説明

生理的体液中の代謝物のボルタンメトリー検出

体液中の分析物の定量用に、簡単な非選択的電極センサ系を使用するボルタンメトリがうまく働くことがわかった。望ましくは、複数の分析物を同時に定量することが可能である、ニューラルネットワーク分析などの技法によって信号を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、血漿、間質液などの体液中の一種または複数の代謝物を電気化学的に測定または検出するための方法および装置に関する。そのセンサは、多くの代謝物を定量するために生体外(in vitro)または生体内(in vivo)への用途に用いることができる。センサは、タンパク質を含みさらに複合混合物でもよい溶液中で使用することができる。
【0002】
体液、特に血液や間質液中の多くの代謝物の濃度は、身体の健康状態に対する基本指標である。疾患が存在する(またはその疑いがある)とき、あるいは個人の健康状態の評価が必要であるとき、様々な代謝物を監視することが望ましい。たとえば、血液中のブドウ糖のレベルは糖尿病患者の健康に関する情報を提供する。ブドウ糖の他に、クレアチニン、コレステロール、乳酸、尿酸など、臨床上重要な代謝物が他にも多数ある。
【0003】
体液中の代謝物を測定する装置は多数ある。診断の目的では、それをおおまかに以下の群、すなわち(i)病院内の中央血液研究所など専門の研究所で実施される処置、(ii)治療の現場で実施される技法、または(iii)個人使用のために設計された診断装置のうちの1つ又は複数に分類することができる。本発明は、3つのタイプの診断装置すべてに適用することができる。現在の診断学を向上させることができる新規な装置の進歩または創出に向けて、多くの研究開発がなされている。
【0004】
本発明は、電気化学的感知(sensing)に基づく診断装置に関する。こうした診断は、上記の3つのカテゴリすべてに属し、この種の診断の好例が血液中のブドウ糖試験である。研究所、治療現場および個人使用のためのブドウ糖センサが開発されている。光学的センサも利用可能であるが、ブドウ糖センサの多くは電気化学的感知を中心としたものに基づいている。ブドウ糖の他に、上記3つの群の1つ又は複数に属する装置を使用して臨床上重要な他の代謝物を測定することも望ましい。他の代謝物の例はすでに挙げている。
【0005】
(背景技術)
体液中の代謝物を定量する様々な電気化学的診断装置が記述されている。この文脈での診断装置は、通常、測定を行うセンサコンポーネントと、センサを制御する、または試料をセンサまで送達する方法を提供する付属コンポーネントとからなる。コンポーネントのアセンブリ全体が診断装置となる。
【0006】
血液、血漿、間質液などの体液は、タンパク質や特殊細胞などより大きな構造の他に異なる100種を超える化学成分を含む非常に複雑な液体試料である。これらの成分はすべて、診断を目的とした代謝物の電気化学的測定を潜在的に妨害する可能性がある。電気化学的センサを使用して有用な測定結果を得ることを目的として、体液試料中の他の潜在的妨害化合物すべての中から対象の代謝物を選択するように装置が設計されてきた。それには、1種類の標的代謝物を選択し、その標的代謝物だけに関係する出力信号を提供する手法が必要である。当分野の技術者達は、これを実現するために2つの主要な方法を使用してきた。第1は生物学的認識の使用に基づくものであり、第2は対象の代謝物を選択するための代わりの形に基づくものである。
【0007】
酵素などの生物材料を組み込んでいる診断装置は、きわめてうまくゆき、特に低コストの使い捨て方式でそうであることがわかっている。酵素は、対象の代謝物と反応する高度に特異的な触媒として働き、その反応が電極系を使用して監視される。信号の出力は代謝物の濃度に関係する。診断面でその最も進んだ例の1つは、血中ブドウ糖計である。このセンサでは、血中ブドウ糖分子と特異的に反応する酵素、グルコースオキシダーゼまたはグルコースデヒドロゲナーゼを使用する。酵素反応をブドウ糖の濃度だけを反映する信号に変換する目的で、多数の潜在的な妨害化合物が存在するにもかかわらずブドウ糖による信号が最大になるように精巧に設計された物理−化学系を使用して反応を監視する。これをどう実現するかが、様々なセンサの基礎となっている。たとえば、ブドウ糖に特異的な酵素の反応を血中ブドウ糖濃度に対する信号に変換するための多数の異なる物理−化学手段が存在する。
【0008】
ブドウ糖に特異的な酵素の他に、他のいくつかの酵素が、体液中の他の代謝物を監視するために使用されている。例としては、コレステロールに使用されるコレステロールオキシダーゼ酵素、乳酸に使用される乳酸オキシダーゼ酵素または乳酸デヒドロゲナーゼ酵素がある。こうした酵素−代謝物対は、様々な代謝物センサの基礎となり、各センサは標的代謝物の信号が最大になるように構成されている。
【0009】
近年多くの疾患のためには、2種以上の代謝物を理想的には同時に検出することが望ましいことが認識されるようになった。というのは、第2の代謝物の測定から、別の治療を必要とするかもしれない関連の健康状態がわかり、従って患者の全体的な健康管理を改善できるからである。この目的で、血中ブドウ糖ならびに他の代謝物を測定する装置が市販されている。これは、別の代謝物を検出するように構成された別個の電気化学的センサをその装置で使用することによって実現される。すなわち、1つの診断装置内でそれぞれ1種の代謝物信号を提供する複数の電気化学的センサを作製することが実現可能である。
【0010】
酵素ベースの電気化学的手法は多くの診断用に普及したが、実際にはいくつかの欠点がある。最大の欠点の1つは、酵素の寿命が限られていることである。1回使用の使い捨てセンサ素子(たとえば、血中ブドウ糖計で使用される電極片)が使用できる生体外装置ではこれは許容できるが、そのために、生体内の代謝物を監視する埋込式装置の可能性が極めて限定される。この問題を回避するために、研究者達は非酵素ベースの電気化学的センサの開発に焦点を絞ってきた。そうしたセンサが、酵素ベースのセンサを模倣するかたちで、他の分子よりも優先して特定の標的代謝物についての情報を提供することを目指していることを知っても驚くにはあたらない。したがって、非酵素ベースのセンサも、多数の潜在的な妨害物を含む試料中で対象とする標的分析物に対する選択性が最大になるように構成されている。特定の代謝物に対するセンサ電極の選択性を向上させるための様々な手段を備えた、多くの異なるセンサの構成が追求されてきた。
【0011】
本発明者らはすでに、気体混合物中の揮発性化合物[WO02/086149]および液体中の複数の化合物[WO00/20855]を検出するための単一センサに基づく発明を開示している。後者の開示では、本発明者らは、単純な混合物中に存在する脂肪族化合物について、個々の濃度の定量を実際に行った。すなわち、本発明者らは、どのようにすれば単一電極および人工のニューラルネットワークに基づく計量化学技法を使用して電解質溶液中の3種の脂肪族化合物が定量できるかを示した。その発明は、プロセスストリーム中の脂肪族化合物を測定することが有用である業界でのプロセス制御への応用を目指すものであった。しかし、プロセスの応用分野では、最適プロセスを実現することに対する既定の制限があるため、分析用の混合物の範囲は限られている。
【0012】
産業のプロセスストリームと異なり、血液、血漿、間質液などの体液は、タンパク質や特殊な細胞などより大きな構造の他に、100種を超える異なる化学成分を含む非常に複雑な液体試料である。こうした混合物は極めて複雑で、個人に特有である。したがって、当業者は、所与の先天的な複雑さを有する血液などの体液試料に対しては、WO00/20855に開示の技法を使用することを真剣に考慮しないはずである。対象とする代謝物に由来するどんな信号をも埋没させる、膨大な数の妨害の結果生じる圧倒的に複雑な複合信号が体液によってもたらされることが予想される。
【0013】
WO00/20855が体液中の代謝物を定量するのに不適当であると考えられる説得力のある別の理由がある。というのは、タンパク質という生体物質による汚染の問題が予想されるからである。体液に接触すると、電極はタンパク質の表面膜でコートされるはずである。タンパク質のコートにより、潜在的な標的代謝物の表面への接近がブロックされるはずである。この影響は非常に大きいので、タンパク質の層は、効果的に電極を試料中の標的化合物から遮蔽することができる。
【0014】
(発明の開示)
体液中の複数の代謝物用の非特異的電極
酵素ベースおよび非酵素ベースの電気化学的センサは、一種の標的代謝物を検出するように構成されているが、複数の代謝物を検出することも望ましい。その情報が潜在的に疾患の管理を改善する可能性を有するからである。従来技術では、それぞれ1種類の標的代謝物を検出するように設計されたセンサ素子を追加することでこれを実現している。その例には、別々の血中ブドウ糖センサおよび血中ケトンセンサを備える装置がある。これとは異なり、本発明を用いると、体液用の単一センサ素子を使用して複数の代謝物を感知することが可能になる。
【0015】
種々の困難が予期されたが、本発明者らはここに、WO00/20855の方法および装置が、体液中の分析情報をどんな重大な改変も加えずに十分に提供できることを見出した。体液中には潜在的な妨害化合物および巨大分子が多数あるにも拘らず、本センサは、ブドウ糖や尿酸などの代謝物の濃度を反映する信号を出力することができる。この予期せぬ発見については、体液中でのこのセンサの動作を実際に示す下記の一連の実施例でさらに詳細に述べる。このセンサを体液中で使用して得られる注目すべき結果が医療診断の応用分野で複数の代謝物に単一の非選択的電極を使用することが可能になる本発明で体現される。診断への応用の一例として、糖尿病およびその合併症に関連する鍵となる代謝物の監視がある。
【0016】
ピーク高さなど観測データから抽出した簡単なパラメータを較正して、個々の対象代謝物の濃度を得ることができる。しかし、たとえばフィードフォーワードニューラルネットワークの多変量回帰分析能力を使用する計量化学処理をさらに使用して、より正確な測定値を提供することができる。各分析物は通常、ボルタンメトリ掃引の特定の点で活性となるので、そうした計量化学法を用いると、単一の測定によって2種以上の分析物の定量も可能になる。
【0017】
(図面の簡単な説明)
図1は本発明を実施するセンサ装置の概略図である。
【0018】
図2は図1のII−II断面の概略図である。
【0019】
図3は本発明の実施形態において2パルス式階段状ボルタンメトリでの使用に適した電位/時間波形を示すグラフである。
【0020】
図4はNaOHを添加した模擬間質液中の異なる濃度のブドウ糖に対する結果を示すボルタモグラムである。
【0021】
図5はNaOH無添加で、ナフィオン層を使用したまたは使用しない電極についての図4と同様のボルタモグラムである。
【0022】
図6は模擬間質液単独(「ISF」)、あるいはブドウ糖(「G」)、尿酸(「U」)またはブドウ糖と尿酸の両方(「G+U」)を含む模擬間質液に対する結果を示すボルタモグラムである。
【0023】
図7はデータ処理のためのニューラルネットワーク分析の使用を説明する図である。
【0024】
(本発明の実施形態)
本発明は、体液試料に接触する1つまたは複数の電気化学電池を使用して実施することができる。各電気化学電池は、複数の代謝物を同時に測定できる1つの作用電極を含む。各電気化学電池はまた、1つの参照電極および1つの補助電極または対電極をも含む。電気化学電池で使用される作用電極および対電極の形状、サイズ、材料および構成は任意でよい。好ましい一実施形態では、作用電極および対電極は、白金や金など貴金属電極材料から作製する。参照電極は、銀/塩化銀または他の適切な参照材料でよい。あるいは、金属または炭素材料からなる擬似参照電極を使用することもできる。各電極は、作用電極と参照電極の間の電圧差を制御する電子式定電圧装置に電気的に接続され、作用電極における酸化還元反応に由来する電流を測定する。
【0025】
好ましい一実施形態では、3つの電極は電気化学電池の一部である。電池は物理的支持体によって区切られており、支持体上に電極が形成されている。様々な電池構成を、検出器として使用することができる。好ましい一設計を概略図1および2に示す。この実施形態では、3つの電極(参照電極10、作用電極12および対電極14)は、平面形状であり、ガラス、セラミック、プラスチック基材など適切な基材材料16上に形成されている。白金や金などの材料を使用した気相成長などの薄膜技術を含めた様々な方法を使用して、作用電極および対電極の電極を形成することができる。参照電極は、たとえば導電性ペーストのスクリーン印刷に基づく厚膜技術によって形成することができる。この方法は作用電極および対電極の形成にも等しく適用される。
【0026】
データ処理手段を組み込むこともでき外部コンピュータに接続することもできる、定電圧装置19に電極を接続する。
【0027】
体液を電極上に導入して、電気化学的測定を可能にする方法は、いくつかの手段によって実施することができる。一実施形態では、毛管作用を使用して電気化学電池に充填する。毛管作用は、液体と器壁の相互作用によって引き起こされる物理的な効果である。毛管効果は、特定の器壁材料、最も普通にはガラスを濡らそうとする液体の能力の関数である。この好ましい一実施形態では、3つの電極10、12、14がガラスの平面基材16上で平面形状になるように形成される。2つのガラス壁の間隔を最小にして体液の毛管作用を可能にし、形成された電気化学電池に体液が充たされるように、別のガラスカバー18(図2)を電極の上に置く。壁16、18を離して置き、サイドシール17で塞ぐことができる。体液の毛管作用を使用する電極および電池の他の構成も使用できるはずである。さらに別の一実施形態では、試料を電気化学電池に送達する試料ポンプなど、能動的輸送方法を使用することもできる。
【0028】
いくつかの実施形態では、体液中にある複数の代謝物の測定を容易にする試薬が、電気化学電池中に存在してもよい。これらの別の材料は、標的代謝物の電気化学的応答を向上させる働きをする。その例としては、NaOH、あるいは電極の周囲にアルカリ性雰囲気を生成することができる他の材料がある。OH-イオンの形成は、化学的または電気化学的に行うことができ、作用電極の近傍にアルカリ性の状態をもたらす。酸性の雰囲気をもたらす他の材料も使用することができる。電気化学電池の一部分として、電極をコートする膜、電池中の他の場所に置かれる膜など他の材料が存在してもよい。膜材料の例を挙げると、ナフィオン、酢酸セルロース、ポリウレタン、Kel F、およびポリ塩化ビニルがある。
【0029】
体液中にある複数の代謝物の電気化学的酸化還元反応を誘発するために、いくつかの電圧−時間波形を使用することができる。一例を挙げれば、図3に示す波形がある。これはすでにWO00/20855に記載されている。この波形は、前の測定でのどんな電気化学的分解生成物でも電極から除去する2つのクリーニングパルス(酸化は20、還元は22)とその後に続くボルタンメトリ掃引波24(一般に線形)からなり、この間に電流測定が行われる。
【0030】
WO00/20855に記載の実施例では、各DPSV走査は、電極表面上に吸着された汚染剤を除去し、電極表面上に酸化白金を形成するための3秒間の0.7Vパルス、および酸化層を除去することによって表面を再生させるための2秒間の−0.9Vパルス、ならびにそれに続く速度毎秒0.5V、ステップ10mVでの−0.9Vから0.2Vまでの走査からなっていた。走査中、各電位ステップの終点で電流を記録した。代謝物の検出を向上させるためにこうしたパラメータを調整することができる。
【0031】
電気化学的酸化還元反応を誘発するために、方形波ボルタンメトリ、微分パルスボルタンメトリ、通常パルスボルタンメトリ、サイクリックボルタンメトリなど、電圧−時間波形の他の変形形態も使用することができる。異なる一実施形態では、線形電圧掃引または他の走査型ボルタンメトリ方法の前の2個のクリーニングパルスを省略する。
【0032】
ピーク高さなどの観測データから抽出した簡単なパラメータを較正して、個々の対象代謝物の濃度を得ることができる。しかし、たとえばフィードフォーワードニューラルネットワークの多変量回帰分析能力を使用した計量化学処理をさらに使用して、より正確な測定値を提供することができる。
【0033】
本発明を利用するセンサデバイスは、生体外または生体内で動作させることができ、血液、血漿、間質液、尿、痰、他のすべての体液試料など、様々な体液と一緒に使用することができる。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
間質液中のブドウ糖の検出
この実施例では、体液は、間質液(ISF)であり、それはヒトの血漿(全血の遠心分離で得たもの)を使用し、次いでリン酸緩衝食塩水で33体積/体積%に希釈して非常によく近似させたものである。様々に異なる濃度のブドウ糖(0、5、10、15および20mM)および0.1M NaOH電解質を含むISF混合物をいくつか調製した。各混合物で電極測定を行うと、得られたボルタモグラムは、図4に示すように、ブドウ糖の濃度の関数として明確なブドウ糖のピークを示した。走査速度やNaOHイオン強度などの実験パラメータを最適化することによって信号を改善することができた。ISFに固有の様々な電位妨害化合物が存在するものの、観測されたブドウ糖の信号は、広い濃度範囲にわたって驚くほど大きな応答を示した。
【0035】
NaOHをISFから省略した場合、または主に血漿に富む試料(80体積/体積%)を使用した場合、ブドウ糖の信号は弱くなった。走査速度などの測定変数を変更することによって、または最大の巨大分子は排除されるが依然としてブドウ糖および他の分子は膜を通過できるナフィオン薄膜で電極をコートすることによって、ブドウ糖の信号が改善できることがわかった。
【0036】
図5は、ナフィオンのあるときとないとき、およびNaOHのないときのISF中のブドウ糖に対する典型的な応答を示す。ナフィオンは、市販の溶液調製物から注型した。
【0037】
血漿の体積がより高いときの代謝物の検出は、より高い全体濃度およびより多い数の妨害化合物がより高いレベルの信号ノイズバックグランドをもたらすので、より困難になった。ブドウ糖などの代謝物が十分な濃度で存在する場合、バックグランドノイズよりも高い信号が見えるようになり、その信号を分析の目的に使用することができる。測定パラメータを最適化し、かつ膜を使用することによって、こうした体液におけるより大きなレベルのバックグランドノイズに打ち勝つことができる。
【0038】
実施例2
間質液中のブドウ糖および尿酸の検出
この実施例はISF中の異なる2種の代謝物の測定を実際に示す。すでに述べたように、診断の目的で2種以上の代謝物を測定することへの関心は高まっている。たとえば、糖尿病では、尿酸のレベルは、脳卒中および冠動脈疾患の強い前兆として働くかもしれない。この実施例では、体液中で単一の電極センサを使用して代謝物を同時に測定する。これは、各代謝物に対して異なるセンサを使用する従来の技術とは異なる。本発明のこの態様を実際に示すために、ブドウ糖および尿酸を実施例1に記載のように調製したISF試料に混合した。図6に、ブドウ糖および尿酸の個別検出および同時検出で得られた結果を示す。尿酸およびブドウ糖はともに、個別および合成の電流電圧物性曲線を表すが、この物性曲線は、たとえば人工ニューラルネットワークまたは周知の他の多変数統計分析技術を使用して、たとえばWO00/20855またはWO02/086149に記載のような、その後の多変数較正が可能となるのに十分な情報が測定結果中に存在することを示唆する。図7はセンサデータのニューラルネットワーク較正の使用を示す。この場合、得られたボルタモグラム中の点の数を線形代数を使用して減少させることによってネットワークに対する入力の数を最適化する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を実施するセンサ装置の概略図である。
【図2】図1のII−II断面の概略図である。
【図3】本発明の実施形態において2パルス式階段状ボルタンメトリでの使用に適した電位/時間波形を示すグラフである。
【図4】NaOHを添加した模擬間質液中の異なる濃度のブドウ糖に対する結果を示すボルタモグラムである。
【図5】NaOH無添加で、ナフィオン層を使用したまたは使用しない電極についての図4と同様のボルタモグラムである。
【図6】模擬間質液単独(「ISF」)、あるいはブドウ糖(「G」)、尿酸(「U」)またはブドウ糖と尿酸の両方(「G+U」)を含む模擬間質液に対する結果を示すボルタモグラムである。
【図7】データ処理のためのニューラルネットワーク分析の使用を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中の一種または複数の分析物を定量する方法であって、前記体液中に作用電極、参照電極および対電極を含む一組の電極を浸漬するステップと、可変電位を作用電極に印加するステップと、電気化学的結果を測定し、それにより前記体液の組成に関する出力信号を提供するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記体液が間質液、全血、血漿、尿および唾液から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記体液が間質液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可変電位を印加する前に、1つまたは複数の電極クリーニングパルスを印加する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記出力信号を分析して、一種または複数の分析物の濃度に関するデータを得る、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記出力信号を分析して、複数の分析物の濃度に関するデータを得る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分析は多変数較正技法を使用する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
体液を定量前によりアルカリ性または酸性にする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電極が基材上に設けられた膜電極である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電極を毛細管素子内に設け、前記毛管素子が前記体液中に一部分浸漬され、体液が毛管作用によって素子内に上昇して電極に接触する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分析物(分析物群)は通過させ、タンパク質は通過させない半透過性の膜で前記電極をコートする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
電極アセンブリ、および分析用の体液を前記電極に輸送する毛管手段を備える、前記請求項のいずれか一項に記載の方法を実施する装置。
【請求項13】
前記毛管手段が、前記体液をよりアルカリ性または酸性にする手段を含む、請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−534926(P2007−534926A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516481(P2006−516481)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002770
【国際公開番号】WO2005/001463
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504455403)クランフィールド ユニヴァーシティー (5)
【氏名又は名称原語表記】CRANFIELD UNIVERSITY