説明

田植機

【課題】 均等な植付け作業が可能な田植機に関する。
【解決手段】 フロート3,4に作溝器18を備えた田植機において、作溝器18による溝の壁部の盛り上がりを防止する整地部材36を備えて構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートを備えた田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の田植機においては、例えば特許文献1に開示されているように、田面に溝を形成しながら溝に肥料を供給する作溝器を備えたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−327426号公報(図1及び図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作溝器はフロートで整地された田面の泥を削りながら又は押しのけながら溝を形成する。そのため、田面の泥が比較的硬い場合には、作溝器で形成した溝の壁部に盛り上がりができる場合がある。
通常、田植機においては、作溝器を備えたフロートの後方に苗植付け機構を配置している。そのため、作溝器で形成した溝の壁部に盛り上がりができると、後の工程である稲苗の植付け作業に影響し、均等な稲苗の植付けができないという問題がある。
本発明は、均等な稲苗の植付け作業が可能な田植機を構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、フロートを備えた田植機において次のように構成することにある。
田面に溝を形成しながら溝に肥料を供給する作溝器を前記フロートに備えるとともに、前記作溝器による溝の壁部の盛り上がりを防止する整地部材を備える。
【0006】
(作用)
本発明の第1特徴によると、作溝器による溝の壁部の盛り上がりを防止する整地部材を備えることにより、作溝器による溝の壁部の盛り上がりを防止することができ、均一で盛り上がりの少ない溝を田面に形成することができる。
【0007】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、均一で盛り上がりの少ない溝を田面に形成できるため、稲苗の植付けを均等に行うことができる。そのため、稲苗の植付けが悪いことによる稲苗の植え替え作業を少なくすることができるとともに、風雨などによって稲苗が倒れることを防止できるため、稲苗の植付け作業が効率的になる。
【0008】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のフロートを備えた田植機において次のように構成することにある。
接地部材の機体前後方向に、田面に向かう突条を備える。
【0009】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
田植機の一例である歩行型田植機においては、ぬかるんだ田面を作業者が歩行型田植機の操作ハンドルを持ちながら歩行することによって稲苗の植え付け作業を行う。そのため、作業者が操作ハンドルを握ってぬかるんだ田面を歩行すると、作業者の歩調に伴って、操作ハンドルを左右に引っ張ることが多い。また、従来の歩行型田植機の接地部材、例えばフロート、圃場形成板、覆土板などは凹凸が少なく成形されており田面との抵抗が少ない。そのため、操作ハンドルを左右方向に引っ張れば、歩行型田植機も左右方向に振れる。
【0010】
本発明の第2特徴によれば、接地部材、例えばフロート、圃場形成板、覆土板などの機体前後方向に、田面に向かう突条を備えることにより、機体前後方向に設けた突条が、田植機を左右方向に振れにくくするための抵抗となる。そのため、上述した稲苗の植付け作業における田植機の左右方向の振れを少なくすることができ、田植機の直進性を向上させることができる。このように、田植機の直進性が向上することにより、前項[I]に記載の整地部材も左右方向に振れることなく機能するようになる。
【0011】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、稲苗の植付け作業における田植機の左右方向の振れを少なくすることができ田植機の直進性を向上させることができること、及び、整地部材が左右方向に振れることなく機能することにより、均等な稲苗の植え付けが可能となる。また、田植機の左右方向の振れを少なくできるため、左右方向の振れを気にすることなく稲苗の植付け作業を行うことができ、田植機の左右方向の振れを修正する手間が省けるため、効率的な稲苗の植付け作業が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1,2に示すように、左右一対の駆動自在な走行車輪1、機体前端部に配置したエンジン2を備えた自走機体の後部に、機体横方向に並ぶ4つの苗植付け機構11を備えた苗植え作業部10、左右一対の握り部8aを備えた操縦ハンドル8を設け、苗植え作業部10の機体前方側のエンジン2よりも後方側に予備苗載せ台50を設け、前記自走機体の機体フレーム20の下部に、機体横方向に並んだセンタフロート3、サイドフロート4を支持させて、歩行型田植機を構成してある。なお、この歩行型田植機には、作溝器18を備えた肥料を田面に供給するための施肥装置13を備える。
【0013】
この田植機は、稲苗の植付け作業を行うものであり、左走行車輪1や右走行車輪1を駆動自在に支持する車輪駆動ケース5に連動された昇降シリンダ6を操作すると、この昇降シリンダ6が左右の車輪駆動ケース5を機体フレーム20に対して上下に揺動操作して左右の走行車輪1を機体フレーム20に対して昇降操作することにより、自走機体を各フロート3,4が田面上に接地した下降作業状態と、各フロート3,4が田面上から上昇して離れた上昇非作業状態とに昇降操作する。自走機体を下降作業状態にして走行させると、各フロート3,4が田面の泥面上を滑走して整地していき、苗植え作業部10は、各苗植付け機構11によって苗載せ台12に載置されたマット状苗から一株分のブロック苗を取り出すとともにこのブロック苗をフロート3,4による整地後に植え付けていく。
【0014】
図1,2に示すように、エンジン2の後側近くに位置するミッションケース21、このミッションケース21の下部から機体前方向きに延出しているエンジン搭載フレーム22、前記ミッションケース21の後部から機体後方向きに延出している伝動ケース23、この伝動ケース23の延出端部に下部が連結しているセンタ駆動ケース24、このセンタ駆動ケース24の機体上下方向での中間部の両横側から機体両横外側方に向かって延出している伝動ケース25、前記左右の伝動ケース25それぞれの延出端部に上端部が連結しているサイド駆動ケース26によって、前記機体フレーム20を構成し、前記ミッションケース21の両横側部に前記車輪駆動ケース5の基部を機体横向きの軸芯まわりで回動自在に連結してある。各車輪駆動ケース5は、ミッションケース21に対する所定の取付け角度に前記昇降シリンダ6によって保持されて、走行車輪1を所定の取り付け高さに維持する。
【0015】
操縦ハンドル8は、両端側が機体前後向きになり、中間部が機体横向きになるように屈曲成形した屈曲パイプ材からなり、前記センタ駆動ケース24の下部ケース24aに下端部が連結された左右一対のハンドルフレーム7の上端部に中間部を支持されている。
【0016】
図3に示すように、施肥装置13は中央の2条分に対して肥料を供給する蓋部14Aを備えたセンタホッパー14と左右走行車輪1の横外方に位置して外側の2条に対して夫々肥料を供給する蓋部15Aを備えた左右のサイドホッパー15とを備え、センタホッパー14には2条分の繰出し機構16、及び、流下パイプ17、並びに、作溝器18を設けるとともに、各サイドホッパー15には1条分の繰出し機構16、及び流下パイプ17、並びに、作溝器18を設けて構成されている。
【0017】
左右の施肥装置13は、前端をミッションケース21に固着し後端をサイドケース26に固定した支持部材28から立設された支持フレーム29に固定されており(図1参照)、一方、中央の施肥装置13は、伝動ケース23から立設したフレーム30に固定してある。
【0018】
図4に示すように、繰出し機構16はそのケース16A内に肥料を繰出す繰出しロータ(図示せず)が設けられ、この繰出しロータを回動駆動するロータ軸31がケース16Aから機体後方に向けて延出されている。サイドホッパー15側ロータ軸31には三角形状の駆動部材32が固着されるとともに、サイド側苗植付機構11の揺動アーム(図示せず)から駆動部材32に連結ロッド33が立設されている。また、センタホッパー14側の2本のロータ軸31には同様に三角形状の駆動部材32が固着されるとともに、両駆動部材32が1本の横向きロッド34で一体的に連結され、かつ、前記一方の駆動部材32に対して対応する中央側苗植付け機構11の揺動アームから連結ロッド33が立設されている。以上の構成からロータ軸31は揺動アームの往復揺動運動に従って、一定角度で正逆駆動され、肥料を繰り出すように構成してある。
【0019】
図2及び図3に示すように、センタフロート3及びサイドフロート4には、作溝器18及び後述する整地部材36を備える。センタフロート3を例にとって詳説すると、図5(イ)及び(ロ)に示すように、センタフロート3には複数の取付穴39を備え、作溝器18が取付ブラケット41を介して取り付けられている。複数の取付穴39を設けたのは、作溝器18及び整地部材36の左右方向の取付位置の変更を簡易に行うためである。それぞれの作溝器18の側部のやや前方には整地部材36を備える。整地部材36は田面から作溝器18の側面に亘ってL字状に折り曲げ成形されており、2本の取付ボルト37で固着されている。整地部材36はセンタフロート3の取付穴39にナット38を用いて固定してある。
【0020】
このように、作溝器18の側部で作溝器18のやや前方に整地部材36を備えることによって、作溝器18によって田面に溝を形成する直前に、予め田面が盛り上がると予測される位置の泥土を整地部材36によって、削っておくか又は押しのけておくか又は押し付けておくことができる。
【0021】
図6(イ)は作溝器18に整地部材36を備えない場合の作溝器18通過後の田面51の様子を表した図である。従来の整地部材36を備えない作溝器18の場合、図6(イ)に示すように、田面51の泥が比較的硬い場合には、作溝器18により作成した溝の側部に盛り上がり部52が生じていた。そのため、後に稲苗を植え付けると上述した盛り上がり部52の影響を受けて図6(イ)に示すように苗が斜めに倒れ、均等な稲苗の植付けができない状態であった。
【0022】
一方、図6(ロ)は作溝器18に整地部材36を備えた場合の作溝器18通過後の田面51の様子を表した図である。作溝器18に整地部材36を備えると、作溝器18が通過する前に予め整地部材36で田面51を削っておくか又は押しのけておくか又は押し付けておくことにより、その後、作溝器18が通過しても上述した図6(イ)の場合と異なり、盛り上がり部52ができにくい。そのため、田面を水平に保つことができ、均等な稲苗の植付けが可能である。
【0023】
図1、図2及び図3に示すように、接地部材の一例であるサイドフロート4の底面の側部には機体の前後方向に突条40を設け、田植機の直進性を向上させている。サイドフロート4の外側の側部に突条40を設けたのは、操作ハンドル8に対して突条40を機体左右方向での外側に位置させることによって、機体左右方向の振れを防止するための抵抗力を効果的に作用させることできるからである。すなわち、田植機の重心に対し、遠い位置に突条40を設けることにより、田植機の重心回りのモーメント、つまり左右方向の抵抗力を大きくすることができる。
【0024】
図11に示すように、この田植機の走行車輪1は、鉄パイプ製の外輪42、複数のラグ43、軸受部47に外輪42を固定するための支持棒46、及び外輪42の内側に固着された直進板44などにより構成されている。外輪42を鉄パイプで構成することにより、路上走行においてガタガタせず、無理なく走行することができるとともに、通常の走行車輪1より、多くのラグ43を設けることによって、田植機の牽引力を向上させることができる。これは、路上走行時に振動が多いという問題点と田植機の予備苗のせ台50に多くの予備苗を搭載した場合に従来の走行車輪1では牽引力が不足するという問題点を解消するためである。また、外輪42の内側に直進板44を固着することにより、田植機の直進性を向上させることができる。
【0025】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、田植機の一例として歩行型田植機を示したが、乗用型田植機の場合にも同様に適用できる。
【0026】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、L字状に折り曲げ成形した整地部材36を作溝器18の側部に設けた例を示したが、図7(イ)及び(ロ)に示すように、前述した折り曲げ材に限らず、角材等を加工したものでもよく、また、図7(ハ)及び(ニ)に示すように、センタフロート3及びサイドフロート4の底面に整地部材36を一体成形してもよい。角材などの断面形状の大きい整地部材36を設ければ、田面の泥土を効率的に押しのけることができ、整地部材36をフロート3,4に一体成形すれば部品点数を削減することができコスト削減が図れる。また、整地部材36を作溝器18よりも後側(図5(イ)紙面下側)に設けてもよい。
【0027】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、接地部材の一例としてサイドフロート4の外側の側部で機体前後方向に突条40を設けた例を示したが、図8及び図9に示すようにサイドフロート4の底面の両側部に突条40を設けても良く、また、センタフロート3の底面の両側部に突条40を設けても良い。複数の突条40をサイドフロート4に設ければ田植機の直進性を更に向上させることができる。
【0028】
図10(イ)及び(ロ)に示すように、サイドフロート4に設ける突条40の左右方向の位置は特に問わず、図10(イ)に示すようにサイドフロート4の内側に設けてもよく、図10(ロ)に示すようにセンタフロート3の内側にも設けてもよい。なお、突条40はサイドフロート4と一体成形してもよく、ボルト等の締結部材で着脱式にしてもよい。一体成形とすれば、低コストで製作することができ、また、着脱式にすれば田面の状況に応じて様々な突条40を取り替えることができる。
【0029】
上述したように、接地部材の一例としてフロート3,4の機体前後方向に田面に向う突条40を設けた例を示したが、他の接地部材、例えば、圃場形成板、覆土板などの機体前後方向に、田面に向う突条40を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】田植機の全体平面図
【図3】施肥装置の構造を示す縦断正面図
【図4】施肥装置の構造を示す横断平面図
【図5】作溝器付近の要部詳細図
【図6】田面の状態を示す断面図
【図7】発明の実施の第2別形態における作溝器付近の要部詳細図
【図8】発明の実施の第3別形態におけるフロートの突条を示す底面図
【図9】発明の実施の第3別形態におけるフロートの突条を示す縦断背面図
【図10】発明の実施の第3別形態におけるフロートの突条を示す縦断背面図
【図11】田植機の車輪構造を示す要部詳細図
【符号の説明】
【0031】
3 センタフロート
4 サイドフロート
18 作溝器
36 整地部材
40 突条
51 田面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートを備えた田植機であって、
田面に溝を形成しながら溝に肥料を供給する作溝器を前記フロートに備え、
前記作溝器による溝の壁部の盛り上がりを防止する整地部材を備えた田植機。
【請求項2】
接地部材の機体前後方向に、田面に向かう突条を備えた請求項1記載の田植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−267642(P2007−267642A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95415(P2006−95415)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】