説明

男性失禁者用尿取りパッド

【課題】簡易な構造であるにもかかわらず吸収材への尿の吸収が十分にできるため、排尿障害者および夜尿による失禁に対して、衣服、下着を濡らすことなく失禁の不安、不快感から開放でき、また、衣服を脱がすこともなく、簡単に交換、後始末ができる。
【解決手段】
尿吸収材で形成された袋状吸収体3の外周部が防水カバー4で覆われ、防水カバー面に男性の下着に固定できる止着手段8を有し、使用する男性Mの腹上側から両太腿の付け根に添うように、使用時平面視が逆八の字状の斜面6につながる密閉された底部を有し、使用時平面視上端に開口部5が形成され、この開口部に使用時平面視の幅が狭くなるように絞り部5aが形成され、使用する男性の陰茎を袋内部に収納するためのU字型切欠部2が形成され、この切欠部の先端が腹上に接する面側の中央部から密閉された底部6aとの間に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は男性失禁者用尿取りパッドに関し、特に被介護者および尿失禁者にとって取り扱いが容易な袋状の尿取りパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、男性失禁者用尿取りパッドとしては、下部を密閉端とし、上部を開口端とした吸収材からなる袋体を形成し、開口端の片面の上部中心より長方形に切り抜いて、ペニスを入れる切り込み部を設けた切り込み部の上部両端に、閉じ止め具を取り付けた男性用尿取りパットが開示されている(特許文献1)。
また、軽失禁者や、排尿後も少量の尿の漏れが生じる軽度の尿失禁者用者に好適な男性用失禁パッドとして、液透過性のトップシートと、透湿性で液不透過性のバックシートと、これら両シート間に液吸収シートが設けられ、股部方向が狭幅で、その反対方向が広幅であり、ほぼ広幅部分の幅のほぼ中央部に男性の性器部の陰茎を取り出すためのほぼ縦方向に走るスリット部が設けられており、スリット部の左右の縁近傍部分が重ね合わされてオーバーラップした構造にされており、バックシートのほぼ広幅部分の外側面には、その左右の両縁近傍にほぼ縦方向にすべり止めテープが設けられている男性用失禁パッドが開示されている(特許文献2)。
さらに、「野球のホームベース形」か、または「羽子板形」の偏平なポケット状袋体であって、広巾部の縦長さ方向末端に横巾が60mm以上のポケット開口部を有する柔軟性防水シートからなる肌側被覆材と、上記ポケット開口部の裏側位置に膨張可能なベローズが形成された柔軟性防水シートからなる外側被覆材の間に吸収体を包蔵した、男性用失禁処理用品が開示されている(特許文献3)。
男性用尿取りパットを他の下着類と併用する技術も開示されている(特許文献4、特許文献5)。
【0003】
また、尿取りパットの市販品としては、商品名アテント尿取りパッド(大王製紙(株))、商品名ライフリー心とお肌のケアパッド(ユニ・チャーム(株))等がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3104109号公報
【特許文献2】特開2008−23247号公報
【特許文献3】特開平7−124190号公報
【特許文献4】実用新案登録第3087271号公報
【特許文献5】特開2006−218144号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.kaientai.cc/goodslistc.aspx?ccd=0813
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の尿取りパットは、パット交換時毎にパットの閉じ止め具を開閉したり、併用している紙おむつや下着を脱がせたりしないと尿取りパットの交換ができないという問題がある。
また、固定具や止め具を尿取りパット装着時に取り扱うので装着が煩雑になったり、被介護者の尊厳を害したりする場合がある。さらに従来の尿取りパットは、装着した被介護者の体重移動により吸収材への尿の吸収が阻害され計算上の吸収量が得られないという問題がある。
【0007】
本発明は以上のような従来の問題に鑑み、簡易な構造であるにもかかわらず吸収材への尿の吸収が十分にできるため、排尿障害者および夜尿による失禁に対して、衣服、下着を濡らすことなく失禁の不安、不快感から開放でき、また、紙おむつのときのように、衣服を脱がすこともなく、簡単に交換、後始末ができる男性失禁者用尿取りパッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、自らトイレに行くことが困難な被介護者を長年にわたり介護した経験から、介護者および被介護者双方にとって、紙おむつは脱着時および使用時に必ずしも十分な介護用具ではなく、特に頻度の多い排尿のためには不十分であると感じていた。尿取りパットについて工夫を重ねた結果、逆八の字状の斜面につながる密閉された底部を有して、尿取りパットの開口部に絞り部を形成し、開口部の中央部から下のほうにU字型切欠部を設けることで、排尿された尿が漏れることなく、かつ介護者に負担にならず、被介護者の尊厳を害することなく、極めて簡単な方法で脱着できる尿取りパットができることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0009】
すなわち、本発明の尿取りパッドは、尿吸収材で形成された袋状吸収体の外周部が防水カバーで覆われた男性失禁者用尿取りパッドであり、この尿取りパッドは、覆われている防水カバー面に男性の下着に固定できる止着手段を有し、使用する男性の腹上側から両太腿の付け根に添うように、使用時平面視が逆八の字状の斜面につながる密閉された底部を有し、使用時平面視上端に開口部が形成され、この開口部に使用時平面視の幅が狭くなるように絞り部が形成されている。
また、この尿取りパッドの腹上に接する面側に、使用する男性の陰茎を上記袋状吸収体の袋内部に収納するためのU字型切欠部が形成され、このU字型切欠部の尿取りパッド底部側先端が上記腹上側に接する面側の中央部から尿取りパッド底部との間に位置するとともに、尿取りパッド開口部まで平面視同一幅を有するU字型の切り欠きであることを特徴とする。
また、本発明の尿取りパッドは、U字型切欠部が形成されている面と反対側の面に上記止着手段が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の尿取りパッドに設けられる絞り部は、使用時平面視寸法として、絞り部を設けないときの開口部の横長さをt3、絞り部の開口部の横長さをt6、上部領域の長さをt1、絞り部の縦長さをt4としたとき、(t6/t3)の値が0.6〜0.9、(t4/t1)の値が0.1〜0.4であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の尿取りパッドは、使用する男性の腹上から両太腿の付け根に添うように、使用時平面視が逆八の字状の密閉底部を有するので、また、防水カバー面に男性の下着に固定できる止着手段を有しているので、尿取りパッドがずれるのを防止できる。
【0012】
本発明の尿取りパッドは、腹上に接する面側に使用する男性の陰茎を上記袋状吸収体の袋内部に収納するための切欠部が、腹上に接する面側の中央部から底部との間に形成されているので、衣服を脱ぐことなく簡単な作業で尿取りパッドを交換することができる。このため、本人および介護者の肉体的、精神的負担も軽減させ、楽で気軽に尿取りパッドや紙おむつを取り替えることができる。
また、尿取りパッドが腹上に位置することになるので、例えば就寝時に、尿取りパッドに体圧がかからず無圧の状態になるので排尿が全て吸収材に吸収され寝返りをうっても尿漏れが生じない。
【0013】
本発明の尿取りパッドは、平面視上端に開口部が形成され、この開口部に使用時平面視の幅が狭くなるように絞り部が形成されているので、逆八の字状部の斜面および密閉底部を使用者または介護者が手で持つことにより尿取りパッド上端が容易に筒状になり、さらにU字型切欠部を設けることで被介護者の尊厳を害することなく陰部に簡単に脱着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】尿取りパッドを正面からみた図である。
【図2】尿取りパッドを背面からみた図である。
【図3】尿取りパッド1を把持するときの状態を示す斜視図である。
【図4】絞り部を有しない尿取りパッドを把持するときの状態を示す斜視図である。
【図5】尿取りパッドの使用時平面視寸法を表す図である。
【図6】尿取りパッドの展開図である。
【図7】男性パンツ内に尿取りパッドを使用した状態を示す図である。
【図8】男性失禁者の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により本発明の尿取りパッドを詳細に説明する。図1は本発明の一実施例の尿取りパッドを正面からみた図であり、図2は背面からみた図である。
図1および図2に示すように、尿取りパッド1は、男性の陰茎を挿入する切欠部2が形成された袋状吸収体3の外周部を防水可能に覆う防水カバー4と、内周部に形成される透水シート7とで構成されている。積層構造部分の部分拡大断面図を図2に同時に示す。袋状吸収体3を腹上にのせて、男性の陰茎を切欠部2に挿入させ、排尿が周囲に広がることなく吸収体3に吸収させて使い捨てする。
【0016】
切欠部2は、尿取りパッド1の略中央位置に形成された半円状の先端部2aと、尿取りパッド1の開口部5の上端部から先端部2aに向かって形成された同一幅を有するスリット部2bとで構成されている。
尿取りパッド1の表面には、図1に示すように、覆われている防水カバー面に男性の下着に固定できる止着手段8を有している。止着手段8としては粘着テープ、両面テープ等が挙げられる。
止着手段8は、U字型切欠部が形成されている面と反対側の面に形成されていることが尿取りパッド1交換時の取り扱いが容易になるので好ましい。
【0017】
尿取りパッド1は、開口部5が所定の一定の幅t3を有する上部領域1aと徐々に幅が狭くなる下部領域1bとで構成されている。下部領域1bは、両大腿部の付け根の形状に対応させて下方に向かうに従って徐々に幅が狭くなる逆八の字状の斜面6とこの斜面につながる密閉された底部6aが形成されており、尿取りパッド1を装着した男性が身体の移動時に、または就寝時の寝返時に大腿部が尿取りパッド1に当たって尿取りパッド1がずれるのを、逆八の字状の斜面6にて、防止するようにしている。
【0018】
尿取りパッド1の上端に形成された開口部5に使用時平面視の幅が狭くなるように絞り部5aが形成されている。絞り部5aを形成することで、男性の陰茎を尿取りパッド1内に収納する際に、尿取りパッド1の両側を把持することにより、開口部5はスムーズに楕円形状から円形状に広がり、男性の陰茎を尿取りパッド1内に収納し易くしている。
また、切欠部2と開口部5とを形成することにより、吸収体3に放出された尿が毛細管現象によりスムーズに吸収体3全体に拡散する。
【0019】
図3は、図1に示す尿取りパッド1を把持するときの状態を示す斜視図を表し、図4は、絞り部を有しない尿取りパッド1’を把持するときの状態を示す斜視図を表す。
図4に示すように、絞り部を有しない尿取りパッド1’は、男性の陰部に装着するために尿取りパッド1の逆八の字状の斜面を把持したとき、尿取りパッド1の開口部5の面積を拡大する方向に力が働くので、スリット部2bの上端部が相互に開いてしまう。
これに対して、図3に示すように、絞り部5aを有する尿取りパッド1は、尿取りパッド1の開口部5の面積を拡大する方向に働く力が絞り部5aにより抑えられ、スリット部2bの上端部が相互に開くことがない。そのため、尿取りパッド1の脱着が容易になる。
【0020】
図5は、図2に示す尿取りパッド1の使用時平面視寸法を表す図である。
絞り部5aの絞りの程度は、絞り部5aを設けないときの開口部の横長さt3に対する実際の開口部の横長さt6、および上部領域1aの縦長さt1に対する絞り部5aの縦長さt4で表される。なお、長さt6の中央は長さt3の中央に位置する。
本発明において、(t6/t3)の値が0.6〜0.9、好ましくは0.7〜0.9の範囲にあり、(t4/t1)は0.1〜0.4、好ましくは0.1〜0.3の範囲にあることが好ましい。この範囲にあることにより、スリット部2bの上端部が相互に開くことを抑制できる。
【0021】
平均身長および体重の成人男子用の一例として例示すれば、図5において、尿取りパッド1の大きさは、t1が110mm、t2が90mm、t3が225mm、t4が15mm、t5が95mm、t6が195mm、t7が20mm、およびt8が25mmである。なお、t7はt3およびt6の中心に位置している。また、この尿取りパッド1の重量は約65gである。この寸法は、昼間用および夜間用などの用途、使用する男性の身長および体重に応じて変更することができる。
【0022】
尿取りパッド1の展開図を図6に示す。尿取りパッド1は、図1および図2では開口部5は楕円形状に押し広げられたものが示されているが、製造前を展開すると図6に示すように、野球の本塁ベースを2個連結したような形状になっている。この形状のシートは防水カバー4と吸収体3と透水シート7の3層構造となっており、幅広となった開口部5の上端を形成する部分を除いて、透水シート7が内側になるように底部6aとなる部分を折り曲げて端縁を接合させることで尿取りパッド1が製造できる。接合は、テープ止め、縫合、熱溶着などを適宜選択すればよい。
【0023】
袋状吸収体3は、紙おむつ等で使用されている紙パルプ、吸収紙、高分子吸水シートを男性の陰部が挿入できるように切欠部2となるように袋状に形成されている。なお、吸収体3の切欠部2が形成された尿取りパッド1の内面側は、ポリオレフィン系の不織布などからなる透水シート7で覆われていて肌当たりを良好なものにしている。
【0024】
防水カバー4は、紙おむつ等で使用されているポリエチレンフィルム等の合成樹脂シートを用いて、吸収体3を覆う袋状の溶着等によって形成されている。防水カバー4は、尿漏れが発生しないように袋状吸収体3全体を覆っている。
【0025】
尿取りパッド1の使用方法について、図面を参照して説明する。図7は、男性パンツ内に尿取りパッド1を使用した状態を示す図面である。
切欠部2の底部側先端2aが腹上に接する面側の中央部から底部6aとの間に位置しているので、尿取りパッド1の重量比で半分以上が男性使用者Mの腹上にのせることができる。その後、パンツなどの男性下着9を装着する。本発明の尿取りパッド1は腹上から両太腿の付け根に添うように逆八の字状の斜面につながる底部を有しているので、両太腿の付け根で尿取りパッドが保持される。その結果、男性使用者が身体を移動させたとしてもズレたり外れたりしない。特に男性下着9などを併用する場合、よりズレたり外れたりしない。
【0026】
男性Mが排尿した場合、尿は尿取りパッド1の吸収体3に吸収され防水カバー4によって周囲に漏れることがない。排尿された尿は腹上部分の吸収体に吸収され、男性Mが移動したとしても、男性の陰茎Pよりも上方に尿を吸収した吸収体が位置すると共に、防水カバー面に設けられた男性下着との止着手段により固定されるので、尿取りパッド1は落下することがない。
なお、男性Mは男性下着以外に、テープ止めタイプ紙おむつ、パンツタイプ紙おむつ、おむつカバー、縦長おむつ等を使用していても同様に使用することができる。
図8は男性失禁者の使用例を示す図である。男性失禁者であっても、図8に示すように、ズボンを上げ下げするだけで、衣服を脱ぐことなく簡単に装着、交換することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の尿取りパッドは、簡単な作業で気軽に尿取りパッドを取り替えることができるので、使用者の不快感を軽減させることができる。また、介護者の肉体的、精神的負担も軽減させることができる。そのため、今後の介護分野に広く利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 尿取りパッド
2 切欠部
3 吸収体
4 防水カバー
5 開口部
6 逆八の字状の斜面
7 透水シート
8 止着手段
9 男性下着
M 男性使用者
P 陰茎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿吸収材で形成された袋状吸収体の外周部が防水カバーで覆われた男性失禁者用尿取りパッドであって、
この尿取りパッドは、前記防水カバー面に男性の下着に固定できる止着手段を有し、
使用する男性の腹上側から両太腿の付け根に添うように、使用時平面視が逆八の字状の斜面につながる密閉された底部を有し、使用時平面視上端に開口部が形成され、この開口部に使用時平面視の幅が狭くなるように絞り部が形成され、
腹上に接する面側に前記男性の陰茎を前記袋状吸収体の袋内部に収納するためのU字型切欠部が形成され、このU字型切欠部の前記底部側先端が前記腹上側に接する面側の中央部から前記底部との間に位置するとともに、前記開口部まで平面視同一幅を有するU字型の切り欠きであることを特徴とする男性失禁者用尿取りパッド。
【請求項2】
前記止着手段は、前記U字型切欠部が形成されている面と反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の男性失禁者用尿取りパッド。
【請求項3】
前記絞り部は、使用時平面視寸法として、絞り部を設けないときの開口部の横長さをt3、絞り部の開口部の横長さをt6、上部領域の長さをt1、絞り部の縦長さをt4としたとき、(t6/t3)の値が0.6〜0.9、(t4/t1)の値が0.1〜0.4であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の男性失禁者用尿取りパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39262(P2013−39262A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178745(P2011−178745)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(309033080)有限会社岩田デザイン企画 (2)
【Fターム(参考)】