説明

用紙搬送装置

【課題】 簡単な構成で、用紙トレイから用紙が搬送される際に発生する衝撃音を低減することができる用紙搬送装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、用紙を積載するトレイと、前記用紙を1枚ずつ搬送経路に沿って搬送する第1のローラと、前記トレイに積載された用紙を1枚ずつ前記第1のローラに供給する一対の第2のローラとを有し、前記一対の第2のローラが、第1の位置と第2の位置との間を移動可能であり、前記第1の位置においては、前記一対の第2のローラ同士の接触位置での接線で定義される用紙搬送ベクトルが、略前記第1のローラの方向を向き、前記第2の位置においては、前記一対の第2のローラの前記定義による用紙搬送ベクトルが、前記トレイに積載された用紙の面に対して下向きとなることを特徴とする用紙搬送装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置などに用いられる用紙搬送装置に関する。本発明は、特に、搬送される用紙が、積載された用紙の端部で弾かれる際に発生する騒音、および用紙後端が用紙ガイドに衝突する際に発生する騒音を低減した用紙搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子写真方式を利用した画像形成装置は、感光体上に形成されたトナー像を用紙上に転写する。トナー像が転写された用紙は、加熱定着装置などにより用紙上に定着される。画像が定着された用紙は、装置外に排出される。このような画像形成装置において、使用するたびに用紙をセットするのは煩雑である。したがって、通常これらの画像形成装置は、多数の用紙を積載して保存する用紙トレイを有する。用紙上に画像形成を行う際、画像形成装置は、用紙トレイから用紙を1枚ずつ取り出し、画像形成を行う画像形成系まで用紙を搬送する。このため、画像形成装置は、用紙を搬送する用紙搬送装置を備えている。
【0003】
図4は、従来技術に係る用紙搬送装置の構成を示す図である。用紙トレイ410に積載された用紙Pは、給紙ローラ420により用紙送りローラ430および435に供給される。用紙送りローラ430および435は、用紙ガイド450に沿って用紙Pを下流ローラ440に供給する。送り出された用紙Pは、その後端が積載された用紙の端部で弾かれるとき(図4中Aの位置を通過するとき)、および用紙ガイド450に衝突するとき(図4中Bの位置)に、衝撃音を発生する。このような衝撃音は、騒音としてユーザに不快感を与えるという問題があった。
【0004】
このような騒音の発生を低減した用紙搬送装置が、例えば特許文献1および2に開示されている。特許文献1は、用紙の端部と用紙ガイドとの間に回転体を設けることで用紙後端を滑らかに誘導する技術を開示している。特許文献2は、用紙ガイドを平面として構成することで、エアクッション効果により衝撃音を緩和する技術を開示している。
【特許文献1】特開平6−255834号公報
【特許文献2】特開平10−35946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は用紙トレイと用紙ガイドとの間に新たな回転体を設けるものであるため、装置の複雑化、大型化を招くという問題があった。また、特許文献2によれば、搬送される用紙が用紙ガイドと衝突する際の衝突音を緩和することができるものの、搬送される用紙が積載された用紙の端部に弾かれるときに発生する衝撃音を低減することはできないという問題があった。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、用紙トレイから用紙が搬送される際に発生する衝撃音を低減することができる用紙搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明は、用紙を積載するトレイと、前記用紙を1枚ずつ搬送経路に沿って搬送する第1のローラと、前記トレイに積載された用紙を1枚ずつ前記第1のローラに供給する一対の第2のローラとを有し、前記一対の第2のローラが、第1の位置と第2の位置との間を移動可能であり、前記第1の位置においては、前記一対の第2のローラ同士の接触位置での接線で定義される用紙搬送ベクトルが、略前記第1のローラの方向を向き、前記第2の位置においては、前記一対の第2のローラの前記定義による用紙搬送ベクトルが、前記トレイに積載された用紙の面に対して下向きとなることを特徴とする用紙搬送装置を提供する。
【0008】
この用紙搬送装置によれば、一対の第2のローラが第1の位置に位置するときには、用紙搬送ベクトルが第1のローラの方を向いているため、用紙先端を低抵抗で第1のローラに搬送することが可能となり、また用紙詰まりの発生確率を低く押さえることができる。また、一対の第2のローラが第2の位置に位置するときには、用紙搬送ベクトルが積載された用紙の面に対して下を向いているので、用紙後端は積載された用紙の端部で弾かれたり用紙ガイドに衝突したりすることなく搬送される。したがってこの用紙搬送装置によれば、衝撃音の発生を抑制することができる。
【0009】
好ましい態様において、この用紙搬送装置は、前記一対の第2のローラの駆動を制御する制御手段をさらに有し、前記一対の第2のローラが、前記制御手段により駆動されているときは前記第1の位置に位置し、前記制御手段により駆動されていないときは用紙の反力により前記第2の位置に位置する構成であってもよい。
この用紙搬送装置によれば、一対の第2のローラの第1の位置から第2の位置への移動は用紙搬送の反力により行われる。したがって、移動のため新たな機構を設けることなく簡単な構成で第1の位置から第2の位置への切り替えを行うことができる。
【0010】
この態様の用紙搬送装置は、前記トレイに積載された用紙を1枚ずつ前記一対の第2のローラに供給する第3のローラと、前記第3のローラが1枚の用紙の供給を開始したことを検出する検出手段とをさらに有し、前記制御手段が、前記検出手段により1枚の用紙の供給が開始されたことを検出した時からあらかじめ決められた時間が経過したときに、前記一対の第2のローラの駆動を停止する構成であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る用紙搬送装置100の構成を示す図である。本明細書において、「用紙」という語は、紙に限らず、OHP(Over Head Projector)シート等、広くシート状の記録材を含む意味で用いられる。
【0012】
用紙トレイ110は、用紙Pを積載して保存する機能を有する。給紙ローラ120は、用紙トレイ110に積載された用紙Pを一枚ずつ用紙送りローラ130および用紙送りローラ135に供給する。用紙Pは、用紙送りローラ130と用紙送りローラ135との間のニップ領域を通り、用紙ガイド150により下流ローラ140まで導かれる。下流ローラ140は、以降所望の搬送経路に沿って用紙Pを搬送する。
【0013】
用紙送りローラ130は、通常の用紙送出時には第1の位置(図1中実線で示した位置)に位置する。用紙送りローラ130は、積層された用紙Pの束から搬送する用紙Pを引き抜く際には第2の位置(図1中点線で示した位置)に位置する。用紙送りローラ130は第1の位置と第2の位置の間を移動可能な構成となっている。
【0014】
図2は、第1の位置における用紙送りローラ130と下流ローラ140との位置関係を説明する図である。用紙送りローラ130が第1の位置に位置するとき、用紙搬送ベクトルRは、図中右上、すなわち用紙送りローラ130と用紙送りローラ135との間のニップ部からみて、下流ローラ140の方を向いている。
【0015】
ここで、「用紙搬送ベクトル」とは、用紙送りローラ130と用紙送りローラ135との間のニップ部における用紙搬送力を示すベクトルである。用紙搬送ベクトルRは、用紙送りローラ130と用紙送りローラ135との接点における接線方向を向いており、大きさはニップ部において用紙Pに加えられる力に等しい。
【0016】
このように用紙送りローラ130が第1の位置にあるときは用紙搬送ベクトルが下流ローラ140の方を向いているため、搬送される用紙Pの先端を低抵抗で下流ローラ140に供給することができる。
【0017】
図3は、第2の位置における用紙送りローラ130と下流ローラ140との位置関係を説明する図である。用紙送りローラ130が第2の位置に位置するとき、用紙搬送ベクトルRは、図中右下、すなわち給紙ローラ120からみて、用紙送りローラ130と用紙送りローラ135との間のニップ部の方を向いている。言い方をかえると、用紙搬送ベクトルRは、用紙トレイ110に積層された用紙の面に対し下向きとなっている。
【0018】
このように用紙送りローラ130が第2の位置にあるときは用紙搬送ベクトルが下を向いているため、搬送されている用紙Pが用紙トレイ110に積層された用紙Pの束から引き抜かれるときに、積層された用紙Pの束の端部により弾かれることはない。また、搬送される用紙Pの後端が、用紙ガイド150と衝突することもない。したがって、用紙Pを用紙トレイ110から引き抜く際に衝突音が発生することはない。
【0019】
用紙送りローラ130の第1の位置から第2の位置への移動は、次のように行われる。用紙搬送装置100はモータ(図示略)を有している。用紙送りローラ130はこのモータにより駆動力を受けて回転する。用紙搬送装置100はモータを駆動する駆動回路(図示略)を有している。モータは、駆動回路(図示略)からの駆動信号に従って回転あるいは停止する。
【0020】
駆動回路から駆動信号が出力されているとき、すなわち、用紙送りローラ130が駆動されているとき、用紙送りローラ130は、搬送される用紙Pの反力により図1〜図3において左向きの力を受ける。この反力により、用紙送りローラ130は第1の位置に移動する。一方、駆動回路から駆動信号が出力されていないとき、すなわち、用紙送りローラ130が駆動されていないとき、用紙送りローラ130は、搬送される用紙Pから逆に右向きの力を受ける。この反力により、用紙送りローラ130は第2の位置に移動する。つまり、用紙送りローラ130は駆動されているときは第1の位置に、駆動されていないときは第2の位置に位置する。
【0021】
用紙送りローラ130の駆動/停止の切り替えは、1枚の用紙Pの搬送と同期して行われる。すなわち、搬送される用紙Pを用紙トレイ110から引き抜くとき以外は、搬送抵抗を低減するため、用紙送りローラ130は第1の位置に位置することが望ましい。したがってこの間は用紙送りローラ130を駆動している必要がある。つまり、用紙トレイ110から用紙Pが引き抜かれる瞬間のみ用紙送りローラ130を停止する構成とすればよい。
【0022】
用紙トレイ110から用紙Pが引き抜かれる瞬間の特定は例えば次のように行う。用紙搬送装置100は、1枚の用紙Pが用紙トレイ110から搬送され始めたことを検出する検出手段を有している。検出手段は、例えば、給紙ローラ120における力の変化を計測することにより用紙の搬送が開始されたことを検出することができる。あるいは、用紙トレイ110の出口(用紙搬送経路への出口)に光センサあるいは音波センサのような非接触式のセンサを設けて用紙の搬送が開始されたことを検出してもよい。
【0023】
駆動回路は、用紙の搬送が開始されたことを検出すると、それから時間tdの間は用紙送りローラ130の駆動信号を出力し、時間tdが経過すると駆動信号の出力を停止する。時間tdの値は、用紙Pの搬送が開始されてから、引き抜かれる直前の位置まで移動するのに要する時間である。駆動回路は、あらかじめ時間tdの値を記憶している。駆動回路は、時間tdの値をあらかじめ複数記憶しておき、用紙トレイ110に積層される用紙Pのサイズにより適切な値を選択して使用する構成としてもよい。
【0024】
以上で説明したように本発明によれば、簡単な構成で、用紙トレイから用紙が搬送される際に発生する衝撃音を低減することができる用紙搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る用紙搬送装置100の構成を示す図である。
【図2】第1の位置における用紙送りローラ130と下流ローラ140との位置関係を説明する図である。
【図3】第2の位置における用紙送りローラ130と下流ローラ140との位置関係を説明する図である。
【図4】従来技術に係る用紙搬送装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
100…用紙搬送装置、110…用紙トレイ、120…給紙ローラ、130…用紙送りローラ、135…用紙送りローラ、140…下流ローラ、150…用紙ガイド、410…用紙トレイ、420…給紙ローラ、430・435…用紙送りローラ、440…下流ローラ、450…用紙ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を積載するトレイと、
前記用紙を1枚ずつ搬送経路に沿って搬送する第1のローラと、
前記トレイに積載された用紙を1枚ずつ前記第1のローラに供給する一対の第2のローラと
を有し、
前記一対の第2のローラが、第1の位置と第2の位置との間を移動可能であり、
前記第1の位置においては、前記一対の第2のローラ同士の接触位置での接線で定義される用紙搬送ベクトルが、前記第1のローラの方向を向き、
前記第2の位置においては、前記一対の第2のローラの前記定義による用紙搬送ベクトルが、前記トレイに積載された用紙の面に対して下向きとなる
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記一対の第2のローラの駆動を制御する制御手段をさらに有し、
前記一対の第2のローラが、
前記制御手段により駆動されているときは前記第1の位置に位置し、
前記制御手段により駆動されていないときは用紙搬送の反力により前記第2の位置に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記トレイに積載された用紙を1枚ずつ前記一対の第2のローラに供給する第3のローラと、
前記第3のローラが1枚の用紙の供給を開始したことを検出する検出手段と
をさらに有し、
前記制御手段が、前記検出手段により1枚の用紙の供給が開始されたことを検出した時からあらかじめ決められた時間が経過したときに、前記一対の第2のローラの駆動を停止する
ことを特徴とする請求項2に記載の用紙搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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