説明

画像から生成した空間配置皮膚モデルを用いて毛髪を採取および移植するシステムおよび方法

採取する毛包単位に対して毛髪採取器具の向きを合わせるシステムおよび方法が提供されている。さらに、毛包単位を移植するシステムおよび方法が提供されており、これらは既存の毛包単位の向きまたは予め決められた挿入角度に基づいている。提供されたシステムおよび方法は、画像処理および画像から生成した空間配置皮膚モデルを利用する。幾つかの実施形態では、表面適合は、平面適合、二次曲面適合、3次元適合、メッシュ適合、およびパラメータ適合を利用して実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、毛髪を採取、植え込みおよび移植するシステムおよび方法に関し、特に、潜在的な損傷を減少させながら、採取された毛嚢の完全性を維持することが可能なデバイスおよび技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪移植術は既知であり、一般に、患者の頭皮、または他の体表の側方および後方の縁部などの「恵皮部」からドナーの植毛を採取して、禿部(「受皮部」)に移植するステップを伴う。様々な技術がドナーの植毛を移植するために数年かけて発展してきた。このような技術の1つは、頭皮の後部から皮膚片を切除し、顕微鏡の下でこの切片を分析して後で受皮部に移植するために各毛髪の毛包単位を分離するステップを伴う。この技術は、非常に時間が掛かること、退屈であること、高価なこと、および縫合を要して瘢痕が生じることを含む多くの欠点を有してる。近年、一部の外科医は、患者の頭皮から組織片を切除する必要なく各毛包単位の採取が可能な毛包採取(「FUE」)と呼ばれる技術を利用している。
【0003】
毛包単位を採取するFUE法は、刃先と1mmといった直径を有する内部管腔とを有する中空の穿孔機を用いることにより、各毛包単位を恵皮部から直接採取することを可能にする。この穿孔機を用いて、毛包単位周囲の皮膚に小さな円形の切開部を設ける。その後、特別に工夫された挿入針で受皮部に次の移植をするべく、鉗子などを用いて毛包単位を取り除く。FUE法は頭皮片の切除に関連する傷を防ぎ、患者の不安を減少させ、回復期間を短縮させるが、これは面倒な方法であり、実施に長時間かかり、高度な専門技術を要する。
【0004】
米国特許第6,572,625号(「Rassmanの特許」)は、FUE法の際に中空の採取穿孔機で毛嚢を整列させる機構を記載している。Rassmanの特許に記載されている採取法は、利用者に抜き取る毛包単位の軸に沿って採取器具の軸を調整するよう教示している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様によると、毛包単位を採取する器具の向きを採取すべき毛包単位に合わせる方法が提供されている。幾つかの実施形態では、当該方法は、毛包単位を採取する器具の最小アプローチ角を選択するステップと;対象のFUの出現角を判定するステップと;対象のFUの出現角と器具の最小アプローチ角を比較するステップと;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいて、対象のFUに対して器具の向きを合わせるステップとを含む。幾つかの実施形態では、器具の向きを合わせるステップは器具が動作可能なように接続されたロボットアームを自動的に動かすステップを含む。他の実施形態では、器具の向きを合わせるステップは、調整機構などを作動させることにより、手動で携帯器具の向きを合わせるステップを含む。
【0006】
本発明の他の態様によると、体表から毛包単位を採取する方法が提供されている。このような方法は、採取すべきFUの上に管腔を有する採取器具を配置するステップであって、前記FUは長軸を有しているステップと;FUの出現角を採取器具の選択された最小アプローチ角と比較した結果に基づいて、FUの長軸に対して採取器具の向きを合わせるステップと;採取すべきFU周囲の体表に採取器具を挿入するステップと;FUを除去するステップとを含む。
【0007】
本発明のさらに他の態様によると、毛包単位を移植する器具の向きを合わせる方法が提供されている。幾つかの実施形態では、当該方法は、(例えば、器具の予め選択された最小アプローチ角を利用することにより)器具の最小アプローチ角を選択するステップと;対象のFUを判定するステップと;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較するステップと;対象のFUの出現角と器具の最小アプローチ角を比較した結果に基づいて、対象のFUに対する器具の向きを合わせるステップとを含む。幾つかの実施形態では、この器具は毛髪移植器具であり、この方法は移植部位に対して毛髪移植器具の向きを合わせることに関するものである。
【0008】
本発明の更なる態様によると、毛包単位を移植する器具の向きを合わせる他の方法が提供されている。この方法は特に、移植部位に予め存在する毛包単位がないか、非常に限られた数のみがある場合に有用である。幾つかの実施形態では、当該方法は、基準マーカーなどを利用することで、出現角を有する1以上の仮想毛髪またはFUを生成するステップと;毛包単位を移植する移植器具の予め選択された最小アプローチ角を選択または利用するステップとを含み;1以上の仮想毛髪の出現角が移植器具の最小アプローチ角以上となるように1以上の仮想毛髪は生成され;移植器具の最小アプローチ角を1以上の仮想毛髪の出現角と比較した結果に基づいて、1以上の仮想毛髪に対して移植器具の向きを合わせるステップとを含む。
【0009】
本発明の更なる態様は毛髪を採取するシステムを提供しており、当該システムは、毛包単位(FU)を含む画像データを受信するよう適合しているインタフェースと;画像データ上の操作を実行する1以上のモジュールを有する画像プロセッサとを具えており、1以上のモジュールは、毛包単位の移植に使用される器具の予め選択された最小アプローチ角を選択または利用するステップと;FUの出現角を判定するステップと;FUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較するステップと;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいてFUに対して器具の向きを合わせるステップの指示を有する。当該システムはさらに画像取得装置を具えうる。幾つかの実施形態では、このシステムはロボットシステムであって、他の実施形態ではこのシステムは携帯型の毛髪移植装置で使用するために構成される。
【0010】
本発明の他のシステムは画像取得装置とプロセッサを具え、当該プロセッサは、対象のFUの出現角を判定する;毛包単位の移植に使用される器具の最小アプローチ角を選択する;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較する;および対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいて対象のFUに対して器具の向きを合わせるよう構成される。
【0011】
データを有するマシンによるアクセスが可能な媒体を具える製造物は、マシンにアクセスされた場合に、対象のFUの出現角を判定するステップと;毛包単位の移植に使用される器具の最小アプローチ角を選択するステップと;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較するステップと;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいて対象のFUに対する器具の向きを合わせるステップとを含む動作をマシンに実行させる。
【0012】
本書に記載のシステムおよび方法は、毛髪の採取および/または移植を含む生物学的な単位を除去する、手動、部分的に自動およびロボットを含む完全に自動のシステムおよび方法を用いて実行されうる。本発明のその他および更なる目的や利点は、添付の図面を見て解釈すると以下の詳述から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の特徴及び利点は、明細書、特許請求の範囲、添付の図面を参照により良く理解すると評価されるであろう。
【図1】図1は、従来技術による毛包単位を摘出する方法、およびこのような方法に関連する毛嚢の切断を図示している。
【図2】図2は、本発明の幾つかの実施形態で使用するロボットシステムの一例の概略的な透視図である。
【図3】図3は、本発明による表面適合プロセスの一例を示すフローチャートである。
【図4】図4Aおよび図4Bは、対象の毛包単位の出現角および器具のアプローチ角を示す概略図である。
【図5】図5Aおよび図5Bは、本発明によるFUに対する器具の向きの例を示している。
【図6】図6は、本発明による毛髪移植における表面適合モデルの使用の一例の概略図である。
【図7】図7は、本発明による毛髪移植における表面適合モデルの使用の他の例の概略図である。
【図8】図8は、毛髪移植用の携帯型装置に使用する毛髪採取/移植システムの例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳述では、本発明を実施できる幾つかの実施例を例示する添付の図面について説明している。これに関し、「上部」、「底部」、「前部」、「後部」、「遠位」、「近位」などの方向の用語は、記載された図の向きを参照に使用される。本発明の構成要素または実施形態は複数の異なる向きに配置することができるため、方向の用語は例示のために使用され、限定をするものではない。他の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲から逸脱することなく構造的または論理的変更がなされうると理解されたい。従って、以下の図は限定する意味で捉えるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0015】
全体的なシステムまたはプロセスを言及する形容詞「自動の」は、特定のシステムまたはプロセスのステップの一部または全てが自律機構または機能、すなわち手動操作を必要しない機構または機能を含むことを意味する。最終的に、この処置における1以上のステップは、手動入力を要する一部分を有しながら、自動化または自律しうる。この定義は、ONスイッチを押すか操作を予定を組み込むオペレータのみを要する自動システムを包含し、さらに携帯機器を使用するがシステムの一部の機構は自立的に機能する、すなわち機能を実行するための人入力がないシステムも包含する。本書に記載された一部の自動システムはさらに、ロボット補助される、あるいはコンピュータ/ソフトウェア/マシン指示に制御されうる。本発明の装置および方法は、手動の処置およびシステム、さらには自動処置およびシステムに有用である。本発明の器具は、ロボット補助されたシステムおよび処置に利用することができる。システムの特定の構成要素またはプロセスの特定のステップの使用について言及している場合、副詞「自動的に」とは、このようなステップがリアルタイムの手動補助なしで自律的に達成されることを意味する。
【0016】
本書に使用される用語「器具」、または「採取器具」または「移植器具」は、体表から毛包単位(「FU」)を除去または採取する、あるいは体表にFUを移植することができる任意の数の器具または先端部を指す。この点では、体表は身体に取り付けることができ、あるいは皮膚片または身体から除去された体組織であってもよい。このような器具は、多くの異なる形態および構造を有しうる。他の実施形態では、この器具は中空の管状シャフトを具え、カニューレ、針、または穿孔機などに分類されうる。本書に使用される用語「動作可能に連結」、「接続」、「装着」、または「取り付け」は、1以上の介在要素を介して直接的または間接的に接続、取り付け、または装着されることを意味する。
【0017】
上述のように、本発明は特に毛髪の採取および移植に有用であって、毛包単位(FU)を採取および移植する装置および方法を提供しているが、毛髪の移植に限定はされない。皮膚表面がある程度の毛髪を有していると仮定した場合、患者の皮膚表面のモデルを要する他の処置も、本書に記載の発明のシステムおよび方法から有効となりうる。本発明の適用の一例は、美容または他の医療目的の診断用皮膚画像である。幾つかの適用例では、本発明は長期間にわたって毛髪の成長を追跡するよう設計された画像システムと共に使用することもできる(例えば、それぞれの各毛髪は識別特徴を受け、この識別特徴の一部は毛髪の自然の出現角である)。
【0018】
図1は、毛包単位を採取する既存のデバイスに関連する特定の問題を図示している。毛包摘出術の際、米国特許第6,572,625号などに記載されているように、オペレータは採取用穿孔機を皮膚の上から突出している毛髪の可視部とほぼ平行に調整する。次いでこの穿孔機が、多くの場合はかなりの力で皮膚へと押し出される。図1に見られるように、毛包単位(「FU」)の各毛包1は毛球2(表面下の最底部)と毛幹3とを有し、毛幹は表皮、真皮および皮膚の皮下脂肪層を通って延在している。毛球2は毛包幹細胞とメラニン細胞を含む毛包の重要構造の1つを表しており、他の重要構造(図示せず)は、例えば脂線、外部毛根鞘を含む。他の領域に続けて移植するために毛包単位を採取する場合、これらの重要構造に損傷を与えないことが重要である。
【0019】
しかしながら、FUEベースのデバイスおよび方法の制約の1つは、毛嚢が皮膚の下で同一の成長方向を維持していないという事実によって起きる。非常に多くの場合、毛嚢は皮膚の下側でその方向または角度を著しく変化させる。図1に見られるように、皮膚の上の毛幹3の部分の向きは、皮膚の下の毛幹3の部分の向きと異なっている。通常、FUの皮膚からの出現角は皮下の進行方向よりも鋭角であることが分かっている。その結果、毛髪採取器具4を皮膚上のFUの可視軸に調整して皮膚上の毛嚢の可視部に基づいて穿孔機を進行させると、FU横断面を損傷するか、使用できない状態にしてしまう場合がある。図1に見られるように、毛幹3の軸に沿って鋭角に毛髪採取器具4を進行させると、毛球2を含む皮膚の高さ以下の毛嚢部を横断(切断)する結果となる。
【0020】
高速で頭皮に誘導され、鋭角に位置する毛嚢に調整された中空穿孔機などの器具は、1)皮膚を裂きやすい、2)皮膚に一貫性がなく望ましくない非対称な傷をもたらしてしまうことが分かっている。例えば、穿孔機の前縁は反対側よりも皮膚を深く切開をしてしまう。前縁部による深い切開は毛包を切断することがあるため、これは望ましくない。この作用は、高速フォトビデオ且つ臨床的に分かっている。
【0021】
上述の問題を防ぐまたは実質的に低減するため、本書に記載するような技術が発展した。記載したシステムおよび方法の利点は採取する際の毛包の切断率の低下を含み、採取針が体表(頭皮など)上で滑る、皮膚表面を擦る、または針が表面に接近するのが鋭角だったために皮膚表面を不十分に穿刺してしまうことを防ぎ、さらに毛髪を移植する際の審美的な結果を向上させる。頭皮などの体表に対する針の「アプローチ角」(図4Aを参照に更に詳しく記載する)は、採取および移植プロセスの双方に重要である。採取する際、穿刺する間に針が皮膚に沿って裂いてしまい、その結果切断率が増加するため、頭皮に対しほぼ平坦に位置するような毛包は避けることが望ましい。移植の際、新たに移植する毛嚢がより自然に調和するよう、既存の毛包の角度と一致するようにすることが望ましい。
【0022】
双方の場合で、リアルタイムで患者の頭皮(または他の関連のある体表)のモデルを算出し、このモデルを利用してカメラの視野(FOV)にある既存の毛髪の出現角、並びに体表に対する針のアプローチ角を算出することが有用である。幾つかの実施形態では、体表モデルは、平面モデル(すなわち、平面として患者の頭皮を表す)を用いてパラメータ化される。他の実施形態では、このモデルは身体の曲率および3D寸法に相当する。従って、本書に開示された解決法は、記載された特定のモデルに限定するものではなく、例としてのみ提供されている。
【0023】
図2はロボットシステム20の一例の概略的な透視図であり、本書に記載の発明の方法論で実行することができる。このシステム20は、ロボットアーム22と、当該ロボットアームの下降管26などに回転するよう装着されたアセンブリ24とを具えている。様々な矢印がシステム20の運動性能を示すべく図示されている。様々なモータや他の運動デバイスをアセンブリ24に組み込み、多方向に器具28の動作先端部が精巧に動作できるようにすることもできる。例示的なロボットシステム20はさらに少なくとも1の画像取得装置29を具えており、これは以下でより詳細に説明する。この画像取得装置は定位置に装着されうる、あるいはロボットアームまたは他の制御可能な動作デバイスに(直接的または間接的に)接続されうる。器具28の動作先端部は、体表30、この場合では毛嚢を有する患者の頭皮の一部の上に設置されて図示されている。器具28は、それぞれ体表30から毛包単位を除去および/または移植するのに有用な、任意の数の採取および/または移植器具である。幾つかの実施形態では、採取および移植器具は1つの器具に組み合わせることができ、他の実施形態ではこれらの器具は別個の器具であってもよい。
【0024】
図2のプロセッサ32は、画像取得装置29から入手した画像を処理する画像プロセッサを具えている。このプロセッサ32はさらに、採取/移植器具を含むロボットアーム22およびアセンブリ24の様々な運動デバイスを指示し、図2に概略的に示すようなロボット制御34などを介して作用してもよい。ロボット制御34はロボットアームに動作可能に接続され、画像取得装置によって取得した画像またはデータに基づく動作を含むロボットアームの動作を制御するよう構成されうる。代替的に、ロボット制御34をプロセッサ32の一部として組み込んでもよく、これにより、画像取得装置によって取得された画像またはデータに基づく処理や制御を含む、採取器具、ロボットアームおよびアセンブリの他の可動部を含む全ての器具の全ての動作の全処理および制御は一箇所に集中している。システム20はさらに、モニタ35と、キーボード36と、マウス38とを具えうる。このシステムはさらに画像データを受信するよう適合したインタフェースを具えており、当該システムの様々な部分によってオペレータは状態を監視し、必要に応じて指示を与えることが可能となる。体表30の拡大画像はモニタ35上で見ることができる。さらに、このシステムは、FUの採取および/または移植、または毛髪治療の立案に有用な他の器具、装置および構成要素を具えうる。
【0025】
図2に示す画像取得装置29の非制限的な例は、市販のカメラのような1以上のカメラを具えている。画像取得装置は静止画像を撮ることができる、あるいは(カムコーダーのような)ビデオ録画装置または他の画像取得装置またはセンサであってもよい。立体または多視点画像装置が本書に記載のシステムおよび方法においては非常に有用であるが、このような形状または構成を利用することは必ずしも必要ではなく、本書に記載の概念を限定されるものではない。同様に、画像取得装置はデジタル装置であることが好ましいが、必ずしもそうでなくともよい。例えば、画像取得装置は、本発明の方法に更に使用するために(例えば、民生品のフレーム取込器のようなアナログ−デジタル変換装置を介して)デジタル画像に処理される初期画像を取得するアナログのTVカメラであってもよい。この画像取得装置は、図2のプロセッサ32に組み込まれて図示された処理システムに接続され、画像操作を制御し、画像データを処理することができる。
【0026】
場合によってプロセッサとも称される画像プロセッサは、本書に記載の方法を実行するようプログラムおよび構成された適切なデバイスを具えうる。これは1または複数のプロセッサを組み込み、様々なサブシステムを制御してユーザインタフェースを提供することができる。例えば、画像プロセッサは、より詳細にさらに記載するような本発明の方法を実行するよう構成されたソフトウェアでプログラムされてもよい。例として、限定ではないが、適切な画像プロセッサは1以上のプロセッサまたは他の種類のデバイスを含むデジタル処理システムであってもよい。画像プロセッサは、コントローラまたは任意の種類のパーソナルコンピュータ(「PC」)であってもよい。代替的に、画像プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)または現場でプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)を具えうる。画像プロセッサはさらに、メモリ、記憶装置、および当該技術分野で一般に既知の他の構成要素を具えていてもよく、従って、ここで詳細に記載する必要はない。
【0027】
表面適合プロセスおよび出現角の判定の説明
本発明の一態様によると、画像から皮膚または体表の配置をモデリングする方法が提供されている。図3のフローチャートは、本書に記載の発明に利用される表面適合プロセスの一実施形態の例を図示している。例えば、図2を参照に記載するような画像取得装置は、毛包単位を含む体表の画像を取得するために使用されうる。一実施形態では、2台のカメラを用いて、それぞれの画像取得イベントで左および右のグレースケール画像(100)などの2つの立体グレースケール画像を取得する。取得した画像は分割される(110)。分割は画像分割ソフトなどを用いて実行することができる。毛髪の毛包単位の物理的な特性のため、その底部(すなわち、真皮から出現している端部)は、画像分割プロセスの一部で先端部から容易に区別することができる。例えば、底部は異なる特徴を有しており、遠位先端部よりも通常は太い。さらに、通常は明らかに識別できる毛包単位の影が底部に「付随」している。(120)において空間再構築が実行され、視野(FOV)に見える対象の1以上の毛包単位の位置が確認される。例えば、本発明に利用できる空間再構築プロセスの1つは、2007年5月10日出願のUS2007/0106306A1に公開された自己の同時係属中の特許出願に記載されており、参照により本書に組み込まれている。上記のプロセスに応じて、毛嚢の中心位置が識別され、左右の修正した画像の両方に対応するようにする。各毛包は、毛髪が頭皮などの体表に出ている点である「尾部」と、毛幹の先端である「頭部」とを有している。各毛嚢の頭部と尾部が左右の画像の双方で識別され、毛嚢の頭部および尾部の3次元座標を計算することができる。既知のカメラ配列を利用して、各尾部と頭部の3D座標を含むそれぞれ関連するFUの3D座標が算出される。空間再構築は、対象の毛包単位の位置を確認する一例である。例えば、3以上の画像を用いて視野にある毛包に関する3D情報を入手することも可能である。代替的に、3Dデータは、レーザ「距離計」装置で視覚システムを増強することで、1以上のグレースケール写真から取得することもできる。
【0028】
一旦関連する毛嚢の一覧およびその頭部と尾部の3D座標が分かると、FUの尾部の座標に対する表面適合を実行することができる(130)。図3の例では、画像化された頭皮部分は平坦であると仮定され、表面適合は、最小二乗法などを用いて実行される。図示の例では、表面は患者の頭皮を表している。一連の尾部の位置は、以下の関数に適合しうる。
(1)Ax+By+Cz+D=0 [式1]
【0029】
式1は平面を定義しており、従ってこのシステムは患者の頭皮を平面として表している。通常、適合関数は、頭皮の自然な湾曲を考慮した高次多項式(例えば、2次関数、またはそれ以上の関数)の関数である。代替的に、メッシュを一連の尾部の位置に適合させることもでき、これは毛髪移植術の場合の局所麻酔薬の適用または腫脹などが原因のかなりの量の「局部的な隆起」および「溝」を有する一般の曲面にも有用である。上記の例は、表面適合を実行するために最小二乗法を用いているが、当該技術分野の当業者に既知の任意の数の数理解析を利用してもよい。
【0030】
表面モデル(平面、二次曲面、高次多項式、メッシュ、媒介変数等)を用いて、対象の各毛包単位に対する「出現角」および処置に使用される器具(毛髪採取器具、毛髪移植器具など)の「器具のアプローチ角」を算出することができる。図4Aおよび図4Bは、平面適合の例に対する上記の角度を図示している。二次関数などの高次多項式の適合は、頭皮表面との接触点で接平面を用いて出現角の測定値を算出する。図4Aでは、θは、頭皮などの体表からの器具150(針など)のアプローチ角を表している。図4Bでは、θF1は頭皮からの毛嚢1の出現角を表し、θF2は頭皮からの毛嚢2の出現角を表し、Nの矢印は頭皮表面に対して垂直のベクトルを表している。
【0031】
上記の説明は、患者の頭皮などの皮膚の「狭い」領域に表面を如何に適合させるかに基づいており、「狭い」とは約1cmの大きさの頭皮の領域である。例えば3.5cmの領域などの著しく広い領域については、実際の体表、特に頭部表面は平坦ではなく曲面であるため、平面での仮説は機能しない。この場合、毛髪尾部の座標を2Dの二次曲面のように数学的に描写される2Dの半球面に適合させることにより、この湾曲を概算することができる。算出された毛包尾部の座標を得て、2Dの放物形状に適合する、以下の:
z=A+R(x−x+R(y−y
のような二次関数が実行され、放物面の頂点が(x、y)、当該頂点の数値がA、および画像化された領域の患者の頭皮の曲率半径がRである。
【0032】
毛包単位を採取する表面適合プロセスの利用
針などの器具を非常に小さい出現角θを有する所定の毛髪に完全に調整しようとした場合、切断するリスクが高くなる切断点(または様々な体表に対する切断点の範囲)が存在することが分かっている。図5Aはこの状況を示している。毛包単位Fは、「皮膚上側の」毛幹部162と、「皮膚下側の」毛幹部164と出現角θF1とを有している。図5Aに見られるように、出現角θF1はかなり鋭角であり、毛幹部162および164の向きには相当の差異があり、皮膚下側の毛幹部164の皮下の方向はあまり鋭角ではない。一方、毛包単位Fはさらに垂直の出現角を有しており、その「皮膚下側」かつ毛幹の皮下部分とは平行に近い。Fは頭皮上にほぼ平坦に位置しているため、毛包Fを切断するリスクは、Fを切断するよりも比較的高い。Fに完全に調整された場合、採取針などの器具160は穿刺する際に表面に沿って非常に裂くまたは削りやすくなる。さらに、この毛包下部の毛幹および毛球は、皮膚から出ている所与の毛幹の向きから考えられるよりも表面の垂直方向により接近して向いているため、器具160がFを切断してしまう可能性は比較的に高い。対照的に、針160が完全にFに調整された場合、器具160は毛包Fの皮下方向に進みやすいため、この毛包を切断するリスクは低下する。
【0033】
毛髪の採取を実施している間、特にロボットシステムのような自動システムを利用しているとき、採取する毛包単位が位置する領域周囲の皮膚を伸張させることが多くの場合望ましい。これは、皮膚伸張デバイスを用いてなすことができる。皮膚伸張デバイスを利用した場合、皮膚伸張デバイスを適用した領域における毛包の出現角がさらに減少する傾向があることが分かっている。例えば、幾つかの場合では、皮膚伸張デバイスの適用は、関連するFUの出現角を5−12度の範囲で減少させ、幾つかの場合では7−10度の範囲で減少させる。すなわち、問題の毛髪の「自然の」出現角が50度の場合、皮膚伸張デバイスを適用した後には、出現角が約43度の測定値となる。その結果、ユーザが器具をこのような毛嚢に調整した場合、切断する可能性がある毛嚢の数をさらに増加させてしまう。同様に、生理食塩水を恵皮部/受皮部に注射すると、毛髪の「自然の」出現角を変化させることがある。皮膚伸張デバイスおよび生理食塩水の注射はロボットによる毛髪採取術だけではなく、部分的に自動化した処置や携帯型の装置を利用する処置にも利用されるばあいがあるため、45°未満の出現角を有する多くの毛包単位の問題は全ての種類の毛髪採取術に適用できる。
【0034】
図5Bは、本発明に従って対象のFUに対して器具の向きを合わせる方法を図示している。処置に使用される器具の形状やデザインまたは機構、所望の皮膚表面の穿刺を容易にするのに必要な力、関連する領域内の既存の毛髪の出現角の測定値を含む様々な要因や一定の特徴に基づいて、器具がその角度以下で関連するFUに調整すべきではない切除器具のアプローチ角θ(または器具の最小アプローチ角と称する)があるということを判定する。これは、例えば、切断、組織を切除しない、または非対称の切開を設けないリスクが非常に高くなるためである。換言すると、毛包の出現角がθ未満の場合、器具の軸を毛包単位の毛幹の可視部に調整する代わりに、ユーザは器具をこのような切除器具のアプローチ角θに方向を合わせる。切除器具または最小のアプローチ角θは、特定の器具および用途に対し、約40°乃至65°の範囲、好適には45°乃至55°の範囲、さらに好適には50°乃至55°の範囲内で選択すべきであると推奨されている。現実的な問題として、採取される毛髪の大半は、特に皮膚伸張具を利用する場合、推奨のθよりも小さい出現角を有することである。このような状況では、針の角度の向きが切除のアプローチ角θ未満とならないように制限することで、対象のFUに対して器具の向きを合わせてもよい。特定の用途では、上述の理由に対して、約15−20°を関連する既存の毛嚢の出現角に加えて、所望の最小アプローチ角θを算出するのが望ましい場合もある。例えば、毛髪の出現角が35°の場合、約50°の最小アプローチ角を用いて、許容範囲の採取結果を得ることもできる。
【0035】
図5Aおよび図5Bでは、Fの場合にθF1<θであるため、システムはFの毛髪のベクトルに調整されず、代わりにFの出現角がθであると仮定して針または穿孔機160”の軸の向きを合わせる。頭皮表面に対して垂直なFによって形成される平面範囲内に正確に針を配置するための計算は、表面Nの法線を用いる。
【0036】
上述のような本発明の一態様によると、採取用の器具の向きを合わせる方法が提供されている。このような方法は、図2の例に示すようなロボットシステムなどのシステム、並びに、図8を参照に以下に記載するような携帯型の装置を利用を含む様々な他の自動、部分的に自動または手動のシステムを用いる処置に利用することができる。事前のステップとして、対象の毛包単位の画像を取得する。これは、当該技術分野において既知の技術によって実行することができる。例えば、幾つかの実施形態では、採取または移植領域にカメラの焦点を合わせるように、付属の画像取得装置を有するロボットアーム(または医師の手中の携帯型装置)が設置されてもよい。この方法の一実施形態によると、対象のFUの出現角が判定され、毛包単位を採取する器具の最小アプローチ角が選択され、対象のFUの出現角が器具の最小アプローチ角と比較される。対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいて、対象のFUに対して器具の向きが合わせられる。対象のFUの出現角が選択した最小アプローチ角よりも小さい場合、この器具は最小アプローチ角に向きが合わせられ、FUの実際の出現角には調整されない。幾つかの実施形態では、器具が接続されるロボットアームを自動的に動かすことにより、器具の向きを合わせることができる。他の実施形態では、上記方法に応じて調整機構が携帯器具の向きを合わせるように作動する。調整機構の様々な例が図8を参照に記載されている。
【0037】
システムの処理能力を高めるため、対象のFUの出現角は、対象の複数又はグループの毛包単位からの情報に基づくグループの代表の出現角として算出してもよい。例えば、グループ/複数の毛包単位の画像が最初に取得される。前述のように、これは当該技術分野において既知の技術によって実施することができる。グループの毛包単位それぞれの出現角、または代表の数の所定の数の毛包単位が算出され、算出した出現角の標準または平均値が計算される。毛包単位を採取する器具などの器具の最小アプローチ角が選択され、(対象のFUの出現角を表すためにここでは使用される)毛包単位のグループの算出した出現角の標準または平均値が器具の最小アプローチ角と比較される。上記比較した結果に基づいて、グループの毛包単位それぞれに対して同一のアプローチ角で器具の向きが合わせられる。この方法では、治療期間中に器具が受けねばならない向きを合わせる回数を最低限にすることができ、効率が向上する。前述したように、対象の毛包単位の算出した「グループの代表」の出現角が選択した最小アプローチ角よりも小さい場合、器具は最小アプローチ角に向きが合わせられる。同様の手法が、毛髪移植器具で使用する場合にも適用される。
【0038】
前述のように、特定の利用法または毛包単位の1以上の位置に応じて、様々な範囲の器具の最小アプローチ角を選択してもよく、あるいは、以下に記載するような毛髪移植に使用する場合には、移植部位の位置に基づいていてもよい。幾つかの実施形態では、器具の最小アプローチ角は、毛包単位または毛包単位のグループの概略的または特定の位置に応じて異なる場合がある。例えば、頭皮の頂部における最小アプローチ角は頭皮の側部または後部における最小アプローチ角とは異なっている場合がある。他の実施形態では、採取(または移植)器具の最小アプローチ角は、毛包単位の移植に関して記載したような移植部位および/または「仮想毛髪」の近傍に位置する毛包を含む、毛包単位の1以上の算出した出現角の一次関数、ステップ関数、多項式または他の関数に基づいていてもよい。本発明の更に他の態様によると、体表から毛包単位を採取する方法が提供されている。このような方法は、対象のFUの上に管腔を有する採取器具を設置するステップを含む。このような対象のFUは長軸を有している。この方法は更に、FUの出現角を採取器具の選択した最小アプローチ角と比較した結果に基づいて、FUの長軸に対して採取器具の向きを合わせるステップを含む。採取器具が採取すべき対象のFU周囲の体表に挿入され、FUが体表から除去される。FUの出現角を判定するステップは、上述のような画像から生成した空間配置皮膚モデルを利用することで実現できる。採取器具の向きを合わせるステップは、ロボットシステムなどを利用して自動的に実施できる、あるいは、図8を参照して以下に説明するような携帯器具を使用する場合には手動でなされうる。
【0039】
毛包単位を移植する表面適合プロセスの利用
移植する際、移植する植毛の質および外観を向上させるため、前から存在する毛髪が移植部位の近傍にあるような場合には、移植部位(受皮部)の領域における前から存在する毛髪の密集度、位置および出現角に基づいて、移植すべき毛嚢の位置や所望の方向(または出現角)を算出することが望ましい。しかしながら、毛髪の採取に関しては、前から存在する毛髪の出現角が、例えば40−45°未満というように非常に低い場合、移植器具のアプローチ角を前から存在する毛髪の出現角に一致させることは望ましくなく、満足な結果を提供しないであろう。例えば、非常に低い角度で移植器具を頭皮などの体表に近づけると、器具が滑る、頭皮を擦る、または所望の深さまで穿刺しない結果となり、その結果、正確な移植が妨げられることがある。このような状態をなくすため、以下の方法が発展してきた。幾つかの実施形態によると、適合表面上の禿部が識別され、既存の毛髪の出現角と一致する出現角を有する模造または「仮想毛髪」(部位)案が生成される。これらの仮想毛髪は頭皮表面上に位置するように生成する必要があり、これにより、実際の移植の直前に移植器具が部位に調整される場合がある。図6はこの手順を示しており、患者が提案された移植部位の領域にある程度前から存在する毛髪を有しているという仮定に基づいている。図3を参照して記載されたプロセスと同様に、既存の「現実の」毛包単位を含む画像が取得、処理、分割され、FOV(図6においてFと標記)内の毛髪が識別される。200において、画像プロセッサは立体画像などの画像を解析し、対象の移植部位が生じうる一連の禿部を識別する(図6のS)。既存の毛髪は(210において)3D座標へと連続して再構築され、図3に関して説明したように、(220において)表面適合が実施される。230において、仮想毛髪を生成することで移植部位が作られる。幾つかの実施形態では、仮想毛髪の生成において、仮想毛髪の向きを前から存在する毛髪の向きに自動的に一致させるのではなく、むしろそれぞれ関連する出現角を器具の推奨の最小アプローチ角と比較して最前列を選択してもよく、器具の最小アプローチ角より下方に見えないように仮想毛髪を生成する。器具の推奨の最小アプローチ角は、移植される頭皮の特定の領域に応じて、例えば45°乃至65°といった前記と同様の範囲内で選択されうる。他の実施形態では、仮想毛髪は前から存在する毛髪の出現角に少なくとも部分的に基づいて最初は生成される。しかしながら、移植器具の向きを合わせるステップの際、仮想毛髪の出現角は提案された器具の最小アプローチ角と比較され、上述のように、このような比較結果に基づいてこの器具は移植する向きが合わせられる。毛髪移植用のロボットシステムを利用する場合、(これらの仮想毛髪の出現角と器具の最小アプローチ角の比較に応じて)移植器具を有するロボットアームが適宜、器具自体の向きを合わせる。代替的に、携帯型の装置を用いて処置が実施される場合は、同様の比較結果に基づいて、移植器具を保持しているユーザが移植用の器具の向きを合わせる。オペレータも、必要に応じて、このように自動的に生成された移植部位を動かすように選択することができる。この動作を物理的に意味のあるものにするため、オペレータがマウス(または他のポインティングデバイス)を用いて各毛髪を移動させると、その尾部の位置が変更され、これにより患者の頭皮を表す適合表面上に配置される。
【0040】
上記プロセスは、FOV内に多数の前から存在する実際の毛髪がある場合に実行可能である。厳密に言えば、平面適合のために少なくとも3本の実際の毛髪が有る必要があるが、事実上は、ロバスト回帰分析に少なくとも3x、またはそれ以上が必要である。患者が完全に禿げているか非常に薄い場合、このシステムは、外部マーカー(基準点)または解剖学的な目印(例えば、ほくろ、傷跡等)を用いて表面適合を実行してもよい。図7は、例えば、患者の頭皮上に位置する基準点(300参照)を用いる手法の図である。幾つかの実施形態では、基準点を処置の際に使用される皮膚伸張具上などに、頭皮などの実際の体表の代わりに配置することもできる。310において基準点を有する体表の画像が取得され、320において、分割化、基準点や禿部の位置の特定を含む前述の処理が実行される。330において3D再構築がなされ、340において表面適合が実施される。表面適合が実施された後、350に示し、図6を参照して上述したように仮想毛髪(または部位)が生成される。前述のように、このような仮想毛髪の出現角、または移植器具の向きの何れかは、針などの移植器具の最小アプローチ角を考慮した結果に基づいて決定される。入力検討事項の1つが移植される頭皮の領域である。生え際およびこめかみの領域では、より鋭角な角度/向きが望ましい。頭皮の頂部では、あまり鋭角でない角度が一般的である。毛髪移植のステップは(自動または手動のシステムの何れを利用しようと)、図6を参照して記載したステップと同一または類似しうる。一例として用いる実施形態では、体表に対して毛包単位を移植する器具の向きを合わせる方法は、基準マーカーを用いて出現角を有する1以上の仮想FUを生成するステップと;毛包単位を移植する移植器具の予め選択された最小アプローチ角を選択又は利用するステップと;移植器具の最小アプローチ角未満とならないように1以上の仮想FUの出現角を識別するステップと;識別した1以上の仮想FUの出現角に移植器具の向きを合わせるステップとを含みうる。
【0041】
特定の実施形態では、毛髪採取に関して前述した複数の方法を利用し、FUを移植する器具の方向合わせ、仮想毛髪の生成、および移植部位の生成における表面適合プロセスおよび/または出現角の判定を更に含む、組み合わせの処置を実施してもよい。
【0042】
図2を参照して記載するような画像プロセッサは取得した画像を処理し、対象の毛包単位に関する所望の情報を識別する。画像プロセッサは、毛包単位の出現角を判定し、毛包単位を採取する器具の最小アプローチ角を選択し、毛包単位の出現角を器具の最小アプローチ角と比較するよう構成されうる。このように比較した結果に基づいて、毛包単位に対して如何に向きを合わせるかについて付属の採取器具を有するロボットアーム(または手動の処置における携帯器具)を指示するよう構成されうる。画像プロセッサはさらに、上述のような毛髪の移植中に、本発明の方法を実行するよう構成されうる。例えば、前から存在する毛包単位の出現角を判定し、毛包単位を移植する器具の最小アプローチ角を選択し、毛包単位の出現角を器具の最小アプローチ角と比較するよう構成されうる。このように比較した結果に基づいて、如何に適宜向きを合わせるかについて付属の移植器具を有するロボットアーム(または手動の処置における携帯器具)を指示するよう構成されうる。
【0043】
本書に開示の発明はさらに、画像データ上での操作を実行する1以上のモジュールまたは要素を具える画像プロセッサに関するものである。上記の1以上のモジュールは、FUを含む画像を受信するステップと;FUの出現角を判定するステップと;毛髪採取術に利用する器具の最小アプローチ角を選択するステップと;FUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較するステップと;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいてFUに対して器具の向きを合わせるステップの1以上の指示を含みうる。上述の構成要素またはモジュールは、出現角を決定する要素と、(対象のFUの出現角を選択した器具の最小アプローチ角と比較する)角度を比較する要素と、器具の向きを合わせる要素とを具えうる。様々な記載したモジュールおよび要素は、1つのソフトウェアまたはハードウェア製品の一部であってもよい。
【0044】
上述のような画像プロセッサは、限定ではないが、毛髪採取または毛髪移植用のシステムを含む、様々な手動、部分的に自動および(ロボットを含む)完全に自動の毛髪移植および治療システムおよびデバイスと併せて利用することができる。同様に、本発明の画像プロセッサは、毛髪治療の立案システムに利用することができる。
【0045】
本書に記載の発明は毛髪を採取/移植するためのロボット制御で操作されるシステムに特に有用であるが、器具の挿入角の調整について医師を誘導し、採取する毛包単位または組織を切断または損傷するのを防ぐため、手動/部分的に自動/完全に自動の携帯器具を用いる手作業のFUE術で毛包単位を採取する医師にとっても非常に有用である。同様に、携帯型の装置を用いて移植を行う医師にも利益がある。
【0046】
このような実施例の1つが図8の例に図示されている。この実施形態では、医師が採取器具および/または移植器具などの携帯器具44を用いて患者に手動操作を実施しており、この医師は高倍率の独特の眼鏡50を装着してもよい。1以上のカメラといった画像取得装置52を携帯型機器または器具44に取り付けてもよい。幾つかの更なる実施形態では、これは独立型の画像取得装置であってもよい。コンピュータ42などの画像プロセッサは、本書に記載するような様々なステップを実行し、3D再構築を含む画像解析および分析と、表面適合と、既存の毛包単位の出現角を判定するステップと、出現角を器具の最小アプローチ角と比較するステップと、上記2つの測定値の間の角度のオフセットを算出するステップと、または毛髪の移植処置の場合には仮想毛髪に対する所望の出現角を算出するステップとを実行しうる。モニタ40は、強調した毛包単位、基準点の位置、または禿部、並びに採取する毛包単位の出現角などの他の有用な全てのデータ、さらには採取するこのような毛包単位に対する携帯器具の向きの案、または器具をFUに対して適切な採取位置に動かすのに必要な調整角度/距離を表示してもよい。
【0047】
同様に、移植処置の場合では、モニタ40は、前述したものを含む、正確な器具の向きおよび移植角度を実現すべく毛髪移植を実施するのに有用な更なるパラメータを表示してもよい。モニタに表示された情報に誘導され、医師は、器具のアプローチ角、および採取するために選択されたFUに対する医師の手中の採取器具の向き、または移植用の医師の手中にある移植器具の向きを調整することができる。携帯器具の方向合わせは、例えば機械的または電子的な機構などの様々な異なる機構によって作動させることができる。幾つかの実施形態では、携帯器具の本体は、角度指示計を有する誘導構造に機能するよう接続される、あるいは支持されてもよい。ユーザはモニタに表示される事前に判定された挿入角度に誘導され、角度計の表示がモニタ上の角度と一致するまで器具の角度位置を回転させることができる。この器具は、誘導構造部および角度指示計に恒久的または着脱可能に接続されうる。幾つかの実施形態は、角度を示すマーキングを有する円形ダイアルを利用してもよく、他の実施形態では矢印と光の電子画面であってもよい。図8は、携帯器具44に装着された計器54の例として概略的に図示している。幾つかの代替的な実施形態では、携帯器具は画像システムに電子接続した(図8の56に示すような)変換器または他のセンサを具えることもできる。代替的に、センサ56は画像システム52の一部であってもよい。
【0048】
当該技術分野における当業者が理解するように、本発明の方法は少なくとも一部をソフトウェアに組み込んでもよく、コンピュータシステムまたは他のデータ処理システムにおいて実行されてもよい。従って、幾つかの実施例では、本発明を実施すべくソフトウェアの指示と組み合わせてハードウェアを使用してもよい。例えば、本発明の製造物は、データを含むマシンによるアクセスが可能な媒体を具えることができ、マシンにアクセスされた場合に、対象のFUの出現角(それぞれの出現角または一群の代表の何れか)を判定するステップと;器具(例えば、毛包単位を採取する器具、または毛包単位を移植する器具、またはその両方の組み合わせ)の最小アプローチ角を選択するステップと;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較するステップと;対象のFUの出現角を器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいて、対象のFUに対して器具の向きを合わせるステップといった動作をマシンに実行させる。
【0049】
マシン読み取り可能な媒体を用いて、システムに本発明の方法を実行させるソフトウェアおよびデータを記憶させてもよい。上述のマシン読み取り可能な媒体は、コンピュータなどの処理装置によってアクセス可能な形態をした情報を記憶および伝達可能な適切な媒体を含みうる。マシン読み取り可能な媒体の幾つかの例は、磁気ディスク記憶装置、フラッシュメモリ装置、光学記憶装置、ランダムアクセスメモリ等を含むが、これらに限定はされない。
【0050】
本発明の上記の図示および記載した実施形態は様々な改変および代替の形態が可能であって、本発明ならびに本書に記載の特定の実施形態は概して、開示された特定の形態または実施形態には限定されず、それとは反対に、添付の特許請求の範囲内に収まる全ての改変、均等物および代替物を包含すると理解されたい。非限定的な例として、ある図面または実施形態を参照に記載された特定の特徴または特性は、他の図面または実施形態に記載された特徴または特性と適合するように組み合わせてもよいことは、当該技術分野の当業者は理解するであろう。同様に、本発明はロボットアームを含むロボットシステムの利用に限定されず、他の自動、半自動または手動のシステムを利用してもよい。
【0051】
本発明はその好適な実施形態に記載されているが、使用されている用語は説明の用語であって、限定するものではないと理解されたい。従って、本発明の真の範囲から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更がなされうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛包単位を移植する器具の向きを合わせる方法において:
器具の最小アプローチ角を選択するステップと;
対象の毛包単位の出現角を判定するステップと;
前記対象の毛包単位の出現角を前記器具の最小アプローチ角と比較するステップと;
前記対象の毛包単位の出現角を前記器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいて、前記対象の毛包単位に対して前記器具の向きを合わせるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記対象の毛包単位の出現角を判定するステップが、複数の毛包単位の代表の出現角を判定するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記代表の出現角が、前記複数の毛包単位の標準または平均値を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法において、前記最小アプローチ角が前記対象の毛包単位の出現角よりも大きい場合に、前記対象の毛包単位に対して前記器具の向きを合わせるステップが、前記器具を前記最小アプローチ角に向けるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法において、前記対象の毛包単位がさらに頭部と尾部を有しており、前記対象の毛包単位の出現角を判定するステップが、前記対象の毛包単位の前記頭部および前記尾部の3D座標を算出し、前記尾部の座標に対する表面適合を実行するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記表面適合が、平面適合、二次曲面適合、3次元適合、メッシュ適合、またはパラメータ適合の1以上を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記対象の毛包単位は仮想毛髪であり、前記出現角を判定するステップが、前記仮想毛髪の出現角が前記器具の最小アプローチ角以上となるように前記仮想毛髪を生成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法において、前記器具の向きを合わせるステップが、前記器具を保持するロボットアームを自動的に移動させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法において、前記器具の向きを合わせるステップが、携帯型の毛髪採取装置の調整機構を作動させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法において、前記器具が、毛包単位を採取する器具を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法において、前記最小アプローチ角を選択するステップが、予め選択された最小アプローチ角を選択または利用するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法において、前記最小アプローチ角が、毛包単位の1以上の位置または移植部位の位置に基づいて選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の方法において、前記最小アプローチ角が、一次関数、ステップ関数または多項式関数に基づいて選択されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の方法において、前記器具の最小アプローチ角が、約45乃至65度であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至6、8乃至9および11乃至14の何れか一項に記載の方法において、前記器具が毛包単位の移植器具であり、前記対象の毛包単位は移植部位または仮想毛髪の近傍に位置する毛包単位であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至6、8乃至9および11乃至14の何れか一項に記載の方法がさらに、既存の毛髪の前記出現角に少なくとも部分的に基づいて1以上の仮想毛髪を生成するステップを含んでおり、前記対象の毛包単位が前記1以上の仮想毛髪を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項7または16の何れか一項に記載の方法において、前記1以上の仮想毛髪が、基準マーカーを利用して生成されることを特徴とする方法。
【請求項18】
毛髪を移植するシステムにおいて、当該システムが:
毛包単位を含む画像データを受信するよう適合しているインタフェースと;
前記画像データ上での操作を実行する1以上のモジュールを有する画像プロセッサとを具えており、前記1以上のモジュールが:
毛包単位の移植に用いられる器具の予め選択された最小アプローチ角を選択または利用するステップと;
前記毛包単位の出現角を判定するステップと;
前記毛包単位の出現角を前記器具の最小アプローチ角と比較するステップと;
前記毛包単位の出現角を前記器具の最小アプローチ角と比較した結果に基づいて、前記毛包単位に対して前記器具の向きを合わせるステップの指示を含んでいることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムがさらに、画像取得装置を具えていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項18または19の何れか一項に記載のシステムにおいて、当該システムがロボットシステムであり、当該システムが更にロボットアームを具え、前記器具が前記ロボットアームに動作するよう接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項18乃至20の何れか一項に記載のシステムがさらに、前記毛包単位の出現角を前記器具の最小アプローチ角と比較した結果を表示するよう構成されたモニタを具えることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項18乃至21の何れか一項に記載のシステムにおいて、当該システムが、毛髪採取器具、毛髪移植器具、または複合型の毛髪採取/移植器具の1以上を具えていることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項18に記載のシステムにおいて、前記毛包単位の出現角を判定する指示が仮想毛髪を生成する指示を含んでおり、前記インタフェースは前記仮想毛髪を含む画像データを受信するよう適合していることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−520124(P2012−520124A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554082(P2011−554082)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/026102
【国際公開番号】WO2010/104718
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(507007418)レストレーション ロボティクス,インク. (13)
【Fターム(参考)】