説明

産業用ワイプ

【課題】塵・油分等の拭き取り性を向上した産業用ワイプを提供する。
【解決手段】NBKPを70〜100%含み、ソフトネスの値が4.0〜8.0gであり、かつ、MMDの値が7.0〜12.0である産業用の紙製ワイプにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業部品に付着した塵・埃・水分・油分の拭き取りに用いる産業用ワイプ、特に、ICチップ、光学レンズ、ガラスレンズ、ガラス板等の高い平滑面を有する工業用部品に付着した塵等の拭き取りに用いる産業用ワイプに関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップ、産業用のレンズ部品など、産業部品を製造するにあたっては、製造段階の後段、特にパッケージの前段階で、製造段階で付着した油分・塵・埃・水分の拭き取り作業が行なわれる。
このような工業用部品の拭き取りには、特に低発塵性及び吸液性に優れる産業用ワイプが用いられている(例えば、特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開2006−143254
【特許文献2】特開2005−143523
【特許文献3】特開平8−134764
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来製品は、部品形状への追随性を良好にするため柔らかくされており、コシのあるものではなかった。
従って、拭き取り対象物に当接させ、手で押さえて横にスライドさせる一般的な拭き取り操作を行ったときに、当接面に皺が発生することがあった。
そして、従来製品では、そのような皺の間に入り込んだ塵等がワイプの繊維に絡まなかったり、皺の間に液が溜まったりすることがあり、これにより拭き取りが不完全となることがあった。
特に、ガラスレンズやガラス板のように、極めて平滑度の高い部品の拭き取り作業に用いると、皺の発生によりレンズ表面の油膜が拭き取れないばかりか、かえって油膜を広げてしまうことがあり、さらには、表面に傷をつけてしまうおそれもあった。
水分を拭き取る際には、拭き取り対象物の表面に密着しすぎて貼りついてしまい、拭き取り操作がしにくいことがあったり、拭き取り操作後においても拭き取り対象物に水分が残っていることがあった。
そこで、本発明の主たる課題は、産業用部品なかでも平滑度の高い部品に付着した埃・塵・油分・水分の拭き取り性能に優れる産業用ワイプ、特に、拭き取り面に対して適度な密着性を有しつつ、吸液性能に優れる産業用ワイプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
<請求項1記載の発明>
NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を70〜100%含み、ソフトネス(ハンドルオメーター法:JIS L 1096E)の値が4.0〜8.0gであり、かつ、ワイプ表面の摩擦係数の平均偏差(MMD)の値が7.0〜12.0であることを特徴とする産業用紙ワイプ。
【0005】
<請求項2記載の発明>
前記産業用ワイプは、構成繊維がパルプ100%である請求項1記載の産業用紙ワイプ。
【発明の効果】
【0006】
以上のとおり、本発明によれば、産業用の小部品、特に、平滑度の高い光学部品に付着した、埃・塵・油分・水分の拭き取り性能に優れる産業用ワイプが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次いで、本発明の実施の形態を以下に詳述する。
本発明の産業用ワイプは、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を70〜100重量%含むシート状の拭き取り用ワイプである。
NBKPを含む抄造原料を既知のクレープ紙の製造に準じて抄造することができる。
なお、製品形態にするにあたって、ロール形態とするか、積層してボックスに収容した所謂ポップアップ形式の形態とするかは適宜の設計事項であり、特に限定されない。
【0008】
この産業用ワイプは、構成繊維中のNBKPの割合が多いほどよく、好ましく90%以上、特に100%であるのがよい。水分の吸収性に特に優れるようになる。
NBKP以外の構成繊維が有る場合にはLBKP(広葉樹クラフトパルプ)であるのがよいが、その他ケナフパルプ、マニラ麻等の非木材パルプ、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維等の合成繊維があってもよい。
【0009】
この産業用ワイプは、特徴的にそのソフトネス(ハンドルオメーター法:JIS L 1096E)の値が4.0〜8.0g、好ましくは5.0〜7.0gである。ソフトネスが4.0g未満であると、柔らかすぎる。特に濡れた時に皺になりやすく、十分な拭き取り性が得られない場合がある。8.0gを超えると、硬すぎる。特に、乾燥状態で拭取り作業を行うときに、拭き取り対象面に沿って変形され難く、十分な拭き取り性能が得られない場合がある。また、硬すぎることに起因して拭きにくいワイプとなる。
【0010】
加えて、本形態の産業用ワイプは、特徴的にワイプ表面の摩擦係数の平均偏差(摩擦子を移動させたときの表面粗さの変動:MMD)の値が7.0〜12.0である。このMMDは、カトーテック株式会社製「摩擦感テスター KESSE」を用いて測定した値である。測定に際しては、直径5mmのピアノ線を10本隣接させ、先端の曲率半径が0.25mmの単位膨出部を隣接して有し、全幅が5mmの連続した接触面を有し、その接触面の長さは5mmである摩擦子を、紙試料に50gの接触圧で接触させながら、移動方向に20g/cmの張力を紙試料に与えつつ、0.1cm/秒の速度で2cm移動させたときの摩擦係数を測定し、この摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値とする。
【0011】
さらに、本形態の産業用ワイプは、そのクレープ率(((製紙時のドライヤーの周速)−(リール周速))/(製紙時のドライヤーの周速)×100)が、12〜25であるのがよい。12未満であると、ソフトネスを高めがたくなる。となりワイプに不向きになり、25を超えると後述のMMDが高くなる傾向にあり、紙になり表面がざらつき拭き取りにくいワイプとなる。皺が発生しやすくなる。
【0012】
他方、この産業用ワイプにおけるプライ数は、特に限定されないが3プライ以下とするのがよい。3プライを超えると拭き取り操作時にプライ間でズレが生じ、皺が発生しやすくなる。
【0013】
坪量(JIS P 8124:1998)に関しては、製品になっている1組(1〜3枚)あたり、30〜50g/m2、好ましくは35〜45g/m2であるのがよい。30g/m2未満であると、十分な吸液量を発言させることが困難となる。また、50g/m2を超えると、厚すぎて操作性が悪くなり、特に細かい部品・部分の拭き取りがしにくいものとなる。
【0014】
加えて、この産業用ワイプは、厚さ(尾崎製作所製ピーコックにより測定)合計(例えば、1プライの場合は1枚の厚さ、2プライの場合は2枚重ねの状態での厚さを意味する。)が、150〜350μm、好ましくは220〜280μmであるのがよい。厚さが150μm未満であると薄すぎて、拭き取り時に汚れ・汚液が裏抜けしやすく十分な拭き取り性能を得ることが難しくなり、また、皺も発生しやすくなる。350μmを超えると厚すぎて操作性が悪くなり、特に細かい部品・部分の拭き取りがしにくいものとなる。
【0015】
さらに、この本形態の産業用ワイプは、上記坪量範囲に加えて、シートの1組あたりの密度(JIS P 8118:1998)が0.13〜0.19g/m3、好ましくは0.14〜0.18g/m3であるのがよい。密度が0.13g/m3未満であると、引張強度、引裂き強度が低くなり破れやすくなり、拭き取り用途、特に産業用部品の拭き取り用途に耐えないものとなる。また、0.18g/m3を超えると、密になりすぎ油・水分等の汚液速度が低下するとともに、埃や塵が繊維間に取り込まれ難くなり、迅速に汚れを拭き取ることが難しくなる。
【実施例】
【0016】
次いで、本発明の実施例、比較例及び従来製品の拭き取り性能を試験した。
試験方法は、次記のとおりであり、各例にかかる物性、組成及び試験結果は表1、2に示す。
[油の拭き取り性能(乾燥時)]
油の拭き取り性能(乾燥時)の結果は表1に示す。試験方法は、次の通りである。10cm四方の表面平滑なアクリル板上にサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製「日清サラダ油」(内容量1500g))を1cc滴下し、その上に四つ折りにした各例の試料を2組重ねて載置したのち、500gの分銅で加重を加えて、片道10cmスライドさせ1往復(20cm)を1回とする拭き取り操作を連続5回行い、試料に吸収された油の量を試料の重量差から算出した。
[拭き取り時の皺の有無(乾燥時)]
拭き取り時の皺の有無(乾燥時)の結果は表1に示す。試験方法は、次の通りである。表面平板のアクリル板上を拭き取る操作を行い、皺が発生したか否かを目視にて確認した。評価は3段階評価(◎皺は確認できない、○皺が発生したものの拭き取りに影響するようなものではない、×拭き取りに影響を与える皺が発生した)で評価した。
[水分の拭き取り性(1)]
水分の拭き取り性(1)の結果は、表1に示す。試験方法は、次の通りである。10cm四方の表面平滑なアクリル板上に水300μ?滴下し、四つ折りにした各例に係る試料で拭き取り操作を行う。評価は、水分の拭き取り良好であるか否かを目視にて確認し、3段階評価(◎よく拭き取れる、○普通に拭き取れる、×十分とはいえない)で評価した。
[水分の拭き取り性(2)]
水分の拭き取り性(2)の結果は、表2に示す。試験方法は、次の通りである。この試験方法の概略は図1に示す。
図1に示すとおり、20cm径のガラス板1上の中央部分に撥水性テープ素材2(コクヨ メンディングテープT118)を3枚重ねにして囲んだ2cm×10cmの範囲Rを形成し、その範囲R内に水1.4gを均一になるように広げる。
次いで、4つ折にした各例にかかる試料3に、100gの分銅4を載せて荷重した状態で、図中矢印Aで示すように前記範囲Rを長手方向に沿って奥から手前へ1秒間でスライドさせるようにして、前記範囲R内の水の拭き取り操作を行う。
そして、この際に拭き取れた水の量を試料の重量差から算出する。なお100gの荷重としたのは、本発明者らが検証したところ、実際に四つ折りにした産業用ワイパーを手に持ち、力をいれずにさっと拭き取る操作をした時の荷重がほぼ100gであったことを根拠としている。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表1に示されるとおり、本発明の実施例については、各評価において良好な結果となっているのに対して、比較例1〜3は油の吸収性能が悪い。特に密度・紙の腰・滑らかさに起因していると考えられる。また、従来品1は拭き取り時にシワが発生した。紙の腰が必要物性に達していないことに起因すると考えられる。
さらに、表2に示されるとおり、本発明の実施例については比較例及び従来例と比較して、実際の拭き取り操作における水分吸水性能が格段に優れる。この水分吸収性は、表1に示される物性の実施例においても発揮されるものであるが、特に、表2から明らかなとおりNBKPが100%の場合に特に効果が高い。
以上のことから、本発明のワイプは、平滑性の高い部品に対する拭き取り性に優れるものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、産業用の小部品、特にレンズ、ガラス板等の平滑度の高い部品に付着した塵等を拭き取るワイプ製品に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】水分の拭き取り性試験(2)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0022】
1…ガラス板、2…撥水性テープ素材、R…撥水性テープ素材で囲まれる範囲、3…試料、4…分銅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を70〜100%含み、ソフトネス(ハンドルオメーター法:JIS L 1096E)の値が4.0〜8.0gであり、かつ、ワイプ表面の摩擦係数の平均偏差(MMD)の値が7.0〜12.0であることを特徴とする産業用紙ワイプ。
【請求項2】
前記産業用ワイプは、構成繊維がパルプ100%である請求項1記載の産業用紙ワイプ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−7725(P2009−7725A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224765(P2007−224765)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】