説明

田植機

【課題】圃場面の整地装置を各フロートの前方に配置する田植機において、回動支点位置の異なる各フロートを同じ上下変位量をもって、植付け深さの調整をおこなうための技術を提供することが課題である。
【解決手段】植付部3の植付フレーム体を用いてセンターフロート31およびサイドフロート32を揺動自在に支持する田植機1において、センターフロート31とサイドフロート32の前端位置を前後方向で略同一位置に配置し、前記各フロート31・32と植付フレーム体を操作アーム体(連結機構48)で連接するとともに、前記センターフロート31の連結機構48を第一操作アーム(支持アーム35)と第二操作アーム(連結アーム45)とで構成し、支持アーム35の前部は植付フレーム体(フロート支持体33)に連接し、後部は連結アーム45の前部と回動自在に枢支し、連結アーム45の後部で前記センターフロート31を揺動自在に支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整地装置を植付部のフロートと後輪の間に配置する田植機において、左右方向に複数配置するフロートを同じ上下変位量をもって、植付け深さの調整を可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機体後部に植付部を装着し、該植付部を昇降自在に配設される田植機は周知となっている(例えば特許文献1)。前記植付部の下部には、その左右中央部にセンサーフロート(センターフロート)が、また、該センターフロートの左右両側にはサイドフロートが各々配置されており、前記各フロートは、植付伝動フレームより下後方に延設したフロート支持アームによって、揺動自在に連結されている。
前記センターフロートにおいては、その前端部がワイヤ等を介して植付部の昇降制御をおこなう昇降制御装置と連繋されており、サイドフロートに比べ、その分、全長が長く形成されている。
【特許文献1】特開2002−335721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、圃場面の整地装置をフロートと後輪の間に配設する構成とすると、該整地装置が配置される空間分だけ、各フロートを後方に移動しての配置する必要がある。その結果、全長が長くなり、旋回半径が大きくなり、圃場端での切り返し操作が増加するという不具合が生じる。
そこで、本発明においては、圃場面の整地装置を各フロートの前方に配置する田植機において、回動支点位置の異なる各フロートを同じ上下変位量をもって、植付け深さの調整をおこなうための技術を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、植付部の植付フレーム体を用いてセンターフロートおよびサイドフロートを揺動自在に支持する田植機において、センターフロートとサイドフロートの前端位置を前後方向で略同一位置に配置し、前記各フロートと植付フレーム体を操作アーム体で連接するとともに、前記センターフロートの操作アーム体を第一操作アームと第二操作アームとで構成し、第一操作アームの前部は植付フレーム体に連接し、後部は第二操作アームの前部と回動自在に枢支し、第二操作アームの後部で前記センターフロートを揺動自在に支持したものである。
【0006】
請求項2においては、前記第二操作アームは、前記第一操作アーム後部との枢支部、および、前記センターフロートとの支持部、とは別の個所に回動支持部を設け、該回動支持部は前記植付フレーム体を構成する植付フレームに設ける支持軸に支承したものである。
【0007】
請求項3においては、前記第一操作アームの後部と、前記第二操作アームの前部との枢支部において、該第二操作アームの前部に複数の連結孔を設けることで、前記枢支部の位置変更を自在にしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、植付部の植付フレーム体を用いてセンターフロートおよびサイドフロートを揺動自在に支持する田植機において、センターフロートとサイドフロートの前端位置を前後方向で略同一位置に配置し、前記各フロートと植付フレーム体を操作アーム体で連接するとともに、前記センターフロートの操作アーム体を第一操作アームと第二操作アームとで構成し、第一操作アームの前部は植付フレーム体に連接し、後部は第二操作アームの前部と回動自在に枢支し、第二操作アームの後部で前記センターフロートを揺動自在に支持したことにより、センターフロートの全長を確保したまま、センターフロートと、サイドフロートとの上下変位量を等しくすることができ、左右中央における植付深さ等を各条において均一にすることができる。
【0010】
請求項2においては、前記第二操作アームは、前記第一操作アーム後部との枢支部、および、前記センターフロートとの支持部、とは別の個所に回動支持部を設け、該回動支持部は前記植付フレーム体を構成する植付フレームに設ける支持軸に支承したことにより、請求項1の場合と同様、センターフロートの全長を確保したまま、センターフロートと、サイドフロートとの上下変位量を等しくすることができ、左右中央における植付深さ等を各条において均一にすることができる。
【0011】
請求項3においては、前記第一操作アームの後部と、前記第二操作アームの前部との枢支部において、該第二操作アームの前部に複数の連結孔を設けることで、前記枢支部の位置変更を自在にでき、圃場条件等からセンターフロート部の植付深さが揃わない場合などには、フロート位置を容易に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施例に係る田植機の全体構成を示す側面図、図2はセンターフロートの全体構成を示す斜視図、図3はセンターフロートの前部付近の構成を示す斜視図、図4は同じく側面図、図5は同じく正面図、図6はセンターフロートの後部付近の構成を示す斜視図、図7は連結アーム下側の連結部の構成を示す側面図、図8はセンターフロートとサイドフロートとの配置関係を示す底面図、図9はセンターフロートの揺動支持位置とサイドフロートの揺動支持位置との配置関係を示す側面図である。
【0014】
まず、本発明の一実施例に係る田植機1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では図中に示す矢印Aの方向を前方向とする。
【0015】
図1に示すように、田植機1は走行部2と植付部3とを備え、該植付部3を走行部2の後部に昇降機構4により昇降可能に連結して構成されている。走行部2では、機体フレーム5の前部に設けられたボンネット7内にエンジンが搭載され、その後下方に走行用ミッション8が配設されている。
【0016】
走行用ミッション8の下方にはフロントアクスルケースが配設されて、該フロントアクスルケースの左右両側にそれぞれ前車輪10が取り付けられている。また、機体フレーム5の後部にリアアクスルケース11が設けられて、該リアアクスルケース11の左右両側にそれぞれ後車輪12が取り付けられている。
【0017】
そして、エンジンと走行用ミッション8とが伝動ベルトを介して連動連結され、さらに走行用ミッション8と前車輪10とがフロントアクスルケース内の動力伝達機構を介して連動連結されるとともに、該走行用ミッション8と後車輪12とが伝動シャフト13やリアアクスルケース11内の動力伝達機構を介して連動連結されている。
【0018】
こうして、エンジンの動力が走行用ミッション8に伝達され、次いで走行用ミッション8で変速された動力が前車輪10と後車輪12とにそれぞれ伝達されて、これらの前車輪10および後車輪12が駆動されるように構成されている。これにより、走行部2が前進または後進走行可能とされている。
【0019】
また、走行部2では、機体フレーム5の前後中央部に運転操作部15が配置されている。この運転操作部15では、前部に走行部2の操向操作を行うためのステアリングハンドル16や、走行部2の変速操作を行うための変速ペダルなどが設けられる一方、後部に座席17が設けられて、走行部2または植付部3に対して各種操作が可能とされている。
【0020】
植付部3では、植付フレーム体が植付フレーム21や植付用ミッション22や伝動軸ケース23や植付伝動ケース25などから構成されて、走行部2の後方に植付フレーム21が配設され、該植付フレーム21の中央下部に植付用ミッション22が設けられている。この植付用ミッション22から伝動軸ケース23(図6参照)が左右方向に延設され、該伝動軸ケース23から複数の植付伝動ケース25が適宜間隔をとって後方へ延設されている。植付伝動ケース25の後部にロータリケース27を介して植付爪28が設けられている。
【0021】
そして、植付用ミッション22と各植付伝動ケース25の植付爪28とが伝動軸ケース23や植付伝動ケース25内の動力伝達機構を介して連動連結されて、走行部2のエンジンからPTO軸などを介して植付用ミッション22に伝達された動力が、該植付用ミッション22から植付爪28に伝達されて、該植付爪28が駆動されるように構成されている。
【0022】
植付伝動ケース25の上方には苗載台29が配置されて、植付フレーム21の後部に左右往復動可能に取り付けられている。こうして、苗載台29が適宜の位置に左右方向に移動された後、植付爪28により当該苗載台29上に載置された苗マットから苗株が切削されて、圃場に植え付けられるようになっている。
【0023】
また、植付伝動ケース25の下方にはフロート装置が設けられている。フロート装置では、センターフロート31とサイドフロート32・32とが備えられ、センサーフロートとなるセンターフロート31が左右中央に位置し、サイドフロート32・32が当該センターフロート31の左右両側に位置するように配置されている。これらのセンターフロート31とサイドフロート32・32とは各々の後部で伝動軸ケース23と平行に左右方向に延設されたフロート支持体33(図6参照)にこれから後方へ延設されたセンターフロート支持アーム35(図6参照)を介して上下方向に揺動可能に支持されている。
【0024】
走行部2と植付部3との間には、昇降機構4が設けられている。昇降機構4ではリアアクスルケース11に立設された支持フレーム41と植付フレーム21の前下部に左右揺動自在に連結された支持ブラケットとの間にトップリンク42とロワリンク43とが架設され、該ロワリンク43の前部と走行部2との間に昇降用シリンダ44が連結されている。この昇降用シリンダ44が伸縮作動することによって、トップリンク42とロワリンク43とを介して植付部3が走行部2に対して昇降するように構成されている。
【0025】
ここで、昇降用シリンダ44は図示しない油圧駆動部の油圧バルブを切り換えることにより伸縮作動する構成とされている。そしてこの油圧バルブと植付部3のセンターフロート31の前端部との間に連動ワイヤ46が介設されて、該連動ワイヤ46(図2参照)によりセンターフロート31の揺動に連動して油圧バルブが作動され、昇降用シリンダ44を伸縮作動されるようになっている。これにより、センターフロート31で感知した圃場の植付面の高さに応じて植付部3を適宜昇降させて、苗の植付深さを一定に保持することができるようになっている。
【0026】
また、後車輪12とフロート31・32との間における昇降機構4の下方に整地装置51が設けられている。整地装置51は、植付部3のセンターフロート31やサイドフロート32の前方に整地ローラ52が左右方向に設けられ、該整地ローラ52(図8参照)と走行部2のリアアクスルケース11に取り付けた伝動ケース53内の伝動機構とが整地伝動シャフトなどを介して連動連結されている。こうして、リアアクスルケース11に伝達された動力が伝動ケース53を介して整地ローラ52に伝達されて、該整地ローラ52が回転駆動されるように構成されている。これにより、整地装置51で植付前に整地が行われるようになっている。
【0027】
次に、植付部3に備えたセンターフロート31の構成について説明する。
【0028】
センターフロート31は、その前端位置がサイドフロート32の前端位置と前後方向で略同一位置となるように配置されて、図2に示すように、後端部でフロート支持体33にセンターフロート支持アーム35を介して支持され、前端部でフロート支持体33および伝動軸ケース23にリンク機構70を介して支持されている。このフロート支持体33は伝動軸ケース23の後下方で当該伝動軸ケース23と平行に左右方向に延設されて、その左右両側部および中央部で伝動軸ケース23に連結されている。
【0029】
センターフロート31の後部では、該センターフロート31の後部上面に固設されたブラケット38が、フロート支持体33から後下方へ延設されるセンターフロート支持アーム35の後端部に連結アーム45を介して枢支ピン59で枢支されている。こうして、センターフロート31が枢支ピン59を支点として上下方向に揺動可能に支持され、その前端部を圃場の植付面の形状に応じて上下動させることができるようになっている。
【0030】
一方、センターフロート31の前端部では、該センターフロート31の前端上面に固設されたブラケット62が、フロート支持体33および伝動軸ケース23に支持された支持アーム61とリンク機構70を介して連動連結されている。こうして、センターフロート31が後端部の枢支ピン59を支点として上下方向に揺動する際に、その前端部を上下動させつつ支持することができるようになっている。
【0031】
以下、センターフロート31の前端部付近の構成について詳細に説明する。
【0032】
図3、図4、図5に示すように、前記支持アーム61は前後方向に延伸する左右一対の板体61a・61aを長手方向前側(一側)で連結片61bにより連結して、後方に向かって開口する平面視コ字形状に構成されている。そして、側面視で前端部から後方へ延出された後、斜め下方へと延出され、さらに後方へ延出されるようにして前部水平部が上側に、後部水平部が下側に位置するように略クランク状に形成されている。
【0033】
支持アーム61の後部では、左右の板体61a・61aの外側にフロート支持体33から前方に突設されたブラケット63が配置されて、各板体61a・61aとブラケット63との互いの重複部に挿通孔が設けられている。この支持アーム61の挿通孔61cと、ブラケット63の挿通孔とには枢支ピン64が左右方向に挿通されて、該枢支ピン64で支持アーム61がブラケット63に枢支されている。
【0034】
さらに、前記枢支ピン64による枢支点の前方で、左右の板体61a・61aの間に伝動軸ケース23から下方に突設されたブラケット65が配置されて、各板体61a・61aとブラケット65との互いの重複部分に挿通孔が設けられている。この支持アーム61の挿通孔61dと、該ブラケット65の挿通孔とには枢支ピン66が左右方向に挿通されて、該枢支ピン66で支持アーム61がブラケット65に枢支されている。
【0035】
こうして、支持アーム61がその後部でフロート支持体33と伝動軸ケース23とに支持されている。そしてこの支持アーム61後部の前記枢支ピン66による枢支点の前方で、左右の板体61a・61aに当該支持アーム61とセンターフロート31との間に位置するリンク機構70の上リンク71が回動自在に支持されている。
【0036】
リンク機構70は相互に上下回転可能に連結する複数のリンク体からなり、本実施例では上リンク71と下リンク72とを備えて構成されている。上リンク71は略コ字形状の板体で構成されており、正面視で上方へ向かって開口し、前下方向に傾斜して延伸するように配設されている。そして、その左側の後部に上方へ突出する突出部71aを有して、側面視で略L字状に形成されている。
【0037】
上リンク71の後側では、前記左側後部の突出部71aが支持アーム61の左右の板体61a・61aの間に配置され、右側後部が支持アーム61の右側板体61aの外側に配置されて、該上リンク71と支持アーム61との重複部に挿通孔が設けられている。この上リンク71の挿通孔71bと、支持アーム61の挿通孔61eとには枢支ピン73が左右方向に挿通されて、該枢支ピン73で上リンク71が支持アーム61に回動可能に枢支されている。
【0038】
下リンク72は略コ字形状の板体で構成されており、正面視で上方に向かって開口し、上下方向に延伸するように配設されている。そして、その上部に後方へ向かって略直角に屈曲する屈曲部72aを備えて、側面視で略L字状に形成されている。
【0039】
下リンク72の上側(上リンク71の前側)では、左側屈曲部72aが上リンク71の左右両側前部の間に配置され、右側屈曲部72aが上リンク71の右側前部の外側に配置されて、該下リンク72と上リンク71との互いの重複部に挿通孔が設けられている。この下リンク72の挿通孔72bと、上リンクの挿通孔71cとには枢支ピン74が左右方向に挿通されて、該枢支ピン74で下リンク72が上リンク71に回動可能に枢支されている。
【0040】
ここで、下リンク72の左側屈曲部72aと対向する上リンク71の前部には、後方へ向かって凹む凹部71dが形成されて、該凹部71dに下リンク72の左側屈曲部72aが移動して当該上リンク71に当接可能とされている。つまり、下リンク72が上リンク71に対して所定範囲で干渉することなく回動できるように構成されるとともに、この所定回動範囲を超えて回動すると当該上リンク71に当接して上昇し過ぎないように構成されている。これにより、センターフロート31前端部の最上昇位置が規定され、その上昇時に他の部材と接触して破損することが防止されている。
【0041】
下リンク72の下側では、センターフロート31の前端上部に固設されたブラケット62が下リンク72の左右両側下部の外側に配置されて、該ブラケット62と下リンク72との互いの重複部に挿通孔が設けられている。このブラケット62の挿通孔62aと、下リンク72の挿通孔72cとには枢支ピン75が左右方向に挿通されて、該枢支ピン75でブラケット62が下リンク72に回動可能に枢支されている。
【0042】
こうして、リンク機構70が上リンク71と下リンク72とで構成されて、支持アーム61の後部とセンターフロート31の前端部との間に設けられ、該センターフロート31を揺動可能に支持するようになっている。そしてこのリンク機構70のリンク体のうち、上リンク71に前記昇降機構4の油圧駆動部の油圧バルブから後方向に延設される連動ワイヤ46の後端部が連結されて、該連動ワイヤ46が上リンク71の回動により前後方向に押し引きされるように構成されている。
【0043】
すなわち、連動ワイヤ46はアウターワイヤ46aと、該アウターワイヤ46a中に挿通したインナーワイヤ46bとから構成されており、アウターワイヤ46aの後端部が支持アーム61前端部の連結片61bに支持され、ここからインナーワイヤ46bが左右の板体61a・61aの間を通って後方へ延出されて、その後端部が緩衝バネ78を介して上リンク71の突出部71aの上端に係合ピン79で連結されている。
【0044】
また、連動ワイヤ46は支持アーム61の前端部に支持された後、そのまま直線的に前方に向かって配置され、前記昇降機構4の油圧駆動部の油圧バルブと連結されており、従来のように上下方向に配置される場合と違って、垂直方向から一旦、水平方向へ屈曲させる必要も無く、屈曲部におけるアウターワイヤ46a,および、インナーワイヤ46b間の摺動抵抗が発生することはない。
【0045】
このように構成することにより、センターフロート31の上下方向の揺動時において、該センターフロート31の前端部が上動した場合、下リンク72が枢支ピン75を支点として図4における反時計回り方向に回動され、上リンク71に当接される。この当接状態で下リンク72が更に回動されると、該下リンク72により上リンク71が押し上げられて、枢支ピン73を支点として図4における時計回り方向に回動される。
【0046】
この上リンク71の回動にともなってその突出部71aが後方へ移動されて、該突出部71aに緩衝バネ78を介して連結された連動ワイヤ46のインナーワイヤ46bが後方へと引っ張られ、これに走行部2で連結された油圧駆動部の油圧バルブが作動される。その結果、昇降用シリンダ44が伸長作動されて、昇降機構4により植付部3が走行部2に対して上昇される。
【0047】
一方、センターフロート31の揺動時において、該センターフロート31の前端部が下動した場合、下リンク72が枢支ピン75を支点として図4における時計回り方向に回動されつつ、該下リンク72と上リンク71との枢支ピン74による枢支点が下方へ引っ張られ、上リンク71が枢支ピン73を支点として図4における反時計回り方向に回動される。
【0048】
前記上リンク71の回動にともなってその突出部71aが前方へ移動されて、該突出部71aに緩衝バネ78を介して連結された連動ワイヤ46のインナーワイヤ46bが前方へと押し出され、これに走行部2で連結された油圧駆動部の油圧バルブが作動される。その結果、昇降用シリンダ44が収縮作動されて、昇降機構4により植付部3が走行部2に対して下降される。
【0049】
なお、センターフロート31の揺動時において、センターフロート31の前端部が僅かにしか(所定量)上下動しない場合、前記同様にセンターフロート31の揺動に応じて下リンク72と上リンク71とが回動されるが、緩衝バネ78により上リンク71の突出部71aの変位量が吸収されて、連動ワイヤ46のインナーワイヤ46bは押し引きされない。その結果、油圧駆動部の油圧バルブが作動されず、植付部3の昇降は行われない。これにより、ハンチング等が生じないようにしている。
【0050】
こうして、田植機1の植付作業時において、センターフロート31の揺動による前端部の上下動の変化、つまり圃場の植付面の高さを感知して、その感知結果に連動して昇降機構4により植付部3を適宜昇降させることで、植付爪28による苗株の植付深さを一定に維持することができるようになっている。但し、油圧駆動部の油圧バルブを作動させないようにするセンターフロート31の上下動の限界は、任意に変更可能である。また、図示しない植深調節レバーがフロート支持体33と連結されて、該植深調節レバーを回動操作することによりフロート支持体33を伝動軸ケース23に対して昇降し、センターフロート31及びサイドフロート32に対する植付爪28の高さを変更して植付深さを調節することができるようになっている。
【0051】
また、前述の構成においては、センターフロート31の前端部を支持する支持アーム61が、その後部でフロート支持体33と伝動軸ケース23とに互いに近接した位置で支持されていることから、センターフロート31の揺動時に伝わる振動などにより支持アーム61にガタツキが生じて、リンク機構70の位置が狂い、センターフロート31の上下動の変化が油圧駆動部の油圧バルブに正確に伝わらない恐れがある。そこで、これを解消するために、次のような構造が設けられている。
【0052】
すなわち、図3、図4、図5に示すように、支持アーム61の後部に設けられた前後の挿通孔61d・61cのうち、後側(フロート支持体33側)の挿通孔61cが長手方向を略前後方向とする長孔に形成されて、これに挿通された枢支ピン64が摺動可能な範囲で、支持アーム61が前側(伝動軸ケース側)の挿通孔61dに挿通された枢支ピン66を支点として若干(所定量)回動可能とされている。
【0053】
そして、支持アーム61の前部と、その上方に位置する植付フレーム21との間に引張バネ81が上下方向に延伸するように介設されて、該引張バネ81により支持アーム61が枢支ピン66を支点として上方へ回動するように付勢されている。こうして、支持アーム61に伝わる振動の影響を排除することができるように構成されて、支持アーム61のガタツキの防止が図られている。
【0054】
また、ここでは支持アーム61の前部において、左右の各板体61aに挿通孔61fが設けられて、該挿通孔61fに係合ピン82が左右方向に挿通されている。そしてこの係合ピン82に引張バネ81の下端部に設けたフック部81aが係合され、該引張バネ81の他端(上端)が植付フレーム21に係止されて、引張バネ81の付勢力により支持アーム61が枢支ピン66を支点として図4における時計回り方向に回動するように付勢されている。これにより、引張バネ81のフック部81aを係合ピン82に係合するだけで、該引張バネ81を支持アーム61の前部に簡単に連結することができるようになっている。
【0055】
このように、走行部2の後部に植付部3を昇降機構4を介して昇降可能に連結し、該植付部3にセンターフロート31を上下方向に揺動可能に設けて、該センターフロート31前端部と前記昇降機構4の油圧駆動部との間に連動ワイヤ46を介設し、該連動ワイヤ46によりセンターフロート31前端部の上下動に連動させて油圧駆動部を作動させて、当該植付部3の昇降を行う田植機1において、前記センターフロート31の前端部と連動ワイヤ46との間にリンク機構70を介設し、該リンク機構70によりセンターフロート31の揺動時に連動ワイヤ46を前後方向に押し引きする構成とすることにより、前記センターフロート31前端部の上方に十分な大きさの空間を確保できなくても、該センターフロート31前端部に昇降機構4の油圧駆動部から延設される連動ワイヤ46を連動連結することができる。また、連動ワイヤ46を植付部3の構成部材などに接することなく延設して、リンク機構70と油圧駆動部とに連結させることが可能となり、該連動ワイヤ46の摺動抵抗を低減させることができる。
【0056】
また、前記田植機1において、リンク体(支持アーム61)は植付フレーム体を構成する植付伝動ケース23に回動自在に支持されることにより、別部材を用いて別途、リンク体支持部を構成する必要も無く、部品点数の削減、あるいは、重量低減が図られ、経済的である。
【0057】
そしてさらに、前記リンク機構70を支持する支持アーム61を植付部3に上下方向に所定量回動可能に設け、該支持アーム61を付勢部材、つまり引張バネ81で一方向に回動するように付勢する構成としたことにより、リンク機構70を支持する支持アーム61のガタツキを防止することが可能となり、該支持アーム61にセンターフロート31を安定して支持し、油圧駆動部の油圧バルブにセンターフロート31前端部の上下動の変化を正確に連動ワイヤ46を介して伝えることができる。
【0058】
また、前記田植機1において、前記付勢部材を引張バネ81で構成し、該引張バネ81に備えたフック部81aを支持アーム61に挿通支持した係合ピン82に係合して、該引張バネ81と支持アーム61とを連結する構成としたことにより、前記付勢部材、つまり引張バネ81を支持アーム61に容易に取り付けることが可能となり、組み立て性の向上を図ることができる。
【0059】
また、前述の構成においては、図3、図4、図5に示すように、支持アーム61の中央部で、左側の板体61aに挿通孔61gが設けられるとともに、その側方に配置される上リンク71の突出部71aに挿通孔71eが、センターフロート31や連動ワイヤ46が初期セット位置にあるとき、前記支持アーム61の挿通孔61gと一致するように設けられている。そして、支持アーム61の挿通孔61gと上リンク71の挿通孔71eとに、前記引張バネ81と係合する係合ピン82が挿通可能とされている。
【0060】
このように、前記田植機1において、前記リンク機構70に相互に連結する上リンク71と下リンク72(複数のリンク体)を備え、そのうちの上リンク71と支持アーム61とにそれぞれ挿通孔71e・61gを一致するように設けて、これらの挿通孔71e・61gに前記係合ピン82を挿通可能にする構成としたことにより、前記係合ピン82を支持アーム61から抜いて、上リンク71の挿通孔71eと支持アーム61の挿通孔61gとに連通することで、上リンク71を回動不能に保持して、リンク機構70を非作動にすることができる。したがって、前述のように挿通孔71e・61gを設けて、この保持状態でのセンターフロート31や連動ワイヤ46などからなる植付部昇降制御部の位置を初期セット位置となるように設定しておくことで、組み立て時に初期セット位置を容易に決定することが可能となり、特別な調整具を必要とせずに、組み立て調整の作業効率を高めるとともに、確実な調整を行うことができる。
【0061】
次に、本実施例におけるセンターフロート31の後部付近の構成について詳細に説明する。
【0062】
図6、図7に示すように、センターフロート31の後部は、植付フレーム体のうち植付フレーム21と連結されたフロート支持体33に連結機構48を介して連結されている。連結機構48はフロート支持体33から後方に突設された第一操作アームとなるセンターフロート支持アーム35と、第二操作アームとなる連結アーム45と取付部材47などで構成されている。
【0063】
こうして、センターフロート31とサイドフロート32の前端位置を前後方向で略同一位置に配置し、前記センターフロート31と植付フレーム体とを連結機構を介して連接するとともに、前記連結機構を第一操作アームと第二操作アームとで構成し、第一操作アームの前部は植付フレーム体に連接し、後部は第二操作アームの前部と回動自在に枢支し、第二操作アームの後部で前記センターフロート31を揺動自在に支持している。
【0064】
そして、前記第二操作アームは、前記第一操作アーム後部との枢支部や、前記センターフロート31との支持部とは別の個所に回動支持部を設けている。この回動支持部は前記植付フレーム21に連結される植付伝動ケース25に設ける支持軸に支承している。
【0065】
センターフロート支持アーム35はプレートを正面断面視「コ」字状に折り曲げ形成されて下方が開放するように取り付けられ、その前端がフロート支持体33と固設され、後部は後下方に延設されて、該センターフロート支持アーム35の後端に枢支部となる連結アーム45の下部を介してセンターフロート31の後部上に固設したブラケット38に枢結されている。この連結アーム45の枢支孔45eとブラケット38を枢支する枢支ピン59がセンターフロート31の回動支点となる。但し、連結アーム45の代わりにステー等を介して連結することも可能であり、また、従来と同様にセンターフロート支持アーム35の後端にブラケット38を直接連結する構成とすることも可能である。
【0066】
前記センターフロート支持アーム35の後端の左右両側面には、前後方向に伸びる長孔35aが開口されている。一方、連結アーム45は上下方向に延設される右支持体45aと左支持体45bと、該右支持体45aと左支持体45bの上部を連結する横支持体45cとにより後面視門形に構成されている。該右支持体45aは下方を開放する断面視「コ」字形に板体が折り曲げ形成され、該右支持体45aの下部は側面視略三角形状に形成され、該右支持体45aの前下部に枢支孔45dを開口して、該枢支孔と前記長孔35aに連結ピン58を左右方向に挿通して、連結機構48が長孔の範囲で前後移動が許容されている。但し、図7に示すように、右支持体45a下部に前後方向に所定間隔をあけて複数の枢支孔45d・45d・・・を開口し、該枢支孔45d・45d・・・のいずれかと、センターフロート支持アーム35の後端とを連結ピン58により枢支する構成とすることもできる。
【0067】
このように構成して、センターフロート31の取り付け位置を枢支孔45d・45d・・・の中から何れかを選択可能としているため、圃場条件などにより、センターフロート31とサイドフロート32の位置や苗の植付深さが揃わない場合などでも、取付位置を容易に調節することが可能となる。
【0068】
該連結アーム45の横支持体45cの高さは植え付けた苗の上端が当たらない程度の高さとして、植え付け後に横支持体45cが移動する時に苗を迂回して倒さずに、植付位置の上方を通過するように構成している。従って、連結アーム45は後面視逆U字状に構成することも可能である。
【0069】
また、連結アーム45の他側はセンターフロート31から左右中央の植付伝動ケース25の後部側に延設されて、回動支持部で植付伝動ケース25の後部と連結される。つまり、連結アーム45における植付伝動ケース25の後部側に位置する左支持体45bの下端から水平方向に支持軸45fが側方に突設され、該支持軸45fが植付伝動ケース25の後端に固設した取付部材47に枢支される。該取付部材47はプレートを平面視四角形状に折り曲げ形成し、前板が植付伝動ケース25の後面にボルト等により固設され、左右の側板の後部に左右方向に貫通孔を設けて前記支持軸45fを挿入して枢支する構成としている。
【0070】
このように、連結アーム45は正面視にて下方を開放する門形形状に形成されることにより、その前方に配置される植付爪28により植え付けた苗を倒すことがなく、連結機構48によりセンターフロート31を支持することができる。さらに、センターフロート支持アーム35と連結機構48の両部材でセンターフロート31が支持されるため、片持ち構造と比べて強度がアップし安定して支持することができる。
【0071】
そして、本実施例における田植機1は、上述の通り、植付部3の直前下方に整地装置51が設けられており、該整地装置51の後方にセンターフロート31と、サイドフロート32とが配設される。すなわち、図1、図8に示すように、整地装置51はセンターフロート31とサイドフロート32の直前方で左右水平方向に配設されるため、従来のセンターフロート31とサイドフロート32の配置では全長が長くなってしまう。
【0072】
そこで、図8、図9に示すように、センターフロート31とサイドフロート32の前後長は従来と殆ど変わらない長さとし、センターフロート31はサイドフロート32よりも前後方向で長く構成している。そして、センターフロート31とサイドフロート32の前端の位置を略同一位置、つまり、図8中に示す「X1線」上になるように配設している。従って、センターフロート31の後端位置は、サイドフロート32の後端位置に比べてY1後方に位置することになる。
【0073】
そして、該センターフロート31の後端位置よりもさらにわずかであるが寸法Y2後方に植付伝動ケース25の後端部に設けたバンパー体18が配置される。該バンパー体18を取り付ける植付伝動ケース25は前記連結機構48を取り付ける植付伝動ケース25の左右両側に配置される。なお、本実施例では5条植えの田植機について説明しているが、4条植えや、6条植え以上の田植機も同様に配設される。
【0074】
こうして、センターフロート31の後端位置が、植付部3に具備される植付伝動ケース25後端に設けられるバンパー体18に対して前方に配置されることにより、センターフロート31や連結機構48などは後方から外力に対して、十分に防護されることになり、変形や破損を防ぐことができる。
【0075】
また、センターフロート31の全長を前記サイドフロート32の全長に比べて長く形成して、従来と同等の昇降感知性能を得るために、図9に示すように、センターフロート31の揺動支点を、サイドフロート32の揺動支点よりも寸法Z後方に配設している。
【0076】
すなわち、フロート支持体33の左右略中央部より斜め後下方にセンターフロート支持アーム35が突設され、該センターフロート支持アーム35の左右両側でフロート支持体33より斜め後下方にサイドフロート支持アーム39・39が突設されている。該センターフロート支持アーム35の後端に連結アーム45を介してセンターフロート31後部上に固設したブラケット38が連結され、サイドフロート支持アーム39後端にサイドフロート32後部上に固設したブラケット60が連結される。そして、センサーフロート支持アーム35をサイドフロート支持アーム39よりも長く構成して、同一のフロート支持体33に支持する構成としている。
【0077】
このように、植付部3におけるフロート装置(各フロート31・32)の前方に圃場面の整地装置51が配置される田植機1において、前記センターフロート31、および、サイドフロート32は植付フレーム体を構成する植付フレーム21や、植付伝動ケース25に揺動自在に支持され、該センターフロート31とサイドフロート32の前端位置が前後方向で略同一位置に配置され、該センターフロート31の揺動支持位置が該サイドフロート32の揺動支持位置に比べて後方に配置されることにより、サイドフロート32と比べてセンターフロート31の全長を長くすることが可能となり、植付部3全体の昇降制御を行うためのセンサーとしての役割を果たすセンターフロート31の前端の昇降高さが従来と変わることなく検知することが可能となり、従来と略同様に圃場面の凸凹に対して追従して植付部3の昇降制御が可能となる。
【0078】
また、各フロート31・34の前端位置を前後方向略同一とすることで、整地装置51と干渉することなくフロートを配置でき、整地後の圃場面をきれいに仕上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施例に係る田植機の全体構成を示す側面図。
【図2】センターフロートの全体構成を示す斜視図。
【図3】センターフロートの前部付近の構成を示す斜視図。
【図4】同じく側面図。
【図5】同じく正面図。
【図6】センターフロートの後部付近の構成を示す斜視図。
【図7】連結アーム下側の連結部の構成を示す側面図。
【図8】センターフロートとサイドフロートとの配置関係を示す底面図。
【図9】センターフロートの揺動支持位置とサイドフロートの揺動支持位置との配置関係を示す側面図。(イ)センターフロートの側面図。(ロ)サイドフロートの側面図。
【符号の説明】
【0080】
3 植付部
23 伝動軸ケース
25 植付伝動ケース
31 センターフロート
32 サイドフロート
33 フロート支持体
35 支持アーム
35a 長孔
38 ブラケット
45 連結アーム
45a 右支持材
45b 左支持材
45c 横支持材
45f 支持軸
47 取付部材
48 連結機構
59 枢支ピン
58 連結ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付部の植付フレーム体を用いてセンターフロートおよびサイドフロートを揺動自在に支持する田植機において、センターフロートとサイドフロートの前端位置を前後方向で略同一位置に配置し、前記各フロートと植付フレーム体を操作アーム体で連接するとともに、前記センターフロートの操作アーム体を第一操作アームと第二操作アームとで構成し、第一操作アームの前部は植付フレーム体に連接し、後部は第二操作アームの前部と回動自在に枢支し、第二操作アームの後部で前記センターフロートを揺動自在に支持した、
ことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記第二操作アームは、前記第一操作アーム後部との枢支部、および、前記センターフロートとの支持部、とは別の個所に回動支持部を設け、該回動支持部は前記植付フレーム体を構成する植付フレームに設ける支持軸に支承した、ことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記第一操作アームの後部と、前記第二操作アームの前部との枢支部において、該第二操作アームの前部に複数の連結孔を設けることで、前記枢支部の位置変更を自在にした、ことを特徴とする請求項1、または、請求項2に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−228595(P2008−228595A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69631(P2007−69631)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】