説明

画像再生装置、光書き込み装置、及びプログラム

【課題】画像の白とびを防止すると共に、容易に画像を視認する。
【解決手段】光書き込み型画像表示媒体1の光導電体層10に光導電体層10側から書き込み光を照射する照射手段32と、表示層7及び光導電体層10に画像書き込み用電圧を印加する電圧印加手段26、28と、表示層7から反射されて透過する反射光及び透過して表示層7に入射する入射光の透過率を調整するプラテンカバー16(フイルム17を含む)、プラテンカバー16に照射される光の照度を検出する照度計19、照度計19で検出された照度に基づいてプラテンカバー16及び表示層7を透過して遮光層9へ入射する光が予め定められた強度K未満となりかつ表示層7から反射されてプラテンカバー16(フイルム17を含む)を透過した光により表示層7の画像が視認可能な透過率となるようにプラテンカバー16を制御する制御部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像再生装置、光書き込み装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光書き込み型の画像表示媒体として電子ペーパが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、このような画像表示媒体に画像を書き込む光書き込み装置の技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
ここで、表示層と光導電体層との間に遮光膜を備えた光書き込み型の画像表示媒体が考えられる。
【特許文献1】特開2000−180888号公報
【特許文献2】特開2001−100664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像の白とびを防止すると共に、容易に画像を視認可能とする画像再生装置及び光書き込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の画像再生装置は、照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層、及び前記光導電体層との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層を挟んで配置されると共に、前記光導電体層及び前記遮光層を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層を備えた光書き込み型画像表示媒体の前記表示層側に配置され、前記表示層から反射されて透過する反射光、及び透過して前記表示層に入射する入射光の透過率を調整する調整手段と、前記調整手段に照射される光の照度を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された照度に基づいて、前記調整手段及び前記表示層を透過して前記遮光層へ入射する光が前記予め定められた強度未満となり、かつ前記表示層から反射されて前記調整手段を透過した光により前記表示層の画像が視認可能な透過率となるように前記調整手段を制御する制御手段とを含んで構成されている。
【0006】
また、上記目的を達成するために、請求項2記載の発明の光書き込み装置は、照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層、及び前記光導電体層との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層を挟んで配置されると共に、前記光導電体層及び前記遮光層を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層を備えた光書き込み型画像表示媒体の前記光導電体層に、前記光導電体層側から前記書き込み光を照射する照射手段と、前記表示層及び前記光導電体層に画像書き込み用電圧を印加する電圧印加手段と、前記表示層から反射されて透過する反射光、及び透過して前記表示層に入射する入射光の透過率を調整する調整手段と、前記調整手段に照射される光の照度を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された照度に基づいて、前記調整手段及び前記表示層を透過して前記遮光層へ入射する光が前記予め定められた強度未満となり、かつ前記表示層から反射されて前記調整手段を透過した光により前記表示層の画像が視認可能な透過率となるように前記調整手段を制御する制御手段とを含んで構成されている。
【0007】
また、請求項3に記載の発明の光書き込み装置は、前記制御手段を、画像を書き込む際に、画像情報に基づいて前記書き込み光が前記光導電体層に照射されるように前記照射手段を制御すると共に、前記表示層及び前記光導電体層に画像書き込み用電圧が印加されるように前記電圧印加手段を制御するようにしたものである。
【0008】
また、上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明のプログラムは、コンピュータを、照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層、及び前記光導電体層との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層を挟んで配置されると共に、前記光導電体層及び前記遮光層を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層を備えた光書き込み型画像表示媒体の前記表示層側に配置され、前記表示層から反射されて透過する反射光、及び透過して前記表示層に入射する入射光の透過率を調整する調整手段に照射される光の照度を検出する検出手段で検出された照度に基づいて、前記調整手段及び前記表示層を透過して前記遮光層へ入射する光が前記予め定められた強度未満となり、かつ前記表示層から反射されて前記調整手段を透過した光により前記表示層の画像が視認可能な透過率となるように前記調整手段を制御する制御手段として機能させるためのものである。
【0009】
また、上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明のプログラムは、コンピュータを、照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層、及び前記光導電体層との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層を挟んで配置されると共に、前記光導電体層及び前記遮光層を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層を備え、前記光導電体層に前記光導電体層側から前記書き込み光が照射手段によって照射され、かつ前記表示層及び前記光導電体層に電圧印加手段によって画像書き込み用電圧が印加される光書き込み型画像表示媒体の前記表示層から反射されて透過する反射光、及び透過して前記表示層に入射する入射光の透過率を調整する調整手段に照射される光の照度を検出する検出手段で検出された照度に基づいて、前記調整手段及び前記表示層を透過して前記遮光層へ入射する光が前記予め定められた強度未満となり、かつ前記表示層から反射されて前記調整手段を透過した光により前記表示層の画像が視認可能な透過率となるように前記調整手段を制御する制御手段として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜請求項5の各発明によれば、画像の白とびを防止すると共に、容易に画像を視認することができる、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態における光書き込み型の表示媒体1の断面図を示している。表示媒体1は、画像に応じたアドレス光の照射及びバイアス信号(電圧)の印加によって画像を記録することが可能な表示媒体である。
【0013】
図1に示すように、表示媒体(光書き込み型画像表示媒体)1は、表示面側から順に、透明基板3、透明電極5、表示層(液晶層)7、ラミネート層8、遮光層(着色層)9、光導電体層10、透明電極6および透明基板4が積層されて構成されている。
【0014】
透明基板3、4は、各機能層を内面に保持し、表示媒体の構造を維持するためのものである。透明基板3、4は、外力に耐える強度を有するシート形状の部材で構成され、表示面側の透明基板3は少なくとも入射光を、書き込み面側の透明基板4は少なくともアドレス光(書き込み光)を、それぞれ透過する。透明基板3、4は、フレキシブル性を有することが好ましい。具体的な材料としては、無機シート(例えばガラス・シリコン)、高分子フイルム(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート)等を挙げることができる。外表面に、防汚膜、耐磨耗膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
【0015】
なお、透明基板3、4は、本実施形態では可視光全域にわたって透過性をもつものであるが、表示させる波長域のみ透過性を有していてもよい。
【0016】
透明電極5、6は、図2に示す光書き込み装置(光記録装置)2から印加されたバイアス電圧を、表示媒体1内の各機能層へ印加するためのものである。透明電極5は、本実施形態では一例として3個の略同一形状(例えば長方形状)の分割電極5A、5B、5Cで構成されており、透明電極6は表示媒体1の略全面に相当する面積を有する単一の透明電極で構成されている。透明電極5、6は、面均一な導電性を有し、表示面側の透明電極5は少なくとも入射光を、書き込み面側の透明電極6は少なくともアドレス光を透過する。具体的には、金属(例えば金、アルミニウム)、金属酸化物(例えば酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO))、導電性有機高分子(例えばポリチオフェン系・ポリアニリン系)などで形成された導電性薄膜を挙げることができる。表面に、密着力改善膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
【0017】
なお、透明電極5、6は、本実施形態では可視光全域にわたって透過性をもつものであるが、表示させる波長域のみ透過性を有していてもよい。
【0018】
表示層7は、電場によって入射光のうち特定の色光の反射・透過状態を変調する機能を有し、選択した状態が無電場で保持できる性質のものである。表示層7としては、曲げや圧力などの外力に対して変形しない構造であることが好ましい。
【0019】
本実施形態では、表示層7は、一例としてコレステリック液晶及び透明樹脂からなる自己保持型液晶複合体の液晶層で構成される。すなわち、複合体として自己保持性を有するためスペーサ等を必要としない液晶層であるが、これに限られるものではない。本実施形態では、図1に示されるように、高分子マトリックス(透明樹脂)11中にコレステリック液晶12が分散した状態となっている。
【0020】
コレステリック液晶12は、入射光のうち特定の色光の反射・透過状態を変調する機能を有し、液晶分子がらせん状に捩れて配向しており、らせん軸方向から入射した光のうち、らせんピッチに依存した特定の光を干渉反射する。電場によって配向が変化し、反射状態を変化させることができる。カラー表示の場合、ドロップサイズが均一で、単層稠密に配置されていることが好ましい。
【0021】
コレステリック液晶12として使用可能な具体的な液晶としては、ネマチック液晶やスメクチック液晶(例えばシッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系)、またはこれらの混合物に、カイラル剤(例えばステロイド系コレステロール誘導体、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系)を添加したもの等を挙げることができる。
【0022】
コレステリック液晶の螺旋ピッチは、ネマチック液晶に対するカイラル剤の添加量で調整する。例えば、表示色を青、緑、赤とする場合には、それぞれ選択反射の中心波長が、400nm〜500nm、500nm〜600nm、600nm〜700nmの範囲になるようにする。また、コレステリック液晶の螺旋ピッチの温度依存性を補償するために、捩じれ方向が異なる、または逆の温度依存性を示す複数のカイラル剤を添加する公知の手法を用いてもよい。
【0023】
表示層7がコレステリック液晶12と高分子マトリックス(透明樹脂)11からなる自己保持型液晶複合体を形成する形態としては、コレステリック液晶の連続相中に網目状の樹脂を含むPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造や、高分子の骨格中にコレステリック液晶がドロップレット状に分散されたPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)構造(マイクロカプセル化されたものを含む)を用いることができ、PNLC構造やPDLC構造とすることによって、コレステリック液晶と高分子の界面にアンカリング効果を生じ、無電界でのプレーナ相またはフォーカルコニック相の保持状態を、より安定にすることができる。
【0024】
PNLC構造やPDLC構造は、高分子と液晶とを相分離させる公知の方法、例えば、アクリル系、チオール系、エポキシ系などの、熱や光、電子線などによって重合する高分子前駆体と液晶を混合し、均一相の状態から重合させて相分離させるPIPS(Polymerization Induced PhaseSeparation)法、ポリビニルアルコールなどの、液晶の溶解度が低い高分子と液晶とを混合し、攪拌懸濁させて、液晶を高分子中にドロップレット分散させるエマルジョン法、熱可塑性高分子と液晶とを混合し、均一相に加熱した状態から冷却して相分離させるTIPS(Thermally Induced Phase Separation)法、高分子と液晶とをクロロホルムなどの溶媒に溶かし、溶媒を蒸発させて高分子と液晶とを相分離させるSIPS(Solvent Induced Phase Separation)法などによって形成することができるが、特に限定されるものではない。
【0025】
高分子マトリックス11は、コレステリック液晶12を保持し、表示媒体の変形による液晶の流動(画像の変化)を抑制する機能を有するものであり、液晶材料に溶解せず、また液晶と相溶しない液体を溶剤とする高分子材料が好適に用いられる。また、高分子マトリックス11としては、外力に耐える強度をもち、少なくとも反射光およびアドレス光に対して高い透過性を示す材料であることが望まれる。
【0026】
高分子マトリックス11として採用可能な材料としては、水溶性高分子材料(例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマー、エチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアミジン、イソプレン系スルホン酸ポリマー)、あるいは水性エマルジョン化できる材料(例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂)等を挙げることができる。
【0027】
光導電体層10は、内部光電効果をもち、アドレス光の照射強度に応じてインピーダンス特性が変化する特性を有する層である。AC動作が可能であり、アドレス光に対して対称駆動になることが好ましく、電荷発生層(CGL)が電荷輸送層(CTL)の上下に積層された3層構造が好適である。本実施形態では、光導電体層10として、一例として図1における上層から順に上側の電荷発生層13、電荷輸送層14および下側の電荷発生層15が積層されてなる。
【0028】
電荷発生層13、15は、アドレス光を吸収して光キャリアを発生させる機能を有する層である。主に、電荷発生層13が表示面側(表示層7側)の透明電極5から書き込み面側(光導電体層10側)の透明電極6の方向に流れる光キャリア量を、電荷発生層15が書き込み面側の透明電極6から表示面側の透明電極5の方向に流れる光キャリア量を、それぞれ左右している。電荷発生層13、15としては、アドレス光を吸収して励起子を発生させ、電荷発生層内部、または電荷発生層/電荷輸送層界面で自由キャリアに効率良く分離させられるものが好ましい。
【0029】
電荷発生層13、15は、電荷発生材料(例えば金属又は無金属フタロシアニン、スクアリウム化合物、アズレニウム化合物、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスやトリス等アゾ顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール色素、多環キノン顔料、ジブロモアントアントロンなど縮環芳香族系顔料、シアニン色素、キサンテン顔料、ポリビニルカルバゾールとニトロフルオレン等電荷移動錯体、ピリリウム塩染料とポリカーボネート樹脂からなる共昌錯体)を直接成膜する乾式法か、またはこれら電荷発生材料を、高分子バインダー(例えばポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルカルバゾール樹脂、ビニルホルマール樹脂、部分変性ビニルアセタール樹脂、カーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルアセテート樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させて塗布液を調製し、これを塗布し乾燥させて成膜する湿式塗布法等により形成することができる。
【0030】
電荷輸送層14は、電荷発生層13、15で発生した光キャリアが注入されて、バイアス信号で印加された電場方向にドリフトする機能を有する層である。一般に電荷輸送層は、電荷発生層の数10倍の厚みを有するため、電荷輸送層14の容量、電荷輸送層14の暗電流、および電荷輸送層14内部の光キャリア電流が、光導電体層10全体の明暗インピーダンスを決定付けている。
【0031】
電荷輸送層14は、電荷発生層13、15からの自由キャリアの注入が効率良く発生し(電荷発生層13、15とイオン化ポテンシャルが近いことが好ましい)、注入された自由キャリアができるだけ高速にホッピング移動するものが好適である。暗時のインピーダンスを高くするため、熱キャリアによる暗電流は低い方が好ましい。
【0032】
電荷輸送層14は、低分子の正孔輸送材料(例えばトリニトロフルオレン系化合物、ポリビニルカルバゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、ベンジルアミノ系ヒドラゾンあるいはキノリン系ヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ベンジジン系化合物)、または低分子の電子輸送材料(例えばキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、フルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物)を、高分子バインダー(例えばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、含珪素架橋型樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させたもの、あるいは上記正孔輸送材料や電子輸送材料を高分子化した材料を適当な溶剤に分散ないし溶解させたものを調製し、これを塗布し乾燥させて形成すればよい。
【0033】
遮光層(着色層)9は、書き込み時にアドレス光と入射光を光学分離し、相互干渉による誤動作を防ぐとともに、表示時に表示媒体の非表示面側から入射する外光と表示画像を光学分離し、画質の劣化を防ぐ目的で設けられた層である。その目的から、遮光層9には、少なくとも電荷発生層の吸収波長域の光、および表示層の反射波長域の光を吸収する機能が要求される。遮光層9は、遮光層9に入射された光の光強度が予め定められた値K未満の強度であれば入射された光を遮光するが、遮光層9に入射された光の光強度が予め定められた値K以上の光である場合には、入射された光を透過させる。すなわち、光書き込み型の画像表示媒体1を光書き込み装置2に光書き込み可能なように配置して、光を画像表示媒体1に書き込む際に、表示面側から入射された光の強度が予め定められた値K以上であれば、この光が光導電体層10に漏れて、光導電体層10に、書き込み光以上の強度の光が照射される場合がある。
【0034】
着色層9は、具体的には、無機顔料(例えばカドミウム系、クロム系、コバルト系、マンガン系、カーボン系)、または有機染料や有機顔料(アゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、ニトロ系、フタロシアニン系、ペリレン系、ピロロピロール系、キナクリドン系、多環キノン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系、アントロン系)を光導電体層10の電荷発生層13側の面に直接成膜する乾式法か、あるいはこれらを高分子バインダー(例えばポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させて塗布液を調製し、これを塗布し乾燥させて成膜する湿式塗布法等により形成することができる。
【0035】
ラミネート層8は、それぞれ上下基板内面に形成した各機能層を貼りあわせる際に、凹凸吸収および接着の役割を果たす目的で設けられる層であり、本実施形態において必須の構成要素ではない。ラミネート層8は、ガラス転移点の低い高分子材料からなるものであり、熱や圧力によって表示層7と着色層9とを密着・接着させることができる材料が選択される。また、少なくとも入射光に対して透過性を有することが条件となる。
【0036】
ラミネート層8に好適な材料としては、粘着性の高分子材料(例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂)を挙げることができる。
【0037】
図3は、図1に示される構造の表示媒体(液晶デバイス)1の等価回路を示す回路図である。Clc、Copc、およびRlc、Ropcは、それぞれ表示層7および光導電体層10の静電容量および抵抗値である。CeおよびReは、表示層7および光導電体層10以外の構成要素の等価静電容量および等価抵抗値である。
【0038】
表示媒体1の透明電極5−透明電極6間に外部の書き込み装置2から印加される電圧をVとすると、各構成要素には、各構成要素間のインピーダンス比によって決まる分圧Vlc、VopcおよびVeが印加される。より具体的には、電圧が印加された直後には各構成要素の容量比で決定される分圧が生じ、時間経過とともに各構成要素の抵抗値比で決定される分圧へと緩和していく。
【0039】
ここで、アドレス光の強度に応じて光導電体層10の抵抗値Ropcが変化するため、露光と非露光によって表示層7に印加される実効電圧を制御することができる。露光時には光導電体層10の抵抗値Ropcが小さくなって表示層7に印加される実効電圧は大きくなり、逆に非露光時には光導電体層10の抵抗値Ropcが大きくなって表示層7に印加される実効電圧は小さくなる。
【0040】
次に、コレステリック液晶(カイラルネマチック液晶)12について具体的に説明する。コレステリック液晶12が示すプレーナ相は、螺旋軸に平行に入射した光を右旋光と左旋光に分け、螺旋の捩じれ方向に一致する円偏光成分をブラッグ反射し、残りの光を透過させる選択反射現象を起こす。反射光の中心波長λおよび反射波長幅Δλは、螺旋ピッチをp、螺旋軸に直交する平面内の平均屈折率をn、複屈折率をΔnとすると、それぞれ、λ=n・p、Δλ=Δn・pで表され、プレーナ相のコレステリック液晶層による反射光は、螺旋ピッチに依存した鮮やかな色を呈する。
【0041】
正の誘電率異方性を有するコレステリック液晶は、図4(A)に示すように、螺旋軸がセル表面に垂直になり、入射光に対して上記の選択反射現象を起こすプレーナ相、同図(B)に示すように、螺旋軸がほぼセル表面に平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック相、および同図(C)に示すように、螺旋構造がほどけて液晶ダイレクタが電界方向を向き、入射光をほぼ完全に透過させるホメオトロピック相、の3つの状態を示す。
【0042】
上記の3つの状態のうち、プレーナ相とフォーカルコニック相は、無電界で双安定に存在することができる。したがって、コレステリック液晶の相状態は、液晶層に印加される電界強度に対して一義的に決まらず、プレーナ相が初期状態の場合には、電界強度の増加に伴って、プレーナ相、フォーカルコニック相、ホメオトロピック相の順に変化し、フォーカルコニック相が初期状態の場合には、電界強度の増加に伴って、フォーカルコニック相、ホメオトロピック相の順に変化する。
【0043】
一方、液晶層に印加した電界強度を急激にゼロにした場合には、プレーナ相とフォーカルコニック相はそのままの状態を維持し、ホメオトロピック相はプレーナ相に変化する。
【0044】
したがって、パルス信号を印加した直後のコレステリック液晶層は、図5に示すようなスイッチング挙動を示し、印加されたパルス信号の電圧が、Vfh以上のときには、ホメオトロピック相からプレーナ相に変化した選択反射状態となり、VpfとVfhの間のときには、フォーカルコニック相による透過状態となり、Vpf以下のときには、パルス信号印加前の状態を継続した状態、すなわちプレーナ相による選択反射状態またはフォーカルコニック相による透過状態となる。
【0045】
なお、図中、縦軸は正規化反射率であり、最大反射率を100、最小反射率を0として、反射率を正規化している。また、プレーナ相、フォーカルコニック相およびホメオトロピック相の各状態間には、遷移領域が存在するため、正規化反射率が50以上の場合を選択反射状態、正規化反射率が50未満の場合を透過状態と定義し、プレーナ相とフォーカルコニック相の相変化のしきい値電圧をVpfとし、フォーカルコニック相とホメオトロピック相の相変化のしきい値電圧をVfhとする。
【0046】
特に、コレステリック液晶の連続相中に網目状の樹脂を含むPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造や、高分子の骨格中にコレステリック液晶がドロップレット状に分散されたPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)構造(マイクロカプセル化されたものを含む)の液晶層においては、コレステリック液晶と高分子の界面における干渉により(アンカリング効果)、プレーナ相とフォーカルコニック相の無電界における双安定性が向上し、長期間に渡ってパルス信号印加直後の状態を保持することができる。
【0047】
このようなコレステリック液晶12を用いた表示媒体1では、コレステリック液晶の双安定現象を利用して、(A)プレーナ相による選択反射状態と、(B)フォーカルコニック相による透過状態とを、スイッチングすることによって、無電界でのメモリー性を有するブラック・ホワイトのモノクロ表示、または無電界でのメモリー性を有するカラー表示を行う。
【0048】
外部印加電圧の大きさに応じてコレステリック液晶12は、プレーナ相状態(P状態)またはホメオトロピック相状態(H状態)を初期状態とした場合にはP状態、フォーカルコニック相状態(F状態)、H状態と変化し、F状態を初期状態とした場合にはF状態、H状態と変化し、その最終状態がP状態およびF状態では、印加電圧を除した後も維持されるが、H状態では、P状態に相変化する。従って、露光/非露光に関わらず、印加電圧の大きさにより、最終的な相状態としてP状態ないしF状態が選択される。図5に示すように、P状態では光反射、F状態では光透過状態となる。
【0049】
次に、図2に示す画像表示装置20について説明する。画像表示装置20は、表示媒体1及び光書き込み装置(光記録装置)2を含んで構成される。なお、この光書き込み装置は、画像再生装置としても機能する。
【0050】
光書き込み装置2は、表示媒体1に画像を書き込む(記録する)装置であり、表示媒体1に対して書き込み光(アドレス光)の照射を行う光照射部(露光装置)32、光照射部32と表示媒体1とが相対移動するように光照射部32を図中矢印A方向へ移動させる駆動部24、表示媒体1に印加するバイアス電圧(高圧パルス)を発生させる高圧パルス発生部26A、26Bから成る電圧印加部26、高圧パルス発生部26A、26Bにより発生したバイアス電圧を印加する分割電極を切り替える切替部28、本実施の形態における調整手段としてのプラテンカバー16、プラテンカバー16に入射される光の照度を検出するための照度計19、並びに駆動部24、切替部28、及びカバー16(より具体的にはプラテンカバー16が備えるモータ18a、18b)を制御する制御部30を含んで構成される。
【0051】
光照射部32は、表示媒体1をリセット(初期化)するためのリセット光を照射するリセット光源32Aと、制御部30からの画像に応じた入力信号に基づくアドレス光パターン(光画像パターン)を表示媒体1(詳しくは、光導電体層10上)に照射する画像用光源32Bと、を含んで構成される。なお、リセット光源32Aが、画像用光源32Bと分離されて設けられていてもよい。この場合リセット光源32Aからリセット光が全面一括照射されるようにしてもよい。また、リセット光源32A、画像用光源32Bは、固定された2次元の光源でも複数の点光源でもよい。
【0052】
なお、表示媒体1をリセット(初期化)するとは、具体的には例えばコレステリック液晶12の液晶の配向を初期化することをいい、例えばF状態又はP状態にすることをいう。
【0053】
画像用光源32Bにより照射されるアドレス光(書き込み光)としては、光導電体層10の吸収波長域内にピーク強度を持ち、できるだけバンド幅の狭い光であることが望ましい。
【0054】
画像用光源32Bとしては、例えば、冷陰極管、キセノンランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、EL、レーザ等の光源を一次元のアレイ状に配置したものや、ポリゴンミラーと組み合せたもの、など走査動作によって任意の二次元発光パターンを形成できるものが用いられる。
【0055】
リセット光源32Aとしては、例えば上記のような光源をアレイ状に配置したものや導光板と組み合せたもの、などの均一な光を表示媒体1に照射することが可能な光源が用いられる。なお、光照射部32は、上述したものに限られない。例えば、光照射部32に、書き込み光を照射する公知の照射手段を用いるようにしてもよい。
【0056】
高圧パルス発生部26Aは、リセット用電圧を発生する回路であり、高圧パルス発生部26Bは、画像書き込み用電圧を発生する回路である。高圧パルス発生部26A、26Bには、例えばそれぞれが逆極性の電圧を発生する高電圧アンプなどが用いられる。
【0057】
本実施形態では、図2に示すように表示媒体1の透明電極6は接地されており、高圧パルス発生部26Aは、正の極性を有する直流電圧を出力し、高圧パルス発生部26Bは負の極性を有する直流電圧を印加する。すなわち、分割電極5A、5B、5Cに対して、接地された透明電極6に印加されるリセット用電圧は、負の極性を有する直流電圧となり、分割電極5A、5B、5Cに対して、接地された透明電極6に印加される画像書き込み用電圧は、正の極性を有する直流電圧となる。
【0058】
ここで、リセット用電圧の電圧値は、リセット光源32Aによりリセット光が表示媒体1に照射された状態でリセット用電圧が透明電極間に印加された場合に、表示媒体1をリセット(初期化)することができる電圧値、具体的には、例えばコレステリック液晶12の液晶の配向を初期化することができる電圧値に設定される。例えばF状態に初期化するのであれば、図5に示すように、表示層7に印加される電圧(分圧)がVpfより大きくVfhより小さい電圧の範囲内となるような電圧値であり、P状態に初期化するのであれば、表示層7に印加される電圧(分圧)がVfh以上の電圧となるような電圧値である。
【0059】
また、画像書き込み用電圧の電圧値は、少なくとも画像用光源32Bにより画像に応じた画像光が表示媒体1に照射された状態で画像書き込み用電圧が透明電極間に印加された場合に、表示媒体1に画像を記録することができる電圧値に設定される。例えばコレステリック液晶12の液晶の配向をP状態からF状態へ変更することで画像を書き込むのであれば、画像光が照射された部位の表示層7に印加される電圧(分圧)がVpfより大きくVfhより小さい電圧の範囲内となるような電圧値であり、P状態からF状態に変更するのであれば、画像光が照射された部位の表示層7に印加される電圧(分圧)がVfh以上の電圧となるような電圧値である。
【0060】
なお、リセット用電圧を正の極性を有する直流電圧とし、画像書き込み用電圧を負の極性を有する直流電圧としてもよい。
【0061】
また、電圧印加部26は、上述したものに限られない。例えば、電圧印加部26に、画像書き込み用電圧を印加する公知の電圧印加手段を用いてもよい。
【0062】
切替部28は、制御部30からの指示に従って、リセット用電圧を印加する分割電極、画像書き込み用電圧を印加する分割電極を選択すると共に、リセット用電圧を印加する電極として選択した分割電極に対しては高圧パルス発生部26Aから出力されたリセット用電圧を印加すると共に、画像書き込み用電圧を印加する電極として選択した分割電極に対しては高圧パルス発生部26Bから出力された画像書き込み用電圧を印加する。
【0063】
駆動部24は、制御部30からの指示に従って、光照射部32を図2において矢印A方向(副走査方向)へ移動させる。駆動部24は、例えばパルスモータ等を含んで構成され、パルスモータの駆動によって光照射部32を図中矢印A方向へ移動させる。これにより、リセット光源32A及び画像用光源32Bが一体的に図中矢印A方向へ移動する。光照射部32を移動させる構成とすることで、表示媒体1の透明電極を検出する構成が不要となり表示媒体1を移動させる場合と比較して電圧印加部26との接続構成が簡単となる。
【0064】
制御部30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、図示しないROM(Read Only Memory)、図示しないRAM(Random Access Memory)、及び図示しないI/O(入出力)ポートを含んで構成されており、これらCPU、ROM、RAM、及びI/Oポートは互いにバスで接続されている。ROMにはOS等の基本プログラム、及び詳細を以下で説明する調整手段制御処理を実行するためのプログラムが記憶されている。また、ROMには、図6に示すように、照度計19によって検出されたプラテンカバー16に照射された照度60に対応するフイルムの種類62が登録されたテーブル64が記憶されている。なお、本実施の形態では、同図に図示されるように、照度60が0以上a未満の場合にはフイルムDが対応し、照度60がa以上b未満の場合にはフイルムCが対応し、照度60がb以上c未満の場合にはフイルムBが対応し、照度60がc以上の場合にはフイルムAが対応してテーブル64に登録されている。CPUは、プログラムをROMから読み出して実行する。RAMには、各種データが一時的に記憶される。I/Oポートには、駆動部24、切替部28、モータ18a、18b、照度計19、リセット光源32A、及び画像用光源32Bが接続されている。
【0065】
プラテンカバー16は、図2に図示するように、C方向及びD方向に移動することが可能に設けられている。例えば、光書き込み装置2に表示媒体1を配置したい場合には、プラテンカバー16をC方向に移動させて図2に示されるmの位置に移動させることができる。また、光書き込み装置2で画像を書き込む動作を行う場合には、プラテンカバー16を閉める必要があるので、プラテンカバー16をD方向に移動させて図2に示されるnの位置に移動させることができる。
【0066】
プラテンカバー16は、モータ18a、18b、及びフイルム17を備えている。プラテンカバー16の筐体は透明な部材から構成されている。図2に図示されるように、モータ18a及び18bは、距離L分だけ離れて設けられている。モータ18a及び18bは各々、制御部30の制御によって回転駆動することにより、詳細を以下で説明するフイルム17を巻き取ることができる。
【0067】
フイルム17は、図6に示すように、各々透過率が異なる複数のフイルム(図6の例ではA〜Dの4つ)A〜Dから構成されている。なお、本実施の形態では、予め照度計19によって検出されたプラテンカバー16に照射された光(ここでは外部の光と称する)の照度が所定値c(例えば、100000Lux)以上の場合に、外部の光と表示層7との間に挿入することで、透過して表示層7へ入射され、表示層7を介して遮光層9へ入射される光の光強度が上記の値K未満となり、かつ表示層7から反射されて透過される光により表示層7に書き込まれた画像が視認可能となるフイルムの透過率T(例えば6%)を実験的に求めておき、この透過率Tを有するフイルムを、フイルムAとして用いる。
【0068】
また、本実施の形態では、予め照度計19によって検出された外部の光の照度が0以上所定値a(500Lux)未満の場合に、外部の光と表示層7との間に挿入することで、透過して表示層7へ入射され、表示層7を介して遮光層9へ入射される光の光強度が上記の値K未満となり、かつ表示層7から反射されて透過される光により表示層7に書き込まれた画像が視認可能となるフイルムの透過率T´(例えば11%)を実験的に求めておき、この透過率T´を有するフイルムを、フイルムDとして用いる。
【0069】
また、本実施の形態では、予め照度計19によって検出された外部の光の照度が所定値a以上所定値b(40000Lux)未満の場合に、外部の光と表示層7との間に挿入することで、透過して表示層7へ入射され、表示層7を介して遮光層9へ入射される光の光強度が上記の値K未満となり、かつ表示層7から反射されて透過される光により表示層7に書き込まれた画像が視認可能となるフイルムの透過率T´´(例えば67%)を実験的に求めておき、この透過率T´´を有するフイルムを、フイルムCとして用いる。
【0070】
また、本実施の形態では、予め照度計19によって検出された外部の光の照度が所定値b以上所定値c未満の場合に、外部の光と表示層7との間に挿入することで、透過して表示層7へ入射され、表示層7を介して遮光層9へ入射される光の光強度が上記の値K未満となり、かつ表示層7から反射されて透過される光により表示層7に書き込まれた画像が視認可能となるフイルムの透過率T´´´(例えば95%)を実験的に求めておき、この透過率T´´´を有するフイルムを、フイルムBとして用いる。
【0071】
また、各フイルムA〜Dの各々の長さをLとする。この長さLは、表示層7を覆うのに十分な長さである。
【0072】
制御部30は、例えば、所定速度で光照射部32が図2において矢印A方向へ移動するように駆動部24に指示すると共に、入力された画像データに基づいて、後述するタイミングでリセット光がリセット光源32Aにより表示媒体1に照射されるように且つ入力された画像データに基づく画像光が画像用光源32Bにより表示媒体1に照射されるように各光源を制御すると共に、後述するタイミングで各分割電極5A〜5Cにリセット用電圧及び画像書き込み用電圧が印加されるように切替部28を制御する。
【0073】
次に、表示媒体1に対する画像書き込みの動作について説明する。なお、以下では、分割電極5A、5B、5Cの電極幅Wは同一であり、W<Ta×Vaの場合について説明する。また、高圧パルス発生部26Aはリセット用電圧V1−Aを出力し、高圧パルス発生部26Bは画像書き込み用電圧V2を出力するものとする。なお、積分反射率が急激に低下し始める時間をTa(s)、光照射部32の移動速度(副走査速度)をVa(mm/s)とする。
【0074】
図8には、リセット光及び画像光を表示媒体1に照射するタイミング、表示媒体1に電圧を印加するタイミングを示した。
【0075】
まず、制御部30は、図2において矢印A方向へ光照射部32が移動開始するように駆動部24に指示する。光照射部32は、画像の書き込み動作を開始する前は予め定めた待機位置に配置されている。この待機位置は、表示媒体1の矢印A方向上流側の端部よりもさらに上流側に位置する。
【0076】
制御部30が、駆動部24に対して光照射部32の移動開始を指示すると、駆動部24は光照射部32の移動を開始させる。これにより、光照射部32は図2において矢印A方向へ予め定めた移動速度Vaで移動を開始する。
【0077】
そして、制御部30は、リセット光源32Aが分割電極5Aの領域に到達し、リセット光を分割電極5Aの少なくとも一部の領域に照射可能となるT1の時点で、リセット用電圧V1−Aが分割電極5Aに所定時間Tx分印加されるように切替部28に指示すると共に、リセット光L1が分割電極5Aの領域に所定時間Tx分照射されるようにリセット光源32Aに指示する。なお、所定時間Txは、分割電極5Aの全領域にリセット光が照射される時間に設定される。
【0078】
これにより、切替部28は、分割電極5Aを選択し、高圧パルス発生部26Aから出力されたリセット用電圧V1−Aを分割電極5Aに所定時間Tx分印加し、リセット光源32Aは、リセット光L1を所定時間Tx分表示媒体1に照射するため、表示媒体1がリセットされる。例えばF状態にリセットされる。
【0079】
リセットが終了すると、制御部30は、画像用光源32Bによる画像光の照射期間が開始するT3よりも前のT2の時点で、すなわち画像用光源32Bが分割電極5Aの矢印A方向上流側の端部に到達するよりも前の時点で、画像書き込み用電圧V2が分割電極5Aに所定時間Ty分印加されるように切替部28に指示する。これにより、切替部28は、分割電極5Aに対して、高圧パルス発生部26Bから出力された画像書き込み用電圧V2を分割電極5Aに所定時間Ty分印加する。なお、画像書き込み用電圧V2の印加開始を画像用光源32Bによる画像光の照射期間が開始するT3の時点としてもよいが、T3よりも前のT2の時点で電圧の印加を開始することにより、画像が記録されない領域が発生するのを防ぐことができ確実に画像が書き込まれる。
【0080】
次に、制御部30は、画像用光源32Bによる画像光の照射期間が開始するT3の時点から画像光の照射期間が終了するT4の時点までの期間、すなわち画像用光源32Bが分割電極5Aの矢印A方向上流側の端部に到達した時点から画像用光源32Bが分割電極5Aの矢印A方向下流側の端部に到達するまでの期間に、入力された画像データのうち分割電極5Aの領域に書き込むべき画像の画像データを画像用光源32Bに出力する。これにより、T3からT4の画像光の照射期間に画像光が照射され、画像が書き込まれる。例えば画像光が照射された領域はF状態からH状態となる。なお、画像光の照射期間とは、画像光が照射されうる期間であり、画像を書き込まない領域については画像光が照射されないのはいうまでもない。
【0081】
ここで、図8に示すように、画像光の照射期間(T3〜T4の期間)が終了した後も、画像書き込み用電圧V2の印加が所定時間Tz分継続されているため、積分反射率の低下が抑えられる。所定時間Tzは積分反射率の低下を抑えることが可能な時間に設定される(例えば100ms以上)。そして、画像書き込み用電圧V2の印加が終了すると、H状態の領域はP状態となって分割電極5Aの領域に画像が表示されると共に維持される。
【0082】
なお、制御部30は、分割電極5B、5Cについても順次上記と同様に駆動部24、光照射部32、及び切替部28を制御する。これにより、表示媒体1全体に画像が書き込まれる。
【0083】
次に、制御部30のCPUが実行する調整手段制御処理の処理ルーチンについて図9を参照して説明する。なお、本実施の形態において、調整手段制御処理は、光書き込み装置2のスイッチ(図示しない)がONされて電源が投入されてから、所定時間間隔毎に実行される。
【0084】
まず、ステップ100では、照度計19から照度を示す検出信号を取込む。
【0085】
次のステップ102では、上記ステップ100で取込んだ検出信号が示す照度に対応するフイルムの種類を、ROMに記憶されているテーブル64から取得することにより、表示層7を覆うフイルムの種類を選択する。
【0086】
次のステップ104では、上記ステップ102で選択された種類のフイルムが表示層7を覆うように、モータ18a及び18bを制御する。そして、調整手段制御処理を終了する。
【0087】
以上、説明したように、本実施の形態の光書き込み装置2は、照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層10、及び光導電体層10との間に予め定められた強度K未満の光を遮光する遮光層9を挟んで配置されると共に、光導電体層10及び遮光層9を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層7を備えた光書き込み型画像表示媒体1の光導電体層10に、光導電体層10側から書き込み光を照射する照射手段32と、表示層7及び光導電体層10に画像書き込み用電圧を印加する電圧印加手段26、28と、表示層7から反射されて透過する反射光、及び透過して表示層7に入射する入射光の透過率を調整する調整手段としてのプラテンカバー16(フイルム17を含む)、プラテンカバー16に照射される光の照度を検出する検出手段としての照度計19、照度計19で検出された照度に基づいて、プラテンカバー16及び表示層7を透過して遮光層9へ入射する光が予め定められた強度K未満となり、かつ表示層7から反射されてプラテンカバー16(フイルム17を含む)を透過した光により表示層7の画像が視認可能な透過率となるようにプラテンカバー16を制御する制御手段としての制御部30を備えている。
【0088】
また、本実施の形態の画像再生装置としての光書き込み装置2は、照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層10、及び光導電体層10との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層9を挟んで配置されると共に、光導電体層10及び遮光層9を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層7を備えた光書き込み型画像表示媒体1の光導電体層10に、光導電体層10側から書き込み光を照射する照射手段32と、表示層7及び光導電体層10に画像書き込み用電圧を印加する電圧印加手段26、28と、表示層7から反射されて透過する反射光、及び透過して表示層7に入射する入射光の透過率を調整する調整手段としてのプラテンカバー16(フイルム17を含む)、プラテンカバー16に照射される光の照度を検出する検出手段としての照度計19、照度計19で検出された照度に基づいて、プラテンカバー16及び表示層7を透過して遮光層9へ入射する光が予め定められた強度K未満となり、かつ表示層7から反射されてプラテンカバー16を透過した光により表示層7の画像が視認可能な透過率となるようにプラテンカバー16を制御する制御手段としての制御部30とを含んで構成されている。
【0089】
なお、本実施形態では、表示層としてコレステリック液晶を用いた場合について説明したが、これに限らず、強誘電性液晶を用いてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、表示媒体1が固定された状態で光照射部32を移動させることにより光照射部32と表示媒体1とを相対移動させる場合について説明したが、光照射部32を固定した状態で表示媒体1を移動させたり、両者を移動させたりすることにより両者を相対移動させるようにしてもよい。
【0091】
また、本実施形態では、分割電極が3個の場合について説明したが、これに限らず、分割電極が2個又は4個以上の場合にも本発明を適用可能である。
【0092】
さらに、本実施形態では、リセット用電圧の印加及びリセット光の照射、画像書き込み用電圧の印加及び画像光の照射の動作を各分割電極について所定方向に順次行う場合について説明したが、上記の動作は隣り合う分割電極について順次行う必要はない。例えばある分割電極の領域全てが画像を書き込む必要がない場合、その分割電極に関しては上記の動作を行う必要はなく、次の分割電極から上記の動作を行えばよい。また、分割電極n(n=1,2,3,・・・)個おきに上記の動作を表示媒体1全体について行い、上記の動作を行わなかった分割電極に対して同様の動作を繰り返すように、すなわち表示媒体1をn+1回走査することにより画像を書き込むようにしてもよい。
【0093】
なお、プラテンカバー16(本願発明の調整手段に対応)を、フォトクロミック材料(スピロピラン系化合物、ハロゲン銀系化合物)を用いて構成してもよい。この場合、フォトクロミック材料は、プラテンカバー16に照射される光の照度に基づいて、プラテンカバー16及び表示層7を透過して遮光層9へ入射する光が予め定められた強度K未満となり、かつ表示層7から反射されてプラテンカバー16を透過した光により表示層7の画像が視認可能な透過率となる機能を有するものが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】表示媒体の断面図である。
【図2】画像表示装置(光書き込み装置)の概略構成図である。
【図3】表示媒体の等価回路を示す回路図である。
【図4】コレステリック液晶の分子配向と光学特性の関係を示す模式説明図であり、(A)はプレーナ相、(B)はフォーカルコニック相、(C)ホメオトロピック相の各相におけるものである。
【図5】コレステリック液晶のスイッチング挙動を説明するためのグラフである。
【図6】本実施の形態のテーブルの模式図である。
【図7】本実施の形態のフイルムの概略図である。
【図8】電圧印加及び光の照射のタイミングチャートである。
【図9】本実施の形態の制御部が実行する調整手段制御処理のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 表示媒体
2 光記録装置
3、4 透明基板
5 透明電極
5A、5B、5C 分割電極
6 透明電極
7 表示層
8 ラミネート層
9 遮光層
10 光導電体層
12 コレステリック液晶
16 プラテンカバー
17 フイルム
18a、18b モータ
19 照度計
20 画像表示装置
24 駆動部
26 電圧印加部
26A 高圧パルス発生部
26B 高圧パルス発生部
28 切替部
30 制御部
32 光照射部
32A リセット光源
32B 画像用光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層、及び前記光導電体層との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層を挟んで配置されると共に、前記光導電体層及び前記遮光層を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層を備えた光書き込み型画像表示媒体の前記表示層側に配置され、前記表示層から反射されて透過する反射光、及び透過して前記表示層に入射する入射光の透過率を調整する調整手段と、
前記調整手段に照射される光の照度を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された照度に基づいて、前記調整手段及び前記表示層を透過して前記遮光層へ入射する光が前記予め定められた強度未満となり、かつ前記表示層から反射されて前記調整手段を透過した光により前記表示層の画像が視認可能な透過率となるように前記調整手段を制御する制御手段と、
を含む画像再生装置。
【請求項2】
照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層、及び前記光導電体層との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層を挟んで配置されると共に、前記光導電体層及び前記遮光層を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層を備えた光書き込み型画像表示媒体の前記光導電体層に、前記光導電体層側から前記書き込み光を照射する照射手段と、
前記表示層及び前記光導電体層に画像書き込み用電圧を印加する電圧印加手段と、
前記表示層から反射されて透過する反射光、及び透過して前記表示層に入射する入射光の透過率を調整する調整手段と、
前記調整手段に照射される光の照度を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された照度に基づいて、前記調整手段及び前記表示層を透過して前記遮光層へ入射する光が前記予め定められた強度未満となり、かつ前記表示層から反射されて前記調整手段を透過した光により前記表示層の画像が視認可能な透過率となるように前記調整手段を制御する制御手段と、
を含む光書き込み装置。
【請求項3】
前記制御手段は、画像を書き込む際に、画像情報に基づいて前記書き込み光が前記光導電体層に照射されるように前記照射手段を制御すると共に、前記表示層及び前記光導電体層に画像書き込み用電圧が印加されるように前記電圧印加手段を制御する請求項2記載の光書き込み装置。
【請求項4】
コンピュータを、
照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層、及び前記光導電体層との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層を挟んで配置されると共に、前記光導電体層及び前記遮光層を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層を備えた光書き込み型画像表示媒体の前記表示層側に配置され、前記表示層から反射されて透過する反射光、及び透過して前記表示層に入射する入射光の透過率を調整する調整手段に照射される光の照度を検出する検出手段で検出された照度に基づいて、前記調整手段及び前記表示層を透過して前記遮光層へ入射する光が前記予め定められた強度未満となり、かつ前記表示層から反射されて前記調整手段を透過した光により前記表示層の画像が視認可能な透過率となるように前記調整手段を制御する制御手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項5】
コンピュータを、
照射された書き込み光の光量に応じて電気抵抗の大きさが変化する光導電体層、及び前記光導電体層との間に予め定められた強度未満の光を遮光する遮光層を挟んで配置されると共に、前記光導電体層及び前記遮光層を介して印加される電圧の大きさに応じた波長の光を反射及び透過させることにより画像を表示する表示層を備え、前記光導電体層に前記光導電体層側から前記書き込み光が照射手段によって照射され、かつ前記表示層及び前記光導電体層に電圧印加手段によって画像書き込み用電圧が印加される光書き込み型画像表示媒体の前記表示層から反射されて透過する反射光、及び透過して前記表示層に入射する入射光の透過率を調整する調整手段に照射される光の照度を検出する検出手段で検出された照度に基づいて、前記調整手段及び前記表示層を透過して前記遮光層へ入射する光が前記予め定められた強度未満となり、かつ前記表示層から反射されて前記調整手段を透過した光により前記表示層の画像が視認可能な透過率となるように前記調整手段を制御する制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−91915(P2010−91915A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263712(P2008−263712)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】