胚ではこの2つのプロモーターの活性が同程度のレベルであるために同程度の量のバルナーゼおよびバルスターが産生され、そのため胚におけるバルナーゼ毒性が効果的に中和され、マツの胚形成性カルスおよび胚の形質転換および再生をもたらす。実施例2に記載された形質転換プロトコールに従って、マツのカルスをLPAG1発現に関して分析する。
【0239】
実施例8
ラジアータマツ由来のAGAMOUSプロモーターの分析
実施例1に記載されたように、生殖選好的プロモーターを同定して、ラジアータマツまたはグランディスユーカリなどの樹木種からクローニングすることができる。PrAGプロモーターは、ラジアータマツ由来のAGAMOUSプロモーターである。PrAGプロモーターの長さは、5'非翻訳領域を含めて約1400bpである。PrAGプロモーターはWO 00/55172号に開示されており、それは参照として本明細書に組み入れられる。
【0240】
PrAGが生殖選好的発現を付与するか否かを判定するために、PrAGプロモーターを、イントロンを1つ有するGUSレポーター遺伝子と機能的に結合させた。その結果得られたPrAG-GUSプロモーター構築物を実施例2に記載された通りにタバコ植物体に導入した。タバコ組織をGUS発現に関して分析し、表5にPrAGプロモーター活性についてまとめた。
【0241】
(表5)PrAGプロモーター活性のGUS分析

【0242】
葉、花弁、雄蕊および心皮組織におけるGUS発現は酵素アッセイによっては検出できなかったが、ポリ(A+)RNAを用いたRNアーゼ保護アッセイなどのより高感度な方法を用いると花弁、雄蕊、および心皮組織におけるGUS発現を検出することができた。
【0243】
実施例9
PrAGプロモーター活性を上昇させる花特異的エンハンサー
実施例8に例示されたように、PrAGプロモーターは、タバコにおいて極めて弱い生殖選好的プロモーター発現を付与する。シロイヌナズナAGAMOUS遺伝子は、AG遺伝子の第2イントロン内に位置する花特異的エンハンサー(AtAGenh)を含むことが示されている。Sieburth, L.E. and Meyerowitz, E.M. The Plant Cell 9, 355-365 (1997). Busch, M.A., Bomblies, K. and Weigel, D. Science 285, 585-587 (1999). Deyholos, M.K. and Sieburth, L.E. The Plant Cell 12: 1799-1810(2000)。AtAGenhエンハンサーエレメントは、PrAGプロモーター活性を被子植物の花の生殖組織において選好的にアップレギュレートする可能性がある。
【0244】
AtAGenhが生殖組織におけるPrAGプロモーター活性を増強するか否かを判定するために、シロイヌナズナAGの第2イントロン(2750bp)を単離し、イントロンを1つ有するGUSレポーター遺伝子と機能的に結合したPrAGプロモーターの5'末端と融合させ((AtAGenh)PrAG::GUSIN)、その結果得られた構築物(pWVCZ20、図2参照)をタバコに導入した。
【0245】
タバコの形質転換の後に、タバコ組織を収集し、GUS発現に関して分析した。以下の表6に示されているように、GUS染色により、実際にAtAGenhがPrAGプロモーター活性を主として雄蕊および心皮において増強することが判明し、花弁においてもある程度の上昇が観察された。萼片、葉および栄養茎頂ではGUS染色が観察されなかった。
【0246】
(表6)PrAGプロモーター活性を増強するAtAGenh

【0247】
実施例10
栄養生長を妨げない生殖性除去のための生殖選好的プロモーター::突然変異型バルナーゼ構築物の使用
上記の実施例4に記載されたように、細胞毒性作用が弱められた突然変異型細胞毒性遺伝子を作製するために、さまざまな方法を用いることができる。バルナーゼ酵素の毒性作用を低下させることにより、バルナーゼを、植物の栄養生長を損なうことなく生殖性除去のために用いることができる。さらに、弱められたバルナーゼと機能的に結合した生殖選好的プロモーターは、栄養型破壊を伴わない生殖性除去のための手段を提供する。例として、突然変異型バルナーゼE73GをPrAGと融合させてpWVCZ23(図3)を、(AtAGenh)PrAGと融合させてpWVCZ24(図4)をそれぞれ作製し、その結果得られた構築物をタバコに導入した。形質転換の後にタバコ植物体を分析し、その結果を以下の表7に示した。
【0248】
(表7)

【0249】
表7に示されているように、(AtAGenh)PrAG::E73Gにより形質転換されたタバコ植物体の68%は不稔性生殖表現型を有し、すなわち多くの形質転換植物が生存性のある花粉も生存性のある種子も生成しなかった。同様に、PrAG::E73Gにより形質転換された植物の10%は生存性のある花粉および種子を生成しなかった。興味深いことに、いずれの構築物による形質転換も栄養生長は損なわない。以上の結果は、除去カセット、(AtAGenh)PrAG::バルナーゼE73Gが、雄性不稔性および雌性不稔性のタバコを生じさせることができ、このカセットが被子植物種を含むその他の被子植物および裸子植物種に対して同様の除去効果を生じさせうる可能性があることを明らかに示している。
【0250】
実施例11
栄養生長を妨げることなく生殖原基を除去するための温度感受性バルナーゼの使用
バルナーゼは特徴が明確にされている酵素であり、数多くの突然変異体が同定されている。詳細には、安定性および/または毒性が変化したバルナーゼ突然変異体が同定されている。温度感受性バルナーゼは、栄養生長に影響を及ぼすことなく生殖原基を除去するために望ましいと思われる。
【0251】
例えば、熱感受性バルナーゼを生殖性除去用に用いることが可能と考えられる。熱感受性バルナーゼの発現は、例えば、栄養生長の大半が起こる夏(高温)の間はほとんど毒性作用を及ぼさないと思われるが、冬または低温時の生殖芽生成の時期には毒性があると思われる。PrMC2(SEQ ID NO 4または16)などの生殖選好的プロモーターは、栄養組織における熱感受性バルナーゼの発現を最小限に抑えるために用いうると考えられる。
【0252】
実施例12
トランスジェニックマツカルスおよび再生胚においてバルナーゼ毒性を中和するバルスター
バルスターはバルナーゼの天然の阻害物質であり、標的でない組織をバルナーゼ毒性から防御するため、および植物の稔性を回復させるために用いられている。Beals T.P. and Goldberg R.B. Plant Cell. 9: 9:1527-45 (1997). Kuvshinov V et al. Plant Sci. 160: 3: 517-522(2001)。以前の実験により、3種類のプロモーター、LPAG1、PrAG、およびLPAG1d4が、マツのカルスおよび再生胚において同程度の活性を有することが示されている。LPAG1プロモーターはタバコ花において高い活性を有するが、PrAGプロモーターおよびLPAG1d4プロモーターはタバコ花において活性を全くまたはわずかしか示さず、このことはPrAGプロモーターおよびLPAG1d4プロモーターが被子植物または裸子植物の生殖組織において活性を有しないことを示唆する。このため、PrAGプロモーターおよびLPAG1d4プロモーターを、バルスターのようにバルナーゼの細胞毒性作用を中和する遺伝子と機能的に結合させて、プロモーター::バルスター構築物に非生殖組織を標的とさせることができると考えられる。このようなプロモーター::バルスター構築物、例えばPrAG::バルスターは、栄養組織を有害なバルナーゼ発現から防御すると考えられる。
【0253】
さらに、バルナーゼと機能的に結合した生殖選好的プロモーターおよびバルスターと機能的に結合した生殖非選好的プロモーターを有する除去構築物を作製することも有益と思われる。例えば、マツ錐用の除去構築物は、バルナーゼを作動させるLPAG1プロモーターを有するとともに、バルスターを作動させるPrAGまたはLPAG1d4プロモーターも有し(例えば、LPAG1::バルナーゼE73G/PrAG::バルスターまたはLPAG1::バルナーゼE73G/LPAG1d4::バルスターなど)、両方のカセットが1つの骨格内にあることが考えられる。マツの形質転換に際して、マツのカルスおよび再生胚におけるLPAG1活性に起因するバルナーゼの毒性は、PrAGプロモーターまたはLPAG1d4プロモーターの活性によって産生されるバルスターによって効果的に中和され、そのため形質転換は円滑に進行しうると考えられる。しかし、成熟したトランスジェニックマツの木では、LPAG1プロモーター活性に起因するマツ錐の芽におけるバルナーゼの存在により、マツ錐の芽におけるバルナーゼ毒性およびバルスターの欠如のために錐は効果的に死滅すると考えられる。
【0254】
実施例13
インフレームPrMC2.400プロモーター断片のクローニング
PrMC2.400プロモーター配列は、米国特許出願公報第20030101487号に記載された通りに同定および単離されており、それは参照として本明細書に組み入れられる。PrMC2.400配列は、pWVR220およびその他のPrMC2構築物に用いられるATGに対してインフレームでないATGを有する。シロイヌナズナにおける以前の試験により、PrMC2.400プロモーターからGUSが発現されることが明らかに示されているが、GUS発現はPrMC2.400プロモーターにより形質転換されたタバコの葯では観察されていない。このため、除去構築物に用いるためにインフレームのPrMC2.400プロモーターをクローニングした。
【0255】
以下のPCRプライマーを用いて、2種類の異なるPrMC2.400プロモーター配列を単離した。これらの配列が機能的に結合した遺伝子に対してインフレームであることを確かめるために、以下に述べるように、この2種類のPrMC2.400プロモーターを発現ベクター中にクローニングした。
【0256】
PrMC2.400プロモーター配列中にはいくつかのインフレームATGがあり、具体的には位置361、367、および397にある。記載したリバースプライマーを用いて、2種類の異なるPrMC2.400産物を生成させた:PrMC2.400-1は3つのATGのすべてを含む;PrMC2.400-3は第1のATGのみを含む。リバースプライマーを、クローニングベクター中の適切な部位で平滑末端連結を行えるように、5'末端でリン酸化した。PrMC2-XGプライマーはXhoI部位を含む。高忠実度Taqポリメラーゼ混合物(TaqPlus Long, Stratagene)を用いてPCRを行った。PCRの後に、標準的な手順を用いて、増幅産物をゲル精製し、続いてXhoIで消化した。各々の産物を中間ベクター中にクローニングしてシークエンシングを行った。シークエンシングにより、PrMC2.400-1配列は元の配列とは1ヌクレオチドの違いがあり、位置35に「T」残基が挿入されていることが示された。
【0257】
PrMC2.400-1配列およびPrMC2.400-3配列の発現ベクター中へのクローニングにより、すべてのATG部位が関心対象の遺伝子に対してインフレームに保たれていることが確かめられた。

PrMC2-XG+PrMC2-R1:PrMC2.400-1(SEQ ID NO:5)と命名された3966(KNC)bp産物を生じた。
PrMC2-XG+PrMC2-R3:PrMC2.400-3(SEQ ID NO:16)と命名された3603(KNC)bp産物を生じた。
【0258】
実施例14
バイナリーベクター中へのインフレームPrMC2.400-1::突然変異型バルナーゼのクローニング
実施例17に記載したように、遺伝的除去のために、インフレーム性プロモーターPrMC2.400-1およびPrMC2.400-3を関心対象の遺伝子と機能的に結合させることができる。例えば、インフレームPrMC2.400-1プロモーターを、生殖性除去のために、弱められたバルナーゼ配列と機能的に結合させることができる。
【0259】
K27A
実施例4に記載されたように、K27A突然変異型バルナーゼは、高コピー数ベクターpWVR63中に以前にクローニングされている。PCRによって生じた断片PrMC2.400-1を、事前にNcoIで消化したpWVR63中にクローニングし、大豆ヌクレアーゼで処理して平滑末端を生じさせ、続いてXhoI消化を行い、ベクター断片を単離するためにゲル精製した。その後に得られた中間プラスミド、pWVR205は、この時点で除去カセットPrMC2.400-1::K27Aバルナーゼ::RNS2TERを含むようになった。続いて、このカセットを、KpnIおよびApaIを用いてバイナリーベクター中にサブクローニングし、pWVR216を作製した。
【0260】
H102E
実施例4に示されているように、H102E突然変異型バルナーゼは、高コピー数ベクターpWVR15中に以前にクローニングされている。クローニングのためのより便利な制限酵素末端を得るために、pWVR15テンプレートからのPCRプライマーを用いてH102Eを生成させた。突然変異型バルナーゼH102Eは、PCRプライマー

を用いて生成させた。
【0261】
PCRは高忠実度Taqポリメラーゼ混合物(TaqPlus Long, Strategene)を用いて行った。標準的な三段階のPCR方法を用いた。PCR反応物をゲル精製し、その後にNcoIおよびSacIで消化した。制限消化物をゲル精製し、断片を単離して濃縮した。この精製PCR断片を、事前にNcoIおよびSacIで消化した中間ベクター中にクローニングし、構築物pWVR218を作製した。突然変異型バルナーゼ配列の正しさを確かめるために、この構築物のシークエンシングを行った。続いて、PCRによって生じた断片PrMC2.400-1を、事前にNcoIで消化したpWVR218中にクローニングし、大豆ヌクレアーゼで処理して平滑末端を生じさせ、続いてXhoI消化を行い、ベクター断片を単離するためにゲル精製した。その後に得られたプラスミド、pWVR219は、この時点で除去カセットPrMC2.400-1::H102Eバルナーゼ::RNS2TERを含むようになった。プロモーター配列およびプロモーター:遺伝子接合の正しさを確かめるために、この構築物のシークエンシングを行った。続いて、このカセットを、KpnIおよびApaIを用いてバイナリーベクター中にサブクローニングし、pWVR220を作製した。
【0262】
E73G
E73G突然変異型バルナーゼは、実施例4に示されているように、高コピー数ベクター中に以前にクローニングされている。クローニングのためのより便利な制限酵素末端を得るために、プラスミドテンプレートからのPCRプライマーを用いてE73Gを生成させた。突然変異型バルナーゼE73Gは、PCRプライマー

を用いて精製した。
【0263】
PCRは、高忠実度Taqポリメラーゼ混合物(TaqPlus Long, Strategene)を用いて行った。標準的な三段階のPCR方法を用いた。PCR反応物をゲル精製し、その後にNcoIおよびSacIで消化した。制限消化物をゲル精製し、断片を単離して濃縮した。この精製PCR断片を、事前にNcoIおよびSacIで消化した中間ベクター中にクローニングし、構築物pWVR230を作製した。突然変異型バルナーゼ配列の正しさを確かめるために、この構築物のシークエンシングを行った。続いて、PCRによって生じた断片PrMC2.400-1を、事前にNcoIで消化したpWVR230中にクローニングし、大豆ヌクレアーゼで処理して平滑末端を生じさせ、続いてXhoI消化を行い、ベクター断片を単離するためにゲル精製した。その後に得られたプラスミド、pWVR231は、この時点で除去カセットPrMC2.400-1::E73Gバルナーゼ::RNS2TERを含むようになった。プロモーター配列およびプロモーター:遺伝子接合の正しさを確かめるために、この構築物のシークエンシングを行った。続いて、このカセットを、KpnIおよびApaIを用いてバイナリーベクター中にサブクローニングし、pAGF232を作製した。
【0264】
GUS対照
シロイヌナズナにおける以前の試験では、元のPrMC2.400プロモーターからGUSが発現されることは示されているが、形質転換されたタバコの葯では染色は観察されていない。除去構築物のフレームに合致するように、新たなレポーターカセット(下記参照)を合成した。
【0265】
PCRによって生じた断片PrMC2.400-1を、事前にNcoIで消化したpWVR52中にクローニングし、大豆ヌクレアーゼで処理して平滑末端を生じさせ、続いてXhoI消化を行い、ベクター断片を単離するためにゲル精製した。その後に得られたプラスミドpWVR233は、この時点でカセットPrMC2.400-1::GUS::RNS2TERを含むようになった。プロモーター配列およびプロモーター:遺伝子接合の正しさを確かめるために、この構築物のシークエンシングを行った。続いて、このカセットを、KpnIおよびApaIを用いてバイナリーベクター中にサブクローニングし、pAGF234を作製した。
【0266】
実施例15
PrMC2.400-1:バルナーゼのインプランタ発現
アグロバクテリウム-ツメファシエンスGV2260株に対して、バイナリーベクターpWVR216またはpWVR220またはpAGF232またはpAGF234を用いて、電気泳動を介した形質転換を行った。
【0267】
アグロバクテリウムを介したタバコ(Nicotiana tabacum)の形質転換によってトランスジェニック植物を作製した。カナマイシンを含む培地上で形質転換体を選択した。陽性形質転換体をPCRによって同定し、土壌に移して、標準的な温室条件下で成長させた。植物を全体的な栄養生長速度、花成時期および雄性不稔性に関して分析した。
【0268】
PrMC2.400-1プロモーターによって作動される突然変異型バルナーゼ遺伝子を発現する植物は、雄性不稔性表現型を呈した。具体的には、トランスジェニック植物は花粉粒を生成しなかった。このことは複合光顕微鏡で葯を観察することによって微視的に確認された。さらに、花粉を生じないこの植物は果実嚢および種子を生成しなかった。しかし、野生型タバコ花粉による他家受粉を行った植物では正常な種子セットが生じ、このことから雌性稔性は影響を受けていないことが示された。さらに、これらの他家受粉による子孫は花粉を生じない表現型を生じ、このことから導入遺伝子が遺伝していること、および子孫における導入遺伝子の存在が雄性不稔植物を生じさせたことが示された。
【0269】
PrMC2.400-1プロモーターによって作動される突然変異型バルナーゼ遺伝子を発現するタバコ系統では、雄蕊の高さが心皮に比して低下することが認められた。花成時期も遅くなった。K27AおよびE73Gを発現するタバコ系統では、対照系統と比較して、栄養生長の低下が直ちに観察された。この栄養生長の低下は、発育の遅い、丈の短い植物をもたらした。H102Eを発現する系統は、栄養生長への影響に関してわずかな徴候しか示さず、全体的な生長は対照と極めて類似していた。栄養生長の低下は、タバコ組織におけるPrMC2.400プロモーターの発現の「漏出性」を示している可能性がある。
【0270】
栄養組織におけるPrMC2.400プロモーター活性をアッセイするために、PrMC2.4001::GUS系統により形質転換された系統からの若葉組織、根および栄養茎頂をGUS活性に関して調べた。GUS活性は、発色基質X-Glucを用いて組織化学的に分析した。室温で1時間、減圧下で組織にX-Glucを浸透させ、続いて37℃で16時間インキュベートした。インキュベーションの後に、組織を100%メタノール中で、続いて95%エタノール中で脱色した。これらの組織はGUS発現を示さなかった。GUS発現のレベルが非常に低いため、このアッセイでは検出できなかった可能性がある。
【0271】
タバコ葯の発育過程での時間的および空間的な発現パターンをさらに解明するために、PrMC2.400-1をGUSと結合させたものを用いて追加的な実験を行った。タバコ花の発育は12の段階に分けることができ、これは花器官系における遺伝子の発現の基準点となりうる。Koltunow, et al. The Plant Cell 2: 1201-1224 (1990)。花芽をそれぞれの時点で採取して切り刻み、GUS活性に関して染色した上で顕微鏡で観察した。GUS活性は、発色基質X-Glucを用いて組織化学的にアッセイした。室温で1時間、減圧下で花芽にX-Glucを浸透させ、続いて37℃で16時間インキュベートした。インキュベーションの後に、組織を100%メタノール中で、続いて95%エタノール中で脱色した。その結果は、PrMC2.400-1プロモーターは葯のみで発現され、PrMC2.400-1の発現はタペータムが存在する発育段階に限られることを示している。タペータム層は花粉形成において主要な役割を果たす。このため、タペータム層における細胞毒性遺伝子の発現により、花粉生成を阻止しうると考えられる。
【0272】
実施例16
バイナリーベクター中へのPrMC2.400-3::突然変異型バルナーゼのクローニング
H102E
実施例13に記載された通りに、プライマーPrMC2-XGおよびPrMC2R3を用いてPrMC2.400-3を生成させた。この断片を増幅するために用いたテンプレートは、バイナリーベクターpWVR220である。精製されたこのPCR断片を、事前にNcoIおよびSacIで消化した中間ベクター中にクローニングして、構築物pWVR242を作製したが、これはこの時点で除去カセットPrMC2.400-3::H102Eバルナーゼ::RNS2TERを含むようになった。プロモーター配列およびプロモーター:遺伝子接合の正しさを確かめるために、この構築物のシークエンシングを行った。続いて、このカセットを、KpnIおよびApaIを用いてバイナリーベクター中にサブクローニングし、pWVR243を作製した。
【0273】
GUS対照
PCRによって生じた断片PrMC2.400-3を、事前にNcoIで消化したpWVR52中にクローニングし、大豆ヌクレアーゼで処理して平滑末端を生じさせ、続いてXhoI消化を行い、ベクター断片を単離するためにゲル精製した。その後に得られたプラスミドpWVR244は、この時点でカセットPrMC2.400-3::GUS::RNS2TERを含むようになった。プロモーター配列およびプロモーター:遺伝子接合の正しさを確かめるために、この構築物のシークエンシングを行った。続いて、このカセットを、KpnIおよびApaIを用いてバイナリーベクター中にサブクローニングし、pWVR245を作製した。
【0274】
実施例17
PrMC2.400-3:バルナーゼのインプランタ発現
アグロバクテリウム-ツメファシエンスGV2260株に対して、バイナリーベクターpAGF243またはpAGF245を用いて、電気泳動を介した形質転換を行った。
【0275】
アグロバクテリウムを介したタバコ(Nicotiana tabacum)の形質転換によってトランスジェニック植物を作製した。カナマイシンを含む培地上で形質転換体を選択した。陽性形質転換体をPCRによって同定し、土壌に移して、標準的な温室条件下で成長させた。植物を全体的な栄養生長速度、花成時期および雄性不稔性に関して分析した。トランスジェニックタバコ系統は雄性不稔性表現型を呈した。具体的には、これらの植物は花粉粒を生成しなかった。さらに、PrMC2.400-1::H102E系統では、雄蕊の高さが心皮に比して低く、花成時期も遅くなった。
【0276】
PrMC2.400-3をレポーター遺伝子GUSと結合させたものを含む系統を、PrMC2.400-1::GUS系統と比較した。花芽、特に葯組織におけるGUS染色の強度はPrMC2.400-1::GUS系統と同等であった。
【0277】
実施例18
花成制御カセットを有する前駆体プラスミドの構築
プラスミドの構築は、pBIN19に由来し、必須でないDNAセグメントの除去によってサイズを縮小させたバイナリーベクター、pARB310(SEQ ID NO:Z1)から始めた。隣接するBstXI部位とともに以前にクローニングされているバルスターの遺伝子(Hartley, R.W. J. Mol. Biol. 202: 913-915 (1988))を、BstXI消化によってpWVR200Bから取り出して、ゲル精製した。約470bpの断片を、BstXIで消化したpARB310中に連結して、pARB310Bを作製した。
【0278】
次に、ColE1複製起点および周囲領域を、プライマー対、ColE1-F4

およびColE1-R4

を用いるPCRを用いて、pART27(Gleave, 1992)から増幅した。1.0kbのCo1E1断片をBamHIおよびBclIで消化した後に精製し、pARB310B中のtrfA遺伝子の末端とT-DNAの左境界(LB)との間のBclI部位に連結した。これによってpAGF50が作製され、これは大腸菌における高コピー数プラスミドとして作用したが、依然としてアグロバクテリウムにおいて複製した。
【0279】
UBQ3プロモーター+NPTIIコード領域の大部分を取り除くために、pAGF50をAscIおよびNcoIで消化し、その結果得られた5.7kb断片をゲル精製した。UBQ10プロモーターがNPTIIコード領域の5'末端と結合したものを有する1.9kb断片をAscIおよびNcoI消化によってpWVR3から遊離させ、ゲル精製した上で、pAGF50断片中に連結して、pARB1000を作製した。このプラスミドを、SUBIN::GUSIN::NOSTERレポーターカセットの付加によってさらに改変した。SUBINはラジアータマツ由来のユビキチンプロモーターを示し、これは5'-UTRをコードするゲノムDNAおよびイントロンを含む;GUSINはジャガイモのツベリン遺伝子由来のβ-グルクロニダーゼコード領域+イントロンを示す(Vancanneyt et al., 1990)。DraI消化によってpARB494からレポーターカセットを取り出し、pARB1000中のSmaI部位に連結して、pARB1001を作製した。pARB1001は、形質転換対照として利用したほかに、pARB1001はレポーター遺伝子を挟み込む2つのNotI部位を有する(レポーター遺伝子を他の関心対象の遺伝子に切り換えるために用いうる)ことから、花成制御プラスミドの直接の前駆体としても用いた。
【0280】
雄性特異的花成制御遺伝子であるPrMC2.400::バルナーゼH102E::RNS2TBRはpWVR219中に存在したが、望ましくないNotI部位が1つ、3'末端の付近にあった。このプラスミドをNotIで消化し、続いてdNTPの存在下においてT4 DNAポリメラーゼで処理して、ベクターを再連結することによって、その部位を破壊した。PrMC2.400::バルナーゼH102E::RNS2TERカセットを、改変されたpWVR219からAscIおよびXhoIを用いて切り出し、1.1kb断片をゲル精製した。pARB1001は、プラスミドを線状化するためにXhoIで部分的消化を行い、続いてAscIで完全に消化することによって調製した。PrMC2.400::バルナーゼH102E::RNS2TERカセットを、調製したpARB1001ベクターと連結して、pARB1002を作製した。このプラスミドの構造はシングルパスシークエンシング法によって実証された。
【0281】
(AtAGenh)PrAG::バルナーゼE73G::NOSTERカセットは、EcoRIおよびAscI消化によってpWVCZ24から取り出した。オリゴヌクレオチド、EcoNotI

およびEcoNot2

を含むNotIアダプターをEcoRI部位と連結し、NotIで消化した後に、4.9kb断片を精製した。プラスミドpARB1001をNotIおよびAscIで消化して、7.6kbベクター断片をゲル精製した。上記のカセットをこれらの部位に連結してpARB1005Lを作製した(図19)。プラスミドの構造はシングルパスシークエンシング法によって実証された。
【0282】
実施例19
早咲きユーカリプタス・オクシデンタリスの形質転換
本実施例では、早咲きユーカリプタス・オクシデンタリスの感染形質転換について詳述する。花成制御構築物について試験するために、ユーカリプタス・オクシデンタリスの実生を温室成長条件で早咲きに関して試験し、6カ月以内の花成に基づいてクローンを選択した。これらのクローンを、除去構築物および対照GUS構築物による形質転換のために滅菌組織培養物に導入した。葉の外植片を採取し、前培養を4日間行った後に、参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第10/861,909号の方法に従って、以下の表に示した通りに、別々の外植片に対して、p35SGUSINT(35S::GUSINT、NOS::NPTII)または本発明の構築物を保有するアグロバクテリウムGV2260株を感染させた。アグロバクテリウムの駆除の後に、外植片を、同じ特許出願に記載された規定の再生用培地に30mg/lのジェネティシンを加えたものからなる選択培地に移植した。除去構築物により形質転換されたユーカリの花成時期を対照と比較して検討するために、形質転換体の再生シュートを温室内の容器の土壌で根付かせて成長させた。
【0283】
本発明の構築物は、米国特許出願第10/861,909号の方法を用いた、ユーカリプタス・カマルドゥレンシスのクローン、ならびにウロフィラユーカリおよびグランディスユーカリの市販のクローンへの形質転換導入にも用いた。形質転換体の再生シュートを根付かせ、土壌に移して温室に順応させた後に、US Agricultural Plant Health Inspection Serviceに届け出た上で、フロリダおよびサウスカロライナの野外栽植場所に移した。植物を花芽の発育に関して定期的にモニタリングした。現時点までに開花は観察されていない。
【0284】
(表8)

【0285】
実施例20
雑種マツ
雑種マツ(テーダマツ×リギダマツ)およびロブロリーパイン(テーダマツ)の胚形成性細胞系を、米国特許第5,856,191号に記載された手順を用いて個々の未成熟大配偶体の受精胚から創始させ、米国特許第5,506,136号に記載された手順を用いて維持した。
【0286】
維持培地上で1〜3か月間培養した後に組織培養物を凍結保存し、最長で数年にわたって貯蔵した後に、米国特許第6,682,931号の方法に従って回収した。植物組織培養の当業者は、その他の凍結保存および回収のプロトコールも本発明の方法に適用可能であること、ならびに本実施例における詳細が方法の用途を限定するものとはみなされないことを認識していると考えられる。
【0287】
2つの遺伝的に異なる雑種マツ組織培養系および多数のテーダマツ系統からの均一な懸濁培養物を、米国特許第5,491,090号の方法に従って、250mlのNephelo枝付きフラスコ(Kontes Chemistry and Life Sciences Products)にそれぞれを含む1gの組織を接種することによって樹立した。液体培地中に細胞を含むフラスコを、温度23℃+2℃の暗い培養室内の100rpm回転振盪機に設置した。1週間後に、15mlの新たな培地を培養フラスコに注ぎ入れ、細胞を均等に分布させるために回旋させることにより、それぞれのフラスコ内の液体を35mlにした。細胞および培地をフラスコの枝部分にデカントし、30分置いて細胞を降下させた後に降下細胞体積(SCV)を測定することにより、枝部での細胞増殖を測定した。SCVが最大SCV(植物細胞によって占められたフラスコの容積の50%)の半分を上回るかそれと等しくなった時点で、それぞれの培養物を合計80mlの細胞および培地を含む500mlの枝付きフラスコに移し、移した培養物を同じ条件下で維持した。
【0288】
遺伝子導入用の調製のために、ポリエステル膜支持体をオートクレーブ処理によって滅菌し、別々の滅菌ブフナー漏斗に入れ、細胞系毎に6つずつのプレートのそれぞれに対して、胚形成性組織が均等に分布するように、1〜3ミリリットルのマツ胚形成性懸濁培養物を各々の支持体上にピペットで添加した。液体培地を組織から吸引し、米国特許公報第20020100083号に記載された方法に従ったアグロバクテリウム接種のために、胚形成性組織を有する各々の支持体をゲル化調製培地上に乗せた。バイナリーレポーター遺伝子構築物を、当業者に周知の手法によってさまざまなアグロバクテリウムツメファシエンス分離株に導入し、一般的に用いられる手法によるアセトシリンゴンの投与によって病毒性を誘導した上で、誘導されたアグロバクテリウム分離株のそれぞれを植物材料の別々の反復被験物と混ぜ合わせた。細胞を暗所にて22°+2℃で約72時間にわたり共培養した。
【0289】
共培養の後に、米国特許公報第20020100083号に記載された方法に従ってアグロバクテリウムを駆除した。続いて、ポリエステル膜支持体上にある細胞を、2週間の間隔で新たな選択培地に移した。多数のペトリ皿上の分離された数多くの区分で、選択培地上での活発な増殖が起こった。選択薬剤の存在下でのこのような活発な増殖は通常、増殖している組織が自らの染色体の中に選択遺伝子を組み込み、安定的に形質転換がなされたことの指標である。これらの活発な増殖の領域は独立した形質転換事象として取り扱われ、以後はトランスジェニック性と推定される亜系統と称する。増殖中のトランスジェニック区分を、各々の選択薬剤を加えた新たな半固形維持培地に移すことにより、トランスジェニック性と推定される胚形成性組織を増殖させた。
【0290】
形質転換がなされたと推定される亜系統を、約2gに達した後に、導入遺伝子の存在の実証のために、標準的な手法を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のために選択した。
【0291】
(表9)PCRのためのプライマー対

【0292】
それぞれの亜系統からの材料を、GUS染色および顕微鏡検査にも供した。GUS染色のためには、組織培養細胞において発現されるβ-グルクロニダーゼ酵素をコードする挿入されたuidA遺伝子を、当技術分野で周知の植物形質転換の手法に従って、Inalco社から販売されている発色性グルクロニダーゼ酵素基質「X-gluc」に対する曝露による、トランスジェニック系統のそれぞれからの細胞の濃青色染色によって検出した。顕微鏡検査では、細胞分裂が再開したこと、および、uidA導入遺伝子の一過性発現がこれらの射入法に関して正常な頻度を示すことが示されている。
【0293】
発芽可能な胚を以下のようにして作製した。細胞塊を少なくとも1グラムに増殖するまで選択培地上で培養した後に、それぞれを別々に再び液体培地中に再懸濁させた。細胞懸濁物が均一な(最大半値の)SCVになった時点で、質の高い回収可能な第3期(子葉)胚を発育させるための米国特許第5,506,136号に記載された発育/成熟培地上に配置するために、等量の懸濁培養細胞を、滅菌した膜支持体上にピペットで添加した。培養皿を暗所の増殖チャンバー内で23+2℃にてインキュベートした。膜支持体は3週毎に、新たな培地を含む新たなペトリ皿に移した。第9週の時点で、第3期(子葉)胚を発芽の質に関して外観的に分析し、米国特許第5,506,136号に記載されたような培地上の繊維性支持体上に回収して、暗所にて温度4℃±2℃で約4週間にわたってインキュベートした。次に、繊維性支持体上の胚を密封容器に入れた水上で、暗所にて温度25℃±2℃で約3週間にわたってインキュベートした。以上の2つの処理の後に、繊維性支持体上の胚を発芽培地に移し、暗所にて温度25℃±2℃で約3日にわたってインキュベートした。続いて胚を繊維性支持体から取り出して新たな発芽培地の表面に置いた。発芽は明るい場所で温度25℃±2℃で行わせた。発芽プレートを約4週間にわたって毎週検査し、発芽した胚を、小植物体への変換のために、100mlの発芽培地を含むMAGENTA(登録商標)ボックスに移した。発育中の小植物体を含むMAGENTA(登録商標)ボックスを、明るい場所において25℃±2℃で約8〜12週間にわたってインキュベートした。
【0294】
小植物体が上胚軸(約2〜4cmの新たに形成されたシュート)を形成した時点で、それらを、苗床用混合土[2:1:2の泥炭:パーライト:バーミキュライトで、602g/m3のOSMOCOTE肥料(18-6-12)、340g/m3のドロマイト石灰および78g/m3のMICRO-MAX微量栄養素混合物(Sierra Chemical Co.)を含む]を充填した容器に移した。小植物体を、日光を遮った温室で成長させ、約2週間にわたって時折霧吹きをした。それらを暗室に馴化させるために霧吹きを止めて約4週間おいた。続いて小植物体を最終的な馴化のために屋外の日影の場所に移して約6週間おき、その後に通常の日照条件下に移した。以後はそれらを、野外栽植のための条件が整うまで容器内で成長させた。
【0295】
ロブロリーパイン(テーダマツ)系統から再生させた植物も同じ野外の場所に栽植したが、栽植後6年もの長きにわたって野外の場所で球果の生成は観察されていない。しかし、予想外のことに、トランスジェニック雑種マツ系統は栽植から3年後に球果を生じた。その時点で雑種樹木の高さは約1メートルであり、隣接するトランスジェニックロブロリーパインの木よりもはるかに小さかった。
【0296】
以下の表10は、体細胞胚形成からの対照としての非トランスジェニック性の元の雑種マツ系統、組織培養を経ていない対照である同じ親からの種々の実生遺伝子型、および、あるものは遺伝子銃を用い、またあるものはアグロバクテリウムを用いた形質転換によって2種類のベクターを用いて97LP0006体細胞胚形成性系統から作製された合計24種のさまざまなトランスジェニック系統を含めた第2の栽植の結果を示しており、合計で250を上回る植物に関してほとんどの系統の多数の反復被験物が、栽植から2年後には何らかの球果を生じ、栽植から3年以内にかなりの数の球果を生じた。これらの観察の後に試験を終了した。
【0297】
(表10)

【0298】
表10に示された結果は、SE対照が球果を生じず、組織培養を行わなかった遺伝子型で生じたものもわずかであったことから、本発明の早期球果生成の結果を実現するためには、組織培養および形質転換を経ることが必要であることを示唆している。しかし、トランスジェニック体のほとんどすべてが、雄性または雌性のいずれかまたは両方の球果を高い頻度で生じた。18種のトランスジェニック系統のうち球果を3年以内に生じなかったものは1つに過ぎなかった。この結果は用いた形質転換に依存せず、用いた形質転換ベクターにも依存しなかった。このことは、本発明の除去構築物などの生殖制御用構築物の有効性を示そうとする場合には、比較のために、最良の実施形態が例えばレポーター遺伝子構築物により形質転換されたトランスジェニック対照を用いることにあることを示唆している。
【0299】
樹木の高さは、球果が生じた時点で平均約1.2メートルであり、平均的な身長の人が特殊な装置を用いずに容易に収穫することができる。
【0300】
続いてこの系を、通常であれば実施することが不可能な試験である、本出願の生殖制御用構築物の裸子植物における有用性を試験するために用いた。胚形成性カルスは、被験プロモーターが裸子植物において漏出性であるか否か、または弱められたバルナーゼ遺伝子が漏出性の様式で発現された場合に有害であるか否かを検証するための機会を与える(表の第4列を参照)。ひとたび樹木を再生させて野外に栽植したところで、球果形成時期に対する影響を、GUS形質転換対照と比較して3年以内に測定することができ、その時点で野外試験を終了することができる。これはさらに、これらの野外試験のための費用のかかる生産用山林地の迅速なローテーションを可能にすると考えられる。
【0301】
(表11)

【0302】
実施例21
LPAG1プロモーターおよびLPAG1d4プロモーターを有する構築物を用いてマツの雄錐および雌錐を除去するための方法
実施例6における表4に示された結果に基づき、LPAG1プロモーターおよびLPAG1d4プロモーターを、マツの木の雄錐および雌錐を除去するために用いることができる。例えば、除去構築物に、バルナーゼをコードする遺伝子と機能的に結合したLPAG1プロモーターを持たせるとともに、LPAG1d4プロモーターをバルスター(バルナーゼ阻害物質)をコードする遺伝子と機能的に結合させることが可能である。上記の実施例6に示されているように、LPAG1プロモーターはマツの錐および胚において活性を有するが、LPAG1d4プロモーターはマツの胚のみで活性を有する。この仮定は、LPAG1がタバコ花において高い活性を有し、LPAG1d4はタバコ花においてほとんど活性がなかったという観察所見に基づいて行った。マツ錐においてほとんど活性を示さないLPAG1d4プロモーターの下でバルスターをコードする遺伝子を配置することにより、他のプロモーター(LPAG1)によって生じるバルナーゼ毒性が、雄錐および雌錐を効果的に除去することができる。また一方で、マツ胚ではこの2つのプロモーターの活性が同程度のレベルであるために同程度の量のバルナーゼおよびバルスターが産生され、そのため胚におけるバルナーゼ毒性が効果的に中和され、マツの胚形成性カルスおよび胚の形質転換および再生をもたらす。
【0303】
配列識別子の説明:
SEQ ID NO. 1 - LPAG1
SEQ ID NO. 2 - LPAG2
SEQ ID NO. 3 - PrAG-ATenh
SEQ ID NO. 4 - PrMC2.400-1
SEQ ID NO. 5 - バルナーゼ突然変異体E73G(DNA)
SEQ ID NO. 6 - バルナーゼ突然変異体F106S(DNA)
SEQ ID NO. 7 - バルナーゼ突然変異体H102E(DNA)
SEQ ID NO. 8 - バルナーゼ突然変異体K27A(DNA)
SEQ ID NO. 9 - バルナーゼ突然変異体E73G(AA)
SEQ ID NO. 10 - バルナーゼ突然変異体F106S(AA)
SEQ ID NO. 11 - バルナーゼ突然変異体H102E(AA)
SEQ ID NO. 12 - バルナーゼ突然変異体K27A(AA)
SEQ ID NO. 13 - PrMC2+バルナーゼ突然変異体H102E
SEQ ID NO. 14 - PrMC2+バルナーゼ突然変異体K27A
SEQ ID NO. 15 - PrMC2+バルナーゼ突然変異体E73G
SEQ ID NO. 16 - PrMC2.400-3
SEQ ID NO. 17 - LPAG1d4
SEQ ID NO. 18 - pWVR220[PrMC2.400::バルナーゼH102E](図1)
SEQ ID NO. 19 - pWVCZ20[(AtAGenh)PrAG::GUS(イントロン)(図2)
SEQ ID NO. 20 - pWVCZ23[PrAG::バルナーゼE73G](図3)
SEQ ID NO. 21 - pWVCZ24[(AtAGenh)PrAG::バルナーゼE73G](図4)
SEQ ID NO. 22 - pARB599B[PrMC2::バルナーゼH102E](図5)
SEQ ID NO. 23 - pARB639B[(AtAGenh)PrAG::バルナーゼE73G](図6)
SEQ ID NO. 24 - pAGF243[PrMC2.400-3::バルナーゼH102E](図7)
SEQ ID NO. 25 - pABDP010[CZ28-bstarの相補的コピー+UBQ10::NPTII::E9/LPAG1d4::bstar::NOST](図8)
SEQ ID NO. 26 - pABDP04[CZ28-bstarの相補的コピー+UBQ10::NPTII::E9/LPAG1d4::bstar::NOST](図9)
【0304】
配列は以下の通りである。





SEQ ID No. 18〜26として表される配列については、図1〜9および13を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0305】
【図1】pWVR220[PrMC2.400::バルナーゼH102E](SEQ ID NO. 18)。
【図2】pWVCZ20[(AtAGenh)PrAG::GUS(イントロン)](SEQ ID NO. 19)。
【図3】pWVCZ23[PrAG::バルナーゼE73G](SEQ ID NO. 20)。
【図4】pWVCZ24[(AtAGenh)PrAG::バルナーゼE73G](SEQ ID NO. 21)。
【図5】pARB599B[PrMC2::バルナーゼH102E](SEQ ID NO. 22)。開示されている短いヌクレオチド配列は、登場順にそれぞれ、SEQ ID NO:22の残基10431〜10442、10261〜10271、9885〜9896、および9569〜9581である。
【図6】pARB639B[(AtAGenh)PrAG::バルナーゼE73G](SEQ ID NO. 23)。
【図7】pAGF243[PrMC2.400-3::バルナーゼH102E](SEQ ID NO. 24)。
【図8】pABDP010[CZ28-bstarの相補的コピー+UBQ10::NPTII::E9/LPAG1d4::bstar::NOST](SEQ ID NO. 25)。
【図9】pABDP04[CZ28-bstarの相補的コピー+UBQ10::NPTII::E9/LPAG1d4::bstar::NOST](SEQ ID NO. 26)。
【図10】pWVR220に関するプラスミド地図。
【図11】pWVCZ20に関するプラスミド地図。
【図12】pWVCZ23に関するプラスミド地図。
【図13】pWVCZ24に関するプラスミド地図。
【図14】pARB599Bに関するプラスミド地図。
【図15】pARB639Bに関するプラスミド地図。
【図16】pAGF243に関するプラスミド地図。
【図17】pABDP010に関するプラスミド地図。
【図18】pABDP04に関するプラスミド地図。
【図19】pARB1005L[(AtAGenh)PrAG::バルナーゼE73G]。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】

【図2−4】

【図3−1】

【図3−2】

【図3−3】

【図4−1】

【図4−2】

【図4−3】

【図4−4】

【図5−1】

【図5−2】

【図5−3】

【図5−4】

【図5−5】

【図6−1】

【図6−2】

【図6−3】

【図6−4】

【図6−5】

【図6−6】

【図6−7】

【図7−1】

【図7−2】

【図7−3】

【図8−1】

【図8−2】

【図8−3】

【図8−4】

【図9−1】

【図9−2】

【図9−3】

【図9−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO. 1、2、3、4、または16のいずれか1つに示された配列が植物細胞における生殖選好的(reproductive-preferred)遺伝子発現を付与する、SEQ ID NO:1〜8および13〜26またはそれらの機能的変異体からなる群より選択される単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
機能的変異体が、単離されたポリヌクレオチドの配列に対して、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、または60%を上回るかそれと等しい配列同一性を有する、請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
所望の核酸と機能的に結合したSEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つより選択されるポリヌクレオチドを含む構築物であって、該ポリヌクレオチドは、構築物により形質転換された植物細胞における該所望の核酸の発現を調節する、構築物。
【請求項4】
所望の核酸が、植物における雄性生殖構造、雌性生殖構造、前雄性生殖構造、または前雌性生殖構造のうち少なくとも1つの生殖発育を妨害しうる発現産物をコードする、請求項3記載の構築物。
【請求項5】
雄性生殖構造が葯、花糸、タペータム、花粉(filament)、小胞子葉、または雄蕊性の錐(staminate cone)のうちの少なくとも1つであり、雌性生殖構造が柱頭、花柱、子房、大胞子、または胚珠生成性の錐(ovuliferous cone)のうちの少なくとも1つである、請求項4記載の構築物。
【請求項6】
発現産物が、植物において発現される標的遺伝子の発現を低下させるRNA転写物である、請求項4記載の構築物。
【請求項7】
請求項3記載の構築物を含むトランスジェニック植物。
【請求項8】
以下の段階を含む、トランスジェニック植物を作製するための方法:
(a)(i)所望の核酸と機能的に結合したSEQ ID NO. 1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有し、該所望の核酸の活性を調節する少なくとも1つのポリヌクレオチド、または(ii)SEQ ID NO:13、14、もしくは15のいずれか1つに示された配列を有するポリヌクレオチド、を含む構築物によって植物細胞の形質転換を行う段階;
(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階、ここで、該植物は、該構築物を含まない同じ種の植物とは異なる表現型を呈するトランスジェニック植物である。
【請求項9】
形質転換植物の表現型が、構築物を含まない同じ種の植物と比較して、雄性生殖構造、雌性生殖構造、前雄性生殖構造、または前雌性生殖構造のうち少なくとも1つの生殖発育における違いによって特徴づけられる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
生殖不稔性である、生殖発育が除去されている、花粉稔性が改変されている、および/または栄養生長が妨げられていない植物を選択する段階をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
植物細胞が木本からのものである、請求項8記載の方法。
【請求項12】
木本植物がユーカリ属またはマツ属の種より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
コードされる突然変異型バルナーゼ酵素が野生型バルナーゼ酵素と比較して弱められた活性を有する、SEQ ID NO:5〜8またはそれらの変異体のいずれか1つに示された配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる単離された突然変異型バルナーゼ酵素。
【請求項14】
変異体が、SEQ ID NO:5〜8のいずれか1つに対して、配列において99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、または60%を上回るかそれと等しい配列同一性を有する、請求項13記載の単離された突然変異型バルナーゼ酵素。
【請求項15】
以下の段階を含む、木材パルプを得るための方法:
(a)(ii)SEQ ID NO:5、6、7、または8のいずれか1つに示された配列を含む所望の核酸と機能的に結合した(i)SEQ ID NO:1、2、3、4、もしくは16またはそれらの機能的変異体のいずれか1つの配列を有するプロモーターを含む構築物を木本植物の植物細胞に導入する段階;
(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階;および
(c)該植物から木材パルプを得る段階。
【請求項16】
以下の段階を含む、トランスジェニック植物において生殖不稔性を付与するための方法:
(a)細胞毒性遺伝子と機能的に結合した生殖選好的プロモーター、および該細胞毒性遺伝子を阻害するタンパク質をコードする遺伝子と機能的に結合した生殖非選好的プロモーターを有する構築物によって植物細胞の形質転換を行う段階;ここで、該生殖選好的プロモーターは被子植物または裸子植物の生殖構造において活性があり、該生殖非選好的プロモーターは被子植物または裸子植物の生殖構造において活性がない;
(b)該形質転換植物細胞を植物の生長を促進する条件下で培養する段階;ならびに
(c)生殖構造が除去されたトランスジェニック植物を選択する段階
ここで、該生殖選好的プロモーターはSEQ ID NO:1、2、3、4、または16からなる群より選択される。
【請求項17】
生殖非選好的プロモーターがSEQ ID NO:17に示された配列を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
(i)SEQ ID NO 5〜8のいずれか1つの配列を含むポリヌクレオチドと機能的に結合したSEQ ID NO. 1もしくは2のいずれかの配列、(ii)SEQ ID NO:9の配列と機能的に結合したSEQ ID NO:3の配列、(iii)SEQ ID NO:7の配列と機能的に結合したSEQ ID NO:4もしくは16のいずれかの配列、(iv)SEQ ID NO. 9〜12のいずれか1つに示されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合したSEQ ID NO:1もしくは2のいずれかの配列、または(v)SEQ ID NO:22もしくはSEQ ID NO:23のいずれかに示された配列、を含む構築物。
【請求項19】
請求項18記載の構築物を含むトランスジェニック植物。
【請求項20】
バルスター遺伝子と機能的に結合した生殖非選好的プロモーターをさらに含む、請求項18記載の構築物。
【請求項21】
生殖非選好的プロモーターがSEQ ID NO. 17に示された配列を含む、請求項20記載の構築物。
【請求項22】
請求項20記載の構築物を含むトランスジェニック植物。
【請求項23】
所望の核酸がSEQ ID NO. 5〜8のいずれか1つの配列を含む、請求項7記載のトランスジェニック植物。
【請求項24】
所望の核酸がSEQ ID NO. 5〜8のいずれか1つの配列を含む、請求項8記載の方法。
【請求項25】
核酸がSEQ ID NO. 5〜8のいずれか1つの配列を含む、請求項3記載の構築物。
【請求項26】
SEQ ID NO. 18〜26のいずれかの配列を含む構築物により形質転換された雑種子孫植物。
【請求項27】
ピッチパイン(リギダマツ(P. rigida))とロブロリーパイン(テーダマツ(P. taeda))との交配によって得られる、請求項26記載の雑種子孫植物。

【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−513029(P2008−513029A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532664(P2007−532664)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/033977
【国際公開番号】WO2006/036736
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(505450722)アーバージェン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】