田植機の予備苗収容構造
【課題】 運転作業者の苗のせ台への苗補給作業、および、畦から予備苗のせ台への苗補充作業を軽快容易に行える田植機の予備苗収容構造を提供する。
【解決手段】 走行機体3の前部横側に、複数段に育苗箱24を積載可能な予備苗のせ台8を立設するとともに、予備苗のせ台8の近傍に、苗が取り出されて空になった複数枚の育苗箱24を収容する育苗箱ホルダ50を配備してある。好ましくは、育苗箱24を上下に積層して位置決め収容するよう育苗箱ホルダ50を構成するとともに、収容した育苗箱24の外周部を外部に露出させる開口51a,51bを上下に連通して育苗箱ホルダ50に形成する。
【解決手段】 走行機体3の前部横側に、複数段に育苗箱24を積載可能な予備苗のせ台8を立設するとともに、予備苗のせ台8の近傍に、苗が取り出されて空になった複数枚の育苗箱24を収容する育苗箱ホルダ50を配備してある。好ましくは、育苗箱24を上下に積層して位置決め収容するよう育苗箱ホルダ50を構成するとともに、収容した育苗箱24の外周部を外部に露出させる開口51a,51bを上下に連通して育苗箱ホルダ50に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に予備苗のせ台を立設した乗用型の田植機の予備苗収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型の田植機の予備苗収容構造としては、走行機体に、苗を複数段に積載可能な予備苗のせ台を立設するとともに、予備苗のせ台の下部に、苗補給に使用した苗すくい板を収容する苗すくい板ホルダを装備したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−121039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記予備苗収容構造においては、育苗箱で生育されたマット状の苗を苗すくい板に載置した状態で予備苗のせ台における各段の苗受け体に積載され、植付け作業の進行によって苗植付け装置での苗が消費されると、運転作業者が予備苗のせ台に積載した苗を取り出して苗植付け装置の苗のせ台に移載する苗補給作業を行うことになり、苗移載によって残った苗すくい板を苗すくい板ホルダに回収収容しておく。予備苗のせ台の苗が無くなると、苗補充のために機体を畦近づけ、回収した苗すくい板を畦で待機している苗補充用の作業者に返却し、畦に置いてある育苗箱の苗を苗すくい板を使って取り出し、苗すくい板ごと予備苗のせ台に供給する。
【0004】
畦に置いてある育苗箱から苗すくい板を使って苗を取り出して予備苗のせ台の苗受け体に積載供給する際、苗は苗すくい板の上に載せられているだけであるので、苗すくい板を傾けてしまうと苗がずれ動いて崩れたり、落下してしまうおそれがあり、畦の作業者は苗すくい板を水平に保ちながら慎重に苗補充作業を行う必要がある。この場合、マット状に育成された苗は相当重い(1枚数kg)ものであり、水平に保ちながら両手を伸ばして予備苗のせ台の苗受け体に苗を積載するのに労力を要するものとなっていた。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、運転作業者の苗のせ台への苗補給作業、および、畦から予備苗のせ台への苗補充作業を軽快容易に行える予備苗収容構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、走行機体に、複数段に育苗箱を積載可能な予備苗のせ台を立設するとともに、予備苗のせ台の近傍に、苗が取り出されて空になった複数枚の育苗箱を収容する育苗箱ホルダを配備してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、育苗箱に入れたままの苗を予備苗のせ台に積載するので育苗箱を多少傾けても苗が育苗箱から脱落するおそれがなく、畦から予備苗のせ台への苗供給時に、育苗箱の扱いを慎重にする必要は特になく、苗供給を容易に行うことができる。
【0008】
植付け作業において、苗植付け装置での苗消費に応じて予備苗のせ台に積載した育苗箱から苗を取出して苗植付け装置の苗のせ台に移載する。この場合、運転作業者は苗入りの育苗箱を予備苗のせ台から取出し、苗すくい板などを用いて苗を育苗箱から取出すことになるので、予備苗のせ台からの育苗箱取出し操作を苗の崩れや脱落を心配することなく容易に行うことができる。苗の取り出しによって空になった育苗箱は育苗箱ホルダに収容しておく。以降の作業走行中に機体が大きく振動したり動揺しても、育苗箱ホルダに収容された育苗箱は脱落してしまうおそれはない。
【0009】
予備苗のせ台の苗が無くなりかけると、次に機体方向転換のために畦に近づいた際に、育苗箱ホルダに収容した空の育苗箱は畦の作業者によって回収され、畦に置いてある苗入りの育苗箱が予備苗のせ台に補充積載される。
【0010】
従って、第1の発明によると、苗の取扱いを育苗箱ごと行うので、運転作業者の苗のせ台への苗補給作業、および、畦から予備苗のせ台への苗補充作業を、苗の崩れや脱落に特に気をつける必要なく軽快容易に行うことができるようになった。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、
育苗箱を上下に積層して位置決め収容するよう前記育苗箱ホルダを構成するとともに、収容した育苗箱の外周部を外部に露出させる開口を上下に連通して育苗箱ホルダに形成してあるものである。
【0012】
上記構成によると、空の育苗箱を育苗箱ホルダに出し入れする場合、育苗箱ホルダに形成された開口から育苗箱ホルダ内の育苗箱を掴むことができ、積層された最下層の育苗箱を持って、全部の育苗箱を育苗箱ホルダから取出すことも容易に行える。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記育苗箱ホルダにおける前後端の左右中間部位に前記開口を形成してあるものである。
【0014】
上記構成によると、運転作業者は空になった育苗箱を後方の開口を通して育苗箱ホルダに入れることができるとともに、畦から予備苗のせ台への苗補充の際には、畦の作業者が育苗箱ホルダに積層収容された育苗箱を、前方の開口を通して持上げることができ、空の育苗箱回収を容易に行うことができる。
【0015】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
走行機体から立設した支柱の上下複数箇所に苗受け体を装備して前記予備苗のせ台を構成するとともに、前記支柱に前記育苗箱ホルダを装着してあるものである。
【0016】
上記構成によると、予備苗のせ台に備えられた丈夫な支柱を利用して育苗箱ホルダを頑強に支持することができるとともに、同構造の予備苗のせ台を備えた他の機種を、簡単に育苗箱ホルダ付きの仕様に改造することができる。
【0017】
第5の発明は、上記第4の発明において、
前記育苗箱ホルダを、前記予備苗のせ台における前記苗受け体の上方あるいは下方に重複させて配置してあるものである。
【0018】
上記構成によると、苗受け体の平面スペースを有効に利用することにより、専用の平面スペースを要することなく育苗箱ホルダを設けることができる。
【0019】
第6の発明は、上記第4または5の発明において、
前記育苗箱ホルダを前記支柱に対して機体内側と機体外側とに位置変更可能に構成してあるものである。
【0020】
上記構成によると、予備苗のせ台の機体内側に機体前端部から運転部までの乗降通路が形成されている場合、植付け作業時には育苗箱ホルダを運転作業者の手の届きやすい機体内側に位置させることにより、空になった育苗箱の育苗箱ホルダへの収容を容易に行うことができる。育苗箱ホルダを機体外側に位置させて乗降通路を開けた状態にすることにより、機体前端部からの乗降を育苗箱ホルダに邪魔されることなく容易に行うことができる。
【0021】
第7の発明は、上記第1〜6のいずれか一の発明において、
前記育苗箱ホルダに苗すくい板を保持する苗すくい板ホルダを備えてあるものである。
【0022】
上記構成によると、育苗箱から苗を取出す際に用いる苗すくい板を苗すくい板ホルダに入れておくことで、軽い苗すくい板が風に煽られて飛んで行くことなく保管しておくことができる。
【0023】
第8の発明は、上記第7の発明において、
前記苗すくい板ホルダを、育苗箱ホルダに収容した育苗箱の脱落を阻止する位置に設置してあるものである。
【0024】
上記構成によると、機体が大きく動揺したような場合に、育苗箱ホルダ内で飛び上がる育苗箱を苗すくい板ホルダで受け止め、育苗箱が育苗箱ホルダから脱落してしまうことを防止することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1に、本発明に係る予備苗収容構造を備えた施肥装置付き乗用型田植機の側面が、図2にその平面がそれぞれ示されている。この乗用型田植機は、前輪1と後輪2を備えた4輪駆動式の走行機体3の後部に、油圧シリンダ4で駆動される平行四連リンク構造のリンク機構5を介して苗植付け装置6が昇降自在に連結された基本構造を備え、走行機体3の後部に施肥装置7が搭載されるとともに、走行機体3の前部における左右両側に2組の予備苗のせ台8が立設装備されている。
【0026】
走行機体3の前部には、エンジン9を収容した原動部10が設けられるとともに、機体後部に運転座席11が設けられ、運転座席11の足元から原動部10の左右両脇を通って機体前端部にまでステップ12が配備され、走行機体3の左右両側から乗降できるのみならず、原動部10の横側を通って機体前端からも乗降することができるようになっている。さらに、ステップ12の左右横外側には、下方を透視可能なスノコ状に形成された拡張ステップ13が備えられている。
【0027】
苗植付け装置6は6条植え仕様に構成されており、6条分のマット状の苗を並列載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台15、苗のせ台15の下端から1株分づつ苗を切り出して田面に押し込む6組の回転式の植付け機構16、田面の植付け箇所を均らすよう並列配備された複数の整地フロート17、等を備えている。
【0028】
施肥装置7は、運転座席11の後方に配備された肥料ホッパ18、肥料ホッパ18に貯留された粒状肥料を所定量づつ繰出す回転式の繰出し機構19、繰出された肥料を風力搬送するための電動ブロワ20、風力搬送される肥料を整地フロート17に備えた作溝器21に導く供給ホース22、等を備えており、各条の植付け苗の横側近くに作溝器21で形成した施肥溝に肥料を送り込んで埋設するよう構成されている。
【0029】
左右の予備苗のせ台8は、マット状の苗Fが収容された育苗箱24をそれぞれ3枚づつ積載できるよう構成されており、その構造を以下に説明する。
予備苗のせ台8は、ステップ12の前部外側において走行機体3から立設された前後一対の支柱25と、この支柱25の機体横外側に上下3段に亘って片持ち棚板状に支持された苗受け体26とで構成されており、図1,2,5に示すように、苗受け体26が上下3段に配備された第1形態と、図3,4に示すように、苗受け体26が前後直列に並べて機体前方に延出された第2形態とに切換え可能に構成されている。なお、以後の説明においては、図面との対比を容易にするために、上段、中段、下段の苗受け体26にそれぞれ補助符号(u),(m),(d)を付す。
【0030】
各苗受け体26(u),(m),(d)は同一仕様に樹脂成型されたものが使用されており、図6,7,9に示すように、中空二重壁状に形成された上下に幅広い左右の側枠26aの間が、前後方向に向かう多数の縦リブ26bに多数の横リブ26c斜めに交差させた格子状に構成されるとともに、側枠26aの内側近くの前後方向3箇所に横軸心周りに遊転自在にローラ28が配備されている。中段の苗受け体26(m)が支柱25から横外方に延出されたステー29に連結固定されるのに対して、上段の苗受け体26(u)および下段の苗受け体26(d)は支柱25に以下のようにして脱着自在に支持されてれている。
【0031】
図7(イ),図10に示すように、上段の苗受け体26(u)および下段の苗受け体26(d)の機体内側下方には丸パイプ材からなる前後に長い支持枠30がボルト連結され、支持枠30から上向きに突設された前後一対の連結金具31が前後の支柱25に脱着可能にピン連結されるようになっている。連結金具31は支柱25の横外方から外嵌可能な横断面形状コの字形に形成されるとともに、その上部にはダルマ孔状に形成された連結孔32が備えられている。他方、支柱25の横外面には前記連結金具31における連結孔32の大径部を挿通可能な頭付きピン33が突設されている。
【0032】
前後の連結金具31を支柱25に外嵌しながら連結孔32を頭付きピン33に挿通して押し下げることで、上段の苗受け体26(u)および下段の苗受け体26(d)を支柱25に固定支持することができ、連結金具31を押し上げて連結孔32の大径部を頭付きピン33から抜き外すことで、上段の苗受け体26(u)および下段の苗受け体26(d)を支柱25から取外すことができるようになっている。
【0033】
図1,10に示すように、中段の苗受け体26(m)の前端部および後端部に左右一対づつ連結金具34,35が上向きに突設されるとともに、上段の苗受け体26(u)の後端部には左右一対の連結金具36が上向きに突設され、下段の苗受け体27(d)の前端部には左右一対の連結金具37が上向きに突設されている。
【0034】
図3,11に示すように、支柱25から取外した上段の苗受け体26(u)における左右の連結金具36を中段の苗受け体27(m)における左右の連結金具34にピン連結することで、上段の苗受け体26(u)を中段の苗受け体27(m)の前端に連なった第2形態にし、支柱25から取外した下段の苗受け体26(d)における左右の連結金具37を中段の苗受け体27(m)における左右の連結金具35にピン連結することで、下段の苗受け体26(d)を中段の苗受け体27(m)の後端に連なった第2形態にすることができる。
【0035】
このように、段積み状の第1形態と前後直列状の第2形態とに苗受け形態が切換え可能に構成された予備苗のせ台8は、例えば、次のように使用される。
植付け作業の当初は、圃場に乗り入れた走行機体3を、機体前端をできるだけ畦に近づく位置まで寄せる。次に、苗受け体26(u),(m),(d)を前後直列に並べられて機体前方に延出された第2形態に切換える。
【0036】
畦の作業者は前後直列に並べられた苗受け体26(u),(m),(d)の前部から苗Fの入った育苗箱24を載置供給して、縦列状に順次後方に押し動かす。走行機体3に搭乗している運転作業者は、最後部の苗受け体26(d)に到達した育苗箱24から苗Fを順次取り出して機体後方の苗のせ台15に移載する。6条植え仕様の苗植付け装置6の苗のせ台15の場合、1条につき2枚の苗Fが搭載可能であるので、全部で12枚の苗Fの移載を行うことになる。
【0037】
苗のせ台15に苗Fが満載されると、苗受け体26(u),(m),(d)を上下段積み状の第1形態に戻して苗Fの入った育苗箱24を左右に3枚づつ段積み収容した状態、あるいは、第2形態のままで苗Fの入った育苗箱24を左右に3枚づつ前後縦列状に載置収容した状態で植付け作業に移る。
【0038】
植付け作業に伴って苗のせ台15の苗Fが消費されると、運転作業者は予備苗のせ台8に積載された育苗箱24の苗Fを取り出して苗のせ台15に移載補充する。予備苗のせ台8に積載した予備の苗Fが無くなるか、残り少なくなると、次に機体方向転換のために畦に近寄った際に、畦から予備苗のせ台8への苗補充を行う。
【0039】
各苗受け体26における縦リブ26bの上端は横リブ26cの上端より高く位置させて形成されるとともに、前記ローラ28が縦リブ26bより少し突出して装備され、上記第2形態において、前後直列に並べられた苗受け体26に沿って育苗箱24を押し動かす際に、育苗箱24が横リブ26cに引っ掛かるようなことなく円滑に順送りすることができる。
【0040】
各苗受け体26(u),(m),(d)は支柱25に対してやや後下がり傾斜した姿勢で支持されており、前後直列状の第2形態に切換えた状態において、苗受け体26(u),(m),(d)の苗受け面全体が後下がり傾斜姿勢となり、畦から供給される育苗箱24の後方移動を円滑に行えるようになっている。
【0041】
上段の苗受け体26(u)の前端部、および、下段の苗受け体26(d)の後端部には、丸棒材を屈曲形成してなるストッパ43が装着固定されるとともに、中段の苗受け体26(m)における左右の側枠27aの前後端部、上段の苗受け体26(u)の後端部、および、下段の苗受け体26(d)の前端部には、丸棒材をU形に屈曲形成してなる可動ストッパ44が横スライド可能、かつ、回動可能に挿通支持されている。この可動ストッパ44は、図8に示すように、外嵌装着したバネ45によって外方にスライド付勢されており、その折返し部44aの先端を側枠27aに形成された上部係止孔46に係合させることで、苗受け面より上方に突出した作用姿勢に保持され、折返し部44aの先端を側枠27aに形成された下部係止凹部47に係合させるか、折り畳み回動しておくことで、苗受け面から退避した格納姿勢に保持されるようになっている。
【0042】
苗を段積み収容する前記第1形態においては各苗受け体26ごとに可動ストッパ44を苗受け面上方に突出させることで、載置収容した育苗箱24が前後にずり落ちるのをストッパ43および可動ストッパ44で受止め阻止する。育苗箱24を前後方向に縦列移動させる前記第2形態においては、育苗箱24の移動の妨げとなる苗受け体27(m)における前後の可動ストッパ44、最前部の苗受け体27(u)における後方の可動ストッパ44、および、最後部の受け体27(d)における前方の可動ストッパ44を格納姿勢に切換えておく。
【0043】
上記のように構成された予備苗のせ台8には、苗のせ台15への苗補給のために苗Fを取り出して空になった育苗箱24を収容しておく育苗箱ホルダ50が備えられており、育苗箱ホルダ50のいくつかの例を以下に説明する。
【0044】
〔第1例〕
図1〜4,および、図12〜16に、育苗箱ホルダ50の第1例が示されている。この例の育苗箱ホルダ50は機体右側の予備苗のせ台8における支柱25の上部にのみ装備されている。育苗箱ホルダ50は、屈折した丸棒材を組み上げ溶接して上方に開放された前後に長い矩形のバケット状に構成されており、空の育苗箱24を6枚積層して収容できる深さに形成されている。育苗箱ホルダ50には、左右、および、前後一対づつの棒材を井桁状に組上げ連結して構成された底部50aと、各棒材の両端を屈折して立ち上げられた前後の位置決め案内部50b,50cと左右の位置決め案内部50d,50eが備えられ、育苗箱ホルダ50の前後端における左右中間部位と、育苗箱ホルダ50の左右端における前後中間部位には、上下に連通して開口51a〜51dが形成されている。
【0045】
育苗箱ホルダ50に入れられた育苗箱24は、その長手方向を機体前後方向に向けた姿勢で底部50aに載置されるとともに、育苗箱24の四辺が位置決め案内部50b〜51eで受け止められて前後左右に位置きめされた状態で積層収容される。この場合、収容された育苗箱24における前後端辺の左右中間部は育苗箱ホルダ50の前後の開口51a,51bに臨み、収容された育苗箱24における左右端辺の前後中間部は育苗箱ホルダ50の左右の開口51c,51dに臨むことになる。従って、運転作業者は後方の開口51bあるいは側方の開口51cに手を入れることで、育苗箱ホルダ50の構成部材に邪魔されることなく育苗箱24を掴んで上下に出し入れすることができ、機体前方から苗補充作業を行う畦の作業者は、前方の開口51aあるいは側方の開口51cに手を入れることで、育苗箱ホルダ50の構成部材に邪魔されることなく育苗箱24を掴んで上下に出し入れすることができる。
【0046】
育苗箱ホルダ50は、支柱25の上部に前後向きの支点pを中心にして回動可能に支持され、支柱25の機体内側において上向き開放姿勢となる使用位置Aと、支柱25の機体外側において上下に反転される退避位置Bとに位置変更可能に構成されている。育苗箱ホルダ50は、通常、使用位置Aに置かれているが、運転作業者が原動部10と予備苗のせ台8の間の通路を通って乗降する場合に退避位置Bに反転回動される。
【0047】
図16(イ),(ロ)に、育苗箱ホルダ50の支点構造が示されている。前後の支柱25の機体内側箇所には支点ボス53を備えたブラケット54がそれぞれボルト連結されるとともに、丸棒材からなる前後一対の支持アーム55が育苗箱ホルダ50の底部50aから屈折延出され、各支持アーム55の延出端に屈曲形成された支点軸部55aのそれぞれが前記支点ボス53に同じ方向から挿通されてストッパピン56で抜け止め支持されている。
【0048】
支持アーム55に設けられたバネ受けピン57と支柱25に設けられたバネ受けピン58とに亘ってバネ59が張設されている。育苗箱ホルダ50が使用位置(A)にある時、育苗箱ホルダ50がバネ59によって下向きに付勢回動され、支持アーム55に備えられた接当ピン60が支柱25の機体内側の外周に受け止められることで、育苗箱ホルダ50が使用位置Aに安定保持される。育苗箱ホルダ50を支点p周りに大きく持ち上げて退避位置Bまで反転回動すると、反転姿勢の育苗箱ホルダ50がバネ59によって下向きに付勢回動され、前記接当ピン60が支柱25の機体外側の外周に受け止められることで、育苗箱ホルダ50が退避位置Bに安定保持される。
【0049】
〔第2例〕
図17,図18に、育苗箱ホルダ50の第2例が示されている。この育苗箱ホルダ50の基本構成は上記第1例と同様であるが、支点構造が異なっている。つまり、この例では、育苗箱ホルダ50から延出された前後一対の支持アーム55の先端に前後向きのボス部55bがそれぞれ設けられるとともに、支柱25に平面視コの字状の支点ブラケット61が固着され、前記ボス部55bと支点ブラケット61に亘って支点ピン62を挿通してストッパピン63で抜け止めする構造が採用されている。
【0050】
前例と同様に、支持アーム55に設けられたバネ受けピン57と支柱25に設けられたバネ受けピン58とに亘ってバネ59が張設されて、育苗箱ホルダ50が使用位置Aと退避位置Bとに安定保持される。使用位置Aにおいては、支持アーム55に設けられた当て板64が支柱25に受け止められて、その位置が保持される。
【0051】
〔第3例〕
図19に、育苗箱ホルダ50の第3例が示されている。この例では、第1例に示された構造の育苗箱ホルダ50が、使用位置Aが予備苗のせ台8における苗受け体26の上方に重複するよう構成され、最上段の苗受け体26(u)への育苗箱24の出し入れや、苗受け体26を前後直列に配置した前記第2形態にして育苗箱24の供給を行う場合に、育苗箱ホルダ50を機体内方に略90°回動した退避位置Bに位置変更することができるように支柱25に支持されている。
【0052】
〔第4例〕
図20〜22に、育苗箱ホルダ50の第4例が示されている。この育苗箱ホルダ50は、屈折した丸棒材を組み上げ溶接して上方に開放された前後に長い矩形のバケット状に構成されており、空の育苗箱24を3枚積層して収容できる深さに形成され、左右の予備苗のせ台8における支柱25の上部に装備される。育苗箱ホルダ50には、左右、および、前後一対づつの棒材を井桁状に組上げ連結して構成された底部50aと、各棒材の両端を屈折して立ち上げられた前後に対向する位置決め案内部50b,50cと左右に対向する位置決め案内部50d,50eが備えられ、育苗箱ホルダ50の前後左右の角部には上下に連通して開口52a〜52dが形成されている。
【0053】
育苗箱ホルダ50に入れられた育苗箱24は、その長手方向を機体前後方向に向けた姿勢で底部50aに載置されるとともに、育苗箱24の四辺が前後の位置決め案内部50b,50cと左右の位置決め案内部50d,50eで受け止められて前後左右に位置きめされた状態で積層収容される。この場合、収容された育苗箱24における四隅は育苗箱ホルダ50の開口52a〜52dに臨むことになり、これら開口52a〜52dに手を入れることで、育苗箱ホルダ50の構成部材に邪魔されることなく育苗箱24を掴んで上下に出し入れすることができる。
【0054】
育苗箱ホルダ50は、支柱25の上部に前後向きの支点pを中心にして回動可能に支持され、支柱25の機体内側において上向き開放姿勢となる使用位置Aと、支柱25の機体外側において上下に反転される退避位置Bとに位置変更可能に構成されている。育苗箱ホルダ50は、通常、使用位置Aに置かれているが、運転作業者が原動部10と予備苗のせ台8の間の通路を通って乗降する場合に退避位置Bに反転回動される。
【0055】
図22(イ),(ロ)に、この育苗箱ホルダ50の支点構造が示されている。この例では、育苗箱ホルダ50における支柱側に位置する前後一対の位置決め案内部50eの上端部がそれぞれ前方に屈曲されて支点軸部65が形成され、この支点軸部65が支柱25の連結孔66に直接に挿通されてストッパピン67で抜け止め支持されている。
【0056】
位置決め案内部50eに設けられたバネ受けピン57と支柱25に設けられたバネ受けピン58とに亘ってバネ59が張設されている。育苗箱ホルダ50が使用位置(A)にある時、育苗箱ホルダ50がバネ59によって下向きに付勢回動され、位置決め案内部50dが支柱25に設けられた接当ピン68に受け止められることで、育苗箱ホルダ50が使用位置Aに安定保持される。育苗箱ホルダ50を支点p周りに大きく持ち上げて退避位置Bまで反転回動すると、反転姿勢の育苗箱ホルダ50がバネ59によって下向きに付勢回動され、位置決め案内部50dが支柱25に設けられた別の接当ピン69に受け止められることで、育苗箱ホルダ50が退避位置Bに安定保持される。
【0057】
〔第5例〕
図23に、育苗箱ホルダ50の第5例が示されている。この例では、上記第1例の構造の育苗箱ホルダ50の底部に、苗すくい板ホルダ70を装備して構成されている。
【0058】
苗すくい板ホルダ70は、棒材を井桁状に組み上げて構成されたものであり、育苗箱ホルダ50の底部50aとの間に適当な高さの空隙が後方に向けて開口するよう形成されている。予備苗のせ台8に積載した育苗箱24から苗Fを取り出す際に使用する苗すくい板71を苗すくい板ホルダ70に差込み収容しておくことができる。
【0059】
〔第6例〕
図24,25に、育苗箱ホルダ50の第6例が示されている。この例では、上記第1例の構造の育苗箱ホルダ50の上端部に苗すくい板ホルダ70を装備して構成されている。
【0060】
苗すくい板ホルダ70は、コの字形断面形状のレール部材72を内向きに対向配備して、前後端においてステー73で連結して構成されており、苗すくい板71を左右のレール部材72に亘って差込んで収容しておくことができる。
【0061】
この苗すくい板ホルダ70は、前端部の横向き支点q周りに上下揺動可能に育苗箱ホルダ50の前端上部に枢支連結されており、苗すくい板ホルダ70の後端ステー73に備えたバネクランプ74を育苗箱ホルダ50の後端上部に弾性係止しておくことで、育苗箱ホルダ50の上方を塞ぎ、収容した育苗箱24が走行機体3の動揺などによって跳ね上がって脱落することが防止されるようになっている。
【0062】
〔第7例〕
図26,27に、育苗箱ホルダ50の第7例が示されている。この例の育苗箱ホルダ50は、丸棒材を左右に組み上げて幅狭く上下に深いバケット状に形成したものであり、前後2つの区画に仕切られている。各区画には、3枚づつ育苗箱24を左右に重ねて収容することができるとともに、前後いずれかの区画に苗すくい板71を育苗箱24と重ねて差込収容しておくこともできる。
【0063】
この育苗箱ホルダ50は予備苗のせ台8の中段に固定された苗受け体26(m)に以下のように連結支持されている。図27に示すように、育苗箱ホルダ50の上端には前後一対の連結金具75が溶接固定されており、この連結金具75を中段の苗受け体26(m)に下方から当てつけるとともに、苗受け体26(m)の上方から当て板76を重ね、当て板76、苗受け体26(m)、および、連結金具75に亘ってボルト77を挿通して締め上げることで育苗箱ホルダ50が苗受け体26(m)に連結支持されるようになっている。なお、前記ボルト77を連結金具75に固着したスタッドボルトに構成して、ナット締めで固定する構造とするもよい。
【0064】
〔第8例〕
図28,29に、育苗箱ホルダ50の第8例が示されている。この例の育苗箱ホルダ50の基本構成は上記第7例と同様であるが、支点構造が異なっている。つまり、この例では、育苗箱ホルダ50の上端に備えた前後一対の連結ピン78を中段の苗受け体26(m)に差し込んでストッパピン79で抜け止めする簡易な構造で育苗箱ホルダ50を苗受け体26(m)に連結支持している。
【0065】
〔他の実施例〕
(1)第1例または第2例に示す構造の育苗箱ホルダ50を、3枚の育苗箱24を積層収容できる深さに構成し、この育苗箱ホルダ50を左右の予備苗のせ台8に装備してもよい。
(2)第3例に示す構造の育苗箱ホルダ50を、6枚の育苗箱24を積層収容できる深さに構成し、この育苗箱ホルダ50を左右一方の予備苗のせ台8に装備してもよい。
(3)育苗箱ホルダ50を、予備苗のせ台8における苗受け体26の下方空間に上下重複して固定配備することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】第2形態にした予備苗のせ台を示す側面図
【図4】予備苗のせ台を第2形態した乗用型田植機の全体平面図
【図5】第1形態にした機体左側の予備苗のせ台を示す正面図
【図6】中段の苗受け体の縦断側面図
【図7】上段および下段の苗受け体の支持構造を示す縦断正面図(イ)と中段の苗受け体の支持構造を示す縦断正面図(ロ)
【図8】苗受け体における苗ストッパ構造を示す縦断正面図
【図9】苗受け体の縦断正面図
【図10】第1形態の予備苗のせ台を示す側面図
【図11】第2形態の予備苗のせ台を示す側面図
【図12】第1例の育苗箱ホルダを示す正面図
【図13】第1例の育苗箱ホルダを示す側面図
【図14】第1例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図15】育苗箱を収容した第1例の育苗箱ホルダを示す横断平面図
【図16】第1例の育苗箱ホルダの支点構造を示す正面図(イ)と側面図(ロ)
【図17】第2例の育苗箱ホルダを示す側面図
【図18】第2例の育苗箱ホルダの支点構造を示す正面図(イ)と側面図(ロ)
【図19】第3例の育苗箱ホルダを示す正面図
【図20】第4例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図21】育苗箱を収容した第4例の育苗箱ホルダを示す横断平面図
【図22】第4例の育苗箱ホルダの支点構造を示す正面図(イ)と側面図(ロ)
【図23】第5例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図24】第6例の育苗箱ホルダを示す側面図
【図25】第6例の育苗箱ホルダの一部を示す縦断正面図
【図26】第7例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図27】第7例の育苗箱ホルダの連結構造を示す縦断正面図
【図28】第8例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図29】第8例の育苗箱ホルダの連結構造を示す縦断正面図
【符号の説明】
【0067】
3 走行機体
8 予備苗のせ台
24 育苗箱
25 支柱
26 苗受け体
50 育苗箱ホルダ
51 開口
52 開口
70 苗すくい板ホルダ
71 苗すくい板
F 苗
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に予備苗のせ台を立設した乗用型の田植機の予備苗収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型の田植機の予備苗収容構造としては、走行機体に、苗を複数段に積載可能な予備苗のせ台を立設するとともに、予備苗のせ台の下部に、苗補給に使用した苗すくい板を収容する苗すくい板ホルダを装備したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−121039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記予備苗収容構造においては、育苗箱で生育されたマット状の苗を苗すくい板に載置した状態で予備苗のせ台における各段の苗受け体に積載され、植付け作業の進行によって苗植付け装置での苗が消費されると、運転作業者が予備苗のせ台に積載した苗を取り出して苗植付け装置の苗のせ台に移載する苗補給作業を行うことになり、苗移載によって残った苗すくい板を苗すくい板ホルダに回収収容しておく。予備苗のせ台の苗が無くなると、苗補充のために機体を畦近づけ、回収した苗すくい板を畦で待機している苗補充用の作業者に返却し、畦に置いてある育苗箱の苗を苗すくい板を使って取り出し、苗すくい板ごと予備苗のせ台に供給する。
【0004】
畦に置いてある育苗箱から苗すくい板を使って苗を取り出して予備苗のせ台の苗受け体に積載供給する際、苗は苗すくい板の上に載せられているだけであるので、苗すくい板を傾けてしまうと苗がずれ動いて崩れたり、落下してしまうおそれがあり、畦の作業者は苗すくい板を水平に保ちながら慎重に苗補充作業を行う必要がある。この場合、マット状に育成された苗は相当重い(1枚数kg)ものであり、水平に保ちながら両手を伸ばして予備苗のせ台の苗受け体に苗を積載するのに労力を要するものとなっていた。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、運転作業者の苗のせ台への苗補給作業、および、畦から予備苗のせ台への苗補充作業を軽快容易に行える予備苗収容構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、走行機体に、複数段に育苗箱を積載可能な予備苗のせ台を立設するとともに、予備苗のせ台の近傍に、苗が取り出されて空になった複数枚の育苗箱を収容する育苗箱ホルダを配備してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、育苗箱に入れたままの苗を予備苗のせ台に積載するので育苗箱を多少傾けても苗が育苗箱から脱落するおそれがなく、畦から予備苗のせ台への苗供給時に、育苗箱の扱いを慎重にする必要は特になく、苗供給を容易に行うことができる。
【0008】
植付け作業において、苗植付け装置での苗消費に応じて予備苗のせ台に積載した育苗箱から苗を取出して苗植付け装置の苗のせ台に移載する。この場合、運転作業者は苗入りの育苗箱を予備苗のせ台から取出し、苗すくい板などを用いて苗を育苗箱から取出すことになるので、予備苗のせ台からの育苗箱取出し操作を苗の崩れや脱落を心配することなく容易に行うことができる。苗の取り出しによって空になった育苗箱は育苗箱ホルダに収容しておく。以降の作業走行中に機体が大きく振動したり動揺しても、育苗箱ホルダに収容された育苗箱は脱落してしまうおそれはない。
【0009】
予備苗のせ台の苗が無くなりかけると、次に機体方向転換のために畦に近づいた際に、育苗箱ホルダに収容した空の育苗箱は畦の作業者によって回収され、畦に置いてある苗入りの育苗箱が予備苗のせ台に補充積載される。
【0010】
従って、第1の発明によると、苗の取扱いを育苗箱ごと行うので、運転作業者の苗のせ台への苗補給作業、および、畦から予備苗のせ台への苗補充作業を、苗の崩れや脱落に特に気をつける必要なく軽快容易に行うことができるようになった。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、
育苗箱を上下に積層して位置決め収容するよう前記育苗箱ホルダを構成するとともに、収容した育苗箱の外周部を外部に露出させる開口を上下に連通して育苗箱ホルダに形成してあるものである。
【0012】
上記構成によると、空の育苗箱を育苗箱ホルダに出し入れする場合、育苗箱ホルダに形成された開口から育苗箱ホルダ内の育苗箱を掴むことができ、積層された最下層の育苗箱を持って、全部の育苗箱を育苗箱ホルダから取出すことも容易に行える。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記育苗箱ホルダにおける前後端の左右中間部位に前記開口を形成してあるものである。
【0014】
上記構成によると、運転作業者は空になった育苗箱を後方の開口を通して育苗箱ホルダに入れることができるとともに、畦から予備苗のせ台への苗補充の際には、畦の作業者が育苗箱ホルダに積層収容された育苗箱を、前方の開口を通して持上げることができ、空の育苗箱回収を容易に行うことができる。
【0015】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
走行機体から立設した支柱の上下複数箇所に苗受け体を装備して前記予備苗のせ台を構成するとともに、前記支柱に前記育苗箱ホルダを装着してあるものである。
【0016】
上記構成によると、予備苗のせ台に備えられた丈夫な支柱を利用して育苗箱ホルダを頑強に支持することができるとともに、同構造の予備苗のせ台を備えた他の機種を、簡単に育苗箱ホルダ付きの仕様に改造することができる。
【0017】
第5の発明は、上記第4の発明において、
前記育苗箱ホルダを、前記予備苗のせ台における前記苗受け体の上方あるいは下方に重複させて配置してあるものである。
【0018】
上記構成によると、苗受け体の平面スペースを有効に利用することにより、専用の平面スペースを要することなく育苗箱ホルダを設けることができる。
【0019】
第6の発明は、上記第4または5の発明において、
前記育苗箱ホルダを前記支柱に対して機体内側と機体外側とに位置変更可能に構成してあるものである。
【0020】
上記構成によると、予備苗のせ台の機体内側に機体前端部から運転部までの乗降通路が形成されている場合、植付け作業時には育苗箱ホルダを運転作業者の手の届きやすい機体内側に位置させることにより、空になった育苗箱の育苗箱ホルダへの収容を容易に行うことができる。育苗箱ホルダを機体外側に位置させて乗降通路を開けた状態にすることにより、機体前端部からの乗降を育苗箱ホルダに邪魔されることなく容易に行うことができる。
【0021】
第7の発明は、上記第1〜6のいずれか一の発明において、
前記育苗箱ホルダに苗すくい板を保持する苗すくい板ホルダを備えてあるものである。
【0022】
上記構成によると、育苗箱から苗を取出す際に用いる苗すくい板を苗すくい板ホルダに入れておくことで、軽い苗すくい板が風に煽られて飛んで行くことなく保管しておくことができる。
【0023】
第8の発明は、上記第7の発明において、
前記苗すくい板ホルダを、育苗箱ホルダに収容した育苗箱の脱落を阻止する位置に設置してあるものである。
【0024】
上記構成によると、機体が大きく動揺したような場合に、育苗箱ホルダ内で飛び上がる育苗箱を苗すくい板ホルダで受け止め、育苗箱が育苗箱ホルダから脱落してしまうことを防止することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1に、本発明に係る予備苗収容構造を備えた施肥装置付き乗用型田植機の側面が、図2にその平面がそれぞれ示されている。この乗用型田植機は、前輪1と後輪2を備えた4輪駆動式の走行機体3の後部に、油圧シリンダ4で駆動される平行四連リンク構造のリンク機構5を介して苗植付け装置6が昇降自在に連結された基本構造を備え、走行機体3の後部に施肥装置7が搭載されるとともに、走行機体3の前部における左右両側に2組の予備苗のせ台8が立設装備されている。
【0026】
走行機体3の前部には、エンジン9を収容した原動部10が設けられるとともに、機体後部に運転座席11が設けられ、運転座席11の足元から原動部10の左右両脇を通って機体前端部にまでステップ12が配備され、走行機体3の左右両側から乗降できるのみならず、原動部10の横側を通って機体前端からも乗降することができるようになっている。さらに、ステップ12の左右横外側には、下方を透視可能なスノコ状に形成された拡張ステップ13が備えられている。
【0027】
苗植付け装置6は6条植え仕様に構成されており、6条分のマット状の苗を並列載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台15、苗のせ台15の下端から1株分づつ苗を切り出して田面に押し込む6組の回転式の植付け機構16、田面の植付け箇所を均らすよう並列配備された複数の整地フロート17、等を備えている。
【0028】
施肥装置7は、運転座席11の後方に配備された肥料ホッパ18、肥料ホッパ18に貯留された粒状肥料を所定量づつ繰出す回転式の繰出し機構19、繰出された肥料を風力搬送するための電動ブロワ20、風力搬送される肥料を整地フロート17に備えた作溝器21に導く供給ホース22、等を備えており、各条の植付け苗の横側近くに作溝器21で形成した施肥溝に肥料を送り込んで埋設するよう構成されている。
【0029】
左右の予備苗のせ台8は、マット状の苗Fが収容された育苗箱24をそれぞれ3枚づつ積載できるよう構成されており、その構造を以下に説明する。
予備苗のせ台8は、ステップ12の前部外側において走行機体3から立設された前後一対の支柱25と、この支柱25の機体横外側に上下3段に亘って片持ち棚板状に支持された苗受け体26とで構成されており、図1,2,5に示すように、苗受け体26が上下3段に配備された第1形態と、図3,4に示すように、苗受け体26が前後直列に並べて機体前方に延出された第2形態とに切換え可能に構成されている。なお、以後の説明においては、図面との対比を容易にするために、上段、中段、下段の苗受け体26にそれぞれ補助符号(u),(m),(d)を付す。
【0030】
各苗受け体26(u),(m),(d)は同一仕様に樹脂成型されたものが使用されており、図6,7,9に示すように、中空二重壁状に形成された上下に幅広い左右の側枠26aの間が、前後方向に向かう多数の縦リブ26bに多数の横リブ26c斜めに交差させた格子状に構成されるとともに、側枠26aの内側近くの前後方向3箇所に横軸心周りに遊転自在にローラ28が配備されている。中段の苗受け体26(m)が支柱25から横外方に延出されたステー29に連結固定されるのに対して、上段の苗受け体26(u)および下段の苗受け体26(d)は支柱25に以下のようにして脱着自在に支持されてれている。
【0031】
図7(イ),図10に示すように、上段の苗受け体26(u)および下段の苗受け体26(d)の機体内側下方には丸パイプ材からなる前後に長い支持枠30がボルト連結され、支持枠30から上向きに突設された前後一対の連結金具31が前後の支柱25に脱着可能にピン連結されるようになっている。連結金具31は支柱25の横外方から外嵌可能な横断面形状コの字形に形成されるとともに、その上部にはダルマ孔状に形成された連結孔32が備えられている。他方、支柱25の横外面には前記連結金具31における連結孔32の大径部を挿通可能な頭付きピン33が突設されている。
【0032】
前後の連結金具31を支柱25に外嵌しながら連結孔32を頭付きピン33に挿通して押し下げることで、上段の苗受け体26(u)および下段の苗受け体26(d)を支柱25に固定支持することができ、連結金具31を押し上げて連結孔32の大径部を頭付きピン33から抜き外すことで、上段の苗受け体26(u)および下段の苗受け体26(d)を支柱25から取外すことができるようになっている。
【0033】
図1,10に示すように、中段の苗受け体26(m)の前端部および後端部に左右一対づつ連結金具34,35が上向きに突設されるとともに、上段の苗受け体26(u)の後端部には左右一対の連結金具36が上向きに突設され、下段の苗受け体27(d)の前端部には左右一対の連結金具37が上向きに突設されている。
【0034】
図3,11に示すように、支柱25から取外した上段の苗受け体26(u)における左右の連結金具36を中段の苗受け体27(m)における左右の連結金具34にピン連結することで、上段の苗受け体26(u)を中段の苗受け体27(m)の前端に連なった第2形態にし、支柱25から取外した下段の苗受け体26(d)における左右の連結金具37を中段の苗受け体27(m)における左右の連結金具35にピン連結することで、下段の苗受け体26(d)を中段の苗受け体27(m)の後端に連なった第2形態にすることができる。
【0035】
このように、段積み状の第1形態と前後直列状の第2形態とに苗受け形態が切換え可能に構成された予備苗のせ台8は、例えば、次のように使用される。
植付け作業の当初は、圃場に乗り入れた走行機体3を、機体前端をできるだけ畦に近づく位置まで寄せる。次に、苗受け体26(u),(m),(d)を前後直列に並べられて機体前方に延出された第2形態に切換える。
【0036】
畦の作業者は前後直列に並べられた苗受け体26(u),(m),(d)の前部から苗Fの入った育苗箱24を載置供給して、縦列状に順次後方に押し動かす。走行機体3に搭乗している運転作業者は、最後部の苗受け体26(d)に到達した育苗箱24から苗Fを順次取り出して機体後方の苗のせ台15に移載する。6条植え仕様の苗植付け装置6の苗のせ台15の場合、1条につき2枚の苗Fが搭載可能であるので、全部で12枚の苗Fの移載を行うことになる。
【0037】
苗のせ台15に苗Fが満載されると、苗受け体26(u),(m),(d)を上下段積み状の第1形態に戻して苗Fの入った育苗箱24を左右に3枚づつ段積み収容した状態、あるいは、第2形態のままで苗Fの入った育苗箱24を左右に3枚づつ前後縦列状に載置収容した状態で植付け作業に移る。
【0038】
植付け作業に伴って苗のせ台15の苗Fが消費されると、運転作業者は予備苗のせ台8に積載された育苗箱24の苗Fを取り出して苗のせ台15に移載補充する。予備苗のせ台8に積載した予備の苗Fが無くなるか、残り少なくなると、次に機体方向転換のために畦に近寄った際に、畦から予備苗のせ台8への苗補充を行う。
【0039】
各苗受け体26における縦リブ26bの上端は横リブ26cの上端より高く位置させて形成されるとともに、前記ローラ28が縦リブ26bより少し突出して装備され、上記第2形態において、前後直列に並べられた苗受け体26に沿って育苗箱24を押し動かす際に、育苗箱24が横リブ26cに引っ掛かるようなことなく円滑に順送りすることができる。
【0040】
各苗受け体26(u),(m),(d)は支柱25に対してやや後下がり傾斜した姿勢で支持されており、前後直列状の第2形態に切換えた状態において、苗受け体26(u),(m),(d)の苗受け面全体が後下がり傾斜姿勢となり、畦から供給される育苗箱24の後方移動を円滑に行えるようになっている。
【0041】
上段の苗受け体26(u)の前端部、および、下段の苗受け体26(d)の後端部には、丸棒材を屈曲形成してなるストッパ43が装着固定されるとともに、中段の苗受け体26(m)における左右の側枠27aの前後端部、上段の苗受け体26(u)の後端部、および、下段の苗受け体26(d)の前端部には、丸棒材をU形に屈曲形成してなる可動ストッパ44が横スライド可能、かつ、回動可能に挿通支持されている。この可動ストッパ44は、図8に示すように、外嵌装着したバネ45によって外方にスライド付勢されており、その折返し部44aの先端を側枠27aに形成された上部係止孔46に係合させることで、苗受け面より上方に突出した作用姿勢に保持され、折返し部44aの先端を側枠27aに形成された下部係止凹部47に係合させるか、折り畳み回動しておくことで、苗受け面から退避した格納姿勢に保持されるようになっている。
【0042】
苗を段積み収容する前記第1形態においては各苗受け体26ごとに可動ストッパ44を苗受け面上方に突出させることで、載置収容した育苗箱24が前後にずり落ちるのをストッパ43および可動ストッパ44で受止め阻止する。育苗箱24を前後方向に縦列移動させる前記第2形態においては、育苗箱24の移動の妨げとなる苗受け体27(m)における前後の可動ストッパ44、最前部の苗受け体27(u)における後方の可動ストッパ44、および、最後部の受け体27(d)における前方の可動ストッパ44を格納姿勢に切換えておく。
【0043】
上記のように構成された予備苗のせ台8には、苗のせ台15への苗補給のために苗Fを取り出して空になった育苗箱24を収容しておく育苗箱ホルダ50が備えられており、育苗箱ホルダ50のいくつかの例を以下に説明する。
【0044】
〔第1例〕
図1〜4,および、図12〜16に、育苗箱ホルダ50の第1例が示されている。この例の育苗箱ホルダ50は機体右側の予備苗のせ台8における支柱25の上部にのみ装備されている。育苗箱ホルダ50は、屈折した丸棒材を組み上げ溶接して上方に開放された前後に長い矩形のバケット状に構成されており、空の育苗箱24を6枚積層して収容できる深さに形成されている。育苗箱ホルダ50には、左右、および、前後一対づつの棒材を井桁状に組上げ連結して構成された底部50aと、各棒材の両端を屈折して立ち上げられた前後の位置決め案内部50b,50cと左右の位置決め案内部50d,50eが備えられ、育苗箱ホルダ50の前後端における左右中間部位と、育苗箱ホルダ50の左右端における前後中間部位には、上下に連通して開口51a〜51dが形成されている。
【0045】
育苗箱ホルダ50に入れられた育苗箱24は、その長手方向を機体前後方向に向けた姿勢で底部50aに載置されるとともに、育苗箱24の四辺が位置決め案内部50b〜51eで受け止められて前後左右に位置きめされた状態で積層収容される。この場合、収容された育苗箱24における前後端辺の左右中間部は育苗箱ホルダ50の前後の開口51a,51bに臨み、収容された育苗箱24における左右端辺の前後中間部は育苗箱ホルダ50の左右の開口51c,51dに臨むことになる。従って、運転作業者は後方の開口51bあるいは側方の開口51cに手を入れることで、育苗箱ホルダ50の構成部材に邪魔されることなく育苗箱24を掴んで上下に出し入れすることができ、機体前方から苗補充作業を行う畦の作業者は、前方の開口51aあるいは側方の開口51cに手を入れることで、育苗箱ホルダ50の構成部材に邪魔されることなく育苗箱24を掴んで上下に出し入れすることができる。
【0046】
育苗箱ホルダ50は、支柱25の上部に前後向きの支点pを中心にして回動可能に支持され、支柱25の機体内側において上向き開放姿勢となる使用位置Aと、支柱25の機体外側において上下に反転される退避位置Bとに位置変更可能に構成されている。育苗箱ホルダ50は、通常、使用位置Aに置かれているが、運転作業者が原動部10と予備苗のせ台8の間の通路を通って乗降する場合に退避位置Bに反転回動される。
【0047】
図16(イ),(ロ)に、育苗箱ホルダ50の支点構造が示されている。前後の支柱25の機体内側箇所には支点ボス53を備えたブラケット54がそれぞれボルト連結されるとともに、丸棒材からなる前後一対の支持アーム55が育苗箱ホルダ50の底部50aから屈折延出され、各支持アーム55の延出端に屈曲形成された支点軸部55aのそれぞれが前記支点ボス53に同じ方向から挿通されてストッパピン56で抜け止め支持されている。
【0048】
支持アーム55に設けられたバネ受けピン57と支柱25に設けられたバネ受けピン58とに亘ってバネ59が張設されている。育苗箱ホルダ50が使用位置(A)にある時、育苗箱ホルダ50がバネ59によって下向きに付勢回動され、支持アーム55に備えられた接当ピン60が支柱25の機体内側の外周に受け止められることで、育苗箱ホルダ50が使用位置Aに安定保持される。育苗箱ホルダ50を支点p周りに大きく持ち上げて退避位置Bまで反転回動すると、反転姿勢の育苗箱ホルダ50がバネ59によって下向きに付勢回動され、前記接当ピン60が支柱25の機体外側の外周に受け止められることで、育苗箱ホルダ50が退避位置Bに安定保持される。
【0049】
〔第2例〕
図17,図18に、育苗箱ホルダ50の第2例が示されている。この育苗箱ホルダ50の基本構成は上記第1例と同様であるが、支点構造が異なっている。つまり、この例では、育苗箱ホルダ50から延出された前後一対の支持アーム55の先端に前後向きのボス部55bがそれぞれ設けられるとともに、支柱25に平面視コの字状の支点ブラケット61が固着され、前記ボス部55bと支点ブラケット61に亘って支点ピン62を挿通してストッパピン63で抜け止めする構造が採用されている。
【0050】
前例と同様に、支持アーム55に設けられたバネ受けピン57と支柱25に設けられたバネ受けピン58とに亘ってバネ59が張設されて、育苗箱ホルダ50が使用位置Aと退避位置Bとに安定保持される。使用位置Aにおいては、支持アーム55に設けられた当て板64が支柱25に受け止められて、その位置が保持される。
【0051】
〔第3例〕
図19に、育苗箱ホルダ50の第3例が示されている。この例では、第1例に示された構造の育苗箱ホルダ50が、使用位置Aが予備苗のせ台8における苗受け体26の上方に重複するよう構成され、最上段の苗受け体26(u)への育苗箱24の出し入れや、苗受け体26を前後直列に配置した前記第2形態にして育苗箱24の供給を行う場合に、育苗箱ホルダ50を機体内方に略90°回動した退避位置Bに位置変更することができるように支柱25に支持されている。
【0052】
〔第4例〕
図20〜22に、育苗箱ホルダ50の第4例が示されている。この育苗箱ホルダ50は、屈折した丸棒材を組み上げ溶接して上方に開放された前後に長い矩形のバケット状に構成されており、空の育苗箱24を3枚積層して収容できる深さに形成され、左右の予備苗のせ台8における支柱25の上部に装備される。育苗箱ホルダ50には、左右、および、前後一対づつの棒材を井桁状に組上げ連結して構成された底部50aと、各棒材の両端を屈折して立ち上げられた前後に対向する位置決め案内部50b,50cと左右に対向する位置決め案内部50d,50eが備えられ、育苗箱ホルダ50の前後左右の角部には上下に連通して開口52a〜52dが形成されている。
【0053】
育苗箱ホルダ50に入れられた育苗箱24は、その長手方向を機体前後方向に向けた姿勢で底部50aに載置されるとともに、育苗箱24の四辺が前後の位置決め案内部50b,50cと左右の位置決め案内部50d,50eで受け止められて前後左右に位置きめされた状態で積層収容される。この場合、収容された育苗箱24における四隅は育苗箱ホルダ50の開口52a〜52dに臨むことになり、これら開口52a〜52dに手を入れることで、育苗箱ホルダ50の構成部材に邪魔されることなく育苗箱24を掴んで上下に出し入れすることができる。
【0054】
育苗箱ホルダ50は、支柱25の上部に前後向きの支点pを中心にして回動可能に支持され、支柱25の機体内側において上向き開放姿勢となる使用位置Aと、支柱25の機体外側において上下に反転される退避位置Bとに位置変更可能に構成されている。育苗箱ホルダ50は、通常、使用位置Aに置かれているが、運転作業者が原動部10と予備苗のせ台8の間の通路を通って乗降する場合に退避位置Bに反転回動される。
【0055】
図22(イ),(ロ)に、この育苗箱ホルダ50の支点構造が示されている。この例では、育苗箱ホルダ50における支柱側に位置する前後一対の位置決め案内部50eの上端部がそれぞれ前方に屈曲されて支点軸部65が形成され、この支点軸部65が支柱25の連結孔66に直接に挿通されてストッパピン67で抜け止め支持されている。
【0056】
位置決め案内部50eに設けられたバネ受けピン57と支柱25に設けられたバネ受けピン58とに亘ってバネ59が張設されている。育苗箱ホルダ50が使用位置(A)にある時、育苗箱ホルダ50がバネ59によって下向きに付勢回動され、位置決め案内部50dが支柱25に設けられた接当ピン68に受け止められることで、育苗箱ホルダ50が使用位置Aに安定保持される。育苗箱ホルダ50を支点p周りに大きく持ち上げて退避位置Bまで反転回動すると、反転姿勢の育苗箱ホルダ50がバネ59によって下向きに付勢回動され、位置決め案内部50dが支柱25に設けられた別の接当ピン69に受け止められることで、育苗箱ホルダ50が退避位置Bに安定保持される。
【0057】
〔第5例〕
図23に、育苗箱ホルダ50の第5例が示されている。この例では、上記第1例の構造の育苗箱ホルダ50の底部に、苗すくい板ホルダ70を装備して構成されている。
【0058】
苗すくい板ホルダ70は、棒材を井桁状に組み上げて構成されたものであり、育苗箱ホルダ50の底部50aとの間に適当な高さの空隙が後方に向けて開口するよう形成されている。予備苗のせ台8に積載した育苗箱24から苗Fを取り出す際に使用する苗すくい板71を苗すくい板ホルダ70に差込み収容しておくことができる。
【0059】
〔第6例〕
図24,25に、育苗箱ホルダ50の第6例が示されている。この例では、上記第1例の構造の育苗箱ホルダ50の上端部に苗すくい板ホルダ70を装備して構成されている。
【0060】
苗すくい板ホルダ70は、コの字形断面形状のレール部材72を内向きに対向配備して、前後端においてステー73で連結して構成されており、苗すくい板71を左右のレール部材72に亘って差込んで収容しておくことができる。
【0061】
この苗すくい板ホルダ70は、前端部の横向き支点q周りに上下揺動可能に育苗箱ホルダ50の前端上部に枢支連結されており、苗すくい板ホルダ70の後端ステー73に備えたバネクランプ74を育苗箱ホルダ50の後端上部に弾性係止しておくことで、育苗箱ホルダ50の上方を塞ぎ、収容した育苗箱24が走行機体3の動揺などによって跳ね上がって脱落することが防止されるようになっている。
【0062】
〔第7例〕
図26,27に、育苗箱ホルダ50の第7例が示されている。この例の育苗箱ホルダ50は、丸棒材を左右に組み上げて幅狭く上下に深いバケット状に形成したものであり、前後2つの区画に仕切られている。各区画には、3枚づつ育苗箱24を左右に重ねて収容することができるとともに、前後いずれかの区画に苗すくい板71を育苗箱24と重ねて差込収容しておくこともできる。
【0063】
この育苗箱ホルダ50は予備苗のせ台8の中段に固定された苗受け体26(m)に以下のように連結支持されている。図27に示すように、育苗箱ホルダ50の上端には前後一対の連結金具75が溶接固定されており、この連結金具75を中段の苗受け体26(m)に下方から当てつけるとともに、苗受け体26(m)の上方から当て板76を重ね、当て板76、苗受け体26(m)、および、連結金具75に亘ってボルト77を挿通して締め上げることで育苗箱ホルダ50が苗受け体26(m)に連結支持されるようになっている。なお、前記ボルト77を連結金具75に固着したスタッドボルトに構成して、ナット締めで固定する構造とするもよい。
【0064】
〔第8例〕
図28,29に、育苗箱ホルダ50の第8例が示されている。この例の育苗箱ホルダ50の基本構成は上記第7例と同様であるが、支点構造が異なっている。つまり、この例では、育苗箱ホルダ50の上端に備えた前後一対の連結ピン78を中段の苗受け体26(m)に差し込んでストッパピン79で抜け止めする簡易な構造で育苗箱ホルダ50を苗受け体26(m)に連結支持している。
【0065】
〔他の実施例〕
(1)第1例または第2例に示す構造の育苗箱ホルダ50を、3枚の育苗箱24を積層収容できる深さに構成し、この育苗箱ホルダ50を左右の予備苗のせ台8に装備してもよい。
(2)第3例に示す構造の育苗箱ホルダ50を、6枚の育苗箱24を積層収容できる深さに構成し、この育苗箱ホルダ50を左右一方の予備苗のせ台8に装備してもよい。
(3)育苗箱ホルダ50を、予備苗のせ台8における苗受け体26の下方空間に上下重複して固定配備することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】第2形態にした予備苗のせ台を示す側面図
【図4】予備苗のせ台を第2形態した乗用型田植機の全体平面図
【図5】第1形態にした機体左側の予備苗のせ台を示す正面図
【図6】中段の苗受け体の縦断側面図
【図7】上段および下段の苗受け体の支持構造を示す縦断正面図(イ)と中段の苗受け体の支持構造を示す縦断正面図(ロ)
【図8】苗受け体における苗ストッパ構造を示す縦断正面図
【図9】苗受け体の縦断正面図
【図10】第1形態の予備苗のせ台を示す側面図
【図11】第2形態の予備苗のせ台を示す側面図
【図12】第1例の育苗箱ホルダを示す正面図
【図13】第1例の育苗箱ホルダを示す側面図
【図14】第1例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図15】育苗箱を収容した第1例の育苗箱ホルダを示す横断平面図
【図16】第1例の育苗箱ホルダの支点構造を示す正面図(イ)と側面図(ロ)
【図17】第2例の育苗箱ホルダを示す側面図
【図18】第2例の育苗箱ホルダの支点構造を示す正面図(イ)と側面図(ロ)
【図19】第3例の育苗箱ホルダを示す正面図
【図20】第4例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図21】育苗箱を収容した第4例の育苗箱ホルダを示す横断平面図
【図22】第4例の育苗箱ホルダの支点構造を示す正面図(イ)と側面図(ロ)
【図23】第5例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図24】第6例の育苗箱ホルダを示す側面図
【図25】第6例の育苗箱ホルダの一部を示す縦断正面図
【図26】第7例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図27】第7例の育苗箱ホルダの連結構造を示す縦断正面図
【図28】第8例の育苗箱ホルダを示す斜視図
【図29】第8例の育苗箱ホルダの連結構造を示す縦断正面図
【符号の説明】
【0067】
3 走行機体
8 予備苗のせ台
24 育苗箱
25 支柱
26 苗受け体
50 育苗箱ホルダ
51 開口
52 開口
70 苗すくい板ホルダ
71 苗すくい板
F 苗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に、複数段に育苗箱を積載可能な予備苗のせ台を立設するとともに、予備苗のせ台の近傍に、苗が取り出されて空になった複数枚の育苗箱を収容する育苗箱ホルダを配備してあることを特徴とする田植機の予備苗収容構造。
【請求項2】
育苗箱を上下に積層して位置決め収容するよう前記育苗箱ホルダを構成するとともに、収容した育苗箱の外周部を外部に露出させる開口を上下に連通して育苗箱ホルダに形成してある請求項1記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項3】
前記育苗箱ホルダにおける前後端の左右中間部位に前記開口を形成してある請求項2記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項4】
走行機体から立設した支柱の上下複数箇所に苗受け体を装備して前記予備苗のせ台を構成するとともに、前記支柱に前記育苗箱ホルダを装着してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項5】
前記育苗箱ホルダを、前記予備苗のせ台における前記苗受け体の上方あるいは下方に重複させて配置してある請求項4記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項6】
前記育苗箱ホルダを前記支柱に対して機体内側と機体外側とに位置変更可能に構成してある請求項4または5記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項7】
前記育苗箱ホルダに苗すくい板を保持する苗すくい板ホルダを備えてある請求項1〜6のいずれか一項に記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項8】
前記苗すくい板ホルダを、育苗箱ホルダに収容した育苗箱の脱落を阻止する位置に設置してある請求項7記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項1】
走行機体に、複数段に育苗箱を積載可能な予備苗のせ台を立設するとともに、予備苗のせ台の近傍に、苗が取り出されて空になった複数枚の育苗箱を収容する育苗箱ホルダを配備してあることを特徴とする田植機の予備苗収容構造。
【請求項2】
育苗箱を上下に積層して位置決め収容するよう前記育苗箱ホルダを構成するとともに、収容した育苗箱の外周部を外部に露出させる開口を上下に連通して育苗箱ホルダに形成してある請求項1記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項3】
前記育苗箱ホルダにおける前後端の左右中間部位に前記開口を形成してある請求項2記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項4】
走行機体から立設した支柱の上下複数箇所に苗受け体を装備して前記予備苗のせ台を構成するとともに、前記支柱に前記育苗箱ホルダを装着してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項5】
前記育苗箱ホルダを、前記予備苗のせ台における前記苗受け体の上方あるいは下方に重複させて配置してある請求項4記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項6】
前記育苗箱ホルダを前記支柱に対して機体内側と機体外側とに位置変更可能に構成してある請求項4または5記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項7】
前記育苗箱ホルダに苗すくい板を保持する苗すくい板ホルダを備えてある請求項1〜6のいずれか一項に記載の田植機の予備苗収容構造。
【請求項8】
前記苗すくい板ホルダを、育苗箱ホルダに収容した育苗箱の脱落を阻止する位置に設置してある請求項7記載の田植機の予備苗収容構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2008−67666(P2008−67666A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251397(P2006−251397)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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