説明

産業用ワイプ

【課題】毛羽立ちを抑え、吸水量及び吸油量を向上させた産業用ワイプを提供する。
【解決手段】基材シートに対して、線状エンボス5、6を格子状に形成した格子状エンボス4と、これら格子状エンボス4によって囲まれた格子部4Aに、長手方向長さが幅方向長さに対して長く形成されるとともに、千鳥状に配列した複数の六角形エンボス7とからなるエンボスが施され、前記基材シートを複数折りした状態において、表面側となる表面層2を木材パルプによって構成し、内面側となる裏面層3をポリプロピレンなどの化学繊維によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛羽立ちを抑え、吸水量及び吸油量を向上させた産業用ワイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の産業用製品やこれに用いる部品に付着した塵・埃・水分・油分等の拭き取り用として、産業用ワイプ、紙ウエスなどが使用されている。
【0003】
かかる産業用ワイプは、通常、四つ折りなどの複数折りした状態を製品状態とし、これを複数枚(50枚や100枚など)纏めて包装したものが市場に流通している。
【0004】
かかる産業用ワイプとして、例えば下記特許文献1では、吸収体を、該吸収体の一面に配設した表面材と、吸収体の他面に配設した裏面材とで被包してなるウエスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−28182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載のウエスにおいて、表面材をポリプロピレンなどの化学繊維、裏面材を木材パルプによって構成した場合、作業者がゴム手袋を着用してこのウエスを使用すると、使用中にゴム手袋と表面材の不織布とが擦れて毛羽立ちが発生し、素材繊維の製品への付着等が発生するため、産業用ワイプの頻繁な交換が必要となり、作業性が悪化する原因となっていた。
【0007】
また、産業用ワイプには、水分や油分の拭き取り性能を向上させるため、ピンエンボスパターンやディンプル状エンボスパターンを施したものが知られているが、ピンエンボスパターンではグリスなどの高粘度分の拭き取りに適さず、ディンプル状エンボスパターンでは水分などの低粘度分の拭き取りに適していなかった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、毛羽立ちを抑え、吸水量及び吸油量を向上させた産業用ワイプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、基材シートに対して、線状エンボスを格子状に形成した格子状エンボスと、これら格子状エンボスによって囲まれた格子部に、千鳥状に配列した複数の六角形エンボスとからなるエンボスが施され、
【0010】
前記基材シートを複数折りした状態において、表面側となる表面層が木材パルプによって構成され、内面側となる裏面層が化学繊維によって構成されていることを特徴とする産業用ワイプが提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、基材シートを四つ折りなどの複数折りした製品状態において、表面側となる表面層が木材パルプによって構成され、内面側となる裏面層が化学繊維によって構成されているため、ゴム手袋を着用して使用しても毛羽立ちの発生が抑えられ、吸水量及び吸油量が向上する。
【0012】
さらに、前記基材シートに対しては、線状エンボスを格子状に形成した格子状エンボスと、これら格子状エンボスによって囲まれた格子部に、千鳥状に配列した複数の六角形エンボスとからなるエンボスが施されているため、基材シートの耐摩耗性が向上し、毛羽立ちが抑えられるとともに、嵩(紙厚)が増加するので吸水量及び吸油量が向上する。また、前述のように配列することによって、六角形エンボスの角部及び辺部分において、粉塵・グリス・水等を効果的に拭き取ることができるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記裏面層は、ポリプロピレンからなる不織布によって構成されている請求項1記載の産業用ワイプが提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、前記裏面層を構成する化学繊維として、ポリプロピレンを使用するようにしたものである。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記六角形エンボスは、辺同士で隣接せず、角部同士を隣接した千鳥状パターンで配列されている請求項1、2いずれかに記載の産業用ワイプが提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、六角形エンボスの千鳥状の配列パターンを具体的に規定したものであり、辺同士で隣接せず、角部同士を隣接するようにしたものである。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記格子状エンボスの延在方向と基材シートの横方向との交差角度が0〜80度である請求項1〜3いずれかに記載の産業用ワイプが提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、格子状エンボスの延在方向と基材シートの横方向との交差角度を0〜80度とすることにより、産業用ワイプの拭き取り方向(横方向、縦方向)に対して格子状エンボスの線状エンボスの方向が傾斜して形成され、拭き取り性が向上する。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記六角形エンボスは、長手方向長さが幅方向長さに対して長く形成されるとともに、長手方向長さが幅方向長さに対し125〜200%長く、エンボス深さが0.8〜1.7mmである請求項1〜4いずれかに記載の産業用ワイプが提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明は、六角形エンボスとして、長手方向長さを幅方向長さに対して長く形成することにより、拭き取り性をさらに向上させることができるようにしたものである。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記六角形エンボスは、長手方向ピッチが4〜10mm、幅方向ピッチが2〜5mmであり、エンボス側壁のテーパー角度が40〜65度であり、
【0022】
前記六角形エンボスを形成した後の産業用ワイプの表面積が、六角形エンボスを形成する前の産業用ワイプの表面積に対して120〜170%である請求項1〜5いずれかに記載の産業用ワイプが提供される。
【0023】
上記請求項6記載の発明では、六角形エンボスによる粉塵、グリス、水等の拭き取り性を高めるため、六角形エンボスのピッチ、エンボス側壁のテーパー角度、エンボスの表面積の割合を規定したものである。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、毛羽立ちを抑え、吸水量及び吸油量を向上させた産業用ワイプが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る産業用ワイプ1を示す製品状態の斜視図である。
【図2】産業用ワイプ1のパック状態の斜視図である。
【図3】産業用ワイプ1の断面図である。
【図4】エンボスパターンを示す平面図である。
【図5】図4のV−V線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
本発明に係る産業用ワイプ1は、通常、図1に示されるように四つ折りなどの複数折りした状態を製品状態とし、これを図2に示されるように複数枚(50枚や100枚など)纏めて包装したパック1Aとして市販されるものである。
【0027】
前記産業用ワイプ1は、所定のエンボスが施された基材シートを複数折りした状態において、図2に示されるように、表面側となる表面層2が木材パルプによって構成され、内面側となる裏面層3がポリプロピレン等の化学繊維によって構成されたものである。
【0028】
また、前記基材シートに対しては、線状エンボス5,6を格子状に形成した格子状エンボス4と、これら格子状エンボス4によって囲まれた格子部4Aに、所定パターンで配列された所定形状の複数の六角形エンボス7、7…とからなるエンボスが施されている。
【0029】
(基材シート)
先ずはじめに、前記基材シートの構成について詳述すると、前記表面層2を構成する木材パルプとしては、LUKP、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)を10〜30重量%、NUKP、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を70〜90重量%を含有し、特に、LUKP、LBKPとしては、FSC認証されたチップから生産されたパルプを含有するのが好適である。また、古紙パルプ(DIP)を含有してもよく、さらに、ケナフパルプ、マニラ麻等の非木材パルプ、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維等の合成繊維を含有するようにしてもよい。
【0030】
前記表面層2は、前記木材パルプを含む抄造原料を、既知のクレープ紙、薄葉紙の製造に基づいて抄造することができる。なお、柔らかさ、手触り感を向上させるため、パルプスラリーに脂肪酸エステル系柔軟剤、ポリリン酸塩、ポリシロキサン、第4級アンモニウム塩型カチオン活性剤などの紙用柔軟剤を添加したり、強度を向上させるため、ポリアクリルアマイド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂等の紙力増強剤を添加したりすることができる。
【0031】
前記裏面層3としては、たとえばポリプロピレンまたはポリエチレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を含む化学繊維を原料とした不織布とすることができる。これらのうち、耐摩耗性及び耐薬品性・耐油性を有するポリプロピレンからなる不織布によって構成することが望ましい。
【0032】
前記裏面層3は、エアスルー法、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、エアスルー法、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0033】
不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため連続した極細長繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリプロピレンまたはポリエチレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0034】
さらに、前記表面層2及び裏面層3形成後の各層の接合方法としては、高圧水流(ジェット水)によって繊維交絡させるスパンレース法や、鉤針の抜き差しによって繊維を交絡させるニードルパンチ法、繊維を熱融着させるサーマルボンド法などを挙げることができるが、ソフトで手触り感が良いなどの理由により、高圧水によって繊維を交絡させるスパンレース法が好適に採用される。また、高圧水流による交絡を行った後、一体化された基材シートに対して、前記サーマルボンド法によって熱融着性繊維の融点近傍の温度で熱処理を行い、熱融着繊維の溶融により繊維相互を結合することもできる。
【0035】
前記基材シートの坪量(JIS P 8124:1998)は、40〜100g/mであり、好適には50〜80g/mである。40g/m以下の場合には、十分な吸液量を発現させることが困難となり、また、100g/m以上の場合には、剛性が高まり、産業用ワイプ1を4つ折りにする際に大きな抵抗となるおそれがあり、特に、微細部品、部品の溝部分の拭き取りが困難になるおそれがある。
【0036】
前記基材シートの厚さ(T)は、400〜700μmであり、好適には400〜600μmである。400μm以下の場合には、十分な吸液量を発現させることが困難であるとともに、エンボスを所定の深さで施すことができない場合があり、また、700μm以上の場合には、ワイプ作業に支障をきたす場合があるからである。また、前記基材シートの密度は、吸水量、引張強度の観点から30〜80g/cmが好適である。
【0037】
(エンボス)
次に、上記基材シートに対して施されるエンボスについて、図4及び図5に基づいて説明する。前記エンボスは、前述の通り、線状エンボス5、6を格子状に形成した格子状エンボス4と、これら格子状エンボス4によって囲まれた格子部4Aに、千鳥状に配列した複数の六角形エンボス7とから構成されるエンボスが好適である。
【0038】
なお、本明細書においては、深さ(ED)とは、基材シートの表面から六角形エンボス7の凹部7Aの底面までの距離をいい、テーパー角度(Eθ)とは、六角形エンボス7の凹部7Aの延長線と基材シートの表面との交差する角度をいい、厚さ(T)とは、基材シートの一方の表面から他方の表面までの距離をいう(図4及び図5参照)。
【0039】
前記線状エンボス5,6は、図4に示されるように、それぞれ基材シートに対して所定の間隔で離間して形成されるとともに、各線状エンボス5,6の傾斜方向が逆に形成されることにより、菱格子状に形成された菱格子状エンボスを形成している。
【0040】
前記線状エンボス5,6は、幅(LW)および深さ(LD)について特に制限はないが、拭き取り性の観点から1〜3mmが好適である。エンボスピッチ(LP)は、特に制限はないが、拭き取り性の観点から10〜30mmが好適であり、15〜25mmがより好適である。基材シートの水平方向に対する交差角度(Lθ1,2)は、特に制限はないが、拭き取り性の観点から30〜60度(図示例では45度)が好適である。かかる格子状エンボス4は、粘度の低い水分等を拭き取った際には、線状エンボス5、6の凹部内に水分等が拡散、吸収されながら進行するため、粘度の低い水分等の拭き取り性を高める作用がある。
【0041】
続いて、前記格子状エンボス4によって囲まれた格子部4Aに配列される六角形エンボス7について説明する。
【0042】
この六角形エンボス7は、図4に示されるように、平面視で長手方向長さが幅方向長さに対して長く形成されている。すなわち、正六角形をベースとして、そのうち対向する2つの頂点を結んだ長手方向軸と、この長手方向軸の中央部を直交する短手方向軸を通る対向する2辺を他の4辺より長く形成することにより、前記長手方向軸に沿う長手方向長さが、前記短手方向軸に沿う幅方向長さに対して長く形成されるようにしたものである。
【0043】
前記長手方向長さ(EL)は、特に制限はないが、3〜9mmが好適であり、幅方向長さ(EW)に対し125〜200%にするのがより好適である。なお、長手方向長さ(EL)が3mm以下の場合、粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、9mm以上の場合、基材シートが拭き取り時に破断するおそれがある。一方、前記六角形エンボス7の幅方向長さ(EW)は、特に制限はないが、2〜5mmが好適である。なお、幅方向長さ(EW)が2mm以下の場合、粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、5mm以上の場合、基材シートが拭き取り時に破断するおそれがある。
【0044】
図5に示されるように、六角形エンボス7の深さ(ED)は、特に制限はないが、0.8〜1.7mmが好適である。なお、深さ(ED)が0.8mm以下の場合、粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、1.7mm以上の場合、基材シートが拭き取り時に破断するおそれがある。
【0045】
六角形エンボス7のテーパー角度(Eθ)は、特に制限はないが、40〜65度が好適である。なお、テーパー角度(Eθ)が40度以下の場合、六角形エンボス7の凹部7Aの周縁が鈍り粘度の高いグリス等の拭き取り性が十分に確保できなくなるおそれがあり、65度以上の場合、基材シートが拭き取り時に破断するおそれがある。
【0046】
前記六角形エンボス7は、図4に示されるように、前記格子状エンボス4によって囲まれた各格子部4Aに千鳥状に配列されている。すなわち、六角形エンボス7の長辺7aが、隣接する六角形エンボス7の長辺7aに対し隣接せずに長手方向にズレた位置に形成され、六角形エンボス7の長辺7aの両側の角部7b、7bが、隣接する六角形エンボス7の長辺7aの両側の角部7b、7bにそれぞれ隣接して対向する位置に形成されるようにする。
【0047】
六角形エンボス7、7…の長手方向ピッチ(PL)は、特に制限はないが、4〜10mmが好適である。また、六角形エンボス7、7…の幅方向ピッチ(PW)も、特に制限はないが、2〜5mmが好適である。
【0048】
六角形エンボス7を長手方向ピッチ(PL)が6mm、幅方向ピッチ(PW)が3mmの位置に亀甲パターン状に形成した場合、基材シート(産業用ワイプ1)の表面積が、六角形エンボス7を形成する前の表面積に対し、144%と増加するため拭き取り性が格段に向上する。
【0049】
前記格子状エンボス4の面積は、基材シートの表面積に対して2〜40%とするのが好適であり、10〜20%がより好適である。格子状エンボス4の面積が2%以下の場合、40%以上の場合には所望の拭き取り性が得られにくくなる。
【0050】
なお、表面積は、簡易的には六角形エンボス7を引張力1000CN/25mmで六角形エンボス7の長辺4に直角方向に伸長した場合に発生する断面伸長率を2乗することによって算出でき、121%であった。
【0051】
断面伸長率を2乗して算出した場合、六角形エンボスを形成した後の産業用ワイプの表面積が、六角形エンボスを形成する前の産業用ワイプの表面積に対し、拭き取り性の観点から110〜130%が好適である。
【0052】
六角形エンボス7の凹部7Aの底部は平面とされ、六角形エンボス7の凹部7Aにより形成された表面積が、基材シートの表面積に対し、58%であり、六角形エンボス7の凹部7Aにより形成された表面積が、基材シートの表面積に対し、30〜80%が特に粘度が高いグリスの拭き取り性の観点から好適である。
【0053】
亀甲パターン状に形成された六角形エンボス7の長辺7aの延在方向と基材シート(産業用ワイプ1)の横方向との交差角度(θ)は、特に制限はないが、産業用ワイプ1を横方向あるいは縦方向にスライドさせながら拭き取りを行う際に、六角形エンボス7の鋭角部分であり長辺7aがスライド方向に対し傾斜した場合、拭き取り性が高まることから30〜60度が好適である(図示例では45度)。
【0054】
なお、縦方向とは、抄造時における基材シートの流れ方向に沿う方向でありMD方向とも言われ、横方向とは、縦方向と直交する方向でありCD方向とも言う。
【0055】
ところで、線状エンボス5,6及び六角形エンボス7の形成方法は、例えば、一対のエンボスロール間に基材シートを通して形成することができ、特に、線状エンボス5、6及び六角形エンボス7を嵩高にする観点からスチールマッチエンボスを使用することが好適である。
【0056】
この場合、エンボス圧が、10〜80kgf/cm、好ましくは10〜25kgf/cmとなるようにするのが好適である。エンボス圧が10kgf/cm以下の場合、六角形エンボス7の長辺7aを含む周縁部を鋭角にすることができず拭き取り性が低下するおそれがあり、80kgf/cm以上の場合、線状エンボス5,6及び六角形エンボス7の形成時に基材シートが破断するおそれがある。
【0057】
一対のエンボスロールに関しては、線状エンボス5,6が格子パターン状に、六角形エンボス7が千鳥状(亀甲パターン状)に付与された金属ロールと弾性ロールとの組み合せが好適である。この場合、弾性ロールは、その表面のショア硬度(Shore hardness)が、A30〜A90であるのが好適である。ショア硬度がA30以下の場合、つまり弾性ロール表面がやわらかい場合、基材シートが破断するおそれがあり、A90以上の場合、つまり弾性ロール表面が硬い場合、線状エンボス5,6及び六角形エンボス7が基材シートに形成できないおそれがある。
【0058】
以上のようにして線状エンボス5,6及び六角形エンボス7が形成された基材シートは、既知の方法に従って、インターフォルダや四つ折り加工機等により積層し折り畳んだり、巻き取ったりして製品とする。
【0059】
前述では六角形エンボスについて説明したが、五角形、七角形エンボスであっても同等の性能を持つエンボスであればよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0060】
本発明の効果を実証するため、本発明に係る産業用ワイプ1(実施例1)、実施例1に前記エンボスを施していないもの(比較例1)、比較例1の表裏の構成素材を反転したもの(比較例2)について供試体を用意し、毛羽立ち、吸水量及び吸油量の比較テストを行った。
【0061】
前記毛羽立ちの評価法は、ゴム手袋(塩化ビニル素材等)を装着した状態又は素手でシートの表面を20往復擦った後の毛羽立ちを評価した。前記吸水量及び吸油量の評価法は、10cm角に裁断した各供試体を1枚、水又は油に3分間浸して、網状の水平台の上に30秒放置した後、増加重量を測定し、吸水量(g/m)及び吸油量(g/m)を算出した。
【0062】
また、各供試体の物性として、紙厚(尾崎製作所製のピーコック)、耐摩耗強度(JIS KISB・A3−41)について測定を行った。
【0063】
【表1】

毛羽立ちの評価 ◎:非常によい ○:よい △:変わらない ×:悪い
【0064】
この結果、実施例1では、ゴム手袋を装着して取り扱った場合でも毛羽立ちが極めて起こりにくく、吸水性及び吸油性にも優れ、本発明の効果が実証された。
【符号の説明】
【0065】
1…産業用ワイプ、2…表面層、3…裏面層、4…格子状エンボス、5・6…線状エンボス、7…六角形エンボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートに対して、線状エンボスを格子状に形成した格子状エンボスと、これら格子状エンボスによって囲まれた格子部に、千鳥状に配列した複数の六角形エンボスとからなるエンボスが施され、
前記基材シートを複数折りした状態において、表面側となる表面層が木材パルプによって構成され、内面側となる裏面層が化学繊維によって構成されていることを特徴とする産業用ワイプ。
【請求項2】
前記裏面層は、ポリプロピレンからなる不織布によって構成されている請求項1記載の産業用ワイプ。
【請求項3】
前記六角形エンボスは、辺同士で隣接せず、角部同士を隣接した千鳥状パターンで配列されている請求項1、2いずれかに記載の産業用ワイプ。
【請求項4】
前記格子状エンボスの延在方向と基材シートの横方向との交差角度が0〜80度である請求項1〜3いずれかに記載の産業用ワイプ。
【請求項5】
前記六角形エンボスは、長手方向長さが幅方向長さに対して長く形成されるとともに、長手方向長さが幅方向長さに対し125〜200%長く、エンボス深さが0.8〜1.7mmである請求項1〜4いずれかに記載の産業用ワイプ。
【請求項6】
前記六角形エンボスは、長手方向ピッチが4〜10mm、幅方向ピッチが2〜5mmであり、エンボス側壁のテーパー角度が40〜65度であり、
前記六角形エンボスを形成した後の産業用ワイプの表面積が、六角形エンボスを形成する前の産業用ワイプの表面積に対して120〜170%である請求項1〜5いずれかに記載の産業用ワイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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