説明

用紙搬送機構

【課題】湾曲した用紙搬送路に用紙詰まりやジャムを起こさず、確実に用紙を搬送させる。
【解決手段】用紙搬送路の湾曲部(カーブ、コーナー)に、可動するテンションローラ12と、テンションローラ12とのニップ部に用紙Pをニップして、用紙Pを用紙搬送路の上流から下流へ搬送する搬送ローラ11を備える。また、テンションローラ12を搬送ローラ11の外周に接する位置に担持するブラケット13と、搬送ローラ11の回転をブラケット13に伝える状態と伝えない状態を切替制御する切替機構14を備える。切替機構14は、用紙Pがニップされるとブラケット13を搬送ローラ11に連動させて回転させ、湾曲部の終端に来ると切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送機構に関し、特に、湾曲した用紙搬送路に用紙詰まりやジャムを起こさず、確実に用紙を搬送させる機構に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやファクシミリ、オートドキュメントフィーダやラベルプリンタなど、用紙(普通紙やラベル印刷用紙等)を扱う装置においては、用紙を搬送させる機構が用いられている。用紙搬送機構は、用紙ガイド等のガイド部材や搬送ローラや搬送ベルトなどを種々組み合わせて用紙搬送路を形成している。
【0003】
用紙搬送路が湾曲したり屈曲したりする部位(コーナー)では、用紙詰まりやジャムが起きやすく、通紙の際の課題となっている。とりわけ、厚い用紙や腰の強い用紙を湾曲した用紙搬送路に通紙させるとき、用紙を曲げる力が負荷になり搬送精度の低下やジャム発生の要因となっていた。
【0004】
従来では、用紙を任意の方向にコーナリングさせる際は、板金等の部品で用紙ガイドやペーパーガイドなどのガイド部材を設けたり、小半径のカーブを回避して湾曲半径(カーブの半径)を大きくしたりして、円滑な用紙搬送を図っていた(図4参照)。例えば、特許文献1には、ガイド部材の設置によって湾曲した用紙搬送路に用紙を搬送できるようにした従来例が開示されている。
【0005】
ガイド部材の設置や湾曲半径を大きくすることの他には、例えば、静電吸着や真空吸着によって、用紙を搬送ベルトに吸着させる方法が知られている。ただし、この方法の場合は、搬送ベルトが必須となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−059020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に、従来の用紙搬送機構の一例を示す。
図4に示されるような用紙搬送機構では、ガイド部材であるガイドプレート上15とガイドプレート下16とで作られた用紙搬送路にコーナー部20を設けられている。このコーナー部20を用紙Pが上流<A>から下流<B>に向かって円滑に流れるように、用紙搬送路途中に、駆動ローラ21とテンションローラ22からなるローラ対や、駆動ローラ23とテンションローラ24からなるローラ対などを適宜配置して用紙Pを送り、上記ガイド部材で送る方向性を制御している。
【0008】
しかしながら、コーナー部20は、用紙ジャムや搬送精度の低下が課題である。コーナー部20は、狭くすると用紙搬送の負荷になる一方、広くすると用紙が遊ぶため、適切な間隙が必要である。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、湾曲した用紙搬送路に用紙詰まりやジャムを起こさず、確実に用紙を搬送させる用紙搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、第1の態様として、用紙搬送路の湾曲部に、可動するテンションローラと、前記テンションローラとのニップ部に用紙を挟持して、前記用紙を前記用紙搬送路の上流から下流へ搬送する搬送ローラと、前記テンションローラを前記搬送ローラの外周に接する位置に担持するブラケットと、前記搬送ローラの回転を前記ブラケットに伝える状態と伝えない状態を切替制御する第1の切替手段と、前記テンションローラの回転を固定する状態と固定しない状態を切替制御する第2の切替手段と、を備え、前記第1の切替手段は、前記ニップ部に用紙が挟持されると、前記搬送ローラの回転を前記ブラケットに伝えない状態から伝える状態に切替制御し、前記ブラケットは、前記搬送ローラの回転に連動して、前記ニップ部に用紙を挟持している状態の前記テンションローラを、前記搬送ローラの外周に沿って前記湾曲部の終端まで動かし、前記第1の切替手段は、前記テンションローラが前記湾曲部の終端まで来たら、前記搬送ローラの回転を前記ブラケットに伝える状態から伝えない状態に切替制御し、前記第2の切替手段は、前記テンションローラの回転を固定する状態から固定しない状態に切替制御することを特徴とする、用紙搬送機構を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、湾曲した用紙搬送路に用紙詰まりやジャムを起こさず、確実に用紙を搬送させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の用紙搬送機構を示す側面図(ホームポジション)である。
【図2】本発明の実施形態の用紙搬送機構を示す側面図(ブラケット回転中)である。
【図3】本発明の実施形態の用紙搬送機構を示す側面図(終端ポジション)である。
【図4】従来の用紙搬送機構の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に、ホームポジションにある本実施形態の側面図を示す。
図示のように本実施形態に係る用紙搬送機構は、用紙搬送路に湾曲部(カーブ、コーナー)を有する。この湾曲部に、搬送ローラ11と、テンションローラ12と、ブラケット13と、切替機構14とを備える。ホームポジションは、この湾曲部の始端に搬送ローラ11とテンションローラ12とで形成されるニップ部が来ている位置のことを言うものとする。
【0015】
用紙Pは、ガイドプレート17、18によって案内された用紙搬送路の上流<A>から、ガイドプレート15、16によって案内された用紙搬送路の下流<B>に向かって流れる。図1に示すホームポジションにあるときの、搬送ローラ11とテンションローラ12とのニップ部を湾曲部の始端とする。
【0016】
搬送ローラ11と、ガイドプレート15、16、17、18は、図示しない外装部材等と固着されていて、位置関係が変化しない。一方、テンションローラ12は、可動式である。テンションローラ12は、ブラケット13により搬送ローラ11の外周に接する位置に担持されている。
【0017】
ブラケット13は、回転の軸が搬送ローラ11の回転軸と同じになるように位置決めされており、切替機構14により搬送ローラ11の回転が伝えられると、回転を始める。一方で、切替機構14により搬送ローラ11の回転と切り離されると回転が止まる。
【0018】
ブラケット13は、ホームポジションのとき、切替機構14により搬送ローラ11の回転から切り離されており、回転が伝えられない状態になっている。そのため、テンションローラ12は、ホームポジションに固定されて担持されており、<A>側から用紙Pが来ると、圧接している搬送ローラ11の回転に連動して回転し、用紙Pの先端部を挟み込む(ニップする)。
【0019】
本実施形態の用紙搬送機構がホームポジションのときには、<A>側からきた用紙が搬送ローラ11とテンションローラ12に挟み込まれる。用紙搬送路の上流<A>側の任意の位置にあるセンサ19が用紙の先端部の通過を検知して、用紙が搬送ローラ11とテンションローラ12に挟み込まれる(ニップされる)のに適当なタイミングになると、切替機構14は、搬送ローラ11の回転をブラケット13に伝えない状態から伝える状態に切替制御する。
【0020】
図2に、ブラケット13が回転中の本実施形態の側面図を示す。
図2に示すように、ブラケット13が回転するとき、テンションローラ12も連動して搬送ローラ11の外周を衛星の軌道のように動く。搬送ローラ11に連動してブラケット13が回転し、用紙先端部がテンションローラで挟み込まれた状態であるので、用紙Pも搬送ローラ11に連動して、湾曲部を搬送されていく。
【0021】
テンションローラ12にも不図示の切替機構があり、当該切替機構によりテンションローラ12は、固定されている状態と固定されない状態とが切替制御される。切替機構14によるきり換え制御により搬送ローラ11の回転がブラケット13に伝わり、テンションローラ12が搬送ローラ11の外周を連動して回り始めると、テンションローラ12の切替機構もテンションローラが回転しないように固定する。そのため用紙Pはニップ部に挟持され、その状態で湾曲部を搬送されていく。
【0022】
図3に、終端ポジションにある本実施形態の側面図を示す。
終端ポジションとは、ニップ部が湾曲部の終端に来たときのポジションを言うこととする。切替機構14は、ニップ部が湾曲部の終端に来たことを検知して、搬送ローラ11の回転をブラケット13に伝える状態から伝えない状態へと切り替える。
【0023】
その結果、ブラケット13の回転は止まり、テンションローラ12の衛星軌道上を回転するような移動も止まる。テンションローラ12は、図3に示す位置にしばらく固定される。搬送ローラ11は、なおも回転を続け、用紙Pを用紙搬送路の下流<B>側に送り出す。
【0024】
上述した本実施形態は、湾曲部(コーナー部)を有しているが、湾曲部にガイドプレートを設けていないため、用紙詰まりやジャムが起こりにくい。また、上述したようにブラケット13により可動するテンションローラ12と搬送ローラ11によって用紙Pを挟み込んだまま湾曲部を通過するので、用紙Pは確実に搬送される。また、コーナー部での用紙の自由度を抑えるため、用紙搬送が安定し用紙ジャムの低減と、用紙搬送精度の向上が得られる。したがって、本実施形態によれば、湾曲した用紙搬送路に用紙詰まりやジャムを起こさず、確実に用紙を搬送させることが可能である。
【0025】
また、本実施形態は、図3の状態の後、用紙Pが排出されるまで搬送ローラ11の回転を続け、用紙Pがニップ部から排出されると、搬送ローラ11を逆回転させる。そして、搬送ローラ11の逆回転開始と略同時に、切替機構14は、搬送ローラ11の回転をブラケット13に伝えない状態から伝える状態へと切替制御する。したがって、ブラケット13は、搬送ローラ11が逆回転するのに連動して逆回転する。
【0026】
図3の状態から図2の状態を経て、図1の状態(ホームポジション)へとテンションローラ12が戻ったところで、切替機構14は、搬送ローラ11の回転をブラケット13に伝える状態から伝えない状態へと切替制御する。
【0027】
したがって、本実施形態によれば、用紙を一枚搬送した跡も適切に次に送られてくる用紙を迎えることができ、連続通紙に対応することが可能になる。
【0028】
また、本実施形態の切替機構14は、搬送ローラ11の回転軸にブラケット13をロック又はアンロックすることが可能な手段であれば何でもよく、例えば、電磁クラッチで実現することが好ましい。軸にロック又はアンロックするとは、言い換えれば、軸の回転と連動(従動)するか、或いは、切り離すかということである。また別の言葉で言い換えれば、搬送ローラ11の回転をブラケット13に伝える状態と伝えない状態とを切替制御するということである。
【0029】
なお、本実施形態では、ブラケットの固定位置をホームポジションと終端ポジションの2つの位置としたが、さらに複数の位置とし、任意の角度に停止させることで用紙の分離機「セパレータ」とすることができる。このように、本実施形態は種々の変形、応用が可能である。
【符号の説明】
【0030】
11 搬送ローラ
12 テンションローラ
13 ブラケット
14 切替機構
15、16、17、18 ガイドプレート
19 センサ
20 コーナー部
21、23 駆動ローラ
22、24 テンションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送路の湾曲部に、
可動するテンションローラと、
前記テンションローラとのニップ部に用紙を挟持して、前記用紙を前記用紙搬送路の上流から下流へ搬送する搬送ローラと、
前記テンションローラを前記搬送ローラの外周に接する位置に担持するブラケットと、
前記搬送ローラの回転を前記ブラケットに伝える状態と伝えない状態を切替制御する第1の切替手段と、
前記テンションローラの回転を固定する状態と固定しない状態を切替制御する第2の切替手段と、
を備え、
前記第1の切替手段は、前記ニップ部に用紙が挟持されると、前記搬送ローラの回転を前記ブラケットに伝えない状態から伝える状態に切替制御し、
前記ブラケットは、前記搬送ローラの回転に連動して、前記ニップ部に用紙を挟持している状態の前記テンションローラを、前記搬送ローラの外周に沿って前記湾曲部の終端まで動かし、
前記第1の切替手段は、前記テンションローラが前記湾曲部の終端まで来たら、前記搬送ローラの回転を前記ブラケットに伝える状態から伝えない状態に切替制御し、
前記第2の切替手段は、前記テンションローラの回転を固定する状態から固定しない状態に切替制御する
ことを特徴とする、用紙搬送機構。
【請求項2】
前記搬送ローラは、前記湾曲部の終端で、挟持した用紙を前記ニップ部から排出すると逆回転し、
前記第1の切替手段は、前記搬送ローラが逆回転するとき前記搬送ローラの回転を前記ブラケットに伝えない状態から伝える状態に切替制御し、
前記ブラケットは、前記搬送ローラの逆回転に連動して、前記テンションローラを、前記搬送ローラの外周に沿って前記湾曲部の始端まで動かす
ことを特徴とする、請求項1記載の用紙搬送機構。
【請求項3】
前記第1の切替手段は、電磁クラッチにより前記切替制御を行うことを特徴とする、請求項1又は2記載の用紙搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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