説明

生産管理方法、電子機器生産システム、生産管理装置、および電子機器

【課題】電子機器の生産管理を実行する電子機器生産システムにおいて、ネットワーク接続環境下にない環境でも、柔軟性の高い生産管理を実現可能な仕組みにする。
【解決手段】生産管理サーバ5にて、自由にハンドリング可能なUSBメモリなどの可搬性記憶媒体9に、電子機器100の生産管理に供される装置固有設定情報J1や設定結果情報J2の初期値をシリアル番号と対応付けて予め記憶しておく。生産現場では、生産ライン3上の電子機器100に可搬性記憶媒体9を装着して、設定結果情報J2に基づいて未設定のシリアル番号を特定し、その中で、該当するシリアル番号の装置固有設定情報J1を可搬性記憶媒体9から読み出して電子機器100のシステム設定保存部160に書き込む。また、この書込み結果を示す設定結果情報J2を可搬性記憶媒体9に書き込むことで、使用済の装置固有設定情報J1が再使用されないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産管理方法、電子機器生産システム、生産管理装置、および電子機器に関する。より詳細には、たとえば画像形成装置やその他の電子機器の生産現場において、装置に対する各種設定や調整状態などの情報を管理することを可能とする電子機器の生産管理の仕組みに関する。
【背景技術】
【0002】
物を作る生産現場では、部品や機器の組立て、検査、調整、設置先情報、あるいはオプション設定といった作業を実施する装置内のデータをシリアル番号と対応付けて一元管理し、これらの情報を把握することが行なわれる。
【0003】
たとえば、特許文献1には、組立て・検査・調整が行なわれ、機器を作り上げるネットワークを利用した機器生産システムにおいて、周辺機の有する高機能化したネットワークインタフェースやネットワークサービスを生産工程で使用することにより、柔軟性が高く、また効率のよい仕組みにすることが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−234566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の仕組みでは、シリアル番号やその他の装置に固有な情報を電子機器内のメモリに設定するには、ネットワークに接続されたパーソナルコンピュータなどを利用した専用端末を使用する必要があり、ネットワーク接続環境下でなければならないといった、工場のレイアウト制限が発生する。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ネットワーク接続環境下にない環境でも、生産管理を実現可能な仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る仕組みにおいては、電子機器の生産管理に供される装置設定用データを可搬型の不揮発性の記憶媒体に予め記憶しておき、可搬型の不揮発性の記憶媒体を検査対象の電子機器に装着したとき、可搬型の不揮発性の記憶媒体から検査対象の電子機器に該当する未設定の装置設定用データを電子機器に内蔵の不揮発性の記憶媒体に書き込むとともに、この電子機器に内蔵の不揮発性の記憶媒体への装置設定用データの書込結果を示す情報(設定結果情報)を可搬型の不揮発性の記憶媒体に書き込むようにした。
【0008】
自由にハンドリング可能な可搬型の不揮発性の記憶媒体に装置設定用データを記憶して検査対象の電子機器に装着して、その時点で未設定の装置設定用データのうち該当のものを電子機器へ登録するなどの製品出荷検査を行ない、検査完了後には、設定結果情報を可搬型の不揮発性の記憶媒体に書き込むのである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自由にハンドリング可能な可搬型の不揮発性の記憶媒体に装置設定用データを記憶しておき、検査時には、その時点で未設定の装置設定用データを検査対象の電子機器に設定するなどの製品出荷検査を実行するようにしたので、ネットワーク接続環境下にない環境でも、柔軟性の高い生産管理を実現でき、工場のレイアウト制約を受け難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
<電子機器生産システムの概要>
図1は、本発明に係る生産管理方法を適用する電子機器生産システムの概要を示す図である。図示の状態は、製品出荷検査工程を示している。
【0012】
図示のように、本実施形態の電子機器生産システム1は、生産管理の対象となる電子機器100を順次所定方向に流す生産ライン3と、生産管理用の各種のデータを管理する生産管理装置の一例である生産管理サーバ5とを備えている。
【0013】
電子機器100としては、プリンタ、複写機、FAX装置、携帯電話、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、CD(コンパクトディスク)レコーダ、DVDレコーダ、MDレコーダなど、何れもものであってもよい。
【0014】
生産ライン3は、ベルトコンベアによる単一生産方式、混合生産方式、セル生産方式など、どのような方式によるものであってもよい。
【0015】
生産管理サーバ5は、生産管理装置本体5aと、表示装置5bと、指示入力装置5cとを備えている。生産管理装置本体5aは、その内部に、可搬型の記憶媒体(以下可搬性記憶媒体と称する)9に、生産管理用のデータを書き込んだり記憶済の生産管理用のデータを読み出したりするデータ記憶制御部50と、データ記憶制御部50が可搬性記憶媒体9から読み出した生産管理用のデータに基づいて出荷情報管理を実行可能にする生産管理データ解析部52とを有している。
【0016】
生産管理データ解析部52は、電子機器100のシリアル番号ごとに、設置先情報やオプション設定情報や、装置固有設定情報の電子機器100への設定結果を示す情報(設定結果情報J2)、などの生産管理用のデータを一元管理するようになっている。また、電子機器100を構成する各ユニットの検査や調整を行ない、その結果データを一元管理する機能が設けられてもよい。
【0017】
可搬性記憶媒体9としては、自由にハンドリング可能な記憶媒体であればよく、半導体メモリを利用したUSB(Universal Serial Bus)メモリや、光学もしくは磁気を記録や読出しに利用する円盤状の媒体を用いたものや、その他の記憶部材を用いたメモリが使用され、必ずしも半導体メモリを利用したものに限定されない。
【0018】
ただし、光学もしくは磁気を記録や読出しに利用する円盤状の媒体を利用するものでは、比較的大掛かりな記録・読取のための物理的な機構(いわゆるドライブユニット)が必要になるのに対して、半導体メモリを利用したものは、可搬性記憶媒体9を装着する接続端子(ポートやスロットと称する)を用意しておけばよく、記録・読取のためには事実上物理的な機構が不要で電気的な仕組みのみで対処できるので、小型の電子機器100にも摘要が容易である利点がある。
【0019】
なお、本実施形態の生産管理サーバ5は、各種の機能部の一部を、ハードウェア処理回路により構成することに限らず、その機能を実現するプログラムコードに基づき電子計算機(コンピュータ)と同様の仕組みを用いてソフトウェア的に実現することが可能に構成されている。
【0020】
一例として、生産管理装置本体5aとしては、パーソナルコンピュータを使用することができる。この場合、生産管理装置本体5aには、電子機器100の検査・調整を行なうプログラムを格納した記憶装置が設けられる。
【0021】
生産管理サーバ5において、生産管理データ解析部52は、生産ライン3上を流れる各電子機器100の装置設定用のデータである装置固有設定情報J1をシリアル番号と対応付けて設定ファイルF1を生成し、データ記憶制御部50により可搬性記憶媒体9に記憶しておく。
【0022】
ここで、生産管理データ解析部52が各電子機器100に割り当てるシリアル番号は、複数台の電子機器100を所定のグループ分け基準に従ってグループ分けし、少なくとも同一グループ内の各電子機器100については、同一のシリアル番号が複数台に割り当てられることがないように、それぞれ異なるシリアル番号が当該グループ内の各電子機器100に割り当てられるようにする。グループ分け基準は、機種別が典型例であるが、必ずしも機種別でグループ分けすることに限定されず、たとえば、他機種を含む製品群や仕向地などをグループ分け基準にしてもよい。
【0023】
生産ライン3上には、それ以前の生産工程において電子機器100を構成する各種ユニットの組立て・検査・調整などの作業が完了した製品出荷検査対象のものが流れてくる。このとき、各ユニットの補正値や調整値として電子機器100へ設定されるデータを記憶した可搬性記憶媒体9が電子機器100に装着され、所要のデータが各ユニットのシリアル番号とともに入力される。
【0024】
また、装置固有設定情報J1も可搬性記憶媒体9に記憶されており、電子機器100を工場出荷する前に、可搬性記憶媒体9を検査順の電子機器100(たとえば100_1)に装着することで、可搬性記憶媒体9に記憶されている装置固有設定情報J1を電子機器100_1のシステム設定保存部160へ書き込む。電子機器100_1は、この書込結果の情報(設定結果情報J2)を可搬性記憶媒体9に記録するようにする。
【0025】
可搬性記憶媒体9は、次々と検査順の電子機器100(100_2,_3,…)に装着され、同様にして、装置固有設定情報J1をシステム設定保存部160へ書き込み、その設定結果情報J2を可搬性記憶媒体9に記録する。
【0026】
ここで、生産管理データ解析部52は、生産管理に供される装置設定用データとしての装置固有設定情報J1や設定結果情報J2を、各電子機器100に割り当てられるシリアル番号に対応付けて記憶するように管理する。装置固有設定情報J1を検査対象の電子機器100のシステム設定保存部160へ保存したときに、そのことを示す設定結果情報J2を可搬性記憶媒体9に記憶することで、電子機器100は、設定結果情報J2に基づいて、同一のシリアル番号についての装置固有設定情報J1の重複使用を制御するようにする。
【0027】
また、設定結果情報J2は、後に、生産管理サーバ5に可搬性記憶媒体9を装着して、データ記憶制御部50により、その設定結果情報J2を読み取り、生産管理データ解析部52にて解析することで、出荷情報管理に利用する。
【0028】
なお、電子機器100は、装置固有設定情報J1や設定結果情報J2をシリアル番号別に記述した設定ファイルF1を記憶した製品出荷検査用の可搬性記憶媒体9だけでなく、その他の一般的なデータファイルを記憶している一般用途用の可搬性記憶媒体9aも装着可能である。詳細は後述するが、電子機器100には、可搬性記憶媒体9と可搬性記憶媒体9aの何れが装着されたかを自動判別して処理を切り替える仕組みが設けられる。
【0029】
<電子機器の構成例>
図2は、本実施形態の生産管理機能に対応した電子機器の一構成例を示す機能ブロック図である。
【0030】
本実施形態の電子機器1は、各種の機能部の一部を、ハードウェア処理回路により構成することに限らず、その機能を実現するプログラムコードに基づき電子計算機(コンピュータ)と同様の仕組みを用いてソフトウェア的に実現することが可能に構成されている。
【0031】
ソフトウェアにより所定の処理(特に本実施形態では生産管理処理)を実行させる仕組みとすることで、ハードウェア処理回路で構成される各機能要素の一部を取り外した構成にすることができ、またハードウェアの変更を伴うことなく、処理手順などを容易に変更できる利点を享受できるようになる。これに対して、ハードウェア処理回路で行なうことで、高速化を図ったアクセラレータシステムを構築することができるようになる。アクセラレータシステムは、処理が複雑であっても、処理速度の低下を防ぐことができ、高いスループットを得ることができる。
【0032】
電子計算機と同様の仕組みで、生産管理処理機能をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ(組込マイコンなど)、あるいは、CPU(Central Processing Unit )、論理回路、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)、随時書込みおよび読出しが可能であるとともに揮発性の記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)、あるいは不揮発性の記憶部の一例であるRAM(NVRAMと記述する)を始めとする記憶装置などの機能を1つのチップ上に搭載して所望のシステムを実現するSOC(System On a Chip:システムオンチップ)、または、各種のプログラムをインストールすることで各種の機能を実行することが可能な構成で、記録媒体からインストールされる。
【0033】
記録媒体は、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取装置に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気などのエネルギの状態変化を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取装置にプログラムの記述内容を伝達できるものである。
【0034】
たとえば、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクFDを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory )、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc )を含む)、または半導体メモリなどよりなるパッケージメディア(可搬型の記憶媒体)により構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROMやハードディスクなどで構成されてもよい。
【0035】
また、ソフトウェアを構成するプログラムは、記録媒体を用いずに、記録媒体を介して提供されることに限らず、有線あるいは無線などの通信網を介して提供されてもよい。
【0036】
たとえば、生産管理処理機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、ハードウェア処理回路にて構成する場合と同様の効果は達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が生産管理処理機能を実現する。
【0037】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することで生産管理処理機能が実現されるだけでなく、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(Operating Systems ;基本ソフト)などが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理により生産管理処理機能が実現される場合であってもよい。
【0038】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によって生産管理処理機能が実現される場合であってもよい。
【0039】
なお、生産管理処理機能を実現するプログラムコードを記述したファイルとしてプログラムが提供されるが、この場合、一括のプログラムファイルとして提供されることに限らず、コンピュータで構成されるシステムのハードウェア構成に応じて、個別のプログラムモジュールとして提供されてもよい。
【0040】
たとえば、コンピュータシステムとして構成される電子機器100は、装置全体の動作を制御するシステム制御部102を備える。本実施形態のシステム制御部102は、装置全体の動作を制御する機能だけでなく、可搬性記憶媒体9装置設定用データである装置固有設定情報J1を取り込んで電子機器100内のシステム設定保存部160に書き込むとともに、装置固有設定情報J1のシステム設定保存部160への書込結果を示す設定結果情報J2を可搬性記憶媒体9に書き込むデータ記憶制御部の機能も備えている。
【0041】
ここで、本実施形態においては、装置固有設定情報J1や設定結果情報J2を各電子機器100に割り当てられるシリアル番号に対応付けられて記憶するようにし、かつ、装置固有設定情報J1を検査対象の電子機器100のシステム設定保存部160へ保存したときには、そのことを示す設定結果情報J2を可搬性記憶媒体9に記憶することで、データ記憶制御部として機能するシステム制御部102は、設定結果情報J2に基づいて、同一のシリアル番号についての装置固有設定情報J1の重複使用を制御するようにする。
【0042】
具体的には、システム制御部102は、コントローラ部104と、図示したハードディスク装置(HDD)118や、図示を割愛した、フレキシブルディスク(FD)ドライブ、CD−ROM(Compact Disk ROM)ドライブ、半導体メモリコントローラなどの、所定の記憶媒体からデータを読み出したり記録したりするための記録・読取制御部106と、可搬性記憶媒体9,9aを装着可能な装着手段としての装着ポート199とを有する。たとえば、可搬性記憶媒体9,9aとしてUSBメモリを使用する場合、装着ポート199にはUSBポートが設けられる。
【0043】
特に、本実施形態の記録・読取制御部106は、装着ポート199に可搬性記憶媒体9が装着された状態で、可搬性記憶媒体9から装置固有設定情報J1(のファイルデータ)を読み出し、あるいは電子機器100の製品出荷検査後に設定結果情報J2(のファイルデータ)を可搬性記憶媒体9に書き込む可搬性記憶媒体9用の読取書込部(メディアリーダ)108を有している。
【0044】
コントローラ部104は、CPU112、読出専用の記憶部であるROM113、随時書込みおよび読出しが可能であるとともに揮発性の記憶部の一例であるRAM115、および不揮発性の記憶部の一例であるRAM(NVRAMと記述する)116を有する。
【0045】
なお、上記において“揮発性の記憶部”とは、装置の電源がオフされた場合には、記憶内容を消滅してしまう形態の記憶部を意味する。一方、“不揮発性の記憶部”とは、装置のメイン電源がオフされた場合でも、記憶内容を保持し続ける形態の記憶部を意味する。記憶内容を保持し続けることができるものであればよく、半導体製のメモリ素子自体が不揮発性を有するものに限らず、バックアップ電源を備えることで、揮発性のメモリ素子を“不揮発性”を呈するように構成するものであってもよい。
【0046】
また、半導体製のメモリ素子により構成することに限らず、磁気ディスクや光ディスクなどの媒体を利用して構成してもよい。たとえば、ハードディスク装置118を不揮発性の記憶部として利用できる。また、CD−ROMなどの記録媒体から情報を読み出す構成を採ることでも不揮発性の記憶部として利用できる。
【0047】
また、コンピュータシステムと同様の仕組みで構成された電子機器100は、装置の操作指示を受け付けるなどのユーザインタフェースをなす機能部としての指示受付部152と、操作時のガイダンス画面(操作メニュー)や装置の動作状態や処理結果などの所定の情報をユーザに提示する表示出力部154と、各機能部との間のインタフェース機能をなすインタフェース部(IF部)190とを有する。
【0048】
インタフェース部190としては、処理データ(画像データを含む)や制御データの転送経路であるシステムバス191の他、たとえば、操作パネル部192aおよび操作キー部192bを具備したユーザインタフェース部192や、プロトコル制御を実行しネットワークとのインタフェース機能をなす通信インタフェース部194や、その他の外部デバイスとのインタフェース機能をなすデバイスインタフェース部を有する。
【0049】
通信インタフェース部194は、ネットワークや公衆回線網を制御するネットワークコントローラやモデムなどの通信制御機能を持つ。デバイスインタフェース部は、各種のデバイス装置をコントロールする。
【0050】
指示受付部152としては、たとえば、ユーザインタフェース部192の操作キー部192bを利用することができる。あるいは、キーボード152aやマウス152bなどを利用することもできる。
【0051】
ユーザインタフェース部192やキーボード152aやマウス152bは、図示を割愛するが、キーボード152aからのキー入力およびマウス152bといったポインティングデバイスからの入力を制御するそれぞれに応じたデバイスインタフェース部を介してシステムバス191に接続される。
【0052】
表示出力部154は、表示制御部と表示装置とを備える。表示装置としては、たとえば、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aを利用することができる。あるいは、CRT(Cathode Ray Tube;陰極線管)やLCD(Liquid Crystal Display;液晶)などでなるその他のディスプレイ部154aを利用することもできる。
【0053】
たとえば、表示制御部が、操作パネル部192aやディスプレイ部154a上に、ガイダンス情報や読取書込部108が可搬性記憶媒体9から取り込んだ装置固有設定情報J1の一覧などを表示させる。また、各種の情報を操作者に通知する際の表示デバイスとしても利用される。なお、表示面上にタッチパネルを有するディスプレイ部154aとすることで指先やペンなどで所定の情報を入力する指示受付部152を構成することもできる。
【0054】
このような構成において、CPU112は、システムバス191を介してシステム全体の制御を行なう。ROM113は、CPU112が使用する制御プログラムを含む各種固定データを格納する。RAM115は、SRAM(Static Random Access Memory )などで構成され、プログラム制御変数や各種処理のためのデータなどを格納し、また、所定のアプリケーションプログラムに従って演算して得たデータや外部から取得したデータなどを一時的に格納する領域を含んでおり、CPU112がデータ処理などを行なう際に、ワークメモリなどの用途に使用される。
【0055】
NVRAM116は、制御パラメータや処理されたデータなどを記憶しておくものであり、バックアップされる。特に、本実施形態の構成においては、読取書込部108が可搬性記憶媒体9から取り込んだ装置固有設定情報J1をシステム設定情報として保存するシステム設定保存部160の機能をなすようになっている。
【0056】
たとえば、生産管理処理機能をコンピュータに実行させるプログラムは、CD−ROMなどの記録媒体を通じて配布される。あるいは、このプログラムは、CD−ROMではなくFDに格納されてもよい。また、MOドライブを設け、MOに前記プログラムを格納してもよく、またフラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリカードなど、その他の記録媒体にプログラムを格納してもよい。さらに、他のサーバなどからインターネットなどのネットワークを経由してプログラムをダウンロードして取得したり、あるいは更新したりしてもよい。
【0057】
なおプログラムを提供するための記録媒体としては、FDやCD−ROMなどの他にも、DVDなどの光学記録媒体、MDなどの磁気記録媒体、PDなどの光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、ICカードやミニチュアカードなどの半導体メモリを用いることができる。記録媒体の一例としてのFDやCD−ROMなどには、生産管理処理機能を実現する際の、一部または全ての機能を格納することができる。
【0058】
また、ハードディスク装置118や光/磁気ファイルなどの記憶装置は、プログラムや各種のアプリケーション、フォントデータやユーザファイルといったユーザデータや制御管理データを保持したり、自装置で取得したデータや外部から取得したデータなどを大量に一時的に格納したりする領域を含んでおり、入出力インタフェース機能をなす記録・読取制御部106によりデータの読出しや書込みが制御される。
【0059】
このような構成により、所定の指令にて、生産管理処理機能を実行するプログラムが記憶されているCD−ROMなどの読取可能な記録媒体からRAM115に生産管理処理プログラムがインストールされ、また指示受付部152を介した操作者による指令や自動処理にて生産管理処理プログラムが起動される。
【0060】
CPU112は、この生産管理処理プログラムに従って後述する生産管理処理方法に伴う処理を施し、処理結果をRAM115やハードディスク装置118などの記憶装置に格納し、必要により操作パネル部、あるいはCRTやLCDなどの表示装置に情報提示出力する。生産管理処理方法を実行するプログラムが記録した記録媒体を用いることにより、既存のシステムを変えることなく、生産管理処理システムを汎用的に構築することができる。
【0061】
なお、このようなコンピュータを用いた構成に限らず、各機能部の処理をなす専用のハードウェアの組合せにより、生産管理処理機能を実行することを可能とする電子機器100を構成することもできる。
【0062】
なお、電子機器100には、前述の各機能部の他にも、装置機能に応じた特有の機能部も設けられる。一例として、印刷出力機能や複写機能などを備えた画像形成装置として電子機器100を構築する場合であれば、画像データの圧縮伸張処理や加工などの処理を実行する画像処理部180や、原稿画像を読み取る画像読取部182や、画像情報を印刷出力してユーザに提示する構成とするべく、画像読取部182が読み取った画像や通信インタフェース部194を介して取得した印刷データなどに基づき、所定の出力媒体(たとえば印刷用紙)に画像を出力する画像記録部(画像形成部)184を設けることもできる。
【0063】
画像読取部182や画像記録部184は、インタフェース部190をなすデバイスインタフェース部としてのスキャナインタフェース部196やプリンタインタフェース部197を介してシステムバス191に接続される。
【0064】
なお、これらの他にも、たとえば、音声情報を発するオーディオデバイス188が、音声信号の入出力を制御するオーディオインタフェース部198を介してシステムバス191に接続される。
【0065】
<処理手順:第1実施形態>
図3〜図5は、電子機器100についての生産管理機能に着目した処理手順の第1実施形態を説明する図である。ここで、図3は、生産管理機能を実現する第1実施形態の処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図4は、第1実施形態の処理手順で用いる装置固有設定情報J1と設定結果情報J2とを纏めた設定ファイルF1の一例を示す図表である。また、図5は、所要の処理ステップにて提示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【0066】
この第1実施形態の処理手順は、シリアル番号別に装置固有設定情報J1と設定結果情報J2とを設定ファイルF1に登録するようにするとともに、シリアル番号別の設定結果情報J2に基づいて、同一のシリアル番号についての装置固有設定情報J1の重複使用を制御するようにする点に特徴を有する。
【0067】
具体的には、所定のグループ分け基準に従ってグループ分けした複数台の電子機器100について、それぞれ異なるシリアル番号を各電子機器100に割り当てて、シリアル番号ごとに装置固有設定情報J1と設定結果情報J2を設定する。生産現場での製品出荷検査時には、設定結果情報J2に基づいてその時点で選択可能な複数のシリアル番号を特定し、その選択可能なシリアル番号の中から任意のシリアル番号を選択し、そのシリアル番号に該当する装置固有設定情報J1を可搬性記憶媒体9から読み出して電子機器100のシステム設定保存部160に記憶させる。典型例としては、未検査の複数台の電子機器100の内、検査対象の電子機器100のシリアル番号と同一のシリアル番号を選択する事例である。
【0068】
先ず、生産管理サーバ5にて、図4に示すように、電子機器100の別に、機種コード、機種コード別のシリアル番号、設置先の国情報、オプション設定、などでなる装置固有設定情報J1をシリアル番号ごとに記述し、また、設定結果情報J2の“状態”の項目を“未了”に設定した設定ファイルF1を、可搬性記憶媒体9に保存する(S100)。
【0069】
データ記憶制御部50は、シリアル番号別に装置固有設定情報J1を記述した設定ファイルF1を作成する際、前述のように、複数台の電子機器100を所定のグループ分け基準に従ってグループ分けし、少なくとも同一グループ内の各電子機器100については、同一のシリアル番号が複数台に割り当てられることがないように、各電子機器100に付すシリアル番号を割り当てる。ここでは、機種別にグループ分けし、同一機種の各電子機器100には、それぞれ異なるシリアル番号を割り当てる一方、異機種間においては、同一のシリアル番号が各電子機器100に割り当てられることを許可するものとする。
【0070】
また、データ記憶制御部50は、可搬性記憶媒体が装置固有設定情報J1を記述した設定ファイルF1を記憶している固有設定情報設定用(つまり製品出荷検査用)の可搬性記憶媒体9であるのか、その他の一般的なデータファイルを記憶している一般用途用の可搬性記憶媒体9a(図1参照)であるのかの区別がつくように、可搬性記憶媒体9には、識別情報をセットしておく。
【0071】
識別情報をセットする仕組みとしては、たとえば、ルートディレクトリに“@@@@@_init.txt”などというファイル名のテキスト文書を作成し、そのファイルの中にcsv(Comma Separated Value )形式で図4に示す装置固有設定情報Jをなす各種の情報を書き込む。
【0072】
図4から分かるように、可搬性記憶媒体9には、生産管理機能の1つである出荷検査機能を実現するための各電子機器100に対応した装置固有設定情報J1の一覧を設定ファイルF1として記憶する。装置固有設定情報J1は、同一機種の各シリアル番号別に設置先の国情報やオプション設定などの初期設定が記述され、また、異機種についても、各シリアル番号別に設置先の国情報やオプション設定などの初期設定が、同一の設定ファイルF1内に記述される。1つの可搬性記憶媒体9を使用して、工場出荷時の各種情報(シリアル番号や初期設定など)を、複数台/複数機種の電子機器100に設定することができる。
【0073】
なお、図4に示す設定ファイルF1の装置固有設定情報J1のうち、「オプション設定」とは、たとえば、システム設定で変更可能な工場出荷オプションなどである。一例として、印刷出力機能や複写機能などを備えた画像形成装置として電子機器100を構築する場合であれば、小冊子出力機能や合紙機能などの複写出力に関する応用コピー機能の有無や、電子ソートキットや複製管理キットなどの印刷出力に関するプリンタオプションの有無の設定がある。これらのオプションは、ハードウェアの装着の有無を伴う場合もあれば、専らソフトウェア処理の実行の有無のみで対処されるものもある。
【0074】
次に、生産現場(特に出荷検査工程)においては、工場オペレータは、ステップS100にて各電子機器100についての装置固有設定情報J1が書き込まれた可搬性記憶媒体9を、検査対象の電子機器100の装着ポート199に装着する(S110)。
【0075】
読取書込部108は、この可搬性記憶媒体9の装着を検知すると(S112−YES)、可搬性記憶媒体9に記憶されているファイルをサーチし(S113)、その中に、装置固有設定情報J1を記述した設定ファイルF1(たとえば“@@@@@_init.txt”のテキスト文書)が存在するか否か、つまり装着ポート199に装着された可搬性記憶媒体が、製品出荷検査用の可搬性記憶媒体9であるのか一般用途用の可搬性記憶媒体9aであるのかを判定する(S114)。
【0076】
読取書込部108は、装置固有設定情報J1を記述した設定ファイルF1を見つけることができなかったとき、つまり装着ポート199に装着された可搬性記憶媒体が一般用途用の可搬性記憶媒体9aであるときは、その旨をコントローラ部104(特にCPU112)に通知する(S114−NO,S116)。この通知を受けたCPU112は、一般ユーザ使用のメディアプリント/メディアスキャンメニュー表示モードに遷移する(その詳細フローは図示を割愛する)(S117)。
【0077】
一方、読取書込部108は、装置固有設定情報J1を記述した設定ファイルF1を見つけると、その旨をコントローラ部104(特にCPU112)に通知するとともに、設定ファイルF1のデータを読み取りCPU112に渡す(S114−YES,S118)。この通知を受けたCPU112は、固有情報書込モードに遷移する(S120)。
【0078】
つまり、可搬性記憶媒体9が電子機器100の装着ポート199に装着され、可搬性記憶媒体9に当該電子機器100を出荷検査するための設定ファイルF1が記憶されていると、自動で、生産管理機能の1つである出荷検査機能を実現するモードに移行し、後述する各種の操作メニューがオペレータ操作と連動して順に提示されるようになるのである。
【0079】
製品出荷検査用の可搬性記憶媒体9が装着ポート199に装着されたとき、自動で出荷検査用の操作メニュー画面が表示されるので、工場オペレータが逐一操作するよりも、設定時の作業時間を短縮することができる。
【0080】
固有情報書込モードでは、CPU112は先ず、読取書込部108を介して取り込んだ設定ファイルF1中の各装置固有設定情報J1の内、自装置の機種コードに合致するもので、かつ、設定結果情報J2の“状態”の項目が“未了”のもののみを抽出し、図5(A)に示すように、対象シリアル番号一覧画面G122を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する(S122)。
【0081】
たとえば、該当機種の機種コードを表示するとともに、異機種のシリアル番号は一切表示しないようにし、かつ、同一機種のもののうち、設定結果情報J2の“状態”の項目が“設定済”のものは、そのシリアル番号を半輝度で表示する、あるいは表示しないようにする。半輝度のシリアル番号のものについては、後述するステップS124にてのシリアル番号の選択を受け付けないようにする。
【0082】
つまり、表示されるシリアル番号一覧は、設定ファイルF1にある機種が一致したものだけであり、これによって、1つの可搬性記憶媒体9で複数機種に対応することができる。また、複数機種の装置固有設定情報J1を設定ファイルF1に記述しておいても、該当機種に関係する装置固有設定情報J1(ここでは先ずシリアル番号)のみが提示され、該当機種に関係しない装置固有設定情報J1は事実上提示されないので、異機種間で同一のシリアル番号が存在しても何ら不都合は生じない。同一機種に同一シリアル番号を付与することは基本的にはないので、同一シリアル番号が複数提示されることがないのである。
【0083】
加えて、設定結果情報J2の“状態”の項目が“未了”のもののみを抽出して提示するので、同一機種について同一の設定ファイルF1を用いた場合でも、設定済(=使用済)のシリアル番号の装置固有設定情報J1を、再度使用しないようにすることができる。
【0084】
工場オペレータは、図5(A)に示す対象シリアル番号一覧画面G122の指示に従って、タッチパネル式の操作パネル部192a上で、もしくは操作キー部192bで、あるいはキーボード152aで、選択可能なものの中から、検査対象の電子機器100のシリアル番号を選択する(S124)。CPU112は、このシリアル番号の選択を受け付けると、該当シリアル番号の装置固有設定情報J1を、NVRAM116のシステム設定保存部160に書き込む(S126)。
【0085】
工場出荷時に、電子機器100に該当の装置固有設定情報J1を記述した可搬性記憶媒体9をセットして、記録されている装置固有設定情報J1を電子機器100のシステム設定保存部160に書き込むのである。USBメモリなど可搬性記憶媒体9をセット可能な装着ポート199と、可搬性記憶媒体9の情報を読み取る読取書込部108とを電子機器100に設けることで、可搬性記憶媒体9に記録された工場出荷時の各種情報(装置固有設定情報J1)を電子機器100に設定することができる。
【0086】
なお、装置固有設定情報J1をシステム設定保存部160に書き込んでいる間は(S128−NO)、図5(B)に示すように、書込み中画面G129を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する(S129)。
【0087】
装置固有設定情報J1のシステム設定保存部160への書込みが完了すると(S128−YES)、この書込みが完了したことを設定ファイルF1に残すべく、設定結果情報J2として、該当シリアル番号の“状態”の項目の“未了”を“設定済”に変更して、この設定結果情報J2を記述した設定ファイルF1を可搬性記憶媒体9に書き込む、つまり上書き保存する(S130)。ステップS122にても述べたが、同一機種について同一の設定ファイルF1を用いた場合でも、設定済(=使用済)のシリアル番号の装置固有設定情報J1を、再度使用しないようにするためである。
【0088】
なお、必要に応じて、設定結果情報J2として、各種調整検査項目の調整結果データを該当のシリアル番号の“その他の情報”の項目に記録してもよい。調整結果データを保存し、それを手掛かりとすることで、動作解析も可能となる。
【0089】
該当シリアル番号の設定結果情報J2を変更した設定ファイルF1の可搬性記憶媒体9への書込みが無事に完了すると(S136−YES)、図5(C)に示すように、書込み完了画面G138を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する(S138)。この書込み完了画面G138では、たとえば、書込みが無事に完了した旨のメッセージ(たとえば“情報書込みが完了しました”)と、可搬性記憶媒体9を装着ポート199から取り外すべきことを指示する旨のメッセージ(たとえば“メディアを取り出して下さい”)とを表示する。
【0090】
一方、何らかの不具合が発生し、装置固有設定情報J1のシステム設定保存部160への書込みや設定結果情報J2の可搬性記憶媒体9への書込みが所定時間内に完了しないときには(S136−NO)、図5(D)に示すように、書込み失敗画面G139を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する(S139)。この書込み失敗画面G139では、書込みが不成功であった旨のメッセージ(たとえば“情報書込みが失敗しました”)と、可搬性記憶媒体9を装着ポート199から取り外すべきことを指示する旨のメッセージ(たとえば“メディアを取り出して下さい”)とを表示する。
【0091】
工場オペレータは、図5(C)に示す書込み完了画面G138もしくは図5(D)に示す書込み失敗画面G139の指示に従って、装着ポート199から可搬性記憶媒体9を取り外す(S140)。これにより、検査対象の電子機器100についての製品出荷検査が完了する。
【0092】
工場オペレータは、次の検査対象の電子機器100が存在する場合(S142−YES)、ステップS110に戻り、ステップS140で取り外した可搬性記憶媒体9を、次の検査対象の電子機器100の装着ポート199に装着して、同様の処理・操作を行なう。
【0093】
一方、次の検査対象の電子機器100が存在しなければ(S142−NO)、工場オペレータは、ステップS140で取り外した可搬性記憶媒体9の設定ファイルF1を生産管理サーバ5のデータ記憶制御部50で読み取り、生産管理データ解析部52により、設定結果情報J2やその他の情報(たとえば検査結果情報など)に基づいてデータ解析を行なうことで、出荷情報管理に利用する。
【0094】
このように、第1実施形態の処理手順によれば、装置固有設定情報J1や設定結果情報J2を記述した設定ファイルF1を可搬性記憶媒体9に記憶して製品出荷検査に使用するようにしたので、ネットワーク環境を使わなくても、装置固有設定情報J1(シリアル番号やその他の初期設定)の電子機器100への設定に対応することができる。
【0095】
一般的に、パーソナルコンピュータから電子機器100への各種情報設定は、ネットワークインタフェース、パラレルインタフェース、シリアルインタフェース、設定用専用ポートの何れかを使用する。機種によっては存在するポートが異なり、機種ごとに接続ポートを準備する必要がある。
【0096】
ところが、本実施形態のように、可搬性記憶媒体9を使用することにより、異なる機種でも可搬性記憶媒体9に対応した装着ポート199のみ共通で存在すれば、1つの可搬性記憶媒体9で各機種の初期設定を実施することが可能になる。また、可搬性記憶媒体9を使用することにより、パーソナルコンピュータを使用する場合に比べて、ネットワーク環境を使わなくても済むようになるので、工場レイアウト制約を受け難くなる。
【0097】
また、可搬性記憶媒体9は、生産ライン3の何処にでも持ち運ぶことができるので、ベルトコンベアによる単一生産方式、混合生産方式、セル生産方式といった生産方式によらず、柔軟な機器生産システムを構築することができる。
【0098】
また、共通の設定ファイルF1に、機種別かつシリアル番号別に、各シリアル番号のものについて装置固有設定情報J1や設定結果情報J2を記述するようにしたので、1つの可搬性記憶媒体9を用いつつ、複数機種、複数台の電子機器100への初期設定に対応することができる。
【0099】
加えて、設定結果情報J2を利用して、一旦、装置固有設定情報J1を電子機器100に設定したシリアル番号のものについては、設定済(=使用済)のシリアル番号の装置固有設定情報J1の重複設定を許可しないようにしたので、作業ミスによる重複設定を確実に防止することもできる。
【0100】
また、設定結果情報J2の“状態”の項目が“設定済”になっているものについては、電子機器100に設定された工場出荷時の各種情報設定結果を可搬性記憶媒体9で情報収集することもできる。電子機器100が工場から出庫された後に、工場出荷時の状態を確認することができるのである。また、調整結果データを保存しておけば、生産ラインでの品質データの収集も可能になる。
【0101】
また、後述する第2実施形態の処理手順との相違点として、ステップS122にて提示された選択可能なシリアル番号の一覧の中から、該当のものを選択することができるので(S124)、予めシリアル番号を電子機器100に設定した後であっても、シリアル番号の選択を間違えない限り、1つの可搬性記憶媒体9を用いつつ、複数機種、複数台の電子機器100への初期設定に対応することができる。
【0102】
<処理手順:第2実施形態>
図6〜図8は、電子機器100についての生産管理機能に着目した処理手順の第2実施形態を説明する図である。ここで、図6は、第2実施形態の処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図7は、第2実施形態の処理手順で用いる装置固有設定情報J1と設定結果情報J2とを纏めた設定ファイルF1の一例を示す図表である。また、図8は、所要の処理ステップにて提示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【0103】
この第2実施形態の処理手順は、シリアル番号別に装置固有設定情報J1を設定ファイルF1に登録するとともにシリアル番号を割り当てるグループ別(たとえば機種別)に設定結果情報J2として検査済の最終シリアル番号を登録するようにするとともに、グループ別の設定結果情報J2(最終シリアル番号)に基づいて、同一のシリアル番号についての装置固有設定情報J1の重複使用を制御するようにする点に特徴を有する。
【0104】
なお、「最終シリアル番号を登録する」とは、事実上、「次の検査対象の電子機器100のシリアル番号を一意に特定し得るように所定のシリアル番号を登録する」ことを意味し、検査済の電子機器100の最終のシリアル番号そのものを登録することのみに限定されるものではない。たとえば、電子機器100において、検査終了後に、次の検査対象の電子機器100のシリアル番号を特定して、この次の検査対象の電子機器100のシリアル番号を登録してもよい。つまり、シリアル番号が割り当てられる複数の電子機器100のグループ別に、次に検査すべき電子機器100のシリアル番号を特定し得る情報を設定結果情報J2として登録すればよいのである。
【0105】
具体的には、所定のグループ分け基準に従ってグループ分けした複数台の電子機器100について、それぞれ異なるシリアル番号を各電子機器100に割り当てて、シリアル番号ごとに装置固有設定情報J1を設定するとともに、生産現場での製品出荷検査時には、シリアル番号順に製品出荷検査を実施する点に特徴を有する。
【0106】
第1実施形態との比較としては、出荷検査時に、シリアル番号を割り当てるグループ別(たとえば機種別)にその時点で検査対象となる電子機器100を設定結果情報J2(最終シリアル番号)に基づいて一意に特定するので、シリアル番号の任意選択性がない点である。以下、第1実施形態の処理手順との相違点を中心に説明する。
【0107】
先ず、生産管理サーバ5にて、図7に示すように、電子機器100の別に、機種コード、機種コード別のシリアル番号、設置先の国情報、オプション設定、などでなる装置固有設定情報J1と設定結果情報J2を記述した設定ファイルF1を、可搬性記憶媒体9に書き込んでおく(S100)。
【0108】
データ記憶制御部50は、シリアル番号別に装置固有設定情報J1を記述した設定ファイルF1を作成する際、複数台の電子機器100を所定のグループ分け基準に従ってグループ分けし、少なくとも同一グループ内の各電子機器100については、同一のシリアル番号が複数台に割り当てられることがないように、各電子機器100に付すシリアル番号を割り当てる。ここでは、機種別にグループ分けし、同一機種の各電子機器100には、それぞれ異なるシリアル番号を割り当てる一方、異機種間においては、同一のシリアル番号が各電子機器100に割り当てられることを許可するものとする。
【0109】
また、第1実施形態で用いる設定ファイルF1との相違点として、データ記憶制御部50は、設定結果情報J2として、機種別に、検査済の電子機器100の最終番目のシリアル番号を“最終シリアル番号”の項目に設定する。最初は、全ての電子機器100が未検査であるから、初期値(たとえば“0”)を設定しておく(S100)。
【0110】
次に、生産現場(特に出荷検査工程)において、固有情報書込モードに遷移すると(S120)、CPU112は、読取書込部108を介して取り込んだ設定ファイルF1中の各設定結果情報J2の“最終シリアル番号”の内、自装置の機種コードに合致するものを抽出し、予め定められているインクリメント順に従って“最終シリアル番号”の次のシリアル番号を特定し、図8に示すように、この次のシリアル番号を提示する対象シリアル番号画面G123を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する(S123)。
【0111】
たとえば、該当機種の機種コードと、同一機種の最終シリアル番号(つまり検査済の電子機器100の最終シリアル番号)および次のシリアル番号(つまり検査対象の電子機器100のシリアル番号)を表示するとともに、異機種の機種コードと最終シリアル番号を半輝度で表示する、あるいは表示しないようにする。半輝度のものについては、仮に選択されたとしても次の処理に移行しないようにする。
【0112】
つまり、表示される次の検査対象のシリアル番号は、設定ファイルF1にある機種が一致したものだけであり、これによって、1つの可搬性記憶媒体9で複数機種に対応することができる。また、複数機種の装置固有設定情報J1を設定ファイルF1に記述しておいても、該当機種に関係する設定結果情報J2(ここでは先ず次の検査対象のシリアル番号)が提示され、該当機種に関係しないものは事実上提示されないので、異機種間で同一のシリアル番号が存在しても、何ら不都合は生じない。
【0113】
加えて、該当機種の設定結果情報J2の“最終シリアル番号”に基づいて次の検査対象のシリアル番号を一意に特定して提示するので、同一機種について同一の設定ファイルF1を用いた場合でも、設定済(=使用済)のシリアル番号の装置固有設定情報J1を、再度使用しないようにすることができる。
【0114】
工場オペレータは、図8に示す対象シリアル番号画面G123に提示された次の検査対象のシリアル番号を確認して、タッチパネル式の操作パネル部192a上で“OK”をクリックする、もしくは操作キー部192bで“OKボタン”を押す、あるいはキーボード152aで“エンターキー”を押して、次処理への移行を指示する(S125)。CPU112は、この次処理への移行指示を受け付けると、該当シリアル番号の装置固有設定情報J1を、NVRAM116のシステム設定保存部160に書き込む(S126)。
【0115】
装置固有設定情報J1のシステム設定保存部160への書込みが完了すると(S128−YES)、この書込みが完了したことを設定ファイルF1に残すべく、設定結果情報J2として、該当機種の“最終シリアル番号”の項目を、今検査した“シリアル番号”に変更して、この設定結果情報J2を記述した設定ファイルF1を可搬性記憶媒体9に書き込む、つまり上書き保存する(S132)。
【0116】
ステップS123にても述べたが、同一機種について同一の設定ファイルF1を用いた場合でも、設定済(=使用済)のシリアル番号の装置固有設定情報J1を、再度使用しないようにするためである。設定結果情報J2の“最終シリアル番号”の項目に設定するシリアル番号をインククリメントして、その結果を可搬性記憶媒体9に記録しておくことで、設定済みのシリアル番号が再使用されないようにすることができる。
【0117】
以下、第1実施形態の処理手順と同様である。
【0118】
このように、第2実施形態の処理手順によっても、装置固有設定情報J1や設定結果情報J2を記述した設定ファイルF1を可搬性記憶媒体9に記憶して製品出荷検査に使用するようにしたので、ネットワーク環境を使わなくても、装置固有設定情報J1(シリアル番号やその他の初期設定)の電子機器100への設定に対応することができる。
【0119】
また、前述の第1実施形態の処理手順との相違点として、ステップS123にて提示された次の検査対象のシリアル番号を確認するだけでよく、次の検査対象のシリアル番号を選択することが不要である。ただし、シリアル番号の任意選択性がなく、必ず、シリアル番号順に検査をする必要がある。しかしながら、このようにしても、通常の生産現場では、検査実施後にシリアル番号を実際に電子機器100に付するので何ら不都合はない。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明に係る生産管理方法を適用する電子機器生産システムの概要を示す図である。
【図2】本実施形態の生産管理機能に対応した電子機器の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】生産管理機能を実現する第1実施形態の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の処理手順で用いる装置固有設定情報と設定結果情報の一例を示す図表である。
【図5】所要の処理ステップにて提示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【図6】生産管理機能を実現する第2実施形態の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態の処理手順で用いる装置固有設定情報と設定結果情報の一例を示す図表である。
【図8】所要の処理ステップにて提示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0121】
1…電子機器生産システム、3…生産ライン、5…生産管理サーバ(生産管理装置)、9…可搬性記憶媒体、50…データ記憶制御部、52…生産管理データ解析部、100…電子機器、102…システム制御部、104…コントローラ部、106…記録・読取制御部、108…読取書込部、112…CPU、113…ROM、115…RAM、116…NVRAM、152…指示受付部、154…表示出力部、160…システム設定保存部、190…インタフェース部、199…装着ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の生産管理に供される装置設定用データを可搬型の不揮発性の記憶媒体に予め記憶しておき、
前記可搬型の不揮発性の記憶媒体を検査対象の電子機器に装着して、前記可搬型の不揮発性の記憶媒体から未設定の前記装置設定用データを当該電子機器に内蔵の不揮発性の記憶媒体に書き込むとともに、当該電子機器に内蔵の不揮発性の記憶媒体への前記装置設定用データの書込結果を示す情報を前記可搬型の不揮発性の記憶媒体に書き込む
ことを特徴とする生産管理方法。
【請求項2】
電子機器の生産管理に供される装置設定用データを可搬型の不揮発性の記憶媒体に記憶するとともに、当該可搬型の不揮発性の記憶媒体に記憶されている前記装置設定用データの書込結果を示す情報を読み取るデータ記憶制御、および、前記データ記憶制御部により読み取られた前記前記装置設定用データの書込結果を示す情報に基づいて出荷情報管理を実行可能にする生産管理データ解析部を具備した生産管理装置と、
生産管理に供される装置設定用データを記憶する可搬型の不揮発性の記憶媒体を装着可能な装着手段、および、前記可搬型の不揮発性の記憶媒体から未設定の前記装置設定用データを取り込んで当該機器に内蔵の不揮発性の記憶媒体に書き込むとともに、当該機器に内蔵の不揮発性の記憶媒体への前記装置設定用データの書込結果を示す情報を前記可搬型の不揮発性の記憶媒体に書き込むデータ記憶制御部を具備した電子機器を順次流す生産ラインと
を備えたことを特徴とする電子機器生産システム。
【請求項3】
電子機器の生産管理に供される装置設定用データを可搬型の不揮発性の記憶媒体に記憶するとともに、当該可搬型の不揮発性の記憶媒体に記憶されている前記装置設定用データの書込結果を示す情報を読み取るデータ記憶制御部と、
前記データ記憶制御部により読み取られた前記前記装置設定用データの書込結果を示す情報に基づいて出荷情報管理を実行可能にする生産管理データ解析部と
を備えたことを特徴とする生産管理装置。
【請求項4】
前記生産管理データ解析部52は、複数の電子機器を所定のグループ分け基準に従ってグループ分けし、少なくとも同一グループ内の各電子機器については、それぞれ異なるシリアル番号を割り当てる
ことを特徴とする請求項3に記載の生産管理装置。
【請求項5】
生産管理に供される装置設定用データを記憶する可搬型の不揮発性の記憶媒体を装着可能な装着手段と、
前記可搬型の不揮発性の記憶媒体から未設定の前記装置設定用データを取り込んで当該機器に内蔵の不揮発性の記憶媒体に書き込むとともに、当該機器に内蔵の不揮発性の記憶媒体への前記装置設定用データの書込結果を示す情報を前記可搬型の不揮発性の記憶媒体に書き込むデータ記憶制御部と
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
前記可搬型の不揮発性の記憶媒体には、各電子機器に割り当てられるシリアル番号に対応付けられて前記装置設定用データが記憶されており、
前記データ記憶制御部は、前記書込結果を示す情報に基づいて、同一のシリアル番号についての前記装置設定用データの重複使用を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記可搬型の不揮発性の記憶媒体には、前記シリアル番号が割り当てられる複数の電子機器のグループ別に、次に検査すべき電子機器のシリアル番号を特定し得る情報が前記書込結果を示す情報として記憶されており、
前記データ記憶制御部は、前記次に検査すべき電子機器のシリアル番号を特定し得る情報に基づいて、同一のシリアル番号についての前記装置設定用データの重複使用を制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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