説明

生物試料接触用電極及びその製造方法並びに電気測定装置

【課題】生物試料の電気測定のために必要な電気特性と物性とを備える生物試料接触用電極の提供。
【解決手段】フェノール誘導体が電解重合により導電体表面に成膜された測定電極1を提供する。測定電極1において、フェノール誘導体が重合したポリマーには、シラン化合物を結合してもよい。測定電極1は、電解重合により絶縁膜11を成膜しているため、微小な形状あるいは複雑な形状の導電体であっても絶縁被覆を行うことができ、良好な電気的絶縁性を示す。また、前記ポリマーにシラン化合物を結合することにより、絶縁膜11の親水性あるいは疎水性を変化させて、生物試料に対する親和性を制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、生物試料接触用電極、該電極の製造方法及び該電極を備える電気測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞(特に心筋細胞や神経細胞)の活動性及びイオンチャネル機能等を電気生理学的に評価すること、あるいは細胞に対する被検物質の薬効や毒性を電気生理学的に評価することなどを目的として、細胞の電気測定が行われている。
【0003】
細胞の電気測定は、例えば、細胞内に、先端部を除いて絶縁膜が形成された電極を挿入し、該電極と細胞培養液中に浸漬した参照電極との間の電位差(あるいは電流)を測定することにより行うことができる。ここで用いられる電極は、挿入された細胞内と通電するとともに、細胞外の培養液などに対しては絶縁される必要がある。特許文献1には、このような電気特性を備える微小絶縁被覆金属導電体が開示されている。
【0004】
本技術に関連して、電解重合法を用い、金属導体を電極とし、金属導体上に電気絶縁性の高分子の薄い重合被膜を形成する方法が知られている。特許文献2には、フェノール誘導体の電解重合により電極とした金属導体表面に重合被膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−227145号公報
【特許文献2】特開2000−104014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細胞の電気測定に用いられる電極は、挿入された細胞あるは接触する細胞との間で導電性を示し、細胞外の培養液などとの間では絶縁性を示す電気特性を備えることが求められる。また、前記電極は、細胞への挿入時の細胞膜の障害が極力小さく、細胞との接触時には優れた細胞接着性を示すことが望ましい。
【0007】
本技術は、これらの要望を満たす生物試料接触用電極を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため、本技術は、フェノール誘導体が電解重合により導電体表面に成膜された生物試料接触用電極を提供する。この生物試料接触用電極は、電解重合により絶縁膜を成膜しているため、微小な形状あるいは複雑な形状の導電体であっても絶縁被覆を行うことができ、良好な電気的絶縁性を示す。
この生物試料接触用電極において、フェノール誘導体が重合したポリマーには、シラン化合物を結合してもよい。前記ポリマーにシラン化合物としてアミノ系シランカップリング剤を結合することにより絶縁膜を親水化でき、シラン化合物としてアルキル系シランカップリング剤を結合することにより絶縁膜を疎水化できる。このように絶縁膜の親水性及び疎水性を変化させることで、絶縁膜の細胞あるいは細胞膜に対する親和性を制御できる。
この生物試料接触用電極は、細胞などの生物試料の電気測定に供されることが好適であり、本技術は、この生物試料接触用電極を測定電極として備える電気測定装置を併せて提供する。
この電気測定装置は、さらに参照電極を備え、生物試料に接触された前記測定電極と前記参照電極との間の電位差を測定する測定部を有するものとされる。
【0009】
さらに、本技術は、導電体表面にフェノール誘導体を電解重合により成膜する工程を含む生物試料接触用電極の製造方法をも提供する。この製造方法は、さらに、フェノール誘導体が重合したポリマーにシラン化合物を結合する工程を含んでもよい。
【0010】
本技術において、「生物試料」には、細胞と、細胞を含んで構成される試料であって細胞塊、組織片及び組織などと、が少なくとも含まれる。「細胞」及び「組織」には、生体から取り出した細胞及び組織に加えて、培養された細胞及び組織も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本技術により、挿入された細胞あるいは接触する細胞との間で導電性を示し、細胞外の培養液などとの間では絶縁性を示す電気特性を備えるとともに、細胞あるいは細胞膜に対する親和性を制御可能な生物試料接触用電極が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本技術の第一実施形態に係る生物試料接触用電極とこれを含む電気測定装置の構成を説明する模式図である。
【図2】フェノール誘導体の重合反応を説明する図である。
【図3】本技術の第二実施形態に係る生物試料接触用電極とこれを含む電気測定装置の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。説明は以下の順序で行う。

1.第一実施形態に係る生物試料接触用電極と電気測定装置
(1)装置構成
(2)測定電極の絶縁被覆
(3)絶縁膜の親疎水制御
2.第二実施形態に係る生物試料接触用電極と電気測定装置
(1)装置構成
(2)測定電極の絶縁被覆
(3)絶縁膜の親疎水制御

【0014】
1.第一実施形態に係る生物試料接触用電極と電気測定装置
(1)装置構成
図1は、本技術の第一実施形態に係る生物試料接触用電極とこれを備える電気測定装置の構成を説明する模式図である。
【0015】
図中、符号Aで示す電気測定装置は、生物試料接触用電極である測定電極1と、参照電極2と、測定部3と、を含んで構成されている。ここでは生物試料として細胞の電気測定を行う場合を例に説明する(以下、生物試料Sを「細胞S」とも称する)。
【0016】
測定電極1は、導電性を有する材料(導電体)により形成した微小な極細針の表面に、針先端部を除いて絶縁膜11を成膜したものである。測定電極1の先端部は細胞Sに穿刺・挿入され、先端部に露出する導電体が細胞の内部と電気的に接続される。さらに、導電体は、測定電極1の末端部において回路によって測定部3に電気的に接続されている。
【0017】
測定部3には、細胞Sの培養液中に浸漬された参照電極2とも回路によって電気的に接続されており、測定部3は、測定電極1と参照電極との間の電位差(あるいは電流)を測定することにより、細胞Sの電気測定を行う。電気測定装置Aは、測定部3により測定された電位差を記録・保持する記憶部と、外部に出力する出力部とを有していてもよい。記憶部はハードディスクやメモリなどの汎用の記憶手段であってよく、出力部はディスプレイやプリンターであってよい。
【0018】
なお、ここでは、生物試料Sとして単一の細胞の電気測定を行う場合を例に説明しているが、生物試料Sが細胞塊、組織片又は組織である場合にも、同様の原理によって電気測定を行うことが可能である。
【0019】
(2)測定電極の絶縁被覆
測定電極1の絶縁膜11は、導電体表面にフェノール誘導体を電解重合により重合させることによって成膜されている。フェノール誘導体の電解重合は、従来公知の手法によって行うことができる。具体的には、導電体を作用極とし、対極とともに所定濃度のフェノール誘導体を含む溶液中に浸漬し、両極間に電圧を印加して、導電体表面にフェノール誘導体を酸化重合させる。
【0020】
導電体としては、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、銅、チタン、銀、パラジウム、インジウム、白金、金およびこれらの合金などを組成として有する金属導体を用いることができる。また、導電体として、多孔質カーボン、カーボンペレット、カーボンペーパー、カーボンフェルト、炭素繊維及び炭素微粒子の積層体などのカーボン系材料を用いてもよい。
【0021】
重合反応は、フェノール誘導体のモノマーまたはポリマーのフェノキシラジカル同士がカップリング反応を起こし、重合繰り返し単位が1つずつ増加していくことにより進行する(図2参照)。この反応の進行に伴って、導電体表面に電気絶縁性の被膜の成長が起こり、絶縁膜11が成膜される。この際、フェノール誘導体溶液の濃度、印加する電圧値及び印加時間等の電解重合条件を適宜変更することにより、絶縁膜11の膜厚を任意に制御できる。
【0022】
電解重合に用いるフェノール誘導体としては、フェノール基を有するモノマーであれば特に限定されず、フェニレンオキサイド、2-アリルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2-(2-プロペニルフェノール)などを用いることができる。これらのモノマーにおいてフェノール基は置換基を有していてもよい。
【0023】
電解重合に用いる対極には、鉄、ステンレス、アルミニウム、パラジウム、白金、金、炭素など、種々のものを用いることができる。
【0024】
電解重合によって絶縁膜11の成膜を行うことにより、微小な導電体構造体あるいは複雑な形状の導電体構造体であっても被覆を行うことができ、得られる測定電極1に十分な絶縁性を付与できる。従って、電気測定装置Aでは、細胞Sに挿入した測定電極1と培養液との絶縁性が良好であり、細胞Sの微小な電気的変化を検出することが可能となる。
【0025】
(3)絶縁膜の親疎水制御
絶縁膜11には、必要に応じてシラン化合物による修飾を行ってもよい。シラン化合物の修飾は、フェノール誘導体のポリマー中に残存する未反応の水酸基にシランカップリング剤をカップリングさせることにより行い得る。シランカップリング剤としては、例えば以下を用いることができる。
【0026】
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−( アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)− 3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤。
【0027】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシル取りエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン等のアルキル系シランカップリング剤。
【0028】
フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、ジメチルフェニルメトキシシラン等のアリール系シランカップリング剤。
【0029】
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のアルコキシ系シランカップリング剤。
【0030】
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン等のアルケニル系シランカップリング剤。
【0031】
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル) エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤。
【0032】
p−スチリルトリメトキシシラン等、のスチリル系シランカップリング剤。
【0033】
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤。
【0034】
3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤。
【0035】
3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤。
【0036】
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン系シランカップリング剤。
【0037】
ビス−(3−(トリエトキシシリル)−プロピル)−ジスルフィド、ビス−(3−(トリエトキシシリル)−プロピル)−テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤。
【0038】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤。
【0039】
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤。
【0040】
絶縁膜11に修飾するシラン化合物を選択することにより、絶縁膜11を親水化あるいは疎水化することができ、細胞Sに対する親和性を制御できる。例えば、シラン化合物として、アミノ系シランカップリング剤のような極性を有する置換基を持つ化合物を修飾した場合、絶縁膜11を親水化できる。また、逆に、絶縁膜11を疎水化したい場合には、アルキル系シランカップリング剤のような極性のない置換基を持つ化合物を修飾すればよい。
【0041】
例えば、金基板表面の水に対する接触角は77度であり、ポリフェニレンオキサイドを電解重合により成膜した金基板表面の接触角は70度である。これに対して、アミノプロピルトリメトキシシランをポリフェニレンオキサイドの重合膜に修飾した金基板表面は、接触角が55度となるまで親水化される。ここでの接触角は、基板表面に高さ1cmから10μl水滴を滴下して観察し、θ/2法により算出した値である。
【0042】
なお、アミノプロピルトリメトキシシランをポリフェニレンオキサイドの重合膜に修飾した金基板表面の接触角(55度)は、アミノプロピルトリメトキシシランを直接金基板に修飾した場合の接触角(67度)よりも顕著に小さくなった。すなわち、シランカップリング剤の修飾による導電体表面の親水化あるいは疎水化は、シランカップリング剤を直接導電体に修飾するよりも、絶縁膜を介して修飾したほうがより大きな効果が得られる。これは、絶縁膜を介してシランカップリング剤を修飾した場合、フェノール誘導体のポリマー中に残存する水酸基のカップリング反応への寄与によってより多くのシランカップリング剤が結合するためと推定される。
【0043】
電気測定装置Aにおいて、測定電極1は細胞Sに穿刺・挿入されるものであるため、絶縁膜11は親水化することが好ましい。絶縁膜11を親水性とすることで、測定電極1が細胞Sの細胞膜とくっつき難くなり、測定電極1を細胞Sに穿刺する際に細胞膜が障害されて細胞Sが破壊されてしまうのを防止できる。
【0044】
2.第二実施形態に係る生物試料接触用電極と電気測定装置
(1)装置構成
図3は、本技術の第二実施形態に係る生物試料接触用電極とこれを備える電気測定装置の構成を説明する模式図である。
【0045】
図中、符号Bで示す電気測定装置は、生物試料接触用電極である測定電極1と、参照電極2と、測定部3と、を含んで構成されている。ここでも生物試料として細胞の電気測定を行う場合を例に説明する(以下、生物試料Sを「細胞S」とも称する)。
【0046】
測定電極1は、導電性を有する材料(導電体)により形成された平板電極の表面に、一部(非絶縁部12)を除いて絶縁膜11を成膜したものである。細胞Sは、測定電極1上の非絶縁部12を含む領域に接触している。測定電極1は、絶縁膜11及び細胞Sによって隔てられ、細胞Sの培養液中に浸漬された参照電極2と電気的に絶縁されている。
【0047】
測定電極1及び参照電極2は、回路によって測定部3に電気的に接続されており、測定部3は、測定電極1と参照電極との間の電位差(あるいは電流)を測定することにより、細胞の電気測定を行う。電気測定装置Bは、測定部3により測定された電位差を記録・保持する記憶部と、外部に出力する出力部とを有していてもよい。記憶部はハードディスクやメモリなどの汎用の記憶手段であってよく、出力部はディスプレイやプリンターであってよい。
【0048】
なお、ここでは、生物試料Sとして単一の細胞の電気測定を行う場合を例に説明しているが、生物試料Sが細胞塊、組織片又は組織である場合にも、同様の原理によって電気測定を行うことが可能である。
【0049】
(2)測定電極の絶縁被覆
測定電極1の絶縁膜11は、導電体表面にフェノール誘導体を電解重合により重合させることによって成膜されている。本実施形態において、フェノール誘導体の電解重合方法、導電体材料及び用いられるフェノール誘導体と対極は、上述の第一実施形態と同様とできる。また、電解重合の際、フェノール誘導体溶液の濃度、印加する電圧値及び印加時間等の電解重合条件を適宜変更することにより、絶縁膜11の膜厚を任意に制御できる点も上述の通りである。
【0050】
電解重合によって絶縁膜11の成膜を行うことにより、微小な導電体構造体あるいは複雑な形状の導電体構造体であっても被覆を行うことができ、得られる測定電極1に十分な絶縁性を付与できる。従って、電気測定装置Bでは、細胞Sに接触した状態の測定電極1と培養液との絶縁性が良好であり、細胞Sの微小な電気的変化を検出することが可能となる。
【0051】
(3)絶縁膜の親疎水制御
絶縁膜11には、必要に応じてシラン化合物による修飾を行ってもよい。本実施形態において、シラン化合物の修飾方法及び用いられるシラン化合物は、上述の第一実施形態と同様とできる。
【0052】
絶縁膜11に修飾するシラン化合物を選択することにより、絶縁膜11を親水化あるいは疎水化することができ、細胞Sに対する親和性を制御できる。例えば、シラン化合物として、アミノ系シランカップリング剤のような極性を有する置換基を持つ化合物を修飾した場合、絶縁膜11を親水化できる。また、逆に、絶縁膜11を疎水化したい場合には、アルキル系シランカップリング剤のような極性のない置換基を持つ化合物を修飾すればよい。
【0053】
電気測定装置Bにおいて、測定電極1は、絶縁膜11及び細胞Sによって隔てられ、細胞Sの培養液中に浸漬された参照電極2と電気的に絶縁されており、測定電極1と参照電極2との絶縁性を維持するためには、細胞Sが絶縁膜11に密着している必要がある。このため、絶縁膜11は疎水化を行うことにより、細胞Sの絶縁膜11に対する接着性を高めることが好ましい。
【0054】
なお、本技術に係る生物試料接触用電極は、以下のような構成をとることもできる。
(1)フェノール誘導体が電解重合により導電体表面に成膜された生物試料接触用電極。
(2)フェノール誘導体が重合したポリマーにシラン化合物が結合された上記(1)記載の生物試料接触用電極。
(3)前記シラン化合物としてアミノ系シランカップリング剤が結合された上記(2)の生物試料接触用電極。
(4)前記シラン化合物としてアルキル系シランカップリング剤が結合された上記(2)の生物試料接触用電極。
(5)細胞の電気測定に供される上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生物試料接触用電極。
【0055】
また、本技術に係る電気測定装置は、以下のような構成をとることもできる。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の生物試料接触用電極を測定電極として備える電気測定装置。
(7)さらに参照電極を備え、生物試料に接触された前記測定電極と前記参照電極との間の電位差を測定する測定部を有する上記(6)記載の電気測定装置。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本技術に係る生物試料接触用電極は、絶縁性に優れ、細胞等の生物試料に対する親和性を制御可能であることにより、生物試料の微小な電気的変化を検出するために有用である。従って、この生物試料接触用電極を備える電気測定装置は、心筋細胞や神経細胞などの活動性及びイオンチャネル機能等の電気生理学的評価、あるいは被検物質の薬効や毒性の電気生理学的評価などに好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0057】
A,B:電気測定装置、S:生物試料、1:測定電極、11:絶縁膜、12:非絶縁部、2:参照電極、3:測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール誘導体が電解重合により導電体表面に成膜された生物試料接触用電極。
【請求項2】
フェノール誘導体が重合したポリマーにシラン化合物が結合された請求項1記載の生物試料接触用電極。
【請求項3】
前記シラン化合物としてアミノ系シランカップリング剤が結合された請求項2記載の生物試料接触用電極。
【請求項4】
前記シラン化合物としてアルキル系シランカップリング剤が結合された請求項2記載の生物試料接触用電極。
【請求項5】
細胞の電気測定に供される請求項2記載の生物試料接触用電極。
【請求項6】
請求項5記載の生物試料接触用電極を測定電極として備える電気測定装置。
【請求項7】
さらに参照電極を備え、
生物試料に接触された前記測定電極と前記参照電極との間の電位差を測定する測定部を有する請求項6記載の電気測定装置。
【請求項8】
導電体表面にフェノール誘導体を電解重合により成膜する工程を含む生物試料接触用電極の製造方法。
【請求項9】
フェノール誘導体が重合したポリマーにシラン化合物を結合する工程をさらに含む請求項8記載の生物試料接触用電極の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−24660(P2013−24660A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158306(P2011−158306)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】