説明

生物育成用照明装置

【課題】LEDを効率良く用いることができ、かつ、消費するエネルギを低減することができる生物育成用照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置1は、LEDユニット10を用いて構成されたモジュール3a,3bと冷却装置100とを備える。冷却装置100は、閉管路を構成する、ポンプ101、第1ポンプ配管103及び第2ポンプ配管111、各LEDユニット10のチラーケース70、チラーケース70同士を接続するユニット間配管105及びモジュール間配管107、照明苗床間配管109、及び放熱部120などを有している。放熱部120は苗床510に埋設されている。冷却装置100は、ポンプ101により閉管路内で循環液を流してLEDを冷却する。これにより温度が上昇した循環液が放熱部120を流れ、循環液の熱が苗床510に放熱されるので、苗床510を保温することができる。LEDの熱を有効活用し、消費エネルギを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生物育成用照明装置に関し、特に、光源としてLight Emitting Diode(LED)を用いた生物育成用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物の育成に用いられる生物育成用照明装置(以下、照明装置と称する)としては、光源としてLight Emitting Diode(LED)を用いたものがある。照明装置にLEDを用いることにより、メタルハライドランプや蛍光ランプなどと比較し、低消費電力化や低発熱化を進めることができる。また、照射する光の波長を、育成対象の生物について適したものにすることにより、より効果的に育成を行うことができる。
【0003】
下記特許文献1には、LEDにより植物に光を照射する水耕栽培装置が開示されている。この水耕栽培装置は、養液を加熱殺菌処理を行いながら循環させて植物に与え、水耕栽培を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−159410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、他種の光源を用いたものほどではないが、上記のようにLEDを用いても、照明装置は発熱する。特に植物の育成効果が大きくなるように高輝度のLEDを用いている場合には、発熱量が比較的多くなる。LEDが発熱すると、LEDの輝度が低下したり、LEDの素子自体や部材の劣化が進み寿命が短くなるなど、不具合が発生する可能性が比較的高くなる。
【0006】
このような問題点に関し、特許文献1には、養液とLEDとの間で熱交換させることより、LEDを冷却することが開示されている。また、この水耕栽培装置では、LEDの冷却時に、後の加熱殺菌処理に備えて養液を予熱し、省エネルギ化を図っている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の水耕栽培装置は、水耕栽培ではない、養液を循環させる必要のない装置には用いることができない。また、循環液を加熱殺菌する必要のない装置においては、LEDからの熱を有効活用することができないため、省エネルギ化を達成することができない。また、養液が循環液となるので、循環液の循環経路等が詰まるなどのトラブルが発生するおそれがある。また、LEDの冷却時に養液へ不要物が混入したり溶入したりしないようにするため、照明装置を冷却するための構造や循環液の循環経路の材質などに配慮する必要があり、製造コストが高くなる場合がある。また、養液の循環系統が循環液の循環系統と同じであるため、養液全体の容積は大きく、養液を入れ替える場合に大きな手間やコストがかかる。
【0008】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、LEDを効率良く用いることができ、かつ、消費するエネルギを低減することができる生物育成用照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、LED(Light Emitting Diode)から出射された光を育成対象の生物に照射する生物育成用照明装置は、循環液を閉管路内で循環させ、循環液とLEDとで熱交換させることによりLEDを冷却する冷却装置を備え、冷却装置は、育成対象の生物が位置する床部に配された、閉管路の一部を構成する放熱部を有し、LEDの冷却時に温度が上昇した循環液を放熱部に流すことにより床部の保温を行う。
【0010】
好ましくは冷却装置は、床部の温度を検知する床温検知手段を有し、床温検知手段の検知結果に基づいて循環液の閉管路内における流量を制御する。
【0011】
好ましくは冷却装置は、閉管路の一部に接続され、ヒータにより循環液を加熱する補助加熱ユニットを有している。
【0012】
好ましくは冷却装置は、循環液の温度を検知する液温検知手段を有し、液温検知手段の検知結果に基づいて補助加熱ユニットの動作を制御する。
【発明の効果】
【0013】
これらの発明に従うと、LEDの冷却時に得た熱を用いて床部を保温することができる。したがって、LEDを効率良く用いることができ、かつ、消費するエネルギを低減することができる生物育成用照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおける生物育成用照明装置(照明装置)を用いた栽培装置を示す斜視図である。
【図2】一式の照明装置を示す斜視図である。
【図3】照明装置及びその冷却装置の概略構成を示す図である。
【図4】照明装置の平面図である。
【図5】照明装置のモジュールの側面図である。
【図6】スライドステーの側面図である。
【図7】スライドステーによる吊り下げ高さの調整機能を説明する図である。
【図8】LEDユニットの幅方向に垂直な平面における側断面図である。
【図9】LEDユニットの長手方向に垂直な平面における断面図である。
【図10】LEDユニットを示す下面図である。
【図11】冷却装置の閉管路の一部を示す平面図である。
【図12】補助加熱ユニットを示す平面図である。
【図13】照明装置の制御回路の概略構成を示す回路図である。
【図14】照明装置の制御の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態における生物育成用照明装置について説明する。
【0016】
生物育成用照明装置(以下、照明装置と称することがある)は、光源としてLED(Light Emitting Diode)を利用している。照明装置は、例えば、葉野菜、果実、生花などの植物を栽培するための栽培装置に用いられる。栽培装置は、ハウス栽培や屋内における栽培用途に用いることができる。栽培装置は、照明装置により栽培対象の植物に光を照射することにより、夜間や悪天候時でも、さらには日光が照射しない室内環境下であっても、植物を栽培することができる。また、照明装置の照射光を植物の栽培に適した波長や光強度などに最適化することにより、効率良く植物を栽培することができる。なお、栽培対象となる植物は、上記の例に限られるものではない。
【0017】
[実施の形態]
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける生物育成用照明装置(照明装置)を用いた栽培装置を示す斜視図である。
【0019】
[全体の構成]
【0020】
図を参照して、栽培装置500は、例えばスチール製のラック501に1組の照明装置(生物育成用照明装置)1及び苗床(床部の一例)510が4段に配置されて構成されている。苗床510には、砂が敷き詰められた砂床が形成されている。砂床には、植物が所望の間隔で植えられている。苗床510には、植物の栽培のために、養液が適宜供給される。なお、栽培装置500は、さらに多くの照明装置1及び苗床510の段を有していてもよい。
【0021】
各照明装置1は、後述のように閉管路内で循環液を循環させる冷却装置100を備えている。本実施の形態において、低コスト化のため、一式の栽培装置500について1つの閉管路を有する1つの冷却装置100が用いられる。換言すると、冷却装置100の閉管路は、4つの照明装置1のそれぞれに共用されている。
【0022】
なお、冷却装置100は、任意の数の照明装置1について、それぞれ独立の1つのものが用いられるようにしてもよい。すなわち、例えば、各照明装置1について1つの冷却装置100が用いられていてもよいし、2組の照明装置1で1つの冷却装置100を共用するようにしてもよい。また、複数の栽培装置500を並置して用いる場合などにおいて、その複数の栽培装置500に用いられる複数組の照明装置1で1つの冷却装置100を共用するようにしてもよい。
【0023】
[照明装置1及びその冷却装置100の概略構成]
【0024】
図2は、一式の照明装置1を示す斜視図である。
【0025】
図を参照して、照明装置1は、一対に並ぶ第1モジュール3a及び第2モジュール3b(それぞれ区別せずモジュール3と称することがある)を有している。各モジュール3は、3つのLEDユニット10が連結されてひとまとまりに構成されている。冷却装置100は、一式の照明装置1につき、冷却部110と放熱部120とを有している。冷却部110は、冷却装置100のうち、モジュール3の部分に循環液が流れるように配管を設けてなる部分である。冷却部110は、各LEDユニット10を冷却する。放熱部120は、冷却装置100のうち、配管長が長くなるように曲げた配管を苗床510に埋設してなる部分である。放熱部120は、循環液が有する熱を苗床510に放熱し、砂床510の保温を行う。
【0026】
図3は、照明装置1及びその冷却装置100の概略構成を示す図である。
【0027】
図において、照明装置1及び冷却装置100の概略構成の説明を簡単に行うため、一式の照明装置1(1つの苗床510用の照明装置1)について独立した一式の冷却装置100が用いられていると仮定し、この場合について説明する。
【0028】
図を参照して、照明装置1は、各モジュール3に3つずつ設けられた合計6個のLEDユニット10と、冷却装置100とを有している。第2モジュール3bには、CDSセンサ(明暗センサ)5が苗床510に向けて設けられている。CDSセンサ5は、照度センサであり、苗床510など照明装置1がある環境の明るさを検知する。LEDユニット10の上部には、チラーケース70が設けられている。チラーケース70は、例えば樹脂製であり、内部に循環液が流れるような箱形に形成されている。また、チラーケース70には、上面から上方に突出する支持突起80が形成されている。支持突起80は、上段の苗床510の下面に接触し、上段の苗床510を支持可能である。各LEDユニット10の詳細な構成は後述する。
【0029】
冷却装置100は、おおまかに、冷却部110及び放熱部120のほか、ポンプ101と、第1ポンプ配管103と、照明苗床間配管109と、第2ポンプ配管111と、苗床センサ(床温検知手段の一例)130とを有している。第1ポンプ配管103は、ポンプ101と冷却部110とを接続する。照明苗床間配管109は、冷却部110と放熱部120とを接続する。第2ポンプ配管111は、放熱部120とポンプ101とを接続する。すなわち、冷却装置100の閉管路は、各LEDユニット10のチラーケース70、第1ポンプ配管103、冷却部110、照明苗床間配管109、放熱部120、及び第2ポンプ配管111で構成されている。
【0030】
苗床センサ130は、苗床510内の砂床の温度を検知する。冷却装置100の制御は、苗床センサ130の検知結果などに基づいて、制御回路200(図13に図示)により行われる。換言すると、冷却装置100は、制御回路200により、冷却装置100の各部の動作を制御する。制御回路200の構成やその制御の内容などについては、後述する。
【0031】
冷却部110は、通常、チラーケース70内の流路、4つのユニット間配管105、及びモジュール間配管107を有している。ユニット間配管105は、各モジュール3において隣り合うLEDユニット10のチラーケース70同士を接続する。モジュール間配管107は、第1モジュール3aのLEDユニット10のうち1つのチラーケース70と第2モジュール3bのLEDユニット10のうち1つのチラーケース70とを接続する。
【0032】
なお、冷却装置100のうち、第1ポンプ配管103やユニット間配管105などの放熱部120以外の配管は、例えば、ポリ塩化ビニル製のパイプなどを用いて構成されている。また、放熱部120の配管は、例えば、可撓性のあるCR(クロロプレンゴム)製のホースなどを用いて構成されている。これにより、放熱部120は、苗床510の砂床に容易に埋設することができる。
【0033】
図において、4つのユニット間配管105のうち1つに代えて、補助加熱ユニット150が設けられている。本実施の形態において、補助加熱ユニット150は、必要に応じて、ユニット間配管105又はモジュール間配管107に代えて取り付けることができる。なお、補助加熱ユニット150が設けられていても、補助加熱ユニット150が動作していない場合には、補助加熱ユニット150が設けられていない場合と冷却装置100の働きにほとんど変わりはない。補助加熱ユニット150については、後述する。
【0034】
冷却装置100の閉管路内には、循環液として、例えばエチレングリコールを含む不凍液が充填されている。循環液は、閉管路を循環経路として循環し、砂床中に含まれる養液などと混じることがない。したがって、必要に応じて、防食剤や消泡剤などを混合した循環液を用いてもよい。
【0035】
循環液は、ポンプ101が駆動されることにより、以下のように閉管路内を循環する。すなわち、循環液は、第1ポンプ配管103から、第1モジュール3aの1つのLEDユニット10のチラーケース70内に流れる((1)ポンプ出口、(2)第1モジュール入口)。循環液は、ユニット間配管105を経由し、第1モジュール3a内で、隣り合うLEDユニット10のチラーケース70に流れ、モジュール間配管107に流出する((3)第1モジュール出口)。循環液は、モジュール間配管107から第2モジュール3b内に流入し、第1モジュール3aを流れたときと同様に各LEDユニット10を経由して照明苗床間配管109に流出する((4)(5)第2モジュール入口・出口)。循環液は、照明苗床間配管109から苗床510内の放熱部120に流入する((6)苗床入口)。循環液は、放熱部120を巡った後、第2ポンプ配管111を経由してポンプ101に戻る((7)苗床出口、(8)ポンプ入口)。
【0036】
なお、閉管路は、循環液が一対のモジュール3を順に経由するように直列に構成されているが、循環液が一対のモジュール3に分かれて流れるように並列に構成されていてもよい。このように並列に構成した場合、各モジュール3に流入する循環液の液温が略等しくなるため、各モジュール3について同等の冷却効果を得ることができる。
【0037】
本実施の形態においては、上述のように、4つの照明装置1で1つの冷却装置100を共用している。このように複数の照明装置1で1つの冷却装置100を共用する場合は、冷却する照明装置1及び保温する苗床510に循環液が巡るように閉管路を配設すればよい。すなわち、例えば、ポンプ101及びそのポンプ配管103,111を除き、冷却部110及び放熱部120を照明装置1及び苗床510の数だけ組み合わせて、一周の閉管路を配設することができる。このとき、循環液を冷却部110から放熱部120に流す配管を、互いに直列に接続してもよいし、並列に接続してもよい。直列に接続する場合には、例えば、放熱部120と、当該照明装置1とは別の照明装置1の第1モジュール3aのチラーケース70とを冷水配管113(図4に図示)を介して接続すればよい。これにより、放熱部120を経由して温度が下がった循環液が、次の照明装置1を冷却するための冷却部110に流れて加熱され、その後別の放熱部120に流れて放熱される。また、並列に接続する場合には、ポンプ101から排出された循環液が各照明装置1の冷却部110に分かれて流れ、その後各循環液が対応する苗床510の放熱部120に流れるようにすればよい。また、配管を、直列・並列を組み合わせて構成してもよい。例えば、ラック毎に冷却装置100の配管が直列に接続されているものを並列に接続して一周の閉管路を構成し、1台のポンプ101で循環液を循環させるようにしてもよい。
【0038】
[照明装置1の詳細な構成]
【0039】
図4は、照明装置1の平面図である。また、図5は、照明装置1のモジュール3の側面図である。
【0040】
図4を参照して、第1モジュール3a及び第2モジュール3bは、長手方向が互いに略平行になるように並んで配置されている。各モジュール3の3つのLEDユニット10は、長手方向に並んで連結されている。各モジュール3において、両端部に位置するLEDユニット10のそれぞれの端部には、各モジュール3をラック501に取り付けるためのエンドステー7aが取り付けられている。また、各LEDユニット10のうち他のLEDユニット10に隣り合う端部には、中間ジョイントステー7bが、LEDユニット10同士を連結するために取り付けられている。
【0041】
各モジュール3において、一方の端部に位置するLEDユニット10には、第1駆動電力供給ケーブル41が接続されている。第1駆動電力供給ケーブル41は、コネクタ43を介してLEDユニット10に接続されている。また、各LEDユニット10とそれに隣り合うLEDユニット10とは、第2駆動電力供給ケーブル45により接続されている。第1駆動電力供給ケーブル41及び第2駆動電力供給ケーブル45は、LED21(図8に図示)の駆動電力を供給するためのケーブルである。各モジュール3において、3つのLEDユニット10が、第2駆動電力供給ケーブル45を介して互いに電気的に接続されている。制御回路200から各モジュール3に第1駆動電力供給ケーブル41を介して電源が供給されることにより、各LEDユニット10が駆動される。
【0042】
本実施の形態において、冷却装置100の閉管路は、以下のように各照明装置1の冷却部110及び放熱部120が直列に接続されて構成されている。すなわち、まず、最下段の照明装置1の第1モジュール3aには、ポンプ101から循環液が流入する。また、他の段の照明装置1の第1モジュール3aには、その照明装置1が光を照射する苗床510内の放熱部120から循環液が流入する。これにより、各照明装置1の冷却が行われる。各照明装置1において照明装置1の冷却に用いられた循環液は、その照明装置1からその上段の苗床510の放熱部120に流入する。このとき、最上段の照明装置1から流出した循環液は、最下段の苗床510に流入する。最下段の苗床510を流れた循環液は、ポンプ101に戻る。
【0043】
このように最上段のものを除く各照明装置1のモジュール3から、その直上の苗床510に循環液が流れるので、照明苗床間配管109が短くなり、モジュール3を流れて温度が上昇した循環液の熱が照明苗床間配管109において放熱されにくくなる。したがって、照明装置1の熱を、より効率良く苗床510の保温に利用することができる。
【0044】
なお、循環液の流れる方向は、上述した方向に限られない。すなわち、各段の照明装置1について、そのモジュール3を流れた循環液がその段の苗床510の放熱部120に流れるようにしてもよい。
【0045】
図4を参照して、各LEDユニット10のチラーケース70の内部には、2つの仕切り71が設けられている。2つの仕切り71は、チラーケース70の内部の空間を、循環液の流路長が長くなるように仕切っている。すなわち、チラーケース70の内部において、ユニット間配管105又はモジュール間配管107が接続される2つの部位間の距離よりも循環液の流路長は長い。これにより、より効率良く照明装置1の冷却が行われる。
【0046】
図5を参照して、支持突起80は、各チラーケース70について2つ設けられている。本実施の形態において、チラーケース70は、例えばABS樹脂を用いて、支持突起80と一体に形成されている。支持突起80は、その上端部が、ユニット間配管105やモジュール間配管107の上端部よりも高い位置に位置するように形成されている。これにより、照明装置1の上段の苗床510の底面がユニット間配管105等に接触することが防止され、冷却装置100の閉管路が損傷することを防止することができる。なお、支持突起80は、チラーケース70とは別の部材で構成されていてもよい。また、支持突起80は、チラーケース70ではなく、例えばLEDユニット10のその他の部位や、エンドステー7aや中間ジョイントステー7bに設けられていてもよい。
【0047】
図5を参照して、各エンドステー7aの端部には、スライドステー9が取り付けられている。スライドステー9は、スライド板9a及びフック9bを有している。各モジュール3は、ラック501にフック9bが掛けられたスライドステー9に両端部が支持されてラック501に吊り下げられている。なお、スライドステー9は、フック9bが上段の苗床510に掛けられて吊り下げられるようにしてもよい。
【0048】
図6は、スライドステー9の側面図である。
【0049】
図を参照して、スライドステー9のスライド板9aには、上下方向(矢印Sで示す方向)が長手方向となるスロット9cが形成されている。スライド板9aは、スロット9cを貫通するねじ9dによってエンドステー7aに固定されている。
【0050】
図7は、スライドステー9による吊り下げ高さの調整機能を説明する図である。
【0051】
照明装置1は、スライド板9aのエンドステー7aに対する固定位置を変更し、モジュール3の吊り下げ高さを調整可能に構成されている。吊り下げ高さを調整するには、ねじ9dを緩めて、ねじ9dがスロット9cに貫通した状態でスライドさせればよい。これにより、スロット9cの長手方向の寸法の範囲内で、モジュール3の吊り下げ高さを変更することができる。
【0052】
照明装置1は、吊り下げ高さが変更可能であるので、例えば苗床510の大きさなどに応じて、植物の栽培に適した最適位置にモジュール3を位置させて栽培を行うことができる。すなわち、ラック501においてスライドステー9を掛ける位置が限定されている場合であっても、光の照射を行う位置を微調整することが可能である。また、図に示すように、スライドステー9を上段の苗床510に掛ける場合であっても、苗床510の高さに合わせてモジュール3の吊り下げ高さを調整することにより、苗床510の高さにかかわらず所望の位置から下段の苗床510に光の照射を行うことができる。
【0053】
なお、スライドステー9は、吊り下げ高さを調整不能に構成されていてもよい。また、ラック501などにモジュール3や苗床510の位置調整機能を設けることにより、光の照射距離を微調整することができるようにしてもよい。
【0054】
[LEDユニット10の構成]
【0055】
図8は、LEDユニット10の幅方向に垂直な平面における側断面図である。また、図9は、LEDユニット10の長手方向に垂直な平面における断面図である。
【0056】
図8を参照して、LEDユニット10は、おおまかに、チラーケース70のほか、LEDユニット10の下面を覆うレンズカバー11と、後述のように多数のLED21が実装されたプリント配線板29と、収熱板33とを有している。プリント配線板29は、LED21の実装面を下方に向けて、レンズカバー11内に配置されている。収熱板33は、レンズカバー11の上面を覆うように配置されている。
【0057】
図9を参照して、本実施の形態において、複数のLED21としては、それぞれ所定の波長域の光を出射する、赤色LED23と、青色LED25と、白色LED27との3種類のものが設けられている。赤色LED23の赤色光の波長は、620〜640nmであり、青色LED25の青色光の波長は、450〜470nmである。白色LED27は、いわゆる全波長タイプのものであり、白色光を出射する。
【0058】
ここで、一般に、茎成長には所定範囲の波長の青色光が有効であり、光合成には、所定範囲の波長の赤色光が主に有効である。本実施の形態においては、これらの特定色以外の波長も含む白色光を併せて照射することにより、より太陽光に近い自然な光エネルギを照射物に与えることができる。また、LED21の白色光には、有害な紫外線等はほとんど含まれていない。このように白色光を併せて照射することにより、特に果実や花などに対して好影響を与えることができる。
【0059】
なお、本実施形態において、赤色LED23や、青色LED25や、白色LED27は、それぞれ略同一の仕様のものが用いられている。また、複数のLED21としては、駆動電圧や電流など、それぞれ互いに電気的特性が略同一又は近いものが用いられている。これにより、各LED21を、電気的特性に応じて特に区別することなく、比較的単純な電気回路で駆動可能になる。また、後述のようにレンズカバー11を用いるので、すべてのLED21をプリント配線板29状に垂直に実装することができる。したがって、各LED21を、容易に、1つのプリント配線板29上に配置することができる。
【0060】
LED21は、PWM制御によりパルス点灯される。例えば、赤色LED23は、1つあたりの光量が30000mcd〜35000mcdである。27個の赤色LED23の全光量は、810000mcd〜945000mcdである。青色LED25は、1つあたりの光量が23000mcd〜30000mcdである。8個の青色LED25の全光量は、184000mcd〜240000mcdである。白色LED27は、1個あたりの光量が70000mcd〜100000mcdである。4個の白色LED27の全光量は、280000mcd〜400000mcdである。1つのLEDユニット10あたりの全合成光照度は、1022000mcd〜1585000mcdである。このLEDユニット10では、このようにLED21を配置して、後述するようにレンズカバー11を用いて照度及び波長バランスを設定している。したがって、LEDユニット10は、苗床510の面積を1225平方センチメートルとして照射高さを40cmとした場合、略すべての種類の野菜について、継続して光合成を活発に行うことができるように光を照射することができる。
【0061】
図9に示すように、プリント配線板29の上面(LED21が実装されている面とは反対の面)には、コネクタ47が2つ設けられている。プリント配線板29には、図8に示すように、第1駆動電力供給ケーブル41や第2駆動電力供給ケーブル45のコネクタ43が接続可能である。また、プリント配線板29の両端部には、プリント配線板29を貫通する気圧調整穴29aが形成されている。これにより、LED21が点灯して発熱しても、レンズカバー11と収熱板33との間でプリント配線板29で仕切られた2つの空間の間で気圧差が生じず、プリント配線板29のたわみが生じにくくなっている。
【0062】
プリント配線板29の両面には、必要最小限の配線が描かれており、金属箔部分の大半が残されている。これにより、LED21が発生するジュール熱が、LED21の電極から金属箔部分に導かれ、高い放熱効果が得られる。
【0063】
収熱板33は、例えばアルミニウムなど、良好な熱伝導性を有する金属で形成されている。収熱板33は、LED21の点灯に伴い発生したプリント配線板29からの輻射熱や空気伝導熱を吸収し、チラーケース70内で収熱板33に接しながら流れる循環液に放熱する。これにより、照明装置1は、冷却装置100による高い冷却効果を得ることができる。
【0064】
なお、収熱板33とプリント配線板29との間の距離は、例えば6〜8mm程度に設定されている。これにより、収熱板33とプリント配線板29との絶縁を確保しつつ、効率良くプリント配線板29から収熱板33へ熱伝導させることができる。また、収熱板33のプリント配線板29側の表面には、凹凸加工が施され、さらに、厚みが2〜3μm程度の黒化皮膜が形成されている。これにより、収熱板33の表面積を拡大することができ、また、プリント配線板29への熱の反射防止効果が得られる。したがって、LED21の放熱効果がより高くなる。
【0065】
レンズカバー11は、PMMA(Poly(methyl methacrylate))などの透明な樹脂を用いて形成されている。レンズカバー11は、各LED21の光を所定の照射角を透過するように形成されたレンズ部13を有している。レンズ部13は、各LED21に対応するように形成されている。レンズ部13は、例えば凹レンズであり、レンズカバー11の成形時に容易に形成することができる。レンズカバー11の内面には、必要に応じてクロムメッキなどが施されている。
【0066】
プリント配線板29と収熱板33との間の周縁部には、レンズカバーパッキン31が配置されている。レンズカバーパッキン31は、プリント配線板29の熱膨張による伸び縮みのストレスを吸収すると共に、プリント配線板29をレンズカバー11に対して正規の位置に固定する。これにより、収熱板33とレンズカバー11とで囲まれたプリント配線板29が位置する空間が、外気から密閉されている。
【0067】
収熱板33の上面には、チラーケース70が配置されている。収熱板33の上面とチラーケース70との間には、チラーケースパッキン75が配置されている。これにより、チラーケース70の内部を流れる循環液のもれが防止されている。チラーケース70の上部には、配管継手105aを介して、ユニット間配管105やモジュール間配管107、又は補助加熱ユニット150等が接続されている。
【0068】
レンズカバー11及びチラーケース70の周縁部には、互いに重なるフランジ形状が形成されている。図に示すように、レンズカバー11及びチラーケース70は、それらの周縁部間を貫通するように配された複数の組付ねじ15を用いて互いに螺結されて、一体のLEDユニット10の外殻をなしている。レンズカバー11及びチラーケース70は、それらの周縁部間で収熱板33を挟むようにして組み付けられている。なお、複数の組付ねじ15のうち一部は、エンドステー7a又は中間ジョイントステー7bに共締めされている。すなわち、複数の組付ねじ15のうち一部は、LEDユニット10をエンドステー7a又は中間ジョイントステー7bに固定している。なお、LEDユニット10の取り付け構造はこれに限られず、例えば組付ねじ15とは別のねじなどを用いてLEDユニット10がエンドステー7aなどに固定されていてもよい。
【0069】
補助加熱ユニット150は、箱体状のヒータケース150aを有している。ヒータケース150aの内部には、ヒータ151及びヒータ水温センサ(液温検知手段の一例)153が設けられている。ヒータケース150aの上部には、普段は封止されている注入口155が設けられている。なお、図8においては、模式的に補助加熱ユニット150の構造を図示している。補助加熱ユニット150の詳細については、後述する。
【0070】
図10は、LEDユニット10を示す下面図である。
【0071】
図を参照して、LEDユニット10は、下面視で略矩形形状を有するように形成されている。LED21は、以下のように配列されている。白色LED27は、LEDユニット10の幅方向中間部に、4つが所定の間隔で並ぶようにして配置されている。また、青色LED25は、互いに幅方向に並ぶ2個でなす1組が、計4組ほど、それぞれ白色LED27同士の間に位置するようにして配置されている。青色LED25は、1つのLEDユニット10について合計8個設けられている。赤色LED23は、白色LED27及び青色LED25が実装されていない部位に配置されている。すなわち、赤色LED23は、数が最も多く、合計で30個程度が設けられている。
【0072】
[レンズ部13の説明]
【0073】
ここで、一般に、光源から照射面までの距離が互いに異なると、通常では、適切な光エネルギが届かなくなることがある。すなわち、植物が成長するにつれ、光源から植物までの距離は徐々に短くなり、逆に、植物が光を受ける面積は徐々に大きく(広く)なる。これについて、光源に照射角度が広角であるものを用いると、植物に広い範囲で照射可能であるが、この場合、照射距離は短くなるため、生育高さが異なるような植物に広く対応することができない。
【0074】
しかしながら、本実施の形態における照明装置1では、LED21にレンズ部13を設けていることにより、個々のLED21に対して異なったレンズ機能を付加することができる。すなわち、レンズ部13により、各LED21についての照射角度をそれぞれ任意の角度に設定することができる。したがって、必要とする照射距離や照射面積が互いに異なるような、幅広い種類の植物に、十分な光エネルギを配光することができる。また、植物の成長により光源と照射体との距離が変化しても、それぞれの生育段階に応じて適切に光を照射することができ、効率良く植物を栽培することができる。
【0075】
例えば、1つの照明装置1の中に互いに同程度の出力の複数のLED21を配置した場合、それぞれの照射角度を、超広角・広角・中角・狭角・超狭角などに分けた場合を想定する。この場合、照射距離が短い対象物には、照射角度が超広角や広角に設定されたLED21が効率良く作用する。また、照射距離が中位である対象物には、照射角度が広角・中角に設定されたLED21などが効率良く作用する。また、照射距離が遠い対象物には、照射角度が狭角・超狭角であるLED21などが効率良く作用する。
【0076】
図8を参照して、各LED21の照射角度の設定例について説明する。本実施の形態において、図に示すように、赤色LED23からの赤色光は、それに対応するレンズ部13により、照射角がθrとなるようにして下方に出射される。また、青色LED25からの青色光は、それに対応するレンズ部13により、照射角がθbとなるようにして下方に出射される。また、白色LED27からの白色光は、それに対応するレンズ部13により、照射角がθwとなるようにして下方に出射される。なお、本実施の形態において、各照射角の関係は、大きい順に、θr、θw、θbとなるように設定されている。例えば、θrが60度、θwが50度、θbが40度などである。また、各照射角θr、θw、θbは、栽培する植物のいずれの葉にも影ができにくくなるように調整されている。赤色LED23に対応するレンズ部13は赤色光の照射角が他の色の光の照射角よりも広角になるように形成されているため、赤色光をより広い範囲に照射することができる。なお、同色のLED21同士であっても異なる色のLED21同士であっても、その配置されている位置などに応じて照射角度が異なるようにしてもよい。
【0077】
レンズカバー11は、LED21から照射対象までの距離が、20センチメートル程度から2メートル以上まで対応可能に構成されている。照明装置1は、数百万ミリカンデラもの強力な光エネルギを発生することができるので、このように広い範囲の栽培対象についてレンズカバー11を共用することができる。
【0078】
ここで、各色のLED毎に照射角が異なるものを用いることができたとしても、所望の照射態様で光照射を行うことは可能である。しかしながら、その場合、LED毎に電気的な仕様が異なることが多い。仕様が異なる各色のLEDを、所望の照射光を得られるように、同一の基板に混合して配置することは、回路構成が複雑になるために困難である。換言すると、電気的特性が互いに近くなるようにLED21を揃えたり、LED21の品種や製造者が異なったりすると、LED21の個々の照射角度を所望の照射角度にできない場合がある。また、同一の基板に、複数のLEDを、互いに光軸が異なるように配置することも困難である。
【0079】
本実施の形態においては、照明装置1は、各レンズ部13を所望の形状に調整したレンズカバー11を用いることにより、栽培装置500で栽培する植物に適した所望の照射態様で光を照射することができる。個々のLED21の光学的特性が所望のものでなくても、レンズカバー11を用いてLED21の光を植物の栽培に適した所望の照射角度や光強度で照射することができる。また、個々のLED21について別々のレンズを設けたりすることなく、低コストで、所望の照射角度で照射可能な照明装置1を製造することができる。特に、レンズカバー11は広い範囲の栽培対象について共用することができ、同一形状のレンズカバー11を大量生産することができるので、レンズカバー11を低コストで制作することができる。
【0080】
なお、複数のレンズ部13が一体に形成されたレンズカバー11に代えて、個別のLED21に対してそれぞれにレンズ機能を持たせたレンズカバーを付帯するようにしてもよい。この場合であっても、上述と同様に、それぞれLED21単体の光学的特性が所望のものでなくても、様々な用途に対して対応できるように、所望の照射態様で光を照射させることができる。
【0081】
また、上述のように、レンズカバー11は広い範囲の栽培対象について共用できるものであるが、レンズカバー11を取り替え可能にしてもよい。例えば、一般的な植物とは異なる方向に成長する植物などを栽培する際には、レンズカバー11をその植物により適したものに取り替えることにより、その植物により適した照射態様で光照射を行うことができる。この場合、LED21やプリント配線板29そのものを光の照射角度等が異なる別のものに交換することなく、同一の照明装置1を用いつつ、レンズカバー11を取り替えるだけで、容易にかつ低コストで種々の所望の照射態様での光照射を実現可能である。
【0082】
[補助加熱ユニット150の説明]
【0083】
図11は、冷却装置100の閉管路の一部を示す平面図である。
【0084】
図において、上段の照明装置1の放熱部120と、その下段の照明装置1の冷却部110とを併せて示す。冷却装置100は、補助加熱ユニット150を用いないで使用してもよいし、必要に応じて、補助加熱ユニット150を用いてもよい。本実施の形態において、モジュール間配管107部分には、図に2点鎖線で示すように、補助加熱ユニット150を接続することができる。このとき、補助加熱ユニット150は、照明装置1の両モジュール3の間に配置される。
【0085】
図12は、補助加熱ユニット150を示す平面図である。
【0086】
補助加熱ユニット150は、モジュール間配管107に代えて、第1モジュール3aと第2モジュール3bとの間に配置される。すなわち、補助加熱ユニット150は、冷却装置100の閉管路のうち、第1モジュール3a及び第2モジュール3bのそれぞれのLEDユニット10のチラーケース70同士を接続する部分となる。
【0087】
補助加熱ユニット150は、制御回路200の制御に基づいて駆動される。補助加熱ユニット150は、ヒータ151が通電されて発生した熱により、循環液を加熱する。ヒータ水温センサ153は、循環液の温度制御を行うために用いられる。注入口155は、冷却装置100の閉管路に循環液を充填したり循環液のエア抜きを行ったりするために用いられる。すなわち、補助加熱ユニット150は、照明装置1の最上段に位置している。
【0088】
補助加熱ユニット150は、例えば、冬場等に外気温が0°C以下とるような寒冷地域において、保温用熱量が不足しないようにするために用いることができる。この補助加熱ユニット150は、後述するような制御回路200による制御により、外気温が10°C以上ではほとんど作動しない。補助加熱ユニット150は、極寒時など、苗床510の土壌温度が例えば16°C以下であってポンプ101が動作中であり、かつ、循環液の温度が23.5°C以下である場合のみに駆動される。外気温が例えば10°C以上で循環液の温度がある程度高くなる場合に、LED21より発生する熱源のみで苗床510の保温が行われる。他方、外気温が例えば10°C以下になれば、循環液の温度が下がり、ヒータ151を併用した省エネルギ運転で苗床510の保温をすることができる。
【0089】
なお、補助加熱ユニット150は、照明装置1の最上段でのみ用いられるものに限られない。すなわち、閉管路中に循環液の注入口を別に設けた場合には、補助加熱ユニット150は、比較的下方の位置に設置することができる。また、補助加熱ユニット150は、冷却装置100につき複数設けてもよい。例えば、各照明装置1に補助加熱ユニット150が1つずつ対応するようにしてもよい。また、補助加熱ユニット150は、モジュール3部分に固定されるものに限られない。補助加熱ユニット150は、閉管路中のいずれの部分に設けてもよい。
【0090】
[制御回路200の構成]
【0091】
図13は、照明装置1の制御回路200の概略構成を示す回路図である。
【0092】
以下、制御回路200の説明を簡単に行うため、一式の照明装置1について独立した一式の冷却装置100が用いられていると仮定し、この場合について説明する。なお、冷却装置100は、補助加熱ユニット150を用いていると仮定する。
【0093】
図を参照して、制御回路200は、AC電源に接続された電源回路211を有している。電源回路211は、AC電源を直流電源に変換し、制御回路200の各部に電源を供給して制御回路200を駆動する。また、電源回路211の直流電源は、後述のようにして各LEDユニット10に供給され、それによりLEDユニット10が駆動される。電源回路211において、AC電源は、冷却装置100のポンプ101とヒータ151に接続されている。ポンプ101及びヒータ151に共通なAC電源からの給電線上には、第1リレー(RELAY1)が設けられている。また、AC電源からヒータ151への給電線上には、第2リレー(RELAY2)が設けられている。
【0094】
図を参照して、制御回路200は、冷却装置100の動作を制御する回路として、苗床温調回路213と、ヒータ水温温調回路215とを有している。苗床温調回路213は、苗床センサ130が接続されている回路である。苗床温調回路213は、第1リレーに接続されており、後述のように苗床センサ130の検知温度に応じて第1リレーを開閉する。ヒータ水温温調回路215は、ヒータ水温センサ153が接続されている回路である。ヒータ水温温調回路215は、第2リレーに接続されており、後述のようにヒータ水温センサの検知温度に応じて第2リレーを開閉する。
【0095】
また、制御回路200は、LEDユニット10を駆動させるための回路として、基準発振回路221と、第1ワンパルス発生回路223及び第2ワンパルス発生回路225と、CDS明暗センサ回路227と、リセット回路(RESET回路)229と、論理回路部231と、LED電力増幅回路235を有している。LED電力増幅回路235は、2つ設けられており、それぞれ、第1モジュール3aの3つのLEDユニット10、第2モジュール3bの3つのLEDユニット10に接続されている。本実施の形態において、LEDユニット10のLED21は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により点灯される。
【0096】
以下、制御回路200の構成について、より詳細に説明する。
【0097】
[LED21の制御回路]
【0098】
基準発振回路221は、コンデンサC6、抵抗R17、抵抗R18、インバータINV4で構成された発振器により、350〜450Hzのパルス信号を発生させる。基準発振回路221は、インバータINV5を介し、第1ワンパルス発生回路223のワンショットマルチバイブレータMV1の入力Bに接続されている。第1ワンパルス発生回路223は、コンデンサC7及び抵抗R19の定数で決まるワンパルス出力Qを発生する。また、基準発振回路221は、インバータINV5及びインバータINV6を介し、第2ワンパルス発生回路225のワンショットマルチバイブレータMV2の入力Bに接続されている。第2ワンパルス発生回路225は、コンデンサC8及び抵抗R20の定数で決まるワンパルス出力Qを発生する。各ワンパルス出力Qのパルス幅は、基準発振回路221で発生するパルス信号の1/2周期の1/10〜1/20程度にすればよい。
【0099】
なお、ワンショットマルチバイブレータMV1によれば、基準発振回路221の出力の立下り時にワンパルス出力Qが発生し、他方、ワンショットマルチバイブレータMV2によれば、基準発振回路221の出力の立ち上がり時にワンパルス出力Qが発生する。このように2つのワンパルス出力Qの位相がずれているので、直流電源から電力を平均的に供給することができ、電源回路211の小形化が可能となる。
【0100】
論理回路部231には、回路OR1〜OR4と、インバータINV7,INV8とが設けられている。回路OR1の2つの入力のうち一方には、ワンショットマルチバイブレータMV1のワンパルス出力Qが接続され、他方には、回路OR2の2つの入力のうち一方が接続されている。回路OR3の2つの入力のうち一方には、回路OR1の出力が接続され、他方には、回路OR4の2つの入力のうち一方が接続されている。回路OR1の入力と回路OR2の入力とを接続する信号線は、ダイオードD3、コンデンサC5、抵抗R15、抵抗R16、インバータINV3で構成されたリセット回路229の出力に接続されている。また、回路OR3の入力と回路OR4の入力とを接続する信号線は、CDS明暗センサ回路227のコンパレータCP3の出力に接続されている。
【0101】
回路OR3の出力は、インバータINV7を介し、LED電力増幅回路235の抵抗R27,R28やトランジスタQ3に接続される。回路OR4の出力は、インバータINV8を介し、抵抗R29,R30,トランジスタQ4へ接続されている。LED電力増幅回路235のトランジスタQ3,Q4の出力は、それぞれ、第1モジュール3aのLEDユニット10の入力(LED+A)、第2モジュール3bのLEDユニット10の入力(LED+B)に接続されている。
【0102】
リセット回路229は、制御回路200の電源投入時の誤出力を停止させるために、電源投入とLEDの駆動回路のオンとの間に時間差を設けるための回路である。
【0103】
CDS明暗センサ回路227は、CDSセンサ5や、コンパレータCP3等を有している。CDS明暗センサ回路227は、CDSセンサ5により、LED21の点灯をON・OFFさせるための回路である。CDSセンサ5からの明暗信号は、抵抗R21、抵抗R22で分圧され、コンパレータCP3の(−)入力に接続される。コンデンサC9は、CDSセンサ5より侵入するノイズ消去のために、及びCDSセンサ5の動作速度を緩慢にするために設けられている。抵抗R23と、抵抗R24,R25,R26と、可変抵抗VR3とで分圧された電圧は、抵抗R24と抵抗R25との交点で、コンパレータCP3の(+)入力に接続される。この電圧は、可変抵抗VR3の抵抗値を変化させることにより変更することができる。
【0104】
コンパレータCP3の(−)入力の電圧が、コンパレータCP3の(+)入力の電圧より高い場合、すなわち昼間などCDSセンサ5の検知環境が明るいとき、コンパレータCP3の出力はL(ロウ)となる。そのため、回路OR3及び回路OR4の共通接続入力がLとなり、回路OR3及び回路OR4の各出力はLとなる。可変抵抗VR3の調整を行うことにより、コンパレータCP3の出力がLとなる照度の閾値を変更することができる。
【0105】
回路OR3の出力がLのとき、インバータINV7の出力はH(ハイ)となり、トランジスタQ3の出力が停止する。これにより、第1モジュール3aのLED21の駆動が停止され、LED21が消灯する。同様に、回路OR4の出力がLのとき、インバータINV8の出力はHとなり、トランジスタQ4の出力が停止する。これにより、第2モジュール3bのLED21の駆動が停止され、第2モジュール3bのLED21が消灯する。
【0106】
他方、外光などの照度不足であったり、夜間であるとき、CDSセンサ5の出力に基づいて、コンパレータCP3の出力がHとなる。このとき、トランジスタQ3,Q4の出力が共にONとなり、各モジュール3のLED21が点灯する。
【0107】
[冷却装置100の制御回路]
【0108】
苗床温調回路213において、抵抗R1とサーミスタTH1とで分圧されたセンサ電圧は、抵抗R2及びコンデンサC1を通り、コンパレータCP1の(−)入力に接続されている。抵抗R3と、可変抵抗VR1と、抵抗R4,R5,R6とで分圧された電圧は、抵抗R4と抵抗R5との交点より、コンパレータCP1の(+)入力に接続されている。コンパレータCP1の出力は、インバータINV1の入力に接続されている。インバータINV1の出力は、抵抗R7を介し、トランジスタQ1及び第1リレーRELAY1へと接続されている。第1リレーRELAY1の出力接点は、ポンプ101と第2リレーRELAY2の片方へ接続されている。
【0109】
コンパレータCP1では、コンパレータCP1の(−)入力のセンサ電圧と、可変抵抗VR1で設定された基準電圧であるコンパレータCP1の(+)入力の電圧とが比較される。センサ電圧が高い場合すなわち設定された温度より苗床510の温度が低いときには、コンパレータCP1の出力はLとなり、インバータINV1の出力はHとなる。このH信号を受けると、トランジスタQ1はONとなり、第1リレーRELAY1もONとなる。これにより、第1リレーRELAY1の接点が導通状態となって、ポンプ101が駆動され、また、ヒータ151が第2リレーRELAY2の導通に応じて駆動可能になる。他方、センサ電圧が低い場合すなわち設定された温度より苗床510の温度が高い場合には、コンパレータCP1の出力はHとなり、インバータINV1の出力はLとなる。これにより、第1リレーRELAY1がOFFとなり、第1リレーRELAY1の接点が開放されてポンプ101の通電が停止する。このとき、同時に、ヒータ151も駆動しなくなる。このように、制御回路200は、苗床510の温度に応じて、ポンプ101の動作を適宜制御し、循環液の閉管路内における流量を制御する。
【0110】
ヒータ水温温調回路215において、抵抗R8とサーミスタTH2とで分圧されたセンサ電圧は、抵抗R9及びコンデンサC3を通り、コンパレータCP2の(−)入力に接続されている。抵抗R10と、可変抵抗VR2と、抵抗R11,R12,R13とで分圧された電圧は、抵抗R11と抵抗R12との交点より、コンパレータCP2の(+)入力に接続されている。コンパレータCP2の出力は、インバータINV2の入力に接続されている。インバータINV2の出力は、抵抗R14を介し、トランジスタQ2及び第2リレーRELAY2に接続されている。第2リレーRELAY2の出力接点は、ヒータ151の制御用のものである。第2リレーRELAY2の出力接点のうち一方は、第1リレーRELAY1の接点の出力側に接続されている。また、その他方は、交流電源の第1リレーRELAY1の接点の逆相側へ接続されている。ヒータ水温温調回路215の動作は、苗床温調回路213と同様である。すなわち、あるヒータ151の水温が低い場合には、第2リレーRELAY2の接点がON(通電)となり、ヒータ151の水温が高い場合には、第2リレーRELAY2の接点がOFF(停止)となる。
【0111】
ここで、LED21の輝度は温度に依存し、温度が高くなれば輝度が下がり、また、寿命もそれに比例して短くなる。すなわち、温度が高くなると、LED21の適温での仕様とされる輝度を得ることができなくなる。仮に、LED21を直流電圧を連続して印可して点灯させた場合、点灯時間が経過するにつれてLED21の内部で発生するジュール熱が蓄積する。そのため、十分な冷却が行われない場合には、LED21が50°C以上の高温となり、短時間でLED21が劣化する。この照明装置1では、上述のように、LED21を、定格の3〜4倍程度の過電流で、間欠周期の1/10〜1/20程度の点灯時間で間欠点灯させる。したがって、LED21の温度上昇を大幅に低減し、LED21の寿命を犠牲にすることなく定格の数倍の輝度でLED21を点灯させることができる。また、冷却装置100により、LED21が発生した熱が回収され、苗床510の保温に用いられるので、別途苗床510を保温するためのエネルギを節減することができ、省エネルギ化することができる。
【0112】
なお、1つの冷却装置100を複数の照明装置1で共用している場合には、適宜、その照明装置1の構成に併せて制御回路200を変更すればよい。すなわち、例えば、各照明装置1にそれぞれ制御回路200を設け、そのうちの電源回路211などを各照明装置1で共用するようにしてもよい。また、複数の照明装置1で共通の制御回路200を用いてもよい。この場合、各照明装置1に対応する温調回路を設けて回路を構成してもよい。また、補助加熱ユニット150を用いないときには、ヒータ151やヒータ水温センサ153が制御回路200に接続されないが、制御回路200のその他の部分の構成は上述と同様にすることができる。
【0113】
[照明装置1の動作の説明]
【0114】
図14は、照明装置1の制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0115】
図を参照して、制御回路200の電源をONにしてからの照明装置1の動作の流れを説明する。以下の説明において、角括弧内の数字は、図中の各項目のそれと対応するものである。
【0116】
まず、回路電源をONとすると、リセット回路229の働きにより、それから数秒遅れて、リセット回路229がONになる([1][2])。その後、CDSセンサ5により、現在の照度が測定され、光合成が活発に行える下限照度(例えば200〜300Lx)より大きいかどうかが検知される([10])。照度が下限照度以上であれば、LED21がOFFとなり、消灯状態となる([8])。このとき、苗床510の温度及びヒータ水温の温度のみが監視制御対象となる([3][5])。苗床510の温度は、例えば、適温である16°C〜18°Cの間に維持すべく設定されている。制御回路200は、苗床510の温度が適温に保温されるように、ポンプ101のON/OFFを制御する。制御回路200は、ポンプ101がONであるときにのみ、ヒータ水温制御を行う([5])。制御回路200は、循環液が、例えば13.5°C〜25°Cの範囲になるように、必要に応じてヒータ151に通電し、循環液を加熱する。これにより、LED21が消灯しているときであっても、苗床510を適温に保温することができる。寒冷地で栽培装置500を使用する際などでも、確実に苗床510を適温に保つことができるので、効率良く栽培を行うことができる。
【0117】
他方、CDSセンサ5の出力が、光合成が活発に行える下限照度以下の場合は([10]、制御回路200は、以下の通りに制御を行う。すなわち、照度が下限照度以下であれば、LED21が、制御回路200が発生する駆動信号に応じて、パルス駆動され、点灯する([7][8])。LED21の点灯時も、消灯時と同様に、苗床510の温度制御とヒータ水温の制御が行われ、苗床510が適温となるように制御される([3][6])。例えば、苗床510の温度が適温に満たなければ、ポンプ101が駆動され、苗床510の温度が適温を超えると、ポンプ101が停止される。
【0118】
このように制御回路200の制御が行われるので、苗床510には、太陽光など外光がある場合にはその外光が照射され、外光の光量が不足するときには、LED21の光が照射される。必要に応じて、冷却装置100により苗床510の保温が行われる。したがって、植物の育成を一日あたり24時間行うことが可能になる。植物の種蒔きから収穫までの期間が通常の露地栽培などにおけるそれの半分以下に短縮される。また、限られた空間で立体的に栽培することができるため、収量を十分に確保することができ、無農薬化や低肥料化を容易に行うことができる。
【0119】
[実施の形態における効果]
【0120】
以上のように構成された照明装置では、冷却装置により、LEDユニットのLEDの冷却を行うことができるので、LEDを効率良く点灯させることができる。また、LEDの時に得た熱を用いて苗床の保温を行うことができるので、常時別の熱源を用いて苗床の保温を行う必要はなく、消費するエネルギを低減することができる。苗床の温度は、制御回路200の苗床温調回路213により所定の範囲内に保たれるので、植物を効率良く栽培することができる。
【0121】
また、冷却装置は独立した閉管路内で循環液を循環させるため、栽培方法にかかわらず、広く苗床の保温を行うことができ、冷却装置のメンテナンスも容易に行うことができる。また、循環液として、不凍液など、照明装置の設置環境や閉管路を構成する部材の材質などに適したものを用いることができるので、閉管路内でのトラブルの発生を防止することができる。
【0122】
[その他]
【0123】
なお、生物育成用照明装置は、上述のように砂床を苗床として用いた栽培装置に限らず、例えば水耕栽培や固形培地耕など、種々の栽培法で植物の栽培を行う栽培装置などに用いることができる。すなわち、冷却装置の放熱部を養液中や固形培地等の中に配置することにより、効率良く、植物が位置する床部(苗床)の保温を行うことができる。
【0124】
また、生物育成用照明装置は、植物界に属するものに限られず、動物界、原生生物界、菌界、又は細菌界に属するものなど、種々の生物の育成用途に用いることができるものである。すなわち、育成対象となる生物に適した光を照明装置全体として照射できるように各波長のLEDを組み合わせて、レンズカバーにより各LEDの照射角度などを設定すればよい。この場合であっても、LEDを冷却しつつ、循環液の熱を放熱部で放熱し、照射対象となる生物が位置する床部を保温することにより、エネルギを有効に活用して、消費エネルギを低減することができる。
【0125】
なお、上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
1 生物育成用照明装置(照明装置)
21 LED(Light Emitting Diode)
70 チラーケース(閉管路の一部)
100 冷却装置
103 第1ポンプ配管(閉管路の一部)
105 ユニット間配管(閉管路の一部)
107 モジュール間配管(閉管路の一部)
109 照明苗床間配管(閉管路の一部)
111 第2ポンプ配管(閉管路の一部)
113 冷水配管(閉管路の一部)
120 放熱部(閉管路の一部)
130 苗床センサ(床温検知手段の一例)
150 補助加熱ユニット
151 ヒータ
153 ヒータ水温センサ(液温検知手段の一例)
200 制御回路
510 苗床(床部の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED(Light Emitting Diode)から出射された光を育成対象の生物に照射する生物育成用照明装置であって、
循環液を閉管路内で循環させ、前記循環液と前記LEDとで熱交換させることにより前記LEDを冷却する冷却装置を備え、
前記冷却装置は、
前記育成対象の生物が位置する床部に配された、前記閉管路の一部を構成する放熱部を有し、
前記LEDの冷却時に温度が上昇した循環液を前記放熱部に流すことにより前記床部の保温を行う、生物育成用照明装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、
前記床部の温度を検知する床温検知手段を有し、
前記床温検知手段の検知結果に基づいて前記循環液の前記閉管路内における流量を制御する、請求項1に記載の生物育成用照明装置。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記閉管路の一部に接続され、ヒータにより循環液を加熱する補助加熱ユニットを有している、請求項1又は2に記載の生物育成用照明装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、
前記循環液の温度を検知する液温検知手段を有し、
前記液温検知手段の検知結果に基づいて前記補助加熱ユニットの動作を制御する、請求項3に記載の生物育成用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−30479(P2011−30479A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178687(P2009−178687)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(509218157)株式会社ベジット (2)
【Fターム(参考)】