説明

田植機

【課題】油圧系統がコンパクトな田植機を提供する。
【解決手段】エンジン14の動力で駆動する油圧ポンプとなるアクチュエータ用ポンプ63と、前記アクチュエータ用ポンプ63に供給される作動油が満たされているミッションケース18と、前記ミッションケース18の後方に配置され、前記アクチュエータ用ポンプ63から圧油が送油されることで植付部40を昇降させる昇降シリンダ35と、前記昇降シリンダ35への作動油の流れを制御するコントロールバルブ65fを内装する昇降バルブユニット65と、を備える田植機1において、前記昇降バルブユニット65を、前記ミッションケース18の後部に取り付けるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の田植機は、エンジンの動力で油圧ポンプを駆動して、該油圧ポンプから圧送される作動油で昇降シリンダを作動させ、該昇降シリンダに流れる作動油を昇降バルブユニットに内装されるコントロールバルブで制御することで、植付部を昇降させるように構成される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示す田植機は、昇降シリンダが、ミッションケースとリヤアクスルケースとを連結する連結フレームに設けられ、昇降バルブユニットがフロントアクスルケースに取り付けられる構成とされる。該田植機によると、昇降バルブユニットと昇降シリンダを連結する油圧配管や、昇降バルブユニットとミッションケースを連結する油圧配管が長くなり、油圧系統のコンパクト性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−79211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油圧系統がコンパクトな田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、エンジンの動力で駆動する油圧ポンプと、前記油圧ポンプに供給される作動油が満たされているミッションケースと、前記ミッションケースの後方に配置され、前記油圧ポンプから圧油が送油されることで植付部を昇降させる昇降シリンダと、前記昇降シリンダへの圧油の流れを制御するコントロールバルブを内装する昇降バルブユニットと、を備える田植機において、前記昇降バルブユニットを、前記ミッションケースの後部に取り付けるものである。
【0008】
請求項2においては、前記昇降バルブユニットは、前記ミッションケースと当接する当接面に、作動油を戻す連通孔が形成されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記昇降バルブユニットを、ステップの下方に配置するものである。
【0010】
請求項4においては、前記エンジンの動力を変速するHSTを備え、前記HSTを、前記ミッションケースの前部に配置するものである。
【0011】
請求項5においては、前記HSTを冷却するオイルクーラを、ラジエータの側部に配置するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、昇降バルブユニットとミッションケースを連結する油圧配管及び昇降バルブユニットと昇降シリンダを連結する油圧配管の長さを短くすることができ、油圧系統がコンパクトとなる。
【0014】
請求項2においては、昇降バルブユニットとミッションケースを連結する配管が不要となり、油圧系統が一層コンパクトとなる。
【0015】
請求項3においては、ステップを取り外したり、ステップの一部を開放することで、昇降バルブユニットのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0016】
請求項4においては、昇降バルブユニットが、熱源となるHSTから離間することとなり、昇降バルブユニットに流れる作動油の温度上昇を抑えることができる。従って、作動油量の低減、作動油の劣化、作動油の交換回数を少なくすることができる。
【0017】
請求項5においては、HSTの冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機1の全体側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る田植機1のミッションケース18及び昇降バルブユニット65の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係る田植機1のミッションケース18及び昇降バルブユニット65の構成を示す側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る田植機1のミッションケース18前部の構成を示す斜視図。
【図5】本発明の一実施形態に係る田植機1のミッションケース18前部の他の構成を示す斜視図。
【図6】本発明の一実施形態に係る田植機1のミッションケース18前部の他の構成を示す斜視図。
【図7】本発明の一実施形態に係る田植機1のミッションケース18後部の構成を示す斜視図。
【図8】本発明の一実施形態に係る田植機1のミッションケース18及び昇降バルブユニット65の構成を示す斜視図。
【図9】本発明の一実施形態に係る田植機1の昇降バルブユニット65の正面図。
【図10】本発明の一実施形態に係る田植機1のミッションケース18の後面図。
【図11】本発明の一実施形態に係る田植機1の油圧回路70の構成を示す図。
【図12】本発明の一実施形態に係る田植機1の走行速度を制御する構成を示す図。
【図13】本発明の一実施形態に係る田植機1のモータケース100の構成を示す斜視図。
【図14】本発明の一実施形態に係る田植機1のモータケース100の一部断面図。(a)変速モータ91が動作可時。(b)変速モータ91が動作不可時。
【図15】本発明の一実施形態に係る田植機1の左ケース100Lの左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について説明する。なお、本実施形態においては、田植機は八条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば六条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0020】
田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に、昇降機構30を介して連結される。
【0021】
走行部10においては、フロントアクスルケース16が車体フレーム11の前部に支持され、前車輪12が当該フロントアクスルケース16の左右両側に取り付けられる。リヤアクスルケース17が車体フレーム11の後部に支持され、後車輪13が当該リヤアクスルケース17の左右両側に取り付けられる。
【0022】
走行部10においては、エンジン14が車体フレーム11の前部に設けられる。ミッションケース18が車体フレーム11の前部に支持されて、エンジン14の後方に配置される。ミッションケース18とリヤアクスルケース17とが連結フレーム15で連結される。
【0023】
走行部10においては、車体フレーム11の前後中途部に運転操作部20が設けられる。運転操作部20の前部には、ダッシュボード21が配置され、ダッシュボード21の左右中央部には、操向ハンドル24が配置され、操向ハンドル24の後方には、運転席22が配置され、運転席22の周囲には、乗降用や苗補給用のステップ23が配置される。運転操作部20においては、主変速レバー25や変速ペダル26を含む複数の操作具が配置され、これらの操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。
【0024】
植付部40においては、植付ミッションケース47が植付フレーム49の下部中央付近に支持されて、伝動軸が当該植付ミッションケース47から左右両側方に延設される。四つの植付伝動ケース46がそれぞれ伝動軸から後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0025】
ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動可能に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0026】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置される。苗載台41は、植付フレーム49の後部にガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台41は、横送り機構により左右往復横送り可能とされる。
【0027】
複数条(8条)の苗マット載置部を備える苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により1株の苗が当該苗載台41上の苗マットから切り取り可能とされる。
【0028】
植付部40においては、複数のフロート42が上下動自在に、整地ロータ43が昇降可能に植付フレーム49に支持されている。また、線引きマーカ48が植付フレーム49の左右両側に回動可能に支持される。
【0029】
昇降機構30は、植付部40を昇降させる機構であり、トップリンク31、ロワリンク32及び支持リンク33を有する昇降リンク機構34と、昇降シリンダ35等から構成される。リヤアクスルケース17から立設するリンク支持部材19の上部に、トップリンク31の前部が連結されて、リンク支持部材19の下部にロワリンク32の前部が連結される。支持リンク33の上部に、トップリンク31の後部が連結されて、支持リンク33の下部に、ロワリンク32の後部が連結される。支持リンク33の後部には、ヒッチブラケットを介して植付部40が取り付けられる。
【0030】
ロワリンク32の前端からマスト36が立設されて、該マスト36の上部が、昇降シリンダ35から突出するピストンロッド35aと連結されている。また、前記マスト36の上部とロワリンク32の後端との間には、補強部材37が連結されている。昇降機構30は、昇降シリンダ35を伸縮して、昇降リンク機構34を上下方向に駆動させることで、植付部40を昇降させる。
【0031】
以下では、図2から図11を用いて、ミッションケース18の近傍の構造について説明する。
【0032】
ミッションケース18は、エンジン14から前車輪12及び後車輪13や植付部40までの動力伝達機構の一部を収納するものである。また、ミッションケース18の内部には、図11に示す油圧回路70を流れる作動油で満たされており、該作動油を戻す作動油タンクとなる。油圧回路70は、本発明の一実施形態に係る田植機1の油圧系統とされる。
【0033】
図2に示すように、ミッションケース18の前後中央部であって左右両側下部には、左右のフロントアクスルケース16が設けられる。ミッションケース18の後部であって左右中央下部には、筒状の連結フレーム15の前端が固設され、該連結フレーム15の後端が、リヤアクスルケース17の前部に固設される。連結フレーム15は、田植機1における左右中央に位置する。連結フレーム15の後側上部には、ブラケット15aが設けられて、該ブラケット15aを介して、昇降シリンダ35が回動可能に支持される。
【0034】
ミッションケース18には、HST61と、HST用ポンプ62と、アクチュエータ用ポンプ63と、パワーステアリングケース64と、昇降バルブユニット65と、が設けられる。
【0035】
図2、図3及び図4に示すように、HST61は、エンジン14の動力を無段階に変速するものであり、ミッションケース18の前部であって左側上部に配置されて、ミッションケース18に取り付けられる。図11に示すように、HST61は、油圧ポンプ61c及び油圧モータ61dで構成され、エンジン14の動力により、油圧ポンプ61cを駆動して、この油圧ポンプ61cからの圧油の送油量を変更して、油圧モータ61dのモータ軸を変速可能に回転させる。
【0036】
HST61に溜まった余剰な作動油やリーク油は、油圧配管74を介して、ミッションケース18に戻される。詳細には、図4に示すように、HST61の前部に配管連結部61bが設けられ、該配管連結部61bに油圧配管74の一端が連結されて、油圧配管74はミッションケース18前部上のパワーステアリングケース64の前部を迂回させて、油圧配管74の他端がミッションケース18の前端右側面に設けられた配管連結部18aと連結される。こうして、油圧配管74が下方から撥ね上げられる泥等にかかり難くし、作動油も冷やされ易くしている。なお、配管連結部18aは、ミッションケース18に満たされた作動油の油面よりも下方に位置している。
【0037】
また、前記油圧配管74の途中でオイルクーラを介在させる構成とすることも可能である。例えば、図5に示すように、油圧配管74の途中でオイルクーラ84が介在される。オイルクーラ84は、油圧配管が側面視でラジエータ82に開口された通風口の面積と同程度の面積となるように複数回適宜に湾曲されて形成され、該ラジエータ82の側部に配置されて取り付けられる。詳細には、前記ラジエータ82を挟んでラジエータ82を冷却するためのエンジン14の右側に設けられたファンと対向するように配置されて、ラジエータ82の右側に取り付けられる。これにより、オイルクーラ84がラジエータ82とともに前記ファンの通風路上に位置するので、油圧配管74やHST61に流れる作動油の冷却効率を向上させることができる。
【0038】
また、図6に示すように、前記オイルクーラ84に複数の放熱フィン85・85・・・を設けることも可能である。この場合、放熱フィン85・85・・・により、オイルクーラ84の冷却面積を大きくすることができるので、油圧配管74に流れる作動油の冷却効率をさらに向上させることができる。なお、ラジエータ82及び該ラジエータ82を冷却するためのファンをエンジン14の左側に配置することで、HST61とオイルクーラ84を連結する油圧配管74を短く構成することができる。
【0039】
つまり、従来では油圧配管74を含むHST61の油圧系統を冷却するために、図1に示すようにHST61の左側に冷却ファン83が配置されて、該冷却ファン83がHST61の入力軸に取り付けられる構成であったが、図5や図6に示すオイルクーラ84によると、冷却ファン83が不要となるので左右のフロントアクスルケース16間を短くして前車輪12回りをコンパクトに構成することができる。
【0040】
図2及び図4に示すように、HST用ポンプ62は、HST61に作動油を圧送するものであり、ミッションケース18の前部であって、右側上部に配置されて、ミッションケース18に取り付けられる。図11に示すように、HST用ポンプ62は、エンジン14の動力により駆動されて、油圧配管79からミッションケース18内の作動油を吸入し、作動油を圧油化して油圧配管71からHST61の油圧ポンプ61cに圧送する。
【0041】
HST用ポンプ62は、油圧配管71を介してHST61と連結される。詳細には、図4に示すように、HST用ポンプ62の後部には、吐出ポートとなる配管連結部62aが設けられ、該配管連結部62aに油圧配管71の一端が連結され、油圧配管71はミッションケース18前部上のパワーステアリングケース64の前部を迂回させて、油圧配管71の他端がHST61の前部に設けられた配管連結部61aと連結される。こうして、油圧配管71が下方から撥ね上げられる泥等にかかり難くし、作動油も冷やされ易くしている。
【0042】
図2及び図4に示すように、アクチュエータ用ポンプ63は、各種アクチュエータに作動油を圧送するものである。アクチュエータ用ポンプ63は、HST用ポンプ62の右側に配置されて、HST用ポンプ62とともにミッションケース18に取り付けられる。図11に示すように、アクチュエータ用ポンプ63は、エンジン14の動力により駆動されて、油圧配管79からミッションケース18内の作動油を吸入し、作動油を圧油化して油圧配管72からパワーステアリングケース64に圧送する。
【0043】
アクチュエータ用ポンプ63は、油圧配管72を介してパワーステアリングケース64と連結される。詳細には、図4に示すように、アクチュエータ用ポンプ63の後部には、吐出ポートとなる配管連結部63aが設けられ、該配管連結部63aに油圧配管72の一端が連結され、油圧配管72はミッションケース18の右前側部を迂回させて、油圧配管72の他端がパワーステアリングケース64の右側に設けられた配管連結部64aと連結される。こうして、油圧配管72が下方から撥ね上げられる泥等にかかり難くし、作動油も冷やされ易くしている。
【0044】
また、HST用ポンプ62及びアクチュエータ用ポンプ63の下方には、オイルフィルタ80が設けられ、該オイルフィルタ80、HST用ポンプ62及びアクチュエータ用ポンプ63の前側に油圧配管79が設けられ、ミッションケース18内の作動油は、オイルフィルタ80を経由して、油圧配管79からHST用ポンプ62及びアクチュエータ用ポンプ63に供給される。
【0045】
図2から図4に示すように、パワーステアリングケース64は、操向ハンドル24の操作を補助するものであり、ミッションケース18の前部であって、左右中央上面に配置されて、ミッションケース18に取り付けられる。図11に示すように、パワーステアリングケース64は、操向油圧バルブ64cや油圧モータ64dを備え、操向ハンドル24の操作により、操向油圧バルブ64cを操作して、油圧配管72からの作動油の流れを制御することで、油圧モータ64dを駆動して操向ハンドル24の操作を補助し、左右の前車輪12の向きを小さい操作力で容易に操作できるようにしている。
【0046】
パワーステアリングケース64は、油圧配管73を介して、昇降バルブユニット65と連結される。詳細には、図2及び図4に示すように、パワーステアリングケース64の上部右側に他の油圧機器に圧油を送油可能な配管連結部64bが設けられ、該配管連結部64bに油圧配管73の一端が連結されて、油圧配管73はミッションケース18の右側部を迂回して、昇降バルブユニット65の上部右側に設けられた配管連結部65aと連結される。パワーステアリングケース64は、油圧配管72からの圧油を、油圧配管73から昇降バルブユニット65に送油する。
【0047】
図2に示すように、昇降バルブユニット65は、ミッションケース18の後部に取り付けられる。詳細には、ミッションケース18の上部後面であって、左右中央に配置されて、ミッションケース18に取り付けられる。図8に示すように、昇降バルブユニット65は、四つのボルト81でミッションケース18に対して着脱可能に取り付けられており、メンテナンス性及び組立性が良好となるように構成される。また、図3に示すように、昇降バルブユニット65は、ミッションケース18における後部の下部から後方に延出する延出部18d及び連結フレーム15の上方となるように配置されて、走行時における昇降バルブユニット65への泥のかかりを防止するように構成される。
【0048】
また、図1に示すように、昇降バルブユニット65は、ステップ23の下方に配置されて、ステップ23を取り外したり、ステップ23の一部を開放することで、昇降バルブユニット65のメンテナンスを容易に行うことができるように構成される。さらに、図2に示すように、重量物である昇降バルブユニット65は、ミッションケース18の左右中央位置、つまり、田植機1の左右中央位置に配置されて、田植機1の左右の重量バランスが良好となるように構成される。
【0049】
昇降バルブユニット65は、油圧配管75を介して、昇降シリンダ35と連結される。詳細には、昇降バルブユニット65の上部左右中央側には、配管連結部65bが設けられ、該配管連結部65bに油圧配管75の一端が連結されて、他端が昇降シリンダ35の上部左側に設けられた配管連結部35eと連結される。このように、昇降バルブユニット65がミッションケース18の後部に取り付けられるので、ミッションケース18の後方に配置された昇降シリンダ35と連結する油圧配管75の長さを短くすることができる。昇降バルブユニット65は、昇降シリンダ35への圧油の流れを制御して、昇降シリンダ35を作動させて、植付部40を昇降させる。
【0050】
詳細には、図11に示すように、昇降バルブユニット65は、昇降シリンダ35への圧油の流れを制御する電磁弁(比例弁)であるコントロールバルブ65fを内装して、コントロールバルブ65fがソレノイドにより操作されて、油圧配管73から供給される作動油の流れを制御することで、昇降シリンダ35の油室35dに流れる作動油量を調節して、植付部40を昇降させる。また、昇降バルブユニット65は、ストップバルブ65gを備え、該ストップバルブ65gがコントロールバルブ65fと昇降シリンダ35との間に介設されて、当該ストップバルブ65gの操作により植付部40が任意の高さに停止可能に構成される。
【0051】
昇降シリンダ35は、油圧シリンダで構成され、ピストンロッド35aと、該ピストンロッド35aの基端に固設されたピストン35bと、該ピストン35bを内装するシリンダチューブ35c等から構成されている。シリンダチューブ35cは、その内部が、前記ピストン35bによって、ロッド室側とヘッド室側の二つ部屋に分離される。ロッド室側の油室が昇降シリンダ35の上昇側の油室35dとなり、ヘッド室側の油室が下降側の油室35fとなる。なお、油室35dには、油圧を蓄圧するアキュムレータ38が挿通されている。
【0052】
前記油室35dは、配管連結部35eと連通されて、該配管連結部35eが油圧配管75と連結される。昇降シリンダ35は、油圧配管75からの圧油により作動可能とされる。前記油室35fは、配管連結部35gと連通されて、該配管連結部35gが油圧配管78と連結される。油室35fに漏れたリーク油は、油圧配管78を介してミッションケース18に戻す構成とされる。
【0053】
図7は、昇降バルブユニット65をミッションケース18から取り外した場合における、ミッションケース18後部の構成を示す斜視図である。前記油圧配管78は、連結フレーム15の右側面に固設された結束バンド78aにより連結フレーム15に沿わせる構成とし、その前端がミッションケース18の後部下側に設けられた配管連結部18cと連結される。なお、配管連結部18cは、ミッションケース18に満たされた作動油の油面よりも下方に位置している。
【0054】
また、前記昇降バルブユニット65は、ミッションケース18と連通される。詳細には、昇降バルブユニット65は、図9に示すように、ミッションケース18と当接する当接面65dに二つの連通孔65eが形成されて、ミッションケース18は、図10に示すように、前記当接面65dと当接する当接面18eに二つの連通孔18fが形成される。そして、これら連通孔65e・18fが連通されて、昇降バルブユニット65からミッションケース18に、作動油が戻される構成とされる。この際、該作動油は、ミッションケース18内で満たされる作動油の油面より下側に戻される構成とされる。このように、昇降バルブユニット65は、ミッションケース18と当接する当接面65dに、作動油を戻す連通孔65eが形成されて、該連通孔65eがミッションケース18の連通孔18fと連通されて作動油が戻されるので、昇降バルブユニット65とミッションケース18とを連結する油圧配管が不要となる。なお、連通孔65eは、ミッションケース18に満たされた作動油の油面よりも下方に位置している。なお、昇降バルブユニット65における一方の連通孔65eとコントロールバルブ65fとの間には、複数のリリーフバルブ65hが介設される(図11参照)。
【0055】
図11に示すように、昇降バルブユニット65は、油圧配管76を介して、水平制御バルブユニット66と連結される。詳細には、昇降バルブユニット65の上部左側には、配管連結部65cが設けられ、該配管連結部65cに油圧配管76の一端が連結されて、他端が水平制御バルブユニット66の上部に設けられた配管連結部と連結される。昇降バルブユニット65は、作動油を分配するためのフローデバイダ65iを備え、分配された作動油を油圧配管76から水平制御バルブユニット66に供給する。
【0056】
図1に示すように、水平制御バルブユニット66は、昇降リンク機構34の後部に設けられる。図11に示すように、水平制御バルブユニット66は、水平制御用ソレノイドバルブ66aを内装して、該水平制御用ソレノイドバルブ66aを切り換えることで、当該水平制御バルブユニット66と一体的に設けられた水平シリンダ67を伸縮させて植付部40が水平となるように制御される。植付部40には、傾斜センサが配設されて、植付部40が水平位置より傾くと、水平制御用ソレノイドバルブ66aが切り換えられて、水平シリンダ67が伸長または縮小されて、植付部40を水平に保つように制御される。
【0057】
水平制御バルブユニット66は、油圧配管77を介して、ミッションケース18と連結される。詳細には、水平制御バルブユニット66の上部には、ドレンポートとなる配管連結部が設けられ、該配管連結部に油圧配管77の一端が連結されて、他端がミッションケース18の後部で上部に設けられた配管連結部18b(図8参照)と連結される。水平制御バルブユニット66は、水平シリンダ67の作動油を油圧配管77からミッションケース18に戻す構成としている。なお、油圧配管75・76・77は、結束バンド等で束ねることで、油圧系統がコンパクトとなるように構成される。
【0058】
このような構成の田植機1によると、図2に示すように、熱源となるHST61が、昇降バルブユニット65から離間されることとなる。また、パワーステアリングケース64も同様に、熱源となるHST61から適宜な間隔を空けて配置されることとなる。これにより、昇降バルブユニット65やパワーステアリングケース64に流れる作動油の温度上昇を抑えることができる。従って、作動油量の低減、作動油の劣化、作動油の交換回数を少なくすることができる。また、油圧系統の冷却を少なくすることができ、コストを低減できる。
【0059】
以上のように、本発明の一実施形態に係る田植機1においては、エンジン14の動力で駆動する油圧ポンプとなるアクチュエータ用ポンプ63と、前記アクチュエータ用ポンプ63に供給される作動油が満たされているミッションケース18と、前記ミッションケース18の後方に配置され、前記アクチュエータ用ポンプ63から圧油が送油されることで植付部40を昇降させる昇降シリンダ35と、前記昇降シリンダ35への作動油の流れを制御するコントロールバルブ65fを内装する昇降バルブユニット65と、を備える田植機1において、前記昇降バルブユニット65を、前記ミッションケース18の後部に取り付けるものである。これにより、昇降バルブユニット65とミッションケース18を連結する油圧配管及び昇降バルブユニット65と昇降シリンダ35を連結する油圧配管の長さを短くすることができる。従って、油圧配管が占有するスペースを小さくすることができ、油圧系統がコンパクトとなる。
【0060】
また、前記昇降バルブユニット65は、前記ミッションケース18と当接する当接面65dに、作動油を戻す連通孔65eが形成されるものである。これにより、昇降バルブユニット65とミッションケース18を連結する配管が不要となり、油圧系統が一層コンパクトとなる。
【0061】
また、前記昇降バルブユニット65を、ステップ23の下方に配置するものである。これにより、ステップ23を取り外したり、ステップ23の一部を開放することで、昇降バルブユニット65のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0062】
また、前記エンジン14の動力を変速するHST61を備え、前記HST61を、前記ミッションケース18の前部に配置するものである。これにより、昇降バルブユニット65が、熱源となるHST61から離間することとなり、昇降バルブユニット65に流れる作動油の温度上昇を抑えることができる。従って、作動油量の低減、作動油の劣化、作動油の交換回数を少なくすることができる。
【0063】
また、前記HST61を冷却するオイルクーラ84を、ラジエータ82の側部に配置するものである。これにより、HST61の冷却効率を向上させることができる。
【0064】
以下では、図12を用いて、田植機1の走行速度を変更する制御に関する構成について説明する。
【0065】
変速ペダル26は、田植機1の走行速度を変更するための操作具であり、詳細には、後述する変速モータ91の回動角度を変更するための操作具である。変速ペダル26はダッシュボード21の右下方に配置される。変速ペダル26は、その操作量が、変速ペダル用ポテンショメータ26aにより検出可能に構成される。変速ペダル用ポテンショメータ26aは、制御装置90と接続され、その検出信号を制御装置90に送信する。
【0066】
変速モータ91は、エンジン14の回転数の変更、HST61の変速比の変更、主クラッチの断接の切り換え、及び制動装置の動作の切り換え、を行うものである。変速モータ91は、その出力軸がリンク機構を介して、エンジン14の回転数を調節する調速装置14a、HST61の可動斜板の角度を変更する変速アーム61e、主クラッチを入切操作するクラッチアーム27、及び制動装置を制動操作するブレーキアーム28と、に連結される。変速モータ91は、制御装置90と接続され、制御装置90から送信された信号に基づいて駆動制御される。
【0067】
制御装置90は、変速モータ91を制御するものである。制御装置60は、走行部10の任意の位置に設けられる。制御装置60は、具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置60には、変速モータ91の動作を制御するための各種プログラムやマップが予め記憶される。制御装置90は、変速ペダル用ポテンショメータ26aの検出値と前記各種プログラムやマップに基づいて、変速モータ91を駆動制御する。
【0068】
このように構成された田植機1においては、変速モータ91が浸水等により破損して動かなくなると、走行が不可能となる。そこで、当該田植機1によると、前記リンク機構の一部を構成する回転軸を、変速モータ91だけでなく、非常時には手動で回動操作可能に構成されている。以下では、図13から図15を用いて、その構成を説明する。
【0069】
図13に示すように、前記変速モータ91は、モータケース100で覆われている。モータケース100は、ダッシュボード21下方の左側に配置された左カバー体9の内部に設けられており(図1参照)、当該左カバー体9は、工具等を用いず容易に脱着可能に構成される。
【0070】
モータケース100は、左側の左ケース100Lと右側の右ケース100Rとで形成され、左ケース100Lから前記回動軸となる手動動作軸101が左方に突出される。図14に示すように、手動動作軸101には、円筒状の筒軸102が相対回転可能に外嵌されて、手動動作軸101と筒軸102が二重軸となる二重軸構造となっている。筒軸102の左端部には、ナット104が固設され、当該ナット104と同軸上に穿設孔102aが穿設される。手動動作軸101の左端部には、筒軸102の穿設孔102aと同軸上に係合部101aが穿設される。
【0071】
図14(a)に示すように、変速モータ91が動作可能な通常時において、ボルト103がナット104及び穿設孔102aに挿嵌されて、当該ボルト103の先端部が前記手動動作軸101の係合部101aと当接される。つまり、手動動作軸101と筒軸102とが連結されて一体的に回動可能に構成される。
【0072】
筒軸102の中途部には、扇形状の扇形ギヤ105が固設され、該扇形ギヤ105は、その外周に設けられた歯部が、変速モータ91の出力軸に設けられたギヤと噛合する。手動動作軸101の右端には、L字状の伝動ギヤ106の一端が固設され、該伝動ギヤ106の屈曲部で、ロッド107の前端が固設される。ロッド107の後端は、変速アーム61eと、クラッチアーム27と、ブレーキアーム28と、に連結される(図12参照)。
【0073】
また、前記扇形ギヤ105には、円周方向に延びるカム溝が設けられ、該カム溝に摺動自在に挿嵌された伝動軸が連結部材の一端と連結される。該連結部材の他端は、図13に示す操作アーム108の一端と連結されている。操作アーム108の他端は、ワイヤー109等を介してエンジン14の調速装置14aと連結される。
【0074】
そして、図14(b)に示すように、変速モータ91が動作不可時には、ボルト103をナット104から弛緩して、手動動作軸101と筒軸102との連結を解除する。そして、手動動作軸101の左端101bに、補助アーム110を取り付けた上で、当該補助アーム110を操作することで、変速アーム61eと、クラッチアーム27と、ブレーキアーム28の操作を行う。この際、左手で補助アーム110を操作して、右手で操向ハンドル24を操作することが可能であるので、運転席22に座った姿勢で圃場等からの脱出操作が可能となる。
【0075】
さらに、図15に示すように、左ケース100Lの表面上の手動動作軸101が突出する位置近傍に、変速ゲージ100aが設けられる。変速ゲージ100aは、左側面視で連結時における手動動作軸101の回動によるボルト103の回動範囲を示す。変速ゲージ100aは、本実施形態においては、手動動作軸101が突出する位置から左方に配置される。このように、変速ゲージ100aが設けられるので、ボルト103の位置が変速ゲージ100aのどの部分に位置しているかによって、HST61の変速比等がわかり、その調整が容易となる。また、変速ゲージ100aは、連結解除時における手動動作軸101の操作量の目安となる。なお、変速ゲージ100aには、主クラッチがONとなるクラッチON位置100bが形成される。
【符号の説明】
【0076】
1 田植機
14 エンジン
18 ミッションケース
23 ステップ
35 昇降シリンダ
40 植付部
61 HST
63 アクチュエータ用ポンプ(油圧ポンプ)
65 昇降バルブユニット
65d 当接面
65e 連通孔
65f コントロールバルブ
82 ラジエータ
84 オイルクーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力で駆動する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプに供給される作動油が満たされているミッションケースと、
前記ミッションケースの後方に配置され、前記油圧ポンプから圧油が送油されることで植付部を昇降させる昇降シリンダと、
前記昇降シリンダへの圧油の流れを制御するコントロールバルブを内装する昇降バルブユニットと、
を備える田植機において、
前記昇降バルブユニットを、前記ミッションケースの後部に取り付けることを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記昇降バルブユニットは、前記ミッションケースと当接する当接面に、作動油を戻す連通孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記昇降バルブユニットを、ステップの下方に配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記エンジンの動力を変速するHSTを備え、
前記HSTを、前記ミッションケースの前部に配置することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の田植機。
【請求項5】
前記HSTを冷却するオイルクーラを、ラジエータの側部に配置することを特徴とする請求項4に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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