説明

画像データ多重型ホログラム再生装置

【課題】従来の薄膜ホログラム原理を使用した記憶媒体において、複数の独立した画像データを透過型または反射型薄膜ホログラムによって再生する場合、必要な数のホログラムをあらかじめ作製しておき、再生装置の所定の空間に配置させる。再生したい画像データを得る場合には、レーザ光源からの再生用レーザ光の照射位置へ、再生画像に対応するホログラムを機械的に移動させる必要があった。再生装置の小型化低コスト化の障害となっていた。
【解決手段】本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置は、反射型薄膜ホログラムからの回折光が媒体外の不動面上に結像するまでの光路の途中に、ホログラムのデータ領域よりも小さな面積の複数個の開口部をもつ透過光選択手段を設ける。透過光選択手段は、開口部を持つ光遮蔽板を移動させたり、透過率変調型液晶パネルの開口部の透過率を変えたりすることで実現できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、ホログラム再生装置に関する。より詳細には、複数の独立なホログラム画像データが書き込まれた反射型薄膜ホログラムから画像データを再生する画像データ多重型ホログラム再生装置に関する。
【0002】
ホログラフィを利用した記憶媒体が、実用化段階にある。より大きな記憶容量が得られる体積ホログラムおよび大量生産が比較的簡単な平面ホログラムが、とりわけ注目されている。例えば、特許文献1には、多数の薄膜光導波路層の各層に平面ホログラムを記録した多重ホログラム記憶媒体、およびその再生装置が開示されている。プラスチック樹脂媒体などの安価な材料を利用して、低コストで記憶媒体を大量生産ができる特徴を持っている。また、読み出し(再生)装置を小型かつ低消費電力で実現できる点にも特徴があった。
【0003】
より具体的には、特許文献1のホログラム記憶媒体では、多くの薄膜導波路層からなる薄膜記憶媒体の各々に凹凸パターンとして形成された透過型薄膜ホログラムが利用されている。ここで、ホログラフィー技術における透過型薄膜ホログラムとは、画像を回折する薄膜記録媒体中の屈折率または白黒の濃淡分布として記録された情報を言う。またホログラフィー技術の別の形態である反射型薄膜ホログラムとは、画像を回折する薄膜記録媒体表面の凹凸として記録された情報を言う。
【0004】
特許文献2には、複数の独立したスラブ型シングルモード導波路から成るデータ多重型ホログラムメモリから、独立した情報を取り出す技術が開示されている。すなわち、データ多重型ホログラムメモリに光を入射して各層から再生される回折光を、導波路面外の平面上に結像させる。互いに平行な位置関係にあるこれらの平面(焦点面)が、複数存在するように構成している。各焦点面に結像される像から、互いに独立した情報が取り出される。この方式では、データを読み出す光がホログラム内を通過(伝搬)しているので、透過型薄膜ホログラムに対応する。
【0005】
従来の薄膜ホログラム原理を使用した記憶媒体において、複数の独立した画像データを透過型ホログラムまたは反射型薄膜ホログラムによって再生する場合、必要な数の透過型薄膜ホログラムまたは反射型薄膜ホログラムをあらかじめ作製しておいて、再生装置の所定の空間に配置する。すなわち、再生したい画像データを得る場合には、レーザ光源からの再生用レーザ光の照射位置へ、再生画像に対応するホログラムを機械的に移動させる必要があった。
【0006】
上述の薄膜記録媒体中の屈折率もしくは白黒の濃淡分布情報ならびに薄膜記録媒体表面の凹凸情報は、再生像を結像させようとする位置と、再生用レーザ光の入射方向とによって一意的に決定される。したがって、透過型薄膜ホログラムまたは反射型薄膜ホログラムを再生する場合、レーザ光源からの再生用レーザ光の照射位置に正確に透過型薄膜ホログラムまたは反射型薄膜ホログラムを配置する必要がある。複数の独立した画像データを再生する場合には、画像データ対応する複数の透過型薄膜ホログラムまたは反射型薄膜ホログラムを、それぞれ所定の正確な位置に移動させる機構(例えばXY軸移動ステージなど)が必要不可欠であった。
【0007】
また、上述の特許文献2の再生装置では、各層の導波路内にデータ情報が書き込まれるので、これらのデータ情報を取り出すためには焦点位置をずらす必要がある。したがって、再生装置内には各層の導波路に対応させて焦点位置を変化させる機構が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3323146号明細書
【特許文献2】特許第3761760号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような従来技術の画像データ多重型ホログラム再生装置では、以下に述べるような問題点があった。
(1)記録する画像データの数に対応する多数の透過型薄膜ホログラムまたは反射型薄膜ホログラムを作製する必要があり、コストが高くなる。
(2)多数の薄膜ホログラムを所定の空間に配置するためのスペースが必要であり、再生装置を小型化することが難しい。
(3)多数の薄膜ホログラムの位置を正確に移動させる機構を備える必要があるため、再生装置が複雑となりコストも高くなる。また、再生装置内にこれらの移動機構を収納するためのスペースが必要となり、再生装置を小型化することが難しい。
【0010】
図8は、従来技術における反射型薄膜ホログラムを用いた画像データ多重型ホログラム再生装置の構成例を示す図である。レーザ光源61から出射されたレーザ光が、媒体に入射して進行する。レーザ光は媒体を経て反射型薄膜ホログラムに入射し、媒体の内部に向かって反射される。このとき、反射型薄膜ホログラムより、所定の空間角度方向に画像データ情報を含んだ回折光が発生する。回折光は、画像データの再生像を不動面65上に結像させる。
【0011】
複数の独立した画像データを反射型薄膜ホログラムにより再生する場合、図8のように、複数の媒体63a、63b、63cにそれぞれ固定した反射型薄膜ホログラム62a、62b、62cを、順次、y方向に移動させる必要がある。図8の構成例では、3つの媒体を連結させた構造物を移動させる空間も含めた収納スペースが必要となる。この移動させる機構および収納スペースは、再生装置を小型化するにあたっての障害となっていた。また、レーザ光の入射角度を維持するために、精度良く反射型薄膜ホログラムの位置を合わせる必要があり、移動させる機構には精度が必要である。
【0012】
本発明は、上述のような従来技術における課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、多数の薄膜ホログラムを所定の空間に配置するためのスペースと、多数の薄膜ホログラムを正確に移動させる機構を不要とし、1つの反射型薄膜ホログラムより、複数の独立した画像データを再生できる画像データ多重型ホログラム再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明では反射型データ多重型ホログラムを用いて、複数の独立した画像データの再生を行う。
【0014】
請求項1に記載の発明は、データ領域に複数のホログラム画像データが書き込まれた薄膜ホログラムから画像データを再生する画像データ多重型ホログラム再生装置において、前記薄膜ホログラムにレーザ光を照射する光源と、前記薄膜ホログラムを固定し、前記光源からの前記レーザ光および前記薄膜ホログラムからの回折光が進行(伝搬)する媒体と、前記薄膜ホログラムから再生画像が表示される再生結像面までの、前記回折光の光路上であって、前記媒体に近接して配置された透過光選択手段であって、前記透過光選択手段は、前記データ領域よりも小さな面積の複数個の開口部を持ち、前記複数の開口部の少なくとも1つによって前記回折光を選択的に透過させることによって前記複数のホログラム画像データのうちの1つの再生画像を前記再生結像面に結像することとを備えたことを特徴とする画像データ多重型ホログラム再生装置である。ここで、再生結像面は、再生画像が表示される面であり、本明細書では不動面に対応する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1のホログラム再生装置であって、前記光源からのレーザ光を反射させ、前記薄膜ホログラムに反射光を入射させる前記媒体に固定された反射面をさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2のホログラム再生装置であって、前記反射面は、前記透過光選択手段が近接して固定される前記媒質の第1の面および前記第1の面に対向し前記薄膜ホログラムが固定される第2の面のそれぞれと交差しかつ傾斜した側面上に固定され、前記光源からのレーザ光が前記反射面を経由して前記薄膜ホログラムへ入射することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3いずれかのホログラム再生装置であって、前記透過光選択手段は、複数の開口部を有する光遮蔽板または複数の開口部を持つ透過型液晶パネルであることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1のホログラム再生装置であって、前記薄膜ホログラムは、前記媒体の表面上に一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、多数の薄膜ホログラムを所定の空間に配置するためのスペースおよび多数の薄膜ホログラムを正確に移動させる機構が不要となる。1つの反射型薄膜ホログラムから、複数の独立した画像データを再生できる画像データ多重型ホログラム再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置の第1の実施形態を示した構成図である。
【図2】透過光選択手段の例示的な構成を示す図である。
【図3】本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置の第2の実施形態を示した構成図である。
【図4】本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置の第3の実施形態を示した構成図である。
【図5】本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置の第4の実施形態を示した構成図である。
【図6】媒体、反射型薄膜ホログラムおよび透過光選択手段の配置構成の例を説明する図である。
【図7】媒体、反射型薄膜ホログラムおよび透過光選択手段の配置構成の他の例を説明する図である。
【図8】従来技術における画像データ多重型ホログラム再生装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面とともに本発明の実施形態を説明する。本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置は、反射型薄膜ホログラムから回折した光が媒体外の不動面上に結像するまでの光路の途中に、ホログラムのデータ領域よりも小さな面積の複数個の開口部をもつ透過光選択手段を設けたところに特徴がある。透過光選択手段としては、例えば、移動可能な光遮蔽板または開口部の透過率を可変できる透過率変調型液晶パネルを利用することができる。
【0022】
図1は、本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置の第1の実施形態を示した側面図である。本実施形態のホログラム再生装置は、レーザ光源11、反射型薄膜ホログラム12を固定する概ね直方体または板状の媒体13、ホログラムからの反射光が透過する媒体13の面上に配置された透過光選択手段14および画像データを結像させる不動面15から構成される。レーザ光源11は、ホログラム12が配置された面に対向する面を見るように配置されている。透過光選択手段14は、より具体的には、例えば光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルとすることができる。
【0023】
本再生装置の動作を説明すれば、レーザ光源11から出射された光は媒体13に入射して進行し、媒体13に固定された反射型薄膜ホログラム12に入射して、媒体13の内部に向かって反射される。このとき、反射型薄膜ホログラム12より、所定の空間角度方向に複数の独立した画像データ情報を含んだ回折光が発生する。この回折光は媒体13から空気中に出射され、空気中を進行して不動面15上(x−z面)に画像データの再生像を結像する。媒体13の形状は、図1の光路を形成できるものであれば、図1に示した直方体または板状には限られない。
【0024】
また、再生画像を結像させる不動面は、必ずしも再生装置の一部として含まれていなくても良い。例えば、再生装置の外部の所定の位置にある任意の面上に結像させることもできる。ホログラムによっては、所定の位置には幅がある場合もあるので、必ずしも不動面は固定化された全く動かない面という意味ではないことに留意されたい。
【0025】
薄膜ホログラム12の表面上には、データ領域が形成される。例えば、数mm四方程度のホログラム12上に、計算により決定したホログラム振幅・位相情報が微細なピッチ(例えば500nm×500nmピッチ)および所定のエッチング深さで彫り込まれ形成されたデータ領域を持っている。
【0026】
データ領域には、複数の独立した画像データを生成するホログラム面上の波面を重畳して、振幅・位相情報として記録する。本実施形態のように複数の画像データを1つのホログラムに記録しても、従来技術のように個々のホログラムに別個に画像データを記録した場合に比べて、その面積は増加しない。ただし、開口部で回折光の透過光を制限するために、結像面では解像度が減少しているため、情報量の増減はない。
【0027】
先にも述べたように、薄膜ホログラムのデータ領域における情報は、再生像を結像させようとする不動面などの位置と、再生用レーザ光の入射方向とによって、一意的に決定される。したがって、光源11からのレーザ光が入射しおよび透過光選択手段14が配置される第1の面と、ホログラム12が配置され第1の面に対向する第2の面とを備え、図1に示した光路を形成できれば、媒体の形状は問わない。所定の結像が不動面15上に得られる限り、第1の面と第2の面とが平行でなくても良い。また、不動面15が、図1に示したように第1の面および第2の面に対して垂直でなくても良い。
【0028】
ホログラムからの回折光が媒体13から空気中に出射する第1の面上または面の近傍であって、回折光の光路の途中の所定の位置に透過光選択手段14を配置する。透過光選択手段14は、ホログラム12のデータ領域よりも小さな面積の複数の開口部を持ち、例えば、光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルを利用することができる。光遮蔽板の位置を移動させたり、または液晶パネルの一部により形成される複数の開口部の液晶素子の透過率を変えたりすることによって、1つの画像に対応する透過光の一部を選択して、独立した複数の画像データの再生像を不動面15上に結像することができる。
【0029】
本構成によれば、従来技術の構成のように、複数の媒体を連結して移動させる機構は不要である。また、複数の媒体の収納スペースも必要が無い。さらに、本発明のように光遮蔽板を移動させる場合では、移動の精度が小さくても良い。透過型液晶パネルを利用すれば、機械的な駆動部を含む移動機構が不要となり、再生装置を大幅に小型化することができる。
【0030】
図2は、透過光選択手段の例示的な構成を示す図である。図2の(a)は、光遮蔽板14を用いた場合の構成を示す図である。光遮蔽板14は、3つの開口部1a、1b、1cを持っている。光遮蔽板14は、全体をz方向に移動させることにより図1においてy方向について回折光が選択される。光遮蔽板14は、媒体13の面上に密着している必要は無く、ホログラム12からの回折光を選択的に透過または遮断することができる位置にあれば良い。
【0031】
光遮蔽板は、例えば、7mm×7mm程度の大きさで十分である。また、光遮蔽板14を移動させる機構は、小さくて簡単なもので良い。さらに、図8のような複数の媒体を移動させる従来技術の機構の場合と異なり、光遮蔽板14を一方向に移動させる機構には高い動作精度は必要ない。開口部の大きさは、ホログラム12のデータ領域の大きさよりも小さければ良い。図2の(a)は、データ領域の面積の概ね1/3の大きさの開口部を形成した場合を例示的に示している。また、開口部の数は3に限定されない。各開口部の大きさが、図2の(a)のように同じである必要も無い。
【0032】
図2の(b)は、透過光選択手段として透過率変調型液晶パネル14を用いた場合の構成を示す図である。液晶パネル14は、3つの開口部2a、2b、2cを持つ。図には示されない駆動電気回路などによって、各開口部の透過率を独立に変調することができる。1つの開口部は、1つの液晶素子によって構成しても良いし、複数の液晶素子で構成することもできる。透過光選択手段14は、上述の構成に限定されない。ホログラムからの回折光の一部を選択的に透過させることのできるものであれば、本発明の効果が得られるの言うまでも無い。
【0033】
レーザ光源11から出射された光が、空気中から第1の面で媒体13に入射するとき、通常、媒体の屈折率Nは空気の屈折率N(=1)よりも大きいので、入射面(第1の面)でレーザ光の一部が媒体表面で反射して入射光量が低下する。この光量低下を阻止するには、入射角を次式で与えられるブリュースター角θに設定することが有効である。
θ=tan-1(N/N) 式(1)
【0034】
媒体13としてBK7ガラス(N=1.54)を用いた場合、θは約56.5°となる。また、媒体13としてポリマー(N=1.5)を用いた場合、θは約56.3°となる。
【0035】
図3は、本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置の第2の実施形態を示した側面図である。本実施形態のホログラム再生装置は、レーザ光源21、反射型薄膜ホログラム22を固定する概ね直方体または板状の媒体23、媒体23の面(第1の面)上に配置されレーザ光を反射する反射面26、媒体13の反射面26と連続する面上に配置されホログラムからの回折光を選択的に透過させる透過光選択手段24および画像データを結像させる不動面25から構成される。本実施形態では、光源21は、媒体23のホログラム22が配置された面(第2の面)を見るように配置されている。透過光選択手段24は、より具体的には、例えば光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルとすることができる。第1の実施形態と比較すると、本構成は、反射面26をさらに備え、光源21が、媒体23のホログラム側の第2の面を見るように配置されている点で相違する。
【0036】
媒体23の形状は、第1の実施形態と同様、図3に示した光路を形成できるものであれば、直方体または板状などには限られない。反射面26は、例えば、金、アルミなどの高反射率を示す金属蒸着膜で形成することができる。
【0037】
本実施形態の再生装置の動作を説明すれば、レーザ光源21から出射された光は媒体23に入射して進行し、媒体23に固定された反射面26により反射される。その後、媒質23内を進行して反射型薄膜ホログラム22に入射して反射される。このとき、反射型薄膜ホログラム22より、所定の空間角度方向に複数の独立した画像データ情報を含んだ回折光が発生する。この回折光は媒体23から空気中に出射され、空気中を進行して不動面25上に画像データの再生像を結像する。
【0038】
ホログラムからの回折光が媒体23から空気中に出射する第1の面上であって、光路の途中の所定の位置に透過光選択手段24を配置する。透過光選択手段24は、ホログラム22のデータ領域よりも小さな面積の複数の開口部を持つ。透過光選択手段24は、具体的には、例えば光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルを利用することができる。光遮蔽板の位置を移動させたり、または液晶パネルの一部により形成される開口部の液晶素子の透過率を変えたりすることによって、1つの画像に対応する透過光の一部を選択して、独立した複数の画像データの再生像を不動面25上に結像することができる。ホログラム再生装置において光路の構成方法は他の様々な変形が可能であり、以下説明する第3および第4の実施形態のように構成することもできる。
【0039】
図4は、本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置の第3の実施形態を示した側面図である。本実施形態のホログラム再生装置は、レーザ光源31、反射型薄膜ホログラム32を固定する媒体33、ホログラム32からの回折光を選択的に透過させ媒体33の面上または近傍に配置された透過光選択手段34および画像データを結像させる不動面35から構成される。本実施形態では、透過光選択手段34が配置される媒体31の第1の面および第1の面に対向しホログラム32が固定される第2の面に交差する1つの側面(第3の面)を経由して、光源31からのレーザ光が媒体33へ入射される点で第1の実施形態と相違する。この側面は、第1の面および第2の面に対して傾斜しており、光源31はこの傾斜側面(第3の面)を見るように配置されている。透過光選択手段34は、より具体的には、例えば光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルとすることができる。
【0040】
媒体33の形状は、第1および第2の実施形態と同様、図4の光路を形成できるものであれば、傾斜側面を持つ直方体または傾斜側面を持つ板状などには限られない。
【0041】
本実施形態の再生装置の動作を説明すれば、レーザ光源31から出射された光は、傾斜面から媒体33に入射して進行し、媒体33に固定された反射型薄膜ホログラム32に入射して反射される。このとき、反射型薄膜ホログラム32より所定の空間角度方向に複数の独立した画像データ情報を含んだ回折光が発生する。この回折光は媒体33から空気中に出射され、空気中を進行して不動面35上に画像データの再生像を結像する。
【0042】
ホログラムからの回折光が媒体33から空気中に出射する第1の面上または近傍であって、回折光の光路の途中の所定の位置に透過光選択手段34を配置する。透過光選択手段34は、ホログラム32のデータ領域よりも小さな面積の複数の開口部を持ち、例えば、光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルを利用することができる。光遮蔽板の位置を移動させたり、または液晶パネルの一部により形成される開口部の液晶素子の透過率を変えたりすることによって、1つの画像に対応する透過光の一部を選択して、独立した複数の画像データの再生像を不動面35上に結像することができる。
【0043】
本実施形態のように、レーザ光源31から出射された光が空気中より媒体33に入射する面を、媒体33からレーザ光源側を見た傾斜した側面とすることによって、レーザ光源31と媒体33との水平方向の距離を図1の場合に比べて短くできる。これにより、再生装置をより小型化できる利点がある。
【0044】
図5は、本発明の画像データ多重型ホログラム再生装置の第4の実施形態を示した側面図である。本実施形態のホログラム再生装置は、レーザ光源41、反射型薄膜ホログラム42を第2の面上で固定する媒体43、ホログラム42からの反射光が透過する媒体43の第1の面上に配置された透過光選択手段44、第1の面および第2の面に交差する傾斜側面上に配置される反射面46および画像データを結像させる不動面45から構成される。
【0045】
本実施形態では、媒体43においてホログラム42が配置される第2の面と、透過光選択手段44が配置され第2の面に対向する第1の面とに交差する側面(第3の面)へ向かってレーザ光が進行する。すなわち、本構成は、この側面(第3の面)に向かって、媒体43の内部を経由して光源41からのレーザ光が入射される点で、第3の実施形態と相違している。この側面は、第1の面および第2の面に対して傾斜している。光源41は、この傾斜した側面(第3の面)を媒体43を通して見るように配置されている。透過光選択手段44は、より具体的には、例えば光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルとすることができる。
【0046】
媒体43の形状は、第3の実施形態と同様、図5の光路を形成できるものであれば、傾斜側面を持つ直方体または傾斜側面を持つ板状などには限られない。反射面46は、例えば、金、アルミなどの高反射率を示す金属蒸着膜で形成することができる。
【0047】
本実施形態の再生装置の動作を説明すれば、レーザ光源41から出射された光は媒体43に入射して進行し、媒体43の傾斜側面に固定された反射面46により反射される。媒体43の内部を進行し、反射型薄膜ホログラム42に入射して反射される。このとき、反射型薄膜ホログラム42より所定の空間角度方向に複数の独立した画像データ情報を含んだ回折光が発生する。この回折光は媒体43から空気中に出射され、空気中を進行して不動面45上に画像データの再生像を結像する。
【0048】
ホログラム42からの回折光が媒体43から空気中に出射する第1の面上または近傍であって、回折光の光路の途中の所定の位置に、透過光選択手段44を配置する。透過光選択手段44は、ホログラム42のデータ領域よりも小さな面積の複数の開口部を持ち、例えば、光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルを利用することができる。光遮蔽板の位置を移動させたり、または液晶パネルの一部により形成される開口部の液晶素子の透過率を変えたりすることによって、1つの画像に対応する透過光の一部を選択して、独立した複数の画像データの再生像を不動面45上に結像することができる。
【0049】
本実施形態のように、レーザ光源41から出射された光を反射型薄膜ホログラム42に入射させる途中で、媒体43からレーザ光源側から媒体43を経由して見ることのできる傾斜した側面を設けることによって、レーザ光源41と媒体43との水平方向の距離を図4の場合と比べてさらに短くすることができる。この構成により、再生装置をさらに小型化できる利点がある。
【0050】
図6は、媒体、反射型薄膜ホログラムおよび透過光選択手段の配置の一例を説明する図である。媒体51の対向する2つの面上に、それぞれ反射型薄膜ホログラム53および透過光選択手段52が配置されている。透過光選択手段52は、例えば光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルとすることができる。
【0051】
反射型薄膜ホログラム53のデータ領域は、レーザ光源からの光が所定の角度で入射した場合に、あらかじめその位置が想定された不動面上に画像データを結像するように構成される。すなわち、ホログラム53は、計算により決定したホログラム振幅・位相情報が微細なピッチ(例えば500nm×500nmピッチ)で数mm四方のホログラム媒体に所定のエッチング深さで彫り込まれて形成される。レーザ光の入射角度は、具体的には、媒体52としてBK7ガラスまたはポリマーを用いてブリュースター角θで媒体52に入射した場合には、各々約33.4°または約33.7°の角度となる。
【0052】
例えば、レーザ光源の波長が650nmで媒体がポリマー(N=1.5)の場合、位相情報を4レベルで表現しようとすれば、エッチング深さは0、46、92、137nmとなる。また、反射効率を高めるために、ポリマー媒体の凹凸面に金属(金、アルミなど)を蒸着させて使用する。また、反射型薄膜ホログラム51と媒体52は光学接着剤などで貼り合わせて固定する。
【0053】
図7は、媒体、反射型薄膜ホログラムおよび透過光選択手段の別の構成例を説明する図である。本構成例では、反射型薄膜ホログラムが媒体の1つの面に一体として形成されている点で、図6の構成と相違する。媒体61の対向する面上において、一方の面には反射型薄膜ホログラム63が一体に形成され、他方の面には透過光選択手段62が配置されている。透過光選択手段62は、例えば光遮蔽板または透過率変調型液晶パネルとすることができる。
【0054】
図7の反射型薄膜ホログラムを側面に形成した媒体61は、例えばポリマー(N=1.5)から成る。側面に形成される反射型薄膜ホログラムは、レーザ光源からの光が所定の角度で入射した場合に、あらかじめ想定された位置の不動面上に画像データを結像させるように、計算により決定したホログラム振幅・位相情報が微細なピッチ(例えば500nm×500nmピッチ)で、所定のエッチング深さで彫り込まれ形成される。所定の入射角度は、媒体61としてポリマーを用いてブリュースター角θで媒体62に入射した場合、約33.7°の角度となる。
【0055】
例えば、レーザ光源の波長が650nmの場合には、位相情報を4レベルで表現しようとすれば、エッチング深さは0、46、92、137nmとなる。また、反射効率を高めるために、ポリマー媒体の凹凸面に金属(金、アルミなど)を蒸着させて使用する。
【0056】
図7の構成の場合には、反射型薄膜ホログラムが媒体の側面に一体化して形成されているため、反射型薄膜ホログラムと媒体とを光学接着剤などで貼り合わせて固定する必要がない。
【0057】
以上詳細に述べたように、本発明によれば、多数個の薄膜ホログラムを所定の空間に配置するためのスペースと、多数の薄膜ホログラムを正確に移動させる機構を不要とすることができる。複数の焦点面を形成する機構も不要となる。1つの反射型薄膜ホログラムより、複数の独立した画像データを再生できる画像データ多重型ホログラム再生装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ホログラム再生装置に利用することできる。より詳細には、複数の独立な画像データが書き込まれたホログラムを利用した記憶媒体などに適用できる。
【符号の説明】
【0059】
11、21、31、41、61 レーザ光源
12、22、32、42、53、62a、62b、62c 反射型薄膜ホログラム
13、23、33、43、51、63a、63b、63c 媒体
14、24、34、44、52、62 透過光選択手段
15、25、35、45、65 不動面
26、46 反射面
61 反射型薄膜ホログラムを側面に形成した媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ領域に複数のホログラム画像データが書き込まれた薄膜ホログラムから画像データを再生する画像データ多重型ホログラム再生装置において、
前記薄膜ホログラムにレーザ光を照射する光源と、
前記薄膜ホログラムを固定し、前記光源からの前記レーザ光および前記薄膜ホログラムからの回折光が進行(伝搬)する媒体と、
前記薄膜ホログラムから再生画像が表示される再生結像面までの、前記回折光の光路上であって、前記媒体に近接して配置された透過光選択手段であって、前記透過光選択手段は、前記データ領域よりも小さな面積の複数個の開口部を持ち、前記複数の開口部の少なくとも1つによって前記回折光を選択的に透過させることによって前記複数のホログラム画像データのうちの1つの再生画像を前記再生結像面に結像することと
を備えたことを特徴とする画像データ多重型ホログラム再生装置。
【請求項2】
前記光源からのレーザ光を反射させ、前記薄膜ホログラムに反射光を入射させる前記媒体に固定された反射面をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のホログラム再生装置。
【請求項3】
前記反射面は、前記透過光選択手段が近接して固定される前記媒質の第1の面および前記第1の面に対向し前記薄膜ホログラムが固定される第2の面のそれぞれと交差しかつ傾斜した側面上に固定され、前記光源からのレーザ光が前記反射面を経由して前記薄膜ホログラムへ入射することを特徴とする請求項2に記載のホログラム再生装置。
【請求項4】
前記透過光選択手段は、複数の開口部を有する光遮蔽板または複数の開口部を持つ透過型液晶パネルであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のホログラム再生装置。
【請求項5】
前記薄膜ホログラムは、前記媒体の表面上に一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホログラム再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169826(P2010−169826A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11164(P2009−11164)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】