説明

田植機の苗植付け装置

【課題】 横長の植付けフレームに、後部に植付け機構4を装備した植付けケースの前端部を後向き片持ち状に連結し、植付けケースの前部に横架した入力軸と植付けケースの後部に横架された植付け駆動軸とをケース内の伝動手段を介し連動連結した田植機の苗植付け装置において、植付けケースの軽量化を図るとともに、組立て作業性を高め、かつ、高いシール性を確保することができるようにする。
【解決手段】 植付けケース8を一体成型した前後に長い筒状に構成するとともに、植付けケース8における植付けフレーム6に対する前端連結部と入力軸20の軸支部位との間に位置させて、植付けケース内を前後に仕切る隔壁8dを一体形成し、植付けケース8の後部開口端を蓋カバー46で閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型の田植機の後部に連結支持された苗植付け装置に係り、特には、後部に植付け機構を装備した植付けケースに特徴を有する苗植付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
苗植付け装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、横長の植付けフレームにフィードケースを連結するとともに、後部に植付け機構を装備した植付けケースの前端部を植付けフレームに後向き片持ち状に連結し、フィードケースから取り出された横軸動力を植付けケースの前部に横架した入力軸に伝達し、この入力軸と植付けケースの後部に横架された植付け駆動軸とをケース内の伝動手段を介し連動連結したものや、特許文献2に開示されているように、植付けケースを一体成型した前後に長い筒状に構成し、この植付けケースの前部をフィードケースの横側端に連結して、フィードケースからの横軸動力を植付けケースに伝達する構造のものが知られている。
【0003】
横長の植付けフレームにフィードケースと植付けケースを連結した構造は、植付けケースの数と配置を変更することで各種植付け条数の苗植付け装置を構成することができ、フィードケースや植付けケースを共用してコスト低減を図ることができる特徴を有するものであり、特許文献1に開示されているものでは、植付けケースを左右分割構造に構成し、その一方の分割ケース部分の前端部を植付けフレームへ連結するとともに、この分割ケース部分に他方の分割ケース部分を接合してボルト締め連結している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−164920号公報
【特許文献2】第2707727号特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植付けケースには、内装した伝動手段を潤滑するために潤滑油が充填あるいは貯留するので、この潤滑油が水田に洩れ出すことがないように、植付けケースには厳重な油密シールを施す必要がある。
【0006】
特許文献1に開示された、分割構造の植付けケースにおいては、左右分割ケース部分の接合部全周がシール箇所となるので、植付けケースの外周を小さいピッチでボルト締め接合することになり、ボルト連結箇所が多くなって組立てに手数がかかるのみならず、多数のボルトのために植付けケース重量が大きくなるものであった。
【0007】
植付けケースの軽量化を図り組立て性を高めるためには、特許文献1に示されているように、植付けケースを前後に長い筒状に一体成型することが有効であるが、植付けフレームに植付けケースを連結する構造では、筒状に一体成型した植付けケースの前部開口端を植付けフレームに連結支持することになるので、植付けケースの内部を密封するために、植付けフレームと植付けケースとの連結部にシール構造を備える必要が生じる。しかし、植付けフレームと植付けケースとの連結部は植付けケースの重量負荷や植付け機構からの植付け反力が集中して作用する箇所であり、連結箇所に変形や歪が発生してシール性が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、植付けケースの軽量化を図るとともに、組立て作業性を高め、かつ、高いシール性を確保することができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、横長の植付けフレームにフィードケースを連結するとともに、後部に植付け機構を装備した植付けケースの前端部を前記植付けフレームに後向き片持ち状に連結し、フィードケースから取り出された横軸動力を植付けケースの前部に横架した入力軸に伝達し、この入力軸と植付けケースの後部に横架された植付け駆動軸とをケース内の伝動手段を介し連動連結した田植機の苗植付け装置において、
前記植付けケースを一体成型した前後に長い筒状に構成するとともに、植付けケースにおける前記植付けフレームに対する前端連結部と前記入力軸の軸支部位との間に位置させて、植付けケース内を前後に仕切る隔壁を一体形成し、植付けケースの後部開口端を蓋カバーで閉塞するよう構成してあることを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、植付けケースの前後に横架される入力軸と植付け駆動軸の軸支部をシールリングなどでシールするとともに、植付けケースの後部開口端を蓋カバーで閉塞することで、伝動手段を収容した内部空間を密閉することができる。しかも、後部開口端の開口面積は小さいものであるので、数本のボルト締めだけで確実に封止することができる。
【0011】
伝動手段を内装する伝動室の前壁となる隔壁は補強リブとして機能し、植付けケースの前端側の剛性が高いものとなり、植付けフレームに対する植付けケースの連結強度が高いものとなる。
【0012】
従って、第1の発明によると、植付けケースを筒状に一体成型することで軽量化を図るとともに、組立て作業性を高め、かつ、高いシール性を確保することができる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記植付けケースに内装される伝動手段を、前記植付け駆動軸を減速駆動するチェーン伝動機構で構成し、植付けケースの上端辺を直線状に構成するとともに、植付けケースの下端辺を、植付け駆動軸の近傍において大きく下方に突出する段違い状に構成してあるものである。
【0014】
苗植付け装置においては、植付けケースの下方にフロート支持アームが前端を中心に上下揺動可能に配備されるとともに、このフロート支持アームの後端部に整地フロートが枢支連結されており、フロート支持アームを揺動して植付けケースに対する整地フロートの相対高さを変更することで、田面に対する植付け機構の高さを変更して植付け深さを調節するように構成される。この場合、上記のように下端辺が段違い状に形成された植付けケースの下方には植付け駆動軸の近傍を除いて上下に大きい空間が形成されることになる。この上下に高い空間でフロート支持アームを上下揺動させることで、整地フロートの枢支連結点を上下に大きく位置変更して植付け深さ調節範囲を大きく確保することができる。
【0015】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記植付けケースに内装される伝動手段をチェーン伝動機構で構成し、このチェーン伝動機構における帯板状のチェーンタイトナの前端を、植付けケースの内部に一体形成した係止部に位置決め係止するよう構成してあるものである。
【0016】
上記構成によると、チェーンタイトナを植付けケースの後端開口から挿入して、ケース内の係止部にチェーンタイトナの前端を係止するだけで、チェーンタイトナを適正に位置決めして伝動チェーンに作用させることができ、チェーンタイトナの組み付けが容易なものとなる。
【0017】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記蓋カバーに、ドレンプラグの脱着によって開閉されるドレン孔を設けてあるものである。
【0018】
上記構成によると、植付けケース自体にドレン孔を設けると、ドレン孔の周辺でおいて植付けケースの強度が低下するが、蓋カバーにドレン孔を設けることで植付けケースの強度を確保することができる。
【0019】
第5の発明は、上記第4の発明において、
前記植付けケースに内装したチェーン伝動機構におけるチェーンタイトナの後端を、前記ドレンプラグの先端で支持するよう構成してあるものである。
【0020】
上記構成によると、チェーンタイトナを支持するための専用の部品が不要となり、部品点数の節減および軽量化に有効となる。
【0021】
第6の発明は、上記第1〜5のいずれか一つの発明において、
前記植付けケースにおける後部開口端の外周に、前記蓋カバーを全周に亘って囲繞する突条を備えてあるものである。
【0022】
上記構成によると、植付けケースの後部開口端と蓋カバーとの接合面に液状のシール剤を塗布して蓋カバーをボルト締め連結する場合、ボルトの締め込みによって接合面からはみ出されたシール剤が、蓋カバーを全周に亘って囲繞する突条で堰き止められて外部に流出することが阻止され、はみ出たシール剤によって外観が損なわれることが回避される。また、突条で堰き止められ貯留されたシール剤が固化することでシール性が高められることにもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に、乗用田植機の後部に連結装備される苗植付け装置1の側面が、また、図2にその要部の平面がそれぞれ示されている。この苗植付け装置1は6条植え仕様に構成されたものであって、図外左方の走行機体に備えられた昇降リンク機構2の後端下部にローリング自在に連結されており、6条分のマット状苗を載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台3、この苗のせ台3の下端から1株分づつ苗を切り出して田面Tに植え付けてゆく6組の回転式の植付け機構4、田面Tの植付け箇所を2条分づつ均平化するよう並列配備された3個の整地フロート5、等が備えられている。
【0024】
苗植付け装置1の前側下部にはアルミ材を押し出し成型してなる左右に長い角筒状の植付けフレーム6が装備され、この植付けフレーム6が前記昇降リンク機構2の後端下部にローリング自在に連結されている。植付けフレーム6の左右中間部に、走行機体からの動力を受けるフィードケース7が連結されるとともに、植付けフレーム6の左右中央部と左右両端近くに3個の植付けケース8が後向き片持ち状に連結されている。各植付けケース8の後部には植付け駆動軸9が貫通横架されており、各植付け駆動軸9の左右端に前記植付け機構4が2組づつ装着されている。
【0025】
植付け機構4には、前記植付け駆動軸9の端部に連結固定されて植付け駆動軸9の軸心p周りに一体回転する回転ケース10と、この回転ケース10における両端部の横外側に横軸心q周りに自転可能に軸支された爪ケース11とが備えられており、各爪ケース11には植付け爪12と苗押し出し具13が装備されている。
【0026】
詳細な構造の説明は省略するが、前記回転ケース10が植付け駆動軸9によって前進回転方向(図1において反時計方向)に定速で1回転されるのに連動して、爪ケース11が回転ケース10に内装された図示されない不等速ギヤ伝動機構によって逆方向に不等速で1回転自転され、これによって、植付け爪12が、苗のせ台3下端の苗取出し口と田面とに亘る縦長の先端回動軌跡Sを描いて循環移動するようになっている。植付け爪12が苗のせ台3の下端から切り出し保持した苗を田面に持ち込む時点で苗押し出し具13が爪先側に突出作動して、保持した苗を植付け爪12から分離して地中に押込むように構成されている。
【0027】
植付けケース8の前部下方にはフロート支点軸15が横水平に配備されて、植付けフレーム6の両端に備えたブラケット6aに支持されており、このフロート支点軸15から後方に向けて突設された3組のフロート支持アーム16の後端に、整地フロート5が支点a周りにそれぞれ上下揺動可能に連結支持されている。
【0028】
前記フィードケース7には図外左方の走行機体から取り出された作業用動力が軸伝達され、このフィードケース7に伝達された動力で苗のせ台3が横送り駆動されるとともに、そのストロークエンドごとに苗のせ台3に備えた苗送りベルト17が一定ピッチづつ送り駆動される。フィードケース7の後部から取り出された横軸動力が各植付けケース8の前部に横架支承された入力軸20に伝達されるようになっている。
【0029】
植付けケース8はアルミダイキャストによって前後に長い筒状に一体成型されており、その詳細な構造を図3〜図7に基づいて説明する。
【0030】
植付けケース8の前部に設けられたボス部8aに前記入力軸20が貫通横架されて軸受け支承されるとともに、植付けケース8の後部に設けられたボス部8bに前記植付け駆動軸9が貫通横架されて軸受け支承され、これら入力軸20と植付け駆動軸9とがチェーン伝動機構21で連動連結されている。
【0031】
チェーン伝動機構21には、入力軸20に装着された駆動スプロケット22、植付け駆動軸9に装着された従動スプロケット23、これらに亘って巻回された伝動チェーン24、および、伝動チェーン24の弛みを吸収するチェーンタイトナ25、等が備えられている。植付け駆動軸9が入力軸20に対して2分の1の回転速度で減速駆動されるように、従動スプロケット23が駆動スプロケット22の2倍のピッチ径に設定されている。
【0032】
駆動スプロケット22は入力軸20に対して遊嵌支持されるとともに、トルクリミッタ26を介して入力軸20と連動連結されている。このトルクリミッタ26は、入力軸20にシフト可能にスプライン装着されたクラッチ部材27、このクラッチ部材27を駆動スプロケット22側にスライド付勢するトルクバネ28、および、クラッチ部材27と駆動スプロケット22の対向部位に設けられたカム係合部29、等によって構成されている。通常時には、バネ付勢されたクラッチ部材27がカム係合部29の係合によって駆動スプロケット22と一体化されて、入力20の回転動力がクラッチ部材27を介して駆動スプロケット22に伝達されるが、駆動スプロケット22に作用する負荷トルクがトルクバネ28のバネ圧として規制された設定トルクより大きくなると、カム係合部29において乗り上がりが発生してクラッチ部材27がトルクバネ28に抗して後退変位され、クラッチ部27から駆動スプロケット22への動力伝達が遮断されて、過大な負荷トルクが植付け機構駆動系に働くことが未然に回避される。
【0033】
なお、チェーン伝動機構21の組み付けに際しては、図6に示すように、植付けケース8を、その前端が下向きとなる起立姿勢にした状態で、ケース内に垂らし下げた伝動チェーン24の下端ループ部に駆動スプロケット22を支持し、次に、入力軸20にトルクリミッタ26のクラッチ部材27、トルクバネ28、および、バネ受け座金30を先組みした軸組みアッシを大径側のボス部8aから挿入し、その後、左右のボス部8aに軸受け31、オイルシール32、軸受けシールカバー33、等を装着して入力軸20をシール状態に軸受け支承する。
【0034】
前記従動スプロケット23は植付け駆動軸9に対して遊嵌支持されるとともに、畦際クラッチ35を介して植付け駆動軸9と連動連結されている。畦際クラッチ35は、植付けケース8ごとに2条単位で植付け機構4の作動を停止するものであり、畦際近くで全植付け条数より少ない条数での植付けを行う場合利用される。この畦際クラッチ35は、植付け駆動軸9にシフト可能にスプライン装着されたクラッチ部材36、このクラッチ部材36を従動スプロケット23側にスライド付勢するバネ37、および、クラッチ部材36と従動スプロケット23との対向部位に設けられた爪咬合部38、等によって構成されており、通常の植付け作業状態では、バネ付勢されたクラッチ部材36が爪咬合部38を介して従動スプロケット23と一体化されて、チェーン伝動機構21を介して従動スプロケット23に伝達された回転動力がクラッチ部材36を介して植付け駆動軸9に伝達される。クラッチ部材36をバネ37に抗して後退変位させて爪咬合部38での咬合を解除することで、従動スプロケット23から植付け駆動軸9への動力伝達が遮断され、この植付け駆動軸9で駆動される植付け機構4が休止される。
【0035】
図8に示すように、畦際クラッチ35におけるクラッチ部材36の周部には軸心方向に面する乗上がり傾斜カム36aが備えられており、植付けケース8に前方から貫通装着したクラッチ操作ピン39を、クラッチ入り位置で回転しているクラッチ部材36における乗上がり傾斜カム36aの回動軌跡内に突入させると、一定位置にあるクラッチ操作ピン39と乗上がり傾斜カム36aとの相対回転によるカム作用でクラッチ部材36がバネ37に抗してクラッチ切り方向に強制シフトされ、植付け駆動軸9が所定の回転位相において停止されるようになっている。
【0036】
畦際クラッチ35のクラッチ切り作動によって植付け駆動軸9が停止する回転位相は、回転ケース10の両端に備えられた一対の植付け爪12のそれぞれが田面Tに突入しない位置に相当して設定されている。また、クラッチ部材36と従動スプロケット23とが咬合する回転位相も回転方向一定位置に設定されており、クラッチ操作ピン39を抜き出すクラッチ入り操作がなされても、植付け駆動軸9が一定の回転位相に至ってはじめて爪咬合部38が咬合することになり、各植付けケース8の畦際クラッチ35が全て入れられた全条植え状態では、全部の植え付け機構4が同じタイミングで植え付け作動するようになっている。
【0037】
クラッチ操作ピン39は、植付けケース8上部に横向きの支点b周りに揺動可能に枢支連結されたクラッチ操作アーム40の一端に係合連動されるとともに、クラッチ操作アーム40は支点bに装着したねじりバネ41によってピン引き出し方向(クラッチ入り方向)に揺動付勢されている。クラッチ操作アーム40にはねじりバネを利用した弾性アーム43が装着されており、機体運転部から操作される操作ワイヤ42のインナ端が弾性アーム43の端部に連結されている。操作ワイヤ42を引き操作してクラッチ操作アーム40をねじりバネ41に抗して揺動させることで、クラッチ操作ピン39が突入操作されて畦際クラッチ35が切り操作される。なお、操作ワイヤ42を引き操作したタイミングによっては、クラッチ操作ピン39が乗上がり傾斜カム36aの外周面に接当して乗上がり傾斜カム36aの回動軌跡内に突入できないことがあり、この場合は、弾性アーム43がねじり変形してワイヤストロークを吸収し、乗上がりカム36aの回動軌跡内にクラッチ操作ピン39が突入できる回転位相までクラッチ部材36が回転した時点で、弾性アーム43のねじり復元力でクラッチ操作アーム40が揺動されてクラッチ操作ピン39が突入操作されることになる。
【0038】
図4に示すように、植付けケース8に内装されたチェーン伝動機構21における伝動チェーン24はその下側径路が弛み側径路となっている。この弛み側径路に作用するチェーンタイトナ25は帯状の板バネ材から構成されており、伝動チェーン24に下方から弾圧されるように上向きに凸曲されている。
【0039】
植付けケース8はアルミダイキャストによって前後端が開口された前後に長い筒状に一体成型されたものであり、植付けフレーム6に対する連結部となるケース前端部8cと入力軸20の軸支部位との間に位置させて、植付けケース内を前後に仕切る隔壁8dが一体形成されている。この隔壁8dは、駆動スプロケット22に巻回された伝動チェーン24に近接する部分円弧状に形成されており、この隔壁8dの後方空間がチェーン伝動機構21を収容する伝動用空間Rとなっている。
【0040】
植付けケース8におけるケース前端部8cは前方に向けて開口された中空構造に形成されるとともに、上下の壁面と隔壁8dに連なるリブ8eが形成されて上下および左右への曲げ剛性が高められている。このケース前端部8cは、植付けフレーム6の高さと略同等の高さを有するとともに、大きい横幅を有する前広がり形状に形成され、植付けフレーム6の後面に大きい左右幅をもって安定良く接当されて、その上下左右において貫通ボルト45によって植付けフレーム6に強固に締付け固定されるようになっている。ケース前端部8cの上端辺の左右中央部位には前方に張出す突起8fが一体形成され、この突起8fを植付けフレーム6の上面に係合させることによって、植付けフレーム6に対する植付けケース8の位置決め、および、荷重の支持が行われるようになっている。
【0041】
植付けケース8の後部開口端8gには板金プレス構造の蓋カバー46が接合されて、上下左右のボルト47によって締め付け固定され、チェーン伝動機構21を収容する伝動用空間Rの後端が閉塞されている。チェーン伝動機構21は伝動用空間Rに貯留された潤滑油によってオイルバス潤滑されるものであり、蓋カバー46の上部に設けられた注油孔cから潤滑油の補給、蓋カバー46の下部に設けられたとドレン孔dからの排油が行えるようになっている。なお、注油孔cは樹脂製のキャップ48の脱着によって開閉されるとともに、ドレン孔dはドレンプラブ49の脱着によって開閉されるようになっている。
【0042】
植付けケース8の後部開口端8gの外周には蓋カバー46を全周に亘って囲繞する突条50が形成されている。植付けケース8の後部開口端8gと蓋カバー46との接合面に液状のシール剤を塗布して蓋カバー46をボルト締め連結する場合、ボルト47の締め込みによって接合面からはみ出されたシール剤が突条50で堰き止められて外部に流出することが阻止され、はみ出たシール剤によって外観が損なわれることが回避される。また、突条50で堰き止められ貯留されたシール剤が固化することで接合箇所のシール性が高められることにもなる。
【0043】
図3,図4に示すように、植付けケース8の上端辺が直線状に構成されるのに対して、植付けケース8の底壁は、後方側ほど低い3段の段違い状に形成されて、伝動用空間Rが成型される際の内金型の抜き出しが容易な後方拡がりとなっている。
【0044】
段違い状の底壁に形成された前方の段差eは小さいものであり、ここに後ろ向きに開放された溝状の係止部51が形成されている。この係止部51に前記チェーンタイトナ25の前端を挿入することで、チェーンタイトナ25の前方への位置ずれを阻止することができる。チェーンタイトナ25の後端は鉤形に屈曲され、この後端が前記ドレンプラグ49によって前方に接当押圧されることで、チェーンタイトナ25が山形屈曲状態で伝動チェーン24に下方から押し付けられるようになっている。
【0045】
植付けケース8の後部は大径の従動スプロケット23を収容するために大きい上下幅が必要であり、段違い状の底壁に形成された後方の段差fは大きいものとなり、植付けケース8の下端辺は植付け駆動軸9の近傍において大きく下方に突出する段違い状となっている。このように大きい段差fの前方においては、植付けケース8の下方に高い空間が形成されることになり、前記フロート支持アーム16の後端部、つまり、整地フロート5の支点aが大きい段差fの前方に位置するよう配備することで、整地フロート5の支点aを上下に大きく位置変更して植付け深さ調節範囲を大きく確保することができる。
【0046】
上記植付けケース8は、植付け機構4を支持して駆動する伝動ケースとしの機能のみならず、他の機構や装置を支持する支持フレームとしての機能をも備えており、以下その構成について説明する。
【0047】
各植付けケース8の前部下方には半円形の凹部61が一体形成され、各植付けケース8の凹部52に下方からフロート支点軸15が回動可能に位置決め係入される。
【0048】
各植付けケース8における前後中間の上部横側には、前記苗のせ台3をその傾斜方向に沿って上下移動可能に支持するためのスライドブラケット62がボルト連結されるとともに、上下移動用の操作アーム63の支点軸64を係入保持する支点台65が植付けケース8の上面に一体形成されている。前記苗のせ台3は、その下端部が横長の摺動レール66に左右スライド可能に受け止め支持されるとともに、植付けフレーム6から立設された左右一対の支柱67の上部に苗のせ台3の背面上部が、左右スライド可能かつ苗のせ台傾斜方向に沿って上下移動可能に受け止め支持されている。そして、前記摺動レール66に連結した左右一対の支持金具68から苗のせ台傾斜方向に沿って突設されたスライドロッド69が左右両側の植付けケース8の各スライドブラケット62にそれぞれ貫通支持されており、摺動レール66がスライドロッド69と一体に上下にスライド移動されることで苗のせ台3全体がその傾斜方向に変位するようになっている。
【0049】
前記操作アーム63の先端は摺動レール66の支持金具68に係合されており、支点軸64を図示されていない苗取り量調節レバーによって回動調節して任意の位置に固定保持することで、苗のせ台3がその傾斜方向に移動されて植付け爪12の先端回動軌跡Sと苗のせ台下端部との重複代が変化し、もって、苗取り量が変更されるようになっているのである。
【0050】
各植付けケース12の後半上部には捨てボス70が設けられており、施肥装置や薬剤散布装置などのインプルメント(図示せず)を装着する仕様においては、この捨てボス70を利用してインプルメント支持フレーム(図示せず)をボルト連結することができる。
【0051】
〔他の実施例〕
【0052】
(1)図9に示すように、チェーンタイトナ25を下方から支持する偏心カム71を、植付けケース8の側面に支軸72を介して回動調節可能に取付け、偏心カム71を適当な回動位置に調節してダブルナット73で固定することで、伝動チェーン24の伸びに対応して好適なテンション調節を行うことができる。
【0053】
(2)図10に示すように、チェーンタイトナ25を下方から受け止める支持アーム74を植付けケース8の側面に目盛り付きの調節ノブ75を介して揺動調節可能に取付けることで、植付けケース8ごとにばらつきの少ないテンション調節を行うことができる。
【0054】
(3)上記実施例では、植付けケース8の前後に横架した入力軸20と植付け駆動軸9とを連動連結する伝動手段としてチェーン伝動機構21を利用しているが、ベベルギヤ(図示せず)および植付けケース8に沿って内装された伝動軸(図示せず)を介して連動連結することも可能である。
【0055】
(4)植付け駆動軸9で駆動される植付け機構4としては、上記のように植付け駆動軸9の1回転で2回の植付けを行う回転式の他に、植付け駆動軸9の1回転で1回の植付けを行うクランク式のものを利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】苗植付け装置の側面図
【図2】苗植付け装置の要部平面図
【図3】植付けケースの側面図
【図4】植付けケースの縦断側面図
【図5】植付けケースの横断平面図
【図6】組付け行程の説明図
【図7】植付けケースの後端面図
【図8】畦際クラッチの操作構造を示す縦断背面図
【図9】チェーン緊張構造の別実施例を示す縦断側面図(イ)と縦断正面図(ロ)
【図10】チェーン緊張構造の更に別の実施例を示す側面図
【符号の説明】
【0057】
4 植付け機構
6 植付けフレーム
7 フィードケース
8 植付けケース
8d 隔壁
8g 後部開口端
9 植付け駆動軸
20 入力軸
21 チェーン伝動機構
25 チェーンタイトナ
46 蓋カバー
49 ドレンプラグ
50 突条
51 係止部
d ドレン孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の植付けフレームにフィードケースを連結するとともに、後部に植付け機構を装備した植付けケースの前端部を前記植付けフレームに後向き片持ち状に連結し、フィードケースから取り出された横軸動力を植付けケースの前部に横架した入力軸に伝達し、この入力軸と植付けケースの後部に横架された植付け駆動軸とをケース内の伝動手段を介し連動連結した田植機の苗植付け装置において、
前記植付けケースを一体成型した前後に長い筒状に構成するとともに、植付けケースにおける前記植付けフレームに対する前端連結部と前記入力軸の軸支部位との間に位置させて、植付けケース内を前後に仕切る隔壁を一体形成し、植付けケースの後部開口端を蓋カバーで閉塞するよう構成してあることを特徴とする田植機の苗植付け装置。
【請求項2】
前記植付けケースに内装される伝動手段を、前記植付け駆動軸を減速駆動するチェーン伝動機構で構成し、植付けケースの上端辺を直線状に構成するとともに、植付けケースの下端辺を、植付け駆動軸の近傍において大きく下方に突出する段違い状に構成してある請求項1記載の田植機の苗植付け装置。
【請求項3】
前記植付けケースに内装される伝動手段をチェーン伝動機構で構成し、このチェーン伝動機構における帯板状のチェーンタイトナの前端を、植付けケースの内部に一体形成した係止部に位置決め係止するよう構成してある請求項1または2記載の田植機の苗植付け装置。
【請求項4】
前記蓋カバーに、ドレンプラグの脱着によって開閉されるドレン孔を設けてある請求項1〜3のいずれか一項に記載の田植機の苗植付け装置。
【請求項5】
前記植付けケースに内装したチェーン伝動機構におけるチェーンタイトナの後端を、前記ドレンプラグの先端で支持するよう構成してある請求項4記載の田植機の苗植付け装置。
【請求項6】
前記植付けケースにおける後部開口端の外周に、前記蓋カバーを全周に亘って囲繞する突条を備えてある請求項1〜5のいずれか一項に記載の田植機の苗植付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−82451(P2007−82451A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273809(P2005−273809)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】