説明

男性用排泄補助物品

【課題】トイレでの通常の排泄行為と同様にして尿の処理を行うことができ、尿の肌への付着も少なくて済むような技術を提供する。
【解決手段】上記課題は、装着者の陰部を被覆する陰部被覆部分を備え、身体に装着されるように構成された本体部1と、陰部被覆部分に設けられた、本体部1の内外に貫通する陰茎出入口1iと、この陰茎出入口1iに連結された陰茎保持室30と、この陰茎保持室30の下端部に連結された蓄尿室40と、この蓄尿室40に設けられた尿排出用開閉部45と、陰茎保持室30と蓄尿室40とを接続する部分に設けられた、陰茎保持室30から蓄尿室40へは尿を自由に通すが蓄尿室40から陰茎保持室30への尿の逆流を防止する逆止弁70と、を備えたことを特徴とする男性用排泄補助物品により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な男性用排泄補助物品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢者の排泄ケア用品としては、尿を吸収保持する使い捨て吸収性物品が一般的となっている。使い捨て吸収性物品としては、パンツタイプ、テープタイプ、パッドタイプ等があるが、いずれも使用後(尿を吸収保持後)に新しいものに交換し、古いものは廃棄するといった使用形態を前提とするものである。
【0003】
とりわけ高齢者の尿漏れケアにおいては、下着や薄型のパンツタイプ使い捨ておむつの内面(使用面)に尿取り用のパッドを敷いておき、通常はトイレで排泄を行い、尿漏れがあったときにはパッドを交換するといったことが行われている。
【0004】
しかしながら、使用者にしてみればパッドの交換行為は尿漏れを自覚させられる行為であり、排泄行為の一環として許容することが困難で、自尊心が傷つけられるものである。
【0005】
また、パッドが尿を吸収保持している部分は、少なからず尿が肌に付着しているため、これを拭き取る必要があり、この拭き取り作業が煩雑であることも問題である。しかも、尿が肌に接触することにより、皮膚の湿潤やpHの上昇等が起こり、皮膚の炎症・発赤・水疱・糜爛等の発生要因となることがあった。
【0006】
他方、股間部に若干の吸水性を持たせ、軽い尿失禁であれば外部に漏れ出ないようにした下着も提供されているが、使い捨て吸収性物品と同様の問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−51732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、トイレでの通常の排泄行為と同様にして尿の処理を行うことができ、尿の肌への付着も少なくて済むような技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
装着者の陰部を被覆する陰部被覆部分を備え、身体に装着されるように構成された本体部と、
前記陰部被覆部分に設けられた、本体部の内外に貫通する陰茎出入口と、
この陰茎出入口に連結された陰茎保持室と、
この陰茎保持室の下端部に連結された蓄尿室と、
この蓄尿室に設けられた尿排出用開閉部と、
前記陰茎保持室と前記蓄尿室とを接続する部分に設けられた、前記陰茎保持室から前記蓄尿室へは尿を自由に通すが前記蓄尿室から前記陰茎保持室への尿の逆流を防止する逆止弁と、
を備えたことを特徴とする男性用排泄補助物品。
【0010】
(作用効果)
このように構成された男性用排泄補助物品では、使用に際して本体部を身体に装着するとともに、その陰部被覆部分に設けられた陰茎出入口から陰茎を出して陰茎保持室に導入する。装着状態では、尿漏れ等により陰茎から排出された尿は、陰茎保持室内から蓄尿室内に流入する。この際、陰茎保持室と蓄尿室とは逆止弁を介して接続されているため、蓄尿室から陰茎保持室への尿の逆量は防止される。使用者は、排尿を感じた後等、必要に応じてトイレに行き、便器の上で蓄尿室の開閉弁を開けることで、蓄尿室に貯留されている尿を便器に排出することができる。つまり、体の外部であるか内部であるかの違いはあるにせよ、蓄えておいた尿を便器に排泄することでは通常の排泄行為と異ならない。しかも肌への尿の付着は発生し難く、あるとしても陰茎の先端側であるため、尿を便器に排泄した後は開閉弁を閉じれば、用品交換を要せずに元の状態となり、この点でも通常の排泄行為と異ならない。よって、使用者の自尊心を傷つけにくく、また尿を処理するための用品交換は不要であるため、その分ローコストでの利用が可能となる。
【0011】
また、このように構成された男性用排泄補助物品によれば、尿の肌への付着が発生し難い為、皮膚の湿潤やpHの上昇といった皮膚の生理機能の低下を防止することができる。
【0012】
<請求項2記載の発明>
前記陰茎保持室の下端部が、樹脂シートからなる平坦に潰れた筒状の出口部とされるとともに、前記蓄尿室の上端部が、前記出口部を間隔を空けて取り囲む筒状の入口部とされており、これら陰茎保持室の出口部と蓄尿室の入口部とにより前記逆止弁が構成されている、請求項1記載の男性用排泄補助物品。
【0013】
(作用効果)
この場合、陰茎保持室内に排泄された尿は下端部の出口部を通り蓄尿室内に流れ込むが、蓄尿室内の貯留尿が陰茎保持室内に逆流しようとしても、陰茎保持室の出口部は平坦に潰れた形状であるため流入し難い。よって、逆止弁は、十分な逆流防止機能を有するものでありながら、簡素で薄い構造となる。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記陰茎保持室の出口部の幅よりも、これを取り囲む前記蓄尿室の入口部の幅が広く、かつそれによって前記陰茎保持室の出口部の両側縁と前記蓄尿室の入口部の両側縁との間にポケットが形成されている、請求項2記載の男性用排泄補助物品。
【0015】
(作用効果)
このようなポケットを形成することにより、蓄尿室内において入口部側へ向かう尿を陰茎保持室の出口部ではなくその両側のポケットで受け入れて、陰茎保持室への逆流を効果的に防止することができる。よって、逆流防止機能に優れたものとなる。
【0016】
<請求項4記載の発明>
前記陰茎保持室に開閉部が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の男性用排泄補助物品。
【0017】
(作用効果)
このような開閉部が設けられていることにより、使用に際して陰茎出入口から陰茎を出す際、外側から陰茎を摘まんで引っ張り出すことができるため、装着作業が容易になる。
【0018】
<請求項5記載の発明>
前記本体部における前記陰茎出入口の周縁部に、前記本体部よりも硬質のリング部材が固定されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の男性用排泄補助物品。
【0019】
(作用効果)
このようなリング部材を設けられていると、陰茎出入口が所期の形状に維持されるとともに、陰茎出入口を掴み易くなるため、陰茎の出し入れが容易になる。
【0020】
<請求項6記載の発明>
前記リング部材と前記本体部との間に、前記リング部材の肌への当りを和らげる緩衝層が設けられている、請求項5記載の男性用排泄補助物品。
【0021】
(作用効果)
前述のリング部材を設けると陰茎の出し入れは容易になるが、リング部材は硬質であるため装着感を悪化させるおそれがある。よって、上述のような緩衝層を設けることが望ましい。
【0022】
<請求項7記載の発明>
前記本体部は、装着者の股間を被覆する股間部分を備えており、
前記陰茎保持室は、前記本体部における陰茎の付根と対向する部位から前記股間部分近傍まで延在しており、
前記蓄尿室は前記陰茎保持室の股間側端部から前記本体部の股間部分まで延在しており、
前記陰茎保持室の少なくとも一部が前記本体部の外面に固定されるとともに、少なくとも前記蓄尿室は前記陰茎保持室に対する連結を維持したまま前記本体部の外面に対して着脱可能とされている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の男性用排泄補助物品。
【0023】
(作用効果)
陰茎保持室及び蓄尿室が上述の位置とされていることにより、排泄された尿が重力により蓄尿室へ流入し易くなるとともに、陰茎に尿が付着し難くなる。また、陰茎保持室及び蓄尿室が身体表面に沿って延在するため、その形状が衣服の上から判り難い。それでいて、使用者が蓄尿室の開閉弁を開けて貯留尿を排泄する際には、少なくとも蓄尿室を本体部から外して、陰茎同様に自由に向きを変えることが可能である。
【0024】
<請求項8記載の発明>
前記本体部は、少なくとも陰茎出入口の周縁部に、内面側に漏れ出た尿を吸収する吸収体を備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の男性用排泄補助物品。
【0025】
(作用効果)
このような吸収体を備えていることにより、陰茎保持室内から陰茎出入口を通じて本体部の内側に尿が逆流しても、これを吸収保持することができ、肌や下着、衣服が尿で汚れ難くなる。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によれば、トイレでの通常の排泄行為と同様にして尿の処理を行うことができ、尿の肌への付着も少なくて済むようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】展開状態のパンツタイプ男性用排泄補助物品の平面図(内面側)である。
【図2】展開状態のパンツタイプ男性用排泄補助物品の平面図(外面側)である。
【図3】要部平面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】図1のA−A断面図である。
【図6】図1のB−B断面図である。
【図7】図3のD−D断面図、E−E断面図、F−F断面図、G−G断面図である。
【図8】装着状態(陰茎挿入前)の概略図である。
【図9】装着状態(陰茎挿入前)の概略図である。
【図10】装着状態(陰茎挿入時作業時)の概略図である。
【図11】装着状態(陰茎挿入後)の概略図である。
【図12】装着状態(貯留尿排出時)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図7は実施形態のパンツタイプ男性用排泄補助物品を示している。このパンツタイプ男性用排泄補助物品(以下、単に男性用排泄補助物品ともいう。)は、使い捨ておむつと同様の構造の本体部1と、この本体部1に取り付けられた補助部とから構成されている。
【0029】
本体部1は、前身頃F及び後身頃Bを有する外装シート20と、この外装シート20の内面に、ホットメルト接着剤Gなどの接合手段によって固定されて一体化された内装体10とを有しており、内装体10は液透過性表面シート11と液不透過性裏面側シート12との間に吸収体13が介在されて構成されている。内装体10および外装シート20は前身頃F及び後身頃Bの境界である縦方向(前後方向)中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツ形状となっている。
【0030】
(外装シートの構造例)
外装シート20は、図4〜図6にも示されるように、上層不織布20A及び下層不織布20B(つまり、この形態では下層不織布が最外側不織布となる)からなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間、及び下層不織布20Bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cの不織布間に各種弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々脚部開口を形成するために形成された凹状の脚回りライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。
【0031】
特に、図示形態の外装シート20においては、弾性部材として、図1〜図3に示される展開形状において、ウエスト開口部近傍23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、前身頃F及び後身頃Bに、縦方向に間隔をおいて幅方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材25,25…とを有するとともに、前身頃F及び後身頃Bのそれぞれにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に、前身頃Fと後身頃Bとを接合する両側部接合縁から幅方向中央に向かうにつれて反対の身頃側へ向かうように湾曲しつつ、内装体10の両側部と重なる部位まで延在するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材26…、28…を備えている。なお、本外装シート20では、脚回りライン29に沿って実質的に連続する、所謂脚回り弾性部材は設けられていない。これらの弾性部材24,25,26,28はその長手方向に伸長した状態で固定され、自然状態で固定部分が収縮する結果、使用に際して弾性伸縮するようになっている。弾性部材24,25,26,28としては、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
【0032】
なお、図示例では、前身頃F及び後身頃Bに配置された腰回り弾性部材25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…は、内装体10を横切る部分には設けられておらず、当該部分が非伸縮領域とされている。このように、弾性部材を有しない又は設けられていない形態には、弾性部材が存在しない形態の他、弾性部材は存在するが収縮力が作用しない程度に細かく切断させている形態も含まれる。例えば、後者の例としては、腰回り弾性部材25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…を、一方側の側部接合縁22から内装体10を横切って他方(反対)側の側部接合縁22まで連続的に設けた後に、内装体10を横切る部分の一部又は全部を切断し、不連続とする一般的な形態が含まれる。弾性部材を内装体10と重なる部分で不連続とすることにより、内装体(特に吸収体13)の幅方向の縮こまりをより防止することができる。もちろん、腰回り弾性部材25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…を、内装体10を横切って連続的に配置することもできる。
【0033】
上述した外装シート20は、例えば特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26…、28…を内装体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002−273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0034】
図示例とは異なり、湾曲弾性部材を、前身頃F及び後身頃Bのいずれか一方にのみ設けるだけでも良い。また、湾曲弾性部材26…、28…を、前身頃F及び後身頃Bの両方に設ける場合、前身頃F側に配置された湾曲弾性部材の群の一部又は全部と、後身頃B側に配置された湾曲弾性部材Bの群の一部又は全部とが交差する形態(図示せず)も採用できるが、図示例のように、前身頃F側に配置された湾曲弾性部材28の群と、後身頃B側に配置された湾曲弾性部材Bの群とは互いに交差することなく前後方向中間部、特に前身頃Fに若干偏った位置で縦方向に離間している形態が好適であり、その縦方向離間範囲90における最小縦方向離間距離は5〜20mm程度とし、この部分に後述する広幅の固定領域を設けるのが好ましい。
【0035】
さらに、湾曲弾性部材26…、28…は図示例のようにその全体が湾曲していなくても良く、部分的に直線状の部分を有していても良い。
【0036】
(内装体の構造例)
内装体10は、図5〜図7に示すように、不織布などからなる液透過性表面シート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性裏面側シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、表面シート11を透過した排泄液を吸収保持するものである。
【0037】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う液透過性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0038】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う液不透過性裏面側シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0039】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができ、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。吸収体13の形状は、図示形態のように長方形状とする他、背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い砂時計形状(括れ形状)とすることもできる。
【0040】
内装体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される、ギャザー不織布としては、図6及び図7に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、液透過性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、物品の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
【0041】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において図6に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0042】
液不透過性裏面側シート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図6に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。この液不透過性裏面側シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0043】
糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル、天然ゴム等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、伸長率(自然長を100%としたときの値を意味する)は150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0044】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も液透過性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0045】
(前後押えシート)
図1及び図4にも示されるように、外装シート20の内面上に取り付けられた内装体10の前後端部をカバーし、且つ内装体10の前後縁からの漏れを防ぐために、前後押えシート50,60が設けられている。図示形態について更に詳細に説明すると、前押えシート50は、前身頃F内面のうちウエスト側端部の折り返し部分20Cの内面から内装体10の前端部と重なる位置まで幅方向全体にわたり延在しており、後押えシート60は、後身頃B内面のうちウエスト側端部の折り返し部分20Cの内面から内装体10の後端部と重なる位置まで幅方向全体にわたり延在している。前後押えシート50,60の股下側縁部に幅方向の全体にわたり(中央部のみでも良い)若干の非接着部分を設けると、接着剤が食み出ないだけでなく、この部分を表面シートから若干浮かせて防漏壁として機能させることができる。
【0046】
図示形態のように、前後押えシート50,60を別体として取り付けると、素材選択の自由度が高くなる利点があるものの、資材や製造工程が増加する等のデメリットもある。そのため、外装シート20を物品内面に折り返してなる折り返し部分20Cを、内装体10の前後端部と重なる部分まで延在させて、前述の押えシート50,60と同等の部分を形成することもできる。
【0047】
(補助部)
特徴的には、図2等に示されるように、本体部1の陰部被覆部分に、本体部1の内外に貫通する陰茎出入口1iが設けられるとともに、この陰茎出入口1iに陰茎保持室30が連結され、さらにこの陰茎保持室30の下端部に蓄尿室40が連結されている。陰茎出入口1iは円状に打ち抜かれていても良いが、図示例のように十字等のスリットを入れるだけでも良い。また、蓄尿室40には尿排出用開閉部が設けられており、陰茎保持室30と蓄尿室40とを接続する部分には、陰茎保持室30から蓄尿室40へは尿を自由に通すが蓄尿室40から陰茎保持室30への尿の逆流を防止する逆止弁70が設けられている。
【0048】
陰茎保持室30及び蓄尿室40は、液不透過性を有するシート、例えばポリオレフィン系樹脂等からなる樹脂シートを筒状や袋状に形成して用いることができ、透明、半透明、又は有色の不透明とすることができる。
【0049】
図3〜図5及び図7に詳細に示すように、陰茎保持室30は、本体部1における陰茎の付根と対向する部位から股間部分近傍まで縦方向に沿って延在する筒状体31により形成されている。この筒状体31は、裏面に陰茎出入口1iと連通する連通孔32が形成され、ウエスト側の開口がチャック(ファスナー)34により開閉可能な開閉部33として構成され、他方側の開口が蓄尿室40内への出口部35として構成され、出口部35を含む全体が本体部1の外面に沿うように平坦に潰れた状態とされたものであり、連通孔32の周囲部が本体部1の外面に対して連結されている。チャック34としては、図示例のように内部の対向面の一方に設けられた凸条を他方に設けられた溝に嵌合するタイプのもの等、公知のビニール袋用のチャックを好適に用いることができる。また、開閉部33は省略して上端部を密閉した袋体を用いても良い。
【0050】
蓄尿室40は、陰茎保持室30の股間側端部から本体部1の股間部分まで延在するとともに、陰茎保持室30側に開口を有する袋体41により形成されている。この袋体41は、開口側の端部が陰茎保持室30の出口部35を間隔を空けて取り囲む筒状の入口部42とされるとともに、平坦に潰れた状態とされたものであり、入口部42の縁部の対向面相互及び入口部の縁部の内面と陰茎保持室30の出口部35の外面との対向面が幅方向に沿って連続的に接合されて、陰茎保持室30と蓄尿室40とが液密に連結されている。この連結用の接合部は符号43により示されている。また、蓄尿室40の先端部(陰茎保持室30側と反対側の端部)には、排出用の開閉部45として、キャップ状のネジ式栓体を有する排出口が設けられており、蓄尿室40の先端縁が開閉部45に向かって斜め下がりとなるように、袋体の先端部の表裏シートを台形状に接合している。この台形状の接合部は符号46により示されている。
【0051】
陰茎保持室30と蓄尿室40とが上述のような構造で連結されていると、陰茎保持室30内に排泄された尿は下端部の出口部35を通り蓄尿室40内に流れ込むが、蓄尿室40内の貯留尿が陰茎保持室30内に逆流しようとしても、陰茎保持室30の出口部35は平坦に潰れた形状であるため流入し難い。つまり本実施形態では、これら陰茎保持室30の出口部35と蓄尿室40の入口部42とにより、十分な逆流防止機能を有し、簡素で非常に薄い逆止弁70が構成される。この場合、陰茎保持室30の出口部35(蓄尿室40の入口部42内への挿入部分)が長いと、出口部35が折れたりすることにより閉塞するおそれがあるため、陰茎保持室30の出口部35の先端側の両側部を蓄尿室40の入口部42と接合するのも好ましい。この出口部35固定用の接合部は符号36により示されている。
【0052】
逆止弁70の逆流防止性能を向上させる観点から、図示例のように陰茎保持室30の出口部35の表裏シートを幅方向に間欠的に接合し、複数の小出口に分割するのは好ましい。この出口部分割用の接合部37、並びに前述の出口部固定用の接合部36、台形状の接合部46、連結用の接合部43は、ヒートシールや超音波シールを用いて素材を溶着させることにより行うのが好ましいが、接着剤を用いることもできる。
【0053】
また、逆止弁70の逆流防止性能を向上させる観点から、図示例のように、陰茎保持室30の出口部35の幅よりも、これを取り囲む蓄尿室40の入口部42の幅を広くし、かつそれによって陰茎保持室30の出口部35の両側縁と蓄尿室40の入口部42の両側縁との間にポケット46を形成するのも好ましい形態である。図示例の場合、底部は前述の接合部36である。ポケット46の底部をこのようなポケット46を形成することにより、蓄尿室40内において入口部42側へ向かう尿を陰茎保持室30の出口部35ではなくその両側のポケット46で受け入れて、陰茎保持室30への逆流を効果的に防止することができる。よって、逆流防止機能に優れたものとなる。
【0054】
他方、陰茎保持室30を構成する筒状体及び蓄尿室40を構成する袋体は、本体部1に固定されていても良いが、図示例では、陰茎保持室30の連通孔32の周囲部と本体部1の外面との連結部以外、具体的には先端部及び中間部に、本体部1の外面に対する着脱部80,81が設けられている。この着脱部80,81は、粘着剤層でも良いが、繰り返し着脱が可能である点でメカニカルファスナー(面ファスナー)を用いることが好ましい。図示例のように、本体部1の外面がメカニカルファスナーのフック材(雄材)が係止可能な素材である場合は、着脱部80,81にメカニカルファスナーのフック材を設けるだけでも良いが、係止をより良好とするために専用のループ材(メス材)を本体部1の外面に貼り付けても良い。さらに、図示例のように蓄尿室40の開閉部45を内側に折り畳んで、本体部1の外面に係止するように構成するのも好ましい。
【0055】
以上のように構成された男性用排泄補助物品では、使用に際して図8及び図9に示すように本体部1を身体に装着するとともに、図10に示すように陰茎出入口1iから陰茎100を出して陰茎保持室30に導入する。この際、陰茎保持室30に開閉部が設けられていることにより、図11に示すように、使用に際して陰茎出入口1iから陰茎100を出す際、外側から陰茎100を摘まんで引っ張り出すことができるため、装着作業が容易になる。
【0056】
図10に示す装着状態では、着脱部80,81によって陰茎保持室30及び蓄尿室40を身体表面に沿う位置に維持できるため、その形状が衣服の上から判り難い。尿漏れ等により陰茎100から尿が排出されると、その尿は陰茎保持室30内から蓄尿室40内に流入する。この際、陰茎保持室30と蓄尿室40とは逆止弁70を介して接続されているため、蓄尿室40から陰茎保持室30への尿の逆量は防止される。また、陰茎保持室30及び蓄尿室40が上述の位置とされていることにより、排泄された尿が重力により蓄尿室40へ流入し易くなるとともに、陰茎100に尿が付着し難くなる。
【0057】
使用者は、排尿を感じた後等、必要に応じてトイレに行き、便器の上で蓄尿室40の開閉弁45を開けることで、蓄尿室40に貯留されている尿101を便器に排出することができる。この際、図12に示すように、蓄尿室40の着脱部80,81を本体部1から外して、蓄尿室40を陰茎100同様に自由に向きを変えることが可能である。つまり、体の外部であるか内部であるかの違いはあるにせよ、蓄えておいた尿を便器に排泄することでは通常の排泄行為と異ならない。しかも肌への尿の付着は発生し難く、あるとしても陰茎100の先端側であるため、尿を便器に排泄した後は開閉弁45を閉じれば、用品交換を要せずに元の状態となり、この点でも通常の排泄行為と異ならない。よって、使用者の自尊心を傷つけにくく、また尿を処理するための用品交換は不要であるため、その分ローコストでの利用が可能となる。
【0058】
装着作業をより容易にするために、図示例のように、本体部1における陰茎出入口1iの周縁部に、本体部1よりも硬質のリング部材90が固定されているのもの好ましい形態である。このようなリング部材90を設けられていると、陰茎出入口1iが所期の形状に維持されるとともに、陰茎出入口1iを掴み易くなるため、陰茎100の出し入れが容易になる。このリング部材90としては、各種樹脂、特に天然又は合成ゴムが好適である。ただし、前述のリング部材90を設けると陰茎の出し入れは容易になるが、リング部材90は硬質であるため装着感を悪化させるおそれがある。よって、併せて、リング部材90と本体部1との間に、陰茎挿通孔91hを有する緩衝層91、例えばゲルシートを設けて、リング部材90の肌への当りを和らげるのも好ましい形態である。
【0059】
(その他)
・上記例の本体部1は、パンツタイプ使い捨ておむつの構造を応用し、パンツ形状としたが、身体に装着しうる限り、テープタイプ等、他の公知の形態の使い捨ておむつの構造を採用した任意の形状とすることができる。
・また、本発明は尿を吸収保持することを必須とするもではないため、吸収体13等の吸収のための構成、例えば上記例の内装体10全体を省略することができる。しかし、上記例のように、少なくとも陰茎出入口1iの周縁部に、内面側に漏れ出た尿を吸収する吸収体13を備えていると、陰茎保持室30内から陰茎出入口1iを通じて本体部1の内側に尿が逆流しても、これを吸収保持することができ、肌や下着、衣服が尿で汚れ難くなるという利点がある。
・上記例の本体部1は不織布により構成されているが、下着と同様に織布等の素材により形成することもできる。
・蓄尿室40を形成するための袋体41としては、蓄尿量等の観点からは図示例のように両側部にマチを設けたものが好ましいが、マチの無い袋体を用いることもできる。また、陰茎保持室30を形成するための筒状体31としては、図示例ではマチの無いものを用いているが、両側部等にマチを形成したものを用いても良い。
・上記例とは異なり、陰茎保持室30と蓄尿室40との間に公知の逆止弁を別途取り付ける等しても良い。
・蓄尿室40の尿排出用の開閉部45としては、上記例とは異なり、コック式のものや、陰茎保持部30の開閉部32と同様のチャック式のもの等、公知の構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…本体部、2…補助部、10…内装体、11…液透過性表面シート、12…液不透過性裏面側シート、13…吸収体、14…包装シート、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性伸縮部材、20…外装シート、21・22…側部接合縁、24…ウエスト部弾性部材、25…腰回り弾性部材、26…背側湾曲弾性部材、28…腹側湾曲弾性部材、29…脚回りライン、20C…外装シート折り返し部、30…陰茎保持室、40…蓄尿室、44…開閉部、70…逆止弁、F…前身頃、B…後身頃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の陰部を被覆する陰部被覆部分を備え、身体に装着されるように構成された本体部と、
前記陰部被覆部分に設けられた、本体部の内外に貫通する陰茎出入口と、
この陰茎出入口に連結された陰茎保持室と、
この陰茎保持室の下端部に連結された蓄尿室と、
この蓄尿室に設けられた尿排出用開閉部と、
前記陰茎保持室と前記蓄尿室とを接続する部分に設けられた、前記陰茎保持室から前記蓄尿室へは尿を自由に通すが前記蓄尿室から前記陰茎保持室への尿の逆流を防止する逆止弁と、
を備えたことを特徴とする男性用排泄補助物品。
【請求項2】
前記陰茎保持室の下端部が、樹脂シートからなる平坦に潰れた筒状の出口部とされるとともに、前記蓄尿室の上端部が、前記出口部を間隔を空けて取り囲む筒状の入口部とされており、これら陰茎保持室の出口部と蓄尿室の入口部とにより前記逆止弁が構成されている、請求項1記載の男性用排泄補助物品。
【請求項3】
前記陰茎保持室の出口部の幅よりも、これを取り囲む前記蓄尿室の入口部の幅が広く、かつそれによって前記陰茎保持室の出口部の両側縁と前記蓄尿室の入口部の両側縁との間にポケットが形成されている、請求項2記載の男性用排泄補助物品。
【請求項4】
前記陰茎保持室に開閉部が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の男性用排泄補助物品。
【請求項5】
前記本体部における前記陰茎出入口の周縁部に、前記本体部よりも硬質のリング部材が固定されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の男性用排泄補助物品。
【請求項6】
前記リング部材と前記本体部との間に、前記リング部材の肌への当りを和らげる緩衝層が設けられている、請求項5記載の男性用排泄補助物品。
【請求項7】
前記本体部は、装着者の股間を被覆する股間部分を備えており、
前記陰茎保持室は、前記本体部における陰茎の付根と対向する部位から前記股間部分近傍まで延在しており、
前記蓄尿室は前記陰茎保持室の股間側端部から前記本体部の股間部分まで延在しており、
前記陰茎保持室の少なくとも一部が前記本体部の外面に固定されるとともに、少なくとも前記蓄尿室は前記陰茎保持室に対する連結を維持したまま前記本体部の外面に対して着脱可能とされている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の男性用排泄補助物品。
【請求項8】
前記本体部は、少なくとも陰茎出入口の周縁部に、内面側に漏れ出た尿を吸収する吸収体を備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の男性用排泄補助物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−152391(P2012−152391A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14387(P2011−14387)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所 国立大学法人東京大学 発行者名 東京大学大学院医学系研究科 刊行物名 平成22年度 修士論文集 健康科学・看護学専攻 発行年月日 平成23年1月21日 発行所 国立大学法人東京大学 発行者名 東京大学大学院医学系研究科 刊行物名 平成22年度 修士論文抄録・要旨集 健康科学・看護学専攻 国際保健学専攻 発行年月日 平成23年1月21日
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】