説明

田植機

【課題】 走行機体から後方に延出された昇降リンク機構の後端に、苗植付け装置をローリング可能に連結するとともに、走行機体から取り出された動力が入力されるフィードケース、および、植付け機構を備えた植付けケースを、苗植付け装置に備えた横長の植付けフレームに連結するよう構成した田植機おいて、フィードケースを各種仕様の苗植付け装置に共用可能に構成することでコスト低減を図る。
【解決手段】 昇降リンク機構5にローリング可能に連結するローリング支点構造体30と、フィードケース18とを別体に構成して、それぞれを植付けフレーム19に連結してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体から後方に延出された昇降リンク機構の後端に、苗植付け装置をローリング可能に連結した田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記田植機としては、例えば、特許文献1に開示されているように、走行機体から後方に延出された昇降リンク機構の後端に、苗植付け装置をローリング可能に連結するとともに、走行機体から取り出された動力が入力されるフィードケース、および、植付け機構を備えた植付けケースを、苗植付け装置に備えた横長の植付けフレームに連結するよう構成したものが知られており、この例では、植付けケースに連結支持されるフィードケースにローリング支点ボスを一体形成する構造となっていた。
【特許文献1】特開平10−323105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
昇降リンク機構の後端に連結される苗植付け装置には各種の植付け条数(4条〜10条)の仕様のものがあり、その植付け条数によって植付けフレームに対する植付けケースの連結位置が異なったものとなる。4条及び8条などの偶数条植え仕様では、偶数本の植付けケースを苗植付け装置の中心に対して左右対称に振り分け配置し、各植付けケースの左右両側に2条分の植付け機構を装着する。これに対して、5条植え仕様では3個の植付けケースを用い、中央の植付けケースには1条分の植付け機構のみを装着するとともに、その1条の植付け機構が苗植付け装置の左右中心に位置するように中央の植付けケースを配置し、かつ、左右の各植付けケースには2条分の植付け機構を装着して左右に振り分け配置することになる。
【0004】
従って、2個の植付けケースを並列配備する4条植え仕様、および、4個の植付けケースを並列配備する8条植え仕様では、植付けフレームの中央部位に植付けケースが連結されることがないので、この中央部位付近にフィードケースを配置して植付けフレームに連結することになる。これに対して、3個の植付けケースを並列配備する5条植え仕様では、中央の植付けケースが植付けフレームの左右中央位置から少しだけ横方向に偏った位置に配置され、また、3個の植付けケースを並列配備する5条植え仕様および5個の植付けケースを並列配備する10条植え仕様では、中央の植付けケースが植付けフレームの左右中央位置に配置される。ここで、ローリング支点は苗植付け装置の左右中心に設けることになるので、植付け条数によってローリング支点に対するフィードケースの横方向位置が異なったものとなる。
【0005】
例えば図11に示すように、苗植付け装置の左右中心に植え付けケース20が配備される6条植え仕様や10条植え仕様において、昇降リンク機構5の後端に備えられたローリング支点軸40に連結される支持点ボス部18aをフィードケース18に一体化して植付けフレーム19に連結することや、例えば図12に示すように、フィードケース18にローリング支点軸40の支持ボス部18aを一体形成するとともに中央の植付けケース20までも一体化して植付けフレーム19に連結することも考えられている。
【0006】
しかし、図11及び図12の構成によると、植付け条数が異なる仕様ごとにフィードケース18の形状が異なることになり、フィードケース18をダイキャスト成形する金型の種類が増えることでコスト高になる。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、フィードケースを各種仕様の苗植付け装置に共用可能に構成することでコスト低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行機体から後方に延出された昇降リンク機構の後端に、苗植付け装置をローリング可能に連結するとともに、前記走行機体から取り出された動力が入力されるフィードケース、および、植付け機構を備えた植付けケースを、苗植付け装置に備えた横長の植付けフレームに連結するよう構成した田植機おいて、
前記昇降リンク機構にローリング可能に連結するローリング支点構造体と前記フィードケースとを別体に構成して、それぞれを前記植付けフレームに連結してあることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、ローリング支点構造体を植付けケースの左右中心部位に配置して植付けフレームに連結した上で、フィードケースを植付け条数に対応して横方向任意の位置で植付けフレームに連結することができる。この場合、ローリング支点構造体を別体とすることでコストアップとなるが、高価な金型を共用化することによるコスト低減が有効となり、全体としては安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に施肥装置付き田植機の全体側面が示されている。この田植機は、操向可能な前輪1および操向不能な後輪2を備えて4輪駆動で走行する走行機体3の後部に、油圧シリンダ4によって駆動される平行四連リンク構造の昇降リンク機構5が装備され、この昇降リンク機構5の後端下部に6条植え仕様に構成された苗植付け装置6がローリング支点P周りにローリング可能に連結された基本構造を備えている。走行機体3の後部に施肥装置7が備えられるとともに、走行機体3の前部左右には予備苗を3枚づつ収容する予備苗のせ台8が立設配備されている。
【0011】
前記走行機体3の前部にはエンジン9が搭載され、その出力が前後進の切り換えが可能な静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置10に伝達され、その変速出力がミッションケース11に入力されて走行系と作業系に分岐される。走行系の動力は図示されない副変速装置でギヤ変速された後、ミッションケース11に装備された前輪1に伝達されるとともに、後部伝動ケース12に装備された後輪2に伝達されるようになっている。分岐された作業系の動力はミッションケース11に内装された図示されない株間変速装置で複数段にギヤ変速された後、機体後方に向けて取り出され、伸縮伝動軸13を介して苗植付け装置6に伝達されるようになっている。
【0012】
図2,3に示すように、前記苗植付け装置6は、6条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台15、苗のせ台15の下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく6組の回転式の植付け機構16、植付け箇所を整地する3個の整地フロート17、ミッションケース11から取り出された作業用動力が入力されるフィードケース18、横長角筒状の植付けフレーム19、等を備えて構成されている。植付けフレーム19の左右中間部位に前記フィードケース18が連結されるとともに、植付けフレーム19の中央および左右箇所に後向き片持ち状に連結した3つの植付けケース20の後部に、植付け機構16が左右2組づつ装備されている。植付けフレーム19の左右中心位置には、フィードケース18とは別体に構成されたローリング支点構造体30が連結されて、アッパリンク5a、ロアリンク5b、および、後部縦リンク5cからなる前記昇降リンク機構5の後端下部に、ローリング支点構造体30が連結されている。
【0013】
図4〜図6に示すように、このローリング支点構造体30は、植付けフレーム19の左右中心位置の上面に搭載されてボルト連結されるものであり、植付けフレーム19への連結用として横方向に幅広く形成された連結座30aと、昇降リンク機構5における後部縦リンク5cから後向きに突設された支点軸40に回動可能に外嵌されるボス部30bを備えている。
【0014】
図4,5に示すように、前記フィードケース18の左右からは、苗のせ台15を往復横送りするネジ軸21と、苗のせ台15に装備した苗送りベルト22を横送りストロークエンド到達ごとに送り作動させる苗送り軸23とが突設されるとともに、植付け機構駆動用の出力軸24が横架装備され、この出力軸24と各植付けケース20の基部に備えられた入力軸25とが、筒軸からなる伝動軸26を介して同芯に連結されている。各植付けケース20において、前記入力軸25とケース後部に貫通支承した植付け駆動軸27とがチェーン連動されている。植付け駆動軸27には任意に入り切り操作可能な畦際クラッチ29が装備されて、6条の植付け機構16うちの一部を2条単位で休止して4条植えあるいは2条植えなどの少数条植えが行えるようになっている。そして、上記のように構成されたフィードケース18は、中央の植付けケース20から横方向(この例では左側)に外れた適所において植付けフレーム19に連結されている。
【0015】
前記施肥装置7は、運転座席14と苗植付け装置6との間において走行機体3上に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー31、この肥料ホッパー31内の肥料を所定量づつ繰り出す繰出し機構32、繰り出された肥料を供給ホース33を介して苗植付装置6の各整地フロート17に左右一対づつ備えた作溝器34に風力搬送する電動ブロワ35、などを備えており、植付け苗の横側近傍において作溝器34で田面に形成した施肥溝に肥料を送込んで埋設してゆくよう構成されている。
【0016】
〔他の実施例〕
【0017】
(1)図9に、5条植え仕様に構成された苗植付け装置6の要部が示されている。この5条植え仕様においても、3つの植付けケース20が植付けフレーム19に並列連結されるが、この場合、中央の植付けケース20には中央の植付けを行う1組の植付け機構16だけが装備されている。フィードケース18は植付けフレーム19の左右中心近くに連結されることになる。
【0018】
(2)図10に、4条植え仕様に構成された苗植付け装置6の要部が示されている。4条植え仕様においては、2つの植付けケース20が植付けフレーム19に左右振り分けて連結されるが、この場合、フィードケース18およびローリング支点構造体30の連結は上記5条植え仕様と同様になる。
【0019】
(3)8条植え仕様に構成された苗植付け装置6では、上記4条植え仕様の形態で、さらにその横外側にそれぞれ1つずつ植付けケース20を追加配備することになる。
【0020】
(4)10条植え仕様に構成された苗植付け装置6では、上記6条植え仕様の形態で、さらにその横外側にそれぞれ1つずつ植付けケース20を追加配備することになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】機体後部の平面図
【図3】苗植付け装置の側面図
【図4】6条植え仕様の苗植付け装置における駆動構造の全体を示す平面図
【図5】苗植付け装置における駆動構造の要部を示す横断平面図
【図6】ローリング支点構造を示す縦断側面図
【図7】フィードケ−ス連結構造を示す側面図
【図8】ローリング支点構造とフィードケ−ス連結構造と植付けケース連結構造を示す分解側面図
【図9】5条植え仕様の苗植付け装置における駆動構造の全体を示す平面図
【図10】4条植え仕様の苗植付け装置における駆動構造の全体を示す平面図
【図11】比較構造例の平面図
【図12】他の比較構造例の平面図
【符号の説明】
【0022】
3 走行機体
5 昇降リンク機構
6 苗植付け装置
16 植付け機構
18 フィードケース
19 植付けフレーム
20 植付けケース
30 ローリング支点構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体から後方に延出された昇降リンク機構の後端に、苗植付け装置をローリング可能に連結するとともに、前記走行機体から取り出された動力が入力されるフィードケース、および、植付け機構を備えた植付けケースを、苗植付け装置に備えた横長の植付けフレームに連結するよう構成した田植機おいて、
前記昇降リンク機構にローリング可能に連結するローリング支点構造体と前記フィードケースとを別体に構成して、それぞれを前記植付けフレームに連結してあることを特徴とする田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−28981(P2007−28981A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216173(P2005−216173)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】