説明

田植機

【課題】植付の停止設定を行うスイッチの数が少なく、簡単な構成で、かつ、コンパクトな条止め操作部を備える田植機を提供する。
【解決手段】複数の植付条のうち、一部の植付条の植付けが停止可能な植付装置40を備える多条植えの田植機1において、前記植付装置40による一部の植付条の植付けを停止操作可能な操作部2を備え、前記操作部2は、左右一対のスイッチ3・4と、停止した植付条を認識可能に表示させる表示装置5A〜5Dとを有し、この左右一方のスイッチが操作される毎に、操作されたスイッチと左右同一側で最も外側に位置する植付条から順に植付けを停止させるものとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関し、特に、植付装置による植付条数を変更するための操作部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転操作部の操作部を用いて、植付装置に備えられたクラッチを操作し、複数の植付条うち、一部の植付条に対応する植付機構を停止させて、植付装置による植付条数を変更可能とした多条植えの田植機は公知となっている。そして、このような田植機のなかには、例えば、特許文献1から特許文献3のように、前記操作部として、複数のスイッチを左右方向に並置した条選択操作具を備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−282511号公報
【特許文献2】特開2000−139133号公報
【特許文献3】特許第4275043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から特許文献3の技術によれば、一つのクラッチに対して一つのスイッチが割り当てられるため、クラッチの数だけスイッチが必要となる。よって、多条植えの田植機では、クラッチの数が植付条数の増加に従って増加するため、条止め操作部のスイッチの数も増加することになって、条止め操作部の構成が複雑となるとともに、部品点数が増加して、コストが増大するという問題があった。そのうえ、スイッチの入切操作が行われたかどうかを容易に把握することができるように、各スイッチ毎にランプを設けたり、表示モニタ等を設けた場合には、部品点数が更に増加して、コストが増大するという問題があった。また、スイッチの誤操作を防止するために、スイッチを大きくしたり、隣り合うスイッチとスイッチの間隔を大きくしたりした場合には、条止め操作部全体が大型化するという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、スイッチの数が少なく、簡単かつコンパクトな条止め操作部を備える田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、複数の植付条のうち、一部の植付条の植付けが停止可能な植付装置を備える田植機において、前記植付装置による一部の植付条の植付けを停止操作可能な操作部を備え、前記操作部は、左右一対のスイッチと、停止した植付条を認識可能に表示させる表示装置とを有し、この左右一方のスイッチが操作される毎に、操作されたスイッチと左右同一側で最も外側に位置する植付条から順に植付けを停止させるものである。
【0008】
請求項2においては、前記操作部は、前記左右一対のスイッチが同時に操作されたとき、前記植付条の植付けの停止を解除するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、多条植えの田植機であっても、操作部の二つのスイッチのみで植付装置による植付条数を変更することが可能となる。したがって、植付装置の最大植付条数にかかわらず、操作部におけるスイッチの数を少なくして、部品点数を削減することができ、コストの低減化を図ることができる。しかも、操作部を簡単かつコンパクトに構成することができる。また、操作部により一部の植付条の植付けを停止させた場合、その植付けが停止された植付条を表示装置を介して容易かつ正確に把握することができる。
【0011】
請求項2においては、植付条を誤って停止操作したり、停止操作が不要になったりした場合等において、植付条の植付けの停止を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る田植機の全体平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る田植機のダッシュボードを運転席側から見た図。
【図4】本発明の一実施形態に係る田植機の条止め操作部の構造を示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る田植機の条止め操作部の接続構造を示す図。
【図6】左側の植付機構を順に停止する際の手順を示す図。
【図7】右側の植付機構を順に停止する際の手順を示す図。
【図8】左側の植付機構の停止を解除する際の手順を示す図。
【図9】全ての植付機構の停止を解除する際の別手順を示す図。
【図10】植付条の停止状態を示す田植機の略式図。
【図11】畦際の植付けの手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の一実施例に係る田植機1の全体構成について、図1から図2を用いて説明する。なお、本実施形態においては、田植機は8条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば6条植えや10条植えの田植機であってもよい。
【0014】
図1に示すように、田植機1は、走行部10と植付装置40とを有し、走行部10により走行しながら、植付装置40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付装置40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に昇降機構50を介して昇降可能に連結される。
【0015】
走行部10においては、エンジン11が車体フレーム12の前部に設けられて、ボンネット13により被覆される。ミッションケースが車体フレーム12の前部に支持されて、エンジン11の後下方に配置される。
【0016】
フロントアクスルケース14が車体フレーム12の前部に支持され、前車輪15が当該フロントアクスルケース14の左右両側に支承される。リアアクスルケース16が車体フレーム12の後部に支持され、後車輪17が当該リアアクスルケース16の左右両側に支承される。
【0017】
そして、エンジン11の動力が前記ミッションケースを介して左右の前車輪15と左右の後車輪17とにそれぞれ伝達されて、これらの前車輪15および後車輪17が回転駆動するように構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0018】
走行部10において、車体フレーム12の前後中途部に運転操作部20が設けられる。運転操作部20の前部には、操向操作用の環状の操向ハンドル21、変速操作用の変速ペダル22、ブレーキペダル23、ダッシュボード25などが配置される。運転操作部20の後部には、運転席24が操向ハンドル21の後方に位置するように配置される。
【0019】
ダッシュボード25の上には、操向ハンドル21に加えて、後述する条止め操作部2を含む各種の操作具や表示装置が配置される。これらの操作具、操向ハンドル21、変速ペダル22、ブレーキペダル23等によって、走行部10および植付装置40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。
【0020】
走行部10において、予備苗載台18が車体フレーム12の前部の左右両側から立設された各取付フレーム12aに取り付けられて、ボンネット13の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台18に載置されて、植付装置40への苗補給が可能とされる。
【0021】
走行部10において、施肥装置19が車体フレーム12の後部に支柱フレーム12bなどを介して支持されて、運転操作部20の運転席24の後方に配置される。施肥装置19は、植付条に対応する数の繰出装置を有し、エンジン11からの動力により駆動されて、圃場に施肥を行うことができるように構成される。
【0022】
植付装置40において、植付ミッションケースが植付フレーム41の下部中央付近に支持され、伝動軸ケースが当該植付ミッションケースから左右両側方に延設される。図2に示すように、4つの植付伝動ケース42A・42B・42C・42Dがそれぞれ前記伝動軸ケースから後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0023】
各植付伝動ケース42の後端部左右両側には、ロータリケース43・43が回動自在に支持される。ロータリケース43は植付条数と同数、即ち本実施形態では8つ備えられる。そして、二つの植付爪44・44が、ロータリケース43の回転支点を挟むように、このロータリケース43の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0024】
苗載台45が植付伝動ケース42の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム41の後部に上下のガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台45は、横送り機構により左右往復動可能とされる。
【0025】
苗載台45上に苗マットが条数分載置されて、ロータリケース43の回転時に植付爪44により苗が当該苗載台45上の苗マットから取出可能とされる。
【0026】
苗縦送りベルト46が苗載台45に植付条に合わせて設けられる。苗縦送りベルト46は、苗載台45が左右往復し横送り端に到達するごとに、苗縦送りベルト46が縦送り機構により所定量駆動され、苗載台45上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように駆動可能とされる。
【0027】
そして、動力伝達機構においては、エンジン11の動力が植付ミッションケース等を介して各ロータリケース43に伝達されて、ロータリケース43が回転駆動するように構成される。これにより、ロータリケース43の回転駆動にともなって、二つの植付爪44・44が交互に苗を苗載台45上の苗マットから切り出して圃場に植付可能とされる。
【0028】
同時に、動力伝達機構においては、エンジン11の動力が植付ミッションケース等を介して横送り機構および縦送り機構に伝達されて、苗載台45が横送り機構により左右往復横送りされ、苗載台45上の苗マットが載台の左右往復横送りに応じて縦送り機構により苗縦送りベルト46を介して下方へ向けて縦送りされるように構成される。これにより、苗載台45上の苗マットが植付爪44に対して適切な位置に移動される。
【0029】
植付装置40において、圃場面を整地する4個のフロート47・47・・・が、それぞれの前部側が後部側を回動支点として上下動自在となるように植付フレーム41側に支持されて、植付伝動ケース42の下方に配置される。
【0030】
植付装置40において、線引きマーカ48が植付フレーム41の下部の左右両側に回動可能に支持される。左右の各線引きマーカ48は、その基端側を回動支点として、上方へ向かって回動されることにより収納され、この収納状態から下方へ向かって回動されることにより先端側を左または右側方へ突出させて、圃場に線引きを行うことができるように構成される。
【0031】
また、前述の昇降機構50が走行部10と植付装置40との間に設けられる。具体的には、トップリンク51とロワリンク52の前部が走行部10の車体フレーム12に上下回転自在に支持され、トップリンク51とロワリンク52の後部が植付装置40の植付フレーム41の前部左右中央に支持される。昇降用シリンダがロワリンク52と走行部10との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付装置40が走行部10に対して上下方向に回動可能、即ち昇降可能とされる。
【0032】
次に、ダッシュボード25上の構成について、図3を用いて説明する。
【0033】
ダッシュボード25上には、具体的には、例えば、操向ハンドル21、主変速レバー26、油圧植付レバー27、表示モニタ28、植付操作パネル60、スイッチ類等が配置される。
【0034】
操向ハンドル21は、田植機1を操舵する際に操作されるものである。ダッシュボード25の左右略中央部からハンドル軸21aが突出され、その端部に操向ハンドル21が一体的に固設される。
【0035】
主変速レバー26は、田植機1の走行モードを「移動走行」、「植付」、「後進」、「苗つぎ」、「中立」の各走行モードに切り替える操作具であり、ハンドル軸21aの左方に設けられる。
【0036】
油圧植付レバー27は、植付装置40の昇降、植付の入切の操作等を行う操作具であり、ハンドル軸21aの右方に設けられる。
【0037】
表示モニタ28は、エンジンの状態や田植機1の作業状態等を表示する表示装置である。表示モニタ28は、長手方向を左右方向とした略長方形状の画面で構成される。表示モニタ28は、ダッシュボード25の左右方向略中央部であって、ハンドル軸21aの前方に配置されて、運転席24に着座した作業者から見て、環状の操向ハンドル21の内周側に位置する。
【0038】
植付操作パネル60には、植付作業時に使用頻度が高い操作手段が設けられる。植付操作パネル60は、略長方形状で構成される。植付操作パネル60は、ダッシュボード25の左右方向略中央部であって、ハンドル軸21aの後方に配置され、操向ハンドル21の後部付近に位置する。植付操作パネル60は、表示モニタ28と側面視で互いに略平行な傾斜面とされる。
【0039】
植付操作パネル60は、自動マーカスイッチ61、感度ボリューム62、ブザー停止スイッチ63、条止め操作部2を備え、植付操作パネル60の左側から順に、自動マーカスイッチ61、条止め操作部2、感度ボリューム62、ブザー停止スイッチ63が配置される。
【0040】
自動マーカスイッチ61は、植付作業時に適切な隣接条間を保ち、直進の目標となるように圃場上面に線を引く線引きマーカ48の出し入れ(突出または収納)を、田植機1の旋回操作に伴い、左右交互に自動的に切り替えるように設定するスイッチである。
【0041】
感度ボリューム62は、圃場の硬軟に応じて感度を調節するものであり、フロートセンサからの信号に対する昇降アクチュエータの昇降駆動を、硬い場合には鈍感とし、柔らかい場合には敏感となるように調節するものである。
【0042】
ブザー停止スイッチ63は、植付ユニットクラッチ警報、苗つぎ警報、肥料補給警報、肥料詰り警報等のために、走行部10または植付装置40に設けられた警報ブザーが鳴ったとき、作業者が認識すれば手動で警報ブザーの鳴動を停止させるためのスイッチである。
【0043】
次に、条止め操作部2について、図4から図11を用いて説明する。
【0044】
図4に示すように、条止め操作部2は、左右一対のスイッチ3・4と、表示装置5A〜5Dとから構成される。左右一対のスイッチ3・4は、ダッシュボード25(植付操作パネル60)上で左右方向に所定の距離を隔てて並べられ、表示装置5A〜5Dと近接して配置されるとともに、表示装置5A〜5Dの後下方で、表示装置5A〜5Dよりも運転席24側に配置される。
【0045】
ここでの所定の距離とは、スイッチ3・4を片手で同時に押すことができる距離であり、一方のスイッチを押したときに、誤って他方のスイッチを押すことがない距離をいう。
【0046】
左スイッチ3は、略正三角形状の押しボタンスイッチからなり、一つの頂点が最左側に位置するように配置される。右スイッチ4は、左スイッチ3と同一の押しボタンスイッチからなり、一つの頂点が最右側に位置するように配置される。
【0047】
なお、左右のスイッチは、部品の共有化のために、本実施形態のように同一のものとすることが好ましいが、その形状や大きさは特に限定するものではなく、左右が容易に認識できるものであればよい。例えば、左右のスイッチは、その操作面に矢印を形成された丸形状のものであってもよい。
【0048】
表示装置5A〜5Dは、本実施形態においては、第一表示装置5Aと、第二表示装置5Bと、第三表示装置5Cと、第四表示装置5Dとからなり、後述のようにして停止した一つのロータリケース43および二つの植付爪44等からなる植付条を認識可能に表示させるように構成される。第一表示装置5A、第二表示装置5B、第三表示装置5C、第四表示装置5Dは、本実施形態においては略円形状に形成され、それぞれが左から右側方向へ順に、隣り合う表示装置と適宜の距離を隔てて配置される。この各表示装置5A〜5Dは、ランプやLED等の光源で構成される。
【0049】
なお、表示装置は前記表示装置5A〜5Dに限定するものでなく、例えば、前記表示モニタ28を利用して構成してもよい。これにより表示部材の共有化を図ることができ、部品点数を削減できる。また、表示装置の表示方法や形状も限定するものではなく、表示方法を7セグメントLEDで文字を表示したり、点滅したりするものとしてもよいし、形状を四角形状等としてもよい。
【0050】
図5に示すように、左右一対のスイッチ3・4及び各表示装置5A・5B・5C・5Dは、走行部10の任意位置に設けられた制御装置6と接続される。この制御装置6には、施肥ユニットクラッチ70A〜70D、植付ユニットクラッチ71A〜71D、縦送りユニットクラッチ72A〜72Dが接続されている。各ユニットクラッチ70・71・72は、電磁クラッチで構成され、田植機1に備えられた伝動機構の途中に適宜設けられて、エンジン11からの動力の伝達を断接できるように構成されている。但し、ユニットクラッチ70・71・72の構造や動力を断接する構成は限定するものではなく、例えば、カムをモータ等で駆動して動力を断接する構成とすることも可能である。
【0051】
ここで、前述の施肥ユニットクラッチ70A〜70Dは、施肥装置19の各繰出装置を駆動する繰出軸に設けられ、エンジン11から各繰出装置への動力の伝達を断接して、その繰出装置の駆動状態を2条分ずつ変更することができるように構成される。すなわち、第一施肥ユニットクラッチ70Aが田植機1の植付条のうちの左から1条目と2条目に、第二施肥ユニットクラッチ70Bが3条目と4条目に、第三施肥ユニットクラッチ70Cが5条目と6条目に、第四施肥ユニットクラッチ70Dが7条目と8条目に対応して、その入切によって繰出装置の駆動状態を変更し、各ユニットクラッチに対応する植付条で施肥が行われる、または停止されるようになっている。
【0052】
また、植付ユニットクラッチ71A〜71Dは、植付伝動ケース42A〜42D内の伝動軸に設けられ、エンジン11からロータリケース43や植付爪44、即ち植付機構への動力の伝達を断接して、その植付機構の駆動状態を2条分ずつ変更することができるように構成される。すなわち、第一植付ユニットクラッチ71Aが田植機1の植付条のうちの左から1条目と2条目に、第二植付ユニットクラッチ71Bが3条目と4条目に、第三植付ユニットクラッチ71Cが5条目と6条目に、第四植付ユニットクラッチ71Dが7条目と8条目に対応して、その入切によって植付機構の駆動状態を変更し、各ユニットクラッチに対応する植付条で植付けが行われる、または停止されるようになっている。このようにして、植付装置40は、複数の植付条のうち、一部の植付条の植付けが停止可能となるように構成される。
【0053】
また、縦送りユニットクラッチ72A〜72Dは、各苗縦送りベルト46・46を駆動する縦送り機構に設けられて、苗載台が左右一側端に移動したときに、エンジンから各苗縦送りベルト46・46への動力の伝達を断接して、苗縦送りベルト46・46の駆動状態を2条分ずつ変更することができるように構成される。すなわち、第一縦送りユニットクラッチ72Aが田植機1の植付条のうちの左から1条目と2条目に、第二縦送りユニットクラッチ72Bが3条目と4条目に、第三縦送りユニットクラッチ72Cが5条目と6条目に、第四縦送りユニットクラッチ72Dが7条目と8条目に対応して、その入切によって苗縦送りベルト46・46の駆動状態を変更し、各ユニットクラッチに対応する植付条での植付けに関連して、苗載台45上の苗マットが縦送りされる、または縦送りされないようになっている。
【0054】
そして、制御装置6が、左右のスイッチ3・4の何れかが押圧されて操作された場合、その一回の操作に応じて、対応する植付条が同じである、施肥ユニットクラッチ70A〜70D、植付ユニットクラッチ71A〜71D、及び縦送りユニットクラッチ72A〜72Dの各々一つのユニットクラッチを同時に「切」として、その「切」としたユニットクラッチに対応する植付条を、表示装置5A〜5Dで点灯させることによって表示させるように構成される。
【0055】
具体的には、例えば、制御装置6は、第一施肥ユニットクラッチ70Aと、第一植付ユニットクラッチ71Aと、第一縦送りユニットクラッチ72Aとを同時に「切」として、その「切」とした第一の各ユニットクラッチ70A・71A・72Aに対応する植付条が1条目と2条目であることを、第一表示装置5Aを点灯させることによって表示させるように構成される。
【0056】
制御装置6は、また、第二施肥ユニットクラッチ70Bと、第二植付ユニットクラッチ71Bと、第二縦送りユニットクラッチ72Bとを同時に「切」として、その「切」とした第二の各ユニットクラッチ70B・71B・72Bに対応する植付条が3条目と4条目であることを、第二表示装置5Bで点灯させることによって表示させるように構成される。
【0057】
制御装置6は、また、第三施肥ユニットクラッチ70Cと、第三植付ユニットクラッチ71Cと、第三縦送りユニットクラッチ72Cとを同時に「切」として、その「切」とした第三の各ユニットクラッチ70C・71C・72Cに対応する植付条が5条目と6条目であることを、第三表示装置5Cで点灯させることによって表示させるように構成される。
【0058】
制御装置6は、また、第四施肥ユニットクラッチ70Dと、第四植付ユニットクラッチ71Dと、第四縦送りユニットクラッチ72Dとを同時に「切」として、その「切」とした第四の各ユニットクラッチ70D・71D・72Dに対応する植付条が7条目と8条目であることを、第四表示装置5Dで点灯させることによって表示させるように構成される。
【0059】
このような構成において、田植機1により植付けが行われる場合に、畦に近づくなどして左側の複数条分の植付けを停止させる、所謂条止めを行う必要が生じたとき、図6に示すように、条止め操作部2が操作される。左右のスイッチ3・4が全く操作されておらず、表示装置5A〜5Dが消灯した状態、即ちリセット状態であれば(S1)、左スイッチ3が一回押圧(ON)される(S2)ことによって、制御装置6が左スイッチ3からの押圧信号を取得して、第一施肥ユニットクラッチ70Aと、第一植付ユニットクラッチ71Aと、第一縦送りユニットクラッチ72Aとを「切」とするとともに、第一表示装置5Aを点灯させる(S3)。その結果、1条目と2条目に対応する施肥装置19、植付機構、苗縦送りベルト46が停止状態となって、田植機1の植付条のうちの左から2条分の植付けが停止することになる(図10(b)参照)。
【0060】
ここでのリセット状態とは、施肥ユニットクラッチ70A〜70D、植付ユニットクラッチ71A〜71D、縦送りユニットクラッチ72A〜72Dのすべてが「入」で、図10(a)に示すように、田植機1の植付条の1条目から8条目の植付け(全条の植付け)を行うことができる状態をいう。
【0061】
また、左スイッチ3が一回押圧されたS3の状態で、左スイッチ3がもう一回押圧される(S4)ことによって、制御装置6が左スイッチ3からの押圧信号を取得して、第二施肥ユニットクラッチ70Bと、第二植付ユニットクラッチ71Bと、第二縦送りユニットクラッチ72Bとを更に「切」とするとともに、第二表示装置5Bを更に点灯させる(S5)。その結果、1条目と2条目に加えて、3条目と4条目に対応する施肥装置19、植付機構、苗縦送りベルト46が停止状態となって、田植機1の植付条のうちの左から4条分の植付けが停止することになる(図10(c)参照)。
【0062】
また、左スイッチ3が二回押圧されたS5の状態で、左スイッチ3がもう一回押圧される(S6)ことによって、制御装置6が左スイッチ3からの押圧信号を取得して、第三施肥ユニットクラッチ70Cと、第三植付ユニットクラッチ71Cと、第三縦送りユニットクラッチ72Cとを更に「切」とするとともに、第三表示装置5Cを更に点灯させる(S7)。その結果、1条目から4条目に加えて、5条目と6条目に対応する施肥装置19、植付機構、苗縦送りベルト46が停止状態となって、田植機1の植付条のうちの左から6条分の植付けが停止することになる(図10(d)参照)。
【0063】
また、このような田植機1により植付けが行われる場合に、畦に近づくなどして右側の複数条分の植付けを停止させる、所謂条止めを行う必要が生じたときも、図7に示すように、条止め操作部2が操作される。この際には、前記とは逆に右スイッチ4が主に押圧され、その押圧の回数に応じて、田植機1の植付条のうちの右から2条分ごとの植付けが停止することになる。
【0064】
具体的には、左右のスイッチ3・4が全く操作されておらず、表示装置5A〜5Dが消灯した状態、即ちリセット状態であれば(S11)、右スイッチ4が一回押圧(ON)されることによって、制御装置6が右スイッチ4からの押圧信号を取得して、第四施肥ユニットクラッチ70Dと、第四植付ユニットクラッチ71Dと、第四縦送りユニットクラッチ72Dとを「切」とするとともに、第四表示装置5Dを点灯させる(S13)。その結果、7条目と8条目に対応する施肥装置19、植付ユニット、苗縦送りベルト46が停止状態となって、田植機1の植付条のうちの右から2条分の植付けが停止することになる(図10(e)参照)。
【0065】
また、右スイッチ4が一回押圧されたS13の状態で、右スイッチ4がもう一回押圧される(S14)ことによって、制御装置6が右スイッチ4からの押圧信号を取得して、第三施肥ユニットクラッチ70Cと、第三植付ユニットクラッチ71Cと、第三縦送りユニットクラッチ72Cとを更に「切」とするとともに、第三表示装置5Cを更に点灯させる(S15)。その結果、7条目と8条目に加えて、5条目と6条目に対応する施肥装置19、植付ユニット、苗縦送りベルト46が停止状態となって、田植機1の植付条のうちの右から4条分の植付けが停止することになる(図10(f)参照)。
【0066】
また、右スイッチ4が二回押圧されたS15の状態で、右スイッチ4がもう一回押圧される(S16)ことによって、制御装置6が右スイッチ4からの押圧信号を取得して、第二施肥ユニットクラッチ70Bと、第二植付ユニットクラッチ71Bと、第二縦送りユニットクラッチ72Bとを更に「切」とするとともに、第二表示装置5Bを更に点灯させる(S17)。その結果、5条目から8条目に加えて、3条目と4条目に対応する施肥装置19、植付ユニット、苗縦送りベルト46が停止状態となって、田植機1の植付条のうちの右から6条分の植付けが停止することになる(図10(g)参照)。
【0067】
また、制御装置6は、図10(b)〜(g)に示すように、植付装置40による一部の植付条の植付けを停止させている状態において、この左右一方のスイッチ3・4が操作される毎に、植付けが停止されている植付条のうち、左右他方のスイッチ4・3と左右同一側の植付条から順に植付けの停止を解除するように構成される。
【0068】
例えば、図8に示すように、左スイッチ3の操作により植付条の1〜6条目が停止している状態であれば(S21)、右スイッチ4が一回押圧(ON)される(S22)ことによって、制御装置6が右スイッチ4からの押圧信号を取得して、第三施肥ユニットクラッチ70Cと、第三植付ユニットクラッチ71Cと、第三縦送りユニットクラッチ72Cとを「入」とするとともに、第三表示装置5Cを消灯させる(S23)。その結果、5条目と6条目に対応する施肥装置19、植付機構、苗縦送りベルト46の停止が解除されて、田植機1の植付条のうちの左から4条分の植付けが停止することになる(図10(c)参照)。
【0069】
また、右スイッチ4が一回押圧されたあと、植付条の1〜4条目が停止しているS23の状態で、右スイッチ4がもう一回押圧される(S24)ことによって、制御装置6が右スイッチ4からの押圧信号を取得して、第二施肥ユニットクラッチ70Bと、第二植付ユニットクラッチ71Bと、第二縦送りユニットクラッチ72Bとを更に「入」とするとともに、第二表示装置5Bを更に消灯させる(S25)。その結果、3条目と4条目に対応する施肥装置19、植付機構、苗縦送りベルト46の停止が解除されて、田植機1の植付条のうちの左から2条分の植付けが停止することになる(図10(b)参照)。
【0070】
また、右スイッチ4が二回押圧されたあと、植付条の1〜2条目が停止しているS25の状態で、右スイッチ4がもう一回押圧される(S26)ことによって、制御装置6が右スイッチ4からの押圧信号を取得して、第一施肥ユニットクラッチ70Aと、第一植付ユニットクラッチ71Aと、第一縦送りユニットクラッチ72Aとを更に「入」とするとともに、第一表示装置5Aを更に消灯させる(S27)。その結果、施肥装置19、植付機構、苗縦送りベルト46の停止が解除されて、田植機1の植付条の1条目から8条目の植付けを行うことができるようになる(図10(a)参照)。すなわち、リセット状態となる。
【0071】
同様に、植付条の3〜8条目が停止している状態であれば、前記とは左右逆で、左スイッチ3の操作を行うことによって、植付けの停止を3条目側から順に解除することが可能となる。
【0072】
このように構成することにより、条止め操作部2の左右スイッチ3・4を押しすぎたりして、必要な植付条の植付けを誤って停止操作した際にも、必要な植付条の停止操作を素早く解除できる。
【0073】
さらに、制御装置6は、前記左右一対のスイッチ3・4が同時に操作されたとき、左右のスイッチ3・4による植付けの停止を解除するように構成される(リセットされる)。
【0074】
例えば、植付条を誤って停止操作したり、停止操作が不要になったりした場合等において、図9に示すように、植付条の1〜6条目が停止している状態であれば(S31)、左スイッチ3及び右スイッチ4が同時に押圧されることによって、制御装置6が左スイッチ3及び右スイッチ4からの押圧信号を取得して、先の左スイッチ3の押圧に基づく設定をリセットし、第一、第二及び第三施肥ユニットクラッチ70A・70B・70Cと、第一、第二及び第三植付ユニットクラッチ71A・71B・71Cと、第一、第二及び第三縦送りユニットクラッチ72A・72B・72Cとを「入」とするとともに、第一、第二及び第三表示装置5A・5B・5Cを消灯させる。その結果、1条目から6条目に対応する施肥装置19、植付機構、苗縦送りベルト46の駆動状態の停止が解除されて、8条分の植付けが行われることになる(図10(a)参照)。
【0075】
これにより、ある植付条の植付けを誤って停止操作したり、植付けの停止が不要になったりした場合等において、植付条の植付けの停止を容易に解除することができる。また、リセット用のスイッチを別途設けることなく、一回の操作で植付けを再開させることが可能となる。したがって、操作部におけるスイッチの数の増加を抑制して、部品点数を削減することができ、コストの低減化を図ることができる。また、図8に示すように、リセット状態とするために右スイッチ4を複数回押圧する必要もなく、リセットの操作に手間がかからない。
【0076】
なお、前述のように一部の植付条の植付けを停止させる、所謂条止めを行う場合には、例えば、田植機1が畦に近づいたら、作業者は、残りの条数を考えて、最終のN列目で全条の植付けができるように、(N−1)列目で、条数合わせを行う。
【0077】
すなわち、図11に示すように、(N−2)列目で残りの条が右側12条の場合、最終のN列目で全条(8条)の植付けを行うことができるように、(N−2)列目で植付けが終了したあと、右スイッチ4を二回押圧して、右側4条の植付条の植付を停止させ、(N−1)列目で左側4条(1条目〜4条目)の植付けを行う。そして、(N−1)列目で、植付けが終了したときには、左スイッチ3を二回押圧する、もしくは、左右のスイッチ3・4を同時に押圧して、右側4条の植付条の植付けの停止を解除する(リセット状態)。こうして、全条の植付けが可能となった状態で、最終のN列目の植付けを行う。
【0078】
以上のように、本発明の一実施形態に係る田植機1は、複数の植付条のうち、一部の植付条の植付けが停止可能な植付装置40を備える多条植えの田植機1において、前記植付装置40による一部の植付条の植付けを停止操作可能な操作部2を備え、前記操作部2は、左右一対のスイッチ3・4と、停止した植付条を認識可能に表示させる表示装置5A〜5Dとを有し、この左右一方のスイッチが操作される毎に、操作されたスイッチと左右同一側で最も外側に位置する植付条から順に植付けを停止させるものとされる。
【0079】
これにより、多条植えの田植機1であっても、操作部2の二つのスイッチ3・4のみで植付装置40による植付条数を変更することが可能となる。したがって、植付装置40の最大植付条数にかかわらず、操作部2におけるスイッチの数を少なくして、部品点数を削減することができ、コストの低減化を図ることができる。
【0080】
また、左右一対の二つのスイッチ3・4のみで植付条の植付の停止設定を行うことができ、操作部2を簡単かつコンパクトに構成することができる。
【0081】
また、前記操作部2は汎用性があり、他機種の条止め操作部との共用化も図りやすくなる。例えば、6条植えの田植機の場合には表示装置5A〜5Dを一つ減らすだけでよく、10条植えの田植機の場合には表示装置5A〜5Dに表示装置を更に一つ追加するだけでよく、左右のスイッチ3・4はそのまま利用することが可能となる。また、湛水直播機等にも適用可能となる。
【0082】
また、表示装置5A〜5Dを有するので、停止された植付条を容易かつ正確に把握することができる。更に、植付条に対応する植付機構がスイッチ3・4を操作する毎に順番に停止されるので、操作が直感的で、かつ、操作が楽に行える。
【0083】
また、本発明の一実施形態に係る田植機1は、前記操作部2は、前記左右二つのスイッチ3・4が同時に操作された場合、前記植付条の植付けの停止を解除するものとされる。
【0084】
これにより、植付条を誤って停止操作したり、停止操作が不要になったりした場合などに、植付条の植付けの停止を容易に解除することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 田植機
2 条止め操作部(操作部)
3 左スイッチ
4 右スイッチ
5A 第一表示装置
5B 第二表示装置
5C 第三表示装置
5D 第四表示装置
6 制御装置
40 植付装置
70A 第一施肥ユニットクラッチ
70B 第二施肥ユニットクラッチ
70C 第三施肥ユニットクラッチ
70D 第四施肥ユニットクラッチ
71A 第一植付ユニットクラッチ
71B 第二植付ユニットクラッチ
71C 第三植付ユニットクラッチ
71D 第四植付ユニットクラッチ
72A 第一縦送ユニットクラッチ
72B 第二縦送ユニットクラッチ
72C 第三縦送ユニットクラッチ
72D 第四縦送ユニットクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の植付条のうち、一部の植付条の植付けが停止可能な植付装置を備える田植機において、
前記植付装置による一部の植付条の植付けを停止操作可能な操作部を備え、
前記操作部は、左右一対のスイッチと、停止した植付条を認識可能に表示させる表示装置とを有し、この左右一方のスイッチが操作される毎に、操作されたスイッチと左右同一側で最も外側に位置する植付条から順に植付けを停止させることを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記操作部は、前記左右一対のスイッチが同時に操作されたとき、前記植付条の植付けの停止を解除することを特徴とする請求項1に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−55763(P2011−55763A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209262(P2009−209262)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】