説明

産業用ワイパー

【課題】
包装体に触れずにシートをポップアップ式に取り出すことができ、水系および油系の汚れに対して衛生的に拭き取ることができ、特に食品周りの拭き取りに適している産業用ワイパーを提供することを目的とする。
【解決手段】
吸水性の高い木材パルプ繊維と耐薬品性、親油性にも優れるポリプロピレン等のスパンボンド不織布を水流交絡させJISP8141によるクレム法吸水度45mm以上と吸水性が高く、かつ坪量60〜130g/mにおいて保水量がシート1枚あたり10g〜30g/1枚(精製水換算)である不織布のシートを、V折りあるいはZ折りにポップアップ可能に折り畳みこの折り畳み不織布シートを乾燥状態において、耐アルコール性、耐熱性に優れたインキにより印刷された透明あるいは半透明フィルムを用いてフィルム包装したことを特徴とする水系及び油系の汚れに対して拭き取ることができるポップアップ式産業用ワイパー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポップアップ式にフィルム包装された産業用ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ワイパーには、その原料についても様々なものがあるが、パルプ繊維とポリプロピレン等の合成繊維からなるウエブを交絡させて得られた不織布は風合いや拭き取り性に優れることから幅広い用途に用いられている。これらは、通常、シートを数回折り畳んで束状に包装されており、使用時には包装体から1枚ずつ取り出し広げるなどして使用されている。様々な用途の中で、特に食品周りではシートに洗浄液を所定量含ませた後に汚れを拭き取ったり、アルコール等の消毒液をシートから放出させて消毒することが行われている。この場合、従来品では、吸液性及び拡散性が高いため薬液がシート全体に拡散してしまい対象物への転写量が少なくなったり、液量を増やす必要があったりと無駄が大きいことがあった。シートを薬液に漬けた後、絞って使用する場合にも過剰の薬液が使用されていた。
また、比較的細かい物の拭き取りに対しては、嵩高で大判のシートでは作業がしにくいことがあった。
さらに、取り出す際に包装体を掴むことによって包装体が汚れたり、薬液により包装体表示の印刷が消えてしまう等の問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平5−179545
【特許文献2】特開2000−201559
【特許文献3】特開2004−275595
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装体に触れずにシートをポップアップ式に取り出すことができ、水系および油系の汚れに対して衛生的に拭き取ることができ、特に食品周りの拭き取りに適している産業用ワイパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は吸水性の高い木材パルプ繊維と耐薬品性、親油性にも優れるポリプロピレン等のスパンボンド不織布を水流交絡させJISP8141によるクレム法吸水度45mm以上と吸水性が高く、かつ坪量60〜130g/mにおいて保水量がシート1枚あたり10g〜30g/1枚(精製水換算)である不織布のシートを、V折りあるいはZ折りにポップアップ可能に折り畳みこの折り畳み不織布シートを乾燥状態において、耐アルコール性、耐熱性に優れたインキにより印刷された透明あるいは半透明フィルムを用いてフィルム包装したことを特徴とする水系及び油系の汚れに対して拭き取ることができるポップアップ式産業用ワイパーに係わる。
【0006】
また本発明は上記において不織布シートはシートを幅方向に分割するための脆弱線等の手段を備えているもの、包装時のカット工程においてバンドソーを用いずに、スコアカットあるいはシェアカットを行うことで、木材パルプ由来の紙粉が少なく、かつ製造工程中のポリプロピレン等溶着による弊害を回避することができるもの、保水量は、原料の配合比の調整や交絡工程でのプレス等の工程管理の他、坪量、シート面積によって所定の範囲に設定することができるもの、または不織布シートがアルコール等の消毒液を無駄なく使用するに十分な保水量を有するものに係わる。
【0007】
上記において保水量を坪量60〜130g/mにおいて10g〜30g/1枚(精製水換算)としたのは10g未満では、拭き取り時に液タレがおきやすく、拭き取りも充分ではない。20g/1枚より大きいと、1回の拭き取りにおいては薬液の無駄が多くなるばかりでなく、シート全面が有効に活用されないことでの無駄も多いことによる。
【0008】
不織布シートを幅方向に分割する場合には保水量は、シートサイズにより按分される。分割する手段はミシン目等の脆弱線が適する。
【0009】
尚保水量は次の試験法による。
<保水量測定方法> 精製水中にシートを1分間浸漬させた後、シートを広げた状態で30分間放置した後のシート重量の増加分を保水量とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果を要約して列記すると次の通りである。
(1)ポップアップ式に取り出すことができ、包装体に触れずにシートの取り出しが可能で衛生的に水系及び油系の汚れに対して拭き取ることができる。特に食品周りの拭き取りに適している。
(2)アルコール等による消毒時に液の使用量を抑えることができ、またシートの坪量、サイズも比較的小さいため同一回数の拭き取りでのシート廃棄量を従来品より抑えることができる。
(3)アルコール等の薬液により包装体表示への損傷がなく、見た目も衛生的である。
(4)シートを分割させることで、用途に応じたシートサイズとすることもでき経済性が増す。
(5)工程中にバンドソーを用いずに、スコアカットあるいはシェアカットを行うことで、主に木材パルプに由来する紙粉の発生が少なく、製造工程中の合成繊維の溶着による弊害も少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施例を図面を用いて説明するが、これは例示のために掲げたもので、本発明はこれのみに制約されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明に係わるポップアップ式産業用ワイパーの外観図で、不織布シート(1)は吸水性の高い木材パルプ繊維と耐薬品性、親油性にも優れるポリプロピレン等のスパンボンド不織布を水流交絡させた不織布を所定の寸法にスコアカットあるいはシェアカットによりカットして得たもので、吸水性はJISP8141によるクレム法吸水度45mm以上と高く、保水量も坪量60〜130g/mにおいて1枚あたり10g〜30g/1枚(精製水換算)のものである。
この水流交絡させた不織布には特許第2533260号によって得られるパルプ含有率の高い不織複合布が有利に用いられる。
(2)は包装フィルムで、図面では上下面がシール(3)(3)された透明ないし半透明の筒状フィルムよりなりフィルム(2)内にV折りあるいはZ折りにポップアップ可能に折り畳まれかつ乾燥状態の不織布シート(1)の積層体が収納されている。
シートのサイズは100×150mm〜320×320mmの範囲とする。
またフィルム(2)の外面には耐アルコール性、耐熱性に優れたインキにより印刷が施されている。
ワイパー使用時には包装体上面に長手方向に沿って設けたミシン目等を手で強制的に開口しここより不織布シート(1)をポップアップ式に順次引出し使用することができる。
【実施例2】
【0013】
図2に示すように不織布シート(1)にこれを幅方向および/またはこれに直角な方向に2分割するミシン目等の脆弱線(4)を設け、ポップアップ式に取り出した不織布シート(1)を脆弱線(4)に沿って2分割し各分割個毎の使用を可能にしたもので、この分割は2分割に限らず、3個以上の多分割使用も可能であり、場合によっては1部または全部を紐状に分割して夫々の清掃目的に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1製品の外観図
【図2】本発明の実施例2製品の外観図
【符号の説明】
【0015】
1…不織布シート
2…包装フィルム
3…シール
4…脆弱線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性の高い木材パルプ繊維と耐薬品性、親油性にも優れるポリプロピレン等のスパンボンド不織布を水流交絡させJISP8141によるクレム法吸水度45mm以上と吸水性が高く、かつ坪量60〜130g/mにおいて保水量がシート1枚あたり10g〜30g/1枚(精製水換算)である不織布のシートを、V折りあるいはZ折りにポップアップ可能に折り畳みこの折り畳み不織布シートを乾燥状態において、耐アルコール性、耐熱性に優れたインキにより印刷された透明あるいは半透明フィルムを用いてフィルム包装したことを特徴とする水系及び油系の汚れに対して拭き取ることができるポップアップ式産業用ワイパー。
【請求項2】
不織布シートはシートを幅方向および/またはこれに直角な方向に分割するための脆弱線等の手段を備えている請求項1記載の産業用ワイパー。
【請求項3】
包装時のカット工程においてバンドソーを用いずに、スコアカットあるいはシェアカットを行うことで、木材パルプ由来の紙粉が少なく、かつ製造工程中のポリプロピレン等溶着による弊害を回避することができる請求項1または2記載の産業用ワイパー。
【請求項4】
保水量は、原料の配合比の調整や交絡工程でのプレス等の工程管理の他、坪量、シート面積によって所定の範囲に設定することができる請求項1から3までのいずれか1項記載の産業用ワイパー。
【請求項5】
不織布シートがアルコール等の消毒液を無駄なく使用するに十分な保水量を有する請求項1から4までのいずれか1項記載の産業用ワイパー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−143254(P2006−143254A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334151(P2004−334151)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000183462)株式会社クレシア (112)
【Fターム(参考)】