説明

画像処理装置、方法及びコンピュータプログラム

【課題】スタンプ合成コピーにおいて、スタンプ文字列の判読性を高める。
【解決手段】重なり判定部510は、スタンプ画像の画像データ及びスキャナユニット20が読み込んだスキャン画像の画像データを用いて、スタンプ画像とスキャン画像とを重ねたときに、スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定する。スタンプ画像生成部503は、スタンプ文字が判読可能でないと判定されたときは、スタンプ文字の判読性を向上させるようにスタンプ画像を修正した修正スタンプ画像を生成する。合成画像生成部508は、修正スタンプ画像とスキャン画像とを重ねた合成画像を生成する。プリンタユニット30は、合成画像を印刷媒体上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンプ文字列を原稿画像に重ねて印刷するスタンプ合成コピーに関し、特にスタンプ文字列を判読しやすくするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
文書をコピーする際に、印刷された複製物に、原稿にはない文字を重ねるスタンプ文字合成コピーがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−94620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスタンプ文字合成コピーでは、コピー開始時に合成するスタンプ文字の位置をユーザーが指定し、その位置にスタンプ文字を配置して合成画像を印刷することによってコピーが行われていた。この場合、スタンプ文字が原稿中の文字などと重なって判読が困難になることがある。原稿が複数ページある場合では、スタンプ文字を容易に判読できるページとそうでないページが発生していた。
【0005】
これは、透かし文字の一つの態様として、同じ文字列(スタンプ文字列)の繰り返しパターンを原稿と重ねるスタンプ合成コピーに関しても同じ課題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、スタンプ文字列が容易に判読できるスタンプ合成コピーをすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施態様に従う画像処理装置は、スキャナと、一以上の要素文字を含むスタンプ文字列が複数含まれている第1画像を記憶する手段と、前記第1画像の画像データ及び前記スキャナが読み込んだ第2画像の画像データを用いて、前記第1画像と前記第2画像とを重ねたときに、前記スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記スタンプ文字列が判読可能でないと判定されたときは、前記第1画像の画像データを用いて、前記スタンプ文字の判読性を向上させるように前記第1画像を修正した第3画像を生成する生成手段と、前記第2画像の画像データ及び前記第3画像の画像データを用いて、前記第2の画像と前記第3画像とを重ねた合成画像を生成する合成手段と、前記合成手段が生成した合成画像を印刷媒体上に形成する画像形成手段と、を備える。
【0008】
これにより、スタンプ合成コピーにおいて、確実にスタンプ文字列が判読できる複製物が生成される。
【0009】
好適な実施態様では、前記判定手段は、前記スタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が、前記第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないときは、前記スタンプ文字列が判読可能と判定するようにしてもよい。
【0010】
これにより、各要素文字について、少なくとも1文字は第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないで表示されることにあるので、スタンプ文字列の判読が可能である。
【0011】
好適な実施形態では、前記生成手段は、前記スタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が、前記第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないように、前記第1画像のスタンプ文字列を平行移動させて前記第3画像を生成してもよい。
【0012】
これにより、第1画像を修正して得られる第3画像では、少なくとも1文字は第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないで表示される。
【0013】
好適な実施形態では、前記生成手段は、前記要素文字の文字数が3文字以上のとき、各スタンプ文字列を構成する要素文字のうちの連続するいずれか2文字以上が、前記第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないように、前記第1画像のスタンプ文字列を平行移動させて前記第3の画像を生成するようにしてもよい。
【0014】
これにより、スタンプ文字列の要素文字の連続する2文字以上が第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないで表示されるので、判読性が高まる。
【0015】
好適な実施形態では、前記判定手段は、前記スタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が判読可能であるときに前記スタンプ文字列が判読可能であると判定するものであり、それぞれの要素文字内の交点の画素及び孤立点の画素が、前記第2画像における画素値が所定値以上である画素との重なりが所定以下であるときは、その要素文字が判読可能であると判定するようにしてもよい。
【0016】
これにより、各要素文字について、少なくとも1文字は特徴的な部分が表示されるようになる。
【0017】
好適な実施形態では、前記スキャナが複数ページの第2画像を連続して読み込んだときは、前記判定手段は、前記複数のページのそれぞれについて、前記スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定し、前記生成手段は、前記判定手段により前記スタンプ文字列が判読可能でないと判定されたページごとに前記第3画像を生成するようにしてもよい。
【0018】
これにより、複数ページの第2画像が連続して読み込まれたときは、ページごとにスタンプ文字列の判読性を判定し、すべてのページについて判読性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の構成図である。
【図2】スタンプ画像生成部503が生成するスタンプ画像の例を示す。
【図3】スタンプ文字列及びそのスタンプ文字列の特徴部を示す説明図である。
【図4】スタンプ文字の特徴部の説明図である。
【図5】不透過度の説明図である。
【図6】スキャン画像180の一例である。
【図7】合成画像200の一例である。
【図8】スタンプ合成コピーの処理手順を示すフローチャートである。
【図9】修正スタンプ画像生成の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る画像処理装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の構成図である。本実施形態に係る画像処理装置1は、スキャナユニット20と、プリンタユニット30と、操作パネル40と、制御部50とを備える。
【0022】
画像処理装置1は、図示しないプロセッサ及びメモリ等を備えていて、所定のコンピュータプログラムを実行することにより、以下に説明する制御部50の個々の構成要素または機能が実現される。このプログラムの全部または一部を、所定の記録媒体に保存して頒布したり、あるいは、ネットワークを介して転送したりすることができる。
【0023】
スキャナユニット20は、原稿の画像を読み取って、原稿画像の画像データ(スキャン画像データ)を取得する。例えば、画像処理装置1は、図示しない原稿台を有していて、スキャナユニット20はその原稿台上の原稿をスキャンするようにしてもよい。スキャナユニット20が読み取ったスキャン画像データに基づいて、制御部50は後述するような処理を行う。
【0024】
プリンタユニット30は、制御部50からの指示に従って印刷媒体上に画像を形成する。例えば、プリンタユニット30は、インクジェットプリンタまたはレーザプリンタなどの印刷機構でよい。
【0025】
制御部50は、スキャン画像データ記憶部501と、スタンプ文字列データ記憶部502と、スタンプ画像生成部503と、スタンプ画像データ記憶部504と、スタンプ特徴部データ記憶部505と、不透過度データ生成部506と、不透過度データ記憶部507と、合成画像生成部508と、合成画像データ記憶部509と、重なり判定部510と、を備える。
【0026】
スキャン画像データ記憶部501は、スキャナユニット20が読み込んだスキャン画像(第2画像)の画像データ(スキャン画像データ)を記憶する。スキャン画像データ記憶部501は、例えば、1ページ分の画像データを保存できる容量を有するRAMであり、スキャン画像の各画素の値がRAMに保存されるようにしてもよい。
【0027】
スタンプ文字列データ記憶部502は、スタンプ画像を生成するためのスタンプ文字列の画像データを記憶する。スタンプ文字列は、スタンプ画像を生成するためのパターン画像である。スタンプ文字列は、予め定められた一以上の要素文字を含む文字列であり、例えば、マル秘(「秘」を丸で囲ったもの)、「禁複写」を枠で囲ったもの、あるいは「コピー」を枠で囲ったもの等でよい。
【0028】
スタンプ画像生成部503は、一以上の要素文字を含むスタンプ文字列が複数含まれているスタンプ画像(第1画像)を生成する。スタンプ画像生成部503が生成したスタンプ画像の画像データは、スタンプ画像データ記憶部504に格納される。
【0029】
スタンプ画像生成部503は、例えば、操作パネル40を介して入力を受け付けたユーザーによるスタンプ印刷設定に従って、スタンプ画像を生成する。スタンプ印刷設定は、例えば、スタンプ文字列の種別などを含む。
【0030】
図2は、スタンプ画像生成部503が生成するスタンプ画像100の例を示す。同図の例では、スタンプ印刷設定において、スタンプ文字列の種別として、「禁複写」を枠で囲ったスタンプ文字列が選択されている場合のスタンプ画像100の例である。スタンプ画像生成部503は、印刷する用紙サイズに合わせて、予め決められたレイアウトで複数のスタンプ文字列110(図中、一カ所のみ符号を付す)を配置する。例えば、図2に示すスタンプ画像100は、複数のスタンプ文字列110が一定の周期で配置されている。
【0031】
スタンプ画像生成部503は、さらに、重なり判定部510によりスタンプ文字列が判読可能でないと判定されたとき(詳細は後述する)は、スタンプ画像(第1画像)の画像データ(スタンプ画像データ)を用いて、スタンプ文字列の判読性を向上させるようにスタンプ画像を修正した修正スタンプ画像(第3画像)を生成する。修正スタンプ画像の画像データも、スタンプ画像データ記憶部504に格納される。
【0032】
修正スタンプ画像(第3画像)は、スタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が、スキャン画像(第2画像)の画素値が所定値以上である画素と重ならないように、スタンプ画像(第1画像)のスタンプ文字列を平行移動させて画像であってもよい。また、修正スタンプ画像(第3画像)は、スタンプ文字列の要素文字の文字数が3文字以上のとき、各スタンプ文字列を構成する要素文字のうちの連続するいずれか2文字以上が、スキャン画像(第2画像)の画素値が所定値以上である画素と重ならないように、スタンプ画像(第1画像)のスタンプ文字列を平行移動させた画像であってもよい。例えば、図2Bに矢印で示すように水平方向または垂直方向へ、所定の画素数だけ平行移動してもよい。あるいは、スタンプ画像生成部503は、スタンプ文字列を拡大または縮小して修正スタンプ画像を生成してもよい。修正スタンプ画像の詳細については後述する。
【0033】
スタンプ画像生成部503は、スキャナユニット20によって複数ページが連続して読み込まれたときは、重なり判定部510によりスタンプ文字列が判読可能でないと判定されたページごとに、上記の修正スタンプ画像を生成するようにしてもよい。
【0034】
改めて図1を参照すると、スタンプ画像データ記憶部504は、スタンプ画像生成部503が生成したスタンプ画像または修正スタンプ画像の画像データを記憶する。スタンプ画像データ記憶部504は、例えばRAMで構成されていて、スタンプ画像または修正スタンプ画像の各画素値をRAMに保存するようにしてもよい。
【0035】
スタンプ画像生成部503は、さらに、生成したスタンプ画像に含まれるスタンプ文字列の特徴部を抽出する。例えば、スタンプ画像生成部503は、スタンプ画像に含まれるスタンプ文字列内の各要素文字の特徴部を抽出する。要素文字の特徴部は、例えば各要素文字内の交点及び孤立点であってもよい。
【0036】
図3は、スタンプ文字列の特徴部を示す説明図である。
【0037】
同図Aは、スタンプ文字列の要素文字150の一例である「社外秘」の拡大図である。同図Bは、スタンプ文字列の特徴部160である。特徴部160は、スタンプ文字列の各要素文字151a〜cにおいて、それぞれの文字を構成する筆画の交点、及び他の筆画と交わらない孤立点からなる特徴部160a〜cを抽出したものである。
【0038】
スタンプ画像生成部503は、スタンプ文字列内の要素文字の交点及び孤立点の画素を抽出し、スタンプ画像における抽出された画素の位置座標を特定する。スタンプ画像生成部503は、この位置座標を示すビットマップをスタンプ特徴部データ記憶部505に保存する。
【0039】
図4Aはスタンプ文字列の特徴部160の拡大図であり、図4Bはスタンプ文字列の特徴部160の分布を示すビットマップ170である。すなわち、スタンプ文字列内の要素文字の交点及び孤立点が同図Aに示すように分布しているとき、その分布状態を示すビットマップ170が同図Bに示すようになる。
【0040】
スタンプ特徴部データ記憶部505は例えばRAMであり、図4Bに示すようなビットマップ170がそのRAMに格納される。
【0041】
なお、図3Bの特徴部160の画像データは、スタンプ文字列の画像データとともにスタンプ文字列データ記憶部502に予め保存されていてもよい。そして、スタンプ画像生成部503は、上述のスタンプ印刷設定に基づいて、スタンプ文字列データ記憶部502から特徴部データを抽出し、スタンプ画像におけるスタンプ文字列の特徴部が分布する位置座標を特定するようにしてもよい。
【0042】
改めて図1を参照すると、不透過度データ生成部506は、スキャン画像の不透過度を示す不透過度データを生成する。不透過度データは、不透過度データ記憶部507に記憶される。
【0043】
ここで、不透過度とは、対象画像に対して他の画像を重ねたときに、他の画像に対して対象画像をどの程度優先的に表示させるかを示す指標である。不透過度は、例えば画素ごとに、対象画像の各画素値を表示させる割合を0〜100%の範囲の値で定めている。これは、αチャネルと同様の考え方である。不透過度データ生成部506は、スキャン画像に含まれる文字、オブジェクトあるいは写真などの部分が前面に印刷されるように不透過度を決定する。
【0044】
図5は、本実施形態における不透過度の説明図である。
【0045】
同図Aは、スキャン画像180の拡大図であり、画素値が0の画素(白画素)181に対して、所定の画素値を有する画素(黒画素)183が“T”という文字を構成している。同図Bは、同図Aの不透過度データ190である。
【0046】
例えば、本実施形態では、不透過度データ生成部506は、同図Aのようなスキャン画像180を、画素値が所定の閾値以上である画素(黒画素)183と、そうでない画素(白画素)181とに二値化することによって不透過度データを生成する。すなわち、不透過度データ生成部506は、不透過度データ190として、画素値が所定の閾値以上である画素の不透過度を100%、画素値が所定の閾値に満たない画素の不透過度を0%とするビットマップを生成する。このビットマップが、不透過度190データとして不透過度データ記憶部507に保存される。不透過度データ生成部506は、画素値に応じて、0〜100%までの間の値を不透過度として設定してもよい。
【0047】
図1に戻ると、合成画像生成部508は、スタンプ画像(第1画像)の画像データ(スタンプ画像データ)及びスキャナユニット20が読み込んだスキャン画像(第2画像)の画像データを用いて、スタンプ画像とスキャン画像とを重ねた合成画像を生成する。また、合成画像生成部508は、スタンプ画像の修正が必要となったときは、その修正スタンプ画像(第3画像)とスキャン画像とを重ねた合成画像を生成する。合成画像生成部508が生成した合成画像の合成画像データは合成画像データ記憶部509に格納される。
【0048】
合成画像生成部508は、不透過度データ190に基づいて、画素ごとに、スキャン画像180またはスタンプ画像100のそれぞれの画素値を加算して合成画像を生成する。例えば、本実施形態では、合成画像生成部508は、まずスキャン画像180が前面になるように、スキャン画像データ記憶部501のスキャン画像データに基づいて、合成画像の各画素の値を定める。例えば本実施形態では、合成画像生成部508は、不透過度データ記憶部507の不透過度データ190を参照し、不透過度が0%の画素について、スタンプ画像データ記憶部504のスタンプ画像データの画素値を合成画像の画素値に加算する。一方、合成画像生成部508は、不透過度が100%の画素については、スキャン画像データの画素値を加算し、スタンプ画像データの画素値を加算しない。これにより、不透過度が100%の画素はスキャン画像データの画素値のみとなるので、スキャン画像がスタンプ画像の前面に表示されることになる。これは、スキャン画像180に修正スタンプ画像を合成する場合も同様である。
【0049】
合成画像データ記憶部509は合成画像データを記憶する。合成画像データ記憶部509は、例えば1ページ分の画像データを保存できる容量を有するRAMであり、合成画像の各画素の値がRAMに保存されるようにしてもよい。
【0050】
重なり判定部510は、スタンプ画像(第1画像)とスキャン画像(第2画像)とを重ねたときに、スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定する。
【0051】
図6はスキャン画像180の一例であり、図7は合成画像200の一例である。図7の合成画像200は、合成画像生成部508が、上述した手順により図6のスキャン画像180に図2のスタンプ画像100を合成したときに得られる画像である。この合成画像200において、重なり判定部510は、スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定する。
【0052】
例えば、重なり判定部510は、スタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が、スキャン画像(第2画像)の画素値が所定値以上である画素と重ならないときは、スタンプ文字列が判読可能と判定するようにしてもよい。これを具体例を用いて説明すると、以下のようになる。すなわち、例えばスタンプ文字列が「禁複写」であれば、スタンプ文字列の各要素文字は、「禁」、「複」及び「写」である。このときに、スタンプ画像100には複数の「禁」、「複」及び「写」が含まれているが、少なくとも一つ以上の「禁」、「複」及び「写」の文字が、スキャン画像の画素値が所定値以上である画素と重なっていないときに判読可能と判定される。
【0053】
図7の合成画像200では、スタンプ文字列210の「禁」「複」及び「写」のいずれもが、スキャン画像の画素値が所定値以上である画素とは重ならず、完全な形で表示されている。従って、このような合成画像200ではスタンプ文字列は判読可能と判定される。なお、スキャン画像の画素値が所定値以上である画素と重ならない要素文字列(「禁」「複」及び「写」)は、図7の例のように同じスタンプ文字列210内に存在する場合だけでなく、異なるスタンプ文字列に分かれて存在していてもよい。つまり、合成画像中に少なくとも一文字ずつ、スキャン画像の画素値が所定値以上である画素と重ならない各要素文字が存在すればよい。
【0054】
重なり判定部510が上記の判定を行う具体的な処理手順を説明する。例えば、重なり判定部510は、スタンプ画像データ記憶部504に保存されているスタンプ画像データを参照して、スタンプ画像における各スタンプ文字列内のそれぞれの要素文字が存在する位置座標を特定する。例えば、重なり判定部510は、スタンプ画像に含まれているすべてのスタンプ文字列内の各要素文字に識別情報を付与する。この識別情報は文字種類別(例えば上記の例であれば「禁」「複」「写」ごと)になっていてもよい。そして、重なり判定部510は、各識別情報の文字を構成する画素の位置座標を検出する。つまり、ここでは、重なり判定部510は、各文字の筆画が存在する領域の全画素の位置座標を検出している。そして、重なり判定部510は、識別情報ごとに、それぞれ検出された位置座標と対応する位置の不透明度データを参照して、すべての不透明度が所定の閾値(例えば10%)以下であれば、その識別情報に係る文字については重なりがないと判定する。
【0055】
重なり判定部510は、上述した態様とは別の態様で、スタンプ文字列が判読可能であるか否かの判定を行ってもよい。すなわち、ここで言う別の態様とは、例えば、重なり判定部510がスタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が判読可能であるときにそのスタンプ文字列が判読可能であると判定するものであり、それぞれの要素文字内の交点の画素及び孤立点の画素とスキャン画像(第2画像)における画素値が所定値以上である画素との重なりが所定以下であるときは、その要素文字が判読可能であると判定するものである。
【0056】
例えば、重なり判定部510は、まず、スタンプ特徴部データ記憶部505の特徴部データを参照して、特徴部160の位置座標を特定する。重なり判定部510は、図4Bに示す様な特徴部データ170のビットマップにおいて、同図中左上の画素を原点とし、右方向へスキャンしながら画素値が“1”である画素を探索する。右端まで行ったら一段下に下がり同様に検出していく。重なり判定部510は、画素値が“1”となる画素が検出されたら、上下左右で隣接する画素の中から画素値が“1”となる画素を検出して、交点もしくは孤立点の領域の位置座標を特定する。この位置情報を、一つの交点もしくは孤立点の領域を示す位置座標群173とし保持しておく。以下、同様にしてすべての交点、孤立点の領域を示す位置座標群173を検出する。
【0057】
次に、重なり判定部510は、不透過度データ190(図5B)を参照して、ここで検出された位置座標群173と同じ位置座標の不透過度を抽出する。
【0058】
例えば、重なり判定部510は、不透過度データ記憶部507を参照して、上記の処理で検出された位置座標群173中の一つの位置座標を選択して、この位置座標に対応する位置の不透過度を特定する。例えば、ここで特定された不透過度が所定の閾値以上(例えば90%以上)であったら、この位置座標に対応するスタンプ文字列の要素文字の特徴部の画素は、所定以上の画素値を有するスキャン画像と重なっていることになる。このようにして、スタンプ文字列の特徴部とスキャン画像の所定以上の画素値を有する画素との重なりを判定する。
【0059】
図8は、本実施形態に係る画像処理装置1を利用して、スタンプ合成コピーを実行する際の処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
まず、ユーザーが原稿台に原稿をセットする(S110)。
【0061】
ユーザーは、操作パネル40を操作して、スタンプ印刷設定として原稿に合成するスタンプ文字列を選択する(S120)。そして、ユーザーは、画像処理装置1に対してスタンプ合成コピーの開始を指示する(S130)。
【0062】
スタンプ合成コピーの開始の指示を受けて、まず、スキャナユニット20が原稿台の原稿をスキャンして、スキャン画像を生成する(S140)。ここで生成されたスキャン画像の画像データがスキャン画像データ記憶部501に格納される。
【0063】
不透過度データ生成部506は、スキャン画像データ記憶部501のスキャン画像データに基づいて、不透過度を決定する(S150)。不透過度に係る不透過度データは不透過度データ記憶部507に格納される。
【0064】
スタンプ画像生成部503は、スタンプ印刷設定に従ってスタンプ画像を生成する(S160)。スタンプ画像の画像データがスタンプ画像データ記憶部504に格納される。さらに、スタンプ画像生成部503は、スタンプ画像に含まれるスタンプ文字列の特徴部を抽出して、スタンプ画像におけるその特徴部の位置座標を示すスタンプ文字の特徴部データを生成する(S170)。特徴部データは、スタンプ特徴部データ記憶部505に保存される。
【0065】
合成画像生成部508は、スキャン画像データ記憶部501のスキャン画像データ及びスタンプ画像データ記憶部504のスタンプ画像データを合成して、合成画像データを生成する(S180)。合成画像データは、合成画像データ記憶部509に格納される。
【0066】
重なり判定部510は、合成画像におけるスタンプ文字列とスキャン画像の画素値が所定値以上である画素との重なりを検出し(S200)、スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定する(S210)。重なり判定部510は、例えば、上述のように、スタンプ文字内の要素文字の各種類について、少なくとも一つ以上の文字が、スキャン画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないか否かにより、スタンプ文字列が判読可能か否かを判定する。
【0067】
重なり判定部510によって判読可能と判定されたときは(S210:Yes)、以下のステップS220をスキップして、プリンタユニット30が、合成画像データ記憶部509の合成画像データに基づいて合成画像を印刷する(S230)。
【0068】
重なり判定部510によって判読可能でないと判定されたときは(S210:No)、スタンプ画像生成部503が修正スタンプ画像を生成して、再び合成画像を生成する(S220)。そして、プリンタユニット30が再合成した合成画像を印刷する(S230)。
【0069】
なお、複数ページを連続してコピーする場合には、ページごとにステップS140以降を繰り返し実行する。
【0070】
図9は、ステップS220の修正スタンプ画像での再合成の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0071】
スタンプ画像生成部503は、まず、スタンプ画像内のスタンプ文字列の配置を所定の画素数分だけ、水平または垂直に平行移動して仮スタンプ画像を生成する(S310、S320)。
【0072】
合成画像生成部508は、スキャン画像データ記憶部501のスキャン画像データ及びステップS320で生成された仮スタンプ画像の画像データを合成して、仮合成画像を生成する(S330)。
【0073】
重なり判定部510は、ステップS200と同様に、仮合成画像におけるスタンプ文字の重なりを検出する(S340)。
【0074】
ここで、重なり判定部510は、ステップS210と同様に、スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定する(S350)。ここで、スタンプ文字列が判読可能であれば(S350:Yes)、処理を終了する。一方で、スタンプ文字列が判読可能でなければ(S350:No)、ステップS310へ戻って、上記処理を繰り返す。
【0075】
これにより、スタンプ文字列の判読が可能な修正スタンプ画像を合成した合成画像が生成される。
【0076】
本実施形態によれば、スタンプ文字列がスキャン画像によって隠れてしまい判読が難しい場合であっても、スタンプ文字列が判読しやすい箇所に移動させた修正スタンプ画像によって合成画像が生成される。これにより、ユーザーは、本実施形態により生成されたスタンプ文字列入りの複製物において、スタンプ文字列を確実に判読することができる。
【0077】
また、複数ページを連続してコピーした場合には、各ページに対してステップS140以降の処理が適用される。つまり、図9のフローチャートは、それぞれのページごとに行われるので、修正スタンプ画像はページごとに生成されることになる。
【0078】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0079】
例えば、上述の実施形態では、スキャン画像がスタンプ画像の前面に配置されるように重ねているが、これとは逆に、スタンプ画像がスキャン画像の前面に配置されるように重ねてもよい。また、上述の実施形態ではスキャン画像から不透過度データを生成して、スキャン画像とスタンプ画像との重なりを判定しているが、不透過度データを用いることなく、スキャン画像とスタンプ画像とを直接比較してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 画像処理装置
20 スキャナユニット
30 プリンタユニット
40 操作パネル
50 制御部
100 スタンプ画像
110 スタンプ文字列
180 スキャン画像
200 合成画像
501 スキャン画像データ記憶部
502 スタンプ文字列データ記憶部
503 スタンプ画像生成部
504 スタンプ画像データ記憶部
505 スタンプ特徴部データ記憶部
506 不透過度データ生成部
507 不透過度データ記憶部
508 合成画像生成部
509 合成画像データ記憶部
510 重なり判定部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャナと、
一以上の要素文字を含むスタンプ文字列が複数含まれている第1画像を記憶する手段と、
前記第1画像の画像データ及び前記スキャナが読み込んだ第2画像の画像データを用いて、前記第1画像と前記第2画像とを重ねたときに、前記スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記スタンプ文字列が判読可能でないと判定されたときは、前記第1画像の画像データを用いて、前記スタンプ文字の判読性を向上させるように前記第1画像を修正した第3画像を生成する生成手段と、
前記第2画像の画像データ及び前記第3画像の画像データを用いて、前記第2の画像と前記第3画像とを重ねた合成画像を生成する合成手段と、
前記合成手段が生成した合成画像を印刷媒体上に形成する画像形成手段と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記スタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が、前記第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないときは、前記スタンプ文字列が判読可能と判定する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記スタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が、前記第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないように、前記第1画像のスタンプ文字列を平行移動させて前記第3画像を生成する、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記要素文字の文字数が3文字以上のとき、各スタンプ文字列を構成する要素文字のうちの連続するいずれか2文字以上が、前記第2画像の画素値が所定値以上である画素と重ならないように、前記第1画像のスタンプ文字列を平行移動させて前記第3の画像を生成する、請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記スタンプ文字列を構成する要素文字の各種類について少なくとも一つ以上の文字が判読可能であるときに前記スタンプ文字列が判読可能であると判定するものであり、それぞれの要素文字内の交点の画素及び孤立点の画素が、前記第2画像における画素値が所定値以上である画素との重なりが所定以下であるときは、その要素文字が判読可能であると判定する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記スキャナが複数ページの第2画像を連続して読み込んだときは、
前記判定手段は、前記複数のページのそれぞれについて、前記スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定し、
前記生成手段は、前記判定手段により前記スタンプ文字列が判読可能でないと判定されたページごとに前記第3画像を生成する、請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
スキャナと、前記スキャナが読み込んだ画像を印刷媒体上に形成する画像形成手段とを備えた画像処理装置が行う画像処理方法であって、
一以上の要素文字を含むスタンプ文字列が複数含まれている第1画像の画像データ及び前記スキャナが読み込んだ第2画像の画像データを用いて、前記第1画像と前記第2画像とを重ねたときに、前記スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定するステップと、
前記判定により前記スタンプ文字列が判読可能でないと判定されたときは、前記第1画像の画像データを用いて、前記スタンプ文字の判読性を向上させるように前記第1画像を修正した第3画像を生成するステップと、
前記第2画像の画像データ及び前記第3画像の画像データを用いて、前記第2の画像と前記第3画像とを重ねた合成画像を生成するステップと、
前記合成された合成画像を印刷媒体上に形成するステップと、を行う画像処理方法。
【請求項8】
スキャナと、
前記スキャナが読み込んだ画像を印刷媒体上に形成する画像形成手段とを備えた画像処理装置が実行するコンピュータプログラムであって、
前記画像処理装置に、
一以上の要素文字を含むスタンプ文字列が複数含まれている第1画像の画像データ及び前記スキャナが読み込んだ第2画像の画像データを用いて、前記第1画像と前記第2画像とを重ねたときに、前記スタンプ文字列が判読可能であるか否かを判定するステップと、
前記判定により前記スタンプ文字列が判読可能でないと判定されたときは、前記第1画像の画像データを用いて、前記スタンプ文字の判読性を向上させるように前記第1画像を修正した第3画像を生成するステップと、
前記第2画像の画像データ及び前記第3画像の画像データを用いて、前記第2の画像と前記第3画像とを重ねた合成画像を生成するステップと、
前記合成された合成画像を印刷媒体上に形成するステップと、を実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−166403(P2011−166403A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26266(P2010−26266)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】