説明

画像処理装置、画像処理システム、画像処理方法、および、プログラム

【課題】印刷物からユーザが所望する特定の部分だけを抽出し、それをユーザが所望する通りに分類してリスト化できる技術を提供する。
【解決手段】印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データ61から手書き部分7を分離し、分離された手書き部分7が、囲み線71と分類記号72のどちらであるかを判定する。囲み線71と判定された手書き部分7により囲まれる画像部分を抽出して抽出画像を取得する。分類記号72を、それと最も近い位置に書き込まれた囲み線71と対応付け、抽出画像を、同じグループに属する分類記号72のいずれかと対応付けられている囲み線71が取り囲んでいた領域の画像部分同士でグループ化する。そして、抽出画像を、グループ毎にまとめた一覧データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像データの特定部分を抽出してリスト化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
作業効率向上、文書管理の容易化等といった観点から、印刷物から特定の部分だけを抜粋してリスト化したいという状況が様々な場面で存在する。例えば、印刷物の校正作業においては、印刷された文書等を目視して手直しが必要と思われる部分に印をつけておき、後から印を付けた部分について手直しの要否をじっくりと検討したい場合がある。この際、印を付けた部分だけを抜粋して一覧にする(リスト化する)ことができれば、校正作業を正確かつ効率的に行うことができる。また例えば、論文等の文書作成作業においては、参考となる文献等を読む際に、あとで参照したい部分(例えば、重要と思われる部分、求めるテーマに関する部分、引用したい部分、等)に印を付けておくことが一般に行われる。ここで、印を付けた部分だけを抜粋してリスト化しておくことができれば、後に文献の全体から当該部分を探し出す必要がなく、論文等の文書作成における作業効率を向上させることができる。
【0003】
さらに、印刷物から抜粋した各部分を、単に元の印刷物に記載された順序通りに抜き出すのではなく、抜粋する各部分の性質に応じて分類してリスト化できれば、さらに便利である。例えば、上記の例において、あるテーマに関する抜粋部分と、別のテーマに関する抜粋部分とが元の印刷物において混在して現れる場合、抜粋部分がテーマ毎に分類されたリストを得ることができれば、後で見直す場合等に非常に便利である。
【0004】
特許文献1には、文書内にユーザが注記(縦線、星印、丸で囲む、アンダーライン、ハイライト)を書き込んだ場合に、当該注記が書き込まれた付近の文章を自動的に抜き出す構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−219245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ユーザが抜粋したいと思う領域は、文章における1個の単語である場合もあれば、複数の文章にわたる場合もある。また、文章と図形(例えば、グラフ)の組み合わせの場合もある。
【0007】
特許文献1の技術においては、抜粋される領域はシステムが自動に決定する。すなわち、ここでは、システムは、まず、注記事項に関連する最小限の文脈を決定する。一方で、システムは文書に予め区分処理を行っており、最小限の文脈が決定されると、これを近くの区分の全てを含むように拡張し、これを抜粋すべき領域とする。
【0008】
この構成によると、ユーザが所望するよりも広い領域が抜粋される、あるいは、ユーザが所望するよりも狭い領域が抜粋される、といった不都合が生じる可能性が高い。前者の場合、リスト化されたデータのサイズが不必要に大きくなる、また、リスト化による作業効率の向上の妨げとなる、といった問題が出てくる。一方、後者の場合、ユーザは、結局もう一度元の文書を見直さなくてはならないため、リスト化の意味がない。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、印刷物からユーザが所望する特定の部分だけを抽出し、それをユーザが所望する通りに分類してリスト化できる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データから、手書き部分を分離する分離部と、前記手書き部分が、前記印刷物内の対象領域を囲む囲み線と、前記対象領域を分類するための分類記号とのどちらであるかを判定する判定部と、前記分類記号を、それと最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線と対応付ける対応付け部と、前記画像データから前記手書き部分が分離された後の分離後データから、前記囲み線により囲まれていた前記対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分を抽出する抽出画像取得部と、同じ種類の前記分類記号と対応付けられた1以上の前記囲み線のそれぞれにより取り囲まれた前記画像部分同士をグループ化する画像仕分け部と、抽出された前記画像部分をグループ毎にまとめた一覧データを作成する一覧データ生成部と、を備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、前記手書き部分に外接する外接矩形を設定する外接矩形設定部、を備え、前記判定部が、前記分離後データにおいて、前記手書き部分について設定された前記外接矩形に囲まれる領域に含まれる画素数に基づいて、当該手書き部分が前記囲み線と前記分類記号とのどちらであるかを判定する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像処理装置であって、前記手書き部分に外接する外接矩形を設定する外接矩形設定部、を備え、前記抽出画像取得部が、前記囲み線と当該囲み線に設定された前記外接矩形とに囲まれた領域に、そのサイズが定められた閾値よりも大きい内接矩形を設定可能である場合、前記外接矩形から、そこに設定される前記内接矩形を除いた領域を前記抽出対象領域とし、前記囲み線と当該囲み線に設定された前記外接矩形とに囲まれた領域に前記内接矩形を設定できない場合、前記外接矩形内の領域を前記抽出対象領域とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置であって、前記手書き部分に外接する外接矩形を設定する外接矩形設定部と、前記手書き部分に設定された前記外接矩形の中心の位置を、当該手書き部分の位置情報として取得する位置情報取得部と、を備え、前記対応付け部が、前記手書き部分のそれぞれの前記位置情報に基づいて、前記分類記号と最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線を特定する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載された画像処理装置であって、表示装置と、前記一覧データを前記表示装置に表示させる表示制御部と、を備える。
【0015】
請求項6に記載の発明は、画像処理装置と、前記画像処理装置と通信回線を介して接続された情報処理装置と、を備え、前記画像処理装置が、印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データから、手書き部分を分離する分離部と、前記手書き部分が、前記印刷物内の対象領域を囲む囲み線と、前記対象領域を分類するための分類記号とのどちらであるかを判定する判定部と、前記分類記号を、それと最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線と対応付ける対応付け部と、前記画像データから前記手書き部分が分離された後の分離後データから、前記囲み線により囲まれていた前記対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分を抽出する抽出画像取得部と、同じ種類の前記分類記号と対応付けられた1以上の前記囲み線のそれぞれにより取り囲まれた前記画像部分同士をグループ化する画像仕分け部と、抽出された前記画像部分をグループ毎にまとめた一覧データを作成する一覧データ生成部と、を備え、前記情報処理装置が、表示装置と、前記画像処理装置から前記通信回線を介して取得した前記一覧データを、前記表示装置に表示させる表示制御部と、を備える。
【0016】
請求項7に記載の発明は、印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データから、手書き部分を分離する工程と、前記手書き部分が、前記印刷物内の対象領域を囲む囲み線と、前記対象領域を分類するための分類記号とのどちらであるかを判定する工程と、前記分類記号を、それと最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線と対応付ける工程と、前記画像データから前記手書き部分が分離された後の分離後データから、前記囲み線により囲まれていた前記対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分を抽出する工程と、同じ種類の前記分類記号と対応付けられた1以上の前記囲み線のそれぞれにより取り囲まれた前記画像部分同士をグループ化する工程と、抽出された前記画像部分をグループ毎にまとめた一覧データを作成する工程と、を備える。
【0017】
請求項8に記載の発明は、コンピュータが読み取り可能なプログラムであって、前記コンピュータが前記プログラムを読み取り、前記コンピュータのCPUが前記プログラムをメモリにて実行することにより、前記コンピュータを、印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データから、手書き部分を分離する分離部と、前記手書き部分が、前記印刷物内の対象領域を囲む囲み線と、前記対象領域を分類するための分類記号とのどちらであるかを判定する判定部と、前記分類記号を、それと最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線と対応付ける対応付け部と、前記画像データから前記手書き部分が分離された後の分離後データから、前記囲み線により囲まれていた前記対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分を抽出する抽出画像取得部と、同じ種類の前記分類記号と対応付けられた1以上の前記囲み線のそれぞれにより取り囲まれた前記画像部分同士をグループ化する画像仕分け部と、抽出された前記画像部分をグループ毎にまとめた一覧データを作成する一覧データ生成部と、を備える画像処理装置として機能させる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、7、8に記載の発明によると、画像データから分離された手書き部分が、囲み線と分類記号とのどちらであるかが判定され、囲み線と判定された手書き部分により囲まれていた対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分が抽出される。抽出された画像部分は、同じ種類の分類記号と対応付けられた1以上の囲み線のそれぞれにより取り囲まれた画像部分同士でグループ化され、グループ毎にまとめられて一覧データとされる。この構成によると、印刷物からユーザが所望する特定の部分だけを抽出し、それをユーザが所望する通りに分類してリスト化することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によると、分離後データにおける、手書き部分について設定された外接矩形に囲まれる領域に含まれる画素数に基づいて、当該手書き部分が囲み線、分類記号のどちらであるかを判定する。この構成によると、外接矩形という単純化された形状を用いて手書き部分が囲み線、分類記号のどちらであるのかの判定を行うので、当該判定を簡単かつ正確に行うことができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によると、囲み線と外接矩形とに囲まれた領域に所定サイズ以上の内接矩形を設定可能である場合は、外接矩形から内接矩形を除いた領域の画像部分を抽出対象領域とし、内接矩形を設定できない場合は、外接矩形内の領域を抽出対象領域とする。この構成によると、外接矩形という単純化された形状を用いることによって、ユーザが抽出を希望する領域を簡単かつ正確に特定することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によると、手書き部分に設定された外接矩形の中心の位置を当該手書き部分の位置情報として取得し、当該位置情報に基づいて、分類記号と最も近い位置に書き込まれていた囲み線を特定する。この構成によると、外接矩形という単純化された形状を用いて各手書き部分の位置を簡単かつ正確に特定することができるので、分類記号と囲み線との対応付けを簡単かつ正確に行うことができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によると、表示装置と、一覧データを当該表示装置に表示させる表示制御部とを備えるので、ユーザは、作成された一覧データを、装置が備える表示装置に表示させることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によると、画像処理装置と接続された情報処理装置が、表示装置と、一覧データを当該表示装置に表示させる表示制御部とを備えるので、ユーザは、画像処理装置において作成された一覧データを、これとは別の情報処理装置が備える表示装置に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】デジタル複合機の構成を示す図である。
【図2】書き込み原稿の一例を示す図である。
【図3】デジタル複合機が備える機能構成を示すブロック図である。
【図4】前処理部の機能を説明するための図である。
【図5】抽出画像取得部の機能を説明するための図である。
【図6】抽出画像取得部の機能を説明するための図である。
【図7】抽出画像整理部の機能を説明するための図である。
【図8】一覧データの構成例を示す図である。
【図9】一覧データの構成例を示す図である。
【図10】前処理の流れを示す図である。
【図11】手書き部分の判定処理の流れを示す図である。
【図12】分類記号に対する処理の流れを示す図である。
【図13】囲み線に対する処理の流れを示す図である。
【図14】一覧データを生成する処理の流れを示す図である。
【図15】画像処理システムが備える機能構成を示すブロック図である。
【図16】表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<A.第1の実施の形態>
<1.デジタル複合機の構成>
図1は、この発明の実施の形態に係るデジタル複合機1の構成を示す図である。デジタル複合機1は、FAX機能、コピー機能、スキャン機能、プリント機能などの複数の機能を有する複合機(MFP装置)として構成されている。
【0026】
デジタル複合機1は、制御部11と、ROM12と、データメモリ13と、画像メモリ14と、操作パネル15と、画像処理部16と、画像読取部17と、画像記録部18と、大容量蓄積部19と、通信関係の処理部31〜34とを、バスライン10を介して電気的に接続した構成となっている。
【0027】
制御部11は、CPUで構成されている。制御部11は、ROM12に記憶されたプログラムPに基づいて上記のハードウエア各部を制御し、デジタル複合機1の機能を実現する。
【0028】
ROM12は、デジタル複合機1の制御に必要なプログラムP、データ等を予め格納した読み出し専用の記憶装置である。
【0029】
データメモリ13は、読み出しと書き込みとが可能な記憶装置であり、画像データ、FAX番号、メールアドレスなどの一時的に蓄積される諸データ、制御部11による演算処理の際に発生するデータ等を一時的に記憶する。データメモリ13はSRAM、フラッシュメモリ等で構成される。
【0030】
画像メモリ14は、LANI/F34、あるいは、NCU33を通じて外部装置から受信した画像データ、画像読取部17において取得された画像データ、画像処理部16において処理された画像データなどを一時的に記憶するための記憶装置である。画像メモリ14は、読み出しと書き込みとが可能なDRAM等のメモリにより構成される。
【0031】
操作パネル15は、ユーザインタフェースとして機能する処理部である。操作パネル15は、表示部151と、操作キー群152とを有している。
【0032】
表示部151は、各種の情報を表示するとともにユーザ操作を受け付ける。表示部151は、表示パネルと、表示パネルに取り付けられたタッチパネルとを備えている。表示パネルは、デジタル複合機1の動作状態などを表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイにより構成される。タッチパネルは、表示パネルの表示画面領域内に指などが触れたことを感知して、その接触情報を取得する。
【0033】
操作キー群152は、文字キー、テンキー、ファンクションキーなどの各種キーによって構成され、コマンド、テキストデータ等の入力といったユーザ操作を受け付ける。操作キー群152のユーザ操作は信号として制御部11に入力される。制御部11はユーザ操作に基づいて各部の動作を制御する。
【0034】
画像処理部16は、受信された画像データ、画像読取部17から取得した画像データ等にA/D変換、表色系の変換、色調整、画像の合成などの種々の処理を行う処理部である。
【0035】
画像読取部17は、原稿上の画像をCCDラインセンサなどの読取素子によって読み取るスキャナである。画像読取部17は、ガラス台上に載置された原稿の表面を読取素子が走査して画像を読み取るタイプのスキャナであってもよく、原稿の載置台(図示省略)に載置された原稿を、ADF(Auto Document Feeder)によって搬送し、搬送される原稿の表面を静止した読取素子によって走査して画像を読み取るタイプのスキャナであってもよい。
【0036】
画像記録部18は、画像メモリ14、大容量蓄積部19等に格納された画像データなどを記録紙上へ記録するプリンタである。画像記録部18には、例えば、電子写真方式のプリンタを採用することができる。
【0037】
大容量蓄積部19は、ハードディスクなどにより構成される。大容量蓄積部19は、画像読取部17により処理された画像データを蓄積することができる。
【0038】
さらにこのデジタル複合機1には、通信関係の処理部として、画像データ等を複数のプロトコルに対応して符号化/復号化するコーデック(CODEC)31と、送受信データの変調および復調を行うモデム32と、電話回線の開閉制御を行うNCU33と、LAN41とのインターフェイスに相当するLANI/F34とが、バスライン10を介して電気的に接続した構成となっている。
【0039】
ここで、デジタル複合機1の通信環境について説明する。デジタル複合機1はLAN41と接続されている。また、LAN41はルータ42などを介してインターネット43に接続されている。これにより、デジタル複合機1は、LAN41を介して接続された情報処理装置44、あるいは、インターネット43を介して接続された情報処理装置45と電子メール通信などを行うことができる。なお、情報処理装置44,45は、例えば、パソコン、デジタル複合機1と同様の装置、携帯電話等である。
【0040】
さらに、デジタル複合機1は、アナログ回線用のデータ通信ネットワークである回線(例えば、PSTN(Public Switched Telephone Network:一般公衆電話網)46(あるいは、ISDN(Integrated Services Digital Network:サービス総合デジタル網)))と接続されている。これによって、デジタル複合機1は回線46を介して接続された通信端末装置47とのFAX通信を行うことができる。なお、通信端末装置47は、例えば、モデム接続されたパソコン、デジタル複合機1と同様の装置、固定電話、携帯電話、FAX専用機等である。
【0041】
<2.画像抽出処理に関する構成>
デジタル複合機1は、ユーザが印刷物に対して、鉛筆、ボールペン等の筆記具を用いて手書きで書き込みを行ったもの(以下「書き込み原稿」という)60から、ユーザが所望する部分を抽出(抜粋)し、それをユーザが所望する通りに分類してリスト化する機能(抽出分類機能)を備えている。
【0042】
<2−1.書き込み原稿>
抽出分類機能について具体的に説明する前に、書き込み原稿60について、図2を参照しながら説明する。図2には、書き込み原稿60の一例が示されている。
【0043】
上述したとおり、書き込み原稿60は、ユーザが印刷物に対して手書きで書き込みを行ったものである。ここで、「印刷物」とは、例えば、記録用紙等の記録媒体に、インク、トナー等を用いて、文字、絵、グラフ等を画像形成したものである。
【0044】
<囲み線71>
ユーザは、印刷物内に抽出したい部分(以下「対象部分」という)がある場合、対象部分を囲む線(以下「囲み線」という)71を手書きで記入する。囲み線71は、閉領域を規定するものであればどのような形状であってもよい。例えば、多角形、角丸の多角形、円形、楕円形、等であってもよい。また、窪んだ部分、あるいは、突き出た部分を含む不規則な形状であってもよい。また、囲み線71は、印刷物内に何個書き込まれてもよい。ただし、同一ページ内に複数の囲み線71が書き込まれる場合、各囲み線71は他の囲み線71と交差しないように書き込まれる必要がある。
【0045】
<分類記号72>
ユーザは、対象部分を分類したい場合、囲み線71の近くに対象部分を分類するための記号(以下「分類記号」という)72を手書きで記入する。分類記号72は、識別能力を有するものであればどのようなものであってもよい。例えば、文字(例えば、数字、アルファベット、平仮名、カタカナ、等の1文字、あるいは、複数の文字を組み合わせたもの)、記述記号(例えば、クエスチョンマーク(?)、エクスクラメーションマーク(!)、等)、参照符記号(例えば、米印(※)、アスタリスク(*)、等)、数学記号(例えば、イコール(=)、プラス(+)、マイナス(−)、等)、図形(例えば、丸、三角、四角、あるいは、これらを複数個組み合わせたもの等)、文字等と図形との組み合わせ(例えば、文字を丸で囲んだもの等)を分類記号72として用いることができる。ただし、分類記号72は、光学文字認識処理により識別されるため、光学文字認識処理における誤認識を防止するべく、回転によって互いに一致しにくい組み合わせであることが好ましい。
【0046】
また、分類記号72は、その最も近い位置にある囲み線71と対応付けられることになるので、対応させたい囲み線71とできるだけ近接した位置に書き込むことが好ましい。ただし、分類記号72は、囲み線71、および、他の分類記号72と重ならないように書き込まれる必要がある。また、分類記号72は、印刷物に印字されている線画と重ならない位置に書き込まれることが好ましい。なお、分類記号72は必ずしも全ての囲み線71について記入される必要はなく、分類記号72なしの囲み線71が存在しても問題ない。
【0047】
<2−2.機能構成>
抽出分類機能について、図3を参照しながら説明する。図3は、デジタル複合機1が備える機能構成を示すブロック図である。
【0048】
デジタル複合機1は、上記機能に関する構成として、前処理部110と、分類記号仕分け部120と、抽出画像取得部130と、抽出画像整理部140とを備える。これら各機能部は、制御部11がROM12上のプログラムPを実行することにより実現される。
【0049】
<前処理部110>
前処理部110は、書き込み原稿60を読み取って得られた画像データから、ユーザが手書きにより書き込んだ部分(以下「手書き部分」という)7に関する各種の情報を取得する機能部であり、分離部111と、外接矩形設定部112と、位置情報取得部113と、判定部114とを備える。前処理部110の機能について、図4を参照しながら説明する。図4は、前処理部110の機能を説明するための図である。
【0050】
分離部111は、書き込み原稿60を読み取って得られた画像データ61から、手書き部分7(具体的には、囲み線71、および、分類記号72)を分離する処理(以下「分離処理」という)を行う。分離処理においては、手書き部分7と、それ以外の部分(すなわち、手書き部分7が記入される前の印刷物に印刷されていた線画の部分であり、以下「印刷部分」という)とが分離されることになる。画像データ61から手書き部分7が分離されたデータ(すなわち、印刷部分のみが表されたデータ)を以下「分離後データ62」という。
【0051】
分離処理は、例えば、画像データ61に含まれる各オブジェクトの濃度差を利用して行うことができる。すなわち、手書き部分は、印刷部分に比べて濃度が低い部分が多くなる傾向がある。そこで、画像データ61におけるオブジェクト単位(例えば、連結画素単位)の平均濃度を算出し、平均濃度が所定値以下の部分を手書き部分7と判断して、これを分離することによって、画像データ61から手書き部分7を分離することができる。また、例えば、分離処理は、画像データ61に含まれる各オブジェクトの濃度変化を利用して行うことができる。すなわち、手書き部分は、印刷部分に比べて濃度変化が緩やかとなる傾向がある。そこで、画像データ61におけるオブジェクト単位(例えば、連結画素単位)の平均濃度変化率(隣接する画素間の濃度差の平均値)を算出し、平均濃度変化率が所定値以下の部分を手書き部分7と判断して、これを分離することによって、画像データ61から手書き部分7を分離することができる。分離処理は、上記に例示したように、画像データ61における各画素の濃度情報を用いて行うことができる他、公知の各種技術を用いて行うことも可能である。
【0052】
外接矩形設定部112は、画像データ61から分離された手書き部分7のそれぞれに外接する矩形(以下「外接矩形」という)81を設定する。
【0053】
位置情報取得部113は、画像データ61から分離された手書き部分7のそれぞれの位置情報を取得する。具体的には、各手書き部分7について設定された外接矩形81の中心82の座標を算出し、得られた座標を当該手書き部分7の位置情報として取得する。例えば、外接矩形81の頂点座標の平均を中心82の座標として取得することができる。
【0054】
判定部114は、画像データ61から分離された手書き部分7のそれぞれが、囲み線71、分類記号72、のどちらであるかの判定を行う。判定部114は、画素数計数部1141と、判定処理部1142とを備える。
【0055】
画素数計数部1141は、分離後データ62において、手書き部分7について設定された外接矩形81の領域(図中の仮想線領域)に含まれる画素数を計数する。ここで得られる計数結果は、画像データ61の、手書き部分7が書き込まれた領域の内部における、印刷物の線画由来の画素数と近似的に等しい値となっている。
【0056】
囲み線71は、印刷物の線画を囲む記入部分であるため、画像データ61において、囲み線71として記入された手書き部分7が書き込まれた領域の内部には、印刷物の線画に由来する画素が比較的多く存在するはずである。これに対し、分類記号72を印刷物における線画部分と重ならないように書き込むことを予めルール化しておけば、ユーザがルールに従って分類記号72を書き込む限り、分類記号72として記入された手書き部分7が書き込まれた領域の内部には、印刷物の線画に由来する画素がほとんど存在しないはずである。そこで、判定処理部1142は、画素数計数部1141により計数された画素数が定められた閾値W1より大きいか否かを判定し、画素数が閾値W1より大きい場合、当該手書き部分7を囲み線71と判定する。一方、画素数が閾値W1以下の場合、当該手書き部分7を分類記号72と判定する。
【0057】
なお、この判定処理に用いられる閾値W1は、原理的には「0(ゼロ)」とすることも可能であるが、実際は、分離処理において印刷部分と手書き部分7とが誤認識される可能性もゼロではない。また、ユーザが印刷物の線画と部分的に重なるように分類記号72を記入する可能性もある。また、ユーザが印刷部分に接近させて分類記号72を記入した場合、外接矩形81内に印刷部分が僅かに含まれる可能性もある。そこで、これらの場合にも分類記号72と囲み線71とを間違いなく分離できるように、閾値W1は、「0」より僅かに大きな値とすることが好ましい。
【0058】
<分類記号仕分け部120>
再び図3を参照する。分類記号仕分け部120は、分類記号72を、同じ種類の記号同士でグループ化する。具体的には、分類記号仕分け部120は、分類記号72に対して光学文字認識処理(OCR(Optical Character Recognition)処理)を行い、認識結果が同じ分類記号72同士をグループ化し、各グループに識別番号(例えば、グループ番号)を付与する。光学文字認識処理は、例えば、予め登録された複数のパターンとのパターンマッチングを行うことによってなされる。
【0059】
ただし、分類記号72が文字認識不能と判断された場合は、当該分類記号72を定められたグループに分類してもよいし、当該分類記号72はなかったものとみなして以後の処理を進めてもよい。
【0060】
なお、ここで、一群の分類記号72を文字認識処理して得られた識別結果が、順位付けが可能な記号群の場合がある。例えば、識別結果が一群の数字であれば、昇順、あるいは、降順に順位付けることができる。また、識別結果が一群のアルファベットであれば、A、B、CからZまでの並び順に順位付けることができる。また、識別結果が一群の平仮名、あるいは、一群のカタカナであれば、例えば50音順に順位付けることができる。このように、識別結果が、順位付けが可能な記号群である場合、分類記号仕分け部120は、当該記号の順位と対応したグループ番号を付与する。例えば、一群の分類記号72を文字認識処理して得られた識別結果が、「A」「B」「C」のいずれかである場合、分類記号仕分け部120は、識別結果が「A」の分類記号72が属するグループにグループ番号「1」を付与し、識別結果が「B」の分類記号72が属するグループにグループ番号「2」を付与し、識別結果が「C」の分類記号72が属するグループにグループ番号「3」を付与する。また、例えば、図2に例示された書き込み原稿60の場合、一群の分類記号72を文字認識処理して得られた識別結果が、「1を丸で囲んだもの」「2を丸で囲んだもの」「3を丸で囲んだもの」のいずれかとなる。この場合、分類記号仕分け部120は、識別結果が「1を丸で囲んだもの」の分類記号72が属するグループにグループ番号「1」を付与し、識別結果が「2を丸で囲んだもの」の分類記号72が属するグループにグループ番号「2」を付与し、識別結果が「3を丸で囲んだもの」の分類記号72が属するグループにグループ番号「3」を付与する(図7参照)。
【0061】
<抽出画像取得部130>
抽出画像取得部130は、分離後データ62から画像部分を抽出する機能部であり、抽出領域特定部131と、抽出処理部132とを備える。抽出画像取得部130の機能について、図5、図6を参照しながら説明する。図5、図6は、抽出画像取得部130の機能を説明するための図である。
【0062】
抽出領域特定部131は、分離後データ62から抽出すべき領域(以下、「抽出対象領域」という)84を特定する。ただし、抽出対象領域84は、ユーザが抽出を所望する対象領域(すなわち、囲み線71により囲まれていた対象領域)を含む領域とされる。具体的には、抽出領域特定部131は、図5に示すように、囲み線71と当該囲み線71に設定された外接矩形81とに囲まれた領域に、そのサイズが定められた閾値W2よりも大きい内接矩形83を設定可能か否かを判断する。内接矩形83が設定できない場合(すなわち、囲み線71と外接矩形81との間に隙間がほとんど存在しない場合)、抽出領域特定部131は外接矩形81内の領域を抽出対象領域84とする(AR11)。一方、内接矩形83が1個以上設定できる場合(すなわち、囲み線71と外接矩形81との間にある程度大きな隙間が存在する場合)、外接矩形81から、そこに設定される1以上の内接矩形83の全てを除いた領域を抽出対象領域84とする(AR12)。
【0063】
抽出処理部132は、図6に示すように、分離後データ62における抽出対象領域84内の画像部分を抽出する。抽出された画像部分を以下「抽出画像85」という。
【0064】
<抽出画像整理部140>
再び図3を参照する。抽出画像整理部140は、抽出画像85を分類して一覧データ63を作成する機能部であり、対応付け部141と、画像仕分け部142と、一覧データ生成部143とを備える。抽出画像整理部140の機能について、図7を参照しながら説明する。図7は、抽出画像整理部140の機能を説明するための図である。
【0065】
対応付け部141は、各分類記号72を、当該分類記号72と最も近い位置に書き込まれた囲み線71と対応付ける。具体的には、位置情報取得部113が各手書き部分7について特定した位置情報を用いて、各分類記号72と同じページに書き込まれた囲み線71のうち、当該分類記号72の中心82と最も近い位置にその中心82がある囲み線71を特定する。そして、当該囲み線71を、当該分類記号72と最も近い位置に書き込まれている囲み線71とみなして、当該分類記号72と対応付ける(矢印AR1)。
【0066】
画像仕分け部142は、同じグループに属する(すなわち、同じ種類の)分類記号72と対応付けられた1以上の囲み線71のそれぞれにより取り囲まれた画像部分(具体的には、画像部分の抽出画像85)同士をグループ化する。具体的には、画像仕分け部142は、まず、抽出画像85に係る画像部分を取り囲んでいた囲み線71が、いずれかの分類記号72と対応付けられているかを判断する。そして、当該囲み線71がいずれかの分類記号72と対応付けられている場合、当該対応付けられた分類記号72が属するグループのグループ番号を当該抽出画像85に付与する(矢印AR2)。一方、抽出画像85を取り囲んでいた囲み線71がいずれの分類記号72とも対応付けられていない場合、当該抽出画像85に定められたグループ番号(例えば、「グループ番号0」)を付与する。つまり、分類記号72が付与されていない囲み線71により取り囲まれた画像部分が存在する場合は、当該画像部分同士を1つのグループにまとめる。
【0067】
一覧データ生成部143は、画像仕分け部142においてグループ分けされた抽出画像85を、グループ毎にまとめるとともに、グループ番号の昇順に並べて、一覧データ63を作成する。図8、図9には、一覧データ63の構成例が示されている。図8、図9に示されるように、一覧データ63においては、各抽出画像85がグループ毎に分類され、グループ番号の昇順に並べられる。一覧データ63は、図8に示すように、グループ毎にページ分けされずに一覧表示されてもよいし、図9に示すように、グループ毎にページ分けされていてもよい。
【0068】
生成された一覧データ63は、例えば、大容量蓄積部19に格納される。大容量蓄積部19に格納された一覧データ63は、ユーザからの指示に応じて、画像記録部18において記録紙上へプリントされる。また、ユーザからの指示に応じて、表示部151に表示される。
【0069】
<3.処理の流れ>
抽出分類機能に係る一連の処理の流れについて説明する。なお、以下の処理は、ユーザが、画像読取部17に書き込み原稿60を読み取らせるとともに、操作パネル15を介して一覧データ63の作成指示を入力した場合に開始される。
【0070】
<3−1.前処理部110における処理>
はじめに、前処理部110によって前処理が行われる。前処理の流れについて、図4、図10を参照しながら説明する。図10は、当該処理の流れを示す図である。
【0071】
画像読取部17によって書き込み原稿60の画像データ61が取得されると、分離部111が、当該画像データ61から手書き部分7を分離する(ステップS11)。なお、ステップS11の処理において手書き部分7が1つも検出されない場合は、処理を終了する。ここでは、ステップS11の処理において1以上の手書き部分7が検出されたとして話を進める。
【0072】
1以上の手書き部分7が画像データ61から分離されると、続いて、外接矩形設定部112が、画像データ61から分離された1以上の手書き部分7のそれぞれに外接する外接矩形81を設定する(ステップS12)。
【0073】
続いて、位置情報取得部113が、画像データ61から分離された1以上の手書き部分7のそれぞれの位置情報を取得する(ステップS13)。具体的には、各手書き部分7についてステップS12で設定された外接矩形81の中心82の座標を算出し、得られた座標を当該手書き部分7の位置情報として取得する。
【0074】
続いて、判定部114が、画像データ61から分離された1以上の手書き部分7のそれぞれが、囲み線71、分類記号72のどちらであるかを判定する(ステップS14)。当該処理の流れについて、図11を参照しながらより具体的に説明する。図11は、当該処理の流れを示す図である。
【0075】
まず、画素数計数部1141は、いずれかの手書き部分7を判定対象とし、分離後データ62において、当該判定対象となる手書き部分7について設定された外接矩形81の領域に含まれる画素数を計数する(ステップS141)。
【0076】
続いて、判定処理部1142が、ステップS141の計数結果が定められた閾値W1より大きいか否かを判断する(ステップS142)。ここで、計数結果が定められた閾値W1より大きいと判断された場合、判定対象となる手書き部分7は囲み線71であると判定する(ステップS143)。一方、計数結果が閾値W1以下の場合、判定対象となる手書き部分7は分類記号72であると判定する(ステップS144)。
【0077】
画像データ61から分離された1以上の手書き部分7のすべてについて、ステップS141〜144の処理が行われると(ステップS145でYES)、ステップS14の処理は終了する。
【0078】
ステップS14の処理が終了すれば前処理が終了し、続いて、分類記号72と判定された手書き部分7と、囲み線71と判定された手書き部分7とのそれぞれに別の処理が行われる。
【0079】
<3−2.分類記号仕分け部120における処理>
分類記号72と判定された手書き部分7に対して分類記号仕分け部120により行われる処理の流れについて、図12を参照しながら説明する。図12は、当該処理の流れを示す図である。
【0080】
まず、分類記号仕分け部120は、分類記号72と判定された全ての手書き部分7のそれぞれに対して光学文字認識処理を行う(ステップS21)。
【0081】
続いて、ステップS21における認識結果が同じ分類記号72同士をグループ化し、各グループにグループ番号を付与する(ステップS22)。
【0082】
<3−3.抽出画像取得部130における処理>
囲み線71と判定された手書き部分7に対して抽出画像取得部130により行われる処理の流れについて、図5、図6、図13を参照しながら説明する。図13は、当該処理の流れを示す図である。
【0083】
まず、抽出領域特定部131は、いずれかの囲み線71を対象とし、当該囲み線71と当該囲み線71に設定された外接矩形81とに囲まれた領域に、そのサイズが定められた閾値W2よりも大きい内接矩形83を設定可能か否かを判断する(ステップS31)。
【0084】
内接矩形83を設定できない場合(ステップS31でNO)、抽出領域特定部131は外接矩形81を抽出対象領域84に決定する(ステップS32)。
【0085】
一方、内接矩形83を1個以上設定できる場合(ステップS31でYES)、抽出領域特定部131は、外接矩形81から、そこに設定される1以上の内接矩形83の全てを除いた領域を抽出対象領域84に決定する(ステップS33)。
【0086】
続いて、抽出処理部132が、分離後データ62における抽出対象領域84(すなわち、ステップS32、あるいは、ステップS33において決定された抽出対象領域84)内の画像部分を抽出して、抽出画像85として取得する(ステップS34)。
【0087】
囲み線71と判定された全ての手書き部分7のすべてに基づく抽出画像85がそれぞれ取得されると(ステップS35でYES)、処理は終了する。
【0088】
<3−4.抽出画像整理部140における処理>
分類記号72と判定された手書き部分7と、囲み線71と判定された手書き部分7とのそれぞれに対する処理が終了すれば、抽出画像整理部140によって、抽出画像85を分類して一覧データ63を作成する処理が行われる。当該処理の流れについて、図7〜図9、図14を参照しながら説明する。図14は、当該処理の流れを示す図である。
【0089】
まず、対応付け部141が、画像データ61から分離された全ての分類記号72を、当該分類記号72と最も近い位置に書き込まれた囲み線71と対応付ける(ステップS41)。具体的には、対応付け部141は、ステップS13(図10参照)で取得された各手書き部分7の位置情報を用いて、各分類記号72と同じページに書き込まれた囲み線71のうち、当該分類記号72の中心82と最も近い位置にその中心82がある囲み線71を特定する。そして、当該囲み線71を、当該分類記号72と最も近い位置に書き込まれている囲み線71とみなして、当該分類記号72と対応付ける。
【0090】
続いて、画像仕分け部142が、取得された全ての抽出画像85をグループ分けする(ステップS42)。具体的には、同じグループに属する分類記号72と対応付けられた1以上の囲み線71のそれぞれにより取り囲まれた画像部分の抽出画像85同士をグループ化する。また、分類記号72が付与されていない囲み線71により取り囲まれた画像部分が存在する場合は、当該画像部分同士を1つのグループにまとめる。
【0091】
続いて、一覧データ生成部143が、ステップS42でグループ分けされた抽出画像85を、グループ毎にまとめるとともに、グループ番号の昇順に並べて、一覧データ63を作成する(ステップS43)。
【0092】
<4.効果>
上記の実施の形態によると、画像データ61から分離された手書き部分7が、囲み線71と分類記号72とのどちらであるかが判定され、囲み線71と判定された手書き部分7により囲まれていた抽出対象領域84内の画像部分が抽出される。抽出された画像部分は、同じ種類の分類記号72と対応付けられた1以上の囲み線71のそれぞれにより取り囲まれた画像部分同士でグループ化され、グループ毎にまとめられて一覧データ63とされる。この構成によると、印刷物からユーザが所望する特定の部分だけを抽出し、それをユーザが所望する通りに分類してリスト化することができる。
【0093】
また、上記の実施の形態によると、分離後データ62における、手書き部分7について設定された外接矩形81の領域に含まれる画素数に基づいて、当該手書き部分7が囲み線71、分類記号72のどちらであるかを判定する。例えば、分離後データ62における、手書き部分7の領域に含まれる画素数を正確に求めようとした場合、手書き部分7の位置および形状を正確に特定しなければならない。囲み線71はユーザが手書きで書き入れた不規則な形状である可能性が高いため、この位置および形状を正確に特定しようとした場合、演算量、保持すべき情報量等が非常に多くなる。これに対し、上記の実施の形態においては、手書き部分7に外接する外接矩形81という単純な形状を利用することによって、手書き部分7が囲み線71、分類記号72のどちらであるのかの判定を行うので、当該判定を簡単かつ正確に行うことができる。
【0094】
また、上記の実施の形態によると、囲み線71に対して設定された外接矩形81に基づいて規定される領域を、抽出対象領域84とする。例えば、囲み線71内の画像部分をそのまま抽出対象領域とする場合、上述したとおり、手書き部分7の位置および形状を正確に特定しなければならないため、演算量、保持すべき情報量等が非常に多くなる。これに対し、上記の実施の形態においては、外接矩形という単純化された形状を用いることによって、ユーザが抽出を希望する領域を簡単かつ確実に抽出することができる。また、この構成によると、ユーザが書き込んだ囲み線71が完全に閉じたものでなくとも、ユーザが抽出を希望する領域を問題なく抽出することができるという利点もある。なお、例えばテキストを抜粋する場合等は、ユーザは、囲み線71の中に含まれる文章が漏れなく抽出されることを求めているだけの可能性が高く、囲み線71に沿った画像部分をそのまま切り取る必要性は比較的低い。すなわち、囲み線71内の画像部分を抽出対象領域とせずに、囲み線71に対して設定された外接矩形81に基づいて規定される領域を抽出対象領域84とすることによりユーザが不都合を感じる可能性は低い。
【0095】
特に、上記の実施の形態においては、囲み線71と外接矩形81とに囲まれた領域に所定サイズ以上の内接矩形83を設定可能である場合は、外接矩形81から内接矩形83を除いた領域の画像部分を抽出対象領域84とし、内接矩形83を設定できない場合は、外接矩形81内の領域を抽出対象領域84とする。この構成によると、ユーザが抽出を所望しない不要な領域が抽出対象領域84に含まれる割合が低減する。すなわち、ユーザが抽出を希望する領域を簡単かつ正確に特定することができる。
【0096】
特に、上記の実施の形態においては、手書き部分7に設定された外接矩形81の中心82の位置を当該手書き部分7の位置情報として取得し、当該位置情報に基づいて、分類記号72と最も近い位置に書き込まれていた囲み線71を特定する。この構成によると、外接矩形81という単純化された形状を用いて各手書き部分7の位置を簡単かつ正確に特定することができるので、分類記号72と囲み線71との対応付けを簡単かつ正確に行うことができる。
【0097】
<B.第2の実施の形態>
<1.画像処理システム100>
この発明の第2の実施の形態に係る画像処理システム100について、図15を参照しながら説明する。図15は、画像処理システム100の機能構成を示すブロック図である。
【0098】
画像処理システム100は、第1の実施の形態に係るデジタル複合機1と、当該デジタル複合機1と通信回線を介して接続された1以上の情報処理装置とを備える。例えば、デジタル複合機1と、これとLAN41を介して接続された情報処理装置(例えば、パソコン)44とを備える。なお、画像処理システム100の構成はこれに限るものではなく、例えば、デジタル複合機1とインターネット43を介して接続された情報処理装置45をさらに(あるいは、情報処理装置44に代えて)備える構成としてもよい(図1参照)。
【0099】
情報処理装置44は、例えばコンピュータにより構成され、CPU、ROM、RAM等から構成されて情報処理装置44における各機能を実現する制御部441と、ディスプレイ等の表示装置442と、オペレータが各種の指示を入力するためのマウス、キーボード等からなる操作部443とを備える。さらに、図示は省略するが、情報処理装置44における各種機能を実現するためのプログラムなどを格納するためのROM、LAN41あるいは、インターネット43等の通信回線を介して接続されたデジタル複合機1等との間でデータの受け渡しを行うためのインターフェイスである通信部、通信回線を介して他の装置から受信した画像データ(例えば、通信部が、LAN41を介してデジタル複合機1から取得した一覧データ63)等を記憶する記憶装置、等をさらに備える。
【0100】
画像処理システム100においては、デジタル複合機1において生成された一覧データ63を、情報処理装置44が備える表示装置442に表示させることができる。情報処理装置44は、一覧データ63の表示処理に関する機能構成として、表示制御部150を備える。表示制御部150は、制御部441がROM上のプログラムを実行することにより実現される。
【0101】
表示制御部150は、デジタル複合機1から受信された一覧データ63を記憶装置から読み出して表示装置442に表示させる。図16には、一覧データ63を表示する画面(以下、表示画面9という)の構成例が示されている。
【0102】
表示画面9においては、同じグループに属する抽出画像85が一覧表示される(一覧表示部分91)。ユーザは、一覧表示部分91に表示させるグループを、操作部443を介して指定することができる。すなわち、ユーザが、操作部443を介して、表示させたいグループの指定を入力した場合、表示制御部150は、当該入力を受け付けて指定されたグループに属する抽出画像85を一覧表示部分91に一覧表示させる。
【0103】
また、一覧表示部分91の隣には、ユーザが書き込みを行った元の印刷物が表示される(オリジナルページ表示部分92)。すなわち、表示制御部150は、デジタル複合機1から一覧データ63の生成において用いられた分離後データ62を取得して、取得した分離後データ62をオリジナルページ表示部分92に表示させる。一覧データ63と並べて分離後データ62が表示されることによって、ユーザは、抽出画像85が元の印刷物におけるどの位置から抽出されたものであるかを確認することができる。
【0104】
なお、オリジナルページ表示部分92には、一覧表示部分91に表示されている抽出画像85と対応する抽出対象領域84が、例えば色つきの線で示されることが好ましい。この構成によると、ユーザは、一覧表示部分91に表示されている抽出画像85が、元の印刷物のどの箇所から抽出された抽出画像85であるかを一目で認識することができる。
【0105】
元の印刷物が複数ページからなる場合、オリジナルページ表示部分92には、一覧表示部分91に表示されている抽出画像85のうち、ユーザが選択した一の抽出画像85が含まれているページが表示される構成としてもよい。すなわち、ユーザが、操作部443を介して、一覧表示部分91に表示されている抽出画像85のうちのいずれかを選択した場合、表示制御部150は、当該入力を受け付けて、分離後データ62のうち、選択された抽出画像85が含まれているページをオリジナルページ表示部分92に表示させる構成としてもよい。
【0106】
また、ユーザが一の抽出画像85を選択した場合、選択された抽出画像85が元の印刷物においてどの位置にあるかを示唆する情報(例えば、元の印刷物において抽出画像85が含まれるページのページ番号、抽出画像85が当該ページ中の右側、左側のどちらに記載されているか、また、当該ページ中の上側、下側のどちらに記載されているか等を示す情報)が表示されることが好ましい(位置情報表示部分93)。
【0107】
また、表示画面9には、一覧表示部分91に表示されているグループに属する抽出画像85が、元の印刷物の全体に何個存在するか、また、オリジナルページ表示部分92に表示されているページ内に何個存在するか、等の情報が表示される構成としてもよい(個数情報表示部分94)。
【0108】
なお、表示画面9には、画面の表示変更指示等を受け付けるアイコン(例えば、一覧表示部分91に前のグループを表示させる指示を受け付けるアイコン95、一覧表示部分91に次のグループを表示させる指示を受け付けるアイコン96、一覧データ63のプリントリストを表示させる指示を受け付けるアイコン97、表示終了の指示を受け付けるアイコン98、等)が表示される構成としてもよい。
【0109】
<2.効果>
上記の実施の形態によると、デジタル複合機1と接続された情報処理装置44が、表示装置442と、一覧データ63を当該表示装置442に表示させる表示制御部150とを備えるので、ユーザは、デジタル複合機1において作成された一覧データ63を、これとは別の情報処理装置44が備える表示装置442に表示させることができる。
【0110】
<C.変形例>
上記の実施の形態においては、判定部114は、分離後データ62において、手書き部分7について設定された外接矩形81の領域に含まれる画素数に基づいて、当該手書き部分7が囲み線71、分類記号72のいずれであるかを判定していた。ここで、判定部114は、画像データ61において、手書き部分7について設定された外接矩形81内部の平均画素密度に基づいて、当該手書き部分7が囲み線71、分類記号72のいずれであるかを判定してもよい。すなわち、この場合、平均画素密度(外接矩形81の領域内部に含まれる画素数を外接矩形81のサイズで割った値)が、定められた閾値より大きい場合、当該手書き部分7を囲み線71と判定する。また、定められた閾値以下の場合、当該手書き部分7を分類記号72と判定する。
【0111】
また、第2の実施の形態においては、デジタル複合機1と情報処理装置44とが、画像処理システム100を構成しており、デジタル複合機1において生成された一覧データ63が、情報処理装置44が備える表示装置442に表示されるものとした。ここで、上述したとおり、デジタル複合機1において生成された一覧データ63は、デジタル複合機1の表示部151に表示される構成としてもよい。この場合、上述した表示制御部150は、デジタル複合機1においても実現される(具体的には、デジタル複合機1の制御部11がROM12上のプログラムPを実行することにより実現される)。この構成によると、ユーザは、デジタル複合機1において作成された一覧データ63を、デジタル複合機1が備える表示部151に表示させることができる。
【0112】
また、画像処理システム100においては、デジタル複合機1において実現されるとした機能部110,120,130,140のうちの1以上の機能部が、情報処理装置44の制御部441において実現されてもよい。
【0113】
また、上記の実施の形態においては、デジタル複合機1は、画像読取部17に書き込み原稿60を読み取らせることによって画像データ61を取得していたが、画像データ61を取得する構成はこれに限らない。例えば、LAN41等の通信回線を介して情報処理装置44,45から受信してもよい。また、回線46を介して接続された通信端末装置47からFAX受信してもよい。
【0114】
また、上記の実施の形態において、デジタル複合機1が行う処理の流れは、上述した順序に限らない。例えば、前処理において、手書き部分7の位置情報を取得する前に、手書き部分7が囲み線71か分類記号72かの判定を行ってもよい。また、これらの各処理は並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 デジタル複合機
7 手書き部分
9 表示画面
63 一覧データ
71 囲み線
72 分類記号
81 外接矩形
83 内接矩形
84 抽出対象領域
85 抽出画像
110 前処理部
120 分類記号仕分け部
130 抽出画像取得部
140 抽出画像整理部
150 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データから、手書き部分を分離する分離部と、
前記手書き部分が、前記印刷物内の対象領域を囲む囲み線と、前記対象領域を分類するための分類記号とのどちらであるかを判定する判定部と、
前記分類記号を、それと最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線と対応付ける対応付け部と、
前記画像データから前記手書き部分が分離された後の分離後データから、前記囲み線により囲まれていた前記対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分を抽出する抽出画像取得部と、
同じ種類の前記分類記号と対応付けられた1以上の前記囲み線のそれぞれにより取り囲まれた前記画像部分同士をグループ化する画像仕分け部と、
抽出された前記画像部分をグループ毎にまとめた一覧データを作成する一覧データ生成部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記手書き部分に外接する外接矩形を設定する外接矩形設定部、
を備え、
前記判定部が、
前記分離後データにおいて、前記手書き部分について設定された前記外接矩形に囲まれる領域に含まれる画素数に基づいて、当該手書き部分が前記囲み線と前記分類記号とのどちらであるかを判定する画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記手書き部分に外接する外接矩形を設定する外接矩形設定部、
を備え、
前記抽出画像取得部が、
前記囲み線と当該囲み線に設定された前記外接矩形とに囲まれた領域に、そのサイズが定められた閾値よりも大きい内接矩形を設定可能である場合、前記外接矩形から、そこに設定される前記内接矩形を除いた領域を前記抽出対象領域とし、
前記囲み線と当該囲み線に設定された前記外接矩形とに囲まれた領域に前記内接矩形を設定できない場合、前記外接矩形内の領域を前記抽出対象領域とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記手書き部分に外接する外接矩形を設定する外接矩形設定部と、
前記手書き部分に設定された前記外接矩形の中心の位置を、当該手書き部分の位置情報として取得する位置情報取得部と、
を備え、
前記対応付け部が、
前記手書き部分のそれぞれの前記位置情報に基づいて、前記分類記号と最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線を特定する画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載された画像処理装置であって、
表示装置と、
前記一覧データを前記表示装置に表示させる表示制御部と、
を備える画像処理装置。
【請求項6】
画像処理装置と、
前記画像処理装置と通信回線を介して接続された情報処理装置と、
を備え、
前記画像処理装置が、
印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データから、手書き部分を分離する分離部と、
前記手書き部分が、前記印刷物内の対象領域を囲む囲み線と、前記対象領域を分類するための分類記号とのどちらであるかを判定する判定部と、
前記分類記号を、それと最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線と対応付ける対応付け部と、
前記画像データから前記手書き部分が分離された後の分離後データから、前記囲み線により囲まれていた前記対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分を抽出する抽出画像取得部と、
同じ種類の前記分類記号と対応付けられた1以上の前記囲み線のそれぞれにより取り囲まれた前記画像部分同士をグループ化する画像仕分け部と、
抽出された前記画像部分をグループ毎にまとめた一覧データを作成する一覧データ生成部と、
を備え、
前記情報処理装置が、
表示装置と、
前記画像処理装置から前記通信回線を介して取得した前記一覧データを、前記表示装置に表示させる表示制御部と、
を備える画像処理システム。
【請求項7】
印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データから、手書き部分を分離する工程と、
前記手書き部分が、前記印刷物内の対象領域を囲む囲み線と、前記対象領域を分類するための分類記号とのどちらであるかを判定する工程と、
前記分類記号を、それと最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線と対応付ける工程と、
前記画像データから前記手書き部分が分離された後の分離後データから、前記囲み線により囲まれていた前記対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分を抽出する工程と、
同じ種類の前記分類記号と対応付けられた1以上の前記囲み線のそれぞれにより取り囲まれた前記画像部分同士をグループ化する工程と、
抽出された前記画像部分をグループ毎にまとめた一覧データを作成する工程と、
を備える画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータが読み取り可能なプログラムであって、
前記コンピュータが前記プログラムを読み取り、前記コンピュータのCPUが前記プログラムをメモリにて実行することにより、前記コンピュータを、
印刷物に手書きによる書き込みがなされた書き込み原稿の画像データから、手書き部分を分離する分離部と、
前記手書き部分が、前記印刷物内の対象領域を囲む囲み線と、前記対象領域を分類するための分類記号とのどちらであるかを判定する判定部と、
前記分類記号を、それと最も近い位置に書き込まれていた前記囲み線と対応付ける対応付け部と、
前記画像データから前記手書き部分が分離された後の分離後データから、前記囲み線により囲まれていた前記対象領域を含む抽出対象領域内の画像部分を抽出する抽出画像取得部と、
同じ種類の前記分類記号と対応付けられた1以上の前記囲み線のそれぞれにより取り囲まれた前記画像部分同士をグループ化する画像仕分け部と、
抽出された前記画像部分をグループ毎にまとめた一覧データを作成する一覧データ生成部と、
を備える画像処理装置として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−151722(P2012−151722A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9588(P2011−9588)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】