説明

生理液の測定方法

【課題】測定エラーを示すような、所望の情報を提供する電流信号から、静電放電等のような外来事象によって引き起こされる電流信号又はスパイクを識別する技術を提供する。
【解決手段】生理液試料中の分析物の濃度を測定する電気化学測定技術が、記載される。特には、本発明は、外的事象によって引き起こされる信号と、測定誤差を示す信号のような所望の情報を提供する信号を識別する技術に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理液試料中の分析物の濃度を電気化学測定する技術に関する。特には、本発明は、外的事象によって引き起こされる信号を、測定エラーを示す信号のような所望の情報を提供する信号から識別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般には使い捨てテストストリップ等によって提供されるような、電気化学セルを使用する測定器具は、消費者に周知であり、かつ好まれる。これらの器具は、生理液試料中の種々の分析物の程度の検出のために使用される。例えば、尿、涙、唾液等のような、種々の異なる生理試料中の分析物の濃度は、これらの器具によって判定できる。1つの普及したある用途は、間質液、血液又は血液分画、かつ特には全血中の分析物の濃度判定である。
【0003】
典型的なテストストリップは、測定器具に電気接続できる一対の電極と一体となる試薬を有する電気化学セルを含む液試料適用領域を含む。測定を行う際に少量の血液のような生理液が、試料適用領域に適用されて試薬を湿らせる。測定器具は、電極を横切って電位を加え、かつ液体は、関心の対象である分析液の濃度に相関する反応液の測定可能な電気的性質(例えばその電導率)を変化させるように、試薬と化学反応する。結果として、反応液の電気特性(一般には、その電流を伝導する能力)は、測定器具の適切な電子システムによって測定できる。測定された電気特性は、生理液中で測定される特定の分析物の濃度に関し、かつ分析物の濃度を判定するために使用できる。例えば、血糖測定において、生成される酸化電流は、血液試料中のブドウ糖濃度を判定するために測定及び使用できる。
【0004】
一般に、測定電流の大きさは、所定時間にわたって積分され、かつ測定される分析物の濃度値を判定するために使用される。このために、測定する十分な量の試料が存在することを知った後に、電流を測定することが、重要である。それ故に、多くの測定器具は、分析物の濃度を判定するために使用される測定を開始する前に液試料の存在をチェックする方法を含んでいる。
【0005】
テストストリップ上の液試料の存在をチェックする1つの方法は、測定器具が、試料の適用を待つ間、テストストリップの電極に電位を加えることである。所定の期間、かつ所定の大きさを超える連続電流の存在は、十分な試料の存在を示し、その表示は、次に測定サイクルの開始を引き起こすために使用できる。短期間(所定の期間未満)の電流が測定される場合には、測定器具は、試料が不十分であり、かつエラー状態が発生することを判定する。この技術は有効であるが、外来信号又は事象は、全く試料が存在しない時(例えば、テストストリップが乾燥している)、又は十分な試料が存在する時でも、かかるエラー状態をもたらすことがある。かかる事象の1つの例として、静電放電は、ある状況下で、偽りの信号を提供しうる。静電放電は一般に、検出できる電極内の高電圧によって短期間電流を提供する。従って、測定装置が、不十分な試料の存在によって引き起こされる短期間の電流と、静電放電のような外来事象によって引き起こされる短期間の電流とを、本当のエラー状態を適切に表示するため識別することが望ましい。
【0006】
電子ハードウェア装置が、静電放電によって引き起こされるような外来信号にフィルタをかけるか又は抑制するために使用できる。しかしながら、かかるハードウェアに基づく装置は、一般に特定のフィルタリング又は抑制機能を提供するように、調整不可能に設定されている。例えば、多くのハードウェアフィルタは、所定の大きさを有する電流スパイクを、それが起きた時はいつでも単に遮断するように設計されており、かついつ又はどれ位長くスパイクが起きるかのような、他の要因を考慮する能力を有さない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、測定エラーを示すような、所望の情報を提供する電流信号から、静電放電等のような外来事象によって引き起こされる電流信号又はスパイクを識別する技術を提供する。概して、本発明は、電流信号が、無視できる外来事象によるか、又はエラー又は問題等の表示を提供すべき測定事象に関するか、判定するために電流信号の時期(他イミング)、期間、又は両方を考慮する方法を提供する。例えば、静電放電による電流信号は、一般に十分な測定試料の欠如又はその他の測定エラーを示す電流信号と比較して短い期間を有する。この時期(タイミング)の情報は、外来事象によって提供される電流信号と、本発明による所望の情報を提供するそれを識別するために使用される。
【0008】
本発明の1つの側面において、生理液の試料中に存在する分析物の濃度を判定するための生理液試料を電気化学分析する方法が提供される。前記方法は、少なくとも一対の電極と、試薬とを有する検査液適用領域を含む検査装置を提供することを含む。所定の電位が、前記少なくとも一対の電極を横切って提供される。電流は、閾値以上の前記少なくとも一対の電極で検出され、電流の大きさは、第1期間にわたって観察される。同様に、次の一方を実行するために、決定が行われる。1)前記電流の大きさが、前記第1期間にわたって所定値を超えたままである場合、第2期間終了時の電流の大きさは、前記検査装置の前記検査液適用領域に存在する前記生理液の中の前記分析物の濃度を示す検査指標として使用される。又は2)前記電流の大きさが、前記第1期間中、いつでも所定値以下である場合、前記電流を検出するステップ及び次の一方を実行するステップが反復される。
【0009】
本発明のもう1つの側面において、静電放電が生理液の試料の中の分析物の濃度の電気化学測定に干渉することを防ぐ方法が提供される。前記方法は、少なくとも一対の電極と試薬とを有する検査液適用領域を含む検査装置を提供することを含む。所定の電位が、前記少なくとも一対の電極を横切って提供される。電流は、前記少なくとも一対の電極で測定される。電流の大きさが、第2の所定の期間に閾値電流値を超えたままである場合、第1の所定の期間終了時の電流の大きさは、前記検査装置の前記検査液適用領域に存在する前記生理液中の前記分析物の濃度を示す検査指標として使用される。ここで第2期間は、第1期間の初期部分を含む。
【0010】
本発明のもう1つの側面において、生理液試料中の分析物の濃度を電気化学測定するための検査計測器(テストメータ)が、提供される。前記検査計測器は、処理装置(プロセッサ)と、電気化学測定装置と、メモリとを含む。前記電気化学測定装置は、少なくとも一対の電極と試薬とを有する液適用領域を含む検査装置に電気接続でき、前記電気化学測定装置が前記検査装置に電気接続される時に電位を提供し、少なくとも一対の電極を横切る電流の流れを測定する。前記メモリは、前記検査装置が電気接続される電気化学測定装置を動かすプログラムを含み、前記電気化学測定装置は、前記少なくとも一対の電極で前記電流を測定し、前記電流の大きさが、第1期間の初期部分を含む所定の第2期間に、閾値電流値を超えたままである場合、前記検査装置の前記検査液適用領域に存在する前記生理液中の前記分析物の濃度を示す検査指標として所定の第1期間終了時の電流の大きさを使用する。
【0011】
本発明のこれら及びその他の特徴、側面、及び利点は、次の記載、添付の請求項及び添付の図面に関してより良く理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、代表的な実施形態による代表的な検査計測器200の斜視図である。検査計測器200は、ハウジング201と、ディスプレイ202と、OKボタン204と、ダウン(下)ボタン206と、バック(戻る)ボタン208と、アップ(上)ボタン210と、発光ダイオード(LED)212と、ストリップポートコネクタ(SPC)214とを含む。ディスプレイ202は、利用者にテキストと、図形情報の両方を示すために、液晶ディスプレイ(LCD)であってよい。
【0013】
ユーザインタフェース(UI)は、利用者が検査計測器200を操作することを可能にする、ディスプレイ202に示されるソフトウェア駆動メニューであってもよい。利用者は、アップボタン210と、ダウンボタン206と、OKボタン204と、バックボタン208を使用して、UIを操作することができる。検査計測器200は、検査計測器の形状の一例であり、多くのその他の形状があり得る。
【0014】
ハウジング201は、高分子材料、金属と、金属合金等を含むが、それらに限定されない種々の材料のいずれからも形成できる。ディスプレイ202は、LCDディスプレイ、LEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、及びこれまで開発できたその他のタイプのディスプレイを含むが、それらに限定されない種々のディスプレイ装置であってよい。更に、ディスプレイ202は、単一の統合ディスプレイスクリーンとは対照的に、一連の光及び/又は単なる読み出しであってよい。LED212は、LEDの、他のタイプの光装置、音響装置、振動装置等を含むが、それらに限定されない他のいかなる種々の表示器であってよい。ストリップポートコネクタ214は、テストストリップを検査計測器200に電気接続し、かつ受けるために使用されるが、しかしながら他の形状のインタフェース装置も使用できる。
【0015】
ボタン204、206、208及び210は、種々のボタンのいずれか、又は接触式装置を含むが、それらに限定されない他の利用者入力装置であってよい。更に、ボタン204、206、208及び210は、ディスプレイ202上のユーザインタフェース、又は検査計測器200に組み込まれた音声認識装置に代えることができる。ディスプレイ202は、ディスプレイ202の上に重ねられ、かつ利用者がタッチスクリーン(接触画面)を通して検査計測器200への入力を提供することを可能にするタッチスクリーンも含んでよい。代表的な実施形態において、タッチスクリーンは、利用者の指、別個のペン入力(スタイラス)、又は他の接触装置によって使用できる。
【0016】
検査計測器200での使用に適するテストストリップ100を、図2に示す。テストストリップ100は、従来、基板5に印刷される電気的に絶縁した部分を含む導電層を含む。導電層は、第1接点13と、第2接点15と、基準接点11と、ストリップポートコネクタ214に電気接続するために使用するストリップ検出バー17を含む。導電層は、それぞれ第1接点13と、第2接点15と、基準接点11に電気接続される、第1作業電極12と、第2作業電極14と、基準電極10を更に含む。電極を横切って電圧を加えるため、電極へのコンタクトは、計測器の制御下で選択的に計測器内において接続される。
【0017】
テストストリップ100は、接着剤60によって結合される透明親水性フィルム36を更に含むが、それに限定されない。透明親水性フィルム36は、血液を入口90で計量する試料受けチャンバを形成する。代表的な実施形態において、フィルム36は、テストストリップの端部全体を覆い、それにより図2で60として示す接着ゾーンの間に可視試料チャンバを形成する。不透明フィルム38もまた、入口90で血液を計量するように利用者を案内するコントラストを示すために、接着剤60によって結合される。
【0018】
基板5は、高分子材料又はその他の絶縁材料を含むが、それらに限定されない種々の材料から形成される。代表的な実施形態において、材料基板5は、帝人デュポンフィルム社によって製造される(Meline ST328のような、但しそれらに限定されない)ポリエステル材料から形成できる。基板5は、例えば公称厚さ350マイクロメートル、幅370ミリメートル、及び長さ約660メートルの一巻きの材料で供給されてよい。層10、11、12、13、14、15及び17のような導電層は、多数の製造方法のいずれかによって、基板5に堆積され得る金属及び金属合金のような、但しそれらに限定されない種々の導電材料のいずれからも形成できる。不透明フィルム38は、コントラストを提供して利用者の便宜のために使用されるが、入口90で血液を計量するように利用者を導くための、印刷テキスト表示のような、多数の方法のいずれかによって代えることができる。テストストリップ100の例は、ライフスキャンインコーポレイテッド社(ミルピタス、カルフォルニア州、米国)から入手可能なワンタッチウルトラ(OneTouch Ultra)(商品名)である。
【0019】
他の代表的な実施形態によれば、作業電極と、2つの作業電極に相対する基準電極とを含むテストストリップを提供することが望ましい。更に、種々のテストストリップ形状のいずれも、生理液試料が存在する場合にテストストリップ100が、電気信号を検査計測器200に提供できる限りにおいて、本発明の範囲を逸脱することなく、テストストリップ100に適切に代えることができる。
【0020】
試薬層(図示せず)は、試料チャンバ又はキャビティ内で第1作業電極12、第2作業電極14、及び基準電極10上に配置できる。試薬層は、酸化還元酵素のような化学物質と、ブドウ糖と選択的に反応する媒介物を含んでよい。試薬層22の製造用に適した試薬配合又はインクの例は、全部を本明細書に参考として組み込む、米国特許第5708247及び6046051号明細書、国際公開第01/67099及び01/73124号パンフレットに見出すことができる。更に、種々の他の試薬層及び試薬化学物質のいずれかを、本発明の範囲から逸脱することなく使用してよい。選択的に、提供された参考文献に開示されたような試薬層を利用しないテストストリップを生成することが可能である。更には、試薬層を、全ての電極12、14及び10に配置させなくともよい。試薬は、テストストリップの試料領域内で、電極又は他の表面のいずれかに配置できる。
【0021】
一旦テストストリップ100が、ストリップポートコネクタ214を通って検査計測器200に電気接続されると、利用者は、生理液を入口90に適用できる。他の実施形態によれば、検査計測器200は、ストリップポートコネクタ214とは対照的に異なるタイプのコネクタを有することができる。本発明の範囲は、使用されるコネクタのタイプによって限定されない。生理液は、種々の方法でテストストリップ100に適用できる。液試料は、皮膚表面の血液滴又は容器から取ることができる。生理液試料は、針又は顕微針を使用して身体から直接取ることもできる。
【0022】
生理液は、試薬層を溶解させ、かつブドウ糖濃度と相関する還元された媒介物の比例的な量を酵素的に発生させる。検査計測器200は、例えば、第1作業電極12と、基準電極10との間に、約+0.4ボルトの検査電圧を加えることができる。検査計測器は、第2作業電極14と、基準電極10との間に、約+0.4ボルトの検査電圧を加えることができる。このため還元された媒介物は、第1作業電極12及び第2作業電極14で測定される酸化電流である検査電流として、比例的に測定することができる。
【0023】
他の実施形態によれば、加えられる検査電圧は、種々の検査電圧のいずれであってもよい。検査電圧は、上記の0.4ボルトに限定されない。更に、第1電極及び基準電極、並びに第2電極及び基準電極の両方の間に検査電圧を加えることは、必要でないこともある。第1電極及び基準電極の間の電圧を測定するシステムを有することのみが望ましいこともあり、これによりシステムが簡単になる。
【0024】
図3は、テスト時間間隔T1で、検査計測器200がテストストリップ100に加える検査電圧を示す代表的な表である。生理液が適用される前において、検査計測器200は、検査電圧が+0.4Vの液検出モードである。液検出モードは、図3で液検出時間間隔TFDとして示され、かつ示すように、ゼロ(0)基準時間前又は未満の期間である。液検出モードにおいて、検査計測器200は、第1作業電極12及び基準電極10の両方が、液によって湿るように、いつ液が入口90に適用されるかを判定する。生理液が、第1作業電極12及び基準電極10を隣接して覆う時、第1作業電極12及び基準電極10が、有効に短絡されることに注意すべきである。電極10及び12間の測定される検査電流が十分に増加したことにより、生理液が適用されたことを一旦検査計測器200が認識すると、検査計測器200は、ゼロ秒の起点を指定し、テスト時間間隔T1を開始する。
【0025】
他の代表的な実施形態によれば、テストストリップ上の生理液の存在を判定する他の方法を使用してよい。例えば、テストストリップ上の液の存在を検出する他の方法が、使用できる。更に、テスト時間間隔をいつ開始するかを、検査計測器に手動で表示することが可能である。従って、適用された液を検出し、かつテスト時間間隔をいつ開始するか判定するための上述の方法は有効であるが、公知の又は後で開発された他の方法を、本発明の範囲から逸脱することなく使用できる。
【0026】
本発明の代表的な実施形態において、テスト時間間隔T1は、約5.4秒である。第1時間間隔中、試料電流を測定し、かつ試料中のグルコース濃度を判定するために、データを収集した。テスト時間間隔T1が完了すると、検査電圧は除去される。有効な検査時間は、5.4秒であると示したが、種々の検査時間のいずれも使用できる。
【0027】
代表的な実施形態によれば、テストストリップ100は、検査電圧が、媒介物の酸化還元電位に対して十分に正である時に、検査電流を伝える。酸化還元電位が、公称電位を有する電極に十分近い時に、電子を受け取るか、放出する媒介物の固有親和力を表すことに注意すべきである。
【0028】
図4は、テスト時間間隔T1で、テストストリップ100上の試料を通って流れる検出された検査電流を示す代表的な図である。テストストリップ100に結合された計測器は、2つの電極によって形成される回路内の電流と、試料領域内の試料を測定するように設定される。一般的に、検査電流は、テストストリップ100が生理液によって最初に湿っている時に、急速に増加し、ピークを形成して、その後検査電流の漸減が続く。生理液によって最初に湿る時に、検査電流は、急速に増加する。図4は、典型的な検査を示すが、他の応答曲線が、特に(但しそれのみでないが)他のノイズ外乱の存在のような、ブドウ糖以外の他の分析物の検査において観察できる。
【0029】
本発明は、外来事象によって引き起こされた電流信号を、測定エラーを示すような所望の情報を提供する電流信号から識別するのに特に有用である。外来事象は、種々の源、事象又は条件から来ることがあり、かつ一般に検査計測器200のような検査計測器の正常な使用中に起きる。代表的な外来事象には、静電放電と、例えば無線周波数又はマイクロ波周波数の放射のような、電磁放射を含む。電話、電子レンジ、ラジオ又はその他の家電製品のような電子装置の使用は、潜在的に外来信号を引き起こし得る。同様に、電灯のスイッチの切り替え、温度調節器の切り替え、及び電子式リレー等が、オン及びオフになる他の活動のような共通事象は、外来信号を引き起こし得る。
【0030】
本発明によれば、特定の外来信号は、何らかの方法で特徴付けることができ、かつ外来信号と、所望の信号を識別するために使用できる。この方法での特徴付けは、好ましくは、外来信号の大きさ、期間及び時期(タイミング)(独立して、又は組み合わせて)に関する。一般的に、外来信号又は事象の特性行動は、信号を外来のものであると特定するために使用できる。この行動は、固有の値であってもよいか、又は例えば傾向又は経時的に変化する条件に関連してもよい。
【0031】
外来信号の1つのタイプは、静電放電に関する。低い相対湿度が存在する場合のような、ある条件下で、利用者は、大量の静電放電を帯びることがある。それ故に、かかる利用者は、検査計測器に接続されたテストストリップに触れる時に、検査計測器に静電エネルギーを潜在的に注入することがある。この予期せぬエネルギーによって、乾燥したテストストリップ上でブドウ糖検査を計測器に開始及び実行させ得る、十分に大きな電流を計測器が測定する可能性がある。テストストリップ内にブドウ糖がないので、計測器は、測定された検査電流が低すぎるためにエラーメッセージを出力する。一般に利用者は、計測器がエラーメッセージを発生させる時に、テストストリップを廃棄するように指示される。乾燥したテストストリップに実際には欠陥がなく、かつそれ故に不必要に捨てられるので、ESD(静電放電)が誤ってブドウ糖検査を引き起こすことは全く望ましくない。
【0032】
使用の際に、一旦テストストリップ100が、ストリップポートコネクタ214に挿入されると、検査計測器200は、好ましくは液検出モードを開始する。液検出モード中、検査計測器200は、好ましくは少なくとも第1作業電極12及び基準電極10の間の検査電位を加える。使用される検査電圧は、一般的に特定の検査計測器及び使用されるテストストリップによって決まり、かつ例示した計測器200の適切な検査電圧は、約400ミリボルトである。
【0033】
液検出モード時間間隔TFDには、生理液が入口90に適用される前の時間を含み、かつ図5に例示されるようなゼロ未満である時間間隔として示される。液検出モード時間間隔TFD中に、検査計測器200は、一の電流の読み取りが、閾値を超えていることを発見するまで、好ましくは所定の周波数で電流の読み取りを、連続的に測定する。例として、20ミリ秒毎に約1回から、100ミリ秒毎に約1回の範囲の測定周波数が使用できる。血液を検査するために使用できる閾値は、約150ナノアンペアである。テストストリップ100が最初乾燥している場合、検査計測器200は、ゼロ検査電流値、又は閾値未満の低い検査電流値を測定する。一旦液体が適用されると、検査計測器は、第1作業電極12及び基準電極10の間の抵抗減少による、電流の読み取りの増加を測定する。図5に示すように、この電流増加により、計測器において検査時間間隔T1が開始する。
【0034】
予防策として、図5に示すように、一旦検査計測器200が、閾値より大きい少なくとも一つの電流の読み取りを測定すると、検査計測器200は、好ましくは、本発明によってESDチェックモードに入る。ESDチェックモードにおいて、検査計測器200は、好ましくは、ESDチェック時間間隔にわたってTESD用の電位を加え続ける。ESDチェックモード中に、検査計測器200は、好ましくは、所定の予定通りに、電流の読み取りを連続的に測定する。例えば、20ミリ秒毎に1階の測定が使用できる。ESDチェック時間間隔TESD中に測定された電流の読み取りのいずれかが、閾値よりも小さい場合、検査計測器200は、好ましくは、液検出モードに戻る。ESDチェック時間間隔TESD中に測定された電流の読み取りの全てが、閾値よりも大きい場合、検査計測器200は、ブドウ糖検査を継続する。
【0035】
血液のような生理液が、テストストリップ100に適用される場合に、図4に示すように、検査電流が、約1秒増加することが見られる。従って、検査計測器200は、第1作業電極12及び基準電極10の間の抵抗が減少するため、約150ナノアンペアよりも大きい電流の読み取りの増加を測定する。このことによって、好ましくは、計測器が液検出モードからESDチェックモードに移らせることができる。一般に、検査電流は、ESDチェック時間間隔TESDの間、150ナノアンペアよりも大きい状態に止まり、ブドウ糖検査が、テスト時間間隔T1を通して続行されることが可能となる。
【0036】
十分に大きなESDが、検査計測器200に注入された場合に、計測器に液検出モードからESDチェックモードに移らせる、閾値よりも大きい電流の読み取りが、測定できる。一般にESDにより発生した検査電流は、急速に消散し、一般に約100ミリ秒の範囲で減衰する過渡的スパイクを生成する。このことは、検査電流が、特定の液に対して公知の時間(血液に対して約1秒)、150ナノアンペアの閾値を超えて増加し続ける、血液のような検査液によって引き起こされる検査電流の増加と対照的である。それ故に、ESDが、検査計測器200に注入される時、ESDチェック時間間隔TESD中に測定された電流の読み取りの少なくとも1つが、閾値未満でなければならない。一旦検査計測器200が、閾値未満の電流の読み取りを測定すると、検査計測器200は、好ましくは、警告(フラグ)を設定する。ESDチェック時間間隔TESDが終了する時、警告はチェックされ、かつ設定された場合、操作は、再度試料を探すために戻る。警告が設定されていない場合、液測定は、好ましくは下記のように継続する。
【0037】
好ましくは、血液のような液が測定される場合、ESDチェック時間間隔TESDは、約100ミリ秒〜約1秒の範囲であり、好ましくは約200ミリ秒である。ESDチェック時間間隔TESDの下端は、約100ミリ秒であるESDの典型的な消散時間に基づくが、いずれかの所望の外来事象の消散時間のような典型的な特性に基づいてよい。ESDチェック時間間隔TESDの上端は、好ましくは、検査計測器200が、検査が進行中であることを利用者に知らせる必要がある前の、利用可能な時間の量に基づく。例えば、検査計測器がブドウ糖検査を実行する時、テスト時間間隔T1の秒読みは、一般に検査計測器200のディスプレイに整数値で出力される。1秒がディスプレイ上で経過した後、利用者は、ブドウ糖検査が進行中であると考える。従って、十分に大量のESDが、検査計測器200に注入される時、ディスプレイが、ブドウ糖検査の1秒が経過したことを示す時のように、検査が進行中であるという、何らかの表示を、利用者が有する前に、液検出モードに戻るべきであることを、判定することが必要である。
【0038】
計測器200のような計測器は、最初の入力(トリガー)の読み取り(所定の閾値を超える測定)後に、計測器が、ある所定の期間、電流を観察し続けるようにプログラムできる。閾値は、例えば試料の存在を示す電流のレベルであってよい。観察期間中に、電流が入力閾値未満に下がる場合、計測器は警告(フラグ)を設定する。観察時間が終了する時、警告はチェックされ、警告が設定された場合には、操作は、再度試料を探すために戻る。電流がこの期間全体にわたって閾値を超えたままである場合、検査試料電流の読み取りが、正常であるとして処理できる。一旦ESDが最初に検出されて戻る代わりに、ESDチェック期間全体で電流を観察することは、ESDパルスのすべての信号が、計測器が他の読み取りを試みる前に、減衰する時間を有することを確実にする。
【0039】
図4の検査電流が、検査電流をブドウ糖濃度に処理するためのデジタル信号に変換できるアナログ信号であることに注意されたい。本発明の代表的な実施形態において、検査計測器200は、アナログ検査電流をデジタル検査電流に変換する12ビットA/D変換器を有する、テキサスインスツルメンツ社の混合信号プロセッサ(例えばTI MSP 430)を含んでよい。異なる精度及び解像度を提供するより多くの又はより少ないビットを有するもの、及び異なる製造業者によって製造又は提供されるものを含む他のA/D変換回路が、同様に使用できる。本発明の代表的な実施形態において、獲得されたデジタル信号の変動が、約5%CV(変動係数、%CV={1標準偏差/平均}×100)未満、好ましくは約3%CV未満、更に好ましくは約1%CV未満、更に好ましくは約0.1%CV未満であるように、検査電流は、十分に高い、信号対ノイズ比(S/N比)によって測定できる。他のS/N比が、明示的に提供されたものに限定されず、使用できる。更に、%CVによって特徴付けられているが、他のS/N比の特徴付けも、本発明の範囲から逸脱することなく使用できる。代表的な実施形態において、A/D変換器を使用する検査電流のサンプリングでのノイズを減少させる方法が、記載される。
【0040】
図5は、代表的な実施形態によるブドウ糖検査のための検査電流をサンプリングするための複数の時間間隔を示す代表的な簡略化された図である。テスト時間間隔T1は、電流の読み取り時間間隔T3と、上記に論じた静電放電(ESD)チェック時間間隔TESDと、第1作業電極の最終電流値時間間隔T2aと、第2作業電極の第2作業電極の最終電流値時間間隔T2bと、の、短い時間間隔を集めたものを含んでよい。あるいは、異なる相対的長さを有する時間間隔の他の組み合わせが使用できる。更に幾つかの時間間隔は、他の実施形態において省略できる。図5において、A/Dは、所与の時間間隔中、オン及びオフ状態の間を比較的速く、一般に数ミリ秒で、又は他の実施形態においては約数マイクロ秒で切り替えられる。しかしながら、表の時間的尺度が、比較的高いトグル速度を明示できないので、図5には、短い時間間隔が、連続的にオンであるものとして示す。
【0041】
図6から8が、特定の時間間隔が、オン及びオフ状態の間でA/D変換の高いスイッチング周波数を有するかどうか、より正確に例示するためのT2a、T2b及びT3の拡大部分を示すことに注意されたい。サンプリング周波数が、示したものに限定されず、所望の性能をもたらすいかなる周波数も使用できることに注意すべきである。
【0042】
図6は、第1作業電極の最終電流値時間間隔T2aと、第2作業電極の最終電流値時間間隔T2bの拡大した簡略図である。本発明の代表的な実施形態において、第1作業電極の最終電流値時間間隔T2aは、約5秒で開始し、かつ約80ミリ秒の持続時間を有する。同様に、第2作業電極の最終電流値時間間隔T2bは、約5.3秒で開始し、かつ約80ミリ秒の持続時間を有する。第1作業電極の最終電流値時間間隔T2aと、第2作業電極の最終電流値時間間隔T2bの間には、約300ミリ秒の測定遅延時間間隔TMDがあり得る。本発明は、上記のこれら特定の期間に限定されず、むしろ所望の性能をもたらすいかなる時間間隔も使用できる。
【0043】
代表的な実施形態において、所定のサンプリング速度での検査電流をサンプリングする方法が記載される。この題材は、「A System and Method of Procesing a Current Sample for Calculating a Glucose Concentration」という題名の、本明細書と同日に出願され、かつあらゆる目的で全体が本明細書に参考として組み込まれる、米国出願第11/252216号(代理人の事件整理番号LSI0148(DDI−5115))明細書にも記載されている。第1作業電極の最終電流値時間間隔T2aは、例えば5つの連続する電流の読み取り時間間隔T3を含む。同様に、第2作業電極の最終電流値時間間隔T2bは、5つの電流の読み取り時間間隔T3を含む。電流の読み取り時間間隔T3は、図6及び7に示すように、例えば約18ミリ秒であってもよい。本発明は、開示された電流読み取り時間間隔の数、又は開示された読み取り時間間隔に限定されない。
【0044】
図7は、8つの連続した電流試料時間間隔T4を含む電流読み取り時間間隔T3の拡大した簡略図である。例えば、8つの電流試料時間間隔T4Lに関する、A/D変換獲得後にA/Dが、オフである期間を示す、低期間読み取り時間間隔T3Lがある。低期間読み取り時間間隔T3L中、マイクロプロセッサは、例えば電極読み取り時間間隔T3中に獲得されたA/D変換の合計又は平均のようなデータ計算を実行するための自由期間を有する。低期間読み取り時間間隔T3L終了時に、マイクロプロセッサは、もう1つの電極読み取り時間間隔T3を開始できる。この場合も、本発明は、示されかつ開示された時間間隔、又は示されかつ開示されたA/D変換の数に限定されない。
【0045】
電流試料時間間隔T4は、図7及び8に示すように、例えば約2ミリ秒であってよい。電流試料時間間隔T4は、高期間試料時間間隔T4Hと、低期間試料時間間隔T4Lを含む。高期間試料時間間隔T4Hは、A/D変換を獲得するために、A/Dがオンである期間であってよい。低期間試料時間間隔T4Lは、高期間試料時間間隔T4H中に、必要なA/D変換獲得後にA/Dがオフである期間であってよい。図7及び8に示すように、高期間試料時間間隔T4Hは、例えば約0.4ミリ秒であってよく、かつ低期間試料時間間隔T4Lは、例えば約1.6ミリ秒であってよい。低期間試料時間間隔T4L中、マイクロプロセッサは、例えばA/D変換の順位付け、フィルタリング、合計、平均及び/又はそれらの組み合わせ、又はその他の必要な計算及びデータ操作のような、高期間試料時間間隔T4H中に獲得されたA/D変換に関するデータ計算を実行するための自由期間を有する。低期間試料時間間隔T4Lの終了時に、マイクロプロセッサは、もう1つの電流試料時間間隔T4を開始できる。示され、かつ記載された試料時間間隔の大きさは、限定されない。所望の性能を提供するいかなる時間間隔も使用できる。
【0046】
図8は、16個の連続したA/D変換時間間隔T5を含む代表的な電流試料時間間隔T4の拡大図である。検査電流は、高期間試料時間間隔T4H中に所定のサンプリング速度でサンプリングできる。所定のサンプリング速度は、例えば代表的な実施形態において、図8に示すように約40キロヘルツであってよい。単一のA/D変換がA/D変換時間間隔T5中に獲得でき、図8に示すようにこの場合に例えば約25マイクロ秒であってよい。A/D変換は、A/D変換が行われた時点で検査電流に比例する大きさを有するデジタル数字である。この場合のA/D変換の大きさはブドウ糖濃度に比例するため、A/D変換は、ブドウ糖信号とも呼ばれる。
【0047】
このようにして、代表的な実施形態によれば、16個のA/D変換が、電流試料時間間隔T4中に獲得でき、かつ検査計測器200のメモリ部分に保存できる。電流試料は、それから電流試料時間間隔T4中に獲得された16個のA/D変換の平均又は合計を使用して計算できる。ノイズを減少させるための本発明の実施形態において、電流試料は、電流試料時間間隔T4中に獲得された16個のA/D変換の一部の平均又は合計を使用して計算できる。
【0048】
本発明の実施形態において、「電流の読み取り」を測定する時にノイズを減少させるための16個のA/D変換の一部を、どのように選択するかを示す方法が記載される。他の実施形態によれば、ノイズフィルタリング工程のために獲得された16個の試料の1つ以上を排除することが望ましいことがある。更に、所望の性能目標、及び統計的に有意な目的を達成するために、16個より多いか、又は少ないA/D変換を使用することも望ましいことがある。
【0049】
一般的に、ノイズを減少させるための代表的な方法は、複数のA/D変換を平均することである。しかしながら、ノイズがガウス分布を取る時、平均化は有効にノイズを減少させる。ノイズがガウス分布を取らない状況に関しては、ノンパラメトリック方法が、ノイズ減少を補助するために使用できる。ガウス分布を取らないノイズの例は、静電放電事象と、電灯のスイッチからの信号と、携帯電話である。代表的な実施形態において、電流試料時間間隔T4中に収集された16個のA/D変換が、図9に示すようなそれらの大きさに基づき、順位付けできる。16個のA/D変換全部を単に平均する代わりに、複数の許容されたA/D変換を残して、少なくとも最高のA/D変換値と、最低のA/D変換値にフィルタをかけることができる。代表的な実施形態において、許容されたA/D変換のみが、一緒に平均又は合計される。最高及び最低A/D変換値が排除されるので、このことは、静電放電のような短期事象によって引き起こされ得る極端な異常値に対して、平均を確固たるものにする。一般に、極端な異常値は、平均を著しく混乱させ、ガウス統計を効果的でなくする傾向がある。16個の試料は、記載したシステムにおいて良好な性能を提供するが、本発明は、16個の試料に限定されない。フィルタの所望の性能及び用途に応じて、他の数の試料が、より効果的であるか、又は効果的でないと認められ得る。
【0050】
もう1つの代表的な実施形態において、図9に示すように、8つの許容されたA/D変換を残して、4つの最高A/D変換と、4つの最低A/D変換にフィルタをかけることができる。図9は、高い及び低いフィルタをかけたゾーン120と、許容されたゾーン122を示す。フィルタをかけたゾーン122は、平均化のために使用される8つの残りの試料を示し、他方でゾーン120は、排除される8つの試料を示す。検査計測器200のマイクロプロセッサは、電流試料時間間隔T4中に獲得された、8つの受容されたA/D変換を一緒に平均又は合計することによって電流試料を計算できる。次に、すべて電流の読み取り時間間隔T3中に獲得された電流の読み取りが、(この場合合計64のA/D変換である、時間T4の)8つの電流試料を一緒に平均又は合計することによって、計算できる。電流の読み取りの計算後、最終電流値が、全部が第1作業電極の最終電流値時間間隔T2a、又は第2作業電極の最終電流値時間間隔T2b中に獲得された、(この場合合計320のA/D変換である)5つの電流の読み取りを一緒に平均又は合計することによって計算できる。代表的な実施形態において、テストストリップに生理液が投入されたか否か判定するために電流の読み取りと最終電流値とを使用し、ブドウ糖濃度を計算し、エラー捕捉手続きを実行し、かつESD(静電放電)が検査計測器に注入される時にブドウ糖検査が開始することを防ぐ方法が記載される。更に、他の代表的な実施形態によれば、異なる数のA/D変換と、試料と、読み取りとが使用できる。同様に、本発明の範囲から逸脱することなく、単一の作業電極又は2つ以上の作業電極を使用することが可能である。
【0051】
代表的な実施形態において、第1作業電極の最終電流値と、第2作業電極の最終電流値が、一緒に合計され、総計を与えることができる。ブドウ糖アルゴリズムは、ディスプレイ202に出力できるブドウ糖濃度を発生させるために、総計から(全般的な背景ノイズを示し、それ故バイアスを示す)背景値を引き、その後(公知のブドウ糖濃度/電流曲線又はデータに装置を較正する)較正勾配の割り算が続くステップを含んでよい。電流試料の計算で4つの最高及び4つの最低A/D変換にフィルタをかける、本発明の方法を使用することによって、十分に精密かつ正確であるブドウ糖濃度が計算できる。これは、1つのブドウ糖濃度決定方法であるが、参照表と、他の数式を含む他の方法を、最終計算を提供するために適用できる。同様に、他の工程が、他のタイプの分析物に使用できる。
【0052】
テストストリップ100用に測定される検査電流は、生理液によって検査する時に通常存在する、図2に示すように特徴的な形状を有する。特徴のある形状が、存在しない場合、通常、システム欠陥又は利用者エラーを示す。具体的には、図2は漸進的な減衰が続く、最高ピーク値を形成する検査電流の例を示す。代表的な実施形態において、エラー捕捉方法は、検査電流が最高ピーク時間Tp後に増加しないことを確認することを含んでよい。エラー捕捉方法は、液をテストストリップ100に適用した後、図5に示すように最高ピーク値時間を判定し、かつ1秒の間隔で電流の読み取りを測定することを含んでよい。エラー捕捉方法は、電流の読み取りより直前の電流の読み取りが、例えば約100ナノアンペアのようなエラー閾値未満である場合、欠陥がないと判定してよい。エラー捕捉方法は、直前の電流の読み取りが、最高ピーク値時間後に測定された限りにおいて、1秒の間隔で測定された全ての電流の読み取りに対して実行できる。例として、ICRk−ICRk-1<100ナノアンペア(式中、ICRkは、k秒での電流読み取りであり、かつICRk-1は、kマイナス1秒での電流読み取りである)である場合、時間によって電流が特徴なく増加するために、エラーはない。しかしながら、ICRk−ICRk-1>100ナノアンペアである場合、検査計測器200は、ディスプレイ202にエラーメッセージを出力し、ブドウ糖濃度を出力する。同様に、他のデータ完全性又はエラー捕捉方法を、本発明の範囲から逸脱することなく適用できる。
【0053】
もう1つの代表的な実施形態において、簡略化されたエラー捕捉方法を使用できる。この簡略化された実施形態において、2つの電流の読み取りのみが、4秒及び5秒で使用される。4秒での電流読み取りは、5秒での電流読み取りから引くことができる。ICR5−ICR4<100ナノアンペア(式中、ICR5は、5秒での電流の読み取りであり、かつICR4は、4秒での電流の読み取りである)である場合、時間によって電流が特徴なく増加するために、エラーはない。しかしながら、ICR5−ICR4>100ナノアンペアである場合、検査計測器200は、ディスプレイ202にエラーメッセージを出力し、ブドウ糖濃度を出力する。この簡略化した代表的な実施形態において、電流の読み取りは、エラー捕捉アルゴリズムを簡略化するために、1、2、及び3秒で使用されない。その上、最高ピーク時間Tpも、この実施形態において計算されない。
【0054】
本発明は、その幾つかの実施形態を参照して今まで記載された。本明細書で特定されたいかなる特許又は特許出願の開示全体も、参考として組み込まれる。前述の詳細な記載及び実施例は、理解を明瞭にするためにのみ、与えられる。不必要な限定が、そこから理解されるべきでない。本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に多くの変更を行えることが、当業者には、明白である。それ故に、本発明の範囲は、本明細書に記載された構造に限定されるべきでなく、請求項の文言によって記載された構造及びこれらの構造の同等物によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明により使用できる代表的な検査計測器の斜視図である。
【図2】第1作業電極と、第2作業電極と、基準電極を有する図1の検査計測器で使用できる代表的なテストストリップの平面図である。
【図3】図2の代表的なテストストリップに適用された検査電位と、液がテストストリップに適用される前の液検出時間間隔と液がテストストリップに適用された後のテスト時間間隔T1を特に示す本発明による代表的な測定検査の時間と、の間の関係を示す図表である。
【図4】テストストリップによって生成される検査電流と、テスト時間間隔T1中の図3に示す代表的な測定検査の時間と、の間の関係を示す図表である。
【図5】本発明による静電放電チェック時間間隔TESDと、複数の検査電流の読み取り時間間隔T1と、第1作業電極の最終電流値時間間隔T2aと、第2作業電極の最終電流値時間間隔T2bを、テスト時間間隔T1の一部として図示する図3に示す代表的な測定検査の図表である。
【図6】第1及び第2作業電極の最終電流値時間間隔が本発明による測定遅延時間間隔によって分離される、複数の連続する電流の読み取り時間間隔T3を含む第1作業電極の最終電流値時間間隔T2aと、複数の連続する電流の読み取り時間間隔T3を含む第2作業電極の最終電流値時間間隔T2bと、の図表である。
【図7】本発明による複数の連続する電流試料時間間隔T4を含む、図6に示す第1及び第2作業電極の最終電流値時間間隔の電流の読み取り時間間隔T3の図表である。
【図8】本発明による複数の連続するアナログ/デジタル変換時間間隔T5を含む図7に示す電流試料時間間隔T4の図表である。
【図9】本発明による図8における電流試料時間間隔T4の複数の連続するアナログ/デジタル変換時間間隔T5にフィルタをかけるノンパラメトリック方法を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理液の試料の中に存在する分析物の濃度を判定するために、前記生理液の試料を電気化学分析する方法であって、
少なくとも一対の電極と、試薬とを有する検査液適用領域を含む検査装置を提供するステップと、
前記少なくとも一対の電極を横切って所定の電位を提供するステップと、
閾値以上の電流を前記少なくとも一対の電極で検出し、その後、第1期間にわたって電流の大きさを検出するステップと、
1)前記電流の大きさが、前記第1期間にわたって所定値を超えたままである場合、前記検査装置の前記検査液適用領域に存在する前記生理液の中の前記分析物の濃度を示す検査指標として、前記第1期間に初期部分が含まれている第2期間の終了時の電流の大きさを使用することと、
2)前記電流の大きさが、前記第1期間の間、常に所定値以下である場合、電流を検出するステップ及び上記のうち一つを実行するステップを反復すること、のいずれかを実行するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記検査装置の前記検査液適用領域に前記生理液の試料を提供することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電流の検出ステップが、外来事象によって発生した電流を検出することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
検出された電流の前記閾値が、前記検査装置の前記検査液適用領域に存在する生理液の存在を示す請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検査装置の前記検査液適用領域に存在する前記生理液の中の前記分析物の前記濃度を示す少なくとも1つの追加検査指標として、少なくとも1つの追加期間の終了時の電流の大きさを使用することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1期間の持続時間が、所定の外来事象からの電流スパイクが前記閾値未満に減衰するために必要な時間よりも大きく、かつ前記第2期間よりも小さい請求項1に記載の方法。
【請求項7】
静電放電が、生理液の試料中の分析物の濃度の電気化学測定に干渉することを防ぐ方法であって、
少なくとも一対の電極と、試薬とを有する検査液適用領域を含む検査装置を提供するステップと、
前記少なくとも一対の電極を横切って所定の電位を提供するステップと、
前記少なくとも一対の電極で電流を測定し、電流の大きさが第1期間の初期部分を含む所定の第2期間の間、閾値の電流値を超えたままである場合、前記検査装置の前記検査液適用領域に存在する前記生理液の中の前記分析物の濃度を示す検査指標として、所定の前記第1期間の終了時の電流の大きさを使用するステップと、を含む方法。
【請求項8】
前記少なくとも一対の電極を横切って提供される所定の電位が、前記第1期間にわたって連続的に提供される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2期間の持続時間が、前記閾値未満に減衰する所定の外来事象からの電流スパイクに必要な時間よりも大きく、かつ前記第1期間よりも小さい請求項7に記載の方法。
【請求項10】
生理液の試料の中の分析物の濃度を電気化学測定する検査計測器であって、
処理装置と、電気化学測定装置と、メモリと、を含み、
前記電気化学測定装置は、少なくとも一対の電極と試薬とを有する液適用部を含む検査装置に電気接続することができ、前記検査装置に電気接続される時に、電位を提供し、前記少なくとも一対の電極を横切って電流を測定し、
前記メモリは、前記検査装置が電気接続される電気化学測定装置を動かすプログラムを含み、前記電気化学測定装置は、前記少なくとも一対の電極で電流を測定し、電流の大きさが、第1期間の初期部分を含む所定の第2期間に、閾値電流値を超えたままである場合、前記検査装置の検査液適用領域に存在する前記生理液の中の前記分析物の濃度を示す検査指標として所定の前記第1期間の終了時の電流の大きさを使用する検査計測器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−114197(P2007−114197A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−281183(P2006−281183)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America