説明

男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置

【課題】多数の人が使用する便所に設置された男子用床置型小便器の周縁部の床面上に滴り落ちた尿を、迅速に乾燥させ、且つアンモニア臭気を消臭する。
【解決手段】男子用床置型小便器1の尿受け壁部2の外周壁面に、上方部を送風室6とすると共に、下方部を吸気室7とした送風・吸気ガイドボックス3が配設固定され、送風室6の前部壁面8に多数の送風用小孔9を穿設し、且つ吸気室7の前部壁面8に多数の吸気用小孔10が穿設され、更に、送風室6には送風パイプ11の下流側が開口連通されると共に、送風パイプ11の適位置に送風ファン14と電気ヒータ15を取付ける一方、前記吸気室7には、吸気パイプ16の上流側が開口連通されると共に、前記吸気パイプ16の適位置に、吸気ファン19と消臭部材20を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビル、デパート、劇場、ホテル等において、多数の人が使用する便所、あるいは公衆便所に設置された男子用床置型小便器の周縁部の床面上に滴り落ちた尿を速やかに乾燥させると共に、アンモニア臭気を消臭することができる男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排尿中に男子用床置型小便器の周縁部の床面上に滴り落ちた尿によって濡れた床面は、家庭用の場合は、トイレットペーパー等により拭き取ることができるが、多数の人が使用するオフィスビル、デパート、劇場、ホテル等における便所や、公衆便所の場合、自然乾燥によって乾燥させる以外に方法はなく、更に、アンモニア臭気も全く除去することはできなかった。
【0003】
そして、排尿中に男子用床置型小便器の周縁部の床面上に滴り落ちた尿の乾燥および消臭装置につき、過去の特許文献を遡及検索したところ、これらに関するものは皆無で、単に吸水紙を用いた尿の除去装置として、下記の特許文献が公知である。
【0004】
【特許文献1】特開2002−21161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のように、自然乾燥によって床置型小便器の周縁部の床面上に滴り落ちた尿を乾燥させると、便所内に蒸発によりアンモニア臭気を発散して不快感を与えると共に、多数の人が使用する便所においては、ほとんど自然乾燥されず、不衛生であると共に、多数の人が床面上の尿を踏みつけて周囲に拡散して該床面を汚染し、見苦しく、且つ床面を変色させてしまうという課題があった。
【0006】
また、前記特許文献1に記載のものは、床置型小便器の周縁部の床面上に滴り落ちた尿を吸水紙に吸収するようにしたものであるが、多数の人が使用する便所においては、直ぐに給水紙の吸水能力が限界となると共に、乾燥することなく、アンモニア臭気を発散し、更に、吸水紙は適宜取替えなければならず、手間がかかるという課題があった。
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたもので、オフィスビル、デパート、劇場、ホテル等において、多数の人が使用する便所、あるいは公衆便所に設置された男子用床置型小便器の周縁部の床面上に滴り落ちた尿を、送風ファンからの温風を床面に噴射して迅速に乾燥させ、且つ尿の乾燥に伴い発散するアンモニア臭気を吸引ファンで吸引して消臭部材で消臭することにより、男子用床置型小便器の周縁部の床面上の尿を乾燥させて除去すると共に、アンモニア臭気が便所内に籠るのを阻止し、合せて床面の汚染を防止して衛生的で清潔な状況を作り出し、更に、床面の変色をも防止することができる男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、男子用床置型小便器の下面に設けられた尿受け壁部の外周壁面に、送風・吸気ガイドボックスが配設固定され、前記送風・吸気ガイドボックスは、中央に区画壁を設けて上下二室に区画して、該上下二室のうち、いずれか一方を送風室とすると共に、他方を吸気室とする一方、前記送風室の前部壁面に多数の送風用小孔が穿設され、且つ前記吸気室の前部壁面に多数の吸気用小孔が穿設され、更に、前記送風室には送風パイプの下流側が開口連通されると共に、該送風パイプの上流側端部を送気口とし、且つ前記送風パイプの適位置に送風ファンと電気ヒータを取付ける一方、前記吸気室には、吸気パイプの上流側が開口連通されると共に、該吸気パイプの下流側端部を排気口とし、且つ前記吸気パイプの適位置に、吸気ファンと消臭部材を取付けるという手段、または、
男子用床置型小便器の下面に設けられた尿受け壁部の外周壁面に、送風室を備えた送風ガイドボックスと吸気室を備えた吸気ガイドボックスを上下二段に亘って、または前記吸気ガイドボックスと送風ガイドボックスを上下二段に亘って配設固定する一方、前記送風室の前部壁面に多数の送風用小孔が穿設され、且つ前記吸気室の前部壁面に多数の吸気用小孔が穿設され、更に、前記送風室には送風パイプの下流側が開口連通されると共に、該送風パイプの上流側端部を送気口とし、且つ前記送風パイプの適位置に送風ファンと電気ヒータを取付ける一方、前記吸気室には、吸気パイプの上流側が開口連通されると共に、該吸気パイプの下流側端部を排気口とし、且つ前記吸気パイプの適位置に、吸気ファンと消臭部材を取付けるという手段、
を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、オフィスビル、デパート、劇場、ホテル等において、多数の人が使用する便所、あるいは公衆便所に設置された男子用床置型小便器の周縁部の床面上に滴り落ちた尿を、送風ファンからの温風を床面に噴射して迅速に乾燥させ、且つ尿の乾燥に伴い発散するアンモニア臭気を吸引ファンで吸引して消臭部材で消臭することにより、男子用床置型小便器の周縁部の床面上の尿を乾燥させて除去すると共に、アンモニア臭気が便所内に籠るのを阻止し、合せて床面の汚染を防止して衛生的で清潔な状況を作り出し、更に、床面の変色をも防止することができる。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例につき図面に基づいて詳細に説明する。本発明男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置は、多数の人が使用するオフィスビル、デパート、劇場、ホテル等における便所、あるいは公衆便所において既に設置されている男子用床置型小便器1の下面に設けられた尿受け壁部2の外周壁面に取付けるタイプのものである。
【0011】
前記男子用床置型小便器1の下面に設けられた尿受け壁部2の外周壁面には、送風・吸気ガイドボックス3が、床面4よりやや高い位置に配設固定されている。前記送風・吸気ガイドボックス3は、特に限定する必要はないが、好ましくは、前記尿受け壁部2の外周壁面に接するように配設固定することが推奨される。
【0012】
前記送風・吸気ガイドボックス3は、中央に区画壁5を設けて上下二室に区画して、上方部を送風室6とすると共に、下方部を吸気室7とする一方、前記送風室6の前部壁面8には、多数の送風用小孔9が穿設され、且つ前記吸気室7の前部壁面8には、多数の吸気用小孔10が穿設されている。
【0013】
図1、図2においては、上下二室のうち、上方部を送風室6とすると共に、下方部を吸気室7としているが、逆に上方部を吸気室7とし、下方部を送風室6としてもよい(図示省略)。なお、前記送風用小孔9は、特に限定する必要はないが、好ましくは、男子用床置型小便器1に近接した床面4上に前記風を噴射できるように、やや下向きに傾斜して穿設することが推奨される。
【0014】
前記多数の送風用小孔9および吸気用小孔10に代えて、図3、図4に示すように、多数の送風用スリット9aおよび吸気用スリット10aをそれぞれ設けてもよい。
【0015】
前記送風・吸気ガイドボックス3の送風室6には、送風パイプ11の下流側が開口連通されると共に、該送風パイプ11は、男子用床置型小便器1の一方側の垂直壁部12の側面に沿って上方へ延設されて、上流側端部を送気口13とし、更に前記送風パイプ11の適位置に送風ファン14が取付けられていて、該送風ファン14により空気を送風パイプ11を介して送風室6に圧送し、然る後、該送風室6内に圧送された空気を多数の送風用小孔9から床面4上へ向けて噴射して、該床面4上に滴り落ちた尿を乾燥させる。
【0016】
前記床面4上に噴射する空気は、滴り落ちた尿を速やかに乾燥させるには、温風が好ましく、そして、前記温風を送風するには、前記送風ファン14の下流側の送風パイプ11の適位置に空気を加熱する電気ヒータ15を備えることが推奨され、これにより温風を送風して床面4上に滴り落ちた尿を、迅速に乾燥させることができる。
【0017】
なお、前記床面4上に噴射する空気は、前記のように送風パイプ11に電気ヒータ15を備えることなく、送風ファン14のみを備えてもよい。この場合、前記電気ヒータ15を備えたものに比して時間はかかるが、前記床面4上に滴り落ちた尿を乾燥させることは、可能である。
【0018】
更に、前記送風・吸気ガイドボックス3の吸気室7には、床面4上に滴り落ちた尿を前記送風室6内からの空気の圧送により乾燥させた後、発散するアンモニア臭気を吸気するため、吸気パイプ16の上流側が開口連通されると共に、該吸気パイプ16は、前記男子用床置型小便器1の他方側の垂直壁部17の側面に沿って上方へ延設されて、下流側端部を排気口18とし、更に、前記吸気パイプ16の適位置に、吸気ファン19が取付けられると共に、前記吸気ファン19の上流側、または下流側の吸気パイプ16の適位置に、アンモニア臭気を消臭するため、特に限定する必要はないが、好ましくは、消臭剤を添着したハニカム構造の消臭フィルタより成る消臭部材20を配置することが推奨され、これにより便所内へはアンモニア臭気が消臭された空気が排出され、便所内にアンモニア臭気が籠ることがない。
【0019】
なお、前記のように、吸気ファン19と消臭部材20とを別部材として吸気パイプ16に設置するのではなく、図示していないが、消臭部材20を一体に備えた吸気ファンを前記吸気パイプ16の適位置に配置してもよい。
【0020】
前記送風ファン14の駆動は、用をたした利用者が男子用床置型小便器1から離れたことをセンサー(図示せず)が検知すると洗浄水が流れるが、前記センサーの検知信号を受けて送風ファン14が駆動を開始し、1分間等の予め設定された時間駆動して、送風室6からの電気ヒータ15によって加温された空気の送風により床面4上に滴り落ちた尿を乾燥させ、前記設定時間の間駆動して送風ファン14が停止すると、その停止信号を受けて、吸気ファン19が駆動を開始して、1分間等の予め設定された時間駆動して、アンモニア臭気を吸気して、消臭部材20に接触させて消臭するよう構成することが好ましい。
【0021】
前記図1〜図4においては、送風室6と吸気室7とが、送風・吸気ガイドボックス3に区画壁5を設けて一体に形成されているが、図5(送風用小孔9と吸気用小孔10を備えたタイプ)、図6(送風用スリット9aと吸気用スリット10aを備えたタイプ)に示すように送風室6を備えた送風ガイドボックス3aと、吸気室7を備えた吸気ガイドボックス3bとを別々に設けてもよい。なお、図5、図6においては、送風ガイドボックス3aと吸気ガイドボックス3bとが上下二段に亘って設けられているが、吸気ガイドボックス3bと送風ガイドボックス3aとを逆にして上下二段に亘って設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置の斜視図である。
【図2】同送風・吸気ガイドボックス部分の縦断面図である。
【図3】本発明男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置の他の実施例を示す斜視図である。
【図4】同送風・吸気ガイドボックス部分の縦断面図である。
【図5】本発明男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置の送風・吸気ガイドボックス部分のまた他の実施例を示す縦断面図である。
【図6】本発明男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置の送風・吸気ガイドボックス部分のまた更に他の実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 男子用床置型小便器
2 尿受け壁部
3 送風・吸気ガイドボックス
3a 送風ガイドボックス
3b 吸気ガイドボックス
4 床面
5 区画壁
6 送風室
7 吸気室
8 前部壁面
9 送風用小孔
9a 送風用スリット
10 吸気用小孔
10a 吸気用スリット
11 送風パイプ
13 送気口
14 送風ファン
15 電気ヒータ
16 吸気パイプ
18 排気口
19 吸気ファン
20 消臭部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
男子用床置型小便器の下面に設けられた尿受け壁部の外周壁面に、送風・吸気ガイドボックスが配設固定され、前記送風・吸気ガイドボックスは、中央に区画壁を設けて上下二室に区画して、該上下二室のうち、いずれか一方を送風室とすると共に、他方を吸気室とする一方、前記送風室の前部壁面に多数の送風用小孔が穿設され、且つ前記吸気室の前部壁面に多数の吸気用小孔が穿設され、更に、前記送風室には送風パイプの下流側が開口連通されると共に、該送風パイプの上流側端部を送気口とし、且つ前記送風パイプの適位置に送風ファンと電気ヒータを取付ける一方、前記吸気室には、吸気パイプの上流側が開口連通されると共に、該吸気パイプの下流側端部を排気口とし、且つ前記吸気パイプの適位置に、吸気ファンと消臭部材を取付けたことを特徴とする男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置。
【請求項2】
男子用床置型小便器の下面に設けられた尿受け壁部の外周壁面に、送風室を備えた送風ガイドボックスと吸気室を備えた吸気ガイドボックスを上下二段に亘って、または前記吸気ガイドボックスと送風ガイドボックスを上下二段に亘って配設固定する一方、前記送風室の前部壁面に多数の送風用小孔が穿設され、且つ前記吸気室の前部壁面に多数の吸気用小孔が穿設され、更に、前記送風室には送風パイプの下流側が開口連通されると共に、該送風パイプの上流側端部を送気口とし、且つ前記送風パイプの適位置に送風ファンと電気ヒータを取付ける一方、前記吸気室には、吸気パイプの上流側が開口連通されると共に、該吸気パイプの下流側端部を排気口とし、且つ前記吸気パイプの適位置に、吸気ファンと消臭部材を取付けたことを特徴とする男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置。
【請求項3】
請求項1、または請求項2記載の男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置において、多数の送風用小孔および吸気用小孔に代えて、複数本の送風用スリットおよび吸気用スリットを備えたことを特徴とする男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置。
【請求項4】
請求項1、または請求項2記載の男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置において、送風パイプの適位置に送風ファンのみを取付けたことを特徴とする男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置。
【請求項5】
請求項1、または請求項2記載の男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置において、吸気パイプの適位置に取付けられた吸気ファンと消臭部材に代えて、消臭部材を一体に備えた吸気ファンを吸気パイプの適位置に設置したことを特徴とする男子用床置型小便器における床面の乾燥・消臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−138399(P2007−138399A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329587(P2005−329587)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(593030428)
【Fターム(参考)】